説明

プラズマ発生装置および成膜装置

【課題】低電圧で大量の熱電子を放出するプラズマ発生装置および成膜装置を提供する。
【解決手段】プラズマ発生装置11では、カソード2に熱電子を放出する筒状体に成形された熱電子放出部42が複数設けられている。このプラズマ発生装置11は、カソード2からアノード3に向けてイオン化させた不活性ガスを放出して放電させることにより、カソード2とアノード3との間にプラズマを発生させ、熱電子放出部42では、その筒内周面43および筒外周面44から熱電子を放出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ発生装置および成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
成膜装置として、例えば、プラズマ発生装置により発生させたプラズマビームを用いて基板上に透明導電膜を形成する装置がある。
【0003】
例えば、透明導電膜を形成する成膜装置として、例えば特許文献1に記載の成膜装置がある。この成膜装置では、カソードからアノードに向けてイオン化された不活性ガスを放出し放電させ、アノードに収容した透明導電膜の材料を昇華させてイオン化させ(蒸発させ)、蒸発させた透明導電膜の材料の粒子を薄膜の形成対象物である基板の表面に付着させて基板に透明導電膜を形成する。
【0004】
なお、この引用文献1では、カソードが設けられたプラズマ発生源と、アノードが設けられた材料収容部とが別々の構成とされ、それぞれ個別に成膜装置に設けられている。
【特許文献1】特開2002−30426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献1では、プラズマ発生装置のプラズマ発生源の一部であるカソードに、プラズマビームのもととなるAr等の不活性ガスを真空容器中に導入するための導入孔が形成され、この導入孔の孔内表面に、熱電子を放出する材料であるMoが形成されている。
【0006】
また、この導入孔は、カソードに1つだけ形成されているため、プラズマを発生させるための熱電子の放出領域が一つの導入孔の孔内表面積となる。
【0007】
そのため、特許文献1では熱電子の放出量に制限があり、カソードに高電圧を印加させて熱電子を放出しており、この特許文献1の開示技術では、低電圧で大量の熱電子を放出することは難しい。
【0008】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、低電圧で大量の熱電子を放出するプラズマ発生装置および成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明にかかるプラズマ発生装置は、カソードからアノードに向けてイオン化させた不活性ガスを放出して放電させることにより、前記カソードと前記アノードとの間にプラズマを発生させるプラズマ発生装置において、前記カソードに熱電子を放出する筒状体に成形された熱電子放出部が複数設けられ、前記熱電子放出部では、その筒内周面および筒外周面から熱電子を放出することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、前記カソードに前記熱電子放出部が複数設けられ、前記熱電子放出部の筒内周面および筒外周面から熱電子を放出するので、低電圧で大量の熱電子を放出することが可能となる。具体的に、1つの熱電子放出部がカソードとアノードとの間に設けられた従来の形態と比較して数倍から数十倍の熱電子を放出することが可能となり、高い電圧をかけなくても熱電子を放出することが可能となる。また、引用文献1に示すような例と比較しても前記熱電子放出部全体としての熱電子を放出する面積が広いので、効率よく熱電子を放出することが可能となる。
【0011】
前記構成において、前記熱電子放出部を、抵抗加熱により加熱して熱電子を放出してもよい。
【0012】
この場合、抵抗加熱より前記熱電子放出部を加熱して熱電子を放出するので、前記熱電子放出部を加熱させるための機構を簡素化することが可能となり、その結果、当該プラズマ発生装置の小型化を図ることが可能となる。
【0013】
