説明

プラズマモニタリング方法

【課題】In-situでパターン側壁の抵抗及びそのパターン側壁に流れる電流を測定する。
【解決手段】プラズマチャンバ1内に設置された2個のセンサ10−1,10−2の片方にのみ、外部抵抗素子7を接続している。そのため、2個のセンサ10−1,10−2の上部電極15及び下部電極13間抵抗は互いに異なり、In-situにおいて異なる上部電極15及び下部電極13間の電位差が得られ、且つ、一方のセンサ10−1の上部電極15及び下部電極13間にワイヤ17−11,17−12にて並列接続された外部抵抗素子7の抵抗値は既知であるため、In-situにおいてコンタクトホール1個当りのコンタクトホール側壁16aの抵抗値が得られる。更に、コンタクトホール1個当りの抵抗が得られれば、コンタクトホール1個当りのコンタクトホール側壁16aに流れる電流値を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程及びその他のプラズマを用いる全ての製造工程に適用できるその場計測(以下「In-situ」という。)でコンタクトホール等のパターンの側壁の抵抗とその側壁に流れる電流を計測するためのプラズマモニタリング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プラズマ装置内に設置されたウェハの処理過程をモニタリングするためのプラズマモニタリング方法に関する技術としては、例えば、下記の特許文献1、2等に記載されるものがあった。
【0003】
下記の特許文献1、2等に記載されているように、半導体デバイスの回路パターンの微細化に伴って、ドライエッチング等のプラズマプロセスにおける電子遮蔽効果によるエッチングストップや形状異常が深刻な問題となっている。
【0004】
電子遮蔽効果とは、例えば、プラズマチャンバ内のステージ上に載置されたウェハに対してプラズマ処理を行うと、プラズマから電子(マイナス電荷)と正イオンがステージ上のウェハ表面に入射する。この時、正イオンの入射方向はウェハ表面に対してほぼ垂直であるのに対して、電子は垂直ではない。そのため、正イオンはウェハに形成されているコンタクトホールの深い底に到達して蓄積されるが、電子はコンタクトホールの内壁に衝突して、コンタクトホールの底に到達できない。一般に、この電子の入射角度に起因する電子のコンタクトホール底への到達し難さを電子遮蔽効果と呼ぶ。このため、ウェハ表面とコンタクトホール底に帯電する電荷量に差が生じ、コンタクトホールの表面付近と底との間に電位差が発生し、エッチングストップや形状異常の問題が生じることがある。
【0005】
これらの問題を改善するために、プラズマプロセス時に、コンタクトホール側壁の抵抗が比較的低いデポジション膜が形成されるようなプラズマプロセス条件を適用して、コンタクトホール上部の電子が側壁を伝わってコンタクトホール底のプラス電荷を打ち消すことで、電子遮蔽効果を緩和するといった方法が提案及び研究されている。
【0006】
前記デポジション膜は、コンタクトエッチングの際、プラズマから放出されるラジカル等と被エッチング膜が化学反応して、コンタクトホールの側壁に堆積するエッチング反応生成物である。このデポジション膜が側壁に形成されることは、一般的である。デポジション膜の抵抗率は、コンタクトホールエッチング時のプラズマプロセス条件(例えば、ガスの種類や印加パワー)によって変わることが報告されている。
【0007】
又、コンタクトホールエッチング等のシミュレーションにおいて、コンタクトホール側壁の複雑な現象を再現するための様々な検討が行われている。シミュレーションによって計算される結果と、実際のエッチングプロセスによって実現される結果とが一致するためには、シミュレーションに組み込まれる様々なパラメータ(例えば、プラズマ温度、プラズマ密度、チャンバ内圧力、コンタクトホール内の電位、コンタクトホール側壁に流れる電流等)が実際の値に近いことが望ましく、測定によって得られた実測値を用いるのがよい。
【0008】
例えば、本願発明者は、先の特願2007−225677(未公開)において、それらのパラメータのうちコンタクトホール内の電位をIn-situで測定するための方法を提案した。しかし、この方法では、In-situにおいてコンタクトホール側壁の抵抗や電流値を測定することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−282546号公報
