説明

プラズマ基板表面処理接合方法とその装置

【課題】接合しようとする一対の基板の接合面を1台の処理設備により効率よく短時間でプラズマ処理し、それに続いて容易に基板の接合をする。
【解決手段】プラズマ基板表面処理接合装置は、接合する一対の基板18、28の接合面をプラズマ処理するためのプラズマ電極32と、そのプラズマ処理した一対の基板18、28の接合面を当接して接合するホルダ押し上げロッド31とを有する。一対の基板18、28を互いに対向させた状態で位置決めピン24と位置決め孔14とにより相互に位置決めする。前記ホルダ押し上げロッド31により基板の接合面を互いに離間して対向させ、その接合面の間にプラズマ電極を挿入してプラズマを形成し、基板18、28の接合面を同時にプラズマ処理する。その後基板18、28の接合面を当接するよう基板を移動し、基板18、28を加圧して圧着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2枚の基板の表面を処理し、その処理した表面を互いに接合する方法と装置であって、さらに具体的にはプラズマ中で2枚の基板の表面を清浄化或いは活性化の処理をし、さらに清浄化或いは活性化した2枚の基板を互いに接合するプラズマ基板表面処理接合方法とそのプロセスを実施するのに好適な装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスやシリコンウェーハなどの2枚の基板を低温で貼り合わせる技術は、集積回路装置やビデオディスプレイパネル等のデバイス製造プロセスとして利用されている。従来知られている基板の接着法としては融着法や、希釈フッ酸処理を介して接着する圧着接合などが知られている。
【0003】
しかし融着法では基板を高温に加熱する必要があり、また基板の接着に長い時間を要する。また加熱炉の温度管理が難しいという課題もある。また接合する2枚の基板の接合面間に気泡が生じやすく、接合不良を生じやすい。他方、圧着接合においては基板の接合に長い時間を要する。
【0004】
これに対し他の基板接合技術として下記特許文献7に記載されたように、半導体ウエハや液晶表示パネル等における2枚の基板に所定のギャップを設けつつ接合するに当たり、基板表面に前処理としてプラズマ処理を行い、表面を改質化、清浄化或いは活性化した後にその表面を接合する技術が開示されている。
【0005】
しかし基板を接合する前に前処理としてプラズマ処理する場合、従来では接合する基板をそれぞれ個別にプラズマ処理することを前提としていた。そのためプラズマ処理装置が2台必要であったり、あるいは1台のプラズマ処理装置で前後して2枚の基板を処理しなければならなかった。そのため設備を多く必要としたり時間が長くかかり非効率である。そればかりでなくプラズマ処理工程から接合工程に至るまでにプラズマ処理した基板の表面が汚染されたり劣化しやすく、その対策にも手数を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】2009−130289
【特許文献2】2009−028923
【特許文献3】2008−277552
【特許文献4】2008−207221
【特許文献5】2007−243038
【特許文献6】2006−258958
【特許文献7】特開平05−082404
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記従来の基板の接合面の清浄化、改質化或いは活性化を目的とするプラズマ処理と接合技術における課題に鑑み、接合しようとする一対の基板の接合面を1台の処理設備により効率よく短時間でプラズマ処理し、それに続いて容易に基板の接合が出来るようにしたプラズマ基板表面処理接合方法とそのプロセスを実施するのに好適な装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では接合する一対の基板の接合面を真空中で互いに対向させた状態でその間にプラズマ発生用電極(以下「プラズマ電極」と呼ぶ)を挿入して接合面の間にプラズマ空間を形成し、双方の基板の接合面を同時にプラズマ処理する。その後基板の接合面からプラズマ電極を除去し、続いて基板の接合面を当接し、接合するものである。
【0009】
