説明

プラズマ処理装置

【課題】放射導体の先端から筒長方向に沿って延びる状態でプラズマを発生させる。
【解決手段】一方の端部が閉塞板11bによって閉塞されると共に他方の端部に噴出口25が形成された筒体11aを有する筐体11と、閉塞板11bの内面に筐体11の筒長方向に沿って延出するように立設されると共に入力した高周波信号S1を放射する棒状の放射器14とを備え、ガス供給部4によって筐体11内に放電用ガスGが供給され、かつ放射器14が高周波信号S1を放射している状態において、放射器14の先端近傍から噴出口25を介して筐体11の外方に延びるプラズマPを発生させるプラズマ処理装置1であって、筐体11の内面には、ガス供給部4から供給される放電用ガスGを筐体11内に互いに異なる方向で放出するガス放出口22が複数形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方の端部が閉塞板で閉塞されると共に他方の端部に噴出口が形成された筐体、および閉塞板の内面に立設された放射導体を備えて、放射導体の先端近傍にプラズマを発生させ、かつ発生させたプラズマを噴出口から噴出するプラズマ放電用ガスの気流に乗せて噴出口から放射させるプラズマ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のプラズマ処理装置として、本願出願人は、下記特許文献1に開示されたプラズマ処理装置を既に提案している。このプラズマ処理装置は、高周波電源およびプラズマ発生部を備え、高周波電源において生成された高周波信号をプラズマ発生部に供給することによってプラズマ発生部内にプラズマを発生させると共に、発生させたプラズマを処理対象体に放射して、処理対象体の表面をプラズマ処理する。
【0003】
この場合、プラズマ発生部は、筐体および放射器(アンテナ)を備えている。一例として、筐体は、両端が開口する導電性の筒体、この筒体の一方の端部に取り付けられてこの端部を閉塞する導電性の閉塞板、およびこの筒体の内周面における他方の端部寄りに取り付けられた絶縁管を備えて構成されて、その内部に放射器が閉塞板の内面に立設されている。また、閉塞板には、プラズマ放電用ガスを筒体内に供給する供給管を接続するための貫通孔が形成されている。
【0004】
このプラズマ処理装置では、ガス供給部から供給管を介して筐体内に放電用ガスを供給している状態において、高周波電源から高周波信号をプラズマ発生部に出力する。これにより、放射器が高周波信号によって共振して、共振モノポールとして作動する。この際に、放射器では、筐体の開放端に位置する先端側で電圧が最大となる。このため、プラズマ発生部内における放射器の先端近傍で電界強度が最大となり、この先端近傍においてプラズマが発生する。この場合、供給管から供給されている放電用ガスは筒体内を筒長方向に沿って流れて筐体の開放端から外部に流出するため、プラズマは、この放電用ガスの流れに乗って延びて、つまり、放射器の先端から筒長方向に沿って延びて、筒体の開放端から処理対象体に放射される。これにより、処理対象体に対するプラズマ処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−86685号公報(第4−6頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、発明者は、上記した従来のプラズマ処理装置について鋭意研究した結果、このプラズマ処理装置には以下の改善すべき点が存在していることを見出した。すなわち、このプラズマ処理装置では、閉塞板に形成された貫通孔に接続された供給管のみから筐体内に放電用ガスが直接供給される構成、つまり、閉塞板の内面全体から見れば範囲の狭い部位(貫通孔)のみから筐体内に放電用ガスが直接供給される構成となっている。このため、プラズマを発生させる放射器(放射導体)の先端近傍を内包する筐体内での放電用ガスの流れが不均一(筐体内における筒長方向と直交する平面内での流量分布が不均一)になり、この結果、放射器の先端近傍に発生するプラズマが筒長方向に沿って延びずに、筒長方向に対して斜めにずれて延びるおそれがあるという改善すべき点が存在している。
【0007】
本発明は、かかる点を改善すべくなされたものであり、放射導体の先端から筒長方向に沿って延びる状態でプラズマを発生させ得るプラズマ処理装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく請求項1記載のプラズマ処理装置は、一方の端部が閉塞板によって閉塞されると共に他方の端部に噴出口が形成された筒体を有する筐体と、前記閉塞板の内面に前記筐体の筒長方向に沿って延出するように立設されると共に入力した高周波信号を放射する棒状の放射導体とを備え、ガス供給部によって前記筐体内にプラズマ放電用ガスが供給され、かつ前記放射導体が前記高周波信号を放射している状態において、前記放射導体の先端近傍から前記噴出口を介して当該筐体の外方に延びるプラズマを発生させるプラズマ処理装置であって、前記筐体の内面には、前記ガス供給部から供給される前記プラズマ放電用ガスを当該筐体内に互いに異なる方向で放出するガス放出口が複数形成されている。
【0009】
また、請求項2記載のプラズマ処理装置は、請求項1記載のプラズマ処理装置において、前記筐体の内部に前記筒長方向に沿って、かつ前記放射導体の前記先端近傍を内包する状態で配設されると共に、前記筒体の前記他方の端部側の端部が当該筒体の当該他方の端部に全周に亘って密着した状態で連結された絶縁管を備え、前記筐体の内部には、前記絶縁管の前記閉塞板側の端部から当該閉塞板の内面までの領域で構成された第1内部空間と、前記絶縁管の内側領域で構成されて前記第1内部空間と前記噴出口とを連通させる第2内部空間と、前記絶縁管の外周面と前記筒体の内周面との間で挟まれた領域で構成された第3内部空間とが形成され、前記複数のガス放出口のうちの少なくとも1つのガス放出口は、前記第3内部空間に接する前記筒体の内周面における当該筒体の前記他方の端部側の部位に配設されて、当該第3内部空間を介して前記第1内部空間と連通する。
【0010】
また、請求項3記載のプラズマ処理装置は、請求項2記載のプラズマ処理装置において、前記第3内部空間に接する前記筒体の内周面における当該筒体の前記他方の端部側の部位には、前記ガス放出口が、当該筒体の中心軸を中心として等角度間隔で複数配設されている。
【0011】
また、請求項4記載のプラズマ処理装置は、請求項3記載のプラズマ処理装置において、前記ガス放出口は、180度間隔で2つ配設されている。
【0012】
また、請求項5記載のプラズマ処理装置は、請求項1から4のいずれかに記載のプラズマ処理装置において、前記複数のガス放出口のうちの少なくとも1つのガス放出口から放出される前記プラズマ放電用ガスの放出量を調整する調整弁を備えている。
