説明

プラズマ処理装置

【課題】 平面導体を大型にしても、そのインピーダンスの増大を抑えて当該平面導体に大きな電位差が発生するのを抑え、それによって均一性の良いプラズマ生成を可能にする。
【解決手段】 このプラズマ処理装置は、ホルダ側の面32が真空容器4内に位置しかつホルダ10の基板保持面に対向するように設けられた平面導体30を備えている。平面導体30は、そのホルダ側の面32に、高周波電流の流れ方向と交差する方向に伸びている溝40であってその深さが、平面導体30中を流れる高周波電流の表皮厚さよりも大きい溝40を、高周波電流の流れ方向に1以上有していて、溝40によってホルダ側の面32は複数領域に分割されている。平面導体30の各溝40内にコンデンサ42をそれぞれ設けて、平面導体30の前記各領域と各コンデンサ42とを互いに電気的に直列接続している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プラズマを用いて基板に、例えばCVD法による膜形成、エッチング、アッシング、スパッタリング等の処理を施すプラズマ処理装置に関し、より具体的には、導体に高周波電流を流すことによって発生する誘導電界によってプラズマを生成し、当該プラズマを用いて基板に処理を施す誘導結合型のプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平面導体(平板状の高周波アンテナ導体)を真空容器の開口部に絶縁枠を介して取り付け、当該平面導体の一端と他端間に高周波電源から高周波電力を供給して高周波電流を流し、それによって発生する誘導電界によってプラズマを生成し、当該プラズマを用いて基板に処理を施す誘導結合型のプラズマ処理装置が特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第WO 2009/142016号パンフレット(段落0024−0026、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のプラズマ処理装置においては、大型の基板に対応するために、平面導体を大型にすると、当該平面導体のインピーダンス(特にインダクタンス)が大きくなり、それによって平面導体の両端に大きな電位差が発生する。その結果、この大きな電位差の影響を受けて、プラズマの密度分布、電位分布、電子温度分布等のプラズマの均一性が悪くなり、ひいては基板処理の均一性が悪くなる。
【0005】
そこでこの発明は、平面導体を大型にしても、そのインピーダンスの増大を抑えて当該平面導体に大きな電位差が発生するのを抑え、それによって均一性の良いプラズマ生成を可能にすることを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る第1のプラズマ処理装置は、導体に高周波電流を流すことによって発生する誘導電界によってプラズマを生成し、当該プラズマを用いて基板に処理を施すプラズマ処理装置であって、真空排気されかつガスが導入される真空容器と、前記真空容器内に設けられていて基板を保持するホルダと、ホルダ側の面が前記真空容器内に位置しかつ前記ホルダの基板保持面に対向するように設けられた平面導体と、前記平面導体に高周波電力を供給して前記平面導体に高周波電流を流す高周波電源とを備えており、前記平面導体は、その前記ホルダ側の面に、前記高周波電流の流れ方向と交差する方向に伸びている溝であってその深さが、前記平面導体中を流れる前記高周波電流の表皮厚さよりも大きい溝を、前記高周波電流の流れ方向に1以上有していて、当該溝によって前記ホルダ側の面は複数領域に分割されており、かつ前記平面導体の前記各溝内にコンデンサをそれぞれ設けて、前記平面導体の前記各領域と当該各コンデンサとを互いに電気的に直列接続している、ことを特徴としている。
【0007】
このプラズマ処理装置においては、平面導体のホルダ側の面のインダクタンスは、当該面に設けた上記溝によって複数の領域のインダクタンスに分割される。そしてこの分割されたインダクタンスに、上記コンデンサが直列接続された回路となる。この直列回路のインピーダンスを構成する合成リアクタンスは、簡単に言えば、誘導性リアクタンスωLから容量性リアクタンス1/ωCを引いた形となるので、平面導体に上記溝およびコンデンサを設けない場合に比べて、平面導体のホルダ側の面のインピーダンスを低下させることができる。
【0008】
その結果、平面導体を大型にしても、そのインピーダンスの増大を抑えて当該平面導体に大きな電位差が発生するのを抑え、それによって均一性の良いプラズマを生成することができる。ひいては、基板処理の均一性を高めることができる。
【0009】
前記平面導体の前記各溝内の空間を絶縁物で埋めていても良い。
【0010】
前記平面導体の前記各溝内に前記コンデンサを設ける代わりに、当該各溝内に誘電体を充填することによって、当該各溝内にコンデンサをそれぞれ形成していても良い。
【0011】
前記平面導体の前記各領域のインダクタンスおよび前記各コンデンサの静電容量は、前記プラズマの生成時に、前記高周波電流の周波数において、直列共振条件を満たすものであっても良い。
【0012】
前記溝およびコンデンサを有する前記平面導体を複数備えていてこれらは互いに直列に配置されており、当該各平面導体を接続コンデンサを介して電気的に直列接続して、当該複数の平面導体に前記高周波電源から高周波電力を直列に供給するように構成していても良い。
【0013】
前記溝およびコンデンサを有する前記平面導体を複数備えていてこれらは互いに並列に配置されており、当該各平面導体にそれぞれ直列に接続された可変インピーダンスを介して、当該複数の平面導体に前記高周波電源から高周波電力を並列に供給するように構成していても良い。
【0014】
