説明

プラズマ・アーク被覆システム

【課題】被覆工程中の下地温度の均一性を向上することによって、下地全体にわたるプラズマ被覆性能の改善された一貫性を提供する。
【解決手段】下地がプラズマ・アーク被覆システムを通って進む際に前記下地を加熱するための装置であって、二次元配列された複数の第1の熱源にして、該第1の熱源配列の前で下地に熱を供給する、複数の第1の熱源と、下地のための所定の温度プロファイルに従って前記下地の表面の局部区域を加熱するために、各第1の熱源の動作を制御する制御装置とを含む、加熱装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ね下地を被覆するためのシステムに関する。具体的には、本発明はプラズマ・アーク被覆システムに関する。
【背景技術】
【0002】
既存のマルチプラズマ・アーク被覆器は、下地が被覆室又は被覆ステーションに入る前にこの下地を予備加熱するための抵抗ヒータを組み込んでいる。これらのヒータは、下地の移動方向に長い距離にわたって延在する。更にこれらのヒータは、下地の移動方向を横切る方向には低い空間的分解能を有し、ヒータ・ステーションにおける下地の滞留時間に対して緩慢な熱応答時間を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
個別のプラズマ・アーク用のリング・マニホルド又はアーク配列用のレーストラック・マニホルドを使用する被覆ステーションなどの、多くの被覆ステーションが、被覆工程中に絶えず試薬を供給する。しかし、これらのマニホルドは、上流射出開口と下流射出開口が互いに独立して供給され、オン及びオフに切り替えられることを許していない。
【0004】
更に、ある被覆ステーションでは、アーク及びマニホルドは、下地の両側を被覆するために被覆ステーションの両側に置かれるが、これは過剰噴霧を最小限に抑えるか又は防ぐために対向するジェットの均衡化を必要とする。しかし、両側被覆ステーションでは、対向する両ジェットの均衡化は達成困難であり、一般に生産進行中はこれを堅実に維持することはできない。したがって、対向する両ジェットは、下地によって完全に遮断されないときには混合し、この結果、下地の両側面上に、アークに起因する先駆物質が凝縮する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下地を被覆するためのシステム、装置、及び方法を対象とする。ある態様では、下地を加熱するためのヒータは、複数の熱源の二次元配列及び制御装置を含み、前記二次元配列は、下地が熱源配列の中にあるときに下地に熱を供給し、前記制御装置は、各熱源の動作を独立して制御し、下地のための所定の温度プロフィールに従って下地の表面の局部的に制限された範囲を加熱する。スポット・サイズと呼ばれる熱範囲の適用範囲は、下地の特性寸法に比べて小さい。これらの熱源の強度を、ヒータにおける下地の滞留時間に関連して急速に変えることができる。ヒータは、下地の反対側に熱を供給する第2熱源配列を含んでもよい。
【0006】
別の態様では、移動する下地の表面を被覆するための装置は、プラズマ・アークの配列と、プラズマ・アークの配列の上流に位置する複数の第1試薬マニホルドと、プラズマ・アークの配列の下流に位置する複数の第2試薬マニホルドとを含む。各マニホルドは少なくとも1つの開口を有し、この開口を通って試薬が、このマニホルドに関連するアークから出るプラズマ・ジェットの中に射出される。制御装置は、下地の輪郭に従って、及びアーク配列に対する下地の位置に従って、各マニホルドへの試薬の流量を調整する。試薬マニホルドとプラズマ・アークの第2形態を、下地の反対表面を被覆するために使用してもよい。
【0007】
更なる特色及び利点は、下記の説明及び特許請求の範囲から容易に明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施例による下地を被覆するためのシステムを示す図である。
【図2】図1のシステムを通って進む、間隔材を伴った下地を示す図である。
【図3A】本発明の一実施例による図1のシステムの被覆ステーションを示す図である。
【図3B】図3Aの被覆ステーションの線3B−3Bに沿って取った図である。