前記構成において、不活性ガスの注入方向に沿って第1の熱電子放出群と第2の熱電子放出群とが配設され、前記第1の熱電子放出群では、不活性ガスの注入方向に沿って複数の前記熱電子放出部が配設され、前記第2の熱電子放出群では、不活性ガスの注入方向およびその直交方向に沿って複数の前記熱電子放出部が配設されてもよい。
【0014】
この場合、不活性ガスの注入方向に沿って前記アノード側から第1の熱電子放出群と第2の熱電子放出群とが配設され、前記第1の熱電子放出群では、不活性ガスの注入方向に沿って複数の前記熱電子放出部が配設され、前記第2の熱電子放出群では、不活性ガスの注入方向およびその直交方向に沿って複数の前記熱電子放出部が配設されるので、熱電子の放出を効率的に行うことが可能となる。
【0015】
前記構成において、前記第1の熱電子放出群では、前記熱電子放出部を加熱手段により加熱して熱電子を放出し、前記第2の熱電子放出群では、前記熱電子放出部を前記第1の熱電子放出群で発生させるプラズマにより加熱して熱電子を放出してもよい。
【0016】
この場合、加熱手段によって不活性ガスの注入方向に沿って配設された複数の前記熱電子放出部を加熱するため、熱電子を放出させるために加熱する領域(空間)を制限することになるが、前記第1の熱電子放出群では不活性ガスの注入方向に沿って複数の前記熱電子放出部が配設されるので、前記加熱手段によって全ての熱電子放出部を加熱させることが可能となる。さらに、不活性ガスの注入方向およびその直交方向に沿って複数の前記熱電子放出部が配設された前記第2の熱電子放出群では、前記第1の熱電子放出群で放出した熱電子により不活性ガスをイオン化させて放電させるプラズマにより前記第2の熱電子放出群の前記熱電子放出部の筒内周面および筒外周面から熱電子を放出するので、前記第2の熱電子放出群では実質加熱手段を用いた加熱は行なっていない。そのため、加熱手段の構成を省いた構成とすることが可能となる。
【0017】
上記したように、本構成によれば、熱電子を放出させるための加熱対象を第1の熱電子放出群とすることができ、その結果、低電圧で熱電子を放出させることが可能となる。また、前記加熱手段による加熱対象を前記第1の熱電子放出群としているので、当該プラズマ発生装置の小型化に好適である。
【0018】
また、前記第1の熱電子放出群と前記第2の熱電子放出群とから熱電子を放出するので、例えば特許文献1と比較して熱電子を放出する量を数倍から数十倍とすることが可能となる。
【0019】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる成膜装置は、成膜対象物に成膜材料からなる膜を形成する成膜装置において、上記した本発明にかかるプラズマ発生装置と、成膜材料を収容する収容部とが一体的に設けられたことを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、上記した本発明にかかるプラズマ発生装置と前記収容部とが一体的に設けられるので、少なくとも低電圧で大量の熱電子を放出するという効果を有する。また、上記した本発明にかかるプラズマ発生装置を設けているので、上記した本発明にかかるプラズマ発生装置と同様の作用効果を有する。
【0021】
さらに、本発明によれば、上記した本発明にかかるプラズマ発生装置を用いるので、装置の小型化を図ることが可能となり、具体的に、引用文献1の構成では配設することができない本発明の構成である前記プラズマ発生装置と前記収容部とを一体的に設けることを実現することが可能となる。
【0022】
前記構成において、一体的に設けられた前記プラズマ発生装置および前記収容部が、複数設けられてもよい。
【0023】
この場合、装置の小型化を図ることができるため、引用文献1の構成では配設することができない本発明の構成である一体的に設けられた前記プラズマ発生装置および前記収容部を複数設けることが可能となり、その結果、成膜対象物のサイズを制限しなくてもよい。具体的に、成膜対象物が大型の基板やフィルムであっても、これら大型の基板やフィルムの所望の面に一度に膜を形成することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明にかかるプラズマ発生装置および成膜装置によれば、低電圧で大量の熱電子を放出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施例では、最初に本発明にかかる成膜装置の説明を行う。
