説明

プラズマディスプレイ電磁波シールドフィルター用銅箔及びその製造方法

【目的】本願発明の解決しようとする課題はプラズマディスプレイ電磁波シールド用銅箔で特に強く要求される特性、銅箔のラミネート面が黒色であること、銅箔が超低粗度であること、銅箔のラミネート面の平滑性が高いこと、以上3点の特徴を有したプラズマディスプレイ電磁波シールドフィルター用銅箔及びその製造方法を提供する事にある。
【解決手段】銅箔の少なくとも一方の面に粗化粒子大きさ0.6μm以下の銅-錫からなる粗化粒子からなる粗化処理層を施し、且つ、粗面粗度Rzを1.5μm以下に調整する事で、JIZ Z 8729に記載の色の表色系L*a*b*のL*が30以下であり、且つ、JISZ8471に基づきGs(85°)で測定した鏡面光沢度が80以上である、黒色、超低粗度、高い平滑性という特徴を有したプラズマディスプラレイ電磁波シールドフィルター用銅箔及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明はプラズマディスプレイに使用されている多機能光学フィルターの一つである電磁波シールドフィルターに使用される銅箔に関するものであり、更に詳しくは電磁波を効果的にシールドする特性に優れたプラズマディスプレイ電磁波シールドフィルター用銅箔及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像表示ディスプレイはブラウン管が主流であったが、近年、大画面、薄型、軽量、画面歪みが少ない等の機能を備えたプラズマディスプレイパネルの普及が広がっている。
【0003】
しかし、プラズマディスプレイは気体放電による発光原理を利用しており、ディスプレイ前面からの放射電磁波が大きく、国際無線障害特別委員会の定める規制(CISPR)や国内の情報処理装置等電波障害自主規制協議会での規制(VCCI)等をクリアーする必要がある。本体から放射される電磁波は周辺機器へ悪影響を及ぼすノイズを発生させる他に、最近ではこの電磁波が人体に悪影響を及ぼすとの報告もあり、これらを抑制する目的で電磁波シールドフィルターが使用されている。
【0004】
電磁波シールドフィルターとしては金属繊維をメッシュ状に編み込んだもの、ポリエステルフィルム(以下、PET)を基材とし銅やニッケル等の金属を無電解めっき等によりメッシュ状に電着したもの、銅箔をPET/接着剤にラミネートした後にエッチングによりメッシュを形成したものがあるが、最近は銅箔をPET/接着剤にラミネートした後にエッチングによりメッシュを形成する方法が主流となりつつある。これら電磁波シールドフィルターは出来るだけ薄いものが要求されるとともに、光透過性と、これに相反する電磁波シールド性を両立させる事が望まれている。この様な特性を求められる電磁波シールドフィルターにおいて、構成材料である銅箔に求められる特に重要な特性は以下の3点である。
【0005】
1.銅箔のラミネート面が黒色であること
(理由)外光からの反射を防ぎ、コントラスト効果を高め鮮明な画像を得る為。
2.銅箔が超低粗度であること
(理由)電磁波シールドフィルターの金属メッシュは銅幅10〜20μm、メッシュ間隔200〜300μmが一般的である。このため高粗度銅箔の場合、エッチング時のサイドエッチが大きくなり高精度のメッシュが得られにくい不具合が生じる。
3.銅箔ラミネート面の平滑性が高いこと
(理由)視聴者は電磁波シールドフィルターの金属メッシュのない部分を透過した光を見ることになるため、エッチング後のPET/接着剤の透明性が高い方が画像は鮮明になる。エッチング後のPET/接着剤の表面形状は銅箔ラミネート面をそのまま転写した形状となるため、透明性は銅箔ラミネート面の平滑性が高い程良好となる。
【0006】
従来技術で黒色外観を発現させる処理方法として、銅箔の表面に銅-コバルト-ニッケル合金めっきによる粗化処理後、コバルト-ニッケル合金めっき層を行う方法が提案されている。(特許文献1参照)。しかし、該発明について本願発明者らが追試実験を行ったところ、確かに黒色に近い色調を発現する事が出来るが、実際には灰黒色であり完全な黒色を発現するには不十分である。更に、粗化粒子が樹枝状であり、また、比較的大きい事から、エッチング後のPET/接着剤の透明性が悪い欠点を有し、更に粉落ちの程度がきついという欠点を有する。
