説明

プラズマ分光分析装置

【課題】試料溶液に放電を生じさせ、そのプラズマ中の発光により分析を行うときの検出感度と検出精度及び再現性を向上させる。
【解決手段】狭小部を設けた流路101に導電性の試料溶液を満たし、流路に電界を印加して生じた気泡にプラズマを発生させ、流路中の狭小部以外の領域を計測の対象領域として発光を計測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ発光を利用して液体試料の分析を行うプラズマ分光分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景技術として、特許第3932368号公報(特許文献1)がある。特許文献1には、絶縁性材料で形成された流路に流路の断面積よりも著しく小さい断面積を有する狭小部を設け、流路及び狭小部に導電性液体を満たした後、狭小部に電界が通過するように狭小部に電界を印加し、狭小部でプラズマを発生させるプラズマの発生方法及び元素分析方法が記載されている。また、絶縁性材料で形成された流路に流路の断面積よりも著しく小さい断面積を有する狭小部が配設され、狭小部に電界が通過するように狭小部に電界を印加するための手段が配設されてなるプラズマの発生装置及びそのプラズマの発生装置を有する発光分光分析装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3932368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、狭小部で気泡が生じ、生じた気泡中にプラズマを発生させるとの記載がある。また、発生したプラズマが、流路の狭くなった部分における容積以上に大きく発達した場合には、プラズマの形や明るさが激しく変化するため、発光強度のばらつきが大きいとの記載がある。しかし、狭小部の大きさよりもはるかに大きく気泡を発達させ、プラズマをはるかに大きく発達させることで、従来知られていない現象を生じさせ、検出感度と検出精度及び再現性を向上させることについては記載されていない。
【0005】
特許文献1には、検体の電気伝導度を、プラズマの発生及び測定に都合のよい電気伝導度に調整することにより、精度のよい測定を実施できるとの記載がある。しかし、電圧印加時の電流の時間変化を計測することや、その電流の時間変化の情報を利用して、検出感度と検出精度及び再現性を向上させることについては記載されていない。
【0006】
本発明は、試料溶液中に放電を生じさせ、そのプラズマ中の発光を用いて分析を行う方法において、検出感度と検出精度及び再現性を向上させるものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、狭小部を設けた流路に導電性液体を満たし、流路に電界を印加して気泡を生じさせ、気泡にプラズマを発生させる分光分析装置であって、流路中の狭小部以外の領域を計測の対象領域とするものである。
【0008】
また、別な一例を挙げるならば、流路に導電性液体を満たし、流路に電界を印加して気泡を生じさせ、気泡にプラズマを発生させる分光分析装置であって、1回の電圧印加に対して生じる複数回の発光のうち、2回目以降の特定の一回の発光もしくは特定の複数回の発光を計測するものである。
【0009】
また、別な一例を挙げるならば、流路に導電性液体を満たし、流路に電界を印加して気泡を生じさせ、気泡にプラズマを発生させる分光分析装置であって、電界印加時の電流の時間変化を用いて、発光の計測のタイミングを制御するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、試料溶液に放電を生じさせ、そのプラズマ中の発光を用いて分析を行う方法において、検出感度と検出精度及び再現性を向上させることができる。
【0011】
上記した以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】プラズマ発光分析装置の構成例を示す図である。
【図2】流路の例を示す図である。
【図3】電流の時間変化を示す図である。
【図4A】気泡と発光の様子を表す画像である。
【図4B】気泡と発光の様子を表す画像である。
【図4C】気泡と発光の様子を表す画像である。
【図4D】気泡と発光の様子を表す画像である。
【図4E】気泡と発光の様子を表す画像である。
【図4F】気泡と発光の様子を表す画像である。
【図4G】気泡と発光の様子を表す画像である。
【図4H】気泡と発光の様子を表す画像である。
【図4I】気泡と発光の様子を表す画像である。
【図4J】気泡と発光の様子を表す画像である。
【図5】気泡の時間変化の説明図である。
【図6】発光の空間分布の例を示す図である。
【図7】発光の空間分布の例を示す図である。
【図8】プラズマ発光分析装置の構成例を示す図である。
【図9】発光の分光スペクトルの例を示す図である。
【図10】計測された発光の解析結果を説明する図である。
【図11】発光を計測する手順の例を示すフローチャートである。
【図12】プラズマ発光分析装置の構成例を示す図である。
【図13】発光と電流、正味発光と背景光、正味発光と背景光の比の時間変化を示す図である。
【図14】参照溶液を利用した解析の例を示す図である。
【図15】プラズマ発光分析装置の構成例を示す図である。
【図16】分析の手順を説明するフローチャートである。
【図17】流路の例を示す図である。
【図18A】電圧印加前の様子を表す画像である。
【図18B】気泡と発光の様子を表す画像である。
【図19】発光の空間分布の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明では、狭小部の大きさよりもはるかに大きく気泡を発達させ、プラズマを狭小部よりはるかに大きく発達させる。そのことにより、従来知られていない現象が起こり、流路の狭小部以外の領域を計測対象とすることで、検出感度を向上させることができる。また、狭小部の大きさよりもはるかに大きく気泡を発達させ、プラズマを狭小部よりはるかに大きく発達させることで、狭小部を避けて計測を行うことが可能となる。
【0014】
気泡及びプラズマの大きさは、印加電圧の大きさや電圧印加時間の他に、流路の形状や電極の配置、試料溶液の組成等によって変わるため、一概にその生成条件を特定することは難しいが、印加電圧は望ましくは500V以上、より望ましくは1kV以上、より望ましくは1.5kV程度以上、更に望ましくは2.5kV以上である。電圧印加時間は望ましくは0.1ミリ秒以上、より望ましくは0.2ミリ秒以上、より望ましくは0.5ミリ秒以上、更に望ましくは0.8ミリ秒以上である。
【0015】
試料溶液は電気伝導性であることが必要で、一般に元素分析で使われる酸、例えば硝酸などが適当である。その他にも塩酸、硫酸など各種の酸を使うことも可能であり、また電気伝導性を持つ塩類が含まれる溶液も用いることができる。
【0016】
計測の対象となる適切な領域は、気泡及びプラズマが存在する範囲内であり、気泡及びプラズマの大きさによるため、一概に特定することは難しいが、狭小部の電圧印加方向の長さbを基準に取ると、以下のように考えられる。狭小部の中心と計測対象となる領域の中心の距離が、bに比べて、望ましくは5倍程度以上、より望ましくは3倍程度以上、もっと望ましくは2倍程度以上、さらに望ましくは1倍程度以上である。発光は気泡及びプラズマの存在する範囲内に生じるため、狭小部の中心から最も離れた流路の範囲までが計測の対象領域として適切である。
【0017】
一回の電圧印加に対して複数回の発光を生じさせる条件は、印加電圧、電圧印加時間の他に、流路の形状や電極の配置、試料溶液の組成によって変わるため、一概にその生成条件を特定することは難しいが、気泡及びプラズマが狭小部の大きさに比べて十分に大きくなる条件とほぼ同等である。狭小部を挟んで流路に印加する電圧は、望ましくは500V以上、より望ましくは1kV以上、もっと望ましくは1.5kV程度以上、もっと望ましくは2.5kV以上である。電圧印加時間は望ましくは0.5ミリ秒以上、より望ましくは0.8ミリ秒以上である。
【0018】
以下に述べるとおり、発光は電流の昇降に密接に関係しているが、電圧印加直後の電流のピークは、電圧印加による電流の上昇から、ジュール熱による気泡の発生により電気抵抗が増大し電流値が減少するまでに対応しており、発光はほぼ観察されない。よって、この電圧印加直後の電流値のピークを除き、その次の電流のピークから、各電流のピークに対して発光が伴い、電流のピークが複数回観察される条件で発光が複数回起こることになる。
【0019】
電界印加時の電流の時間変化を用いて、発光の計測のタイミングを制御する場合、大きく分けて2つの方式がある。一つの方式は露光のタイミングを制御して、適当な時間区間での発光を全て積算して計測する方式である。例えば、検出素子にCCDカメラを使って発光を検出する場合などに適用できる。この場合には、例えば、電流の時間変化を同時に計測し、電流値が事前に設定された条件を満たす場合に、露光の信号を検出器に伝達して、発光の計測を行う。また、別なやり方では、事前に同条件で電流の時間変化を計測しておき、記録された電流の時間変化から、事前に露光のタイミングを決定しておき、この露光のタイミングを用いて、発光の計測を行うこともできる。
【0020】
もう一つの方式は、発光の時間変化を全てメモリなどの記憶装置に記録しておき、電圧印加が終わったあとに、記録された発光の時間変化から適当な時間区間の発光量を読み取り、もしくは積分する方式である。例えば、検出素子に光電子増倍管を使って発光を検出する場合などに適用できる。この場合には、例えば、電流の時間変化を同時にメモリなどの記憶装置に記録しておき、電圧印加が終わった後に、記録された電流の時間変化を用いて、発光データの処理を行う。また、別なやり方では、事前に同条件で電流の時間変化を計測しておき、記録された電流の時間変化から、発光のデータを読み取る、もしくは積分する時間区分を決めることもできる。
