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プラズマ生成用ガスおよびプラズマ生成方法並びにこれにより生成された大気圧プラズマ
説明

プラズマ生成用ガスおよびプラズマ生成方法並びにこれにより生成された大気圧プラズマ

【課題】プラズマ化が困難なガスのプラズマを容易に生成することができるプラズマ生成用ガスおよびプラズマ生成方法並びにこれにより生成された大気圧プラズマを提供する。
【解決手段】大気圧プラズマを生成するために用いられるプラズマ生成用ガスであって、プラズマとなることにより処理能力を有するとともに、プラズマ生成用ガス全体をプラズマ源に搬送するためのベースガス(キャリアーガス)としてのアルゴン(Ar)と、前記大気圧プラズマの処理効果を向上する処理効果向上ガスとしての酸素ガスもしくは炭酸ガスとの混合ガスとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気圧下においてプラズマ化が困難なガスを容易にプラズマを生成可能とし、様々なプラズマを用いた処理(以下、プラズマ処理という。)に用いるためのプラズマ生成用ガスおよびプラズマ生成方法並びにこの生成方法を用いて生成された大気圧プラズマに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被処理物の表面にプラズマを照射することにより、例えば、表面洗浄処理、親水化処理、撥水化処理、殺菌処理およびコーティング処理等の様々なプラズマ処理が行われている。
【0003】
例えば、プラズマを被処理物の表面に照射すると、表面に付着している有機物が除去されたり、あるいは表面にカルボキシル基(−COOH)やカルボニル基(−C(=O)−)等が生成される。その結果、被処理物の表面が親水化され、接着性や塗装性を向上させることができるため、フラットパネルのクリーニングや自動車部品の接着時の親水化処理にプラズマが利用されている。
【0004】
また、プラズマ処理は、特許文献1に記載されているように、プラズマ生成用ガスに用いるガスによっても得られる効果が異なり、近年、産業界において、前記プラズマ処理の様々な分野への応用が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−001551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来においては、大気圧下で安定にプラズマを生成させることができるプラズマ生成用ガスは、ヘリウム、アルゴン等のごく一部のガスに限られている。しかしながら、プラズマ化が困難であるものの、例えば、酸素ガス、炭酸ガス、窒素酸化物ガスなどはプラズマとされると化学的活性が高く、良好な処理効果が得られることが知られている。炭酸ガスについては大気圧下で安定にプラズマを生成することが特に困難であったことから、プラズマを消火するためのガスとして用いられてきた。このようなガスは、強制的にプラズマを生成したとしても、濃度の薄いプラズマしか生成することができず、プラズマ処理に長い時間を要するために実用化は困難であった。このため、このようなプラズマ化が困難なガスのプラズマ化を容易に得ることが課題とされている。
【0007】
また、プラズマ処理は、プラズマ化が可能なガスに対応した数種類の手法に限定されているため、プラズマの用途の多様化が課題とされている。
【0008】
そこで、本発明はこれらの課題を解決するべく、例えば、酸素ガス、炭酸ガスおよび窒素酸化物ガスなどのプラズマ化が困難なガスのプラズマを容易に生成することができるプラズマ生成用ガスおよびプラズマ生成方法並びにこれにより生成された大気圧プラズマを提供するとともに、得られた大気圧プラズマを用いて多くの産業分野へのプラズマ処理の応用化を実現可能とすることを目的としている。
【0009】
また、本発明は、プラズマを利用して高速に所望の処理を可能とすることよって、量産性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の第1のプラズマ生成用ガスは、大気圧プラズマを生成するために用いられるプラズマ生成用ガスであって、プラズマとなることにより処理能力を有するとともに、前記プラズマ生成用ガス全体をプラズマ源に搬送するためのベースガス(キャリアーガス)と、前記大気圧プラズマの処理効果を向上させるための処理効果向上ガスとの混合ガスとされることを特徴とする。