【0007】
また、プラズマディスプレイ電磁波シールドフィルター用銅箔の表面処理方法として銅箔の表面に銅粒子からなる粗化処理層を形成した後、錫-ニッケル-モリブデンからなる合金めっき層を形成する方法が提案されている。(特許文献2参照)しかし、該発明について本願発明者らが追試実験を行ったところ、錫-ニッケル-モリブデンからなる合金めっき層を施す前に、比較的大きな銅の樹枝状粗化処理、そして、該粗化処理と銅箔の固着性を発現させるカバーめっきを施す為、粗面粗度が上昇しエッチング後のPET/接着剤の透明性が悪く、更に、色調も茶〜こげ茶色であり完全な黒色を発現するには不十分である。
【特許文献1】特開平9-87889号公報
【特許文献2】特開2003-201597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明の解決しようとする課題は上記プラズマディスプレイ電磁波シールドフィルター用銅箔で特に強く要求される特性、銅箔のラミネート面が黒色であること、銅箔が超低粗度であること、銅箔のラミネート面の平滑性が高いこと、以上3点の特徴を有したプラズマディスプレイ電磁波シールドフィルター用銅箔及びその製造方法を提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本課題を解決するべく様々な表面処理の検討を行った結果、銅箔に以下の表面処理を施す事により達成出来るとの知見を得た。
1. JISZ8729に記載の色の表色系L*a*b*のL*が30以下であり、且つ、JISZ8471に基づきGs(85°)で測定した鏡面光沢度が80以上である、銅-錫からなる粗化処理層を銅箔の少なくとも一方の面に有すること。2.銅-錫からなる粗化処理層を形成する粗化粒子の大きさが0.6μm以下であること。3.銅-錫からなる粗化処理層を形成した後の十点平均粗さRzが1.5μm以下であること。4. 銅-錫からなる粗化処理層の組成が錫0.5〜6.0wt%、残部が銅であること。
【発明の効果】
【0010】
本願発明の効果は銅箔の少なくとも一方の面に上記形態の表面処理を行うことで電磁波を効果的にシールドする事が可能となり、且つ、外光からの反射を極めて低く抑制する事が可能となる為、コントラスト効果が高くなり鮮明な画像が得られ、且つ、超低粗度であることから、エッチング性が良好であるため高精度メッシュが得られ、且つ、エッチング後のPET/接着剤の透明性が高くなり鮮明な画像が得られる特徴を有したプラズマディスプレイ電磁波シールドフィルター用銅箔である。
【0011】
また、本願発明の表面処理を施した銅箔は微細粗化粒子を有する、超低粗度である等の特徴を有することから、一般的なプリント配線板用銅箔だけでなく、高周波基材用銅箔、液晶ポリマー用銅箔、2層フレキシブル基材用銅箔にも適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本願発明について詳述する。
【0013】
まず、使用する未処理銅箔であるが圧延、電解銅箔に限定する必要性は無く何れの銅箔を使用しても良いが、本用途では銅箔の粗度が超低粗度である事が前提となるため、粗化処理での粗度の上昇分を考慮し未処理銅箔の粗度Rzは1.2μm以下のものを使用することが好ましい。粗度の大きい未処理銅箔を使用する場合でも銅-錫粗化粒子による黒色は可能であるがエッチング性が損なわれる、エッチング後のPET/接着剤の透明性が損なわれる等の不具合が生じる場合があるため好ましくない。箔厚は5〜35μmであり、更に好ましくは6〜18μmである。
【0014】
本願発明の銅-錫からなる粗化処理層は銅イオン及び錫イオンを含むピロリン酸浴を用い、陰極電解することにより形成させる。以下に銅-錫からなる粗化処理層を形成する浴組成、電解条件の例を挙げるが特にこれに限定させるものではない。
【0015】
(電解浴組成)
ピロリン酸第二銅 10〜200g/L(特に好ましくは20〜100g/L)
ピロリン酸第一錫 0.1〜10g/L(特に好ましくは0.2〜4g/L)
ピロリン酸カリウム 100〜500g/L(特に好ましくは150〜350g/L)