【0026】
本実施例にかかる成膜装置1では、図1〜3に示すように、プラズマPを発生させるプラズマ発生装置11と、成膜対象物(下記する図4,5に示すフィルム81や基板83など参照)に成膜材料7を収容する収容部12とが一体的に設けられ、この成膜装置1は図示しない真空容器(図4,5の真空容器9参照)に設けられる。ここでいう成膜材料7として、SiO2やTiO2などが用いられる。そして、成膜装置1は、収容部12に収容した成膜材料7を、プラズマPにより加熱昇華させて蒸発させ、成膜対象物に成膜材料7からなる膜を形成するものである。上記したように、プラズマ発生装置11と収容部12とが一体的に形成された小型の成膜装置1である。なお、従来の成膜装置として例えば特許文献1に示すような大型の成膜装置の寸法は、約950×550×550mmである。
【0027】
プラズマ発生装置11は、カソード2からアノード3に向けてイオン化させた不活性ガスを放出して放電させることにより、カソード2とアノード3との間にプラズマPを発生させる装置である。
【0028】
このプラズマ発生装置11では、カーボンからなるカソード2を設けたプラズマガン4と、アノード3とから構成され、Ar,H2などの不活性ガス(ガス注入方向X方向)がカソード2の後端側の不活性ガス供給管41から供給される。
【0029】
プラズマガン4では、図2に示すように、カソード2に熱電子を放出する熱電子放出部42が10個設けられている。熱電子放出部42は、LaB6からなり中空円筒状体に成形されて、その筒内周面43および筒外周面44から熱電子を放出する。
【0030】
また、プラズマガン4における熱電子放出部42の配設領域として第1の熱電子放出群46と第2の熱電子放出群47とが構成され、不活性ガスの注入方向(X方向)に沿ってアノード3側から第1の熱電子放出群46と第2の熱電子放出群47とが配設されている。
【0031】
第1の熱電子放出群46は、不活性ガスの注入方向(X方向)に沿って4個の熱電子放出部42が並んで配設され、4つの熱電子放出部42が同心状に配されこれらの筒内部が連続して挿通状態となる。なお、これら4つの熱電子放出部42の筒内部45には、加熱手段となる抵抗加熱部48が設けられ、熱電子放出部42は抵抗加熱部48による抵抗加熱により加熱して4つの熱電子放出部42の筒内周面43から熱電子を放出する。
【0032】
第1の熱電子放出群46の不活性ガスの注入方向(X方向)下流には、第2の熱電子放出群47が設けられ、この第2の熱電子放出群47では、不活性ガスの注入方向(X方向)およびその直交方向に沿って6つの熱電子放出部42が配設されている。具体的に、3つの熱電子放出部42が等間隔に不活性ガスの直交方向に配されるとともに、これら3つの熱電子放出部が不活性ガスの注入方向(X方向)に2列配されている。この第2の熱電子放出群47では、第1の熱電子放出群46で放出した熱電子により不活性ガスをイオン化させて放電させるプラズマPにより第2の熱電子放出群47の6つの熱電子放出部42の筒内周面43および筒外周面44から熱電子を放出する。
【0033】
上記した構成からなるプラズマガン4の不活性ガスの注入方向(X方向)下流には、プラズマPの流れを制御するため(具体的にプラズマPを収束するため)のカソード側コイル51とカソード側永久磁石52が設けられている。
【0034】
また、アノード3は、カーボンあるいはグラファイトからなり、成膜材料7を収容する収容部12が設けられている。具体的に、カソード2とアノード3の間であって、アノードの直近に隣接して収容部12が設けられている。また、収容部12の外周に沿ってアノード側コイル61と、リング状のアノード側永久磁石62とが設けられている。
【0035】
次に、上記した本実施例のプラズマ発生装置11を用いたプラズマCVDの工程について説明する。
【0036】
