説明

プラズマ処理装置

【課題】原料ガスのリークの抑制と、装置コストの低減化とを図り得るプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】原料ガスに電圧を印加してこれをプラズマ化させるイオン発生部2と、接地電位に接続され、且つ、処理対象物12が配置される処理部3と、イオン発生部2と処理部3とを電気的に絶縁する絶縁部4と、ガス導入口14から導入された原料ガスをイオン発生部2に導くためのガス導入路5とを備えるプラズマ処理装置を用いる。イオン発生部2、絶縁部4、及び処理部3は、これらの接合体の内部にチャンバー1となる空間が設けられるように形成される。ガス導入口14は、処理部3に設けられる。ガス導入路5は、チャンバー1の側壁の内部に形成された孔5a〜5cを備え、ガス導入口14とイオン発生部2とを電気的に絶縁する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャンバー内部に導入された原料ガスをプラズマ化してプラズマ処理を行うプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
イオンエッチング装置、イオンドープ装置といったプラズマ処理装置は、チャンバー内部に導入された原料ガスをプラズマ化し、プラズマ界面からイオンを電気的に引き出し、これを電界によって加速させ、対象物に高速で衝突させる。これによって、対象物に対するエッチングや、対象物へのイオン注入が実行される。
【0003】
チャンバーへの原料ガスの供給は、原料ガスが充填されたガスボンベから配管を介して行われる。また、原料ガスとして、毒性ガスや可燃性ガスが使用されることがあるため、配管には、ガスのリークを防止できることが求められる。具体的には、配管としては、配管部材間を溶接によって接続して得られたステンレス等の金属配管が用いられる。このような金属配管では繋ぎ目がメタルシーリングされているため、ガスのリークの防止効果は高いものとなっている。
【0004】
ところで、金属配管を用いた場合は、チャンバーとガスボンベとが電気的に接続されてしまう。よって、チャンバーの電位を高電位に保持するため、金属配管を用いた場合は、ガスボンベの電位も高電位に保持する必要がある。しかし、ガスボンベを高電位に保持しようとすると、そのための設備が必要となるため、装置コストが増大し、プラズマ処理にかかるコストを押し上げてしまう。また、ガスボンベは、プラズマ処理装置の近くに設置されることが多いことから、特に、ガスボンベに可燃性ガスが充填されている場合にそれを高電位に保持することは、安全性の面で問題である。
【0005】
このような問題を解消するため、配管の途中に、テトラフルオロカーボンやセラミック等で形成された絶縁部材を設けて、ガスボンベとチャンバーとを電気的に絶縁させることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この場合、ガスボンベは接地状態とすれば良いため、ガスボンベの電位を高電位に保持する設備は不必要となり、更に安全性の向上も図られる。
【0006】
ここで、特許文献1に開示のプラズマ処理装置について図5を用いて説明する。図5は、従来のプラズマ処理装置の概略構成を示す断面図である。図5に示すプラズマ処理装置は、表示パネルのアレイ基板を処理対象物32とするイオンドープ装置である。
【0007】
図5に示すように、プラズマ処理装置は、イオン発生部22と、処理部23と、絶縁部24とを備えている。イオン発生部22は、直流電源33に接続されている。処理部23は、接地電位に接続されている。絶縁部24は、セラミック等で形成され、イオン発生部22と処理部23とを電気的に絶縁している。
【0008】
イオン発生部22は、凹部を備え、その内部は空間22aとなっている。また、絶縁部24は環状の形状を有し、環状の部分の内側は空間24aとなっている。更に、絶縁部24の環状の部分は、イオン発生部22の凹部22の開口の周辺と接合する。処理部23は、内部に空洞を備え、この空洞は空間23aとなっている。空間23aの内部には、ステージ33に載置された状態で処理対象物32が配置される。また、処理部23の上方には、開口が設けられており、この開口の周辺は、絶縁部24の環状の部分と接合する。イオン発生部22、絶縁部24、及び処理部23を接合すると、それぞれの空間22a、24a、23aが組み合わさり、一つのチャンバー21が形成される。
【0009】
また、図5に示すように、イオン発生部22には、原料ガスを外部から供給するための供給路22bが形成されている。供給路22bのチャンバー21側の開口には、供給されてきた原料ガスを凹部22a内で拡散させるシャワーヘッド26が取り付けられている。
【0010】