【図4】本発明の一実施例による図3A及び図3Bの被覆ステーションのためのバルブ・システムを備えた試薬マニホルド・セグメントを示す図である。
【図5A】本発明の一実施例による図1のシステムの微調整ヒータを示す図である。
【図5B】図5Aのヒータの線5B−5Bに沿って取った図である。
【図6A】本発明の一実施例による図1のシステムの粗調整ヒータを示す図である。
【図6B】図6Aの粗調整ヒータの線6B−6Bに沿って取った図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで図1を参照すると、本発明の一実施例による下地をプラズマ被覆するためのシステム10が示されている。その主要構成部分として、システム10は、被覆ステーション12と、被覆ステーション14と、微調整ヒータ16と、被覆ステーション14の入口側に位置する微調整仕上げヒータ18と、微調整ヒータ16の入口側に位置する粗調整ヒータ20とを含む。
【0010】
更に図2を参照すると、システム10の様々な構成が、活性試薬を、又はある実行例では複数の活性試薬を、下地が被覆ステーション12、14を通って進むときに、下地22の片側又は両側に衝突させることを必然的に伴う。下地22を、車両の後窓、ルーフ・パネル、又はその他の構成部分にすることができる。下地22をポリカーボネートで作ることができる。ヒータ16及び20は、下地22が被覆ステーション12に入る前に適切な温度になることを保証し、ヒータ18は下地22を再加熱して、次の被覆ステーション14に入る前の通過中に、あらゆる熱損失を取り戻す。
【0011】
各下地22は、タブ24によってコンベヤ・システムに取り付けられる。ある実行例では、間隔材26も一組のタブ28によってコンベヤ・システムに取り付けられる。代替案として、下地22をそれぞれの間隔材26に取り付けることができる。
【0012】
間隔材26は、これが下地22の縁部の事実上延長部であるように接近して離隔している。間隔材は、下地22の周りに境界を形成する例えばポリカーボネート又はアルミニウムから作られた、使い捨て又は再使用可能な部分である。このような構成では、間隔材26は外部の熱及び試薬のコレクタとして作用する。したがって、間隔材の使用は、下地全体にわたる均一の温度と被覆厚を助長する。ある実施例では、下地22全体にわたる温度は、被覆ステーション12の入口において約65℃±10℃であり、被覆厚は、コンベヤ・システムが下地(及び任意に間隔材)を約2.5cm/秒の速度でシステム10を通じて移動させるとき、被覆ステーション14の後で約2μm〜3μmである。試薬をマニホルド内へ連続的に流すことは、結果的に下地間における材料の浪費となる。更に、この連続流は余分の清浄化及び保守の負担を生み出す。
【0013】
システム10の様々な実施例は、下地の縁部における比較的厚いプラズマ被覆の傾向を減らすことができ、より大きな被覆厚は下地22の中央に関して発生する傾向がある。被覆厚のための好ましい範囲(すなわち、耐摩耗性を妥協して薄過ぎず、及び水中浸漬性能を妥協して厚過ぎない範囲)があるので、被覆工程を更に強いものにするように下地にわたる厚さの変化を最小にすることが望ましい。縁部における比較的厚い被覆は、下地の端部における水中浸漬性能の強さを弱める可能性のある寄与要素である。
【0014】
更に、システム10は、連続する下地の間に隙間があるときに、被覆ステーション12、14の真空室壁の上の(及び間隔材26が使用されるときには間隔材26の上の)外部の試薬を最小に抑える。このことは、連続する下地の輪郭が異なるために、又は複雑な形状を受け入れるか又は定置式加熱ステップと走査式被覆ステップとの組合せを受け入れるべく下地運搬システムが下地の独立した動き又は連接を提供するために、連続する下地の隣接する前縁部と後縁部が入れ子状に重ならないときに起る。
【0015】
次に図3A及び図3Bを参照すると、各被覆ステーション12、14は、両側に複数の例えば6つのプラズマ・アーク30を有する1つの真空室を含む。各ステーション12、14は、例えば一対のアークに付属する上流試薬マニホルド・セグメント32と下流試薬マニホルド・セグメント34とを更に含む。したがって、被覆ステーション室の両側には、3つの上流試薬マニホルド・セグメント32と3つの下流試薬マニホルド・セグメント34が設けられている。被覆ステーション12、14の様々な実施例は、互いに独立してマニホルド・セグメント32、34を通じて試薬を射出することを含んでいる。一組の酸素マニホルド・セグメント35も又、それぞれのマニホルド・セグメント32、34に付属している。酸素マニホルド・セグメント35を個別にオン及びオフに切り替えるために簡単な制御機構を使用することができ、或いは2つ又はそれ以上の酸素マニホルド・セグメント35の組合せを共に操作することができる。