【0021】
また、分析対象物質を含む試料溶液に対する電界印加時の電流の時間変化を計測し、その後、参照溶液の電界印加時の電流の時間変化が試料溶液の電流の時間変化に整合するように参照溶液を調整し、調整後の参照溶液に電圧を印加して発光を計測し、計測された発光強度を参照して、試料溶液中の分析対象物質の量を推定することもできる。
【0022】
参照溶液には、試料溶液の主な組成が分かっている場合には、その主な組成を構成する種の溶液を使用することが望ましい。例えば酸の種類が分かっている場合には、同じ種類の酸を使うことが望ましい。元素分析には硝酸がよく使われることから、硝酸を使うことが多くの場合適切である。塩酸、硫酸など、その他の酸を使うことも適当である。また、試料溶液の電気伝導度が主に溶けている塩に由来する場合には、同種の塩を含む溶液を用いることが適切であり、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどが例として挙げられる。また試料溶液に有機溶媒が含まれる場合には、有機溶媒を含む調整溶液を使用することも適当である。エタノール、アセトンなどが例として挙げられる。
【0023】
上記の調整とは、例えば硝酸を用いる場合には、濃度の濃い硝酸と水の混合比を少しずつ変えた溶液に対して電圧印加時の電流の時間変化を計測し、試料溶液への電圧印加時の電流の時間変化に最も近いものを選択することや、さらに電流の時間変化同士を近づけるために混合比を変えた溶液を作成することであり、このように選択もしくは作成した溶液を参照溶液として使用する。硝酸以外の参照溶液を用いる場合にも、濃度の濃いその種の溶液を水の混合比を変えて、溶液の電流の時間変化が、試料溶液の時間変化に近くなるように調整して、これを参照溶液とすればよい。混合するものの組み合わせの中に水を使うことが容易ではあるが、それに限定されることはなく、3種以上の溶液を組み合わせてもよい。
【0024】
さらに、参照溶液として、計測対象となる元素を含む溶液を調整することも有効である。計測対象となる元素を含む参照溶液を調整して使用することで、さらに正確な検量線を作成することができ、検出感度と検出精度及び再現性を向上させることができる。
【0025】
本発明によると、例えば、試料溶液中に分析対象とする元素が従来であれば分析できないような低い濃度で含まれる場合にでも、検出することができ、精度よく定量することができる。また、例えば、従来であれば分析の前に濃縮の工程を入れないと分析対象とする元素の濃度が低すぎて検出できなかった試料溶液に対して、濃縮の工程を省いて分析を行うことができる。また、例えば、濃縮の工程を行うことが適切でない分析対象に対しても、分析を行うことができる。また、例えば、従来であれば試料溶液を希釈すると分析対象とする元素の濃度が薄くなり検出できないため、希釈を行うことが適切でなかった試料溶液に対しても、希釈した後に分析を行うことができる。また、例えば、従来であれば検出の再現性が悪いため、複数回の分析を行わなければならなかった試料溶液に対しても、1回を含む、より少ない回数の分析で信頼性のより高い結果を得ることができる。
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0027】
[実施例1]
本実施例では、プラズマ発光分析装置の構成例を説明し、併せて試料溶液に対する放電による発光現象を説明し、本発明に至った新しい知見について説明する。
【0028】
図1は、本実施例のプラズマ発光分光装置の構成例を示す概略図である。
【0029】
流路101は石英ガラス102の中に形成されており、流路101には、その上流と下流にある貫通穴103を通じて、溶液を流すことができる。コネクタ105,110は、O−リング104を石英ガラス102に押し付けており、外部から流路101へ溶液を流す際の液漏れを防いでいる。コネクタ105,110には電極107,112がそれぞれ付属しており、流路101中の溶液に対して電圧を印加することができる。本実施例では電極107,112として、直径0.5mmの白金線を用いた。コネクタ105,110には、配管接続口106,111が設けられている。
【0030】
コネクタ105の配管接続口106には配管108が接続され、配管108にはシリンジポンプ109が接続されている。シリンジポンプ109を制御することで、シリンジポンプ109に入った溶液を流路101に送液することができる。シリンジポンプ109は信号線119を介してコンピュータ122に接続されており、コンピュータ122によって動作が制御される。他方のコネクタ110の配管接続口111には配管113が接続され、配管113の先には廃液容器114が設置されている。
【0031】
電極107,112は、それぞれ高圧電線113,114を介して電源116に接続されている。本実施例では、電源116として直流パルス電源を用いた。高圧電線113の途中に電流計測のための電流計115が直列に接続されている。
【0032】
コンピュータ122は、信号線117を介して電源116に接続されている。コンピュータ122は、入力された情報に基づき、電源116の出力電圧の設定やトリガーを用いたオン・オフのタイミング制御を行うことができる。コンピュータ122は、信号線118を介して電流計115に接続されており、電流計115の計測データを取り込み、計測データを情報処理して、電源116の制御に用いることができる。
【0033】
カメラ121は信号線120を介してコンピュータ122に接続されている。コンピュータ122は、入力されたカメラの設定情報をカメラ121の設定に反映させ、カメラ121で撮影された画像はコンピュータ122に記録され、情報処理される。また、コンピュータ122は、カメラ121の露光制御用の信号を出力し、カメラ121は露光制御用信号を受け取って動作する。
【0034】
流路101で起こる発光は、レンズ123,124を介して、カメラ121で撮影される。発光波長の情報を取得する場合には、光学フィルター125を設置することで、光学フィルター125の透過特性に応じた画像を取得することができる。レンズ123を流路101に対してコネクタ105,110の逆側に設置し、流路全域がコネクタ105,110の陰になることなく撮影できるようにすることが重要である。発光に関連する気泡とプラズマの寸法が大きいため、コネクタの側から撮影すると、コネクタの周辺はコネクタの陰になるため、撮影できない。
【0035】
カメラ121で撮影され、コンピュータ122のメモリに記録された、発光に関連するデータと、電流計115で計測され、コンピュータ122のメモリに記録された、電流の時間変化に関するデータを合わせ、コンピュータ122で情報処理を行うこともできる。コンピュータ122は、上記のように、制御部としての機能と演算部としての機能を同時に行う。
【0036】
図2は、本実施例で使用した流路101の例を説明する図である。流路101は幅A、全長Bで、中央に幅a、長さbの狭小部を持つ、深さが均一の流路である。狭小部の幅aは流路の幅Aに比べて狭く、望ましくは流路の幅Aの1/3以下、さらに望ましくは1/10以下である。狭小部の長さbは全長Bに比べて短く、望ましくは全長Bの1/5以下、さらに望ましくは1/10以下である。流路の全長Bは、1mm以上30cm以下であることが望ましい。流路の深さは狭小部の幅と同程度、もしくは狭小部の長さと同程度以下であることが望ましい。本実施例においては、流路の幅Aを3mm、流路の全長Bを13mm、狭小部の幅aを0.10mm、狭小部の長さbを0.40mmとし、流路の深さを0.08mmとした。流路101の左右にある貫通穴103の位置を破線で示す。コネクタとの接続部分の段差に気泡などが付着して再現性が低下することを防ぐため、貫通穴103の直径はコネクタの内部の穴径と同程度であることが望ましい。
【0037】
図1及び図2に示したプラズマ発光分析装置に対して、鉛100ppmを含む0.1規定の硝酸溶液を試料溶液として流路に供給し、電圧を印加して、発光を撮影した手順を以下に示す。なお、試料溶液として鉛を含む溶液を用いたのはあくまで説明のための一例であり、他の元素を含む溶液に対しても同様の手順で分析を実行することが可能であり、同様の現象、効果が観察できる。
【0038】
空の流路101に対して、まず水を流し、次いで0.1規定の硝酸を流し、洗浄した。まず、シリンジポンプ109のシリンジに水を入れ、コンピュータ122からの指示でシリンジポンプ109を動かすことで、配管108、配管接続口106、コネクタ105の内部、貫通穴103を介して、流路101に水を流し入れて洗浄し、下流側の貫通穴103、コネクタ110の内部、配管接続口111、配管113を介して、廃液容器114に洗浄後の水を回収した。次に、同様の手順で0.1規定の硝酸を流し、流路101を洗浄した。
【0039】
次に、試料溶液である、鉛100ppmを含む0.1規定の硝酸溶液を同様の手順で流路101に流し入れ、電圧印加による発光を行った。適切な印加電圧としては、望ましくは500V以上、より望ましくは1kV以上、更に望ましくは1.5kV程度以上、更に望ましくは2.5kV以上である。ここでは、印加電圧2.5kV、電圧印加パルス幅0.8ミリ秒もしくは1.8ミリ秒とした。本実施例では、電源116の極性を、高圧電線114側に正の高電圧を印加し、高圧電線113側がグラウンドとなるようにセットした。つまり、試料送液の上流側の電極107がマイナス極、試料送液の下流側の電極112がプラス極であるように、電極の極性をセットした。電極の極性と試料溶液の流れの方向の関係は、この組み合わせに限定されるものではなく、逆の組み合わせでもよい。
【0040】