すなわち本発明によるプラズマ基板表面処理接合方法は、接合する一対の基板の接合面をプラズマ処理する工程と、そのプラズマ処理した一対の基板の接合面を当接して接合する工程とを有するものであって、一対の基板の接合面を真空中で互いに対向させた状態でその間にプラズマ電極を挿入して接合面の間にプラズマ空間を形成して双方の基板の接合面を同時にプラズマ処理する工程と、その後基板の接合面からプラズマ発生用の電極を除去して接合面を当接し、接合する工程を有するものである。
【0010】
さらにこのようなプラズマ基板表面処理接合方法を実施するための装置は、接合する一対の基板の接合面をプラズマ処理するためのプラズマ電極と、そのプラズマ処理した一対の基板の接合面を当接して接合する機構とを有するものであって、一対の基板の接合面を互いに対向させた状態で相互に位置決めする位置決め手段と、互いに離間して対向させた基板の接合面の間に挿入され、同接合面の間にプラズマを形成するプラズマ電極と、基板の接合面が離間した状態から当接するよう基板を移動する基板移動機構と、接合面が当接した一対の基板を加圧する加圧機構を備えるものである。
【0011】
接合する基板はそれぞれ基板ホルダに保持され、基板ホルダは基板を保持した基板支持体がその外側にある枠体を貫通した位置調整ネジにより挟持され、この位置調整ネジにより基板支持体が枠体に対する位置が調整可能となっている。またそれぞれ基板を保持した基板ホルダの少なくとも何れか一方が上下動され、これにより対向した基板が互いに離間及び当接される。対向した基板が互いに離間した状態でそれらの接合面の間にプラズマ電極を挿入して両接合面を同時にプラズマ処理し、その後基板の接合面の間からプラズマ電極を退避させて接合面を当接し、この状態で基板を加圧し、その接合面を圧着する。
【0012】
このようなプラズマ基板表面処理接合方法と装置では、接合する一対の基板の接合面を同じプラズマ装置により同時に処理出来る。従ってそれぞれ別個のプラズマ装置を用いる必要が無く、単一のプラズマ装置で一対の基板の接合面を同時に処理することが出来る。また一対の基板の接合面をプラズマ処理した後、その間からプラズマ電極を退避させて直ちに接合面を当接し、接合することが出来るので、プラズマ処理の後に基板を一旦真空チャンバから取り出す必要がない。そのためプラズマ処理した基板の接合面が大気等で汚染されることもなく、プラズマ処理に続いて接合を行うことが出来る。
【発明の効果】
【0013】
以上説明した通り本発明によるプラズマ基板表面処理接合方法と装置では、単一のプラズマ装置で能率良く基板の接合面のプラズマ処理を行い、なおかつそのまま直ちに接合出来るので、少ない設備で能率よく基板の接合面のプラズマ処理と接合が行える。しかもプラズマ処理された基板の接合面の汚染の問題も解消され、高品質の接合が実現出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は本発明によるプラズマ基板表面処理接合方法に使用する基板とそれを保持する保持具の一例を示す縦断正面図である。
【図2】図2は本発明によるプラズマ基板表面処理接合方法において基板の接合面をプラズマ処理する状態の図1とは別の面で断面した縦断正面図である。
【図3】図3は本発明によるプラズマ基板表面処理接合方法において基板の接合面を当接した状態の図2と同じ面で断面した縦断正面図である。
【図4】図4は本発明によるプラズマ基板表面処理接合方法において基板の接合面を加圧して圧着する状態の正面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は前記の目的を達成するため、一対の基板の接合面を真空中で互いに対向させた状態で双方の基板の接合面を同時にプラズマ処理し、その後続いて基板の接合面を当接し、接合するようにした。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、実施例をあげて詳細に説明する。
【0016】
図1は半導体ウエハや液晶パネル等の一対の基板18、28をそれぞれ保持する基板ホルダ11、21を示している。
上側の基板ホルダ11は四角形の部分の四方を囲む額縁状の枠体12とその間の四角形の部分に配置された四角形板状の基板支持体13とを有している。枠体12にはそれぞれ4辺部の外側から内側に向けて貫通するねじ穴が設けられ、このねじ穴に位置調整ネジ15がねじ込まれている。位置調整ネジ15の先端はねじ穴から内側に突出し、基板支持体13の4つの側面に当接している。これにより基板支持体13が枠体11の中で位置調整ネジ15により挟持されると共に、これら位置調整ネジ15の先端のねじ穴からの押し出しにより基板支持体13が枠体11に対して位置決めされる。