【0011】
このような、本発明の第1のプラズマ生成用ガスとすることにより、処理効果の高いプラズマを得ることができ、例えば、所望の表面処理や被処理物の特性に応じて、処理効果向上ガスを適宜選択することにより、様々な表面処理を効率よく行うことを可能とする。さらに、処理効果の高いプラズマを得られることで、高速に所望の処理を可能として、量産性の向上を図ることができる。
【0012】
本発明の第2のプラズマ生成用ガスは、前記大気圧プラズマを用いて、金属材料の表面をクリーニングもしくは親水化もしくはエッチングによって表面層の除去を行う際には、前記処理効果向上ガスとして、酸素ガス、炭酸ガス、水蒸気および窒素酸化物ガスから少なくとも1つを選択して用いることを特徴とする。
【0013】
このような、本発明の第2のプラズマ生成用ガスを用いてプラズマ処理を行うことにより、金属材料の表面への処理効果を向上させることができ、産業分野へのプラズマ処理の実用化を実現することができる。
【0014】
本発明の第3のプラズマ生成用ガスは、前記大気圧プラズマを用いて、高分子材料の表面をクリーニングもしくは親水化若しくはエッチングによって表面層の除去を行う際には、前記処理効果向上ガスとして、炭酸ガス、水蒸気および窒素酸化物ガスから少なくとも1つを選択して用いることを特徴とする。
【0015】
このような、本発明の第3のプラズマ生成用ガスを用いてプラズマ処理を行うことにより、高分子材料の表面への処理効果を向上させることができ、産業分野へのプラズマ処理の実用化を実現することができる。
【0016】
本発明の第4のプラズマ生成用ガスは、前記混合ガスに対して、プラズマ化を補助するための生成補助ガスをさらに混合することを特徴とする。また、本発明の第5のプラズマ生成用ガスは、前記生成補助ガスが、ヘリウムガスとされることを特徴とする。
【0017】
このような、本発明の第4および第5のプラズマ生成用ガスとすることにより、処理効果向上ガスとしてプラズマ化が困難なガスを用いた場合においても、前記プラズマ生成用ガスを容易にプラズマ化することを可能とする。
【0018】
本発明のプラズマ生成方法は、前記第1から第5のいずれかに記載のプラズマ生成用ガスに対し、大気圧下において電界を印加してプラズマを生成することを特徴とする。また、本発明の大気圧プラズマは、本発明のプラズマ生成方法により生成されたことを特徴とする。
【0019】
このような、本発明の大気圧プラズマによれば、表面処理の目的および処理される被処理物の種類や特性に応じて、プラズマ生成用ガス中の処理効果向上ガスを適宜選択することによって、多種多様な表面処理を行えるので、様々な産業分野への応用を可能とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、従来のプラズマ処理に用いられたプラズマと比較して、処理効果の高いプラズマを得ることができるとともに、プラズマ化が困難なガスにおいても容易にプラズマを生成することができるので、様々な産業分野への応用を可能とする。
【0021】
具体的には、処理効果向上ガスを混合することによって、処理効果向上ガスを所望の表面処理や被処理物の特性に応じて適宜選択して、最適なプラズマ処理を提供することを可能とする。
【0022】
また、生成補助ガスを混合することによって、処理効果向上ガスとしてプラズマ化が困難なガスを用いる場合においても容易にプラズマを生成することを可能とする。
【0023】
さらに、処理効果の高いプラズマを得られることにより、所望の処理を高速に施すことができ、量産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のプラズマ生成方法に用いられるプラズマ生成装置を示す概略図
【図2】本発明の大気圧プラズマを用いたプラズマ処理の実施形態を示す概略図
【図3】アルゴンガス、窒素ガス、空気、酸素ガス、ヘリウムガスおよび炭酸ガスを用いて親水化処理を施した場合における処理速度と接触角との関係を示すグラフ