【0013】
また、請求項6記載のプラズマ処理装置は、請求項1から5のいずれかに記載のプラズマ処理装置において、前記筐体には、配管を介して前記ガス供給部と接続される1つのガス供給口と、当該ガス供給口を介して前記ガス供給部から供給される前記プラズマ放電用ガスを前記複数のガス放出口に供給する供給流路とが配設されている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載のプラズマ処理装置では、筐体の内面には、ガス供給部から供給されるプラズマ放電用ガスを筐体内に互いに異なる方向で放出するガス放出口が複数形成されている。
【0015】
したがって、このプラズマ処理装置によれば、プラズマ放電用ガスが噴出口から筒長方向に対して斜めに放出される状態のときに、各ガス放出口のうちの少なくとも1つの放出量を調整することにより、プラズマ放電用ガスが噴出口から筒長方向に沿って真っ直ぐに放出される状態に調整することができ、これにより、筐体内において発生しているプラズマをこのプラズマ放電用ガスの流れ(気流)に乗せて、噴出口から筒長方向に沿って真っ直ぐに(直線状に)延びる状態で連続して発生させることができる。
【0016】
請求項2記載のプラズマ処理装置では、筐体の内部には、絶縁管の閉塞板側の端部から閉塞板の内面までの領域で構成された第1内部空間と、絶縁管の内側領域で構成された第2内部空間と、絶縁管の外周面と筒体の内周面との間で挟まれた領域で構成された第3内部空間とが形成され、かつ複数のガス放出口のうちの少なくとも1つのガス放出口が第3内部空間に接する筒体の内周面における筒体の他方の端部側の部位に配設されて、第3内部空間を介して第1内部空間と連通する。これにより、第3内部空間が絶縁管を取り囲むようにして、絶縁管の全周に亘って形成されると共に、絶縁管の閉塞板側の端部において絶縁管の全周に亘って第1内部空間と連通する構成となる。このため、各ガス放出口から放出されたプラズマ放電用ガスは、第3内部空間を介して第1内部空間内に、筒体の周方向に沿った全方向(絶縁管の周方向に沿った全方向でもある)から放出される。
【0017】
したがって、このプラズマ処理装置によれば、例えば、ガス放出口を閉塞板の内面にのみ形成してガス放出口から第1内部空間内にプラズマ放電用ガスを直接放出する従来の構成と比較して、第1内部空間内、ひいてはこの第1内部空間からプラズマ放電用ガスが供給される第2内部空間内でのプラズマ放電用ガスの流れをより安定させることができる。この結果、このプラズマ処理装置によれば、噴出口からプラズマ放電用ガスを筒長方向に沿って安定した状態で吹き出させることができることから、絶縁管内に位置している放射導体の先端近傍に発生しているプラズマを、この放電用ガスの流れに乗せて、噴出口から筒長方向に沿ってより安定して直線状に延びる状態で連続発生させることができる。
【0018】
請求項3記載のプラズマ処理装置によれば、ガス放出口が、第3内部空間に接する筒体の内周面における筒体の他方の端部側の部位に、筒体の中心軸を中心として等角度間隔で複数配設されているため、プラズマ放電用ガスが噴出口から中心軸に対して(筒長方向に対して)斜めに放出される状態のときに、各ガス放出口のうちの少なくとも1つについての放出量を調整することにより、プラズマ放電用ガスが噴出口から中心軸に沿って真っ直ぐに放出される状態に確実に調整することができ、これにより、筐体内において発生しているプラズマをこのプラズマ放電用ガスの流れ(気流)に乗せて、噴出口から中心軸に沿って真っ直ぐに(直線状に)延びる状態で確実に放出させることができる。
【0019】
請求項4記載のプラズマ処理装置によれば、筒体の中心軸を中心として180度間隔でガス放出口が2つ配設される構成を採用したことにより、プラズマが噴出口から中心軸に沿って真っ直ぐに延びる状態で放出させることができるという効果を奏しつつ、筐体の構造をより簡略化することができる。
【0020】
請求項5記載のプラズマ処理装置によれば、複数のガス放出口のうちの少なくとも1つのガス放出口から放出されるプラズマ放電用ガスの放出量を調整する調整弁を備えているため、より簡易な構成でありながら、プラズマ放電用ガスが噴出口から中心軸に沿って真っ直ぐに放出される状態に確実に調整することができ、これにより、筐体内において発生しているプラズマをこのプラズマ放電用ガスの流れ(気流)に乗せて、噴出口から中心軸に沿って(筒長方向に沿って)真っ直ぐに延びる状態で確実に発生させることができる。
【0021】
請求項6記載のプラズマ処理装置によれば、筐体に配設されたガス供給口が1つであるため、配管を介してガス供給部と接続する作業に要する時間を大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】プラズマ処理装置1の構成図(筐体11については中心軸Xを含む平面に沿った同軸コネクタ12を除く断面図)である。
【図2】図1におけるW1−W1線断面図である。
【図3】プラズマ処理装置1Aの構成図(筐体11Aについては中心軸Xを含む平面に沿った同軸コネクタ12を除く断面図)である。
【図4】図3におけるW2−W2線断面図である。
【図5】図1のプラズマ処理装置1において、ガス放出口22を4つ配設した構成のW1−W1線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、プラズマ処理装置の実施の形態について説明する。
【0024】
図1に示すプラズマ処理装置1は、プラズマ発生部2、高周波電源3、ガス供給部4およびテーブル5を備えている。また、このプラズマ処理装置1は、高周波電源3において生成された高周波信号S1をプラズマ発生部2に同軸ケーブル3aを介して供給することによってプラズマ発生部2内にプラズマPを発生させると共に、発生させたプラズマPをテーブル5に載置された処理対象体6に放射してその表面をプラズマ処理可能に構成されている。一例として、このプラズマ処理装置1は、樹脂などの有機材料で形成された部材(例えば、シート状や板状の部材)を処理対象体6として、その表面の殺菌処理、洗浄処理、および親水性の向上処理などを実行する。
【0025】
プラズマ発生部2は、一例として、図1に示すように、筐体11、同軸コネクタ12、給電導体13、および放射導体としての放射器(アンテナ)14を備えている。筐体11は、一例として、両端が開口する導電性の筒体11a、導電性の閉塞板11b、絶縁管11cおよび取付板11dを備え、筒体11aにおける一方の端部(同図中の上端部)がこの一方の端部に密着(気密性を確保した状態での密着)して配設された閉塞板11bによって閉塞されることにより、全体として、同図中の下端(筒体11aにおける他方の端部)側が開放端に形成されたトーチ型筐体に構成されている。この構成においては、筒体11aは筐体11の周壁として機能している。また、筐体11には、グランド電位が付与されている。