【0017】
枠体12にはその上下に貫通する位置決め孔14が設けられている。このような位置決め孔14は4辺の枠体12に2〜4個所設けられる。また基板支持体13にはその上下に貫通する位置合わせ観察用覗き孔16が設けられている。
基板支持体13の下面に基板押さえ17が設けられ、この基板押さえ17により基板支持体13の下面に半導体ウエハや液晶パネル等の基板18が保持される。この状態では基板18の下面が接合面となる。
【0018】
下側の基板ホルダ21もやはり四角形の部分の四方を囲む額縁状の枠体22とその間の四角形の部分に配置された四角形板状の基板支持体23とを有している。下側の基板ホルダ21の基本的な構成は前述した上側の基板ホルダ11と同じであり、上下を逆にした構造となっている。但し、枠体22は上側の基板ホルダ11の枠体12より枠部の幅が狭く、従って全体に平面投影形状は上側の基板ホルダ11より小さい。
【0019】
この上側の枠体22にはそれぞれ4辺部の外側から内側に向けて貫通するねじ穴が設けられ、このねじ穴に位置調整ネジ25がねじ込まれている。位置調整ネジ25の先端はねじ穴から内側に突出しており、基板支持体23の4つの側面に当接している。これにより基板支持体23が枠体21の中で位置調整ネジ25によりに挟持されると共に、この位置調整ネジ25の先端のねじ穴からの押し出しにより基板支持体23が枠体21に対して位置決めされる。
【0020】
枠体22にはその上方に位置決めピン24が突設されている。このような位置決めピン24は前記上側の基板ホルダ11の枠体12の位置決め孔14と対応して4辺の枠体22に2〜4個所設けられる。また基板支持体23にはその上下に貫通する位置合わせ観察用覗き孔26が設けられている。この位置合わせ観察用覗き孔26も前記上側の基板ホルダ11の位置合わせ観察用覗き孔16と対応して設けられている。
基板支持体23の上面に基板押さえ27が設けられ、この基板押さえ27により基板支持体23の下面に半導体ウエハや液晶パネル等の基板28が保持される。この状態では基板28の上面が接合面となる。
【0021】
このように基板ホルダ11、21にそれぞれ保持された基板18、28を上下に対向させた状態が図1と図2である。図示はしていないがこれら基板18、28は所要の真空度に維持された真空チャンバの中に配置される。
図2では上側の基板ホルダ11の枠体12がホルダ押し上げロッド31、31の上端に載っている。このホルダ押し上げロッド31、31は下側の基板ホルダ21の外側に配置され、下側の基板ホルダ21とは干渉しない。このホルダ押し上げロッド31、31は図示していないトランスファ機構を介してアクチュエータに連結されており、基板ホルダ11の枠体12を上下動する。図2の例では上側の基板ホルダ11の枠体12のみを上下動するようになっているが、下側の基板ホルダ21の枠体22のみを上下動するか、或いは上下双方の基板ホルダ11、21の枠体12、22を上下動するようにしてもよい。
【0022】
このように上下に対向させた基板18、28の間にプラズマ電極32が挿入される。このプラズマ電極32は図示していないトランスファ機構を介してアクチュエータに連結されており、上下に対向した基板18、28の間に挿入され或いはその間から退避されるよう図2において横方向に移動する。
【0023】
プラズマ電極32は例えばコイル状の高周波電極であり、これに高周波電流を通電することにより、真空中で上下に対向させた基板18、28の間にプラズマが生じる。このプラズマの中で生じた電離イオン等により基板18、28の対向面の汚染が除去されて清浄化され、或いは表面が電離化される等して活性化される。
【0024】
このような基板18、28の対向面がプラズマ処理された後、プラズマ電極32は図2の位置から退避し、続いてホルダ押し上げロッド31、31を介して接続された図示してないアクチュエータにより図3に示すように上側の基板ホルダ11が下降し、基板18、28の対向面が互いに当接する。このとき下側の基板ホルダ21の位置決めピン24が上側の基板ホルダ11の位置決め孔14に嵌り込み、互いの位置決めが行われる。またこの上下の基板ホルダ11、21の位置は上下の位置合わせ観察用覗き孔16、26が一致することでも確認出来る。
【0025】