【図4】ベースガス(キャリアーガス)をアルゴンガスとし、処理効果向上ガスを酸素ガスまたは炭酸ガスとしたプラズマ生成用ガスにより生成した大気圧プラズマを用いて親水化処理を行った際の処理効果向上ガスの添加率と水滴の接触角との関係を示すグラフ
【図5】ベースガス(キャリアーガス)をヘリウムガスとし、処理効果向上ガスを酸素ガスまたは炭酸ガスとしたプラズマ生成用ガスにより生成した大気圧プラズマを用いて親水化処理を行った際の処理効果向上ガスの添加率と水滴の接触角との関係を示すグラフ
【図6】処理効果向上ガスを酸素ガスとした場合における、ベースガスに対する生成補助ガスとしてのヘリウムガスの添加量とプラズマ生成開始電圧を示すグラフ
【図7】処理効果向上ガスを水素ガスとした場合における、ベースガスに対する生成補助ガスとしてのヘリウムガスの添加量とプラズマ生成開始電圧を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明のプラズマ生成用ガスおよびプラズマ生成方法並びにこれにより生成された大気圧プラズマの実施形態を図1乃至図7を用いて説明する。
【0026】
本発明のプラズマ生成用ガスは、プラズマ源に導入され、電界を印加されることによりプラズマを生成するためのガスである。
【0027】
本発明のプラズマ生成用ガスの第1の実施形態は、プラズマとなることにより処理能力を有するとともに、プラズマ生成用ガス全体をプラズマ源へ搬送するためのベースガス(キャリアーガス)と、生成されるプラズマの処理効果を向上させるための処理効果向上ガスとの混合ガスとされている。
【0028】
ベースガス(キャリアーガス)としては、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、キセノンガス、窒素ガスおよび空気などのプラズマ化が容易なガスから少なくとも1つを選択して用いることができる。
【0029】
処理効果向上ガスとしては、炭酸ガス、水蒸気、酸素ガス、水素ガス、窒素酸化物ガスなどの非常に活性の高いプラズマを得ることができるガスから少なくとも1つを選択して用いることができる。
【0030】
このような、第1の実施形態のプラズマ生成用ガスとすることにより、処理効果向上ガスを所望の表面処理や被処理物の特性に応じて適宜選択して、最適なプラズマ処理を提供することを可能とする。
【0031】
また、本発明のプラズマ生成用ガスの第2の実施形態は、前記第1の実施形態における混合ガスに対して、前記プラズマ生成用ガスのプラズマ化を補助するための生成補助ガスをさらに混合するようにされている。
【0032】
生成補助ガスとしては、ヘリウムガスまたはアルゴンガスを用いることができる。
【0033】
このような、第2の実施形態のプラズマ生成用ガスとすることにより、例えば、処理効果向上ガスとしてプラズマ化が困難なガスを用いる場合においても容易にプラズマを生成することを可能とする。
【0034】
本発明の具体的な実施の態様としては、被処理物として金属材料を用いる際には、処理効果向上ガスとして酸素ガス、炭酸ガス、水蒸気および窒素酸化物ガスから少なくとも1つを選択して用いることが好ましく、このような処理効果向上ガスを用いたプラズマ生成用ガスとすることにより、被処理物の表面を効果的にクリーニング、親水化およびエッチングによる表面層の除去などを施すことができる。
【0035】
また、被処理物として高分子材料を用いる際には、処理効果向上ガスとして炭酸ガス、水蒸気および窒素酸化物ガスから少なくとも1つを選択して用いることが好ましく、このような処理効果向上ガスを用いたプラズマ生成用ガスとすることにより、被処理物の表面を効果的にクリーニング、親水化およびエッチングによる表面層の除去などを施すことができる。
【0036】
被処理物としては、上記に記載したものも含めて、銅、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属材料、後述するポリイミドフィルムを始め、高密度ポリエチレンなどの樹脂系材料、繊維系材料、有機系材料などの高分子材料を用いることができる。
【0037】
また、本発明のプラズマ生成用ガスにより生成されたプラズマを用いた処理としては、表面洗浄処理、親水化処理、撥水化処理、殺菌処理およびコーティング処理などを施すことができる。