コンピュータ122は電圧の印加開始信号を発生する。電源116は、コンピュータ122からの信号を受け、その信号に合わせて流路101に対して電圧の印加を行う。カメラ121の露光制御は、電圧印加信号と同様の信号をコンピュータ122からカメラ121に入力して行った。電流計115による電流計測は、電源116への電圧印加開始の信号と同期した信号をコンピュータ122から出力し、電流計115への信号として入力して行った。
【0041】
図3は、本実施例において電流計115で計測された電流の時間変化を示す図である。縦軸は電流、横軸は時間であり、電圧の印加開始時間を時間ゼロとした。電圧印加パルス幅は1.8ミリ秒である。電圧印加直後の、80ミリアンペア程度の最大値をもつ、0.05ミリ秒付近の電流ピークの後、電圧印加後0.8ミリ秒までのなだらかなピークをもつ電流ピークと、電圧印加後0.8ミリ秒以降の鋭い立ち上がりをもつ電流ピークの、3つのピークが観察された。
【0042】
以下に述べるとおり、発光は電流の昇降に密接に関係しているが、電圧印加直後の電流のピークは、電圧印加による電流の上昇からジュール熱による気泡の発生により電気抵抗が増大し電流値が減少するまでに対応しており、このとき発光はほぼ観察されない。よってこの電圧印加直後の電流値のピークを除いて、電流のピークを順に数え、その順序で発光の回数をカウントすることとする。本実施例及び実施例2,3では、具体的には、電圧印加後の0.8ミリ秒までのピークに対応する発光を1回目の発光、電圧印加後0.8ミリ秒以降1.8ミリ秒までのピークに対応する発光を2回目の発光と記載する。
【0043】
図4Aから図4Jは、本実施例で、高速カメラによって撮影された、電圧印加時に発生する気泡と発光の様子を表す画像の例である。撮影した画像を、電圧印加開始からの時間経過の順に示す。各図の左上に記載した時間は、電圧印加開始時を基点とした経過時間を示している。図1に示したカメラ121として高速カメラを使用し、図3に示した電流の時間変化の計測と同時に撮影したものである。撮影の際には流路を見やすくするために照明で照射し、光学フィルター125は使用しなかった。
【0044】
図4Aは、電圧印加後87マイクロ秒後の撮影画像に説明を付け加えたものである。まず、図4Aから図4Jの全てに共通する、流路とその周辺の説明を行う。中央に狭小部を持つ流路があり、流路の両側に貫通穴がある。貫通穴の中には電極である直径0.5mmの白金線がある。右側の電極がマイナス電極、左側の電極がプラス電極である。試料溶液は図の右から左の方向へ流れている。流路に対してコネクタの逆側から撮影しているため、図中のO−リングやコネクタに妨げられずに、流路内部の観察が可能となっている。
【0045】
電圧印加前の流路には試料溶液が満たされており、当然のことながら気液界面は存在しないが、電圧印加後の図4Aでは、流路の狭小部からほぼ左右対称の位置に、気液界面が観察できる。これは、狭小部で発生した気泡が、ほぼ左右均等に広がっていることを示すものであり、気液界面の狭小部側が気泡、気液界面の両電極側が試料溶液になっている。
【0046】
図4Bは、電圧印加後187マイクロ秒後の画像に説明を付け加えたものである。気泡が流路の狭小部分に比べてはるかに大きくなり、気液界面が狭小部から大きく離れて、コネクタの近傍の位置に観察できる。また、狭小部を貫いて左右に大きく広がる線状の発光が見える。この図では、発光は、狭小部から右の方に向かってはほぼ水平に、左の方に向かって若干左上がりに、それぞれ線状に見える。線状に見える発光の位置は、電圧印加パルス毎に、少しずつ異なるが、狭小部と両電極を結ぶ線の近傍にあることがほとんどである。この発光はプラズマに起因している。この図から、この条件下では、気泡と、発光及びプラズマが、狭小部よりはるかに大きな領域に存在していることが分かる。
【0047】
図4Cは、電圧印加後337マイクロ秒後の画像に説明を付け加えたものである。本実施例の条件では、気泡が最も大きくなるのはこのタイミングであり、発光を示す図中の白い線が最も濃く撮影されている。気液界面は、狭小部の中心から計測して約4mm程度の位置にあり、狭小部の長さ0.4mmに比べて約10倍の距離にある。1回目の発光が最も高い発光強度を持つのはこのタイミング近辺であり、発光は明らかに狭小部に限定されておらず、狭小部を大きくはみ出す大きさとなっている。カメラの感度にもよるが、例えば、狭小部の中心から約3mm程度離れたところまで発光は観察でき、狭小部の長さ0.4mmに比べて約8倍の距離まで発光を観察できる。
【0048】
図4Aから図4Cに示される通り、本実施例の条件では、気泡は時間経過ともに中心対称の形で大きく成長していき、狭小部をはるかに大きくはみ出す大きさになっている。気泡が膨らんで行くことから、気泡の内部は1気圧より高い圧力がかかっていることが分かる。
【0049】
図4Dは電圧印加後612マイクロ秒後の画像、図4Eは電圧印加後837マイクロ秒後の画像であり、それぞれに説明を付け加えたものである。図4Dから図4Eにかけては、気泡が縮んでおり、発光強度が小さくなっていることが分かる。特に図4Eのタイミングでは、明確な発光の線は確認できない。狭小部に強く見える光は、照明が狭小部のガラスによって散乱した光によるものであり、発光を主因とするものではない。このタイミングは、図3に示す通り、第1回目の発光に対応する電流値がほぼ減少し切った領域に相当している。
【0050】
図4Fは、電圧印加後1087マイクロ秒後の画像に説明を付け加えたものである。図4Fは2回目の発光が開始したタイミングを捉えている。狭小部から見て左にある、プラス極側の気液界面が右に向く凸の形をとっており、その凸部の先端と狭小部からみて右にあるマイナス極側の気液界面との間で放電が生じ、発光している。気液界面の位置は、狭小部の中心から約2mm程度のところにあり、狭小部の長さ0.4mmに対して、約5倍の距離にある。
【0051】
図3で分かる通り、2回目の発光の開始のタイミングで、電流は急激に上昇する。撮影を繰り返した結果、2回目の発光が開始するタイミングでの、左右の気液界面間の距離は、平均4.5mmであった。放電開始電圧Vと、物質の圧力pと放電距離dの積の間には、パッシェンの法則が成り立ち、物質固有のパッシェン曲線の関係をとる。水蒸気のパッシェン曲線に対して、この気液界面間の距離と印加電圧を当てはめると、気泡の内部気圧は0.1気圧程度であり、減圧になっていることが分かる。
【0052】
図4Gは、電圧印加後1237マイクロ秒後の画像、図4Hは電圧印加後1387マイクロ秒後の画像であり、それぞれに説明を付け加えたものである。図4Gと図4Hは2回目の発光中の画像であり、狭小部から見て左にある、プラス極側の気液界面の凸部先端が少しずつ押されて開くような形に変化していることと、その位置があまり大きくは移動しないことが分かる。逆に、狭小部からみて右にあるマイナス極側の気液界面は、2回目の発光の途中で大きく形状が変化し、あたかも吹き飛ばされているような様子が見て取れる。いずれの側の気液界面も狭小部から離れ、気泡が大きくなる方向に移動している。
【0053】
図4Iは、電圧印加後1512マイクロ秒後の画像に説明を付け加えたものである。図4Iは、2回目の発光が停止したタイミングを捉えている。図3で分かるとおり、2回目の発光の停止のタイミングで、電流は急激に低下する。放電により気液界面間の距離が長くなり、その距離に対して放電に必要な電圧が十分ではなくなり、放電が停止し、発光が停止したと考えられる。
【0054】
図4Jは、電圧印加後1812マイクロ秒後の画像に説明を付け加えたものである。図4Jは、電圧印加を停止した直後の画像である。図4Iに続き、発光は観察されない。
【0055】
図3と図4Aから図4Jを用いて説明したとおり、電流値と気泡及び発光の挙動は密接に相関していることが分かる。また、本実施例のような条件下では気泡が狭小部の大きさに比べてはるかに大きく成長し、また一回の電圧印加に対して複数回数の発光を実現できることが分かる。
【0056】
図5は、気液界面の位置と気液界面間の距離の時間変化を説明する図である。図4Aから図4Jと同じ撮影データを用いて作成した。気液界面の位置は、左(プラス極側)と右(マイナス極側)の気液界面いずれに対しても、狭小部の中心を原点として計測した絶対値であり、気液界面間の距離は左右の気液界面の位置を合計したものに相当する。
【0057】
プラス極側とマイナス極側で若干の違いはあるが、気液界面の位置は、狭小部の中心から最大4mm程度もしくはそれ以上になることが分かる。また気液界面間の距離は約8mmまで広がることが分かる。いずれも狭小部の大きさに比べてはるかに大きな領域である。狭小部の長さを狭小部の代表大きさにとると、極小部の中心から狭小部の約10倍の距離まで大きくなり、気泡の大きさとしては、約20倍の大きさに広がっていることが分かる。
【0058】
気泡が広がる速度は、気液界面の位置と時間の関係から計算すると、時速約100km程度と高速であることが分かる。
【0059】
また、図4Fに対応する、2回目の発光の開始時点では、プラス電極側の気液界面位置が約2mmであり、その後気泡が大きくなっていることがわかる。この時点でも気泡は、狭小部に比べてはるかに大きな領域に広がっている。狭小部の長さ0.4mmを狭小部の代表大きさとすると、狭小部の中心から狭小部の約5倍の大きさに広がっていることが分かる。
【0060】
図6は、本実施例で観察された発光分布の例を説明する図である。図1に示したカメラ121として冷却CCDカメラを使用して撮影した。光学フィルター125として、中心波長405nm、半値幅10nmのバンドパスフィルターを用いた。鉛の中性原子(PbI)は波長405.78nmに発光線を持つので、この光学フィルターを通じて鉛の原子発光を観察することができる。
【0061】