【0026】
本例では、一例として、筒体11aは、図2に示すように、その中心軸Xと直交する平面に沿った外周面の断面形状が四角形(つまり、外形が四角筒体)であるが、この平面に沿った内周面の断面形状が円形であるため、実質的には円筒体として機能する。また、筒体11aの外周面には、図1に示すように、一方の端部寄りの位置に、筐体11内に高周波信号S1を導入するための第1貫通孔21が筒体11aの径方向に沿って形成されている。
【0027】
また、筐体11の内面には、ガス供給部4から供給されるプラズマ放電用ガスG(以下、「放電用ガスG」ともいう)を筐体11内に異なる方向から放出するガス放出口22が複数形成されている。本例では、一例として、各ガス放出口22は、筒体11aの内周面における筒体11aの他方の端部側の部位に、筒体11aの中心軸Xを中心として等角度間隔に配設されている。具体的には、ガス放出口22は、図1,2に示すように、中心軸Xを中心として180度間隔で、絶縁管11cを挟んで互いに対向する状態で2つ配設されている。
【0028】
また、筒体11aには、図1,2に示すように、各ガス放出口22を起点として筒体11aの径方向(筐体11の径方向)に沿って直線状に延びると共に筒体11aの外周面に達する供給流路23が2つ形成されている。また、各供給流路23における筒体11aの外周面に開口する部位は、ガス供給口24として機能する。つまり、本例では、供給流路23およびガス供給口24は、中心軸Xを中心として等角度間隔(180度間隔)でそれぞれ形成されて、供給流路23については筒体11aにそれぞれ2つずつ形成され、ガス供給口24については筒体11aの外周面にそれぞれ2つずつ形成されている。また、筒体11aの他方の端部における内周面側の部位は、図1に示すように、外周面側の部位よりも筒体11aの全周に亘って一段低くなるように形成されて、絶縁管11cの後述する拡径部11fを嵌め込むための嵌合部11eとして構成されている。
【0029】
取付板11dは、環状に形成されており、例えばねじ止めなどの方法により、筒体11aの他方の端部に取り付けられる。また、取付板11dは、筒体11aの他方の端部に取り付けられた状態において、筒体11a内に装着された絶縁管11cにおける拡径部11fを嵌合部11eとの間で挟持することにより、絶縁管11cを固定する。
【0030】
絶縁管11cは、図1,2に示すように、断面形状が円形の筒体11aにおける内周面の形状に合わせて円筒体に形成されると共に、その外径が筒体11aの内径よりも小径に形成されている。また、絶縁管11cにおける一方の端部(図1中の下端部)寄りの外周面には、全周に亘って突出する環状の拡径部11fが形成されている。また、絶縁管11cにおける一方の端部(図1中の下端部)寄りの内周面は、図1に示すように、一方の端部に向かうに従って徐々に縮径する(直径が小径になる)テーパー面に形成されている。つまり、絶縁管11cは、全体としてロート形状に形成されている。
【0031】
このように形成された絶縁管11cは、図1に示すように、他方の端部(同図中の上端部)側を、筒体11aの他方の端部(同図中の下端部)方向から筒体11a内に挿入して、拡径部11fを筒体11aの嵌合部11eに嵌め込んで装着されて、上記したようにして、筒体11aの他方の端部(同図中の下端部)に取り付けられた取付板11dによって筒体11aに固定されている。この構成により、絶縁管11cは、筐体11(具体的には筒体11a)の内部に筐体11の筒長方向に沿って(中心軸Xと平行に)、かつ筐体11(筒体11a)と同軸に配設されると共に、一方の端部(筐体11の他方の端部側の端部)が筐体11の他方の端部(開放端側の端部)に全周に亘って密着した状態で連結される。
【0032】
また、絶縁管11cにおける他方の端部(同図中の上端部)側の開口端に対して小径に形成された一方の端部側の円形の開口端は、各ガス放出口22から筐体11内に供給された放電用ガスGの噴出口25として機能する。この噴出口25は、絶縁管11cが筐体11(筒体11a)と同軸に配設されているため、中心が中心軸X上に位置した状態となっている。なお、筐体11の筒長とは、図1中の上下方向の長さであり、したがって筒長方向とは同図中の上下方向(中心軸Xと平行な方向)をいう。
【0033】
また、絶縁管11cは、図1に示すように、上記のようにして筒体11aに固定された状態において、閉塞板11b側の端部(他方の端部)が第1貫通孔21の縁部に達し、筐体11の開放端側の端部(一方の端部)が取付板11dの端面に達するように、その長さ(筒長)が規定されている。これにより、この絶縁管11c内には、後述するようにして閉塞板11bの内面に立設された放射器14における先端近傍が少なくとも挿入された状態(絶縁管11cが放射器14の先端近傍を内包した状態)となる。このため、絶縁管11cは、高周波信号S1の出力電力を高めたときに、放射器14から筐体11(の内周面)への不要な放電の発生を防止する。
【0034】
また、絶縁管11cが固定された筐体11の内部には、この絶縁管11cで区画されることにより、絶縁管11cの他方の端部(同図中の上端部。閉塞板11b側の端部)から閉塞板11b(閉塞板11bの内面)までの領域で構成された第1内部空間SB1と、絶縁管11cの内側領域で構成されて第1内部空間SB1と噴出口25とを連通させる第2内部空間SB2と、絶縁管11cの外周面と筒体11aの内周面との間で挟まれた領域で構成された第3内部空間SB3とが形成される。
【0035】
この場合、放射器14の先端近傍を内包する絶縁管11cの内部領域で構成される第2内部空間SB2は、筒長方向に沿って延びる状態で形成されて、第3内部空間SB3から第1内部空間SB1内に供給された放電用ガスGを放射器14の先端近傍を経由して噴出口25から筐体11の外方へ放出させる。
【0036】
また、第3内部空間SB3は、絶縁管11cの拡径部11fから絶縁管11cの他方の端部(上端部)までの範囲に亘って形成されて、絶縁管11cの他方の端部側において、この他方の端部の全周に亘って内部空間SB1と連通する。また、この第3内部空間SB3は、絶縁管11cにおける一方の端部が筐体11の他方の端部に全周に亘って密着した状態で連結される上記の構成により、筐体11の他方の端部側が閉塞された状態(本例では、拡径部11fの上面によって区画されて閉塞された状態)で形成されている。また、筒体11aの内周面における各ガス放出口22が形成された筒体11aの他方の端部側の部位は、第3内部空間SB3に接する状態となるため、各ガス放出口22は、第3内部空間SB3に開口すると共に、第3内部空間SB3を介して第1内部空間SB1と連通する。
【0037】