【0038】
本発明のプラズマ生成方法は、大気圧下において、本発明のプラズマ生成用ガスに対し、直流、交流または高周波の電界を印加して大気圧プラズマを生成するようにされている。
【0039】
プラズマ発生は、プラズマを生成可能とするものであればいかなる方法でも良く、放電、レーザー、放射線、紫外線、衝撃波などを用いることができる。
【0040】
本発明の大気圧プラズマを生成するためのプラズマ生成装置について、図1を用いて詳しく説明する。
【0041】
前記プラズマ生成装置としては、主にアーク放電を利用し、噴射されるプラズマの形状がジェット状のジェット型プラズマ生成装置あるいは、グロー放電を利用し、プラズマを噴射する噴射口がライン状のライン型プラズマ生成装置、あるいは、コロナ放電を利用したプラズマ生成装置を用いることができる。なお、本実施形態では、特に、ジェット型プラズマ生成装置を用いて実施例の説明を行う。
【0042】
ジェット型プラズマ生成装置1は、図1に示すように、プラズマ生成用ガスに放電することによりプラズマに電界を印加してプラズマを生成するプラズマ源2と、プラズマ源2に電圧を印加する電源3と、プラズマ源2へプラズマ生成用ガスを供給するガス供給部4とからなる。
【0043】
プラズマ源2は、プラズマを噴射する噴射口6aが形成された外側電極6と、筐体5および外側電極6内に収容された内側電極7とを備えている。
【0044】
筐体5にはプラズマ用生成ガスを導入するためのガス導入口5aが形成されている。
【0045】
前記電源3からの電力としては、交流電圧の代わりに、直流、パルス波、高周波等を用いてもよい。
【0046】
上記のプラズマ生成装置1を用いたプラズマ生成方法について説明する。プラズマ生成装置1においては、ガス供給部4からプラズマ源2のガス導入口5aに導入されたプラズマ生成用ガスが放電部8に供給され、外側電極6と内側電極7との間に電源3から交流電圧が印加されることにより、内側電極7の球状部の中心部から放射状に延びる方向に均一な放電が発生する。そして、噴射口6aからジェット状のプラズマとして噴出されるようになっている。
【0047】
<各ガスのプラズマ処理効果の測定>
本実施例において、被処理物に対し、プラズマ処理装置を用いてプラズマ照射処理を行う様子を図2に示す。プラズマ処理装置10は、モータ等によって一定の速度で水平移動し、上部に載置した被処理物Wを搬送方向A(図2における左方向)に搬送可能とする搬送台11と、その上方にプラズマを噴出する噴射口6aを対向させるようにして固定配置されたプラズマ生成装置1とからなる。プラズマ生成装置1としては、図1に示したようなジェット型プラズマ生成装置1を用い、搬送台11に載置された被処理物Wの表面との距離が約3mmとなるような位置に固定配置した。なお、プラズマ生成装置1に供給するプラズマ生成用ガスのガス流量は5L/min、電源から電極間に供給する電圧は周波数50Hz〜50kHzで約5kVの高周波電圧とした。
【0048】
本実施例におけるプラズマ処理装置10は、被処理物Wを搬送台11に載置した状態で、当該搬送台11を搬送方向Aに所定の搬送速度で搬送させるとともに、ジェット型プラズマ生成装置1の噴射口6aからプラズマを噴出させて、被処理物Wの表面にプラズマを照射することによりプラズマ処理を行う。
【0049】
また、プラズマ処理装置10による被処理物Wの表面への親水化効果を検討するべく、プラズマ処理後の被処理物Wの表面に水滴を滴下し、接触角測定器を用いて被処理物Wの表面に対する水滴の接触角を測定した。この時、接触角が小さいほど被処理物Wの表面への水のぬれ性が高く、より親水性であることを示し、接触角が大きくなるほど被処理物Wの表面が水滴を弾いており、親水性が低いことを示す。
【0050】
まず、プラズマ生成用ガスとして、単体の物質からなるガスを用いてプラズマ処理を施し、各々の親水性処理効果を検討した結果について説明する。
【0051】
プラズマ生成用ガスとして、アルゴンガス、ヘリウムガス、酸素ガス、窒素ガス、炭酸ガスまたは空気を用い、プラズマ処理を行った。この時、被処理物Wの搬送速度を0から300mm/secの間で変化させて測定を行い、プラズマ照射後の被処理物Wの接触角をそれぞれ測定した結果を図3に示す。