【0010】
【特許文献2】特開2005−236199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来のプラズマモニタリング方法では、次のような課題があった。
従来の電子遮蔽効果を緩和するための研究において、低抵抗のデポジション膜が形成されるようなプラズマプロセス条件とコンタクトホール側壁抵抗の関係を評価する際、コンタクトホール側壁抵抗をIn-situで測定する方法がこれまでなかったため、プラズマプロセス終了後に、一旦サンプルをプラズマチャンバの外に取り出して大気中において、サンプルにプローブを当て(即ち、コンタクトホールの底と上部間に電圧を印加して)、側壁抵抗を測定する方法が従来の測定方法であった。この場合もし、緩和効果が期待できる低い側壁抵抗を実現するプラズマプロセス条件が明らかになったとしても、プラズマチャンバの外部(即ち、大気中)とプラズマチャンバ内のプラズマ中とでは、水分や温度、真空紫外光等のコンタクトホール側壁抵抗に影響する要素が異なるため、プラズマチャンバ内のIn-situ(プラズマ放電中)では低い抵抗が実現されない可能性が懸念される。つまり、大気中では低抵抗であっても、In-situでは高抵抗であると、電子遮蔽効果の緩和は期待できない。
【0012】
前記真空紫外光とは、次のようなものである。プラズマからは電子や正イオンの他に真空紫外光が放射される。この光は、190nm以下の波長(エネルギー6.5eV以上)を有し、真空中では空間を伝播するが、大気中では酸素分子等に吸収されて消滅するため伝播しない。
【0013】
又、コンタクトホールエッチング等のシミュレーションに対しては、In-situでのコンタクトホール側壁の抵抗値や側壁に流れる電流値等の実測値が分からなかったため、シミュレーションにおいて、これら実測値を活用して、シミュレーションの精度を向上させることができないといった課題があった。更に、シミュレーションによって理論的にIn-situでのコンタクトホール側壁抵抗や側壁に流れる電流値を求めても、それらが正しいかどうか比較するための実測値を得る方法が無いといった課題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の内の第1の発明のプラズマモニタリング方法は、プラズマチャンバ内に設置され、パターン内に2つ以上の電極が形成されたセンサと、前記センサにおける前記2つ以上の電極間に電気的に接続された抵抗素子とを用い、プラズマプロセス中に、In-situで前記パターン側壁の抵抗及び/又は前記パターン側壁に流れる電流を測定することを特徴とする。
【0015】
第2の発明のプラズマモニタリング方法は、第1のパターン内に2つ以上の第1の電極が形成され、前記各第1の電極にそれぞれ接続された第1のワイヤ間に抵抗素子が接続された第1のセンサと、第2のパターン内に2つ以上の第2の電極が形成され、前記各第2の電極にそれぞれ第2のワイヤが接続された第2のセンサと、をそれぞれ1つ以上用い、プラズマプロセス中に、In-situで前記パターン側壁の抵抗及び/又は前記パターン側壁に流れる電流を測定することを特徴とする。
【0016】
第3の発明のプラズマモニタリング方法は、プラズマチャンバ内に設置され、パターン内に2つ以上の電極が形成されたセンサと、前記センサにおける前記2つ以上の電極間に電気的に接続された抵抗素子とを用い、プラズマプロセス中に、前記抵抗素子の抵抗値を変えてその前後において、In-situで、前記センサにおける前記パターン内の電圧を測定することを特徴とするプラズマモニタリング方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の内の第1の発明によれば、In-situでパターン側壁の抵抗及びそのパターン側壁に流れる電流を的確に測定できる。
【0018】
第2の発明によれば、プラズマチャンバ内に設置された複数のセンサのうちの1つのセンサに抵抗素子を接続したので、各センサの電極間抵抗は互いに異なり、In-situにおいて異なる電極間の電位差が得られ、且つ、前記抵抗素子の抵抗値は既知であるため、In-situにおいてパターン側壁1個当りの抵抗値が得られる。更に、パターン側壁1個当りの抵抗が得られれば、パターン側壁1個当りのパターン側壁に流れる電流値を得ることができる。