前記平面導体の前記ホルダ側の面を前記プラズマから遮蔽するものであって絶縁物から成る遮蔽板を備えていても良い。
【0015】
この発明に係る第2のプラズマ処理装置は、導体に高周波電流を流すことによって発生する誘導電界によってプラズマを生成し、当該プラズマを用いて基板に処理を施すプラズマ処理装置であって、真空排気されかつガスが導入される真空容器と、前記真空容器内に設けられていて基板を保持するホルダと、ホルダ側の面が前記真空容器内に位置しかつ前記ホルダの基板保持面に対向するように設けられた平面導体と、前記平面導体に高周波電力を供給して前記平面導体に高周波電流を流す高周波電源とを備えており、前記平面導体は、その前記ホルダ側の面に、前記高周波電流の流れ方向に沿って並べられた複数の凹部であってその深さが、前記平面導体中を流れる前記高周波電流の表皮厚さよりも大きい凹部から成る凹部列を1列以上有していて、当該凹部列によって前記ホルダ側の面は複数列の導体面に分割されており、前記高周波電源は、前記平面導体の前記複数列の導体面に高周波電力を並列に供給するものであり、更に前記平面導体は、前記各列の導体面のそれぞれに、前記高周波電流の流れ方向と交差する方向に伸びている溝であってその深さが、前記平面導体中を流れる前記高周波電流の表皮厚さよりも大きい溝を、前記高周波電流の流れ方向に1以上有していて、当該溝によって前記各列の導体面は複数領域にそれぞれ分割されており、かつ前記平面導体の前記各溝内にコンデンサをそれぞれ設けて、前記各列の導体面における前記各領域と前記各溝内の前記コンデンサとを互いに電気的に直列接続している、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、平面導体のホルダ側の面のインダクタンスは、当該面に設けた上記溝によって複数の領域のインダクタンスに分割される。そしてこの分割されたインダクタンスに、コンデンサが直列接続された回路となる。この直列回路のインピーダンスを構成する合成リアクタンスは、簡単に言えば、誘導性リアクタンスωLから容量性リアクタンス1/ωCを引いた形となるので、平面導体に上記溝およびコンデンサを設けない場合に比べて、平面導体のホルダ側の面のインピーダンスを低下させることができる。
【0017】
その結果、平面導体を大型にしても、そのインピーダンスの増大を抑えて当該平面導体に大きな電位差が発生するのを抑え、それによって均一性の良いプラズマを生成することができる。ひいては、基板処理の均一性を高めることができる。
【0018】
しかも、平面導体のホルダ側の面、即ちプラズマ生成側の面のインピーダンスを低下させることができるので、当該面に、その反対側の面に比べて優先的に高周波電流を流すことができる。その結果、プラズマ生成に高周波電力を効率良く利用することができ、高周波電力の利用効率ひいては基板の処理効率を高めることができる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば次の更なる効果を奏する。即ち、平面導体の各溝内の空間を絶縁物で埋めているので、各溝内で不要なプラズマが発生するのを防止することができる。それによって、必要なプラズマの不均一性増加、高周波電力の利用効率低下等の不都合発生を防止することができる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば次の更なる効果を奏する。即ち、平面導体の各溝内に前記コンデンサを設ける代わりに、当該各溝内に誘電体を充填することによって当該各溝内にコンデンサをそれぞれ形成しているので、構成を簡素化することができる。更にこの誘電体によって、各溝内に不要なプラズマが発生するのを防止することができる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば次の更なる効果を奏する。即ち、平面導体の各領域のインダクタンスおよび各コンデンサの静電容量は、プラズマの生成時に、高周波電流の周波数において直列共振条件を満たすものであるので、平面導体のホルダ側の面のインピーダンスをより一層低下させることができる。その結果、請求項1について上述した効果をより高めることができる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば次の更なる効果を奏する。即ち、溝およびコンデンサを有する複数の平面導体を接続コンデンサを介して電気的に直列接続して、当該複数の平面導体に高周波電源から高周波電力を直列に供給するように構成しているので、実質的により大型の平面導体を、それよりも小型の平面導体の組み合わせで実現することができる。その結果、より大型の基板処理に対応することができると共に、各平面導体の小型・軽量化により製作、組立て、メインテナンス等の作業性が向上し、輸送も容易になり、かつ製作時のし損じ低減にもつながる。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば次の更なる効果を奏する。即ち、溝およびコンデンサを有する複数の平面導体にそれぞれ直列に接続された可変インピーダンスを介して、当該複数の平面導体に高周波電源から高周波電力を並列に供給するように構成しているので、請求項5について上述した効果と同様の効果を奏する。更に、可変インピーダンスを直列に介在させており、当該可変インピーダンスによって複数の平面導体に流れる高周波電流のバランスを良くすることができるので、生成するプラズマの均一性を良くすることができる。
【0024】
請求項7に記載の発明によれば次の更なる効果を奏する。即ち、遮蔽板によって、プラズマ中の荷電粒子が平面導体等に入射するのを抑制することができるので、平面導体に荷電粒子が入射することによるプラズマ電位の上昇を抑制することができると共に、平面導体等の表面が荷電粒子によってスパッタされてプラズマおよび基板に対して金属汚染(メタルコンタミネーション)が生じるのを抑制することができる。
