説明

プラズマ発生装置

【課題】 装置を大型化せず、コンテナ内部に効率よく確実にプラズマを発生させることができ、滅菌対象物を確実に滅菌することができるプラズマ発生装置を提供する。
【解決手段】 電磁波を放出する板状の放射板8を有する電磁波発生装置2と、前記放射板8が配設され、密閉空間を形成するチャンバ3と、当該チャンバ3に備わるガス導入口4と、前記チャンバ内に備わる載置台10と、当該載置台10に載置され、滅菌対象物13を収容するための箱体状のコンテナ20とを備え、当該コンテナ20には通気口23が備わり、前記電磁波により、前記ガス導入口4から前記通気口23を介して前記コンテナ20内に導入されたガスをプラズマ化して前記滅菌対象物13を前記プラズマにより滅菌するプラズマ発生装置1であって、前記コンテナ20は前記放射板8に密着し、少なくとも当該密着部分が樹脂製である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プラズマ発生装置に関し、特に、医療用機器の消毒滅菌、食料包装容器、食料品等の滅菌に用いるためのプラズマ発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、医療用器具の消毒滅菌や食料包装容器、袋あるいは食料品に対する滅菌技術として、乾熱滅菌法、高圧蒸気滅菌法、放射線滅菌法、エチレンオキサイドガス滅菌法等が行われている。しかし、最近の医療機器は樹脂を使用するものが多くなってきていること、また、構造も複雑化しているため、乾熱滅菌法、高圧蒸気滅菌法のように温度もしくは水の蒸気圧を高くするという方法では、医療機器の耐熱性が耐えられないということがある。放射線滅菌法においては、大量のものを滅菌する方法としては優れているが、放射線が漏れないようにするため、装置が非常に大きくなり、病院での使用は不便である。エチレンオキサイドガス滅菌法においては、当該ガスが有毒物質であるため、その濃度を下げる必要があり、一定の濃度に下がるまで真空脱法などを行い放置するのであるが、すぐには濃度が下がらないため、長時間の放置が必要である。
【0003】
一方で、上記のような問題がなく、安全、高速、低温な新たな滅菌方法として、マイクロ波により真空チャンバ内の酸素や窒素、空気、水蒸気等のプラズマガスをプラズマ化し、生成される酸素ラジカルやヒドロキシル基、紫外線等を用いて滅菌を行うマイクロ波プラズマ滅菌の開発が進んでいる(例えば特許文献1参照)。
【0004】
図10は従来のマイクロ波を用いたプラズマ発生装置の概略図である。
【0005】
図示したように、プラズマ発生装置51は、マイクロ波発生装置52と、チャンバ53と、チャンバ53に備わるガス導入口54及び排気口55で形成される。マイクロ波発生装置52は、矩形導波管56、同軸導波管57、石英板58を有するランチャー59で形成される。チャンバ53内には、載置台60が備わり、この載置台60は昇降機構61により上下移動可能である。載置台60には、ラック64が載置され、当該ラック64に通気性のある滅菌袋62に収納された滅菌対象物63が載置される。
【0006】
予めチャンバ53内には、ガス導入口54よりプラズマガスが導入される。プラズマガスとしては、ヘリウム、アルゴン、窒素、水素、酸素等の各種ガスを利用できる。この後、排気口55に連結された真空バルブ(図示省略)を通して真空ポンプ(図示省略)によりチャンバ53内のガスを排気し減圧した状態で、マイクロ波電源(マグネトロン)(図示省略)より矩形導波管56、同軸導波管57を伝わって、チャンバ53の上部に設けられた平行平板状のランチャー59からマイクロ波がチャンバ53内に放出される。載置台60は金属製であり、放出されたマイクロ波を反射しつつランチャー59との望ましい間隔を保持するように調節される。これにより、ランチャー59と載置台60の間に体積波プラズマ65が生成される。
【0007】
図で示すように、医療器具等の滅菌対象物63を通気性樹脂容器や通気性滅菌袋等の滅菌袋62に内包した状態で、体積波プラズマ65の内部に配置することにより、生成される酸素ラジカルやヒドロキシル基、紫外線等の作用により滅菌対象物の滅菌が可能になっている。なお、滅菌対象物63は滅菌袋62には未包装の状態で、むき出しの状態で滅菌してもよい。
【0008】