【0019】
第3の発明によれば、1つのセンサの電極間に抵抗素子を接続し、In-situにて2種類の電極間抵抗値に対して、各電極間の電位差を測定するので、In-situにてパターン側壁の抵抗値とその側壁に流れる電流値を得ることができる。更に、電極電位の測定に必要な電圧計のチャンネル数は最低2つでよい。しかも、1つのセンサで測定ができるため、プラズマの局所的領域に対して、その付近に位置するパターンの側壁抵抗値とその側壁に流れる電流値を測定できる。従って、局所的なプラズマの影響を受けた値を測定し易い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は本発明の実施例1におけるプラズマモニタリングシステムを示す概略の構成図である。
【図2】図2は図1のプラズマモニタリング方法の説明図である。
【図3】図3は図1の等価回路図である。
【図4】図4は本発明の実施例2におけるプラズマモニタリングシステムを示す概略の構成図である。
【図5】図5は図4のプラズマモニタリング方法の説明図である。
【図6】図6は図4の等価回路図である。
【図7】図7は実施例1の効果と実施例2の効果との比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0022】
(実施例1の構成)
図1は、本発明の実施例1におけるプラズマモニタリングシステムを示す概略の構成図である。
【0023】
このプラズマモニタリングシステムは、プラズマチャンバ1を有して、このプラズマチャンバ1内に発生されるプラズマ1aに曝される箇所に、ウェハ等の被処理物を載置するための導電性のステージ2が設置されている。ステージ2は、例えば、直流阻止用のコンデンサ3及び基板バイアス用の高周波(以下「RF」という。)発振器4を介して、グランドGNDに接続されている。プラズマチャンバ1には、更に、図示しないプラズマ発生装置が設けられている。
【0024】
ステージ2には、例えば、同一仕様の2個のモニタリング用第1、第2のセンサ10−1,10−2が設置される。
【0025】
第1のセンサ10−1は、例えば、シリコン基板11を有し、この上に、厚さ略1.0μmのシリコン酸化膜等からなる絶縁膜12が形成されている。絶縁膜12上には、厚さ略0.3μmのポリシリコン等からなる導電性の下部電極13が選択的に形成されている。下部電極13を含む全面には、厚さ略1.0μmのシリコン酸化膜等からなる絶縁膜14と、厚さ略0.3μmのポリシリコン等からなる導電性の上部電極15とが形成されている。絶縁膜14及び上部電極15には、例えば、ドライエッチング装置等により、1つ以上のコンタクトホール16が形成されている。側壁16aをそれぞれ有する各コンタクトホール16は、例えば、直径が0.1μm、深さが1.3μmである。
【0026】
上部電極15とこの下の絶縁膜14に対して、コンタクトホール16が形成されていない箇所に、例えば、面積40mm位の溝14aが形成されて下部電極13が露出され、この箇所に、周囲が絶縁被覆された導電性ワイヤ17−12が銀ペースト等により接続されている。更に、上部電極15において、コンタクトホール16が形成されていない箇所に、周囲が絶縁被覆された導電性ワイヤ17−11が銀ペースト等により接続されている。ワイヤ17−11,17−12の接続部分は、例えば、プラズマ1aから保護するために耐熱性樹脂18,19等によりそれぞれ覆われている。
【0027】
第2のセンサ10−2は、一方のセンサ10−1と同一の構造であり、上部電極15及び上部電極13に接続された2本の導電性ワイヤ17−21,17−22が取り付けられている。
【0028】
2個のセンサ10−1,10−2にそれぞれ取り付けられた4本のワイヤ17−11,17−12,17−21,17−22は、プラズマチャンバ1に専用に取り付けられたハーメチックシール5を介して、プラズマチャンバ1の外に引き出されている。引き出されたワイヤ17−11,17−12,17−21,17−22は、電圧計6のチャンネルに接続されている。各センサ10−1,10−2の上部電極15及び下部電極13と電圧計6のチャンネルとは、ワイヤ17−11,17−12,17−21,17−22によって電気的に接続されるが、この際、チャンバ1内のワイヤとチャンバ1外のワイヤとを電気的に繋げるための端子が、ハーメチックシール5である。
【0029】