【0025】
請求項8に記載の発明によれば、平面導体のホルダ側の面は凹部列によって複数列の導体面に分割されているので、高周波電流の流れを複数列に分割することができる。その結果、平面導体のホルダ側の面における高周波電流の流路が明確になり、高周波電流の流れを調整しやすくなるので、平面導体を大型にしても、そのホルダ側の面に流れる高周波電流の均一性を良くすることができ、それによってプラズマの均一性を良くすることができる。ひいては基板処理の均一性を高めることができる。
【0026】
しかも、平面導体を複数列に構造的(機械的)に分割する場合に比べて、凹部列によって分割する方が、各列の導体面間の隙間を小さくすることができるので、高周波電流の不連続領域を小さくして、プラズマの均一性を良くすることができる。ひいては基板処理の均一性を高めることができる。
【0027】
更に、各列の導体面に溝およびコンデンサを設けていて、平面導体のホルダ側の面のインピーダンスを低下させることができるので、請求項1について上述した効果と同様の効果を奏する。
【0028】
請求項9、10、11、12、13に記載の発明は、それぞれ、請求項2、3、4、6、7に記載の発明と同様の構成を有しているので、これらの請求項について上述した効果と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明に係るプラズマ処理装置の一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1中の平面導体周りを拡大して示す図であり、(A)は断面図、(B)は下面図である。
【図3】図2に示す平面導体のホルダ側の面周りの等価回路図である。
【図4】図3の回路において直列共振条件を満たしている場合の電位分布の一例を示す図である。
【図5】平面導体周りの他の例を示す断面図である。
【図6】平面導体周りの更に他の例を示す下面図である。
【図7】平面導体周りの更に他の例を示す下面図である。
【図8】図7の平面導体とガス供給パイプとの関係の一例を示す下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
この発明に係るプラズマ処理装置の一実施形態を図1に示し、その平面導体周りを拡大して図2に示す。
【0031】
この装置は、平面導体30に高周波電源70から高周波電流を流すことによって発生する誘導電界によってプラズマ60を生成し、当該プラズマ60を用いて基板2に処理を施す誘導結合型のプラズマ処理装置である。
【0032】
基板2は、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)用の基板、フレキシブルディスプレイ用のフレキシブル基板等であるが、これに限られるものではない。
【0033】
基板2に施す処理は、例えば、CVD法等による膜形成、エッチング、アッシング、スパッタリング等である。
【0034】
このプラズマ処理装置は、CVD法によって膜形成を行う場合はプラズマCVD装置、エッチングを行う場合はプラズマエッチング装置、アッシングを行う場合はプラズマアッシング装置、スパッタリングを行う場合はプラズマスパッタリング装置とも呼ばれる。
【0035】
このプラズマ処理装置は、例えば金属製の真空容器4を備えており、その内部は真空排気装置8によって真空排気される。
【0036】
真空容器4内には、その天井面6に設けたガス導入路25およびガス供給パイプ26を通して、ガス24が導入される。ガス供給パイプ26は複数のガス噴出孔28を有しており、これらは上向きに設けられている。その方が、真空容器4内においてガス24を拡散させて基板2の近傍のガス圧を均一化しやすいからである。ガス供給パイプ26は、この実施形態では、図2に示すように、平面導体30の長手方向に沿うものを、平面導体30を短手方向に挟んだ両側に1本ずつ配置している。このようにすれば、平面導体30のホルダ側の面(換言すれば、プラズマ生成側の面。以下同様)32付近にガス24を均一性良く供給することができると共に、ガス供給パイプ26がプラズマ生成の邪魔になるのを防ぐことができる。
【0037】
ガス24は、基板2に施す処理内容に応じたものにすれば良い。例えば、プラズマCVDによって基板2に膜形成を行う場合は、ガス24は、原料ガスを希釈ガス(例えばH2 )で希釈したガスである。より具体例を挙げると、原料ガスがSiH4 の場合はSi 膜を、SiH4 +NH3 の場合はSiN膜を、SiH4 +O2 の場合はSiO2 膜を、それぞれ基板2の表面に形成することができる。
【0038】
真空容器4内には、基板2を保持するホルダ10が設けられている。この例では、ホルダ10は軸16に支持されている。軸16が真空容器4を貫通する部分には、電気絶縁機能および真空シール機能を有する軸受部18が設けられている。この例のように、ホルダ10にバイアス電源20から軸16を経由して負のバイアス電圧を印加するようにしても良い。バイアス電圧は負のパルス状電圧でも良い。このようなバイアス電圧によって、例えば、プラズマ60中の正イオンが基板2に入射するときのエネルギーを制御して、基板2の表面に形成される膜の結晶化度を制御することができる。
【0039】
この実施形態のように、ホルダ10内には、基板2を加熱するヒータ12を設けておいても良い。基板2の周縁部には、当該周縁部に膜が形成されるのを防止するマスク(シャドーマスクとも呼ばれる)14を設けておいても良い。マスク14の周辺部に、ガス24の流れを一様化すると共に、プラズマ60が基板2の保持機構等に達するのを防止する等のための仕切り板22を設けておいても良い。
【0040】