【0052】
アルゴンガス、ヘリウムガス、酸素ガスおよび空気のいずれかを用いた場合には、被処理物Wの搬送速度が速くなるほど接触角は大きくなり、親水化効果が極端に低下した。これに対し、炭酸ガスを用いた場合には、搬送速度を速くしても、接触角には殆ど変化はみられず、本実験の最高速度である搬送速度300mm/secとした場合においても接触角25°と、良好な親水性が得られた。
【0053】
また、窒素ガスおよび炭酸ガスを用いた場合には、搬送速度100mm/secにおいて良好な親水化効果を示した。それ以上の搬送速度においては、炭酸ガスを用いた場合が最も良好な親水性を示す結果となった。
【0054】
この結果から、プラズマ生成用ガスとして窒素ガスおよび炭酸ガスを用いて生成されたプラズマは、一般的にプラズマ生成用ガスとして用いられるアルゴンガス、ヘリウムガス、酸素ガスおよび空気を用いて生成されたプラズマよりも親水化処理効果が高いことが分かる。
【0055】
以下に、本発明のプラズマ生成用ガスを用いて生成された本発明の大気圧プラズマの処理効果を実施例1乃至実施例4を用いて詳しく説明する。
【0056】
本発明の第1態様として、ベースガス(キャリアーガス)と処理効果向上ガスとの混合ガスからなるプラズマ生成用ガスを用いてプラズマ処理を行った場合の処理効果について実施例1乃至実施例3を用いて説明する。
【0057】
<実施例1>
ベースガス(キャリアーガス)としてアルゴンガスまたはへリムガス、処理効果向上ガスとして酸素ガスまたは炭酸ガスをそれぞれ用いたプラズマ生成用ガスから生成されたプラズマによって被処理物Wに対してプラズマ処理を施し、処理後の被処理物Wの表面に対する水滴の接触角を測定した結果を図4および図5に示す。
【0058】
なお、被処理物Wとしては、ポリイミドフィルムを用い、搬送速度100mm/secの条件下でプラズマ処理を行った。
【0059】
第1に、処理効果向上ガスとして酸素ガスを用いた場合には、アルゴンガス、ヘリウムガスのいずれにおいても、処理効果向上ガスの添加率が10%となるまでは、添加率の増加に比例して接触角が小さくなり、添加率が10%より増加すると、反対に接触角が大きくなった。
【0060】
第2に、処理効果向上ガスとして炭酸ガスを用いた場合には、ベースガス(キャリアーガス)がアルゴンガスとされたものにおいて、添加率が1%となるまでは急激に接触角が小さくなった。添加率が1%よりも増加すると、添加率の増加に伴って、緩やかに接触角が小さくなり、添加率が90%の時に接触角が最も小さくなった。
【0061】
また、図5に示すように、ベースガス(キャリアーガス)がヘリウムガスとされたものにおいては、添加率が1%となるまでは急激に接触角が小さくなり、添加率が10%で最小の接触角となった。それよりも添加率が増加すると、添加率の増加に伴って、緩やかに接触角が大きくなった。
【0062】
これらの図3から図5に示す接触角の値を比較すると、ベースガス(キャリアーガス)単体からなるプラズマ生成用ガスまたは処理効果向上ガス単体からなるプラズマ生成用ガスからそれぞれ生成したプラズマの処理能力(図3参照)よりも、酸素ガスや炭酸ガスなどの活性の高い処理効果向上ガスをベースガス(キャリアーガス)に混合したプラズマ生成用ガスとすることによって、得られたプラズマの処理能力(図4および図5参照)の向上が可能であることが明らかとなった。
【0063】
したがって、本発明のプラズマ生成用ガスの第1の実施形態によれば、ベースガス(キャリアーガス)と処理効果向上ガスを混合したプラズマ生成用ガスとすることにより、ベースガス(キャリアーガス)または処理効果向上ガスの単体のガスから生成されたプラズマよりも高い処理効果を奏することを可能とする。
【0064】
次に、被処理物Wの種類とプラズマ生成用ガスとの関係について実施例2および実施例3において詳しく説明する。
【0065】
<実施例2>
被処理物Wとして銅板を用い、処理効果向上ガスに炭酸ガス、窒素酸化物ガス、水蒸気および酸素ガスのいずれかを用いてプラズマ処理を施した際の、処理効果向上ガスの添加率と水滴の接触角の測定結果を表1に示す。なお、表中の値は、図4または図5に示すような処理効果向上ガスの添加率と接触角とのグラフにおいて、添加率が0%の時の接触角の値と、最も接触角が小さくなった際の添加率および接触角の値を示すものである。