なお、プラズマ発生中にワイヤ17−11,17−12,17−21,17−22に流れる電流は、電位が周期的に変化する交流成分と変化しない直流成分の合成波である交流電流であり、測定したい電位は直流成分であるので、交流成分を除去又は抑制するために、例えば、ローパスフィルタやチョークコイル等を介してワイヤ17−11,17−12,17−21,17−22を電圧計6に接続してもよい。
【0030】
チャンバ1内に2個設置されている内の片方のセンサ(例えば、10−1)に対して、プラズマチャンバ1の外に引き出された2本のワイヤ17−11,17−12間に、例えば、10MΩの外部抵抗素子7が接続されている。即ち、プラズマチャンバ1内に2つのセンサ10−1,10−2を設置する場合、計4本のワイヤ17−11,17−12,17−21,17−22をプラズマチャンバ1の外に引き出すことになるが、その内の1つのセンサ(例えば、10−1)に接続された2本のワイヤ17−11,17−12間にだけ、外部抵抗素子7が接続される。
【0031】
(実施例1のプラズマモニタリング方法)
図2は、図1のプラズマモニタリング方法の説明図である。更に、図3は、図1の等価回路図である。
【0032】
これらの図2及び図3を参照しつつ、プラズマチャンバ1内に2個以上(例えば、2個)のセンサ10−1,10−2を設置したプラズマモニタリング方法を説明する。
【0033】
例えば、プラズマチャンバ1内の圧力を120mTorr、封入ガスとしてCHF3、CF4、N2及びArの混合ガスを封入し、プラズマチャンバ1に1600WのRFバイアスを印加し、プラズマチャンバ1内にプラズマ1aを発生させる。
【0034】
すると、プラズマ1aから正イオン(ion)hや電子(electron)eが各センサ10−1,10−2内の最上層の上部電極15と絶縁膜14下の下部電極13に入射する。しかし、正イオンhと電子eの入射角度の差異によって、コンタクトホール16の底には電子eが入射し難く(電子遮蔽効果)、各センサ10−1,10−2の上部電極15に蓄積する電子量より、コンタクトホール16の底の下部電極13に蓄積する電子量の方が少ない状態ができる。この結果、上部電極15の電位より下部電極13の電位の方が高くなり、電位差が発生する。
【0035】
コンタクトホール16の側壁16aは高抵抗であるが、完全に絶縁ではないため、上部電極15の電子e(マイナス電荷)はコンタクトホール16の側壁16aを伝わって、より電位が高い下部電極13に流れ込む。この時、上部電極15と下部電極13との間に発生する電位差Vは、下記の公式(1)で表される。
【0036】
なお、図3に示す電流I(=Iion−Ielectron、Iion;電子eによる電流、Ielectron;正イオンhによる電流)は正電荷であり、電子eとは反対の電荷であるため、電流Iの伝播方向は、電子eの伝播方向に対して逆方向に図示されている。
V=I*R ・・・・・・・(1)
【0037】
この式(1)において、Iは1つ以上のコンタクトホール16の側壁16aに流れる電流の総和であり、Rは1つ以上のコンタクトホール側壁抵抗の総和である。
【0038】
ここで、コンタクトホール側壁抵抗とは、コンタクトホール側壁経路に対する電流の流れ難さの度合いであり、電流が流れやすいほどその抵抗値は低い。よって、上部電極15及び下部電極13間に形成されているコンタクトホール16の数が多い程、コンタクトホール側壁16aの電流経路の数が増加して電流は流れ易くなり、総抵抗Rは低くなる。例えば、コンタクトホール1個当りの抵抗をRhによって表す時、上部電極15及び下部電極13間に複数のコンタクトホール16が形成されているならば、一般に回路理論では抵抗Rhは並列接続されていると言われ、上部電極15及び下部電極13間の総抵抗R(=複数の抵抗Rhの並列接続での総和)は、下記の式(6)で表される。
【0039】
又、式(1)における電流Iは、元々電子eの入射角度に起因してセンサ表面の上部電極15とコンタクトホール底の下部電極13に入射する電子量の差である。つまり、センサ表面の上部電極15に入射した電子eは、プラズマ1aからの電子eの入射量が少ないコンタクトホール底の下部電極13に、コンタクトホール側壁16aを伝わって流れ込む。この電流Iは、図3において、I=Iion−Ielectronと図示されている。コンタクトホール側壁16aは抵抗Rを有するので、式(1)によって、上部電極15及び下部電極13間に電位差Vが発生する。この際、抵抗Rに対して電流Iは殆ど変化しない。