図6(a)は図中の流路の位置等を示す説明図であり、図1に示した構成から光学フィルター125を外し、流路全体を照明で照射して撮影した画像に、流路の外縁を書き込んだものである。図6(b)は発光分布を表す図である。図6(a)と図6(b)の各像は同一の縮尺で表示されており、図中の位置は各像で共通である。鉛100ppmを含む0.1規定の硝酸溶液と、0.1規定の硝酸溶液との、2つを試料溶液とし、電圧印加パルス幅0.8ミリ秒と1.8ミリ秒の条件で発光像を撮影した。96パルス分の発光像を平均化した画像を、図6(b)に示している。この画像を用いて以下の解析を行った。また、電圧印加パルス幅0.8ミリ秒と1.8ミリ秒のそれぞれの条件における、鉛100ppmを含む0.1規定の硝酸溶液に対応する画像から、0.1規定の硝酸溶液に対応する画像を差し引いた差分画像を作成し、合わせて表示した。
【0062】
図6(b)に示す、発光分布を表す全ての画像に対して、図6(a)に示す流路の狭小部を大きくはみ出した領域で、発光が観察されていることがわかる。典型的には狭小部の中心から約3mm程度離れたところまで発光が観測でき、狭小部に比べてはるかに大きな領域で発光していることが分かる。狭小部の長さ0.4mmを狭小部の代表大きさにとると、狭小部の中心から狭小部の大きさの約8倍の距離まで、発光が観察できることが分かる。この発光はプラズマによるものであるので、プラズマの大きさも同様と考えてよい。
【0063】
電圧印加パルス幅0.8ミリ秒の場合では、いずれの溶液に対しても、流路の狭小部を中心とした発光分布が見られる。0.1規定の硝酸溶液には鉛は含まれておらず、別途取得した分光スペクトルからもこの光学フィルターを通過する波長の発光線は出ていないことから、0.1規定の硝酸溶液から出ている発光は、原子発光ではなくその他の背景光だと考えられる。鉛100ppmを含む0.1規定の硝酸溶液からの発光強度の方が、0.1規定の硝酸溶液からの発光強度よりも大きいのは、背景光強度に鉛からの原子発光の分が加算されるためである。
【0064】
電圧印加パルス幅1.8ミリ秒の場合でも、0.1規定の硝酸溶液に対しては、0.8ミリ秒の場合と同様に、流路の狭小部を中心とした発光分布が見られる。しかし、鉛100ppmを含む0.1規定の硝酸溶液に対しては、流路の狭小部を中心とした発光のほかに、狭小部の中心から見て左側、つまりプラス極側の、約2mmのところに、局所的に発光強度の高い領域があることが分かる。
【0065】
このプラス極側に存在する局所的な発光領域は、電圧印加パルス幅1.8ミリ秒に対応する差分画像でよく確認できる。この差分画像は、実質的に、電圧印加パルス幅1.8ミリ秒の条件で、背景光を除いた鉛の正味発光のみを示す画像と考えてよい。電圧印加パルス幅0.8ミリ秒に対応する差分画像では、このプラス極側での局所的な発光は確認できないことから、2回目の発光において、鉛の発光の極大点がプラス極側約2mmのところにあるといえる。この極大点は、プラス極側にあることが本質的であり、試料送液の下流側にあることが本質でないことは、試料の送液方向を反転した場合でも、プラス極側に観察されることから分かる。この極大点は、本実施例の条件では、狭小部の中心から、狭小部の長さの約5倍のところに存在する。
【0066】
図4Fから図4Hまでの撮影結果を合わせて考えると、この鉛の発光の極大点は、2回目の発光時のプラス極側の気液界面の位置に相当する。このようにプラス極側の気液界面で特異的な発光の極大点があることを見出した。つまり、気泡及びプラズマの領域を狭小部よりもはるかに大きくすることによって、発光の極大点を狭小部以外の場所に、明確に作ることが可能となる。このことにより、狭小部以外の領域で計測することにより、検出感度の高い計測が可能となる。また、特にプラス極側の気液界面付近で計測を行うことによって、検出感度の高い計測が可能となることを見出した。また、一回の電圧印加で複数回の発光を起こさせることにより、発光の特性を変えることができ、感度の高い計測を可能とすることができる。
【0067】
図7は、本実施例で観察された発光分布に対して解析した内容を説明する図である。図7(a)は、図6の要領で撮影された発光分布を示す画像に対する、解析対象領域について説明する図である。狭小部の中心を通り二つの電極を結ぶ方向にx軸をとり、狭小部の中心をx=0として、図の右側でマイナス極側へ向かう向きをx軸のプラスに、図の左側でプラス極側へ向かう向きをx軸のマイナスに、それぞれとり、直径0.34mmの円形領域の中心点をこのx軸上で動かすことを仮想し、その領域での発光強度の平均を計算した。
【0068】
図7(b)と図7(c)は、以下で説明する画像に対して、上記の計算を行い、グラフ化したものである。図中の背景光強度は、図1の光学フィルター125として中心波長420nmと中心波長450nmの半値幅10nmの2種のバンドパスフィルターを用いて、鉛100ppmを含む0.1規定の硝酸溶液に対する2つの発光像を撮影し、各バンドパスフィルターの透過率の波長依存性を考慮して波長方向に外挿して作成した、図1の光学フィルター125として中心波長405nm半値幅10nmのバンドパスフィルターを用いた場合の背景光の推定画像から得た。別途取得した分光スペクトルによれば、波長420nmと450nm付近には発光線はなく、したがって外挿した結果を背景光強度と推定することは妥当である。図中の鉛の正味発光強度は、鉛100ppmを含む0.1規定の硝酸溶液に対して、図1の光学フィルター125として中心波長405nm、半値幅10nmのバンドパスフィルターを用いて撮影した画像から、上記の背景光の推定画像を差し引いた画像から得た。
【0069】
図7(b)は、電圧印加パルス幅0.8ミリ秒、つまり1回目の発光の発光分布に対する解析結果の例である。鉛の正味発光強度(S)と背景光強度(B)は、狭小部x=0を中心とした発光分布をとる。SとBの比であるS/Bは、狭小部付近で最大値をとることが分かる。
【0070】
図7(c)は、電圧印加パルス幅1.8ミリ秒の解析画像から0.8ミリ秒の解析画像を差し引き、実質的に0.8ミリ秒から1.8ミリ秒の間、つまり2回目の発光の発光分布に対する解析画像を作成して解析した結果の例である。鉛の正味発光は狭小部付近で最大値をとるが、x軸のマイナス側、つまりプラス極側に分布が偏っており、かつマイナス2mm付近に極大点があることが分かる。また背景光は、若干の振れはあるものの、狭小部付近で高く、左右両側で低くなる傾向を示している。
【0071】
図7(b)に示す1回目の発光に比べて、図7(c)に示す2回目の発光では、全体として発光強度が高く、背景光強度が低く、S/Bが約10倍大きくなるため、2回目の発光に限って計測を行うことで、検出感度や検出精度を大幅に増大することができる。
【0072】
発光強度が増大するのは、気泡とプラズマが狭小部より大きくなるような激しい実験条件を採用することによるものであると考えられる。2回目の発光が1回目の発光よりも大きいのは、気泡が十分に大きくなるような条件を採用しており、分析対象となる元素が発光領域にばら撒かれて、かつ、気泡が十分に大きく、電流がピークを越えた後、ジュール熱の発生量が低下して温度が下がり、気泡の内部圧力が低下するにもかかわらず気泡が収縮する気液界面の動きが遅いため、減圧になるためであると考えられる。また、1回目の発光に比べて2回目の発光の方が背景光が小さいのは、上記と同様に減圧の条件になっており、電子の再結合の頻度が下がることが原因の一つだと考えられる。
【0073】
また、特に図7(c)で分かるとおり、2回目の発光時のマイナス2mm付近では、狭小部での最大値に比べて、鉛の正味発光の発光強度は約1/3になるが、極大値をとっており、かつ背景光強度が非常に低くなるため、結果としてS/Bが非常に大きくなる。2回目の発光時の狭小部付近と比べた場合、S/Bは約10倍大きく、1回目の発光時に比べた場合、S/Bは約200倍大きくなることが分かる。マイナス2mm付近は、プラス極側の気液界面付近に相当するが、この領域に対して計測を行うことで、検出感度や検出精度を大きく増大することができる。
【0074】
また、特に図7(c)で分かるとおり、鉛の正味発光は狭小部から見てプラス極側に偏在しており、プラス極側の領域を計測対象の中心にすれば、正味の発光強度が高く、S/Bも高い計測が可能であり、検出感度や検出精度を大きく増大することが分かる。
【0075】
プラス極側の気液界面からプラズマ中に、分析対象となる元素が移動する効率が上がることが原因の一つだと考えられる。気液界面が凸状の形状を取ることも重要であると考えられる。また2回目の発光でも背景光強度は狭小部を中心とした分布となるため、プラス極側での計測、特にプラス極側の気液界面付近での計測では、正味の発光強度と背景光強度の比が大きい、すなわち検出感度と検出精度の高い計測が可能である。背景光強度の高い狭小部の影響を避けて計測するためには、気泡及びプラズマが十分大きく、計測の際に狭小部を含まない領域の計測が実施できることが必要である。狭小部を避けて計測することにより、背景光強度を下げ、検出感度と検出精度の高い計測を実現することができる。
【0076】
また、特に図7(c)で分かるとおり、狭小部の中心から0.6mm、もしくは0.8mm、もしくは1mm程度、もしくは2mm程度、計測対象の中心をずらした場合には、狭小部での高い背景光強度を避け、十分に正味発光が高く、結果として高いS/Bが得られることが分かる。狭小部の大きさとして狭小部の長さ0.4mmを代表にとると、狭小部の中心から計測対象領域の中心までの距離を、狭小部の大きさの約2倍、もしくは約3倍、もしくは約5倍の位置に設定することで、検出感度や検出精度を大きく増大することができる。
【0077】
本実施例では、プラズマ発光分析装置の例を説明し、併せて試料溶液に対する放電による発光現象を説明し、本発明に至った新しい知見について説明した。
【0078】
本実施例にて例示し説明したとおり、試料溶液の放電を利用する発光分析において、狭小部よりはるかに大きな気泡とプラズマを発生させることが可能である。はるかに大きくとは、約5倍、もしくは約10倍、もしくは約20倍であることを本実施例中で例示したが、これに限定されるものでない。約2倍から約100倍、もしくはそれ以上の大きさであることも可能であり、効果的である。
