説明

プラズマ処理装置およびその運転方法

【課題】真空容器パージ作業時の圧力差による部品の破損を防ぐと共に、真空容器内の処理ガスの残留を抑えることができるプラズマ処理装置およびそのパージ方法を提供する。
【解決手段】プラズマ処理装置の減圧された処理室(V1)226内に側壁の不活性ガス導入用開口233から不活性ガスを導入して、処理室処理室(V1)226内を不活性ガスにより所定の圧力にしたのち、処理用ガスを導入する複数の貫通孔224に連通する処理用ガスの導入経路213、216(V2)に不活性ガスを供給して、複数の貫通孔224から処理室(V1)226内に不活性ガスを導入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
真空容器内に配置された処理室に処理ガスを供給してプラズマを形成し、処理室内のウエハを処理するプラズマ処理装置に係り、前記処理終了後、前記処理室に不活性ガスを供給した後に前記真空容器を大気開放するプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ処理装置などのプラズマ処理装置は、真空状態に減圧した処理容器(以下、真空容器とする)内に処理ガスを供給してプラズマを形成する。そのため、真空容器内をメンテナンスする場合は真空容器内を大気圧に戻した後、該容器を開放してメンテナンスを行う必要がある。
【0003】
上記のように真空容器内を大気圧に戻す方法として、真空容器内に不活性ガスを供給しパージする方法がある。パージとは、容器内や配管内などの雰囲気を不活性ガスによって置換するもので、例えば、真空に保たれている密閉容器内に不活性ガスを供給することによって、容器内を不活性ガス雰囲気に置換、容器内の圧力を上昇させ、容器の大気開放を可能にする。さらに、容器内に有害なガスや反応性ガスがある場合、容器に不活性ガスを供給することにより、容器内雰囲気が不活性ガスに置換されるため、容器内の有害なガスや反応性ガスを容器外に除去する(追い出す)ことができる。
【0004】
この様な方法の従来技術として、特許文献1には、処理ガス供給元と処理ガスの流量を制御するMFC(Mass Flow Controller;流量制御器)との間に不活性ガス供給配管を接続し、これによりMFCおよび処理ガス供給配管、処理室内のパージを行う技術が開示されている。特許文献1に記載の発明は、特に、処理ガス濃度を検出するセンサーを備えており、処理室内のガス濃度を検知することにより、パージ作業の終了を判定する目的を達成しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−216982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した従来のプラズマ処理装置およびそのパージ方法には、以下のような問題があった。プラズマ処理装置は、処理ガス供給元より処理ガス供給配管を介して供給された処理ガスを処理室内に均等に分散して供給させるために、処理室と処理ガス供給配管の間に、複数の小さな孔の開いた部材(以下、シャワープレートとする)を備えている。このシャワープレートは、高周波電源からアンテナを介して放出された電磁波を処理室内に伝播させるために、石英等の誘電体で製作されている。処理室は、このシャワープレートを介して、処理室とシャワープレート上の微小隙間(ガス供給側)の2室に区切られている。
【0007】
メンテナンスを行う際に、不活性ガスによるパージを処理ガス供給配管から実施する場合、シャワープレートの多数の孔はコンダクタンスが小さいため、シャワープレート上の微小隙間の圧力と、処理室の圧力に過大な圧力差が生じ、脆い部材で製作されているシャワープレートが破損する虞がある。
【0008】
前記シャワープレートの破損を防ぐため、処理ガス供給配管から不活性ガスを供給せず、真空容器側面から不活性ガスを供給する方法をとっているが、この方法では処理室内のパージは十分行われるが、前述したようにシャワープレートの多数の孔は直径が小さく、コンダクタンスが小さいため、シャワープレートで処理室と区切られているシャワープレート上の微小隙間や処理ガス供給配管を含む処理ガス供給経路まで不活性ガスが十分に行き届かず、パージが不十分であり、該処理ガス供給経路に処理ガスが残留してしまうことがあった。