真空容器4の天井面6の開口部7に、絶縁枠62を介在させて、ホルダ10側の面32が真空容器4内に位置しかつホルダ10の基板保持面に対向するように、平面導体30が設けられている。これらの要素の間には、真空シール用のパッキン63がそれぞれ設けられている。平面導体30の平面形状は、この実施形態のように矩形(長方形)でも良いし、正方形等でも良い。
【0041】
平面導体30の材質は、例えば、銅(より具体的には無酸素銅)、アルミニウム等であるが、これに限られるものではない。
【0042】
高周波電源70から整合回路68を経由して、平面導体30の長手方向の一端側の給電端64と他端側の終端66との間に高周波電力が供給され、それによって平面導体30に高周波電流が流される。この高周波電流の流れ方向Fを図2等に示す。終端66は、この実施形態のように直接接地していても良いし、コンデンサを介して接地していても良い。他の実施形態においても同様である。
【0043】
平面導体30に高周波電流を流すことによって、平面導体30の周囲に高周波磁界が発生し、それによって高周波電流と逆方向に誘導電界が発生する。この誘導電界によって、真空容器4内において、電子が加速されて平面導体30の近傍のガス24を電離させて平面導体30の近傍にプラズマ60が発生する。このプラズマ60は基板2の近傍まで拡散し、このプラズマ60によって基板2に前述した処理を施すことができる。
【0044】
高周波電源70から出力する高周波電力の周波数は、例えば、一般的な13.56MHzであるが、これに限られるものではない。
【0045】
主に図2を参照して、平面導体30は、そのホルダ側の面32に、高周波電流の流れ方向Fと交差する方向(例えば実質的に直交する方向。以下同様)に伸びている溝40を、高周波電流の流れ方向Fに1以上有している。この実施形態では複数(図示例では二つ)有している。各溝40は、図2(B)に示すように、平面導体30の短手方向の一端から他端にかけて設けられている。この溝40によって、平面導体30のホルダ側の面32は複数の(図示例では三つの)領域34に分割されている。
【0046】
各溝40の深さDは、平面導体30中を流れる高周波電流の表皮厚さδよりも大きくしている。
【0047】
上記表皮厚さδは次式で表される。ここで、fは上記高周波電流の周波数、μは平面導体30の透磁率、σは平面導体30の導電率である。
【0048】
[数1]
δ=1/√(πfμσ)
【0049】
具体例を挙げると、周波数fが13.56MHzの場合、平面導体30が純銅のときは、透磁率μは4π×10-7N/A2 、導電率σは59.6×106 /Ωmであるので、表皮厚さδは約17.7μmとなる。平面導体30がアルミニウムのときは、透磁率μは4π×10-7N/A2 、導電率σは37.7×106 /Ωmであるので、表皮厚さδは約22.2μmとなる。
【0050】
更に、上記各溝40内にコンデンサ42をそれぞれ設けて、平面導体30の上記各領域34と各コンデンサ42とを交互に電気的に直列接続している。各溝40内に設けるコンデンサ42の数については後述する。各コンデンサ42の両端は、接続導体44によって、各溝40の両側部に接続されている。
【0051】
上記のように表皮厚さδは非常に小さいので、高周波電流は平面導体30の表面にしか流れない。従って、表皮厚さδよりも深さDの大きい溝40を設けておくと、各溝40の部分でインピーダンスは非常に大きくなり、平面導体30のホルダ側の面32のインダクタンスは、複数の領域34のインダクタンスに分割される。そしてこの分割されたインダクタンスに、上記コンデンサ42が直列接続された回路となる。この直列回路の等価回路を図3に示す。
【0052】
この図3では、上記各領域34のインダクタンスをL、抵抗をR、上記各コンデンサ42の静電容量をCとしている。このインダクタンスLと抵抗Rは、平面導体30の構造で決まり、各領域34においてほぼ同じ値にすることができる。各コンデンサ42の静電容量Cも同じ値を選ぶことができる。
【0053】
この直列回路のインピーダンスを構成する合成リアクタンスは、簡単に言えば、誘導性リアクタンスωLから容量性リアクタンス1/ωCを引いた形となるので、平面導体30に上記溝40およびコンデンサ42を設けない場合に比べて、平面導体30のホルダ側の面32のインピーダンスを低下させることができる。ωは上記高周波電流の角周波数である。
【0054】
これを詳述すると、上記直列回路のインピーダンスZは次式で表される。このインピーダンスZにはωL−1/ωCが含まれているので、リアクタンスを小さくすることができ、従ってインピーダンスZを低下させることができる。
【0055】
[数2]
Z=3(R+jωL)+2(1/jωC)
=3R+2j(ωL−1/ωC)+jωL
【0056】
なお、平面導体30の終端66と接地との間にコンデンサを直列に設けても良く、このコンデンサの静電容量をCとすると、その場合のインピーダンスZは次式で表される。この場合もインピーダンスZにはωL−1/ωCが含まれているので、リアクタンスを小さくすることができ、従ってインピーダンスZを低下させることができる。
【0057】
[数3]
Z=3R+3j(ωL−1/ωC)
【0058】
いずれの場合も、上記のように平面導体30のホルダ側の面32のインピーダンスを低下させることができるので、次の効果を奏する。
【0059】
(a)平面導体30を大型にしても、そのインピーダンスの増大を抑えて当該平面導体に大きな電位差が発生するのを抑え、それによって均一性の良いプラズマ60を生成することができる。ひいては、基板2の処理の均一性を高めることができる。
【0060】