電源Eにより電流を抵抗加熱部48に印加して抵抗加熱部48による抵抗加熱を行う。抵抗加熱を行うことで、第1の熱電子放出群46の4つの熱電子放出部42が加熱される。これにより、4つの熱電子放出部42の筒内周面43から熱電子が放出される。
【0037】
一方、不活性ガス供給管41から供給された不活性ガスが第1の熱電子放出群46の4つの熱電子放出部42の筒内周面43に導入され、熱電子により不活性ガスがイオン化され、イオン化された不活性ガスが4つの熱電子放出部42の筒内周面43の不活性ガスの注入方向下流(出口)から第2の熱電子放出群47に向かって放出される。なお、この放出により、イオン化は促進され、プラズマが形成される。このプラズマは低い圧力、すなわち10-4〜10-3Torr(1.333×10-1〜1.333×10-2Pa)オーダーの真空雰囲気とされ、この雰囲気中での放電が可能となる。
【0038】
そして、第2の熱電子放出群47では、第1の熱電子放出群46より放電させたプラズマにより6つの熱電子放出部42が加熱され、これら6つの熱電子放出部42の筒内周面43および筒外周面44から熱電子が不活性ガスの注入方向下流(出口)からアノード3に向かって放出される。
【0039】
プラズマガン4から放出されたプラズマPは、カソード側コイル51とカソード側永久磁石52により収束され、収束されたプラズマPは、図1に示すようにアノード3直近のアノード側コイル61とアノード側永久磁石62によりアノード3に導かれる。
【0040】
そして、アノード3の直近に隣接して設けられた収容部12では、収容された成膜材料7が、プラズマにより昇華してイオン化し(蒸発し)、蒸発した成膜材料7を成膜対象物に付着させて成膜対象物の表面に薄膜が形成される。
【0041】
上記したように、本実施例にかかるプラズマ発生装置11によれば、カソード2に熱電子放出部42が複数設けられ、熱電子放出部42の筒内周面43および筒外周面44から熱電子を放出するので、低電圧で大量の熱電子を放出することができる。
【0042】
具体的に、1つの熱電子放出部42がカソード2に設けられた従来の形態と比較して数倍から数十倍の熱電子を放出することができ、高い電圧をかけなくても熱電子を放出することができる。また、引用文献1に示すような例と比較しても熱電子放出部42全体としての熱電子を放出する面積が広いので、効率よく熱電子を放出することができる。
【0043】
また、抵抗加熱部48による抵抗加熱より熱電子放出部42(具体的に第1の熱電子放出群46)を加熱して熱電子を放出するので、熱電子放出部42を加熱させるための機構を簡素化することができ、その結果、当該プラズマ発生装置11の小型化を図ることができる。
【0044】
また、不活性ガスの注入方向(X方向)に沿ってアノード3側から第1の熱電子放出群46と第2の熱電子放出群47とが配設され、第1の熱電子放出群46は、不活性ガスの注入方向(X方向)に沿って複数の熱電子放出部42が配設され、第2の熱電子放出群47は、不活性ガスの注入方向(X方向)およびその直交方向に沿って複数の熱電子放出部42が配設されるので、熱電子の放出を効率的に行うことができる。
【0045】
また、加熱手段(抵抗加熱)によって不活性ガスの注入方向(X方向)に沿って配設された複数の熱電子放出部42を加熱するため、熱電子を放出させるために加熱する領域(空間)を制限すること(抵抗加熱部48近傍)になるが、第1の熱電子放出群46では不活性ガスの注入方向(X方向)に沿って複数の熱電子放出部42が配設されるので、加熱手段(抵抗加熱)によって全ての熱電子放出部42を加熱させることができる。さらに、不活性ガスの注入方向(X方向)およびその直交方向に沿って複数の熱電子放出部42が配設された第2の熱電子放出群47では、第1の熱電子放出群46で放出した熱電子により不活性ガスをイオン化させて放電させるプラズマPにより第2の熱電子放出群47の熱電子放出部42の筒内周面43および筒外周面44から熱電子を放出するので、第2の熱電子放出群47では実質加熱手段を用いた加熱は行なっていない。そのため、加熱手段の構成を省いた構成とすることができる。このように、本構成によれば、熱電子を放出させるための加熱対象を第1の熱電子放出群46とすることができ、その結果、低電圧で熱電子を放出させることができる。また、加熱手段による加熱対象を第1の熱電子放出群46としているので、当該プラズマ発生装置11の小型化に好適である。