この構成により、第3内部空間SB3は、各ガス放出口22から筐体11に放出(供給)された放電用ガスGを筐体11(筒体11a)の筒長方向に沿って、閉塞板11b側に誘導すると共に閉塞板11bに向けて放出することにより、第1内部空間SB1内に放電用ガスGを供給する誘導流路として機能する。
【0038】
同軸コネクタ12は、図1に示すように、高周波電源3に接続された同軸ケーブル3aの先端に装着されている。また、同軸コネクタ12は、第1貫通孔21を閉塞するようにして筒体11aの外周面に取り付けられている。この場合、同軸コネクタ12の芯線12aは、第1貫通孔21内に、筒体11aと非接触な状態で位置している。
【0039】
給電導体13は、高導電性の線材を用いて、一例として、図1に示すように、棒状(ほぼ真っ直ぐな棒状)に形成されて、一端側が同軸コネクタ12の芯線12aに接続されると共に、他端側が放射器14の給電位置Aに接続されている。この場合、給電位置Aは、放射器14における閉塞板11bに固定された基端部から所定距離L2だけ離間した位置に規定されている。ここで、所定距離L2は、高周波信号S1の波長をλとしたときに、λ/10≧L2>0の範囲に規定するのが好ましい。これにより、放射器14と、これに接続される閉塞板11bおよび給電導体13とで逆F形のアンテナが構成されて、後述するように、プラズマ発生(点火)前後でのVSWRの変化を低減し得る構成となる。なお、所定距離L2がλ/10を超える構成では、後述するようにプラズマ発生前のVSWRが悪化し始める(つまり、プラズマの点火性が低下し始める)。このため、L2はλ/10以下とするのが好ましい。
【0040】
放射器14は、図1に示すように、導電性材料を用いて1本の棒状(柱状。本例では、一例として円柱状)に形成されている。また、放射器14は、その一方の端部(基端部であって同図中の上端)が閉塞板11bの内面に取り付けられる(導通状態を確保した状態で取り付けられる)ことにより、閉塞板11bの内面(筒体11aとの当接面)に筐体11の筒長方向に沿って延出する状態で(つまり、閉塞板11bに対して直角な状態で)立設されている。本例では、一例として、放射器14は、軸線が筒体11aの中心軸X上に位置した状態で立設されている。また、放射器14は、基端部が第1内部空間SB1内に位置すると共に、プラズマPを発生させる先端側が第2内部空間SB2内に位置した状態となっている。
【0041】
また、放射器14は、同軸コネクタ12および給電導体13を介して高周波電源3から入力された高周波信号S1を放射する。また、放射器14は、その長さL1は((1/4+n/2)×λ)に規定される。ここで、nは、0以上の整数であり、例えば、n=0としたときには、放射器14の長さL1は(λ/4。高周波信号S1の周波数が一例として2.45GHzであるため、122.45mm/4=30.6mm)に規定される。
【0042】
高周波電源3は、準マイクロ波帯(1GHz〜3GHz)またはマイクロ波帯(3GHz〜30GHz)の高周波信号(一例として、2.45GHz程度の準マイクロ波)S1を所定の電力で生成すると共に、同軸ケーブル3aを介してプラズマ発生部2に出力する高周波信号生成部として機能する。なお、本例では、高周波電源3が、準マイクロ波を高周波信号S1として出力する構成を採用しているが、マイクロ波を高周波信号S1として出力する構成を採用することもできる。また、高周波電源3からプラズマ発生部2に対する高周波信号S1の供給効率を高めるため、高周波電源3とプラズマ発生部2との間に整合器を配設することもできる。
【0043】
ガス供給部4は、図1に示すように、配管4aを介してプラズマ発生部2に連結されている。具体的には、配管4aは、一方の端部(ガス供給部4側の端部)がガス供給部4に連結されると共に途中でガス供給口24の数分だけ分岐して、複数の他方の端部は各ガス供給口24に連結されている。この構成により、ガス供給部4は、プラズマ発生部2の筐体11内に配管4aを介して放電用ガスGを供給する。放電用ガスGとしては、通常は、電離電圧が低くプラズマが発生し易いガス(例えば、アルゴンガスやヘリウムガスなど)が使用されるが、大気圧下で反応性の高いガス(例えば、窒素ガスや酸素ガス、また空気)が使用される場合もある。
【0044】
また、配管4aにおける分岐部位から各他方の端部(他方の端部が接続されたガス供給口24)までの間、各ガス供給口24、および各供給流路23のいずれかには、各ガス放出口22から放出される放電用ガスGの放出量を個別に調整するための調整弁7がガス放出口22に対応して配設されている。本例では、一例として、調整弁7は、配管4aにおける分岐部位から各他方の端部(他方の端部が接続されたガス供給口24)までの間にそれぞれ配設されている。
【0045】
また、ガス供給部4から筐体11に供給された放電用ガスGは、各ガス供給口24、各ガス供給口24に対応する供給流路23、および各ガス供給口24に対応するガス放出口22を介して、互いに異なる方向から筐体11内(本例では、筐体11内の第3内部空間SB3内)に放出(供給)され、次いで、第3内部空間SB3によって筐体11の筒長方向に沿って閉塞板11b側に誘導されて、閉塞板11bに向けて第1内部空間SB1内に放出される。その後、第1内部空間SB1内の放電用ガスGは、第2内部空間SB2(絶縁管11cの内部領域)を経由して、筐体11内から噴出口25を介して筐体11の外方に放出される(噴出口25から放出される)。これにより、放射器14の先端が位置している絶縁管11c内には、閉塞板11b側から噴出口25が形成されている筐体11の他方の端部(図1中の下端部)に向かう放電用ガスGの気流が発生する。
【0046】
次に、プラズマ処理装置1の動作について説明する。なお、テーブル5上には処理対象体6が載置されているものとする。
【0047】
プラズマ処理装置1では、処理対象体6に対するプラズマ処理の実行に際して、まず、ガス供給部4から配管4aを介して筐体11内に放電用ガスGが供給される。これにより、上記したように絶縁管11cの内部(第2内部空間SB2)には、閉塞板11b側から噴出口25に向かう放電用ガスGの気流が発生する。
【0048】
本例では、配管4aから各ガス供給口24に供給された放電用ガスGは、まず、筒体11aの径方向に沿って形成された供給流路23を経由して各ガス放出口22から第3内部空間SB3内に筒体11aの径方向に沿って放出される。この場合、各供給流路23は筒体11aの中心軸Xを中心として等角度間隔で、かつ径方向に沿って形成されているため、筒体11aの内周面に開口する各ガス放出口22からも径方向に沿って放電用ガスGが放出される。つまり、放電用ガスGは、第3内部空間SB3内に各ガス放出口22から互いに異なる方向から放出(供給)される。
【0049】