【0040】
外部抵抗素子7が接続されたセンサ10−1の上部電極15及び下部電極13間に発生する電位差をV1、外部抵抗素子7が接続されていないセンサ10−2の上部電極15及び下部電極13間に発生する電位差をV2とすると、電位差V1,V2は上部電極15及び下部電極13間の抵抗Rに比例するので、式(1)より、電圧計6によって測定される各電位差V1,V2は式(2)の関係になる。
V1<V2・・・・・・・・・・(2)
【0041】
即ち、外部抵抗素子7を接続したセンサ10−1の上部電極15及び下部電極13間に電流が流れる際、コンタクトホール側壁16aだけでなく、上部電極15及び下部電極13に接続された2本のワイヤ17−11,17−12と外部抵抗素子7の経路にも電流が流れる。そのため、コンタクトホール側壁16aだけの電流経路の場合より、電流は流れやすい。ここで、ワイヤ17−11,17−12間に接続する外部抵抗素子7は、センサ10−1,10−2が設置されているチャンバ1内ではなくチャンバ1外であるが、電気回路的にはチャンバ1内であっても外であっても同じである。外部抵抗素子7を接続した場合、上部電極15の電子eは、コンタクトホール側壁16aを流れて下部電極13に流入すると同時に、上部電極15に接続されたワイヤ17−11を通って、チャンバ1外に一旦出て、チャンバ1外の外部抵抗素子7を通り、下部電極13に接続されたワイヤ17−12を通って再びチャンバ1内に入り、下部電極13に流入するといった2通りの電流経路を通る。よって、各電位差V1,V2は式(2)の関係になる。
【0042】
外部抵抗素子7が接続されたセンサ10−1について、回路理論に基づき方程式を立てると、式(3)が成り立つ。
V1 = R*R0*I/(R+R0) ・・・・・・・・・・(3)
【0043】
ここで、R0は外部抵抗素子7の抵抗値であり既知の値である。又、外部抵抗素子7が接続されていないセンサ10−2についても、回路理論に基づき方程式を立てると、式(4)が成り立つ。
V2 = R*I ・・・・・・・・・・(4)
【0044】
よって、式(3)と式(4)の連立方程式から式(5)が導出される。
R=(V2/V1−1)*R0 ・・・・・・・・・・・(5)
【0045】
式(5)において、外部抵抗素子7の抵抗値R0は既知であり、電位差V1とV2は電圧計6によって測定される値であるから、式(5)に抵抗値R0、及び電位差V1,V2を代入すれば、上部電極15及び下部電極13間の抵抗、即ち、コンタクトホール16の側壁抵抗Rが求まる。次に、式(1)に電位差V2と、式(5)によって求めた側壁抵抗Rを代入することにより、コンタクトホール側壁16aに流れる電流Iが得られる。
【0046】
上記によって、得られた1つ以上のコンタクトホール側壁抵抗の総和Rと側壁16aに流れる電流の総和Iに対して、単位コンタクトホール当りの側壁抵抗をRh、単位コンタクトホール当りの側壁16aに流れる電流をIhとすると、抵抗の総和Rと側壁抵抗Rhの関係は下記の式(6)によって表され、電流の総和Iと電流Ihの関係は下記の式(7)によって表されるので、式(6)、(7)を用いて、コンタクトホール1個当りの側壁抵抗と側壁16aに流れる電流が得られる。
Rh=R*(1個のセンサに形成されたコンタクトホールの数)・・・・(6)
Ih=I/(1個のセンサに形成されたコンタクトホールの数)・・・・(7)
【0047】
(実施例1の効果)
本実施例1によれば、プラズマチャンバ1内に設置された2個のセンサ10−1,10−2の片方にのみ、外部抵抗素子7を接続したので、この2個のセンサ10−1,10−2の上部電極15及び下部電極13間抵抗は互いに異なり、In-situにおいて異なる上部電極15及び下部電極13間の電位差が得られ、且つ、一方のセンサ10−1の上部電極15及び下部電極13間にワイヤ17−11,17−12にて並列接続された外部抵抗素子7の抵抗値は既知であるため、動作の説明において示した式(5)、(6)よりIn-situにおいてコンタクトホール1個当りのコンタクトホール側壁16aの抵抗値が得られる。
【0048】
更に、コンタクトホール1個当りの抵抗が得られれば、動作の説明において示した式(4)、(7)から、コンタクトホール1個当りのコンタクトホール側壁16aに流れる電流値を得ることができる。
【実施例2】
【0049】