一方、供給路22bの外部側の開口(ガス導入口)には、マスフローコントローラ34を介して、供給路22bに原料ガスを供給するための供給配管25が接続されている。マスフローコントローラ34は、流量計や電磁弁等を備え、ガス流量や圧力の調整に用いられている。原料ガスの圧力は、マスフローコントロー34の上流側ではガスボンベの圧力によって高くなっているが(0.1MPa程度)、その下流側では減圧されて低くなる(100Pa程度)。図5においては、マスフローコントローラ34は外形のみを示している。供給配管25は、金属配管25a及び25cと、これらを絶縁状態に保つ絶縁部材(絶縁配管)25bとで構成されている。金属配管25cは、図示していないが、原料ガスが充填されたガスボンベに接続されている。
【0011】
そして、シャワーヘッド26から原料ガスを拡散させ、フィラメント(図示せず)への通電によって熱電子を放出させることにより、または、RF(Radio Frequency)電力等の高周波電力の印加により、イオン発生部22の空間22aに供給された原料ガスがプラズマ化し、プラズマ27が発生する。また、絶縁部24には、引出電極28、加速電極29、減速電極30及び接地電極31が配置されている。これらの電極は、無数の貫通孔を設けられたプレート状を呈している。
【0012】
引出電極28には、イオン発生部22と同電位の電位が与えられている。加速電極29には、引出電極28に対してプラス側となる電位が与えられている。また、接地電極31は、処理部23と同電位の電位(接地電位)が与えられている。減速電極30には、接地電極31に対してマイナス側となる電位が与えられている。
【0013】
よって、プラズマ27中のイオンは、引出電極28によって引き出され、加速電極29によって加速される。そして、加速されたイオンは、減速電極30及び接地電極31を通過して、イオンビームとなり、処理対象物32に衝突する。この結果、処理対象物32においてイオンドープが進行する。
【特許文献1】特開平10−275695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、図5に示すように、供給配管25の途中に絶縁配管25bを設ける場合は、部材間の接合部分はOリング等の樹脂製の部材でシーリングすることとなるため、接合部分から原料ガスが外部にリークする可能性がある。また、絶縁配管25bそのものを原料ガスがすり抜けて外部にリークする可能性がある。このような原料ガスのリークが発生すると、リークの程度により原料ガスの浪費によるコストの増大や、原料ガスの供給量の低下による品質異常の発生といった問題が生じる可能性がある。また、原料ガスのリークの発生によって絶縁配管25bの内部の圧力が低下した場合、絶縁配管25bの内部で放電(異常放電)が生じる可能性がある。
【0015】
また、リークした際の安全性を確保すべく、図5に示す例では、絶縁部材25b及びその周辺を外界から遮蔽する真空室34を設けて、二重配管構造としている。更に、この二重配管の内側の管と外側の管との間を真空引きするための排気装置(図示せず)も設けられている。
【0016】
しかしながら、このような真空室34や排気装置を設けるのであれば、結果的に、ガスボンベを高電位に保持する場合と同程度に、装置コストがかかってしまう。この場合、プラズマ処理にかかるコストの低減は困難となる。
【0017】
本発明の目的は、上記問題を解消し、原料ガスのリークの抑制と、装置コストの低減化とを図り得るプラズマ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明におけるプラズマ処理装置は、チャンバーを備えるプラズマ処理装置であって、原料ガスに電圧を印加してこれをプラズマ化させるイオン発生部と、接地電位に接続され、且つ、処理対象物が配置される処理部と、前記イオン発生部と前記処理部とを電気的に絶縁する絶縁部と、ガス導入口から導入された前記原料ガスを前記イオン発生部に導くためのガス導入路とを備え、前記イオン発生部、前記絶縁部、及び前記処理部は、これらが接合されたときに、その接合体の内部に前記チャンバーとなる空間が設けられるように形成され、前記ガス導入口は、前記処理部に設けられ、前記ガス導入路は、前記チャンバー内部に設けられた配管、又は、前記チャンバーの側壁の内部に形成された孔を備え、且つ、前記ガス導入口と前記イオン発生部とを電気的に絶縁していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明におけるプラズマ処理装置では、ガス導入口からイオン発生部への原料ガスの供給は、これらを電気的に絶縁するガス導入路を介して行われており、従来のように、装置の外側にある供給配管に絶縁部材を設ける必要はない。また、ガス導入路は、プラズマ処理装置自体によって外界から遮蔽され、更に、上記の電気的絶縁も外界から遮蔽されていることから、従来のような原料ガスのリークは抑制される。