pH 8〜10(特に好ましくは8.8〜9.7)
pHは水酸化ナトリウム若しくはアンモニアで調整
【0016】
(電解条件)
浴温度 20〜80℃(特に好ましくは30〜60℃)
電流密度 3〜30A/dm2(特に好ましくは5〜20A/dm2)
電気量 10〜150A・sec/dm2(特に好ましくは30〜100A・sec/dm2
本願発明の銅-錫からなる粗化処理層を施した銅箔の色調は巨視的に見た場合、処理ムラの見られない極めて高い黒色を呈する。その黒色度合いはJISZ8729に記載の色の表色系L*a*b*のL*が30以下である。一般的な黒色画用紙のL*が25〜30であることを考えると極めて高い黒色であると言える。
【0017】
一方、SEM等で微視的に観察した場合、粗化粒子の大きさは0.6μm以下である事が確認できる。粗化粒子の大きさは0.6μm以下に調節する事が重要であり、0.6μmを超える場合には銅箔と銅-錫粗化粒子との固着性が悪くなることがあり、粉落ち、エッチング残等の不具合が生じる場合がある。また、銅-錫からなる粗化処理層の組成も重要であり、錫の含有率が0.5〜6.0wt%、更に好ましくは0.8〜5.0wt%の場合、外観、粗面粗度、鏡面光沢度を同時に満足させる粗化処理層となる。錫の含有率が0.5wt%未満の場合は処理外観が茶色を呈する、粗化粒子の付着が乱雑になる等の不具合が生じる場合がある。
【0018】
一方、錫の含有率が6.0wt%を超える場合は、粉落ちがきつくなる、処理外観にムラが発生する等の不具合が生じる場合がある。また、本願発明粗化処理は従来の粗化処理方法とは異なり粗面粗度の上昇を極めて低く抑える事が出来るため、処理後の粗面粗度も超低粗度にする事が可能である。粗面粗度は1.5μm以下に抑える事が重要であり、1.5μmを超える場合、エッチング後のPET/接着剤の透明性が悪くなりその結果鮮明な画像が得られにくい不具合が生じる場合がある。
【0019】
本発明の銅-錫からなる粗化処理後に必要に応じて特開昭61-13688号にあるようなモリブデン或いはタングステンの少なくとも一方を含有するコバルト層、特開2003-171781号にあるようなタングステン若しくはモリブデンを含有するニッケル-リン層、特開2003-298229号にあるようなゲルマニウムを含有するコバルト及び/又はニッケル層、その他公知の耐熱・防錆層、クロメート皮膜層、シランカップリング剤層を施す事により更に良好な特性を得ることが出来る。
【0020】
耐熱・防錆層を施した場合は電磁波シールドフィルター製造時に受ける熱履歴からの耐加熱変色性や耐酸化性が向上する。耐熱・防錆層を形成させる浴組成、電解条件の例を挙げる。
【0021】
(ニッケル層)
硫酸ニッケル六水和物 10〜100g/L(特に好ましくは20〜50g/L)
クエン酸三ナトリウム二水和物 5〜100g/L(特に好ましくは20〜60g/L)
pH 3.0〜10.0(特に好ましくは4.0〜7.0)
【0022】
(コバルト層)
硫酸コバルト七水和物 10〜100g/L(特に好ましくは20〜50g/L)
クエン酸三ナトリウム二水和物 5〜100g/L(特に好ましくは20〜60g/L)
pH 3.0〜10.0(特に好ましくは4.0〜7.0)
【0023】
(コバルト-モリブデン層)
硫酸コバルト七水和物 10〜100g/L(特に好ましくは20〜50g/L)
モリブデン酸二ナトリウム二水和物 1〜80g/L(特に好ましくは5〜50g/L)
クエン酸三ナトリウム二水和物 5〜100g/L(特に好ましくは20〜60g/L)
pH 4.0〜10.0(特に好ましくは5.0〜7.0)
【0024】
(ニッケル−リン-タングステン層)
硫酸ニッケル六水和物 10〜100g/L(特に好ましくは20〜50g/L)
次亜リン酸ナトリウム一水和物 0.1〜10g/L(特に好ましくは 0.5〜5g/L)
タングステン酸ナトリウム二水和物 0.1〜20g/L(特に好ましくは0.5〜10g/L)
酢酸ナトリウム三水和物 2〜20g/L(特に好ましくは3〜15g/L)
pH 3.0〜5.5(特に好ましくは3.5〜5.0)
【0025】
(コバルト-ニッケル-ゲルマニウム層)