各ガス放出口22から放出された放電用ガスGは、図2に示すように、供給流路23と直交する絶縁管11cの外周面にそれぞれ吹き付けられて、この外周面に沿ってそれぞれ分散されるため、互いに混ざり合いながら第3内部空間SB3内を閉塞板11bに向けて移動して、絶縁管11cの全周から第1内部空間SB1内に放出される。この第1内部空間SB1内に放出された新たな放電用ガスGは、第1内部空間SB1内に既に存在していた放電用ガスGを第1内部空間SB1内から絶縁管11c内(第2内部空間SB2内)に押し出す。このようにして第1内部空間SB1から第2内部空間SB2内に放電用ガスGが供給されることにより、第2内部空間SB2内には、閉塞板11b側から噴出口25側に向かう放電用ガスGの気流が連続して発生して、放電用ガスGは筐体11の他方の端部(具体的には、この他方の端部に形成された噴出口25)から連続的に放出される。
【0050】
この場合、放電用ガスGは、噴出口25から中心軸Xに沿って真っ直ぐに放出されるのが好ましいが、中心軸Xと直交する平面で筐体11の内部を断面視したときの筐体11の内部構造が不均一であることに起因して、第2内部空間SB2内での中心軸Xと直交する平面内での放電用ガスGの流量の分布が中心軸Xを中心として点対称とならない状態(不均一な状態)となっているときには、噴出口25から中心軸Xに対して斜めに放出される状態となることがある。本例では、断面視したときの筐体11の内部構造が給電導体13の存在によって中心軸Xを中心として点対称とならないため、内部構造が不均一となっている。これにより、各ガス放出口22からの放電用ガスGの放出量が均一な状態であっても、上記した内部構造の不均一に起因して、第2内部空間SB2内での中心軸Xと直交する平面内での放電用ガスGの流量の分布が中心軸Xを中心として点対称とならない状態となる場合がある。
【0051】
このような場合には、このプラズマ処理装置1では、各ガス放出口22に対応して配設されている調整弁7のうちの少なくとも1つを操作して、各ガス放出口22から筐体11内に放出されている放電用ガスGの放出量を調整することにより、第3内部空間SB3内における中心軸Xと直交する平面内での放電用ガスGの流量の分布を変化させて、絶縁管11cの内部領域(第2内部空間SB2)における中心軸Xと直交する平面内での放電用ガスGの流量の分布を中心軸Xを中心として点対称の状態に移行させる。これにより、放電用ガスGが噴出口25から中心軸Xに沿って(筒長方向に沿って)真っ直ぐに放出される状態に調整される。
【0052】
次いで、この状態において、高周波電源3が高周波信号S1のプラズマ発生部2への出力を開始する。高周波電源3から出力された高周波信号S1は、同軸ケーブル3a、同軸コネクタ12および給電導体13を介して、放射器14にその給電位置Aから供給される。これにより、上記の長さL1に規定されている放射器14が、高周波信号S1によって共振する。共振状態の放射器14は共振モノポールとして作動して、筐体11の開口端側に位置する先端(図1中の下端)側で電圧が最大となる。
【0053】
このため、放射器14の先端近傍で電界強度が最大となり、プラズマPの発生し易い放電用ガスGが存在する筐体11内では、この先端近傍においてプラズマPが発生する。この場合、高周波電源3が高周波信号S1として準マイクロ波またはマイクロ波をプラズマ発生部2に供給するため、プラズマPは高密度な状態で発生する。また、筐体11内の内部空間SB2は、放電用ガスGが存在しているため、プラズマPは、一旦発生した後は、グロー放電状態となることから、放射器14への高周波信号S1の供給状態において、放射器14の先端に継続して発生する。
【0054】
上記したように、絶縁管11cの内部領域(第2内部空間SB2)では、放電用ガスGが、中心軸Xと直交する平面内での流量の分布が中心軸Xを中心として点対称の状態で、閉塞板11b側から噴出口25側に向かって流れると共に、噴出口25から筐体11の外方へ中心軸Xに沿って真っ直ぐに放出されているため、放射器14の先端に発生しているプラズマPは、図1に示すように、この放電用ガスGの流れ(気流)に乗って放射器14の先端近傍から中心軸Xに沿って真っ直ぐに延びて噴出口25に達し、さらに、噴出口25から筐体11の外方へ中心軸Xに沿って真っ直ぐに延びる状態で、かつ安定した状態(放射方向のぶれが少ない状態)で連続発生して、処理対象体6に放射される。これにより、プラズマ処理装置1による処理対象体6の表面処理が実行される。
【0055】
このように、このプラズマ処理装置1では、筐体11の内面(本例では、筒体11aの内周面)には、ガス供給部4から供給される放電用ガスGを筐体11内に互いに異なる方向で放出するガス放出口22が複数形成されている。
【0056】
したがって、このプラズマ処理装置1によれば、放電用ガスGが噴出口25から中心軸Xに対して斜めに放出される状態のときに、各ガス放出口22のうちの少なくとも1つの放出量を調整することにより、放電用ガスGが噴出口25から中心軸Xに沿って真っ直ぐに放出される状態に調整することができ、これにより、筐体11内において発生しているプラズマPをこの放電用ガスGの流れ(気流)に乗せて、噴出口25から中心軸Xに沿って真っ直ぐに(直線状に)延びる状態で連続して発生させることができる。
【0057】
また、このプラズマ処理装置1では、筐体11の内部には、絶縁管11cの閉塞板11b側の端部から閉塞板11bの内面までの領域で構成された第1内部空間SB1と、絶縁管11cの内側領域で構成された第2内部空間SB2と、絶縁管11cの外周面と筒体11aの内周面との間で挟まれた領域で構成された第3内部空間SB3とが形成され、かつ複数のガス放出口22のうちの少なくとも1つのガス放出口22(本例では、2つのガス放出口22のすべて)が第3内部空間SB3に接する筒体11aの内周面における筒体11aの他方の端部側の部位に配設されて、第3内部空間SB3を介して第1内部空間SB1と連通する。これにより、第3内部空間SB3が絶縁管11cを取り囲むようにして、絶縁管11cの全周に亘って形成されると共に、絶縁管11cの閉塞板11b側の端部において絶縁管11cの全周に亘って第1内部空間SB1と連通する構成となる。このため、各ガス放出口22から放出された放電用ガスGは、第3内部空間SB3を介して第1内部空間SB1内に、筒体11aの周方向に沿った全方向(絶縁管11cの周方向に沿った全方向でもある)から放出される。
【0058】
したがって、このプラズマ処理装置1によれば、例えば、ガス放出口22を閉塞板11bの内面にのみ形成してガス放出口22から第1内部空間SB1内に放電用ガスGを直接放出する従来の構成と比較して、第1内部空間SB1内、ひいてはこの第1内部空間SB1から放電用ガスGが供給される第2内部空間SB2内での放電用ガスGの流れをより安定させることができる。この結果、このプラズマ処理装置1によれば、噴出口25から放電用ガスGを中心軸Xに沿って安定した状態で吹き出させることができることから、絶縁管11c内に位置している放射器14の先端近傍に発生しているプラズマPを、この放電用ガスGの流れに乗せて、噴出口25から中心軸Xに沿ってより安定して直線状に延びる状態で連続発生させることができる。
