説明

プラズマ処理装置

【課題】シャワープレート上部に設置された誘電体窓の温度を制御することにより、シャワープレートの温度変動を抑制し、固定時間でのプラズマ加熱によるシーズニングを行うことがを可能にする。
【解決手段】シャワープレートと誘電体窓間に形成された空隙および前記貫通孔を介して処理ガスが供給される真空容器と、前記真空処理容器に高周波エネルギーを供給して、磁界との相互作用によりプラズマを生成するプラズマ生成装置と、真空容器内を目標温度範囲に制御する制御装置を備え、前記制御装置は、処理停止期間中においてプラズマ処理を開始するに際して、予め定めた、シャワープレートを制御範囲の中央Tbから上限Tdまで昇温するに要する時間よりも短い固定時間、プラズマを生成して前記誘電体窓およびシャワープレートを前記制御装置による目標温度制御範囲まで加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置に係り、特に、処理ガスを分散して供給するシャワープレートを備えたプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理装置では、試料の処理性能を安定化させるため、試料の処理前に処理室内にArなどのガスを供給してプラズマを所定時間生成する、いわゆるシーズニング(エージング処理)が行われる。この処理では、処理室の壁面をプラズマにより加熱し、処理室の内壁の温度を所定の値としている。
シーズニング処理は、内壁温度が所定値になった時点で終了することが望ましい。このため、この終了のタイミングを検出し、設定することが従来より考えられてきた。例えば、特許文献1には、処理室内壁の温度を直接測定する手段を持たない装置の場合において、装置内壁温度と相関の高いプラズマの発光スペクトルを利用して装置内壁温度を推定し、推定した温度をもとに、シーズニングの終点を検出することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−219198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記処理室内壁のうち、処理室内にガスを供給するために多数の穴を設けたシャワープレートの温度は、シャワープレートが真空中に置かれているため、正確に測定することは困難である。
【0005】
また、前記従来技術は、処理室内壁にSiが使われていると仮定し、プラズマ中のFと処理室内壁のSiとの反応が、内壁温度に依存することを利用し、生成されたプラズマ中のSiFの発光スペクトル量をもとに内壁温度を推定している。しかしながら、プラズマを用いて装置内壁を加熱する場合、装置内壁温度と相関が高い発光量が安定して得られるとは限らない。
【0006】
例えば、シャワープレートがイットリア製の場合には、前記発光スペクトルを得ることはできない。このため、シーズニングの終点を検出することはできない。また、前記発光が得られたとしても、発光量は経時変化する。このため、シーズニングの終点を正しく推定することは困難である。
【0007】
本発明は、これらの問題点に鑑みてなされたもので、シーズニング終了後のウエハ処理開始時におけるシャワープレートの温度を安定して調整することのできるプラズマ処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するため、次のような手段を採用した。
【0009】
誘電体窓および複数の貫通孔が形成されたシャワープレートを有し、前記シャワープレートと誘電体窓間に形成された空隙および前記貫通孔を介して処理ガスが供給される真空容器と、前記真空容器内に試料を載置して保持する載置電極と、前記載置電極に高周波バイアス電圧を供給する高周波バイアス電源と、前記真空処理容器内を排気する排気装置と、前記真空処理容器内に磁界を形成する電磁コイルと、前記真空処理容器に高周波エネルギーを供給して、前記磁界との相互作用によりプラズマを生成するプラズマ生成装置と、真空容器内を目標温度範囲に制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、処理停止期間中においてプラズマ処理を開始するに際して、予め定めた、シャワープレートを、ウエハ毎の断続するプラズマ処理により実現される温度である温度制御範囲の中央温度Tbから、連続するプラズマ処理により実現される温度である温度制御範囲の上限温度Tdまで昇温するに要する時間よりも短い固定時間、プラズマを生成して前記誘電体窓およびシャワープレートを前記制御装置による目標温度制御範囲まで加熱する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以上の構成を備えるため、シーズニング終了後のウエハ処理開始時におけるシャワープレートの温度を安定して調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るプラズマ装置の構成の概略を示す縦断面図である。
【図2】図1に示すプラズマ処理装置のシーズニング時におけるシャワープレートの温度変化を示す図である。