【0020】
よって、本発明におけるプラズマ処理装置では、ガスボンベを接地状態とする場合であっても、装置への原料ガスの供給は金属配管のみで行うことができる。このことから、本発明におけるプラズマ処理装置によれば、装置の外部に付帯設備を設けることなく原料ガスのリークを抑制でき、装置コストの低減化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明におけるプラズマ処理装置は、本発明におけるプラズマ処理装置は、チャンバーを備えるプラズマ処理装置であって、原料ガスに電圧を印加してこれをプラズマ化させるイオン発生部と、接地電位に接続され、且つ、処理対象物が配置される処理部と、前記イオン発生部と前記処理部とを電気的に絶縁する絶縁部と、ガス導入口から導入された前記原料ガスを前記イオン発生部に導くためのガス導入路とを備え、前記イオン発生部、前記絶縁部、及び前記処理部は、これらが接合されたときに、その接合体の内部に前記チャンバーとなる空間が設けられるように形成され、前記ガス導入口は、前記処理部に設けられ、前記ガス導入路は、前記チャンバー内部に設けられた配管、又は、前記チャンバーの側壁の内部に形成された孔を備え、且つ、前記ガス導入口と前記イオン発生部とを電気的に絶縁していることを特徴とする。
【0022】
また、上記本発明におけるプラズマ処理装置は、前記処理部における前記チャンバーの側壁となる部分の内部に、一方の開口が前記ガス導入口となり、且つ、他方の開口が前記絶縁部に対向する第1の孔が形成され、前記絶縁部における前記チャンバーの側壁となる部分の内部に、一方の開口が前記第1の孔に整合し、且つ、他方の開口が前記イオン発生部に対向する第2の孔が形成され、前記イオン発生部における前記チャンバーの側壁となる部分の内部に、一方の開口が前記第2の孔に整合し、且つ、他方の開口が前記チャンバーの内部に面する第3の孔が形成され、前記ガス導入路が、前記第1の孔、前記第2の孔、及び前記第3の孔によって形成され、前記第2の孔が、前記ガス導入口と前記イオン発生部とを電気的に絶縁している態様とすることもできる。
【0023】
上記態様では、前記第2の孔は、その全長が、前記イオン発生部から前記処理部へと向かう方向における前記絶縁部の長さよりも長くなるように形成されているのが好ましい。この場合は、ガス導入路の絶縁性の部分の長さが長くなり、ガス導入路における絶縁性が高いものとなる。この結果、ガス導入路内部での放電発生の抑制効果や、放電が発生した場合の絶縁破壊の抑制効果を高めることができ、装置の安定性及び安全性の向上が図られる。
【0024】
更に、上記本発明におけるプラズマ処理装置は、前記ガス導入路が、前記チャンバー内部に設けられ、且つ、前記ガス導入口に連通する配管を備え、前記配管の一部又は全部が、絶縁性の部材によって形成され、前記絶縁性の部材が、前記ガス導入口と前記イオン発生部とを電気的に絶縁している態様とすることもできる。
【0025】
上記態様では、前記絶縁性の部材は、その前記配管の長手方向における長さが、前記イオン発生部から前記処理部へと向かう方向における前記絶縁部の長さよりも長くなるように形成されているのが好ましい。この場合は、チャンバー内部に設けられた配管における絶縁性の部分の長さが十分に長くなり、配管の絶縁性が高いものとなる。この結果、配管内部での放電発生の抑制効果や、放電が発生した場合の絶縁破壊の抑制効果を高めることができ、装置の安定性及び安全性の向上が図られる。
【0026】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置について、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置の概略構成を示す断面図である。本実施の形態1において、プラズマ処理装置は、表示パネルのアレイ基板を処理対象物12とするイオンドープ装置であり、チャンバー1を備えている。
【0027】
図1に示すように、本実施の形態1におけるプラズマ処理装置は、背景技術において図5に示したプラズマ処理装置(以下「従来例」という。)と同様に、イオン発生部2と、処理対象物が配置される処理部3と、絶縁部4とを備えている。イオン発生部2は、導電性を備え、直流電源19に接続されている。処理部3も、導電性を備えている。処理部3は、接地電位に接続されている。絶縁部4は、イオン発生部2と処理部3とを電気的に絶縁している。
【0028】
また、イオン発生部2、絶縁部4、及び処理部3は、イオン発生部2と処理部3とで絶縁部4を挟み込んだ状態で接合される。そして、これらは、接合されたときに、その接合体の内部にチャンバー1となる空間が設けられるように形成されている。