【0066】
ベースガス(キャリアーガス)としては、ヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガスおよび空気をそれぞれ用いて測定を行った。
【0067】
【表1】

【0068】
ベースガス(キャリアーガス)をヘリウムガスとし、処理効果向上ガスを炭酸ガスとした際には、添加率10%で最も接触角が小さくなり、窒素酸化物ガスの時には、添加率15%で最も接触角が小さくなり、水蒸気の時には、添加率5%で最も接触角が小さくなり、酸素ガスの時には、添加率10%で最も接触角が小さくなった。
【0069】
特に、処理効果向上ガスを炭酸ガスとした際には、添加率0%の時に69.9°であった接触角が、添加率10%の時には、29.7°まで小さくなり、炭酸ガスを添加することで接触角が57.5%も小さくなった。
【0070】
また、ベースガス(キャリアーガス)をアルゴンガスとし、処理効果向上ガスを炭酸ガスとした際には、添加率10%で最も接触角が小さくなり、窒素酸化物ガスの時には、添加率10%で最も接触角が小さくなり、水蒸気の時には、添加率20%で最も接触角が小さくなり、酸素ガスの時には、添加率20%で最も接触角が小さくなった。特に効果が認められたのは、処理効果向上ガスとして酸素ガスを添加率20%で添加したものであり、接触角が30%程度小さくなった。
【0071】
さらに、ベースガス(キャリアーガス)を窒素ガスとし、処理効果向上ガスを炭酸ガスとした際には、添加率1%で最も接触角が小さくなり、窒素酸化物ガスの時には、添加率10%で最も接触角が小さくなり、水蒸気の時には、添加率5%で最も接触角が小さくなり、酸素ガスの時には、効果が認められなかった。特に効果が認められた処理効果向上ガスは、炭酸ガスを添加率1%で混合したものであり、接触角が22.3%小さくなった。
【0072】
またさらに、ベースガス(キャリアーガス)を空気とし、処理効果向上ガスを炭酸ガスとした際には、添加率0.4%で最も接触角が小さくなり、窒素酸化物ガスの時には、添加率0.1%で最も接触角が小さくなり、水蒸気の時には、添加率10%で最も接触角が小さくなり、酸素ガスの時には、添加率10%で最も接触角が小さくなった。同様に、特に効果が認められた処理効果向上ガスは、酸素ガスを添加率10%で混合したものであり、接触角が40%程度小さくなった。
【0073】
これらの結果から、被処理物Wが例えば銅板のような金属材料の場合には、処理効果向上ガスとして炭酸ガス、窒素酸化物ガス、水蒸気または酸素ガスのいずれかを添加したプラズマ生成用ガスを用いたプラズマ処理を行うことにより、良好な親水化効果が得られることが明らかとなった。
【0074】
したがって、被処理物Wとして金属材料を用いる場合には、処理効果向上ガスとして炭酸ガス、窒素酸化物ガス、水蒸気または酸素ガスのいずれかを用いることが好ましく、特に、ベースガス(キャリアーガス)としてヘリウムガスを用い、処理効果向上ガスとして炭酸ガスを用いたプラズマ生成用ガスによりプラズマ処理を施すことが最も好ましい。
【0075】
<実施例3>
被処理物Wとしてポリイミドフィルムを用い、処理効果向上ガスに炭酸ガス、窒素酸化物ガスおよび水蒸気のいずれかを用いてプラズマ処理を施した際の、処理効果向上ガスの添加率と水滴の接触角の測定結果を表2に示す。なお、表中の値は、図4または図5に示すような処理効果向上ガスの添加率と接触角とのグラフにおいて、添加率が0%の時の接触角の値と、最も接触角が小さくなった際の添加率および接触角の値を示すものである。
【0076】
ベースガス(キャリアーガス)としては、ヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガスおよび空気をそれぞれ用いて測定を行った。
【0077】
【表2】

【0078】
ベースガス(キャリアーガス)をヘリウムガスとし、処理効果向上ガスを炭酸ガスとした際には、添加率10%で最も接触角が小さくなり、窒素酸化物ガスの時には、添加率9%で最も接触角が小さくなり、水蒸気の時には、微量な添加量で接触角が小さくなった。特に、処理効果向上ガスとして炭酸ガスを混合することにより、添加率0%で接触角46.0°であったものが、添加率10%で8.7°となり、接触角が81.1%小さくなった。