【0016】
図3Bに示すように、前進する下地22の前縁部37aは先ず上流マニホルド・セグメント32を、次いでアーク30の配列を、最後に下流マニホルド・セグメント34を通り、後縁部37bは下流マニホルド・セグメント34のそばを通る下地22の最後の部分である。アーク30は通常アルゴンなどの不活性ガスを供給され、不活性ガスは部分イオン化点まで加熱されて、(それぞれのアークから)被覆しようとする下地に向うジェットとして真空室の中に噴出する。試薬は蒸気の形で、それぞれのアークに隣接するマニホルド・セグメント32及び34の上に分散された射出開口によって、制御された速度でアークと下地との間に導入される。制御装置40(図4)が、下地22の前縁部及び後縁部の側面形状に従って12個のマニホルド・セグメントが互いに独立して動作できるように、上流及び下流マニホルド・セグメント32、34の動作を指図する。
【0017】
制御装置40は、特定のマニホルド・セグメントに対する下地縁部の位置に従って、それぞれの個別マニホルド・セグメント32、34への試薬の流れを調整する。具体的には、制御装置40は、各マニホルド・セグメントに付属する三方弁42の動作を指図する。弁42は、複数のマニホルド・セグメントによって導管45及び47を介してそれぞれのマニホルド・セグメントに分けられるリザーバ44からの気化した試薬を向けるか、又は付属のマニホルド・セグメントから試薬を逸らせて、リザーバ44からの試薬の流れが妨げられずに連続している間に、マニホルド・セグメント32、34及び付属のジェットへの試薬の流れを急速に変調する。逸れた流れを、導管49を介して比較的低温の凝縮容器46の中に向けることができ、この凝縮容器も複数のマニホルド・セグメントによって分割され、試薬蒸気を凝縮し、この蒸気は次に任意の導管51を介して一次液体試薬リザーバ44の中に再循環することができる。要するに弁42は、リザーバ44からマニホルド・セグメントへの又は再循環のための凝縮容器46への連続試薬流を指図することによって、それぞれの個別マニホルド・セグメント32又は34への試薬の流れを調整する。(点線で示された)真空室の壁に弁を近接させることは、蒸気流が凝縮容器46に切り替えられた直後に、弁42とマニホルド・セグメントの間の気化した残留試薬の容積を最小に抑えることを意図している。残留蒸気は、弁42が切り替えられて流れをマニホルド32又は34から逸らせた後に、マニホルドの中に流れ続けることができ、このことは、残留蒸気の流れは流れ調整手段の有効応答速度を制限する傾向があるので望ましくないことがある。リザーバ44及び凝縮容器46を複数のマニホルド・セグメントによって分割されているとして上で説明しているが、リザーバ44及び凝縮容器46を単一マニホルド・セグメントによってまとめることができる。
【0018】
こうして、システム10は、下地の前端部又は後端部がそれぞれの配列のアーク30の前方を交差するとき、特定のプロトコルに従って上流及び下流マニホルドへの試薬の流れを調整することによって、下地の縁部における過剰被覆を減らすか、又は最小にする。試薬は、下地が存在するときにのみマニホルドに流れ、縁部被覆中は被覆先駆物質の流束を減少させ、被覆先駆物質が下地の片側から発して反対側に達する機会を制限する。個別のマニホルドに対する局部的な縁部の位置に置き換えて表現される個別切り替え事象の最適なタイミングを、経験的に決定することができる。したがって、十分な正確さと分解能を伴って下地の位置を追跡することは単に機器設計の問題であるから、所望のタイミングを容易に実行することができる。
【0019】
したがってシステム10は、被覆ステーション12、14の真空室の壁上、並びに間隔材が使用されている場合は間隔材の上の外側被覆を最小にする。そのわけは、連続する下地の間に隙間があるときは試薬が凝縮容器46へ逸れるからであり、これは、室壁を清浄する(及び間隔材が使用される場合は間隔材を清浄する)頻度を最小にし、試薬の利用を最大にする。上述のように、システム10はプラズマ被覆厚の均一性を向上し、プラズマ被覆工程を、被覆厚の上限規格及び下限規格に関して更に強いものにする。