【0029】
具体的には、イオン発生部2は、凹部を備え、その内部は空間2aとなっている。絶縁部4は、環状の形状を有し、環状の部分の内側は空間4aとなっている。また、絶縁部4の環状の部分は、イオン発生部2の凹部の開口の周辺と接合する。処理部3は、内部に空洞を備え、この空洞は空間3aとなっている。空間3aの内部には、処理対象物12が配置される。
【0030】
また、処理部3の上方には、開口が設けられており、この開口の周辺も絶縁部4の環状の部分と接合する。イオン発生部2、絶縁部4、及び処理部3を接合すると、それぞれの空間2a、4a、3aが組み合わさり、一つのチャンバー1が形成される。本実施の形態1において、処理対象物12は、空間3aの底面に配置されたステージ13の上に載置される。
【0031】
また、空間2a内には、原料ガスを供給するシャワーヘッド6が配置されており、原料ガスは空間2a内に拡散した状態で供給される。更に、空間2aと空間3aとの間の空間(絶縁部4の内側の空間)4aには、引出電極8、加速電極9、減速電極10及び接地電極11が配置されている。これらの電極は、無数の貫通孔を設けられたプレート状を呈している。
【0032】
よって、直流電源19からイオン発生部2に電圧を印加すると、イオン発生部2に供給された原料ガスがプラズマ化し、プラズマ7が発生する。そして、プラズマ7から引き出されたイオンは、本実施の形態1においても、従来例と同様に、上述の電極8〜11によって加速され、イオンビームとなって処理対象物12に衝突する。この結果、処理対象物12においてイオンドープが実行される。
【0033】
このように、本実施の形態1におけるプラズマ処理装置は、従来例と同様の構成を備え、同様の処理を行うことができる。しかしながら、本実施の形態1におけるプラズマ処理装置は、以下の点で従来例と異なっている。
【0034】
本実施の形態1におけるプラズマ処理装置では、ガス導入口14は、イオン発生部2ではなく、処理部3に設けられている。また、プラズマ処理装置は、ガス導入口14から導入された原料ガスをイオン発生部2に導くためのガス導入路5を、外界から遮蔽されたところに備えている。本実施の形態1では、ガス導入路5は、チャンバー1の側壁の内部(即ち、処理部3、絶縁部4及びイオン発生部2のチャンバー1の側壁となっている部分の内部)に形成された孔によって形成されている。
【0035】
具体的には、処理部3におけるチャンバー1の側壁となる部分の内部には、一方の開口がガス導入口14となり、他方の開口が絶縁部4に対向する孔5cが形成されている。絶縁部4におけるチャンバー1の側壁となる部分の内部には、一方の開口が孔5cに整合し、他方の開口がイオン発生部2に対向する孔5bが形成されている。また、イオン発生部2におけるチャンバー1の側壁となる部分の内部には、一方の開口が孔5bに整合し、他方の開口がチャンバー1の内部に面する孔5aが形成されている。
【0036】
ガス導入路5は、これらの孔5a〜孔5cによって構成されている。また、イオン発生部2に設けられた孔5aに、シャワーヘッド6の導入側の端部が挿入されている。更に、孔5bは、絶縁部4に設けられていることから、孔5bによって、ガス導入口14とイオン発生部2とは電気的に絶縁される。
【0037】
よって、本実施の形態1においては、従来例のようにプラズマ処理装置の外部に絶縁部材25b(図5参照)を設けなくても、原料ガスの供給元のガスボンベ(図示せず)とイオン発生部2とを電気的に絶縁することができる。つまり、ガスボンベとガス導入口14とを接続する供給配管15として、金属製の配管のみを用いることができるので、供給配管15からの原料ガスのリークを抑制できる。更に、本実施の形態1では、チャンバー1の内部は、真空又はそれに近い状態となるため、ガス導入路5で原料ガスのリークが生じたとしても、リークした原料ガスはチャンバー1内へと流れる。
【0038】
このように、本実施の形態1によれば、従来例のような排気設備を設けることなく、外部への原料ガスのリークを抑制できる。更に、排気設備や、ガスボンベを高電位に保持するための設備が必要ないことから、従来例に比べて、装置コストの低減化を図ることができる。
【0039】
本実施の形態1においても、背景技術において図5に示した例と同様に、供給配管15は、マスフローコントローラ18を介して、ガス導入口14に接続されている。マスフローコントローラ18は、流量計や電磁弁等を備え、ガス流量や圧力の調整に用いられている。また、マスフローコントローラ18の下流側の原料ガスの圧力は減圧され、上流側の原料ガスの圧力よりも低くなっている。図1においても、マスフローコントローラ18は外形のみを示している。
【0040】