【0079】
本実施例にて例示し説明したとおり、試料溶液の放電を利用する発光分析において、流路中の狭小部以外の領域を計測の対象領域とすることにより、検出感度や検出精度を大きく増大することができる。発光は気泡内に発生するプラズマに起因するので、狭小部以外の領域を計測の対象とするためには、狭小部以外の領域まで気泡とプラズマが広がっていることが必須であるが、それが可能であることは本実施例にて例示し、説明したとおりである。また、気泡及びプラズマは流路の中で発生するので、計測の対象領域は流路の中に限定される。
【0080】
本実施例にて例示し説明したとおり、試料溶液の放電を利用する発光分析において、流路中の狭小部以外の領域を計測の対象領域とする場合、その計測の対象領域の中心が、狭小部の中心から、たとえば0.6mmm、もしくは0.8mm、もしくは1mm程度、もしくは2mm程度離れていることで、検出感度や検出精度を大きく増大することができる。狭小部の長さを狭小部の大きさの代表とした場合、計測の対象領域の中心が、狭小部の中心から、狭小部の大きさの約2倍、もしくは約3倍、もしくは約5倍離れていることで、検出感度や検出精度を大きく増大することができる。この距離は、約5倍、もしくはそれ以上の大きさであることも可能であり、効果的である。
【0081】
本実施例にて例示し説明したとおり、狭小部よりはるかに大きな気泡とプラズマを発生させることで、プラス極側に正味発光を偏在させることが可能である。試料溶液の放電を利用する発光分析において、プラス極側の領域を計測の対象領域とすることで、検出感度や検出精度を大きく増大することができる。この場合、流路の狭小部の中心よりプラス極側であれば、効果的である。特に、プラス極側の気液界面付近の領域を計測の対象領域に含めることで、検出感度や検出精度を大きく増大することができる。
【0082】
本実施例にて例示し説明したとおり、試料溶液の放電を利用する発光分析において、1回の電圧印加で複数回の発光を、再現性よく、実現することができる。また本実施例によれば、試料溶液の放電を利用する発光分析において、1回の電圧印加で複数回の発光をおこなわせ、その特定番目の発光のみを計測することで、検出感度と検出精度及び再現性の高い計測を実現することができる。1回の電圧印加で複数回の発光を起こさせることにより、発光強度が増大し、特に2回目の発光において発光強度が高い計測が可能である。また、特に2回目の発光において正味の発光強度と背景光強度の比が高く、検出感度の高い計測が可能である。複数回とは、少なくとも2回であることを本実施例の中で例示したが、これに限定されるものではない。2回から10回もしくは100回行わせることも可能であり、効果的である。
【0083】
[実施例2]
本実施例では、計測位置と計測のタイミングを制御する、プラズマ発光分析装置の例を説明する。
【0084】
図8は、本実施例のプラズマ発光分光装置の構成例を示す図である。流路101の周辺部分は図1と同様であり、詳細な説明を省略する。
【0085】
光ファイバー端201は流路101に向けられ、コネクタ105,110の逆側に設置されている。光ファイバー端201はステージ202に固定され、ステージ202を動かすことによって移動でき、流路101との相対的な位置を任意に変えることができ、流路101の任意の位置からの発光を、他の位置からの発光と区別して、受光することができる。この図の例では、光ファイバー端201は流路の狭小部よりもプラス極側に寄った位置にあり、流路内のプラス極側を計測対象としている。
【0086】
光ファイバー端201は光ファイバー203の端部であり、光ファイバー203のもう一つの端は、分光器204に接続されている。光ファイバー端201で受光した光は、光ファイバー203を経由して、分光器204に入力され、分光される。分光器204は信号線206を介してコンピュータ122に接続されており、コンピュータ122から分光器204を制御することができる。
【0087】
分光器204には、検出器として、イメージインテンシファイア(以下IIと記す)付きCCDカメラ205が接続されており、分光器204で分光された光を受光する。II付きCCDカメラ205は信号線207を介してコンピュータ122に接続されており、コンピュータ122からII付きCCDカメラ205を制御することができる。II付きCCDカメラ205で計測された分光スペクトルの情報は、コンピュータ122の記憶装置に記録され、情報処理することができる。
【0088】
パルスジェネレータ208は、信号線209を介してコンピュータ122に接続されている。コンピュータ122から電源116に出力される電源制御の信号は、同様にパルスジェネレータ208にも入力される。パルスジェネレータ208は、信号線211を介してII付きCCDカメラ205に接続されている。パルスジェネレータ208は、電源制御用の信号を受け取り、信号を一切加工せず、もしくは信号を加工して、II付きCCDカメラ205の露光制御用信号として出力する。II付きCCDカメラ205は、露光制御用信号を受け取って動作し、分光器204で分光された光を受光し、分光スペクトルを得ることができる。
【0089】
また、パルスジェネレータ208は信号線210を介して電流計115に接続されている。パルスジェネレータ208は、電流計115によって計測された電流の情報を受け取り、事前に設定された条件のもとで、II付きCCDカメラ205の露光制御用信号を加工して出力し、II付きCCDカメラ205の露光制御を行うことができる。
【0090】
図8に示したプラズマ発光分光装置を用い、鉛100ppmを含む0.1規定の硝酸溶液を試料溶液として流路101に供給し、電圧を印加して発光を計測した。手順については、実施例1と同様であり、詳細な説明を省略する。条件は、電圧2.5kV、電圧印加パルス幅1.8ミリ秒、パルス数60回であった。
【0091】
本実施例では、電圧印加パルス幅1.8ミリ秒に対して、電圧印加開始直後から0.8ミリ秒までの、1回目の発光に対応するタイミングでの計測と、電圧印加時間0.8ミリ秒から1.8ミリ秒までの、2回目の発光に対応するタイミングでの計測の、2種の計測を実施した。前者の1回目の発光に対しては、図8のパルスジェネレータ208において、電圧印加直後から0.8ミリ秒分の露光を行わせる信号をII付きCCDカメラ205に入力した。また後者の2回目の発光に対しては、パルスジェネレータ208において、電圧印加の0.8ミリ秒後から1.8ミリ秒までの1.0ミリ秒分の露光を行わせる信号をII付きCCDカメラ205に入力した。
【0092】
図9は、本実施例で計測された発光の分光スペクトルの例を説明する図である。鉛由来の発光線(405.78nm)が確認できる。鉛の正味発光強度をS、背景光強度をBとして表示した。
【0093】
図10は、本実施例で計測された発光の解析結果を説明する図である。1回目の発光と2回目の発光について、それぞれ60パルス分の分光スペクトルを取得し、図9で例示したSとBの組を算出し、その平均値を表示した。図8で示した通り、光ファイバー端201を移動させ、流路101内の様々な位置からの発光について検討している。
【0094】
ここでは光ファイバー203として外径230μmのファイバーを27本束ねた光ファイバーバンドルを使用し、光ファイバー端201の受光部の相当直径は約1.6mmであった。狭小部に相当するx=0での計測のほかに、計測対象領域の中心となる光ファイバー端201の中心が、左右両側に1.15mm離れた位置での計測と、2回目の発光気液界面付近に相当する、計測対象領域の中心となる光ファイバー端201の中心が、左右両側に2.3mm離れた位置での計測の、合計計5箇所での結果を示す。座標軸のとり方は図7(a)と同様である。光ファイバー端201の半径が0.8mmであるため、x=0を除く4箇所では、狭小部からの発光は計測されず、計測の対象領域として狭小部を含まない。狭小部の中心から計測の対象領域までの距離は、狭小部の大きさとして狭小部の長さ0.4mmをとると、約3倍及び約6倍である。
【0095】
1回目の発光に相当する、電圧印加直後から0.8ミリ秒の計測では、狭小部に相当するx=0での計測結果で、正味の発光強度(S)が最も高く、背景光強度(B)も最も高いことが分かる。また、正味の発光強度と背景光強度の比であるS/Bは、図10の原点を通る直線の傾きで表現できるが、図に明示したS/B=1を表す直線よりも下にあることから、S/Bは1よりも小さいことがわかる。1回目の発光においては、他の位置での正味の発光強度はx=0での計測結果より小さい。
【0096】
2回目の発光に相当する、電圧印加後0.8ミリ秒から1.8ミリ秒の計測でも、狭小部に相当するx=0での計測で、正味の発光強度(S)が最も高く、背景光強度(B)も最も高いことが分かる。1回目の狭小部での結果と比べた場合、Sはほぼ同等であり、Bが低く、S/Bが高くなるため、2回目の発光の方が検出感度と検出精度の高い計測が可能であることが分かる。
【0097】
また、2回目の発光では、狭小部での発光に加えて、xがマイナス側でプラス極側に相当する、x=−1.15mmと−2.3mmという、流路の左側の位置で、Sが十分に大きいことが分かる。プラス極側では、Sが大きいことに加えてBが小さく、そのためS/Bが高くなるため、検出感度と検出精度の高い計測が実現できる。狭小部の長さを狭小部の代表大きさにとると約3倍以上、狭小部から離れた位置で計測を実施すればよいことが示される。特にプラス極側の気液界面の近傍では、Sも十分な大きさがあり、かつ、Bが非常に小さいため、S/Bが非常に高く、検出感度と検出精度のさらに高い計測が実現できる。
【0098】