【0009】
さらに、処理ガス供給経路は前述したようにパージが不十分であるため、大気開放時に大気より圧力が低い状態すなわち負圧となっており、大気開放時に大気を吸込んでしまうことにより、処理ガス供給経路内の残留処理ガスと大気中の水分により、処理ガス供給経路の腐食が進行する。
【0010】
本発明の目的は、真空容器パージ作業時の圧力差による部品の破損を防ぐと共に、真空容器内の処理ガスの残留を抑えることができるプラズマ処理装置およびそのパージ方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のプラズマ処理装置は、真空容器内に配置された処理室の内部に設置されている試料台の上面に載せられた試料を、この処理室内で形成されたプラズマを用いて処理するプラズマ処理装置であって、前記試料台上方の処理室の上面に配置され、処理用ガスが導入される複数の貫通孔を備えた板部材と、前記処理室の前記試料台下方に配置され、この処理室内のガスが排出される排気口と、この排気口の下方でこれと連通して配置され前記処理室内部を排気するポンプと、前記貫通孔と連通され前記処理用ガスが供給される導入経路と、を備えており、前記処理室の側壁に配置され減圧されたこの処理室内に不活性ガスを供給する不活性ガス導入用開口を備えており、前記不活性ガス導入用開口から前記処理室内に不活性ガスを導入し、且つ、前記処理ガスの導入経路に前記不活性ガスを供給する機構を備えていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のプラズマ処理装置の運転方法は、真空容器内に配置された処理室の内部に設置されている試料台の上面に載せられた試料を、この処理室内で形成されたプラズマを用いて処理し、前記試料台上方の処理室の上面に配置され、処理用ガスが導入される複数の貫通孔を備えた板部材と、前記処理室の前記試料台下方に配置され、この処理室内のガスが排出される排気口と、この排気口の下方でこれと連通して配置され前記処理室内部を排気するポンプと、前記処理室の側壁に配置され、減圧されたこの処理室内に不活性ガスを供給する不活性ガス導入用開口と、前記貫通孔と連通され前記処理用ガスが供給される導入経路と、を備えたプラズマ処理装置の運転方法において、前記処理室内に前記不活性ガス導入用開口から前記不活性ガスが供給された状態で、前記処理ガスの導入経路に前記不活性ガスを供給し、前記貫通孔から前記処理室内に不活性ガスを導入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、真空処理装置の真空容器パージ作業時の圧力差による部品の破損を防止し、真空容器内の処理ガスの残留を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は本発明の実施例1のプラズマ処理装置の構成の概略を示す縦断面図である。
【図2】図2は本発明の実施例2のプラズマ処理装置内への処理ガス供給および不活性ガス供給の構成を示す図面である。
【図3】図3はプラズマ処理後のメンテナンス時の動作流れを示すタイムチャートである。
【図4】図4はプラズマ処理後のメンテナンス時の動作流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の実施例1に係るプラズマ処理装置の構成の概略を示す縦断面図である。図中の高周波電源111、直流電源114、RFバイアス電源117、排気ゲートプレート118、コンダクタンス可変バルブ119、排気ポンプ120、ゲートバルブ126、搬送用ロボット127は、それぞれ図示しないコントローラーによって動作を制御されている。
【0017】
真空容器100の内部には、処理室(V1)101が配置され、その上部には処理室(V1)101内に電磁波を放射して電解を供給する円板状の形状を備えたアンテナ108が、下部にはウエハ128などの非処理対象である基板状の試料がその上面に載置される試料台113が備えられている。また、真空容器100側面には、容器内のパージを実施するための不活性ガス供給元121、不活性ガス供給配管123及び不活性ガス導入用開口129が備えられている。
【0018】
さらに真空容器100は、処理室(V1)101と、ウエハ128を真空容器100内に搬送する搬送用ロボット127を有する搬送室125とを開放あるいは閉鎖して、両者間を連通、遮断するゲートバルブ126を備えている。