【0020】
図示された実施例に示すように、各被覆ステーションは6つの上流マニホルド・セグメント及び6つの下流マニホルド・セグメントを含む。しかし、適用に応じて、各ステーションはより多いか又はより少ないセグメントを含んでもよい。マニホルドは下地縁部の様々な輪郭を受け入れるために、セグメントに区分されている。下地の動きの方向を横切る方向に向けられたアーク配列によって、輪郭をつけた下地縁部の様々なセグメントは概ね様々な時間にアーク配列を通る。マニホルドをセグメントに区分することは、所望のプロトコルに従って局部的流れ切り替えを提供する。
【0021】
不均一な下地温度は、下地縁部の選択的な加熱、下地の厚さの変動、及び下地形状の複雑さによって助長されることに留意されたい。しかし、低過ぎる温度は浸水性能を低下させやすく、高過ぎる温度は下地の歪曲と熱的損傷の危険性をもたらすため、被覆工程の下地温度の好ましい範囲がある。したがって、被覆工程をより強くするように下地全体にわたって温度の均一性を最高にすることが望ましい。結果的にシステム10は、被覆工程中の下地温度の均一性を向上することによって、下地全体にわたるプラズマ被覆性能の改善された一貫性を提供する。
【0022】
戻って図1を、並びに図5A及び図5Bを参照すると、微調整ヒータ16と微調整仕上げヒータ18の各々はプログラム式二次元配列の熱源50を含み、これらの熱源50はヒータの対向する壁の各々に位置している。熱源50は制御装置140の指図の下にあり、ヒータにおける下地滞留時間に対して速い応答時間でプログラム可能であり、下地の特性寸法に対して小さなスポット・サイズ(すなわち、下地の加熱される範囲は数インチまでの作動距離にある)を生成する。熱源の速い応答時間によって、下地の制御された加熱は、被覆工程及び更に廃熱の最小化のための所望の下地温度プロファイルを作ることができる。配列として配置されているので、熱源50は通過するか又は定置する下地の上に連続的加熱範囲を投射することができる。
【0023】
任意選択の微調整仕上げヒータ18は、被覆ステーション12及び14間の下地の冷却を補償し、第1被覆ステーション12に対する微調整ヒータ16の役割に類似した、被覆ステーション14用の制御された下地温度プロファイルを提供する。
【0024】
熱源50は、移動又は定置下地のために空間的に分割された加熱を提供し、この加熱は、下地縁部の優先的な加熱と、不均一な下地温度を助長する傾向のある下地固有の特色及び形状の複雑さとを補償する。特に図5Bを参照すると、下地22の各範囲エレメントは熱源50によって加熱されるので、この熱源の瞬間的強度は、この範囲エレメントの所望の局部的温度に従ってプログラミングされた態様で調節される。したがって熱源は、活動化された熱源60によって示されるように、下地が存在するときのみオンに切り替る。
【0025】
被覆工程中のプラズマ・アーク30による下地の加熱も又不均一であるから、ヒータ16及び/又は18の後で下地温度プロファイルを相補的方法で不均一になるようにプログラミングすることによって、この加熱を補償することが望ましい場合があることに留意されたい。例えば、アーク30によって優先的に加熱された下地の領域(例えば、アーク配列まで作動距離が比較的短い凸状表面)では、微調整ヒータ16における、並びに微調整仕上げヒータ18における露出中には、この領域を比較的冷たくしておくことが望ましいことがある。
【0026】
熱源50のプログラム可能な配列の速い応答時間は、個別の下地に関する温度プロファイルの制御を容易にし、連続する下地の特定の特色に従ってこれらを異なって処理することを可能にする。速い応答時間の更なる利点は、下地が存在して投射される熱を吸収するときだけ個別の熱源50が活動するので、ヒータ・パワーの使用がより効果的になり、真空室の、及び間隔材が使用される場合には間隔材の外部加熱が少なくなることである。この利点の重要さは、粗調整ヒータ20から加熱の負担のより多くを取り払ってヒータ16及び18のプログラム可能熱源に移すことによって増加する。ヒータ16及び18は、プラズマ被覆中に下地における温度の均一性を助長し、プラズマ被覆はより強い被覆工程を助長する。更に、被覆対象の下地の両側を、被覆工程の前にそれぞれのプログラム可能熱源配列に露出することができ、すなわち、下地の片側に対する熱源配列50の動作をヒータ16及び18の各々において、反対側の熱源配列の動作とは異なってもよい。