(実施例2の構成)
図4は、本発明の実施例2におけるプラズマモニタリングシステムを示す概略の構成図であり、実施例1を示す図1中の要素と共通の要素には共通に符号が付されている。
【0050】
本実施例2のプラズマモニタリングシステムでは、実施例1と同様の1個のセンサ10−1がステージ2上に設置され、このセンサ10−1に接続された2本のワイヤ17−11,17−12が、ハーメチックシール5を介してプラズマチャンバ1の外に引き出され、電圧計6に接続されている。プラズマチャンバ1の外に引き出された2本のワイヤ17−11,17−12間には、実施例1の固定の外部抵抗素子7に代えて、可変抵抗素子7Aが接続されている。可変抵抗素子7Aは、例えば、10MΩ〜100MΩの間で抵抗値を自由に調整することが可能になっている。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0051】
(実施例2のプラズマモニタリング方法)
図5は図4のプラズマモニタリング方法の説明図、及び、図6は図4の等価回路図であり、実施例1を示す図2及び図3中の要素と共通の要素には共通に符号が付されている。
【0052】
これらの図5及び図6を参照しつつ、本実施例2のプラズマモニタリング方法を説明する。
【0053】
先ず、プラズマチャンバ1内のステージ2上に1個のセンサ10−1を設置する。この時、センサ10−1からプラズマチャンバ1の外に引き出された2本のワイヤ17−11,17−12間に接続された可変抵抗素子7Aの抵抗値をR1とする。次に、実施例1と同様に、RFバイアスを印加してプラズマチャンバ1内にプラズマ1aを発生させると、このプラズマ1aから正イオンhや電子eが、センサ表面の上部電極15とコンタクトホール底の下部電極13とに入射する。電子遮蔽効果によって、センサ10−1の上部電極15に蓄積する電子eより、コンタクトホール底の下部電極13に蓄積する電子量の方が少ない状態ができる。
【0054】
その結果、上部電極15の電位より下部電極13の電位の方が高くなり、電位差ができる。コンタクトホール16の側壁16aは高抵抗であるが、完全に絶縁状態ではないため、上部電極15の電子eはコンタクトホール側壁16aを伝わって下部電極13に流れ込む。同時に、上部電極15の電子eはコンタクトホール側壁16a以外に、上部電極15及び下部電極13に接続されたワイヤ17−11,17−12と可変抵抗素子7Aを通って下部電極13に流れ込む。つまり、上部電極15の電子eはコンタクトホール側壁16aと可変抵抗素子7Aという2つの経路を通って下部電極13に流れ込む。
【0055】
図6では、2つの経路を通って上部電極15及び下部電極13間に流れる電流をIとし、I=Iion−Ielectronと図示されているが、電流は正電荷であり、電子eとは反対の電荷であるため、電子eは電流Iの伝播方向とは逆方向に流れる。よって、この時、上部電極15及び下部電極13間に電位差が発生し、プラズマチャンバ1外の電圧計6によって測定される電位差をV1とおき、センサ10−1に形成されている総コンタクトホール数分の並列抵抗(コンタクトホール16の側壁抵抗の総和)をR、可変抵抗素子7Aの抵抗値をR1とおくと、電流I、電位差V1、及び抵抗R1,Rの関係は、回路理論に基づき式(8)で表される。
V1 = R*R1*I/(R + R1) ・・・・・・・・・・(8)
【0056】
次に、プラズマ1aが発生している状態において、可変抵抗素子7Aの抵抗値を変化させる(例えば、最初の設定時に対して2MΩ位変化させる)。この時の可変抵抗素子7Aの抵抗値をR2とおき、又、可変抵抗素子7Aを変化させた後に測定した上部電極15及び下部電極13間の電位差をV2とすると、電流I、電位差V1、及び抵抗R2,Rの関係は、回路理論に基づき式(9)で表される。
V2=R*R2*I/(R + R2) ・・・・・・・・・・(9)
【0057】
よって、式(8)と式(9)から成る連立方程式から、式(10)が導出される。
R= R1*R2*(V2−V1)/(R2*V1 − R1*V2)・・・(10)
【0058】
式(10)に可変抵抗素子7Aの2つの抵抗値R1,R2を代入し、且つ、可変抵抗素子7Aの抵抗値R1,R2を変化させる前後において、電圧計6で測定した上部電極15及び下部電極13間の2つの電位差V1,V2を代入することによって、総コンタクトホール分の側壁抵抗値を得ることができる。又、式(8)に抵抗R,R2、及び電位差V1を代入することによって、コンタクトホール16の側壁16aに流れる電流の総和Iが得られる。