【0019】
処理室(V1)101の上部には放電室102が形成される。また、放電室102の上方には、真空容器の蓋を構成する蓋部材109、蓋部材109の内側に配置されたアンテナ108、該アンテナ108の側方および上方で前記放電室を囲むように配置したソレノイドコイル110、およびアンテナ108の下方に配置した天井部材を備える。
【0020】
ソレノイドコイル110の上方には、アンテナ108にUHF帯あるいはVHF帯の高周波を供給する高周波電源111が配置されている。アンテナ108は導電性部材で構成された蓋部材109の内側に配置される。また、アンテナ108と蓋部材109との間には誘電体107を配置する。誘電体107はアンテナ108と蓋部材109間を絶縁するとともにアンテナ108から放出された電磁波を下方の天井部材に伝播する。
【0021】
天井部材は、石英等の誘電体で構成された石英プレート106およびシャワープレート103を備え、石英プレート106とシャワープレート103の間には微小隙間(V2)104がある。蓋部材109の下方で石英プレート106および、シャワープレート103の外周側には下部リング105が配置される。下部リング105には、前記微小隙間(V2)104に処理ガスを供給するためのガス通路が設けられており、処理ガスは、処理ガス供給元122から、処理ガス供給配管124および下部リング105のガス通路を介して、前記微小隙間(V2)104に供給される。前記微小隙間(V2)104に流入した処理ガスは、シャワープレート103に形成された多数の小孔を通して処理室(V1)101内に分散して供給される。
【0022】
シャワープレート103の下方には、放電室内側壁部材112が備えられる。放電室内側壁部材112は、下部リング105およびシャワープレート103の下面に接して配置され、真空容器100内に生成するプラズマに面して放電室102を区画する。
【0023】
処理室(V1)101下方にある試料台113は円筒形状を有しており、試料台113上面上方は誘電体膜に被覆されている。試料台113内部には、同心円状またはら旋状に図示しない流路が配置されており、この流路に温調ユニット115により温度または流量(流速)を調節された冷媒が導入され、試料台113の温度が調節されている。
【0024】
ウエハ128は試料台113上面に載置された状態で、プラズマからの入熱を受けるが、試料台113の温度を調節することで、試料台113に載置されたウエハ128の温度を調節する。また、試料台113とウエハ128との熱伝導を向上するために、試料台113上面の誘電体膜とウエハ128裏面との間には熱伝達性ガス供給元116よりHe等の熱伝達性を有するガスが供給される。
【0025】
さらに、試料台113は、ウエハ128を試料台113に静電気にて吸着させるための直流電源114および処理中に試料台113に載置されたウエハ128表面にイオンを加速させるためのRFバイアス電源117を備えている。
【0026】
試料台113の下方には、処理室(V1)101内のガスやプラズマ、反応生成物を排気するための空間と開口部を備えている。この排出は、前記開口部を開閉する排気ゲートプレート118、開口部に連通する通路上のコンダクタンス可変バルブ119および排気ポンプ120の動作により調整される。
【0027】
このような、プラズマ処理装置に対して、所定の処理を施される対象のウエハ128は、ゲートバルブ126開の状態で搬送用ロボット127上に載せられて、搬送室125から真空容器100内に搬送され、試料台113上面に載置される。
【0028】
搬送用ロボット127が真空容器100外に移動した後、ゲートバルブ126を閉鎖し、次に、直流電源114からの直流電圧により、試料台113上面の載置面上に載置されているウエハ128を静電気で吸着し、保持する。この状態で、熱伝達性ガス供給元116より試料台113上面の誘電体膜とウエハ128裏面との間にHeガスを供給してウエハ128を冷却する。
【0029】