【図3】TaとTbの差ΔT=Tb−Taに対してt1/t2がどのよう変化するかを示す特性図である。
【図4】プラズマエッチング処理方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係るプラズマ装置の構成の概略を示す縦断面図である。図に示すように、上部が開放された真空容器101の上部に、真空容器101内にエッチングガスを導入するためのシャワープレート102(例えば、石英製またはイットリア製)、誘電体窓103(例えば、石英製)を設置し、密封することにより処理室104が形成される。
【0013】
真空容器101の外部にはヒータ122が設置され、該ヒータにはヒータ制御器123に接続されている。真空容器101には温度センサ124が設置され、センサ124の信号はヒータ制御器123に伝送され、制御器123は真空容器101内壁が任意の温度になるようにヒータ122を制御する。
【0014】
シャワープレート102にはエッチングガスを流すためのガス供給装置105が接続される。また、真空容器101には真空排気口106を介し真空排気装置(図示省略)が接続されている。
【0015】
プラズマを生成するための電力を処理室104に放射するため、誘電体窓103の上方には導波管107(またはアンテナ)が設けられる。なお、前記導波管107には電磁波発生用電源109で生成された電磁波が供給される。
【0016】
電磁波の周波数は特に限定されないが、本実施形態では2.45GHzのマイクロ波を使用する。処理室104の外周部には、磁場を形成する磁場発生コイル110が設けてあり、電磁波発生用電源109で生成された電力は、前記形成された磁場との相互作用により、処理室104内にプラズマを生成する。
【0017】
また、シャワープレート102に対向して真空容器101の下部にはウエハ載置用電極111が設けられる。ウエハ載置用電極111は電極表面が溶射膜(図示省略)で被覆されており、高周波フィルタ115を介して直流電源116が接続されている。さらに、ウエハ載置用電源111には、マッチング回路113を介して高周波電源114が接続される。また、ウエハ載置用電極111は、冷媒用流路117を有し、該冷媒流路は温調器118に接続されている。また、ウエハ載置電極は、ヒータ119を有し、該ヒータはヒータ制御器120に接続されている。またウエハ載置用電極111には温度センサ121が設置され、その信号はヒータ制御器120に伝送され、ウエハ112温度を所望の温度になるように制御する。なお、温度制御は、ヒータ119出力および冷媒の温度を制御する温調器118の設定温度を制御することにより行われる。
【0018】
処理室104内に搬送されたウエハ112は、直流電源116から印加される直流電圧のによる静電気力でウエハ載置用電極111上に吸着されて温度調節される。ガス供給装置105により所望のエッチングガスを供給した後、真空容器101内を所定の圧力とし、処理室104内にプラズマを発生させる。この状態でウエハ載置用電極111に接続された高周波電源114から高周波電力を印加することにより、プラズマ中のイオンをウエハに引き込み、ウエハ112をエッチング処理することができる。
【0019】
また、誘電体窓103の温度制御を行うため、誘電体窓103上部の導波管107内にに常温のドライエアを導入するガスライン(図示省略)が設けられ、また、前記ドライエアを加熱する温風ヒータ126、および誘電体窓103の温度をモニタする温度モニタが設けられる。
【0020】
温風ヒータ126は温風ヒータ制御器127に接続され、温風ヒータ126で加熱されたドライエアはガス導入孔134を通して導波路内に導入される。加熱されたドライエアは誘電体窓103と接触し、誘電体窓103を加熱する。なお、温風ヒータ126で加熱することなくドライエアを常温で導入することにより、誘電窓103を冷却することもでいる。このため、温風ヒータ126をON−OFFすることにより、誘電窓103を加熱または冷却することが可能となっている。また、導入したドライエアを排出するため、電磁波発生用電源109の手前の導波路に導電性のパイプ125を配置し、電磁波発生用電源109の直前にはドライエアが進入しないように誘電体プレート133を設置する。これにより、導入した前記ドライエアをパイプ125を通して導波管の外に排出することができる。
【0021】
エッチングチャンバ内の温度に関しては、真空容器101の内壁はヒータ124により制御され、ウエハ載置用電極111は、ヒータ119、温調器118により制御されている。しかし、エッチングチャンバ内の表面積としてもうひとつ大きな面積を占めるシャワープレート102に関しては、積極的な温度制御は行われておらず、その温度はプラズマからの入熱の影響を強く受けていた。
【0022】
また、シャワープレート102は誘電体窓103の直下に同心に配置された平行円板であり、また、シャワープレート102と誘電体窓103の隙間は、プロセスガスを異常放電を発生させることなく流すために、1mm以下である。このため、形態係数が0.81と大きくなることから、実際にプラズマからの入熱がある場合、輻射による熱伝達で数百W程度の熱のやり取りが行われる。このため、誘電体窓103の温度はシャワープレート102の温度の強い影響を受ける。