また、本実施の形態1においては、ガス導入路5における絶縁性を高めるため、孔5bの全長は出来る限り長くするのが好ましい。これは、上述したようにマスフローコントローラ18の下流側では原料ガスの圧力が低くなることから、原料ガス自体の持つ絶縁性が低下するためである。この点について図2を用いて説明する。
【0041】
図2は、本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置の他の例の一部を示す断面図である。図2の例では、孔5bは絶縁部4に対して斜めに形成されており、孔5bの全長L1は、イオン発生部2から処理部3へと向かう方向(上下方向)における絶縁部4の長さTよりも長くなっている。なお、孔5bの全長L1とは、孔5bの一方の開口面と中心軸との交点から、他方の開口面と中心軸との交点までの長さをいう。
【0042】
このように、図2の例では、ガス導入路の絶縁性の部分の長さが長くなり、図1の例に比べて、ガス導入路における絶縁性は向上する。この結果、ガス導入路5の内部での放電発生の抑制効果を高めることができる。更に放電が発生した場合の絶縁破壊の抑制効果も高めることができる。図2の例によれば、装置の安定性及び安全性がよりいっそう向上される。
【0043】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2におけるプラズマ処理装置について図3及び図4を参照しながら説明する。図3は、本発明の実施の形態2におけるプラズマ処理装置の概略構成を示す断面図である。図4は、図3に示したプラズマ処理装置の一部分を拡大して示す断面図である。本実施の形態2におけるプラズマ処理装置も、実施の形態1におけるプラズマ処理装置と同様に、表示パネルのアレイ基板を処理対象物12とするイオンドープ装置であり、チャンバー1を備えている。
【0044】
図3に示すように、本実施の形態2におけるプラズマ処理装置は、ガス導入口14から導入された原料ガスをイオン発生部2に導くためのガス導入路5の構成の点で、実施の形態1におけるプラズマ処理装置と異なっている。この点について、以下に説明する。なお、上記の点以外については、本実施の形態2におけるプラズマ処理装置は、実施の形態1におけるプラズマ処理装置と同様である。図3に示された符号のうち、図1においても示されている符号は、図1において当該符号が示すものと同一のものを示している。
【0045】
本実施の形態2においては、ガス導入路5は、チャンバー1の内部に設けられた配管(チャンバー内配管)16と、処理部3の側壁に設けられた貫通孔17とを備えている。貫通孔17の一方の開口はガス導入口14となっている。また、貫通孔17の他方の開口には、チャンバー内配管16が接続されている。チャンバー内配管16は、金属製の配管16a、セラミック等の絶縁性材料で形成された配管16b、及び金属製の配管16cを繋ぎ合わせて形成されている。図3の例では、配管16aは、シャワーヘッド6と一体的に形成されている。
【0046】
本実施の形態2では、チャンバー内配管16の一部を絶縁性の部材によって形成することによって、即ち、配管16bを絶縁性材料で形成することによって、ガス導入口14とイオン発生部2とが電気的に絶縁されている。なお、本実施の形態2においては、チャンバー内配管16は、その全部が絶縁性の部材によって形成されていても良い。
【0047】
よって、本実施の形態2においても、供給配管15として、金属製の配管のみを用いることができるので、供給配管15からの原料ガスのリークを抑制できる。また、チャンバー内配管16から原料ガスがリークしても、チャンバー内配管16はチャンバー1の内部に配置されているため、リークした原料ガスが外部に漏れる可能性は極めて低くなっている。
【0048】
このように、本実施の形態2による場合も、実施の形態1の場合と同様に、従来例のような排気設備を設けることなく、外部への原料ガスのリークを抑制できる。更に、排気設備や、ガスボンベを高電位に保持するための設備が必要ないことから、従来例に比べて、装置コストの低減化を図ることができる。
【0049】
また、本実施の形態2においては、図3及び図4に示すように、絶縁性材料で形成された配管16bは、その長手方向における長さL2が、絶縁部4における上下方向の長さTよりも長くなるように形成されているのが好ましい。これは、チャンバー内配管16における絶縁性の部分の長さを十分に長くして、チャンバー内配管16の絶縁性を高いものとするためである。この場合、チャンバー内配管16内部での放電発生の抑制効果や、放電が発生した場合の絶縁破壊の抑制効果が高められ、装置の安定性及び安全性の向上が図られる。
【0050】