次に、処理ガスが処理ガス供給元122より処理ガス供給配管124を介して、微小隙間(V2)104に導入され、シャワープレート103に形成された多数の小孔を通して処理室(V1)101内へ供給され、アンテナ108およびソレノイドコイル110から供給される電界、磁界により、処理ガスがプラズマ化されプラズマがウエハ128上方に形成される。さらに、RFバイアス電源117により、試料台に高周波電力が印加され、ウエハ128上面上方に形成されたRFバイアスによるバイアス電位とプラズマ電位との電位差によりプラズマ中のイオンをウエハ128上に引き込み、エッチング反応をアシストしつつ、処理が開始される。
【0030】
処理の終了後、プラズマおよびRFバイアスが停止され、直流電源114からの直流電圧の供給が停止され、静電気力が低下、除去される。その後、ゲートバルブ126を開き、搬送用ロボット127により処理済みウエハ128を真空容器100外に搬出し、搬出完了後、ゲートバルブ126を再び閉鎖する。
【0031】
真空容器100内の清掃等のメンテナンスを実施する場合、真空容器100内を大気圧に戻し大気開放するために、不活性ガス供給元121から不活性ガス供給配管123を介して、真空容器100側面の不活性ガス導入用開口129より真空容器100内に不活性ガスを供給しパージ作業を行う。真空容器100内の圧力は圧力計により検知されており、該容器内圧力が大気圧と同等になったら、不活性ガスの供給を止め、大気開放する。なお、図示されていないが、不活性ガス供給配管123を処理ガス供給配管124に接続して、不活性ガスを処理ガス供給配管124を介して微小隙間(V2)104に導入し、シャワープレート103に形成された多数の小孔を通して処理室(V1)101内へ供給することも可能である。
【0032】
前記パージ作業は、真空容器100内を大気圧に戻すだけではなく、真空容器100内に残留した処理ガスを不活性ガスにより置換し、真空容器100内から除去する(追い出す)目的も持っている。残留処理ガスを真空容器100内から確実に除去するには、不活性ガスによる置換効率を上げる必要があるため、「前記パージ作業と同じ手順にてパージ⇔排気ポンプ120による排気」を数回繰り返すサイクルパージを実施する。サイクルパージを実施後、前記パージ作業と同じ手順で、パージ作業を実施し、真空容器100内圧力が大気圧と同等になったら、不活性ガスの供給を止め、容器を大気開放する。
【実施例2】
【0033】
図2は、図1の処理ガス供給経路、不活性ガス供給経路及び不活性ガス導入用開口の構成の様式を示す実施例2である。図中のMFC204、205、206、バルブ207、208、209、211(G1)、219(LV1)、222(LV2)、排気ゲートプレート228、ゲートバルブ229、排気ポンプ232は、それぞれ図示しないコントローラーによって動作を制御されている。
【0034】
処理ガス供給経路は各処理ガス供給元201、202、203、・・・を備え、さらに供給元より供給された処理ガスの流量を調節するMFC204、205、206、・・・およびバルブ207、208、209、・・・を備えている。バルブ207、208、209、・・・を介して、処理ガス供給配管210に導入された処理ガスは、処理ガス供給配管212および処理ガス供給配管213により、真空容器227内に供給される。処理ガス供給配管212にはバルブ(G1)211、処理ガス供給配管213には処理ガス供給系内圧力を検知する処理ガス供給経路内圧力検知用圧力計214を備える。
【0035】
尚、処理ガス供給系とは、図2において、微小隙間(V2)216、下部リング215のガス通路および処理ガス供給配管212、213から構成される、バルブ(G1)211とバルブ(LV2)222より真空容器227側に位置する処理ガス供給経路のことを言う。
【0036】
真空容器227内に設置されている下部リング215にはガス通路が備えられており、処理ガス供給配管213より導入された処理ガスを、シャワープレート224と石英プレート225の間の微小隙間(V2)216に供給する。
【0037】
不活性ガス供給経路は、不活性ガス供給元217、不活性ガス供給元217より供給された不活性ガスを真空容器227内へ導入するための不活性ガス供給配管218、220を備え、さらに不活性ガス供給配管220はバルブ(LV1)219を備えており、真空容器227側面の不活性ガス導入用開口233より不活性ガスを供給する構造となっている。ここで、上記不活性ガスとは、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム等とし、供給方法や供給流量は特に規定しない。また、真空容器227は、処理室(V1)226内圧力を検知する圧力計223を備えている。