硫酸コバルト七水和物 10〜100g/L(特に好ましくは20〜50g/L)
硫酸ニッケル六水和物 10〜100g/L(特に好ましくは20〜50g/L)
二酸化ゲルマニウム 0.1〜10g/L(特に好ましくは0.3〜3g/L)
クエン酸三ナトリウム二水和物 5〜100g/L(特に好ましくは20〜60g/L)
pH 3.0〜10.0(特に好ましくは4.0〜7.0)
また導電性の付与として硫酸ナトリウムを添加してもよい。
【0026】
(電解条件)
電流密度 0.1〜10.0A/dm2(特に好ましくは0.5〜5.0A/dm2
電気量 5.0〜40.0A・sec/dm2(特に好ましくは10.0〜30.0A・sec/dm2
液温 20〜50℃(特に好ましくは 25〜40℃)
【0027】
クロメート皮膜層を施した場合は耐酸化性、接着強度等の特性が向上する。クロメート皮膜層を形成させる浴は公知のものでよく、例えばクロム酸、重クロム酸ナトリウム、重クロム酸カリウムなどの6価クロムを有する物であればい。尚、クロメート皮膜層形成後のクロムの析出形態はCr(OH)3とCr203が混在した状態であり、人体に悪影響を及ぼす6価クロムはなく3価クロムの形態で析出している。クロメート皮膜層を形成させる浴組成、電解条件の例を挙げる。
重クロム酸ナトリウム 10g/L
浴温度 30℃
pH 4.2
電流密度 0.5A/dm2
電解時間 5秒
【0028】
また、特公昭58-15950号にある亜鉛イオン、6価クロムイオンを含むアルカリ性ジンククロメート液を使用してもよく、本クロム酸液を使用することで、クロム単独酸液からのクロメート皮膜層よりも耐酸化性を向上させる事が出来る。
【0029】
シランカップリング剤層を施した場合は耐酸化性、接着強度、過酷試験後の接着強度等
の特性が向上する。シランカップリング剤はエポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、メタクリロキシ基、スチリル基等多種あるがそれぞれ異なった特性を有し、また、基材との相性もあり選択して使用する必要がある。
【0030】
シランカップリング剤層を施す浴としては例えば以下に示す様な組成、条件が挙げられる。
γ−アミノプロピルトリエトキシシラン 2mL/L
浴温度 30℃
浸漬時間 15秒
【実施例】
【0031】
以下に本願発明の実施例を説明する。
【0032】
(実施例1〜10)
特開2004-263289号に記載の製造方法で作成した12μmの電解銅箔を用意した。該銅箔は未処理の状態では何れの面も光沢を呈するがそれぞれの面の粗度Rz(十点平均粗さ)は異なり、一般的に粗面、マット面、非ドラム面等と呼ばれるめっき終了面のRzは0.84μmであり、平滑面、光沢面、シャイニー面、ドラム面等と呼ばれるめっき開始面のRzは1.12μmである。尚、これ以降該電解銅箔のめっき終了面を粗面、めっき開始面を平滑面と呼称する。
【0033】
まず該未処理銅箔を硫酸濃度100g/L、浴温度30℃の硫酸溶液に60秒間浸漬し表面の酸化層の除去を行い、水洗を行った。次いで表1に示す浴組成、電解条件で陽極に白金を使用し陰極電解する事で銅-錫からなる粗化処理層を施した。尚、粗化処理を施した銅箔面も表1に示しておく。水洗後以下の浴組成の防錆液に10秒間浸漬した。
重クロム酸ナトリウム 10g/L
浴温度 30℃
pH 4.2
水洗後、乾燥を行った。
【0034】
実施例1〜10の表面処理を施した銅箔の銅-錫からなる粗化処理層中の錫含有量(wt%)、粗面粗度Rz、粗化粒子大きさ、色差L*、鏡面光沢度Gs(85°)を測定した結果を表2に示す。尚、銅箔の銅-錫粗化処理層中の錫含有量(wt%)は理学電機株式会社製のRIX2000を用いて測定し、粗面粗度RzはJISB0601に基づき小坂研究所製のサーフコーダーSE1700αを用いて測定し、色差L*はミノルタ株式会社製の分光測色計CM-508dを用いて測定し、鏡面光沢度Gs(85°)はJISZ8741に基づきミノルタ株式会社製の光沢計マルチグロス268型を用いて測定し、粗化粒子大きさは電子顕微鏡(倍率×10000)で撮影した写真から測定を行った。
【比較例】
【0035】
(比較例1〜4)