【0059】
上記によって、得られた総コンタクトホール分の側壁抵抗Rと電流Iに対して、単位コンタクトホール当りの側壁抵抗をRh、単位コンタクトホール当りの側壁16aに流れる電流をIhとすると、抵抗RとRhの関係は、下記の式(11)によって表され、電流IとIhの関係は、下記の式(12)によって表される。そのため、式(11)、(12)を用いて、コンタクトホール1個当りに対して側壁抵抗と側壁16aに流れる電流が得られる。
Rh=R*(1個のセンサに形成されたコンタクトホールの数)・・・(11)
Ih=I/(1個のセンサに形成されたコンタクトホールの数)・・・(12)
【0060】
(実施例2の効果)
本実施例2の効果を、実施例1と比較しつつ説明する。
【0061】
図7(a)、(b)は、実施例1の効果と実施例2の効果との比較を示す図であり、同図(a)は実施例1の図、及び、同図(b)は実施例2の図である。
【0062】
図7(a)に示すように、実施例1では、コンタクトホール16の側壁抵抗及び側壁16aに流れる電流を計測するために、2つのセンサ10−1,10−2と電圧計7に最低4つのチャンネルが必要である。又、プラズマチャンバ1内に2つのセンサ10−1,10−2を設置して測定するため、プラズマ1aの空間分布に対して、2つ分の領域に配置されているコンタクトホール16(例えば、図7(a)の点1a−1と点1a−2の影響を受けたコンタクトホール16)の側壁抵抗値及び側壁16aに流れる電流値を測定することになる。プラズマチャンバ1内においてプラズマ1aは均一ではなく、コンタクトホール側壁抵抗及び側壁16aに流れる電流は、その付近のプラズマ状態(密度や温度)の影響を受けて変化する。そのため、実施例1は、プラズマ1aの局所的な領域に対して位置するコンタクトホール16の側壁抵抗値及び側壁16aに流れる電流値を計測するには適さない。つまり、図7(a)において、例えば、点1a−2の影響だけを受けた値を測定することができない。
【0063】
これに対し、本実施例2によれば、1つのセンサ10−1の上部電極15と下部電極13に接続された2本のワイヤ17−11,17−12間に可変抵抗素子7Aを接続し、In-situにて2種類の上部電極15及び下部電極13間抵抗値に対して、2つの上部電極15及び下部電極13間の電位差を測定する。そのため、In-situにてコンタクトホール16の側壁抵抗値と側壁16aに流れる電流値を、動作の説明で示した式(8)〜(12)を用いて得ることができる。更に、電極電位の測定に必要な電圧計6のチャンネル数は最低2つでよい。
【0064】
しかも、本実施例2では、1つのセンサ10−1で測定ができるため、プラズマ1aの局所的領域に対して、その付近に位置するコンタクトホール16の側壁抵抗値と側壁16aに流れる電流値を測定できる。即ち、図7(b)において、配置するセンサ10−1は1つであるので、プラズマ1aの空間分布に対して、例えば点1a−2の影響を受けたコンタクトホース側壁16aの抵抗値及び電流値を測定することが可能である。つまり、本実施例2の方が局所的なプラズマ1aの影響を受けた値を測定し易い。
【0065】
(変形例)
本発明は、上記実施例1、2に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(a)〜(c)のようなものがある。
【0066】
(a) 実施例2は、可変抵抗素子7Aを用いる場合における測定方法であるが、可変抵抗素子7Aではなく、抵抗値が固定された抵抗素子を2種類(互いの抵抗値が異なる2種類)用いてもよい。抵抗値が固定された2種類の抵抗素子を用いる場合は、最初に片方の抵抗素子をセンサ10−1の上部電極15及び下部電極13に接続された2本のワイヤ17−11,17−12間に接続して、その時に、センサ10−1の電極15,13間の電位差を測定し、次に、最初に取り付けた抵抗素子を他方の抵抗素子(最初に接続した抵抗素子とは抵抗値が異なる)に繋ぎ変えて、再度、センサ10−1の電極15,13間の電位差を測定し、センサ10−の各電極15,13間の抵抗値が2通りある場合に対して、それぞれ2つ以上の電位差を測定するといった方法もよい。これにより、実施例2とほぼ同様の作用効果が得られる。
【0067】