【0038】
不活性ガスの供給経路は、前記不活性ガス供給配管218に分岐配管221を備えており、この分岐配管221を処理ガス供給配管213に接続することにより、処理ガス供給経路から、不活性ガスによる真空容器227内のパージを実施できるようになっている。また、分岐配管221はバルブ(LV2)222を備える。
【0039】
処理ガスの真空容器227内への供給は、前述したようにウエハ231が試料台230上に載置された状態で行われる。処理ガス供給元201、202、203、・・・から供給された処理ガスは、MFC204、205、206、・・・により、流量を調整され、バルブ207、208、209、・・・およびバルブ(G1)211を介して、処理ガス供給配管210、212、213内を通過し、真空容器227内の下部リング215のガス通路に導入される。
【0040】
この時、バルブ(LV1)219およびバルブ(LV2)222は閉とし、不活性ガス供給経路に処理ガスが流入しないようにする。処理ガスは下部リング215のガス通路から、微小隙間(V2)216に導入され、その後シャワープレート224の多数の小孔を介して、処理室(V1)226内に、均等に分散して供給される。処理室(V1)226に供給された処理ガスはプラズマ化され、エッチング処理が実施される。
【0041】
メンテナンスのために、真空容器227を大気開放する場合、真空容器227内を不活性ガスでパージする必要があるが、このパージ作業の手順として、まず始めに真空容器227側面の不活性ガス導入用開口233より不活性ガスの供給を行う。
【0042】
不活性ガスの供給を始める前に、処理ガスの供給を停止させるために、バルブ(G1)211は閉じておく。また、ゲートバルブ229および排気用開口を開閉する排気ゲートプレート228を閉じて、真空容器227内を密閉状態にする。
【0043】
不活性ガス供給元217より供給された不活性ガスは、バルブ(LV1)219開、バルブ(LV2)222閉の状態で、不活性ガス供給配管218、220により、真空容器227側面の不活性ガス導入用開口233から真空容器227内に供給され、容器内のパージが開始される。不活性ガスは処理室(V1)226内に流入するが、シャワープレート224の多数の小孔を介して微小隙間(V2)216にも少しずつ流入する。
【0044】
処理室(V1)226内圧力が、圧力P1に達するまで、この状態でパージを続ける。圧力P1は、大気圧より低い圧力であり、処理室(V1)226と微小隙間(V2)216の圧力差が、シャワープレートを破損させることのない範囲に収まるように設定したもので、処理室内圧力検知用圧力計223にて検知する。
【0045】
処理室(V1)226内圧力が圧力P1まで上昇したら、バルブ(LV1)219「閉」、バルブ(LV2)222「開」に切り替え、真空容器227側面の不活性ガス導入用開口233からのパージを終了し、分岐配管221へ不活性ガスを導入することで処理ガス供給経路から真空容器227内のパージ作業を実施する。不活性ガスは、処理ガス供給配管213を通過し、下部リング215のガス通路から微小隙間(V2)216に導入され、シャワープレート224の多数の小孔を介して処理室(V1)226に供給される。
【0046】
処理室(V1)226内の圧力が大気圧と同等になったら、バルブ(LV1)219「閉」、バルブ(LV2)222「閉」とし、不活性ガスの供給を停止し、パージ作業を終了させる。
【0047】
真空容器227内に残留した処理ガスを真空容器227内から確実に除去するには、「前記パージ作業と同じ手順にてパージ⇔排気ポンプ232による排気」を数回繰り返すサイクルパージを実施する。サイクルパージを実施後、前記パージ作業と同じ手順で、パージ作業を実施し容器内圧力が大気圧と同等になったら、不活性ガスの供給を止め、容器を大気開放する。
【0048】
このパージ作業によれば、まず処理室内の圧力が上昇した後に、微小隙間(V2)216の圧力が上昇するため、パージ作業時の処理ガス供給系と処理室(V1)226の圧力差によるシャワープレート224の破損の虞が無く、さらに、処理ガス供給経路からも不活性ガスを供給することで、処理ガス供給経路内の処理ガスの残留が無くなる。
【0049】