【0079】
また、ベースガス(キャリアーガス)をがアルゴンガスとし、処理効果向上ガスを炭酸ガスとした際には、添加率90%で最も接触角が小さくなり、窒素酸化物ガスの時には、添加率6%で最も接触角が小さくなり、水蒸気の時には、微量な添加量で接触角が小さくなった。
【0080】
さらに、ベースガス(キャリアーガス)を窒素ガスとし、処理効果向上ガスを炭酸ガスとした際には、添加率100%で最も接触角が小さくなり、窒素酸化物ガスの時には、添加率6%で最も接触角が小さくなり、水蒸気の時には、微量な添加量で接触角が小さくなった。
【0081】
またさらに、ベースガス(キャリアーガス)を空気とし、処理効果向上ガスを炭酸ガスとした際には、添加率100%で最も接触角が小さくなり、窒素酸化物ガスの時には、添加率100%で最も接触角が小さくなり、水蒸気の時には、添加率60%で最も接触角が小さくなった。
【0082】
これらの結果から、被処理物Wが例えばポリイミドフィルムのような高分子材料の場合には、処理効果向上ガスとして炭酸ガス、窒素酸化物ガスまたは水蒸気を添加したプラズマ生成用ガスを用いたプラズマ照射処理を行うことにより、良好な親水化効果が得られることが明らかとなった。
【0083】
したがって、被処理物Wとして高分子材料を用いる場合には、処理効果向上ガスとして、炭酸ガス、窒素酸化物ガスまたは水蒸気を用いることが好ましく、特に、ベースガス(キャリアーガス)としてアルゴンガスを用い、処理効果向上ガスとして炭酸ガスを用いたプラズマ生成用ガスによりプラズマ処理を施すことが最も好ましい。
【0084】
本発明の第2態様として、前記混合ガスに対して、生成補助ガスを混合したプラズマ生成用ガスを用いてプラズマ処理を行った場合にについて実施例4を用いて説明する。
【0085】
<実施例4>
ベースガス(キャリアーガス)と処理効果向上ガスの混合ガスに生成補助ガスとしてヘリウムガスを混合し、ヘリウムガスの混合率を変化させるとともに、その際にプラズマが生成し始める印加電圧を測定した結果を図6および図7に示す。
【0086】
処理効果向上ガスとして酸素ガスまたは水素ガスを用い、ベースガス(キャリアーガス)としてアルゴンガス、窒素ガスまたは空気のいずれかを用いて、生成補助ガスとしてのヘリウムガスを混合しプラズマ生成用ガスとして測定を行った。また、図6に示すグラフは、プラズマ生成用ガスの総流量を5L/minとし、そのうち、3L/minを処理効果向上ガスとしての酸素ガス、2L/minをベースガス(キャリアーガス)に対して生成補助ガスとしてのヘリウムガスの混合量を変化させた混合物として実験を行った。同様に、図7に示すグラフは、総流量を5L/minとし、そのうち、0.15L/minを処理効果向上ガスとしての水素ガス、4.85L/minをベースガス(キャリアーガス)に対して生成補助ガスとしてのヘリウムガスの混合量を変化させた混合物として実験を行った。なお、2つの実験は共にジェット型プラズマ生成装置1を用い、印加する電圧を徐々に増加して、プラズマの生成が開始した際の印加電圧を記録したものである。
【0087】
図6に示すように、ベースガス(キャリアーガス)として窒素ガスを用いた場合には、ヘリウムガスのガス濃度が0%から20%までは印加電圧に変化は認められず、それ以上のガス濃度とされることにより、濃度の増加に伴ってプラズマ生成開始電圧が下がった。
【0088】
ベースガス(キャリアーガス)として空気を用いた場合には、ヘリウムガスのガス濃度の増大に比例して、プラズマ生成開始電圧が下がり、20%のヘリウムガスの添加によって、プラズマ生成開始電圧が約14%も低くなった。
【0089】
また、図7に示すように、ベースガス(キャリアーガス)としてアルゴンガスを用いた場合には、ヘリウムガスのガス濃度を増加しても、プラズマ生成開始電圧にほとんど変化は認められなかった。
【0090】
また、図7に示すようにベースガスとして窒素ガスおよび空気を用いた場合には、どちらの場合においても、ヘリウムガスのガス濃度が増加するのに伴って、プラズマ生成開始電圧が下がった。
【0091】