【0046】
また、第1の熱電子放出群46と第2の熱電子放出群47とから熱電子を放出するので、例えば特許文献1と比較して熱電子を放出する量を数倍から数十倍とすることができる。
【0047】
また、本実施例にかかる成膜装置1によれば、上記した本実施例にかかるプラズマ発生装置11と収容部12とが一体的に設けられるので、少なくとも低電圧で大量の熱電子を放出するという効果を有する。また、上記した本実施例にかかるプラズマ発生装置11を設けているので、上記した本実施例にかかるプラズマ発生装置11と同様の作用効果を有する。
【0048】
さらに、本実施例にかかる成膜装置1によれば、上記した本実施例にかかるプラズマ発生装置11を用いるので、装置の小型化を図ることができ、具体的に、引用文献1の構成では配設することができない本発明の構成であるプラズマ発生装置11と収容部12とを一体的に設けることを実現することができる。
【0049】
次に、上記したプラズマ発生装置11と収容部12とが一体的に形成された成膜装置1を用いた成膜対象物への実施例を図4,5を用いて以下に示す。なお、図4に示す形態では成膜対象物としてPET(ポリエチレンテレフタレート)などからなるフィルム81を用い、図5に示す形態では成膜対象物としてガラスなどからなる基板83を用いる。
【0050】
図4に示す実施例では、上記したプラズマ発生装置11と収容部12とが一体的に形成された成膜装置1を縦方向に3列並べて真空容器9に設けている。また、この実施例では、成膜対象物であるフィルム81の両面82に同時に膜形成を行うためにフィルム81の両面82に対応させて縦方向に3列並べた成膜装置1を対向させて配している。
【0051】
この図4に示す実施例によれば、上記したように成膜装置1の小型化を図ることができるため、引用文献1の構成では配設することができない本発明の構成である一体的に設けられたプラズマ発生装置11および収容部12を複数設けることができる。その結果、成膜対象物(この実施例ではフィルム81)のサイズを制限しなくてもよい。具体的に、成膜対象物が大型の基板やフィルムであっても、これら大型の基板やフィルムの所望の面に一度に膜を形成することができる。
【0052】
なお、図4では、プラズマ発生装置11と収容部12とが一体的に形成された成膜装置1が縦方向に3列並べて真空容器9に設けているが、成膜装置1の数はこれに限定されるものではなく、複数並べていればよい。また、成膜装置1を縦方向にのみ複数並べることに限定されるものではなく、縦横方向に複数並べてもよい。
【0053】
また、図5に示す実施例では、上記したプラズマ発生装置11と収容部12とが一体的に形成された成膜装置1を1つ真空容器9に設けている。また、この図5に示す実施例では、成膜対象物として基板83を用いている。
【0054】
この図5に示す実施例では、基板83の片面84(一表面)に薄膜を形成することができる。
【0055】
なお、上記した実施例では、加熱手段として抵抗加熱を適用しているが、これは装置の小型化に好適な例である。そのため、加熱手段として誘導加熱であってもよい。
【0056】
また、上記した実施例のカソード2は、中空円筒状体の導電性材料としてLaB6を用いたが、これは好適な例である。そのため、例えばW、Taなどを用いてもよい。
【0057】
また、上記した実施例にかかる第1の熱電子放出群46では、不活性ガスの注入方向(X方向)に沿って4個の熱電子放出部42が並んで配設されているが、熱電子放出部42の個数はこれに限定されるものではなく、個数は任意に設定してもよい。また、本実施例にかかる不活性ガスの注入方向(X方向)に沿って4個の熱電子放出部42と同じ長さを有する一つの熱電子放出部であってもよい。
【0058】
また、上記した実施例にかかる第1の熱電子放出群46では、熱電子放出部42の筒内周面43のみから熱電子を放出させる構成としているが、これに限定されるものではなく、熱電子放出部42の筒外周面と筒内周面43から熱電子を放出する構成としてもよい。
【0059】