また、シャワープレート224の多数の小孔のコンダクタンスは小さいので、処理ガス供給経路から不活性ガスを供給することにより、不活性ガスがシャワープレート224の多数の小孔を介して少しずつ処理室(V1)226に流入するため、処理室(V1)226の圧力が大気圧と同等になったときには、処理ガス供給系の圧力は処理室(V1)226の圧力より高くなっており、大気開放時の処理ガス供給系への大気の吸込みが無くなり配管等の腐食が無くなる。
【0050】
図3は、図1および図2に示す実施例におけるメンテナンス時の動作の流れを示すタイムチャートである。
【0051】
時刻t1にてエッチング処理が終了した後、試料台230上に載置されたウエハ231表面に向けてプラズマ中のイオンを加速させるためにRFバイアス電源117によって試料台230に印加される高周波電力と、高周波電源111によってアンテナ108に供給される高周波と、静電気力によってウエハ231を試料台230に吸着させる静電吸着用直流電源114の直流電圧を停止させる。
【0052】
次に、時刻t2にて処理ガス供給配管212に設置されているバルブ(G1)211を閉じて、処理ガスの供給を停止させ、時刻t3にて、処理室(V1)226内に磁場を生成するソレノイドコイル110のコイル電流を停止させる。さらに、時刻t4にて排気ゲートプレート228、コンダクタンス可変バルブ119および排気ポンプ232の動作により処理室(V1)226内の処理ガス、反応生成物等が排気され圧力が低下する。
【0053】
処理室(V1)226内の排気後、ゲートバルブ229および排気用開口を開閉する排気ゲートプレート228を閉じて、真空容器を密閉状態にする。その後、時刻t5にて不活性ガス供給配管220に設置されているバルブ(LV1)219を「開」、分岐配管221に設置されているバルブ(LV2)222を「閉」で、不活性ガスを真空容器227側面の不活性ガス導入用開口233から処理室(V1)226内に供給しパージ作業を開始する。時刻t6にて処理室(V1)226内圧力が、圧力P1に達したら、バルブ(LV1)219「閉」、バルブ(LV2)222「開」に切り替え、分岐配管221に不活性ガスを流し、処理ガス供給経路から不活性ガスを供給する。
【0054】
時刻t7にて、処理室(V1)226内圧力が大気圧と同等に上昇したら、バルブ(LV1)219「閉」、バルブ(LV2)222「閉」とし、不活性ガスの供給を停止し、パージ作業を終了し、その後、真空容器227を大気開放する。
【0055】
図4は、図3に示す動作の流れを示すフローチャートである。エッチング処理終了(ステップ401)後、RFバイアス電源117による高周波電力、高周波電源111からアンテナ108に供給される高周波およびウエハ128を試料台113表面に静電吸着させる直流電圧114を停止させる(ステップ402)。
【0056】
処理ガス供給配管212に設置されているバルブ(G1)211を閉じ、処理ガスの供給を停止する(ステップ403)。処理ガスの停止と同時に排気ポンプ232の動作により、処理室(V1)226内の処理ガスおよび反応生成物等が排気され、処理室(V1)226は真空状態となる(ステップ404)。排気後、ゲートバルブ229および排気ゲートプレート228を閉じて、真空容器227を密閉状態にする(ステップ405)。
【0057】
ステップ406以降は、サイクルパージを実施する場合と、実施しない場合に分けて説明する。
【0058】
サイクルパージを実施しない場合は、以下の手順でパージ作業を一回だけ実施する。まず、不活性ガス供給配管220に設置されているバルブ(LV1)219を「開」、分岐配管221に設置されているバルブ(LV2)222を「閉」とし、不活性ガス供給配管220により真空容器227側面の不活性ガス導入用開口233から、処理室(V1)226内に不活性ガスを供給し、パージ作業を開始する(ステップ407)。
【0059】
処理室(V1)226内圧力が、圧力P1以上になったら(ステップ408)、LV1を閉、バルブ(LV2)222を「開」に切り替え、処理ガス供給配管213から不活性ガスを真空容器227内に供給し、パージ作業を行う(ステップ409)。
【0060】
処理室(V1)226内圧力が、大気圧以上になったら(ステップ410)、バルブ(LV1)219を「閉」、バルブ(LV2)222を「閉」に切り替え、不活性ガスの供給を停止し、パージ作業を終了する(ステップ411)。パージ作業終了後、容器を大気開放する(ステップ420)。