(b)しかも、平面導体30のホルダ側の面32、即ちプラズマ生成側の面のインピーダンスを低下させることができるので、当該面32に、その反対側の面に比べて優先的に高周波電流を流すことができる。その結果、プラズマ60のすぐ近くに高周波電流を優先的に流すことができるので、プラズマ生成に高周波電力を効率良く利用することができ、高周波電力の利用効率ひいては基板2の処理効率を高めることができる。
【0061】
平面導体30の各領域34のインダクタンスLおよび各溝40に設ける各コンデンサ42の(複数個を並列に設ける場合はそれらの合成の)静電容量Cは、プラズマ60の生成時に、上記高周波電流の周波数(以下では角周波数ω)において、次式で表される直列共振条件を満たすものにするのが好ましい。
【0062】
[数4]
ωL=1/ωC
【0063】
ここで、「プラズマ60の生成時」と特定しているのは、プラズマ生成時の上記インダクタンスLは、プラズマ60の密度にもよるけれども、プラズマ非生成時に対して最大で60%〜70%程度に低下することが経験上分かっており、この低下したときに上記共振条件を満たすのが好ましいからである。従って、この低下分を見込んで設計しておけば良い。
【0064】
上記共振条件を満たすようにすると、上記数2、数3は、それぞれ、次の数5、数6となるので、平面導体30のホルダ側の面32のインピーダンスをより一層低下させることができる。その結果、上記(a)および(b)の効果をより高めることができる。
【0065】
[数5]
Z=3R+jωL
【0066】
[数6]
Z=3R
【0067】
図3の回路において、上記数4の直列共振条件を満たしている場合の電位分布の一例を、説明の簡略化のために抵抗Rを無視して、図4中に実線Aで示す。この図4中の点a〜dと図3中の点a〜dとはそれぞれ対応している。各傾斜部S1 は、誘導性リアクタンスωLによる電位上昇分、各傾斜部S2 は、容量性リアクタンス1/ωCによる電位降下分である。
【0068】
図4中の二点鎖線Bは、上記溝40およびコンデンサ42に相当するものを有していない従来の平面導体の場合の電位分布である。
【0069】
この図4から分るように、上記溝40およびコンデンサ42を有する平面導体30の場合は、そのホルダ側の面32における各部の電位差を小さく抑えることができる。従ってこの観点からも、均一性の一層良いプラズマ60を生成することができ、ひいては基板処理の均一性をより高めることができる。
【0070】
数4に示した直列共振条件を満たしているのが好ましいけれども、当該共振条件を完全に満たしていなくても、例えば当該共振条件近傍の状態であっても、平面導体30の各部の電位差を小さく抑える効果を奏することができる。この場合は、例えば、図4中の点b、dの電位が幾らか正側または負側にシフトし、それに応じて他の部分の電位もシフトすることになる。それでも、二点鎖線Bで示す従来の平面導体の場合に比べれば、各部の電位差を小さく抑えることができる。
【0071】
上記各溝40内に設けるコンデンサ42は、1個ずつでも良いし、この実施形態のように複数個(図示例では2個)並列に設けても良い。後述する他の実施形態においても同様である。コンデンサ42を複数個並列に設けると、高周波電流を複数のコンデンサ42に分散させて流すことができるので、平面導体30の面内に高周波電流をより均一に流すことができる。その結果、プラズマ60の均一性を良くすることができる。また、コンデンサ42を複数個並列に設けると、その静電容量を大きくすることが容易になる。
【0072】
上記各溝40内の空間(コンデンサ42および接続導体44の周りを含む空間)は、この実施形態のように、絶縁物46で埋めておくのが好ましい。後述する他の実施形態においても同様である。なお、図2(B)、図6〜図8では、コンデンサ42の配置を分かりやすくするために、その上を覆っている絶縁物46の図示は省略している。
【0073】
絶縁物46の材質は、例えば、樹脂、セラミックス等であり、特定のものに限定されない。
【0074】
各溝40内の空間を絶縁物46で上記のように埋めておくと、各溝40内で不要なプラズマが発生するのを防止することができる。それによって、必要なプラズマ60の不均一性増加、高周波電力の利用効率低下等の不都合発生を防止することができる。後述する他の実施形態においても同様である。
【0075】
上記平面導体30の各溝40内に上記コンデンサ42をそれぞれ設ける代わりに、当該各溝40内に誘電体を充填することによって、各溝40内にコンデンサをそれぞれ形成しても良い。後述する他の実施形態においても同様である。各溝40の、高周波電流の流れ方向Fにおける両側の側壁が電極となり、その間に上記誘電体が挟まれた構造になるので、各溝40内に、コンデンサ42に相当するコンデンサを形成することができる。この場合の等価回路は、図3に示したものと同じである。
【0076】
上記誘電体は、例えばチタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム等の高誘電率材料が好ましい。その方が、大きな静電容量を実現することができるからである。上記誘電体の誘電率、各溝40の幅、長さ、深さD等によって、形成するコンデンサの静電容量を調整することができる。前述した直列共振条件を満たすこともできる。
【0077】
上記のように各溝40内に誘電体を充填してコンデンサを形成すると、バルクのコンデンサ42およびそれ用の接続導体44が不要になるので、構成を簡素化することができる。更にこの誘電体によって、上記絶縁物46を充填する場合と同様の作用効果を奏することができる。即ち、各溝40内に不要なプラズマが発生するのを防止することができる。
【0078】
この実施形態のように、平面導体30のホルダ側の面32をプラズマ60から遮蔽するものであって絶縁物から成る遮蔽板72を備えていても良い。後述する他の実施形態においても同様である。遮蔽板72は、真空容器4(具体的にはその天井面6)の開口部7の入口部に直接取り付けても良いし、この実施形態のように枠状の押え板74を用いて取り付けても良い。