【0027】
熱源配列50の動作(強度並びにオン及びオフ時間サイクルの両方)は完全にプログラム可能であるから、システム10は様々な下地、例えば異なる形状、サイズ、厚さ、及び異なる熱応答を有する異なる材料で作られた下地を受け入れることができる。熱源50のこの特徴は、下地の加熱工程を急速に調整して動力浪費と真空室及び使用されている場合は間隔材の外部加熱とを最小にする従来の熱源とは異なり、被覆中の狭い下地温度範囲を助長するための下地固有のものにすることができる。
【0028】
粗調整ヒータ20の準備は任意選択である。粗調整ヒータ20のためには、速い応答時間と小さなスポット・サイズは必要とされない。したがって、図6A及び図6Bに示すように、粗調整ヒータは例えば、一組の縦方向熱源61と付属の反射器63を含み、これらは特定の温度プロファイルを目標とすることなく、下地温度をある程度まで所望の温度に上げる。粗調整ヒータ20の1つの目的は、微調整ヒータ16におけるプログラム可能熱源50の配列にかかる負担と、ある場合には同配列の下地移動方向の長さとを減少することである。この結果、粗調整ヒータ20は微調整ヒータ16の上流に位置しているので、下地は先ず粗調整ヒータを通過してから、その後に微調整ヒータを通過して進む。
【0029】
システム10は又、例えば下地のプログラム可能微調整ヒータ16への露出の後に続く、及び任意に被覆ステーション12、微調整仕上げヒータ18、及び第2被覆ステーション14の後に続く、一連の赤外線温度センサ62(図1)を使用して、局部的な下地温度の現場測定を提供してもよい。これらの温度測定は、プラズマ被覆工程の前に(及び任意にこの後に)下地温度プロファイルを特徴づける助けになる。このプロファイルを使用して、プログラム可能熱源50の配列プログラムを調節し、プログラムを実際の生産工程の前に特定の下地のために適切なものに確立することができる。代替案として、このプロファイルを生産工程中にモニタリングして、プログラムのリアルタイム調節による所望の温度プロファイルの維持を可能にすることができる。
【0030】
システム10は又、加熱対象の下地の形式と形状を識別し、次いで情報ライブラリ又はデータベースから熱源50の配列のための適切なプログラムを、様々な下地を共通の生産運転において被覆しようとする場合には興味の対象となり得る特色を、呼び出すことができる。
【0031】
ある実行例では、各熱源50のエネルギー出力は約200W〜400Wである。熱源50は約7.62cm(3インチ)から15.24cm(6インチ)まで(中心間)離間できる。必要なエネルギー及びスポット・サイズをもたらす任意の適当なランプを使用することができる。例えば熱源50は石英ランプ又はハロゲン・ランプであってもよい。
【0032】
ある実行例では、下地は定置したままヒータ16、18の中で加熱される。具体的には、コンベヤ・システムが下地をヒータ16、18の中に移動させて、次に下地は、下地の面前で選択された熱源50がオンに切り替ると定置したままになる。この実行例は、制御システムの簡略化、熱源配列の下地移動方向の短縮、したがってシステム10の設置面積の短縮を可能にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地がプラズマ・アーク被覆システムを通って進む際に前記下地を加熱するための装置であって、
二次元配列された複数の第1の熱源にして、該第1の熱源配列の前で下地に熱を供給する、複数の第1の熱源と、
下地のための所定の温度プロファイルに従って前記下地の表面の局部区域を加熱するために、各第1の熱源の動作を制御する制御装置と
を含む、加熱装置。
【請求項2】
二次元配列された複数の第2の熱源を更に含み、前記2つの熱源配列からのエネルギーが、下地が前記2つの熱源配列の前にある時に、前記下地の両側に向けられる、請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