【0061】
次に、サイクルパージを実施する場合の動作を説明する。まず、パージ作業を繰り返す回数を任意に設定する。ここではn回とする(ステップ412)。ステップ413〜417にてパージ作業を実施する。このパージ作業は、サイクルパージを実施しない場合の手順(ステップ407〜411)と同じ手順で実施する。
【0062】
パージ作業の実施回数が、ステップ412で設定した繰り返し回数n回に達していない場合(ステップ418)は、パージ作業によって不活性ガス雰囲気に置換された処理室(V1)226内を排気ポンプにより排気し、処理室(V1)226内を真空状態にする(ステップ419)。その後、ステップ413〜417のパージ作業を再度実施する。パージ作業実施回数がn回になるまで、「パージ作業⇔排気」を繰り返す。
【0063】
パージ作業実施回数がn回になった場合、サイクルパージを終了する(ステップ418)。サイクルパージ終了後、容器を大気開放する(ステップ420)。
【符号の説明】
【0064】
100 真空容器
101 処理室(V1)
102 放電室
103 シャワープレート
104 微小隙間(V2)
105 下部リング
106 石英プレート
107 誘電体
108 アンテナ
109 蓋部材
110 ソレノイドコイル
111 高周波電源
112 放電室内側壁部材
113 試料台
114 直流電源
115 温調ユニット
116 熱伝達性ガス供給元
117 RFバイアス電源
118 排気ゲートプレート
119 コンダクタンス可変バルブ
120 排気ポンプ
121 不活性ガス供給元
122 処理ガス供給元
123 不活性ガス供給配管
124 処理ガス供給配管
125 搬送室
126 ゲートバルブ
127 搬送用ロボット
128 ウエハ
129 不活性ガス導入用開口
201、202、203、・・・ 処理ガス供給元
201、205、206、・・・ MFC
207、208、209 バルブ
210、212、213 処理ガス供給配管
211 バルブG1
214 処理ガス供給経路内圧力検知用圧力計
215 下部リング
216 微小隙間(V2)
217 不活性ガス供給元
218、220 不活性ガス供給配管
219 バルブ(LV1)
221 分岐配管
222 バルブ(LV2)
223 処理室内圧力検知用圧力計
224 シャワープレート
225 石英プレート
226 処理室V1
227 真空容器
228 排気ゲートプレート
229 ゲートバルブ
230 試料台
231 ウエハ
232 排気ポンプ
233 不活性ガス導入用開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内に配置された処理室の内部に設置されている試料台の上面に載せられた試料を、この処理室内で形成されたプラズマを用いて処理するプラズマ処理装置であって、前記試料台上方の処理室の上面に配置され、処理用ガスが導入される複数の貫通孔を備えた板部材と、前記処理室の前記試料台下方に配置され、この処理室内のガスが排出される排気口と、この排気口の下方でこれと連通して配置され前記処理室内部を排気するポンプと、前記貫通孔と連通され前記処理用ガスが供給される導入経路と、を備えたプラズマ処理装置において、
前記処理室の側壁に配置され減圧されたこの処理室内に不活性ガスを供給する不活性ガス導入用開口を備えており、前記不活性ガス導入用開口から前記処理室内に不活性ガスを導入し、且つ、前記処理ガスの導入経路に前記不活性ガスを供給する機構を備えていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
真空容器内に配置された処理室の内部に設置されている試料台の上面に載せられた試料を、この処理室内で形成されたプラズマを用いて処理するプラズマ処理装置であって、前記試料台上方の処理室の上面に配置され、処理用ガスが導入される複数の貫通孔を備えた板部材と、前記処理室の前記試料台下方に配置され、この処理室内のガスが排出される排気口と、この排気口の下方でこれと連通して配置され前記処理室内部を排気するポンプと、前記貫通孔と連通され前記処理用ガスが供給される導入経路と、を備えたプラズマ処理装置において、