また、上記した実施例にかかる第2の熱電子放出群47では、不活性ガスの注入方向(X方向)およびその直交方向に沿って6つの熱電子放出部42が配設されているが、熱電子放出部42の個数はこれに限定されるものではなく、個数は任意に設定してもよい。また、本実施例にかかる不活性ガスの注入方向(X方向)に沿った2個の熱電子放出部42と同じ長さを有する3つの熱電子放出部を、等間隔に不活性ガスの直交方向に配されてもよい。また、3つの熱電子放出部42が等間隔に不活性ガスの直交方向に配される構成に限定されるものではなく、これは好適な例である。そのため、複数個の熱電子放出部が配されてもよい。
【0060】
上記したことから、第1の熱電子放出群46と第2の熱電子放出群47とにおける熱電子放出部42の個数は任意に設定し、その寸法も任意に設定した場合でもあってもよい。
【0061】
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、任意の成膜対象物への膜形成を行う装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、本実施例にかかる成膜装置およびプラズマ発生装置の概略構成図である。
【図2】図2は、図1に示すプラズマ発生装置の熱電子放出部の概略構成図である。
【図3】図3は、図2に示すA−A線端面図である。
【図4】図4は、本実施例にかかる複数のプラズマ発生装置および収容部とが一体的に設けられた成膜装置および真空容器の概略構成図である。
【図5】図5は、本実施例にかかる1つのプラズマ発生装置および収容部とが一体的に設けられた成膜装置および真空容器の概略構成図である。
【符号の説明】
【0064】
1成膜装置
11 プラズマ発生装置
12 収容部
2 カソード
3 アノード
42 熱電子放出部
43 熱電子放出部の筒内周面
44 熱電子放出部の筒外周面
46 第1の熱電子放出群
47 第2の熱電子放出群
48 抵抗加熱部
7成膜材料
81 フィルム
82 フィルムの両面
83 基板
84 基板の片面
P プラズマ
X ガス注入方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソードからアノードに向けてイオン化させた不活性ガスを放出して放電させることにより、前記カソードと前記アノードとの間にプラズマを発生させるプラズマ発生装置において、
前記カソードに熱電子を放出する筒状体に成形された熱電子放出部が複数設けられ、
前記熱電子放出部では、その筒内周面および筒外周面から熱電子を放出することを特徴とするプラズマ発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマ発生装置において、
前記熱電子放出部を、抵抗加熱により加熱して熱電子を放出することを特徴とするプラズマ発生装置
【請求項3】
請求項1に記載のプラズマ発生装置において、
不活性ガスの注入方向に沿って第1の熱電子放出群と第2の熱電子放出群とが配設され、
前記第1の熱電子放出群では、不活性ガスの注入方向に沿って複数の前記熱電子放出部が配設され、
前記第2の熱電子放出群では、不活性ガスの注入方向およびその直交方向に沿って複数の前記熱電子放出部が配設されたことを特徴とするプラズマ発生装置
【請求項4】
請求項3に記載のプラズマ発生装置において、
前記第1の熱電子放出群では、前記熱電子放出部を加熱手段により加熱して熱電子を放出し、
前記第2の熱電子放出群では、前記熱電子放出部を前記第1の熱電子放出群で発生させるプラズマにより加熱して熱電子を放出することを特徴とするプラズマ発生装置
【請求項5】
成膜対象物に成膜材料からなる膜を形成する成膜装置において、
請求項1乃至4のうちいずれか1つに記載のプラズマ発生装置と、成膜材料を収容する収容部とが一体的に設けられたことを特徴とする成膜装置。
【請求項6】
請求項5に記載の成膜装置において、
一体的に設けられた前記プラズマ発生装置および前記収容部が、複数設けられたことを特徴とする成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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