このようにして基板ホルダ11、21に保持された基板18、28の対向面を互いに当接した状態で図4に示すように上側の基板ホルダ11の基板支持体13の上面に加圧プランジャ33を当て、対向面を互いに当接した基板18、28を加圧することにより基板18、28の対向面を圧着する。図4の例では上側の基板ホルダ11の基板支持体13を加圧するようになっているが、下側の基板ホルダ21の基板支持体23を加圧するか、或いは上下双方の基板ホルダ11、21の基板支持体13、23を同時に加圧するものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明によるプラズマ基板表面処理接合方法と装置では、単一のプラズマ装置で能率良く基板の接合面のプラズマ処理を行い、なおかつそのまま直ちに接合出来るので、半導体装置用のウエハ等の基板のプラズマ処理や接合或いは液晶パネル等の基板のプラズマ処理や接合に利用することが出来る。
【符号の説明】
【0027】
11 基板ホルダ
12 基板ホルダの枠体
13 基板ホルダの基板支持体
14 位置決めピン
16 位置合わせ観察用覗き孔
18 基板
21 基板ホルダ
22 基板ホルダの枠体
23 基板ホルダの基板支持体
24 位置決め孔
26 位置合わせ観察用覗き孔
27 基板押さえ
28 基板
31 ホルダ押し上げロッド
32 プラズマ電極
33 加圧プランジャ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合する一対の基板の接合面をプラズマ処理する工程と、そのプラズマ処理した一対の基板の接合面を当接して接合する工程とを有する基板表面処理接合方法において、一対の基板の接合面を真空中で互いに対向させた状態でその間にプラズマ電極を挿入して接合面の間にプラズマ空間を形成して双方の基板の接合面を同時にプラズマ処理する工程と、その後基板の接合面からプラズマ発生用の電極を除去して接合面を当接し、接合する工程を有することを特徴とする基板表面処理接合方法。
【請求項2】
それぞれ基板を保持した基板ホルダの少なくとも何れか一方が上下動され、これにより対向した基板が互いに離間及び当接されることを特徴とする請求項1に記載の基板表面処理接合方法。
【請求項3】
対向した基板が互いに離間した状態でそれらの接合面を同時にプラズマ処理し、その接合面が当接した状態で加圧し、圧着することを特徴とする請求項2に記載の基板表面処理接合方法。
【請求項4】
接合する一対の基板の接合面をプラズマ処理するためのプラズマ電極と、そのプラズマ処理した一対の基板の接合面を当接して接合する機構とを有するプラズマ基板表面処理接合装置において、一対の基板の接合面を互いに離間して対向させた状態で相互に位置決めする位置決め手段と、互いに対向させた基板の接合面の間に挿入され、同接合面の間にプラズマを形成するプラズマ電極と、基板の接合面が離間した状態から当接するよう基板を移動する基板移動機構と、接合面が当接した一対の基板を加圧する加圧機構を備えることを特徴とするプラズマ基板表面処理接合装置。
【請求項5】
接合する基板はそれぞれ基板ホルダに保持され、基板ホルダは基板を保持した基板支持体がその外側にある枠体を貫通した位置調整ネジにより挟持され、位置調整ネジにより基板支持体が枠体に対する位置が調整可能となっていることを特徴とする請求項4に記載のプラズマ基板表面処理接合装置。
【請求項6】
それぞれ基板を保持した基板ホルダの少なくとも何れか一方を上下動し、これにより対向した基板を互いに離間及び当接する機構を有することを特徴とする請求項4または5に記載のプラズマ基板表面処理接合装置。
【請求項7】
プラズマ電極は互いに離間して対向した一対の基板の接合面の間にに挿入、退避されることを特徴とする請求項4〜6の何れかに記載のプラズマ基板表面処理接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−25302(P2011−25302A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176412(P2009−176412)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年1月30日 社団法人応用物理学会関西支部主催の「応用物理学会関西支部 平成20年度第2回講演会」において文書をもって発表
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(390027683)株式会社エイコー・エンジニアリング (14)
【Fターム(参考)】