【0023】
また300mm径のウエハを処理するプラズマエッチング処理装置の場合、シャワープレートは他の部位と接触している面積が全表面積の1%以下であるため、ほぼ真空断熱された状態となり、特に誘電体窓の温度の影響を強く受ける。
【0024】
エッチング処理中のシャワープレート102および誘電体窓103の温度は、プラズマからの入熱により、ある飽和温度に到達する。誘電体窓103の温度を制御していない場合、誘電体窓103は大気にさらされているため、誘電体窓103の温度は、処理停止期間中には、前記飽和温度から室温程度まで低下する。処理停止期間中のシャワープレート102の温度も同様である(室温程度まで低下した誘電体窓103との熱伝達により、シャワープレートも誘電体窓103と同程度に低下する)。
【0025】
なお、誘電体窓103の温度が、例えば処理停止期間中の最低温度よりも50℃高い温度に制御されている場合、処理停止期間のシャワープレート102の温度も50℃程度高い温度に調整される。
【0026】
次に、どのようなプラズマ加熱時間であれば、シャワープレート102の温度を測定することなく加熱時間を固定しても、シャワープレートを所定の温度範囲に制御できるかを図2を用いて説明する。
【0027】
図2は、図1に示すプラズマ処理装置を連続してプラズマを発生させて加熱した場合におけるシャワープレート102温度の時間変化を示す図である。プラズマ加熱開始時のシャワープレート102の温度は、長期の処理停止によりTaとなっている。この温度Taは、エッチング処理によるプラズマ加熱のない処理停止期間中にシャワープレート102のとる最低温度(この温度は温風ヒータなどにより維持されている)である。
【0028】
また、処理停止期間中の最高の温度は、エッチング処理を連続して行った場合(ウエハを連続して処理する場合において各枚葉(あるいはロット)のウエハ処理が終了したとき)に到達する各エッチング処理に固有の温度(飽和温度)Tbである。従って、処理停止期間中のシャワープレート102の温度は前記最低Taないし前記飽和温度Tbとなる。なお、エッチング処理期間中、シャワープレート102の温度は、プラズマからの加熱に伴いエッチング処理毎(レシピ毎)に変動するが、Tbを中心として下限Tc、上限Tdの範囲内となるように調整されている。
【0029】
停止状態からエージングのためのプラズマ加熱(連続加熱)を行うと、シャワープレート102の温度は、TaからTcまで上昇する。TaからTcに上昇するに要するプラズマ加熱時間t1は、処理停止期間中にとりうる一番低い温度から温度制御範囲の下限に達するまでに要する時間であり、また、現在のシャワープレート102の温度(Ta以上には温風ヒータより加熱されている)がわからない状態においてプラズマ加熱により温度を制御する場合、必ず加熱しなければならない時間である。すなわち、t1はエージング処理時におけるプラズマ加熱による加熱時間の下限である。
【0030】
この状態において、さらにプラズマ加熱を続ける(連続加熱する)と、シャワープレート102の温度はTbを通過し、ついにはTdを超える。TbからTdに達するまでに要するプラズマ加熱時間t2は、処理停止期間中にとりうる一番高い温度から温度制御範囲の上限に達するまでの時間である。すなわち、シャワープレート102の温度がわからない場合において、プラズマ加熱(連続加熱)する場合、これ以上、加熱を続けてはならない時間である。このためt2はプラズマ加熱における加熱時間の上限である。
【0031】
従って、プラズマ加熱時間を固定にするためには、t2 > t1、つまり1 > t1 / t2が満たされなければならない。この条件が満たされていれば、シャワープレート102の温度がTaないしTbの範囲にある際に、固定時間t1だけプラズマ加熱を行うことにより、温度制御範囲の下限より高く、また、温度制御範囲の上限よりも低い温度に設定することができる。つまり、温度制御範囲内にシャワープレート102の温度を設定することができる。
【0032】
なお、本発明を、エッチング処理装置に適用する際は、予め、温度計をシャワープレートに取り付けてダミー処理を行い、その際にシャワープレート102の温度変化を測定することによりt1を求め、これをプラズマ加熱の固定時間とするのがよい。
【0033】
次にどのような条件であれば、1 > t1 / t2の条件が満たされるかを、図3を用いて説明する。
【0034】
図3は、TaとTbの差ΔT=Tb−Taに対してt1/t2がどのような変化を示すかを数値シミュレーションにより求めた特性図である。エッチング処理に用いるプラズマの熱出力(レシピ)によりTbが変動するため、Tbが変動した際に固定時間t1で所定の温度までプラズマ加熱が可能かどうか判断しておくことが必要となる。
【0035】