【0059】
また、このプラズマ処理装置1によれば、ガス放出口22が、第3内部空間SB3に接する筒体11aの内周面における筒体11aの他方の端部側の部位に、筒体11aの中心軸Xを中心として等角度間隔で複数配設されているため、放電用ガスGが噴出口25から中心軸Xに対して(筒長方向に対して)斜めに放出される状態のときに、各ガス放出口22のうちの少なくとも1つについての放出量を調整することにより、放電用ガスGが噴出口25から中心軸Xに沿って真っ直ぐに放出される状態に確実に調整することができ、これにより、筐体11内において発生しているプラズマPをこの放電用ガスGの流れ(気流)に乗せて、噴出口25から中心軸Xに沿って真っ直ぐに(直線状に)延びる状態で確実に放出させることができる。
【0060】
また、このプラズマ処理装置1によれば、第3内部空間SB3に接する筒体11aの内周面における筒体11aの他方の端部側の部位に、筒体11aの中心軸Xを中心として180度間隔でガス放出口22が2つ配設される構成を採用したことにより、上記した効果(プラズマPが噴出口25から中心軸Xに沿って真っ直ぐに延びる状態で放出させることができるという効果)を奏しつつ、筐体11の構造をより簡略化することができる。
【0061】
また、このプラズマ処理装置1では、複数のガス放出口22のうちの少なくとも1つのガス放出口22から放出される放電用ガスGの放出量を個別に調整する調整弁7を備えて、このガス放出口22からの放電用ガスGの放出量を調整可能としているが、例えば、ガス放出口22毎に、つまりガス放出口22に対応するガス供給口24毎にガス供給部4を個別に接続して、上記した少なくとも1つのガス放出口22に対応するガス供給部4からの供給量自体を調整するという他の構成を採用することもできる。
【0062】
しかしながら、このプラズマ処理装置1のように前者の構成(調整弁7で放出量を調整する構成)を採用することにより、より簡易な構成でありながら、放電用ガスGが噴出口25から中心軸Xに沿って真っ直ぐに放出される状態に確実に調整することができ、これにより、筐体11内において発生しているプラズマPをこの放電用ガスGの流れ(気流)に乗せて、噴出口25から中心軸Xに沿って(筒長方向に沿って)真っ直ぐに延びる状態で確実に発生させることができる。
【0063】
なお、上記のプラズマ処理装置1では、図1に示すように、絶縁管11cにおける一方の端部(図1中の下端部)寄りの内周面を、この一方の端部に向かうに従って徐々に縮径するテーパー面に形成する構成(噴出口25の直径を絶縁管11cにおける閉塞板11b側の直径よりも絞り込む構成)を採用し、かつ筐体11の内面(上記の例では、筒体11aの内周面)に形成するガス放出口22の個数と同数のガス供給口24を筐体11の外面(上記の例では、筒体11aの外周面)に形成し、かつ調整弁7を配管4aに配設する構成を採用しているが、絶縁管11cの内周面の直径を一定にする構成(噴出口25の直径を絶縁管11cにおける閉塞板11b側の直径と同径にする構成)を採用することもできるし、またガス放出口22の個数に拘わらずガス供給口24を1つとする構成を採用することもできるし、調整弁7を供給流路23に配設する構成を採用することもできる。
【0064】
以下、これらの構成を採用したプラズマ処理装置1Aについて、図3,4を参照して説明する。なお、プラズマ処理装置1と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0065】
図3に示すプラズマ処理装置1Aは、プラズマ発生部2A、高周波電源3、ガス供給部4およびテーブル5を備え、テーブル5に載置された処理対象体6にプラズマPを放射してその表面をプラズマ処理可能に構成されている。
【0066】
プラズマ発生部2Aは、一例として、図3に示すように、筐体11A、同軸コネクタ12、給電導体13、および放射器14を備えている。筐体11Aは、筒体11a、閉塞板11b、絶縁管11cおよび取付板11dを備え、筒体11aにおける一方の端部(同図中の上端部)がこの一方の端部に密着して配設された閉塞板11bによって閉塞されることにより、全体として、同図中の下端(筒体11aにおける他方の端部)側が開放端に形成されたトーチ型筐体に構成されている。この構成においては、筒体11aは筐体11Aの周壁として機能している。また、筐体11Aには、グランド電位が付与されている。
【0067】
筒体11aは、図3に示すように、その長さが、取付板11dの厚みを含めた長さが閉塞板11bに立設された放射器14の長さL1よりも長くなるように規定されて、放射器14の先端(同図中の下端)が筐体11Aの開放端(本例では、取付板11dの端面)から突出しない構成となっている。
【0068】
また、筐体11の内面には、ガス供給部4から供給される放電用ガスGを筐体11内に異なる方向で放出するガス放出口22が複数形成されている。本例では、一例として、各ガス放出口22は、筒体11aの内周面における筒体11aの他方の端部側の部位に、筒体11aの中心軸Xを中心として等角度間隔に配設されている。また、本例では、ガス放出口22は、図3,4に示すように、中心軸Xを中心として180度間隔で、絶縁管11cを挟んで互いに対向する状態で2つ配設されている。
【0069】
また、筒体11aには、一例として、図3,4に示すように、閉塞板11bが取り付けられる一方の端部側の端面に開口すると共に、他方の端部側に向けて筒長方向に沿って延びる直方体形状の凹部C1が供給流路23の一部として筒体11aの板厚内に形成されている。なお、閉塞板11bには、この凹部C1の位置に対応して、図3に示すように、閉塞板11bの表面に形成された1つのガス供給口24と凹部C1とを連通させるための貫通孔C2が、供給流路23の一部として、閉塞板11bの板厚方向に沿って形成されている。また、筒体11aの板厚内には、一端側が凹部C1における筒体11aの他方の端部側の部位(奥側の部位)と直角に突き当たって凹部C1と連通し、かつ他端側が対応するガス放出口22に向けて直線的に延出すると共にガス放出口22の近傍において筒体11aの径方向に(中心軸X方向に向けて)直角に折れ曲がってガス放出口22に連通するL字状の流路C3が供給流路23の一部として形成されている。
【0070】