1つの真空室を更に含み、2つの前記熱源配列が前記真空室の両側にそれぞれ位置している、請求項1に記載の加熱装置。
【請求項4】
下地がプラズマ・アーク被覆システムを通って進む際に前記下地を加熱するためのシステムであって、
第1の二次元配列された複数の熱源と第2の二次元配列された複数の熱源とを有する微調整ヒータにして、前記2つの熱源配列からのエネルギーが、前記下地が前記2つの熱源配列の前にある時に前記下地の両側に向けられる微調整ヒータと、
前記下地のための所定の温度プロファイルに従って前記下地のそれぞれの表面の局部区域を加熱するために、各熱源の動作を制御する制御装置と
を含む、加熱システム。
【請求項5】
前記下地が前記微調整ヒータの中に入る前に前記下地を加熱するように位置した粗調整ヒータを更に含む、請求項4に記載の加熱システム。
【請求項6】
第1被覆ステーションと第2被覆ステーションとの間に位置する第2微調整ヒータを更に含み、前記第2微調整ヒータが、第3の二次元配列された複数の熱源と第4の二次元配列された複数の熱源とを含み、前記第3及び第4の熱源からのエネルギーが前記制御装置の指図の下で前記下地の両側に向けられる、請求項4に記載の加熱システム。
【請求項7】
前記下地の前記温度プロファイルの特性を表すように構成された複数の温度センサを更に含む、請求項4又は6に記載の加熱システム。
【請求項8】
下地がプラズマ・アーク被覆システムを通って進む際に前記下地を加熱するための方法であって、
前記下地が二次元配列された複数の熱源配列の前にある時に、前記下地の表面を前記熱源によって加熱する工程と、
前記下地のための所定の温度プロファイルに従って前記下地の前記表面の局部区域を加熱するために、各熱源の動作を制御する工程と
を含む、加熱方法。
【請求項9】
下地がプラズマ・アーク被覆システムを通って進む際に前記下地を加熱するための方法であって、
前記下地を、第1の二次元配列された複数の熱源と第2の二次元配列された複数の熱源とを有する微調整ヒータによって加熱する工程にして、前記2つの熱源配列からのエネルギーが、前記下地が前記熱源配列の前にある時に、前記下地の両側に向けられる工程と、
前記下地のための所定の温度プロファイルに従って前記下地のそれぞれの表面の局部区域を加熱するために、各前記熱源の動作を制御する工程と
を含む、加熱方法。
【請求項10】
各熱源から放出されるエネルギーを、前記制御装置において実行されるプログラムに従って時間と共に変動させる工程を更に含む、請求項8又は9に記載の加熱方法。
【請求項11】
前記加熱する工程は前記下地が被覆ステーションの中に入る前に起る、請求項8又は9に記載の加熱方法。
【請求項12】
前記下地が微調整ヒータの中に入る前に、前記下地を粗調整ヒータによって加熱する工程を更に含む、請求項9に記載の加熱方法。
【請求項13】
第1被覆ステーションと第2被覆ステーションとの間に位置する第2微調整ヒータによって前記基板を加熱する工程を更に含み、前記第2微調整ヒータが第3の二次元配列された複数の熱源と第4の二次元配列された複数の熱源とを含み、前記第3及び第4の熱源からのエネルギーが前記制御装置の指図の下で前記下地の両側に向けられる、請求項9に記載の加熱方法。
【請求項14】
前記下地の前記温度プロファイルを決定する工程を更に含む、請求項9又は13に記載の加熱方法。
【請求項15】
前記制御装置が前記下地の前記温度プロファイルを受け取り、前記熱源からのエネルギー出力を変更し前記下地の前記温度プロファイルを制御する、請求項14に記載の加熱方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【公開番号】特開2011−137237(P2011−137237A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26767(P2011−26767)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【分割の表示】特願2007−524782(P2007−524782)の分割
【原出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(505365404)エクスアテック、エル.エル.シー. (51)
【Fターム(参考)】