これらの結果から、生成補助ガスを混合したプラズマ生成用ガスとすることにより、プラズマ生成開始電圧が低くなることから、プラズマ化が困難な酸素ガスや水素ガスを処理効果向上ガスとして用いた際にも、容易に安定なプラズマを生成可能であることが明らかとなった。
【0092】
また、生成補助ガスを混合したプラズマ生成用ガスを用いる際には、ベースガス(キャリアーガス)および処理効果向上ガスとして、生成補助ガスに用いられるガスと異なる物質のガスが選択されていることが好ましい。
【0093】
上述のように、本発明のプラズマ生成用ガスの第1の実施形態によれば、ベースガス(キャリアーガス)と処理効果向上ガスとの混合ガスとすることにより、従来のプラズマと比較して、処理効果の高いプラズマを得られるため、被処理物に対するプラズマ処理を高速に行って、量産性の向上を図ることができる。
【0094】
また、本発明のプラズマ生成用ガスの第2の実施形態によれば、第1の実施形態の混合ガスに単に生成補助ガスを混合することにより、処理効果向上ガスとしてプラズマ化が困難なガスを選択した際にも、容易にプラズマを生成することを可能とする。
【0095】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0096】
1 プラズマ生成装置
2 プラズマ源
3 電源
4 ガス供給部
5 ハウジング
5a ガス導入口
6 外側電極
6a 噴射口
7 内側電極
8 放電部
9 搬送台
W 被処理物
A 搬送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧プラズマを生成するために用いられるプラズマ生成用ガスであって、
プラズマとなることにより処理能力を有するとともに、前記プラズマ生成用ガス全体をプラズマ源に搬送するためのベースガス(キャリアーガス)と、
前記大気圧プラズマの処理効果を向上させるための処理効果向上ガスとの混合ガスとされることを特徴とするプラズマ生成用ガス。
【請求項2】
前記大気圧プラズマを用いて、金属材料の表面をクリーニングもしくは親水化もしくはエッチングによって表面層の除去を行う際には、
前記処理効果向上ガスとして、酸素ガス、炭酸ガス、水蒸気および窒素酸化物ガスから少なくとも1つを選択して用いることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ生成用ガス。
【請求項3】
前記大気圧プラズマを用いて、高分子材料の表面をクリーニングもしくは親水化若しくはエッチングによって表面層の除去を行う際には、
前記処理効果向上ガスとして、炭酸ガス、水蒸気および窒素酸化物ガスから少なくとも1つを選択して用いることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ生成用ガス。
【請求項4】
前記混合ガスに対して、プラズマ化を補助するための生成補助ガスをさらに混合することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のプラズマ生成用ガス。
【請求項5】
前記生成補助ガスが、ヘリウムガスとされることを特徴とする請求項4に記載のプラズマ生成用ガス。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のプラズマ生成用ガスに対し、大気圧下において電界を印加してプラズマを生成することを特徴とするプラズマ生成方法。
【請求項7】
請求項6に記載のプラズマ生成方法により生成されたことを特徴とする大気圧プラズマ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−256501(P2012−256501A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128588(P2011−128588)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、独立行政法人科学技術振興機構、研究成果最適展開支援事業(A−STEP)本格研究開発 起業挑戦タイプ「大気圧マルチガスダメージフリープラズマの実用化開発とビジネス化」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】