筐体11Aを構成する絶縁管11cは、筐体11を構成する上記した絶縁管11cと比較して、図3,4に示すように、その内径が一定に形成されている点でのみ相違している。このように形成された絶縁管11cは、図3に示すように、他方の端部(同図中の上端部)側を、筒体11aの他方の端部(同図中の下端部)方向から筒体11a内に挿入して、拡径部11fを筒体11aの嵌合部11eに嵌め込んで装着された状態において、筒体11aの他方の端部(同図中の下端部)に取り付けられた取付板11dによって筒体11aに固定されている。このようにして固定された絶縁管11cは、閉塞板11b側の端部(他方の端部)が第1貫通孔21の縁部に達し、筐体11の開放端側の端部(一方の端部)が取付板11dの端面に達するように、その長さ(筒長)が規定されている。
【0071】
この構成により、絶縁管11cは、筐体11(具体的には筒体11a)の内部に筐体11の筒長方向に沿って、かつ筐体11(筒体11a)と同軸に配設されると共に、一方の端部(筐体11の他方の端部側の端部)が筐体11の他方の端部(開放端側の端部)に全周に亘って密着した状態で連結される。これにより、筐体11の他方の端部側には、絶縁管11cの一方の端部により、絶縁管11cの他方の端部の内径と同一の内径の噴出口25が形成される。
【0072】
また、このプラズマ処理装置1Aでは、調整弁7としての調整ねじが、図3,4に示すように、供給流路23の一部を構成する各供給流路23(流路C3)に配設されている。具体的には、調整弁7としての調整ねじが、筒体11aの外周面から筒体11aの内部の対応する供給流路23に向けて、先端が供給流路23の内部に突出し得るようにねじ込まれて配設されている。この構成により、調整弁7としての調整ねじの筒体11aへのねじ込み量を変化させて、調整ねじの先端の供給流路23の内部への突出長を調整することにより、この部位での供給流路23の開口面積を変化させることができるため、ガス放出口22から放出される放電用ガスGの放出量を調整することが可能となっている。
【0073】
このプラズマ処理装置1Aでは、ガス供給部4から1本の配管4aを介して筐体11Aに配設された1つのガス供給口24に供給された放電用ガスGは、まず、閉塞板11bに形成された供給流路23(貫通孔C2)を介して、筒体11aに形成された供給流路23(凹部C1)に供給され、さらにこの供給流路23(凹部C1)から分岐すると共に調整弁7が配設された2つの供給流路23(流路C3)を介して各ガス放出口22から第3内部空間SB3内に筒体11aの径方向に沿って放出される。この場合、各ガス放出口22は筒体11aの中心軸Xを中心として等角度間隔で、かつ径方向に沿って形成されているため、各ガス放出口22からは径方向に沿って放電用ガスGが放出される。つまり、放電用ガスGは、第3内部空間SB3内に各ガス放出口22から互いに異なる方向から放出(供給)される。
【0074】
各ガス放出口22から放出された放電用ガスGは、プラズマ処理装置1と同様にして、供給流路23と直交する絶縁管11cの外周面にそれぞれ吹き付けられて、この外周面に沿ってそれぞれ分散されるため、互いに混ざり合いながら第3内部空間SB3内を閉塞板11bに向けて移動して、絶縁管11cの全周から第1内部空間SB1内に放出される。この第1内部空間SB1内に放出された新たな放電用ガスGは、第1内部空間SB1内に既に存在していた放電用ガスGを第1内部空間SB1内から絶縁管11c内(第2内部空間SB2内)に押し出す。このようにして第1内部空間SB1から第2内部空間SB2内に放電用ガスGが供給されることにより、第2内部空間SB2内には、閉塞板11b側から噴出口25側に向かう放電用ガスGの気流が連続して発生して、放電用ガスGは筐体11の他方の端部(具体的には、この他方の端部に形成された噴出口25)から連続的に放出される。
【0075】
このプラズマ処理装置1Aにおいても、筐体11の内面(本例では、筒体11aの内周面)には、ガス供給部4から供給される放電用ガスGを筐体11内に互いに異なる方向で放出するガス放出口22が複数形成されているため、放電用ガスGが噴出口25から中心軸Xに対して斜めに放出される状態のときに、各ガス放出口22のうちの少なくとも1つの放出量を調整することにより、放電用ガスGが噴出口25から中心軸Xに沿って真っ直ぐに放出される状態に調整することができ、これにより、筐体11内において発生しているプラズマPをこの放電用ガスGの流れ(気流)に乗せて、噴出口25から中心軸Xに沿って真っ直ぐに(直線状に)延びる状態で連続して放出させることができる。
【0076】
また、このプラズマ処理装置1Aによれば、筐体11に配設されたガス供給口24が1つであるため、配管4aを介してガス供給部4と接続する作業に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0077】
また、このプラズマ処理装置1Aでも、プラズマ処理装置1と同様にして、筐体11内に、第1内部空間SB1、第2内部空間SB2および第3内部空間SB3が形成され、かつ複数のガス放出口22のうちの少なくとも1つのガス放出口22(本例では、2つのガス放出口22のすべて)が第3内部空間SB3に接する筒体11aの内周面における筒体11aの他方の端部側の部位に配設されて、第3内部空間SB3を介して第1内部空間SB1と連通する。
【0078】
したがって、このプラズマ処理装置1Aによっても、ガス放出口22から第1内部空間SB1内に放電用ガスGを直接放出する構成と比較して、第1内部空間SB1内、ひいてはこの第1内部空間SB1から放電用ガスGが供給される第2内部空間SB2内での放電用ガスGの流れをより安定させることができることから、噴出口25から放電用ガスGを中心軸Xに沿って安定した状態で吹き出させることができ、これによってプラズマPをこの放電用ガスGの流れに乗せて、噴出口25から中心軸Xに沿ってより安定して直線状に延びる状態で連続発生させることができる。
【0079】
また、このプラズマ処理装置1Aにおいても、ガス放出口22が、第3内部空間SB3に接する筒体11aの内周面における筒体11aの他方の端部側の部位に、筒体11aの中心軸Xを中心として等角度間隔で複数配設されているため、放電用ガスGが噴出口25から中心軸Xに対して斜めに放出される状態のときに、各ガス放出口22のうちの少なくとも1つの放出量を調整することにより、放電用ガスGが噴出口25から中心軸Xに沿って真っ直ぐに放出される状態に確実に調整することができ、これにより、筐体11内において発生しているプラズマPをこの放電用ガスGの流れ(気流)に乗せて、噴出口25から中心軸Xに沿って真っ直ぐに(直線状に)延びる状態で確実に放出させることができる。
【0080】
また、このプラズマ処理装置1Aによれば、第3内部空間SB3に接する筒体11aの内周面における筒体11aの他方の端部側の部位に、筒体11aの中心軸Xを中心として180度間隔でガス放出口22が2つ配設される構成を採用したことにより、上記した効果(プラズマPが噴出口25から中心軸Xに沿って真っ直ぐに延びる状態で放出させることができるという効果)を奏しつつ、筐体11の構造をより簡略化することができる。