【0079】
遮蔽板72の材質は、例えば、石英、アルミナ、炭化ケイ素、シリコン等である。水素系プラズマで還元されて遮蔽板72から酸素が放出されると困る場合は、シリコン、炭化ケイ素等の非酸化物系の材質を用いれば良い。例えばシリコン板を用いるのが簡単で良い。
【0080】
公知のように、導体と高周波プラズマとが近接する構造の場合、プラズマ中のイオンよりも電子の方が軽くて遥かに多く導体に入射するので、プラズマ電位が導体よりも正側に上昇する。これに対して、上記のような遮蔽板72を設けておくと、遮蔽板72によって、プラズマ60中の荷電粒子が平面導体30等に入射するのを抑制することができるので、平面導体30に荷電粒子(主として電子)が入射することによるプラズマ電位の上昇を抑制することができると共に、平面導体30等の表面が荷電粒子(主としてイオン)によってスパッタされてプラズマ60および基板2に対して金属汚染(メタルコンタミネーション)が生じるのを抑制することができる。
【0081】
次に、この発明に係るプラズマ処理装置の他の実施形態を、先に説明した実施形態と同一または相当する部分には同一符号を付して、先に説明した実施形態との相違点を主体に説明する。
【0082】
図5に示す実施形態のように、上述した溝40およびコンデンサ42を有する複数(図示例では二つ)の平面導体30を互いに直列に配置し(即ち、複数の平面導体30における高周波電流の流れ方向F(図2参照)が互いに直列になる向きに配置し)、かつ当該複数の平面導体30をその外部(真空容器外部でもある)の接続コンデンサ76を介して互いに電気的に直列接続して、当該複数の平面導体30に高周波電源70から整合回路68を介して高周波電力を直列に供給するようにしても良い。複数の平面導体30が隣り合う箇所には、前記と同様の絶縁枠62およびパッキン63を設けている。
【0083】
このようにすると、実質的により大型の平面導体を、それよりも小型の平面導体30の組み合わせで実現することができる。その結果、より大型の基板処理に対応することができると共に、各平面導体30の小型・軽量化により製作、組立て、メインテナンス等の作業性が向上し、輸送も容易になり、かつ製作時のし損じ低減にもつながる。
【0084】
各平面導体30は、図1、図2に示した実施形態の場合と同様に、コンデンサ42を設ける代わりに各溝40内に誘電体を充填することによって各溝40内にコンデンサを形成したものでも良い。後述する他の実施形態においても同様である。
【0085】
隣り合う平面導体30間を接続する接続コンデンサ76は、1個でも良いし、平面導体の幅方向(短手方向。図5の紙面の表裏方向)に複数個並列に設けても良い。複数個並列に設けると、高周波電流を複数個の接続コンデンサ76に分散させて流すことができるので、各平面導体30の面内に高周波電流をより均一に流すことができる。その結果、プラズマ60の均一性を良くすることができる。
【0086】
図6に示す実施形態のように、上述した溝40およびコンデンサ42を有する複数(図示例では二つ)の平面導体30を互いに並列に配置し(即ち、複数の平面導体30における高周波電流の流れ方向F(図2参照)が互いに並列になる向きに配置し)、当該複数の平面導体30に高周波電源70から整合回路68を介して高周波電力を並列に供給するようにしても良い。
【0087】
このようにすると、図5に示した実施形態の場合と同様の効果が得られる。即ち、実質的により大型の平面導体を、それよりも小型の平面導体30の組み合わせで実現することができる。その結果、より大型の基板処理に対応することができると共に、各平面導体30の小型・軽量化により製作、組立て、メインテナンス等の作業性が向上し、輸送も容易になり、かつ製作時のし損じ低減にもつながる。
【0088】
上記の場合、1以上の平面導体30の一端側に、好ましくは全ての平面導体30の一端側に、可変インピーダンス78を直列接続しておき、この可変インピーダンス78を介して複数の平面導体30に高周波電源70から高周波電流を並列に供給するのが好ましい。図6はこの場合の例を示す。
【0089】
上記のように可変インピーダンス78を直列に介在させておくと、当該可変インピーダンス78によって複数の平面導体30に流れる高周波電流のバランスを良くすることができるので、生成するプラズマ60の均一性を良くすることができる。
【0090】
上記可変インピーダンス78は、図6に図示したような可変インダクタンスでも良いし、可変コンデンサ(可変キャパシタンス)でも良いし、両者を混在させても良い。可変インダクタンスを挿入することによって、給電回路のインピーダンスを増大させることができるので、高周波電流が流れ過ぎる平面導体30の電流を抑えることができる。可変コンデンサを挿入することによって、誘導性リアクタンスが大きい場合に容量性リアクタンスを増大させて、給電回路のインピーダンスを低下させることができるので(前述した数2、数3およびその説明参照)、高周波電流が流れにくい平面導体30の電流を増加させることができる。
【0091】
図7に示す実施形態のように、平面導体30は、そのホルダ側の面32に、高周波電流の流れ方向Fに沿って並べられた複数の凹部48から成る凹部列50を1列以上(図示例では2列)有していて、当該凹部列50によってホルダ側の面32は複数列(図示例では3列)の導体面52に分割されている構造のものでも良い。複数の凹部48は、互いに分離された非連続なものである。
【0092】
そしてこの複数列の導体面52に、高周波電源70から整合回路68を介して高周波電力を並列に供給するようにしている。
【0093】