数値シミュレーションは、300mm径のウエハを処理するエッチング装置を想定し、誘電体窓103の厚さを大気圧に耐えられる30ないし50mm、シャワープレート102の厚さを10mm、また、シャワープレートと誘電体窓は、それぞれ温度が100℃の時、熱拡散率が7.42×10−7/sとなる直径450mmの石英製のものとし、またプラズマ加熱にはArガスのプラズマを用い、プラズマ加熱の際にArガスをシャワープレート102と誘電体窓103の間の1.0mmの空間に1000Paで充填し、プラズマ加熱によるシャワープレート102のプラズマ側の面への熱流束が1600W/m、また誘電体窓103を80℃一定として制御し、温度制御範囲はTbを中心として±5℃の範囲とした条件で計算した。
【0036】
数値シミュレーションで仮定した、プラズマからシャワープレート102への熱流束1600W/mは次のようにして求めた。すなわち、プラズマ加熱は、イオンフラックスや電子フラックスが、プラズマからイオンシースを通ってシャワープレート102に入射し、プラズマからエネルギーを運ぶことにより起こる。入射するフラックスはボームフラックスΓi[m−2−1]と呼ばれ、菅井秀郎 編著「プラズマエレクトロニクス」オーム社記載のように、電子密度をn[m−3]、電子の電荷をe[C]、電子温度をTe[eV]、イオンの質量をmi[kg]とすると、次の式(1)により計算される。
【数1】

【0037】
ボームフラックスにより運ばれるエネルギーP[W/m]は、イオンがイオンシースにより加速されることによるエネルギーεi[J]、電子がイオンシースを通り壁に衝突することより失う平均エネルギー2eTe[J]、一つの電子・イオン対を維持するのに必要なエネルギーεc[J]の3つの和に、ボームフラックスをかけた、次の式(2)となる。
【数2】

【0038】
イオンシースでのイオンへの加速電圧は、シャワープレート102のような誘電体の場合、浮遊電位φF[V]となり、電子の質量をme[kg]とすると、次の式(3)で計算される。
【数3】

【0039】
この浮遊電位で、イオンがイオンシースで加速されることによるエネルギーεiは、εi=eφF となる。
【0040】
一般的な電子サイクロトロン共鳴プラズマあるいは誘導結合型プラズマを用いたエッチング処理時の放電時の圧力は0.05〜1Paである。その際、プラズマ、電子温度が3〜5eV、電子密度が1016 〜1018−3程度である。
【0041】
一つの電子・イオン対を維持するのに必要なエネルギーは、Arガスの場合、電子温度3〜5eVのとき、25〜40eV程度となることが知られている。
【0042】
代表的な場合として、電子温度を3eV、電子密度を1017−3とし、ボームフラックスによってプラズマよりシャワープレート102へ運ばれるエネルギーPを、Arガスの場合について計算すると、1600W/m−2となる。この数値を熱流束と仮定し、数値シミュレーションを行った。
【0043】
図3より、ΔTが30℃以下の場合に1 > t1 / t2となり、固定時間のプラズマ加熱を用いたシーズニングにより、シャワープレート102の温度を温度制御範囲内とすることができることが分かる。数値シミュレーションで用いた条件を模擬した実験機においては、誘電体窓の温度を、平均的なΔTが25℃となるように温風ヒータ制御器127を設定した。
【0044】
また、ΔTが30℃よりも大きい場合は、誘電体窓103の制御温度を上げることにより、処理停止期間中のシャワープレート102の温度低下を抑える。またはシャワープレート102の材料をより熱拡散率の大きい材料、例えばイットリア製とし、ΔTを小さくすればよい。
【0045】
また、数値シミュレーションにおいては、温度制御範囲はTbより上下に同じ温度幅の範囲としたが、必ずしも同じ幅にする必要はない。例えば、プラズマ加熱によるシーズニングの後に、プラズマを用いたクリーニング処理行い、さらにクリーニング処理後に、エッチング処理を開始する場合は、クリーニング処理によるシャワープレート102の温度の上昇または低下も考慮にいれて、シーズニング後の温度制御範囲を設定すると良い。
【0046】
次に図4を用いて、本発明のプラズマエッチング処理方法を説明する。
【0047】
図4は処理休止後にロット単位でのエッチング連続処理を行う場合の誘電体窓103の温度およびシャワープレート102の温度変化を示す図である。また図4では、プラズマ加熱は各ロットのエッチング連続処理前に必ず行う場合を示している。
【0048】
誘電体窓103は所定の温度範囲内に制御されている。シャワープレート102の温度は、処理休止201の間は温度が下降し、温度制御範囲外にある。次に、設定した固定時間プラズマ加熱202を行い、シャワープレート102を加熱することで、シャワープレート102の温度は温度制御範囲内とすることができる。
【0049】
このため、シャワープレート102の温度は温度制御範囲内にある状態で、1ロット目のエッチング連続処理203を開始することができる。次に、1ロット目のエッチング連続処理203によりシャワープレート102の温度は各エッチング処理固有の飽和温度となる。
【0050】