銅-錫からなる粗化処理層を形成する電解浴にピロリン酸第一錫を添加しなかった事以外は実施例1〜10と同じ方法で電解処理、防錆処理を行い、同じ特性を同じ方法で測定した。表1に浴組成、電解条件を記す。尚、使用した銅箔は実施例1〜10と同じものを使用し、また、表1にも示しているが比較例1、2は粗面、比較例3、4は平滑面に表面処理を行った。比較例1〜4の表面処理を施した銅箔の銅-錫からなる粗化処理層中の錫含有量(wt%)、粗面粗度Rz、粗化粒子大きさ、色差L*、鏡面光沢度Gs(85°)を測定した結果を表2に示す。
【0036】
(比較例5、6)
銅-錫からなる粗化処理層を行わず、実施例1〜10と同じ防錆液を使用し防錆処理のみを行った。尚、使用した銅箔は実施例1〜10と同じものを使用し、また、表1にも示しているが比較例5は粗面、比較例6は平滑面に防錆処理を行った。比較例5,6の表面処理を施した銅箔の粗面粗度Rz、粗化粒子大きさ、色差L*、鏡面光沢度Gs(85°)を測定した結果を表2に示す。
【0037】
(比較例7)
実施例1〜10で使用した未処理銅箔と同じものを使用し、該銅箔を硫酸濃度100g/L、浴温度30℃の硫酸溶液に60秒間浸漬し表面の酸化層の除去を行い、水洗を行った。次いで以下の浴組成、電解条件で陽極に白金を使用し陰極電解を行い該未処理銅箔粗面側に粗化処理層を形成した。
【0038】
(浴組成)
硫酸銅五水和物 50g/L
硫酸亜鉛七水和物 58g/L
モリブデン酸ナトリウム二水和物 2g/L
無水硫酸ナトリウム 14g/L
pH 1.9
浴温度 30℃
【0039】
(電解条件)
電流密度 6.0A/dm2
電解時間 2秒
粗化処理層形成後、直ちに水洗を行った。次いで以下の浴組成、電解条件で陽極に白金を使用し陰極電解を行いカバーめっきを施した。
【0040】
(浴組成)
硫酸銅五水和物 135g/L
硫酸 100g/L
浴温度 40℃
【0041】
(電解条件)
電流密度 3.0A/dm2
電解時間 8秒
カバーめっき形成後、直ちに水洗を行った。次いで以下の浴組成、電解条件で陽極に白金を使用し陰極電解を行い合金めっき層を形成した。
【0042】
(浴組成)
硫酸ニッケル六水和物 13g/L
ピロリン酸錫 3g/L
モリブデン酸ナトリウム二水和物 12g/L
ピロリン酸カリウム 33g/L
グリシン 4g/L
pH 8.0
浴温度 30℃
【0043】
(電解条件)
電流密度 3.0A/dm2
電解時間 8秒
合金めっき層形成後、直ちに水洗を行った。次いで以下の浴組成の防錆液に10秒間浸漬した。
重クロム酸ナトリウム 10g/L
浴温度 30℃
pH 4.2
水洗後、乾燥を行った。
【0044】
比較例7の表面処理を施した銅箔の粗面粗度Rz、粗化粒子大きさ、色差L*、鏡面光沢度Gs(85°)を測定した結果を表2に示す。
【0045】
表2に示した通り実施例1〜10の本願発明の銅-錫からなる粗化処理層を有する銅箔はJISZ8729に記載の色の表色系L*a*b*のL*が30以下であり極め黒色に近い色を有する事が分かり、且つ、粗面粗度Rzが1.5μm以下の超低粗度であり、且つ、鏡面光沢度Gs(85°)で80以上であり、粗化粒子が非常に微細であることが分かる。本実施例の銅箔を使用しプラズマディスプレイ電磁波シールドフィルターを作製した場合、外光からの反射を抑制でき十分なコントラスト効果が得られ、更に、エッチングにより精度の高いメッシュ形成が可能であり、更に、エッチング後の透明性も高く鮮明な画像が得られる事がわかる(図1に実施例6の粗面電子顕微鏡写真を示す)
【0046】
一方、銅-錫からなる粗化処理層を形成する浴にピロリン酸第一錫を添加しなかった比較例1〜4の場合は、銅単独の粗化処理層である為L*が30を超えており外観は茶色を呈し黒色には至らない。また、粗化粒子の付着状態が乱雑であり、特に平滑面側処理の場合、鏡面光沢度Gs(85°)が著しく低い値となり、エッチング後のPET/接着剤の透明性が悪くなる(図2に比較例4の粗面電子顕微鏡写真を示す)。また、銅-錫からなる粗化処理層を施さなかった比較例5,6の場合は鏡面光沢度Gs(85°)は高い値が得られるが、色調は銅色であり光の反射を抑制できず鮮明な画像を得ることが出来ない。
【0047】