更にこの平面導体30は、上記各列の導体面52のそれぞれに、高周波電流の流れ方向Fと交差する方向に伸びている溝40を、高周波電流の流れ方向Fに1以上(図示例では二つ)有していて、当該溝40によって各列の導体面52は複数の(図示例では三つの)領域34にそれぞれ分割されている。
【0094】
更に、上記各溝40内にコンデンサ42をそれぞれ設けて、各列の導体面52における各領域34と各コンデンサ42とを交互に電気的に直列接続している。
【0095】
各溝40の深さ、コンデンサ42、それ用の接続導体44、絶縁物46等は、図1、図2に示した実施例について説明したものと同様であるので、ここでは重複説明を省略する。
【0096】
各凹部48の深さは、導体30中を流れる高周波電流の前述した表皮厚さδよりも大きくしている。その理由は、溝40の深さDについて前述したのと同様である。即ち、このような深さの複数の凹部48が非連続に並んでいると、高周波電流に対する各凹部列50のインピーダンスは非常に大きくなるので、平面導体30のホルダ側の面32における高周波電流の流れを、複数列に、即ち複数列の導体面52に分割することができる。その結果、平面導体30のホルダ側の面32における高周波電流の流路が明確になり、高周波電流の流れを調整しやすくなるので、平面導体30を大型にしても、そのホルダ側の面32に流れる高周波電流の均一性を良くすることができ、それによってプラズマ60(図1参照)の均一性を良くすることができる。ひいては基板処理の均一性を高めることができる。
【0097】
しかも、平面導体30を複数列に構造的(機械的)に分割する場合に比べて、凹部列50によって分割する方が、各列の導体面52間の隙間を小さくすることができるので、高周波電流の不連続領域を小さくして、プラズマ60の均一性を良くすることができる。ひいては基板処理の均一性を高めることができる。
【0098】
更に、各列の導体面52に溝40およびコンデンサ42を設けていて、平面導体30のホルダ側の面32のインピーダンスを低下させることができるので、図1、図2に示した実施形態について前述した効果と同様の効果を奏する。
【0099】
ちなみに、上記のような凹部列50の代わりに、複数の凹部48をつないだようなスリット状の溝を高周波電流の流れ方向Fに沿って設けても、高周波電流の流れを複数列に分割することはできない。このようなスリット状の溝の場合は、その底面が高周波電流の流れ方向Fに沿って連続していて、当該底面に沿って高周波電流が流れるからである。
【0100】
溝40の場合と同様に、各凹部48内の空間は、例えば樹脂、セラミックス等の絶縁物で埋めておくのが好ましい。そのようにすると、溝40の場合と同様に、各凹部48内で不要なプラズマが発生するのを防止することができる。それによって、必要なプラズマ60の不均一性増加、高周波電力の利用効率低下等の不都合発生を防止することができる。
【0101】
この図7に示す実施形態の場合も、(a)平面導体30の各列の導体面52における各領域34のインダクタンスおよび各コンデンサ42の静電容量は、プラズマ60の生成時に、上記高周波電流の周波数において直列共振条件を満たすものにするのが好ましいこと、(b)平面導体30の各溝40内にコンデンサ42を設ける代わりに、各溝40内に誘電体を充填することによって各溝40内にコンデンサをそれぞれ形成しても良いこと、(c)平面導体30の各列の導体面52の一端側にそれぞれ直列に接続された可変インピーダンス78を介して、複数列の導体面52に高周波電源70から高周波電力を並列に供給するようにしても良いこと、(d)平面導体30のホルダ側の面32をプラズマ60から遮蔽するものであって絶縁物から成る遮蔽板72(図1、図2参照)を備えていても良いこと、等は、またそのようにした場合の作用効果は、図1、図2に示した実施形態のものと同様であるので、その説明を参照するものとし、ここでは重複説明を省略する。
【0102】
図7に示したような平面導体30を複数個互いに直列に配置し、その各列の導体面52同士を図5に示したような接続コンデンサ76を介して互いに電気的に直列接続しても良い。そのようにすれば、より大面積のプラズマ60を発生させてより大型の基板に対応することが容易になる。各列の導体面52同士を接続する接続コンデンサ76は、図5の実施形態の場合と同様に、1個でも良いし、複数個並列に設けても良い。
【0103】
図7に示す平面導体30の場合のガス供給パイプ26は、例えば図8に示すように、平面導体30の長手方向に沿うガス供給パイプ26を、平面導体30を短手方向に挟んだ両側に1本ずつ、および、各凹部列50に対応する位置に1本ずつ設ければ良い。このようにすれば、平面導体30のホルダ側の面32付近にガス24を均一性良く供給することができると共に、ガス供給パイプ26がプラズマ生成の邪魔になりにくくなる。
【符号の説明】
【0104】
2 基板
4 真空容器
10 ホルダ
24 ガス
30 平面導体
32 ホルダ側の面
34 領域
40 溝
42 コンデンサ
46 絶縁物
48 凹部
50 凹部列
52 導体面
60 プラズマ
70 高周波電源
72 遮蔽板
76 接続コンデンサ
78 可変インピーダンス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体に高周波電流を流すことによって発生する誘導電界によってプラズマを生成し、当該プラズマを用いて基板に処理を施すプラズマ処理装置であって、
真空排気されかつガスが導入される真空容器と、
前記真空容器内に設けられていて基板を保持するホルダと、
ホルダ側の面が前記真空容器内に位置しかつ前記ホルダの基板保持面に対向するように設けられた平面導体と、
前記平面導体に高周波電力を供給して前記平面導体に高周波電流を流す高周波電源とを備えており、