1ロット目のエッチング連続処理203終了後に、設定した固定時間のプラズマ加熱204を行ったとしてもシャワープレート102の温度は温度制御範囲内である。このため、シャワープレート102の温度が温度制御範囲内にある状態で、続けて2ロット目のエッチング処理205を開始することができる。
【0051】
図4においては、各ロット前に必ず、プラズマ加熱を行うとしているが、エッチング処理装置のスループットを向上させるために、ロット間に、処理停止期間がないとみなせる場合には、ロット間のプラズマ加熱を行わなくても良い。
【0052】
以上説明したように、本実施形態によれば、シャワープレート上部に設置された誘電体窓の温度を制御することにより、シャワープレートの温度変動を抑制し、さらにエッチング処理前に、シャワープレートの温度変動が抑制されることにより固定時間でのプラズマ加熱によるシーズニングを行うことができる。これにより、ウエハ処理開始時に最適なシャワープレートの温度を得ることができる。
【0053】
また、シャワープレートの温度変動が抑制されることから、シャワープレート温度により変動するシャワープレートとプラズマとの相互作用が安定化され、プラズマ処理性能が安定化するという効果がある
【符号の説明】
【0054】
101 真空容器
102 シャワープレート
103 誘電体窓
104 処理室
105 ガス供給装置
106 真空排気口
107 導波管
108 空洞共振器
109 電磁波発生用電源
110 磁場発生コイル
111 ウエハ載置用電極
112 ウエハ
113 マッチング回路
114 高周波電源
115 フィルタ
116 静電吸着用直流電源
117 冷媒用流路
118 温調器
119 ヒータ
120 ヒータ制御器
121 温度センサ
122 ヒータ
123 ヒータ制御器
124 温度センサ
125 パイプ
126 温風ヒータ
127 温風ヒータ制御器
128 赤外線計測型温度モニタ
129 誘電体プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体窓および複数の貫通孔が形成されたシャワープレートを有し、前記シャワープレートと誘電体窓間に形成された空隙および前記貫通孔を介して処理ガスが供給される真空容器と、前記真空容器内に試料を載置して保持する載置電極と、前記載置電極に高周波バイアス電圧を供給する高周波バイアス電源と、前記真空処理容器内を排気する排気装置と、前記真空処理容器内に磁界を形成する電磁コイルと、前記真空処理容器に高周波エネルギーを供給して、前記磁界との相互作用によりプラズマを生成するプラズマ生成装置と、真空容器内を目標温度範囲に制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、処理停止期間中においてプラズマ処理を開始するに際して、予め定めた、シャワープレートを、ウエハ毎の断続するプラズマ処理により実現される温度である温度制御範囲の中央温度Tbから、連続するプラズマ処理により実現される温度である温度制御範囲の上限温度Tdまで昇温するに要する時間よりも短い固定時間、プラズマを生成して前記誘電体窓およびシャワープレートを前記制御装置による目標温度制御範囲まで加熱することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
誘電体窓および複数の貫通孔が形成されたシャワープレートを有し、前記シャワープレートと誘電体窓間に形成された空隙および前記貫通孔を介して処理ガスが供給される真空容器と、前記真空容器内に試料を載置して保持する載置電極と、前記載置電極に高周波バイアス電圧を供給する高周波バイアス電源と、前記真空処理容器内を排気する排気装置と、前記真空処理容器内に磁界を形成する電磁コイルと、前記真空処理容器に高周波エネルギーを供給して、前記磁界との相互作用によりプラズマを生成するプラズマ生成装置と、真空容器内を目標温度範囲に制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、プラズマにより、シャワープレートを処理停止期間中における最低温度Taから温度制御範囲の下限Tcまで昇温するに要する時間t1、およびシャワープレートをウエハ毎の断続するプラズマ処理により実現される温度である温度制御範囲の中央温度Tbから、連続するプラズマ処理により実現される温度である温度制御範囲の上限温度Tdまで昇温するに要する時間t2としたとき、t2>t1となるように前記温度TaおよびTbを設定した後、プラズマを生成して前記誘電体窓およびシャワープレートを前記制御装置による目標温度制御範囲まで加熱することを特徴とするプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−115268(P2013−115268A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260752(P2011−260752)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】