(b) 実施例1、2は。コンタクトホールパターン内の側壁抵抗と側壁16aに流れる電流を測定するための方法に関するものであるが、コンタクトホール以外のパターン(例えば、ラインアンドスペースの溝パターン等)内の側壁抵抗と側壁16aに流れる電流を測定することも可能である。
【0068】
(c) 本発明は、容量性結合型、誘導性結合型等の種々のプラズマ発生装置に適用できる。又、センサ10−1,10−2の構造や、ワイヤ17−11,17−12、17−21,17−22の引き出し構造は、図示以外の構造に変更してもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 プラズマチャンバ
1a プラズマ
2 ステージ
6 電圧計
7 外部抵抗素子
7A 可変抵抗素子
10−1,10−2 センサ
11 Si基板
13 下部電極
15 上部電極
16 コンタクトホール
17−11,17−12、17−21,17−22 ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマチャンバ内に設置され、パターン内に2つ以上の電極が形成されたセンサと、
前記センサにおける前記2つ以上の電極間に電気的に接続された抵抗素子とを用い、
プラズマプロセス中に、その場計測で前記パターン側壁16aの抵抗及び/又は前記パターン側壁16aに流れる電流を測定することを特徴とするプラズマモニタリング方法。
【請求項2】
前記センサにおける前記2つ以上の電極にワイヤがそれぞれ接続され、前記プラズマチャンバ外に引き出された前記各ワイヤ間に、前記抵抗素子が接続されていることを特徴とする請求項1記載のプラズマモニタリング方法。
【請求項3】
第1のパターン内に2つ以上の第1の電極が形成され、前記各第1の電極にそれぞれ接続された第1のワイヤ間に抵抗素子が接続された第1のセンサと、
第2のパターン内に2つ以上の第2の電極が形成され、前記各第2の電極にそれぞれ第2のワイヤが接続された第2のセンサと、をそれぞれ1つ以上用い、
プラズマプロセス中に、その場計測で前記パターン側壁16aの抵抗及び/又は前記パターン側壁16aに流れる電流を測定することを特徴とするプラズマモニタリング方法。
【請求項4】
前記各第1のワイヤ間電位差及び前記各第2のワイヤ間電位差と、前記抵抗素子の抵抗値とから、前記第1のパターン側壁16a及び前記第2のパターン側壁16aの抵抗を推定することを特徴とする請求項3記載のプラズマモニタリング方法。
【請求項5】
前記各第1のワイヤ間電位差及び前記各第2のワイヤ間電位差と、前記抵抗素子の抵抗値とから、前記第1のパターン側壁16a及び前記第2のパターン側壁16aに流れる電流を推定することを特徴とする請求項3記載のプラズマモニタリング方法。
【請求項6】
プラズマチャンバ内に設置され、パターン内に2つ以上の電極が形成されたセンサと、
前記センサにおける前記2つ以上の電極間に電気的に接続された抵抗素子とを用い、
プラズマプロセス中に、前記抵抗素子の抵抗値を変えてその前後において、その場計測で、前記センサにおける前記パターン内の電圧を測定することを特徴とするプラズマモニタリング方法。
【請求項7】
前記抵抗素子の抵抗値を変える前後において、電圧計を用いて測定された、前記パターン内の2つ以上の電極間電位差と、前後における前記抵抗素子の異なる前記抵抗値とから、前記パターン内の側壁抵抗を推定することを特徴とする請求項6記載のプラズマモニタリング方法。
【請求項8】
前記抵抗素子の抵抗値を変える前後において、電圧計を用いて測定された、前記パターン内の2つ以上の電極間電位差と、前後における前記抵抗素子の異なる前記抵抗値とから、前記パターン内の側壁16aを流れる電流を推定することを特徴とする請求項6記載のプラズマモニタリング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−232344(P2010−232344A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−77150(P2009−77150)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(308033711)OKIセミコンダクタ株式会社 (898)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】