本実施例のここまでの説明では、予め決めた計測のタイミングに従って計測を行ったが、図8に示した装置構成によれば、電流の計測を行いながら、電流値がある条件を満たす場合に計測を開始し、別な条件を満たす場合に計測を終了することや、電流値がある条件を満たす場合にのみ計測を行うことが可能である。例えば、電流値が設定された閾値を越えると同時に計測を開始し、その後、設定された別の閾値を下回ると同時に計測を停止するような制御が可能である。また、電流値が設定された閾値以上の時間区分でのみ計測を行うこともできる。例えば、後に説明する図13の場合では、例えば30ミリアンペアを閾値として上記の計測を行うと効果的である。
【0099】
例えば、上記の最初の例に対する計測の手順は、図11に示すフローチャートのようになる。すなわち、試料溶液を流路に送液して電圧を印加し電流の時間変化を計測し(S11)、電流値が事前に設定された判別条件を満たすと計測開始のトリガー信号を出し(S12)、計測開始のトリガー信号に基づき計測を開始し(S13)、電流値が事前に設定された判別条件を満たすと計測停止のトリガー信号を出し(S14)、計測停止のトリガー信号に基づき計測を停止する(S15)。その他の場合に対しても、同様に計測の手順を示すことができる。
【0100】
本実施例では1回目の発光と2回目の発光の時間で露光時間を設定したが、もっと限定された露光時間を設定して、さらによい計測条件を設定することも可能である。
【0101】
本実施例によれば、試料溶液の放電を利用する発光分析において、電圧印加時の電流の時間変化の情報を利用して計測のタイミングを制御することで、検出感度と検出精度が高く再現性の高い計測を実現することができる。上記電圧印加時の電流の時間変化の情報を利用するとは、事前に取得した電流値の時間変化の情報を利用して、予め決められた時間区間での計測を実施するように制御する場合と、試料溶液に対する電圧印加を行いながら、その電流値を同時にモニターし、電流値を基にした判定基準を用いて、同じ電圧印加のパルスの時間内で、計測の制御を行う場合の、いずれも場合も含まれる。
【0102】
実施例1と比較した時の本実施例に特有の効果の一つは、計測開始時間と計測終了時間の設定が自由であり、2つの時間区間による計測を行って差分するという工程が必要ないことである。また、別の特有の効果は、計測した電流値を直接使って発光の計測制御を行うことが可能であることである。また、別な特有の効果は、流路中の特定の位置を選び、特定の時間のタイミングで計測を行うことが可能であることである。
【0103】
本実施例では、計測位置は動かすことが可能であったが、事前に設定した位置に固定した装置構成も可能である。また、本実施例では、光ファイバーバンドルは1本であり、一度に一つの位置からの発光のみを計測したが、これを複数にし、複数の位置からの発光の計測を同時に行うことも可能である。また、本実施例では、流路ではなく計測装置の側で計測の位置を決めて計測したが、光の通らない材料を用いて流路の特定の位置に窓を設けることで、計測位置を決めて計測することも可能である。
【0104】
本実施例では、計測のタイミング制御を、II付きのCCDカメラを使うことで実現したが、その代わりにシャッターを用いて計測のタイミングを制御する装置構成も可能である。その場合には、シャッターに対しても制御信号を送る装置構成にすればよい。
【0105】
[実施例3]
本実施例では、計測した電流値の情報を利用して計測及び解析する時間領域を制御する、プラズマ発光分析装置の例を説明する。
【0106】
図12は、本実施例のプラズマ発光分光装置の構成例を示す図である。流路101の周辺部分は図1と同様であり、詳細な説明を省略する。
【0107】
光学フィルター301は流路101の近傍に設置され、コネクタ105,110の逆側に設置されている。光学フィルター301の裏に光学スリット302を設置し、その直後に光電子増倍管303を設置した。光電子増倍管用の高圧電源304が電線305を介して光電子増倍管303に接続しており、光電子増倍管303へ電力を供給している。光電子増倍管303からの出力は、信号線306を介してコンピュータ122のメモリに記録され、解析される。
【0108】
図12に示したプラズマ発光分析装置を用い、鉛100ppmを含む0.1規定の硝酸溶液を試料溶液として流路101に供給し、電圧を印加して発光を計測した。手順については、実施例1と同様であり、詳細な説明を省略する。条件は、電圧2.5kV、電圧印加パルス幅1.8ミリ秒、パルス数100回であった。
【0109】
図13は、本実施例で計測された発光の解析結果の例を説明する図である。
【0110】
図13(a)は、光学フィルター301に中心波長405nm、半値幅10nmのバンドパスフィルターを用いて、発光の時間変化と電流の時間変化を同時に記録したグラフである。破線は電流計115で計測された電流波形、実線は光電子増倍管303で計測された発光強度である。1回目の発光では、電流のピークに比べて発光のピークが時間的に少し遅れることがわかる、また、2回目の発光では、電流の急上昇に合わせて発光強度が急上昇し、電流の下降に合わせて発光強度が急減することがわかる。
【0111】
図13(b)は、鉛の正味発光(S)と背景光(B)の時間変化を表すグラフである。実線は鉛の正味発光(S)を表し、破線は背景光(B)を表す。100パルス分のデータを平均し、それぞれの最大値で規格化して示してある。この結果から、SとBの時間変化の挙動は同じでないことが分かる。例えば、1回目の発光では、SはBに比べて遅れて発光するのに対して、逆に2回目の発光では、SはBに比べて早い時間で立ち上がっていることが分かる。
【0112】
図13(c)は、鉛の正味発光(S)と背景光(B)の比(S/B)の時間変化を表すグラフである。100パルス分のデータを平均して算出したSとBの時間変化を元にS/Bの時間変化を計算し、最大値で規格化して示している。全般に1回目の発光よりも2回目の発光の方がS/Bが高いことが分かる。つまり、2回目の発光を計測すればS/Bが高く、結果として検出感度の高い計測が実現できる。また1回目の発光の中では、後半でS/Bが高いことが分かる。SがBに比べて遅れて立ち上がることが原因である。1回目の発光の後半部分を計測することで、S/Bが高く、検出感度の高い計測を実現できる。また、2回目の発光では、発光直後の部分でS/Bが高いことが分かる。SがBに比べて早い時間で立ち上がることが原因である。従って、2回目の発光の前半を計測することで、S/Bが高く、検出感度の高い計測が可能である。
【0113】
上記の計測は、電圧印加後、事前に設定した測定開始時間から測定終了時間までを計測するように設定しておくこともできるし、電圧印加パルス幅全域にわたる時間の全てで計測を行って、データをコンピュータのメモリ等の記憶装置に記録し、解析の際に、所定の時間区間の計測結果を選んで使うこともできる。
【0114】
ここで述べた方法は、プレスキャンを行う事によって実行する事も可能である。例えば、最終的な計測の前に、プラズマ発光の時間変化をプレスキャンとして計測し、そのプレスキャンの結果に対して演算を行い、計測対象物質からの発光強度が高い時間帯を推定する。図13b)から推測できるように、例えば、計測対象物資からの発光強度の最大値に対する比が0.3以上である領域を選択すれば、十分効果的である。その後この時間帯に対する計測を実施すれば、感度の高い計測が可能となる。
【0115】
また同様に、例えば、最終的な計測の前に、プラズマ発光の時間変化をプレスキャンとして計測し、そのプレスキャンの結果に対して演算を行い、計測対象物質からの正味の発光強度とそれ以外の物質からの背景光強度の比が高い時間帯を推定する。図13(c)から推測できるように、例えば、計測対象物質からの正味の発光強度とそれ以外の物質からの背景光強度の比の最大値に対する比が0.3以上である領域を選択すれば、十分効果的である。その後この時間帯に対する計測を実施すれば、感度の高い計測が可能となる。
【0116】
また同様に、例えば、最終的な計測の前に、プラズマ発光の時間変化をプレスキャンとして計測し、そのプレスキャンの結果に対して演算を行い、計測対象物質からの発光強度のばらつきが小さい時間帯を推定する。例えば、変動係数10%以下である領域を選択すれば、十分に効果的である。例えば、電圧印加の回数を100回にして、計測結果を積算すると、変動係数は積算回数の0.5乗分の1に比例することから、最終的に変動係数1%以下の高精度な計測を実施する事ができる。
【0117】
実施例2と比較した時の、本実施例の特有の効果の一つは、事前に計測時間を設定することが必ずしも必要ないことである。電圧印加時間内の全ての時間分の発光と電流の時間変化のデータを記憶装置に記録し、データ取得後に情報処理を行って適切な計測の時間区分を設定し、解析を行うことが可能である。それによって、S/Bが高く、検出感度の高い計測結果を確実に得ることができる。
【0118】
[実施例4]
本実施例では、試料溶液に電界を印加して発光を計測する際に同時に電流の時間変化を計測し、この時間変化に整合するように参照溶液の組成を調整し、調整後の参照溶液の発光を計測し、計測された発光強度を用いて、試料溶液中の分析対象物質の量を推定する、プラズマ発光分析装置の例を説明する。
【0119】
図12に示したプラズマ発光分析装置を用い、鉛100ppmを含む0.1規定の硝酸溶液を試料溶液として流路101に供給し、電圧を印加して、発光を計測した。手順については、実施例1と同様であり、詳細な説明を省略する。条件は、電圧2.5kV、電圧印加パルス幅0.8ミリ秒、パルス数100回であった。
【0120】
図14は、参照溶液を調整し、その発光を計測し、試料溶液中の分析対象物質からの正味発光強度の推定に利用した解析の例を示す図である。
【0121】