実施の形態1及び2において、プラズマ処理装置はイオンドープ装置であるが、本発明はこのような例に限定されるものではない。本発明においては、プラズマ処理装置は、チャンバーを備え、チャンバー内でプラズマを発生させる装置であれば良い。その他の例としては、イオン注入装置、イオンビームエッチング装置、イオンビーム蒸着装置、イオンビームスパッタリング装置等が挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上のように、本発明によれば、プラズマ処理に用いられる原料ガスの外部へのリークを抑制でき、更に、装置コストの低減化も図ることもができる。このことから、本発明のプラズマ処理装置は、産業上の利用可能性を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置の他の例の一部を示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態2におけるプラズマ処理装置の概略構成を示す断面図である。
【図4】図4は、図3に示したプラズマ処理装置の一部分を拡大して示す断面図である。
【図5】図5は、従来のプラズマ処理装置の概略構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 チャンバー
2 イオン発生部
3 処理部
4 絶縁部
5 ガス導入路
5a〜5c 孔
6 シャワーヘッド
7 プラズマ
8 引出電極
9 加速電極
10 減速電極
11 接地電極
12 処理対象物
13 ステージ
14 ガス導入口
15 供給配管
16 チャンバー内配管
16a、16b 金属製の配管
16c 絶縁性材料で形成された配管
17 貫通孔
18 マスフローコントローラ
19 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバーを備えるプラズマ処理装置であって、
原料ガスに電圧を印加してこれをプラズマ化させるイオン発生部と、接地電位に接続され、且つ、処理対象物が配置される処理部と、前記イオン発生部と前記処理部とを電気的に絶縁する絶縁部と、ガス導入口から導入された前記原料ガスを前記イオン発生部に導くためのガス導入路とを備え、
前記イオン発生部、前記絶縁部、及び前記処理部は、これらが接合されたときに、その接合体の内部に前記チャンバーとなる空間が設けられるように形成され、
前記ガス導入口は、前記処理部に設けられ、
前記ガス導入路は、前記チャンバー内部に設けられた配管、又は、前記チャンバーの側壁の内部に形成された孔を備え、且つ、
前記ガス導入口と前記イオン発生部とを電気的に絶縁していることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記処理部における前記チャンバーの側壁となる部分の内部に、一方の開口が前記ガス導入口となり、且つ、他方の開口が前記絶縁部に対向する第1の孔が形成され、
前記絶縁部における前記チャンバーの側壁となる部分の内部に、一方の開口が前記第1の孔に整合し、且つ、他方の開口が前記イオン発生部に対向する第2の孔が形成され、
前記イオン発生部における前記チャンバーの側壁となる部分の内部に、一方の開口が前記第2の孔に整合し、且つ、他方の開口が前記チャンバーの内部に面する第3の孔が形成され、
前記ガス導入路が、前記第1の孔、前記第2の孔、及び前記第3の孔によって形成され、前記第2の孔が、前記ガス導入口と前記イオン発生部とを電気的に絶縁している請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記ガス導入路が、前記チャンバー内部に設けられ、且つ、前記ガス導入口に連通する配管を備え、
前記配管の一部又は全部が、絶縁性の部材によって形成され、前記絶縁性の部材が、前記ガス導入口と前記イオン発生部とを電気的に絶縁している請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記絶縁性の部材は、その前記配管の長手方向における長さが、前記イオン発生部から前記処理部へと向かう方向における前記絶縁部の長さよりも長くなるように形成されている請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記第2の孔は、その全長が、前記イオン発生部から前記処理部へと向かう方向における前記絶縁部の長さよりも長くなるように形成されている請求項3に記載のプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−270493(P2008−270493A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−110864(P2007−110864)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】