前記平面導体は、その前記ホルダ側の面に、前記高周波電流の流れ方向と交差する方向に伸びている溝であってその深さが、前記平面導体中を流れる前記高周波電流の表皮厚さよりも大きい溝を、前記高周波電流の流れ方向に1以上有していて、当該溝によって前記ホルダ側の面は複数領域に分割されており、
かつ前記平面導体の前記各溝内にコンデンサをそれぞれ設けて、前記平面導体の前記各領域と当該各コンデンサとを互いに電気的に直列接続している、ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記平面導体の前記各溝内の空間を絶縁物で埋めている請求項1記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記平面導体の前記各溝内に前記コンデンサを設ける代わりに、当該各溝内に誘電体を充填することによって、当該各溝内にコンデンサをそれぞれ形成している請求項1記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記平面導体の前記各領域のインダクタンスおよび前記各コンデンサの静電容量は、前記プラズマの生成時に、前記高周波電流の周波数において、直列共振条件を満たすものである請求項1、2または3記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記溝およびコンデンサを有する前記平面導体を複数備えていてこれらは互いに直列に配置されており、
当該各平面導体を接続コンデンサを介して電気的に直列接続して、当該複数の平面導体に前記高周波電源から高周波電力を直列に供給するように構成している請求項1、2、3または4記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記溝およびコンデンサを有する前記平面導体を複数備えていてこれらは互いに並列に配置されており、
当該各平面導体にそれぞれ直列に接続された可変インピーダンスを介して、当該複数の平面導体に前記高周波電源から高周波電力を並列に供給するように構成している請求項1、2、3または4記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記平面導体の前記ホルダ側の面を前記プラズマから遮蔽するものであって絶縁物から成る遮蔽板を備えている請求項1から6のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
導体に高周波電流を流すことによって発生する誘導電界によってプラズマを生成し、当該プラズマを用いて基板に処理を施すプラズマ処理装置であって、
真空排気されかつガスが導入される真空容器と、
前記真空容器内に設けられていて基板を保持するホルダと、
ホルダ側の面が前記真空容器内に位置しかつ前記ホルダの基板保持面に対向するように設けられた平面導体と、
前記平面導体に高周波電力を供給して前記平面導体に高周波電流を流す高周波電源とを備えており、
前記平面導体は、その前記ホルダ側の面に、前記高周波電流の流れ方向に沿って並べられた複数の凹部であってその深さが、前記平面導体中を流れる前記高周波電流の表皮厚さよりも大きい凹部から成る凹部列を1列以上有していて、当該凹部列によって前記ホルダ側の面は複数列の導体面に分割されており、
前記高周波電源は、前記平面導体の前記複数列の導体面に高周波電力を並列に供給するものであり、
更に前記平面導体は、前記各列の導体面のそれぞれに、前記高周波電流の流れ方向と交差する方向に伸びている溝であってその深さが、前記平面導体中を流れる前記高周波電流の表皮厚さよりも大きい溝を、前記高周波電流の流れ方向に1以上有していて、当該溝によって前記各列の導体面は複数領域にそれぞれ分割されており、
かつ前記平面導体の前記各溝内にコンデンサをそれぞれ設けて、前記各列の導体面における前記各領域と前記各溝内の前記コンデンサとを互いに電気的に直列接続している、ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記平面導体の前記各凹部内の空間および前記各溝内の空間を絶縁物で埋めている請求項8記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記平面導体の前記各溝内に前記コンデンサを設ける代わりに、当該各溝内に誘電体を充填することによって、当該各溝内にコンデンサをそれぞれ形成している請求項8記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記平面導体の前記各列の導体面における前記各領域のインダクタンスおよび前記各コンデンサの静電容量は、前記プラズマの生成時に、前記高周波電流の周波数において、直列共振条件を満たすものである請求項8、9または10記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記平面導体の前記各列の導体面にそれぞれ直列に接続された可変インピーダンスを介して、前記複数列の導体面に前記高周波電源から高周波電力を並列に供給するように構成している請求項8、9、10または11記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
前記平面導体の前記ホルダ側の面を前記プラズマから遮蔽するものであって絶縁物から成る遮蔽板を備えている請求項8から12のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−133899(P2012−133899A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282633(P2010−282633)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000003942)日新電機株式会社 (328)
【Fターム(参考)】