図14(a)は、光学フィルター301として中心波長405nm、半値幅10nmのバンドパスフィルターを使用して計測した発光の時間変化(図中、Tで示す)と、鉛の正味発光(S)と背景光(B)の時間変化を示すグラフである。背景光(B)は、実施例1で述べた方法と同様に、中心波長が420nmと450nmであり半値幅が10nmのバンドパスフィルターを利用した計測結果から外挿して推定したものである。言い換えると、他波長での計測結果の情報を用いて背景強度を推定した。鉛の正味の発光強度(S)は、中心波長405nm、半値幅10nmのバンドパスフィルターで計測した発光強度(T)から、他波長での計測結果の情報を用いて推測した背景光(B)を差し引いて算出した。
【0122】
図14(b)は、図14(a)の計測時に取得した電流の時間変化と、この時間変化に合うように濃硝酸と水の割合を変えて調整した参照溶液を用いて計測を行ったときの電流の時間変化を示したものである。実線は試料溶液に対する電流の時間変化を表し、破線は調整後の参照溶液に対する電流の時間変化を表す。それぞれ100パルス分の平均である。濃硝酸と水の混合比を調整することで、参照溶液の電流の時間変化を試料溶液に対する電流の時間変化とほぼ一致させることが可能であることが分かる。
【0123】
図14(c)は、図14(a)に示したのと同じ、光学フィルター301として中心波長405nm、半値幅10nmのバンドパスフィルターを使用して計測した発光の時間変化(T)と、図14(b)で示した参照溶液に対して同じフィルターを使用して計測した発光の時間変化(R)と、前述の参照溶液の発光を背景光と解釈し差分して算出した鉛の正味発光強度の時間変化(T−R)である。つまり、参照溶液の発光強度を背景光強度と同等と推定している。
【0124】
図14(a)と図14(c)で得られる鉛の正味発光強度の時間変化はほぼ一致しており、図14(b)の方法で調製した参照溶液の発光強度を背景光の推定値として利用できることがわかる。つまり、調製した参照溶液の発光強度を使うことによって、試料溶液中の分析対象物質からの正味発光強度の推定を行うことができる。正味発光強度を正確に知ることで、試料溶液中の分析対象物質の量を正確に推測することができる。
【0125】
通常、試料溶液の組成は既知ではないため、電流の時間変化を合わせるためには、混合割合を少しずつ変えた溶液に対する電流の時間変化を記録し、電流の時間変化同士が整合するように参照溶液の組成を決める必要がある。仮に主要な溶液組成が分かっている場合でも、実際に別途調整した溶液に電圧を印加し発光させた際の電流の時間変化は、試料溶液のものと異なる。試料溶液の電気伝導度を計測してその電気伝導度の数値に合うように参照溶液を調整した場合にでも、微妙な不整合から電流の時間変化には違いが現れる。電流の時間変化を決めている因子は溶液の電気伝導度だけではなく、気泡やプラズマの発生状況や流路内の不純物、付着している気泡の状態等に依存する。そのため、電気伝導度を合わせるだけでは電流の時間変化を一致させることができず、その発光強度を背景光と同等と考えることはできない。逆に、電圧印加時の電流の時間変化を試料溶液と合わせて調整した参照溶液を用いれば、上記の例の通り、その発光強度を試料溶液の背景光と同等と考えてよい。
【0126】
参照溶液は、通常、試料溶液の主な部分を構成するであろうと予想される酸、例えば硝酸と、水の組み合わせで調整することができる。元素分析でよく用いられる他の酸、塩酸、硫酸等を組み合わせることも適当である。電気伝導があることが大切であるので、塩化ナトリウム等の塩類を含む溶液を組み合わせることも可能である。また、試料溶液が有機溶媒を含む場合には、その有機溶媒を組み合わせることも適切である。
【0127】
図15は、本実施例の別なプラズマ発光分析装置の構成例を示す図である。流路101の周辺部分や電子増倍管303の周辺など計測に関する部分は図12と同様であり、詳細な説明を省略する。また、シリンジポンプ109に関連する記載を省略するが、同等の送液用の装置を備えている。
【0128】
試料溶液をセットする試料溶液用容器401は切り替え弁404を介して配管108に接続している。参照溶液を調整するための溶液を入れる容器402及び容器403は、混合器405を介して配管108に接続している。切り替え弁404と混合器405は、それぞれ信号線406,407を介してコンピュータ122に接続されている。コンピュータ122からの信号により、切り替え弁404を切り替え、試料溶液もしくは調整過程のものを含む参照溶液を、流路101に送液することができる。また、コンピュータ122からの信号により、混合器405を操作し、容器402と容器403の溶液を任意の割合で混合し、送液することができる。参照溶液を調整するための溶液の組み合わせについては、すでに説明したものと同様である。
【0129】
図16は、本実施例における測定手順を示すフローチャートである。まず始めに、試料溶液を流路に送液して、電圧を印加し、発光を計測し、同時に電流の時間変化を計測する(S21)。次に、酸と水の混合比を変えて電流の時間変化を計測し、電流の時間変化が試料溶液と同じになる混合比で酸と水を混合して参照溶液を調整する(S22)。次に、上記で調整した参照溶液を流路に送液し、電圧を印加し、発光を計測し、この発光を背景光と推定する(S23)。最後に、試料溶液の発光から、推定した背景光を差し引き、正味の発光強度を推定し、推定された正味の発光強度を用いて試料溶液中の分析対象物質の量を推定する(S24)。
【0130】
正確に背景光強度を推定することによって、分析対象物質由来の正味の発光量を正確に推定することができ、これにより試料溶液中の分析対象物質の検出感度及び検出精度を向上することができる。併せて、背景光の推定に他の波長情報を使う必要がなくなるため、単一の光学フィルターのみで可能となるなど、装置構成を簡便にすることが可能である。
【0131】
参照溶液としては、試料溶液の酸の種類が分かっている場合には、同じ種類の酸を使うことが望ましい。元素分析には硝酸がよく使われることから、硝酸を使うことが多くの場合適切である。元素分析には酸を使う場合が多いため、酸と水を混合して参照溶液を調製することを想定しているが、試料溶液の電気伝導度が主に溶けている塩に由来する場合には、濃度の濃い対応する塩の溶液と水とを混合して参照溶液を調製することも適切である。
【0132】
また、参照溶液として、分析対象物質を含まない溶液と分析対象物質を含む溶液を併せて調整することも有効である。試料溶液中の分析対象物質の量の推定には、通常、既知濃度の分析対象物質を含む溶液をいくつか用意して計測し、この発光量を利用した検量線を作成して利用するが、参照溶液として電流の時間変化を整合させた分析対象物質を含む溶液を作成し、濃度に対する正味の発光量を示す検量線を作成し、利用すればよい。電流の時間変化を整合させた参照溶液を利用することで、さらに正確な検量線を作成し、検出感度と検出精度及び再現性を向上させることができる。
【0133】
本実施例によれば、試料溶液に電界を印加して発光を計測する際に同時に電流の時間変化を計測し、この時間変化に整合するように参照溶液の組成を調整し、調整後の参照溶液の発光を計測して、試料溶液の正味発光強度を推定することで、検出感度と検出精度の高いプラズマ発光分析装置を実現できる。
【0134】
本実施例では、発光を光学フィルター越しに光電子増倍管で計測し、発光の時間変化も計測しているが、発光の計測はこの手段に限られるものではなく、発光の時間変化の計測も必ずしも必要ではない。分光器を用いてもよく、また、CCDカメラ、フォトダイオード及びフォトダイオードアレイなどの光検出器を使うことも適切である。電流の計測については時間変化の計測を行い、電流の時間変化同士を比較し、溶液調整により電流の時間変化同士を一致させることが重要である。
【0135】
本実施例によれば、1枚の光学フィルターだけを使用した場合でも、正味の発光強度を正確に推定することができるので、検出感度や検出精度を向上することができる。通常は正味の発光強度と背景光強度を推定するためには、光学フィルター複数枚使うか回折格子などを用いて分光する必要があるが、1枚の光学フィルターだけで計測できるので、簡便な装置構成でよく、装置を小型化することが可能で、その結果、安価な分析装置を実現することができる。
【0136】
[実施例5]
本実施例では、プラズマ発光分析装置の別な構成の例を説明し、本発明に至った新しい知見について説明する。
【0137】
図17は、本実施例で使用した流路の例を説明する図である。長さが400μmの狭小部を持ち、深さ33μmの流路である。電極は流路の左右端に設置し、図左側をマイナス極、図右側をプラス極とした。
【0138】
図17で示す流路に、試料溶液として50ppmカリウムの0.1規定硝酸溶液を満たし、電圧1260Vを30ミリ秒印可した。本実施例では、試料溶液を流路内に満たした後、送液を行うことなく電圧を印加した。観察は、高速カメラを用いて行った。
【0139】
図18Aは電圧印加前の流路の様子を撮影した画像の例である。図中矢印で示す流路の壁に囲まれた領域には、試料溶液が満たされており、この時点では、気液界面及び発光は存在しない。
【0140】
図18Bは電圧印加後100マイクロ秒後の流路の様子を撮影した画像の例である。図4Aと同様、狭小部の中心から見て左右両側に気液界面が見える。左側がマイナス極側の気液界面、右側がプラス極側の気液界面である。狭小部を含む流路の両気液界面ではさまれる部分は気泡であり、狭小部から見て気液界面より外側の部分は試料溶液である。図18Bの画像の中心部に左右方向に線状に伸びる発光が観察できる。これはカリウム溶液からの発光である。この発光は狭小部の中心から左側のマイナス極側で強く、マイナス極側の気液界面に到達している事が分かる。
【0141】
図19はカリウム溶液からの発光強度の分布を、図18の水平方向であるx軸に対して示したものである。狭小部の中心をx=0と設定した。図中に狭小部に相当するxの領域を明示してある。図19から分かるとおり、狭小部よりもマイナス極側でカリウム溶液からの発光強度が高い事が分かる。もっとも発光強度が高いのは、狭小部の中心から計測して約400μm程度の位置にあり、狭小部の長さ400μmに比べて約1倍の距離にある。