【0081】
また、このプラズマ処理装置1Aによれば、複数のガス放出口22のうちの少なくとも1つのガス放出口22から放出される放電用ガスGの放出量を調整する調整弁7(調整ねじ)を備えて、このガス放出口22からの放電用ガスGの放出量を調整可能としたことにより、調整弁7で放出量を調整するという簡易な構成でありながら、放電用ガスGが噴出口25から中心軸Xに沿って真っ直ぐに放出される状態に確実に調整することができ、これにより、筐体11内において発生しているプラズマPをこの放電用ガスGの流れ(気流)に乗せて、噴出口25から中心軸Xに沿って真っ直ぐに延びる状態で確実に放出させることができる。また、このプラズマ処理装置1Aによれば、調整弁7(調整ねじ)を筐体11内に配設する構成を作用したことにより、プラズマ処理装置1Aを全体として小型化することができる。
【0082】
また、上記のプラズマ処理装置1,1Aでは、筒体11aの内周面に2つのガス放出口22を中心軸Xを中心として等角度間隔(180度間隔)で配置する構成を採用しているが、ガス放出口22の数は2つに限定されるものではなく、3つ以上の任意の数に規定することができる。例えば、図5に示すように、プラズマ処理装置1において、ガス放出口22の数を2つから4つに増加させる構成を採用することもできる。この構成においては、各ガス放出口22は、中心軸Xを中心として90度間隔で筒体11aの内周面に配設される。なお、この構成を採用したプラズマ処理装置1では、ガス放出口22の数に対応してガス供給口24の数も4つとなるため、一方の端部がガス供給部4に連結された配管4aの他方の端部を4つに分岐させて、各ガス供給口24に連結させる。
【0083】
このようにして、ガス放出口22を3つ以上の任意の数(通常は4つ程度まで)に規定することにより、噴出口25から放出される放電用ガスGの方向を中心軸Xに対して全方向に微調整することができるため、放電用ガスGを中心軸Xに沿って真っ直ぐに放出される状態に一層確実に調整することができ、これにより、筐体11内において発生しているプラズマPをこの放電用ガスGの流れ(気流)に乗せて、噴出口25から中心軸Xに沿って真っ直ぐに延びる状態で一層確実に発生させることができる。
【0084】
また、上記のプラズマ処理装置1,1Aでは、筐体11の内面の一例としての筒体11aの内周面に、各ガス放出口22を形成する構成を採用しているが、図1において破線で示すように、複数(この例では3つ)のガス放出口22のうちの1つのガス放出口22を、筐体11の内面の一例としての閉塞板11bの内面に形成して、調整弁7を配設した配管4aを介してガス供給部4と連結する構成を採用することもできる。
【0085】
なお、放射器14の形状については、棒状(柱状)に形成した例を挙げて説明したが、柱状に限定されず、直方体や樋状体(ハーフパイプ状体)などの板状に構成することもできるし、筒状に構成することもできる。
【符号の説明】
【0086】
1,1A プラズマ処理装置
2,2A プラズマ発生部
3 高周波電源
4 ガス供給部
6 処理対象体
11,11A 筐体
11a 筒体
11b 閉塞板
11c 絶縁管
14 放射器
22 ガス放出口
23 供給流路
24 ガス供給口
25 噴出口
G 放電用ガス
P プラズマ
S1 高周波信号
SB1 第1内部空間
SB2 第2内部空間
SB3 第3内部空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部が閉塞板によって閉塞されると共に他方の端部に噴出口が形成された筒体を有する筐体と、前記閉塞板の内面に前記筐体の筒長方向に沿って延出するように立設されると共に入力した高周波信号を放射する棒状の放射導体とを備え、ガス供給部によって前記筐体内にプラズマ放電用ガスが供給され、かつ前記放射導体が前記高周波信号を放射している状態において、前記放射導体の先端近傍から前記噴出口を介して当該筐体の外方に延びるプラズマを発生させるプラズマ処理装置であって、
前記筐体の内面には、前記ガス供給部から供給される前記プラズマ放電用ガスを当該筐体内に互いに異なる方向で放出するガス放出口が複数形成されているプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記筐体の内部に前記筒長方向に沿って、かつ前記放射導体の前記先端近傍を内包する状態で配設されると共に、前記筒体の前記他方の端部側の端部が当該筒体の当該他方の端部に全周に亘って密着した状態で連結された絶縁管を備え、
前記筐体の内部には、前記絶縁管の前記閉塞板側の端部から当該閉塞板の内面までの領域で構成された第1内部空間と、前記絶縁管の内側領域で構成されて前記第1内部空間と前記噴出口とを連通させる第2内部空間と、前記絶縁管の外周面と前記筒体の内周面との間で挟まれた領域で構成された第3内部空間とが形成され、
前記複数のガス放出口のうちの少なくとも1つのガス放出口は、前記第3内部空間に接する前記筒体の内周面における当該筒体の前記他方の端部側の部位に配設されて、当該第3内部空間を介して前記第1内部空間と連通する請求項1記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記第3内部空間に接する前記筒体の内周面における当該筒体の前記他方の端部側の部位には、前記ガス放出口が、当該筒体の中心軸を中心として等角度間隔で複数配設されている請求項2記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記ガス放出口は、180度間隔で2つ配設されている請求項3記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記複数のガス放出口のうちの少なくとも1つのガス放出口から放出される前記プラズマ放電用ガスの放出量を調整する調整弁を備えている請求項1から4のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記筐体には、配管を介して前記ガス供給部と接続される1つのガス供給口と、当該ガス供給口を介して前記ガス供給部から供給される前記プラズマ放電用ガスを前記複数のガス放出口に供給する供給流路とが配設されている請求項1から5のいずれかに記載のプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−98018(P2013−98018A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239915(P2011−239915)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000214836)長野日本無線株式会社 (140)
【Fターム(参考)】