減圧された前記処理室内に前記処理室の側壁に配置された不活性ガス導入用開口から前記不活性ガスを供給してこの処理室を所定の圧力にした後、前記処理ガスの導入経路に前記不活性ガスを供給し、この導入経路内の圧力を前記処理室内の圧力より高くし、前記貫通孔から前記処理室内に不活性ガスを導入する機構を備えていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプラズマ処理装置であって、前記貫通孔からの前記不活性ガスが導入されて前記処理室内の圧力が前記真空容器外の雰囲気の圧力以上になった後、前記処理室内部を開放する機構を備えていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載のプラズマ処理装置であって、前記試料の処理後に前記ポンプにより前記排気口から前記処理室内を排気する動作と、前記排気口を閉じて前記不活性ガス導入用開口から不活性ガスを導入する動作とを繰り返した後、前記貫通孔から不活性ガスを前記処理室内に導入する機構を備えていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項5】
真空容器内に配置された処理室の内部に設置されている試料台の上面に載せられた試料を、この処理室内で形成されたプラズマを用いて処理し、前記試料台上方の処理室の上面に配置され、処理用ガスが導入される複数の貫通孔を備えた板部材と、前記処理室の前記試料台下方に配置され、この処理室内のガスが排出される排気口と、この排気口の下方でこれと連通して配置され前記処理室内部を排気するポンプと、前記処理室の側壁に配置され、減圧されたこの処理室内に不活性ガスを供給する不活性ガス導入用開口と、前記貫通孔と連通され前記処理用ガスが供給される導入経路と、を備えたプラズマ処理装置の運転方法において、
前記処理室内に前記不活性ガス導入用開口から前記不活性ガスが供給された状態で、前記処理ガスの導入経路に前記不活性ガスを供給し、前記貫通孔から前記処理室内に不活性ガスを導入することを特徴とするプラズマ処理装置の運転方法。
【請求項6】
真空容器内に配置された処理室の内部に設置されている試料台の上面に載せられた試料を、この処理室内で形成されたプラズマを用いて処理し、前記試料台上方の処理室の上面に配置され、処理用ガスが導入される複数の貫通孔を備えた板部材と、前記処理室の前記試料台下方に配置され、この処理室内のガスが排出される排気口と、この排気口の下方でこれと連通して配置され前記処理室内部を排気するポンプと、前記処理室の側壁に配置され、減圧されたこの処理室内に不活性ガスを供給する不活性ガス導入用開口と、前記貫通孔と連通され前記処理用ガスが供給される導入経路と、を備えたプラズマ処理装置の運転方法において、
減圧された前記処理室内に前記処理室の側壁に配置された不活性ガス導入用開口から前記不活性ガスを供給してこの処理室を所定の圧力にした後、前記処理ガスの導入経路に前記不活性ガスを供給しこの導入経路内の圧力を前記処理室内の圧力より高くして、前記貫通孔から前記処理室内に不活性ガスを導入することを特徴とするプラズマ処理装置の運転方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載のプラズマ処理装置の運転方法であって、前記貫通孔からの前記不活性ガスが導入され、前記処理室内の圧力が前記真空容器外の雰囲気の圧力と同等または高くされた後、前記処理室内部を開放することを特徴とするプラズマ処理装置の運転方法。
【請求項8】
請求項5乃至7の何れかに記載のプラズマ処理装置の運転方法であって、前記試料の処理後に前記ポンプにより、前記排気口から前記処理室内を排気する動作と前記排気口を閉じて前記不活性ガス導入用開口から不活性ガスを導入する動作とを繰り返した後、前記貫通孔から不活性ガスを前記処理室内に導入することを特徴とするプラズマ処理装置の運転方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−192513(P2010−192513A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32596(P2009−32596)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】