【0142】
図18B及び図19から分かるとおり、狭小部の中心から見てマイナス極側で計測を行う事で、高感度な計測を実施する事が可能である。また同様に、マイナス極側の気液界面付近で計測を行う事により、高感度な計測を実施する事が可能である。
【0143】
なお、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0144】
また、上記構成の、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計することによりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0145】
また、信号線や電線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続していると考えてもよい。
【0146】
また、上記実施例では、限定された元素、溶液組成、流路形状、計測条件を例として用いて説明を行ったが、本発明は実施例に記載の元素、溶液組成、流路形状、計測条件に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0147】
101 流路
102 石英ガラス
103 貫通穴
104 O−リング
105,110 コネクタ
106,111 配管接続口
107,112 電極
108,113 配管
109 シリンジポンプ
114 廃液容器
115 電流計
116 電源
117,118,119,120 信号線
121 カメラ
122 コンピュータ
123,124 レンズ
125 光学フィルター
201 光ファイバー端
202 ステージ
203 光ファイバー
204 分光器
205 イメージインテンシファイア付きCCDカメラ
206,207,209,210,211 信号線
208 パルスジェネレータ
301 光学フィルター
302 光学スリット
303 光電子増倍管
304 光電子増倍管用電源
305,306 信号線
401 試料溶液用容器
402,403 参照溶液調整用容器
404 切り替え弁
405 混合器
406,407 信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
途中に狭小部を有し試料溶液が供給される流路と、
前記狭小部を挟んで配置され前記流路に電圧を印加するための一対の電極と、
前記電圧印加によって前記流路に生じた気泡中に発生するプラズマ発光を分光して計測する計測部とを有し、
前記計測部は、前記流路の前記狭小部以外の領域を計測の対象領域とすることを特徴とするプラズマ分光分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマ分光分析装置において、前記計測の対象領域の中心が、前記狭小部の中心から前記狭小部の流路方向寸法の1倍以上離れていることを特徴とするプラズマ分光分析装置。
【請求項3】
請求項1に記載のプラズマ分光分析装置において、前記計測の対象領域は、前記狭小部と前記一対の電極のプラス電極との間の領域であることを特徴とするプラズマ分光分析装置。
【請求項4】
請求項1に記載のプラズマ分光分析装置において、前記計測の対象領域は、前記一対の電極のプラス電極側の気液界面付近を含むことを特徴とするプラズマ分光分析装置。
【請求項5】
請求項1に記載のプラズマ分光分析装置において、前記計測の対象領域は、前記狭小部と前記一対の電極のマイナス電極との間の領域であることを特徴とするプラズマ分光分析装置。
【請求項6】
請求項1に記載のプラズマ分光分析装置において、前記計測の対象領域は、前記一対の電極のマイナス電極側の気液界面付近を含むことを特徴とするプラズマ分光分析装置。
【請求項7】
途中に狭小部を有し試料溶液が供給される流路と、
前記狭小部を挟んで配置され前記流路に電圧を印加するための一対の電極と、
前記電圧印加によって前記流路に生じた気泡中に発生するプラズマ発光を分光して計測する計測部とを有し、
前記流路への1回の電圧印加に対して発生する複数回のプラズマ発光のうち、2回目以降の特定の一回の発光もしくは特定の複数回の発光を計測することを特徴とするプラズマ分光分析装置。
【請求項8】
請求項5に記載のプラズマ分光分析装置において、前記複数回のプラズマ発光のうち2回目の発光を計測することを特徴とするプラズマ分光分析装置。
【請求項9】
請求項6に記載のプラズマ分光分析装置において、前記2回目の発光のうち発光時間の前半を計測することを特徴とするプラズマ分光分析装置。
【請求項10】
途中に狭小部を有し試料溶液が供給される流路と、
前記狭小部を挟んで配置され前記流路に電圧を印加するための一対の電極と、
前記一対の電極間に流れる電流を計測する電流計と、
前記電圧印加によって前記流路に生じた気泡中に発生するプラズマ発光を分光して計測する計測部と、
前記電流計及び前記計測部に接続された演算制御部とを有し、
前記演算制御部は、前記電流計による電流の時間変化データを用いて前記プラズマ発光の計測タイミングを制御することを特徴とするプラズマ分光分析装置。
【請求項11】
請求項10に記載のプラズマ分光分析装置において、前記電流計によって計測された電流の時間変化データ及び前記計測部によって計測されたプラズマ発光の時間変化データを記憶する記憶部を有し、前記演算制御部は前記記憶部に記憶された前記プラズマ発光の時間変化データに対して前記タイミング制御を行うことを特徴とするプラズマ分光分析装置。
【請求項12】
請求項10に記載のプラズマ分光分析装置において、前記演算制御部は、前記電流計による電流の時間変化データを用いて前記計測部による計測のタイミングを制御することを特徴とするプラズマ分光分析装置。
【請求項13】
請求項10に記載のプラズマ分光分析装置において、前記演算制御部は、前記電流計による電流の時間変化データを用いて、前記電源による1回の電圧印加に対して生じる1回もしくは複数回の発光のうち、1回目の発光の後半を計測することを特徴とするプラズマ分光分析装置。
【請求項14】
請求項10に記載のプラズマ分光分析装置において、前記演算制御部は、前記電流計による電流の時間変化データを用いて、前記電源による1回の電圧印加に対して生じる複数回の発光のうち、2回目の発光もしくは2回目の発光の前半を計測することを特徴とするプラズマ分光分析装置。
【請求項15】
請求項10に記載のプラズマ分光分析装置において、前記演算制御部は、前記電流計による電流を監視し、当該電流が事前に設定した閾値を越えて増加するタイミングで前記計測部による計測を開始し、事前に設定した閾値をまたいで低下するタイミングで前記計測部による計測を終了することを特徴とするプラズマ分光分析装置。
【請求項16】
請求項11又は12に記載のプラズマ分光分析装置において、計測されたプラズマ発光の時間変化に対して演算を行い、計測対象物質からの発光強度が高い時間帯を推定し、その後、前記推定された時間帯に対して計測を実施する事を特徴とするプラズマ分光分析装置。
【請求項17】
請求項16に記載のプラズマ分光分析装置において、前記計測対象物資からの発光強度の、前記計測対象物資からの発光強度の最大値に対する比が、0.3以上である時間帯に対して計測することを特徴とするプラズマ分光分析装置。
【請求項18】
請求項11又は12に記載のプラズマ分光分析装置において、計測されたプラズマ発光の時間変化に対して演算を行い、計測対象物質からの正味の発光強度とそれ以外の物質からの背景光強度の比が高い時間帯を推定し、その後、前記推定された時間帯に対して計測を実施する事を特徴とするプラズマ分光分析装置。
【請求項19】
請求項18に記載のプラズマ分光分析装置において、前記計測対象物質からの正味の発光強度とそれ以外の物質からの背景光強度の比の、前記計測対象物質からの正味の発光強度とそれ以外の物質からの背景光強度の比の最大値に対する比が、0.3以上である時間帯に対して計測することを特徴とするプラズマ分光分析装置。
【請求項20】
請求項11又は12に記載のプラズマ分光分析装置において、計測されたプラズマ発光の時間変化に対して演算を行い、計測対象物質からの発光強度のばらつきが小さい時間帯を推定し、その後、前記推定された時間帯に対して計測を実施する事を特徴とするプラズマ分光分析装置。
【請求項21】
請求項20に記載のプラズマ分光分析装置において、前記計測対象物資からの発光強度ばらつきが、変動係数10%以下である時間帯に対して計測を実施することを特徴とするプラズマ分光分析装置。
【請求項22】
請求項10に記載のプラズマ分光分析装置において、
参照溶液を構成する少なくとも2種類の溶液が入った容器と、前記少なくとも2種の溶液を混合する機構とを有し、
電圧印加時の電流の時間変化が、分析対象物質を含む試料溶液に対する電圧印加時の電流の時間変化と整合するように調整された参照溶液に対する発光を計測して、前記試料溶液中の分析対象物質の量を推定することを特徴とするプラズマ発光分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【図4H】
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【図4I】
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【図4J】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−185064(P2012−185064A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49041(P2011−49041)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】