また、銅箔の表面に銅粒子からなる粗化処理層を形成した後、錫-ニッケル-モリブデンからなる合金めっき層を施した比較例7もL*が高く十分な黒色を得ることが出来ず、また、粗化処理を施すことにより粗面粗度が上昇した事から鏡面光沢度Gs(85°)も低くエッチング後のPET/接着剤の透明性が悪くなる欠点を有する事が分かる。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0050】
本願発明は銅箔の少なくとも一方の面に粗化粒子の大きさが0.6μm以下の銅-錫からなる粗化粒子からなる粗化粒子層を施し、且つ、粗面粗度Rzを1.5μm以下に調整する事で、JISZ8729に記載の色の表色系L*a*b*のL*が30以下であり、且つ、JISZ8471に基づきGs(85°)で測定した鏡面光沢度が80以上であるプラズマディスプレイ電磁波シールドフィルター用銅箔及びその製造方法であり、該銅箔を使用し電磁波シールドフィルターを作製した場合、電磁波を効果的にシールドする事が可能となり、且つ、外光からの反射を極めて低く抑制する事が可能となる為コントラスト効果が高くなり鮮明な画像が得られ、且つ、エッチング性が良好であるため高精度メッシュが得られ、且つ、エッチング後のPET/接着剤の透明性が高くなり鮮明な画像が得られる等の特徴を有した電磁波シールドフィルターとなる。
【0051】
更に、本願発明の表面処理を施した銅箔は微細粗化粒子を有する、超低粗度である等の特徴を有する為、一般的なプリント配線板用銅箔ばかりでなく、高周波基材用銅箔、液晶ポリマー用銅箔、2層フレキシブル基材用銅箔にも適している。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施例6本願発明表面処理銅箔処理面側電子顕微鏡写真
【図2】比較例4表面処理銅箔処理面側電子顕微鏡写真

【特許請求の範囲】
【請求項1】
JISZ8729に記載の色の表色系L*a*b*のL*が30以下であり、且つ、JISZ8471に基づきGs(85°)で測定した鏡面光沢度が80以上である、銅-錫からなる粗化処理層を銅箔の少なくとも一方の面に有する事を特徴とする銅箔。
【請求項2】
銅-錫からなる粗化処理層を形成する粗化粒子の大きさが0.6μm以下である事を特徴とする請求項1に記載の銅箔。
【請求項3】
銅-錫からなる粗化処理層を形成した後の十点平均粗さRzが1.5μm以下であることを特徴とする請求項1、2のいずれかに記載の銅箔。
【請求項4】
銅-錫からなる粗化処理層の組成が錫0.5〜6.0wt%、残部が銅である事を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の銅箔。
【請求項5】
銅-錫からなる粗化処理層上にニッケル、モリブデン、タングステン、コバルト、リン、銅、ゲルマニウム、クロム、亜鉛の少なくとも一種類以上を含む被覆層を設ける事を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の銅箔。
【請求項6】
銅-錫からなる粗化処理層上にニッケル、モリブデン、タングステン、コバルト、リン、ゲルマニウム、クロム、亜鉛の少なくとも一種類以上を含む被覆層を設け、該被覆層上にシランカップリング剤層を設ける事を特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の銅箔。
【請求項7】
銅イオン及び錫イオンを含む電解浴を用い、該電解浴中で銅箔を陰極電解し銅-錫からなる粗化処理層を形成させる事を特徴とする銅箔の製造方法。
【請求項8】
電解浴が銅イオン及び錫イオンを含むピロリン酸浴である事を特徴とする請求項7に記載の銅箔の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−324546(P2006−324546A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−147641(P2005−147641)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000239426)福田金属箔粉工業株式会社 (83)
【Fターム(参考)】