一方、病院を中心とする医療の現場においては滅菌コンテナに手術器械を術式ごとにセットし、そのまま保管・供給・手術・回収・洗浄・滅菌の一連の仕事のサイクルが回せる滅菌コンテナシステムの普及が進んでいる。このシステムに用いられる滅菌コンテナとして、エチレンオキサイドガス滅菌、高圧蒸気滅菌、過酸化水素ガスプラズマ滅菌といった既存の滅菌方法に対応する様々な製品が市販されており、一般的に金属製のケース本体(ボトム)、通気口を有する金属製や樹脂製の蓋体であるリッド、及びリッドの内側に取付けられた通気性フィルタから構成されている。
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載のマイクロ波発生装置を含む従来のマイクロ波発生装置は、未包装の滅菌対象物や通気性樹脂容器や通気性滅菌袋に内包された滅菌対象物の滅菌を目的としており、滅菌コンテナ内にセットされた滅菌対象物を滅菌することへの配慮がなされていない。すなわち、コンテナ内の滅菌対象物を従来のマイクロ波発生装置を用いて滅菌しても、プラズマが滅菌対象物付近で形成されなかったりして、確実な滅菌を行うことができない。特に、マイクロ波の放出箇所とコンテナとの間に隙間が形成されていると、ここに濃密なプラズマが発生してマイクロ波が遮蔽され、コンテナ内部へのマイクロ波の入射が妨げられて、コンテナ内でのプラズマ生成が阻害される。
【0010】
したがって、通気性樹脂容器や通気性滅菌袋に内包、あるいは未包装の個々の滅菌対象物を滅菌することになる。このようにすると、これらの滅菌対象物は、使用されるまでの間、そのままの状態で保管することとなり、管理の手間がかかるうえ、積み上げて保管することに限界がありスペース効率も悪く、破損による滅菌性低下のリスクも高い。
【0011】
コンテナ内の滅菌対象物を滅菌するために、滅菌コンテナを包み込むような大きな体積波プラズマを生成しうる装置を用いることが考えられる。この場合、そのプラズマ内に滅菌コンテナを配置することにより滅菌コンテナ内の滅菌対象物の滅菌も可能ではあるが、装置が大型で高価になるうえ、滅菌コンテナ内部でのプラズマ生成のコントロールが難しく、安定して滅菌効果を得ることが困難であると同時に、エネルギー効率が低下し滅菌時間が長くなる。
【0012】
体積波プラズマを必要としない場合、減圧環境下において、石英板などの誘電体に高周波コイルを組み付けてアンテナを形成し、高周波コイルにラジオ波をはじめとする高周波電流を流して、アンテナ近傍に誘導結合型プラズマと呼ばれる薄い平面状のプラズマを発生させることが可能であり、マイクロ波に比べて装置が比較的簡素で安価であることからプラズマCVD、スパッタリングやプラズマエッチングといった半導体製造などへの産業応用も進んでいる。
【0013】
しかし、通気性樹脂容器や通気性滅菌袋に内包された滅菌対象物を滅菌するには、その容器や袋の内部にプラズマを発生させるために、その容器や袋を包み込むような大きさの体積波プラズマが必要であり、体積波プラズマの安定的な発生には高価なマイクロ波電源や同じく高価な石英板を使用するマイクロ波ランチャーを用いたマイクロ波プラズマ発生装置を用いる必要があり、結果的に高額なシステムにならざるを得ない。
【0014】
このため、病院の業務運営の効率化に寄与し、その普及が進みつつある滅菌コンテナシステムへ対応するための簡便なマイクロ波プラズマ滅菌器の開発が求められている。
【0015】
【特許文献1】特開2004−200113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
この発明は、上記従来技術を考慮したものであって、装置を大型化せず、コンテナ内部に効率よく確実にプラズマを発生させることができ、滅菌対象物を確実に滅菌することができるプラズマ発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するため、請求項1の発明では、電磁波を放出する板状の放射板を有する電磁波発生装置と、前記放射板が配設され、密閉空間を形成するチャンバと、当該チャンバに備わるガス導入口と、前記チャンバ内に備わる載置台と、当該載置台に載置され、滅菌対象物を収容するための箱体状のコンテナとを備え、当該コンテナには通気口が備わり、前記電磁波により、前記ガス導入口から前記通気口を介して前記コンテナ内に導入されたガスをプラズマ化して前記滅菌対象物を前記プラズマにより滅菌するプラズマ発生装置であって、前記コンテナは前記放射板に密着し、少なくとも当該密着部分が樹脂製であることを特徴とするプラズマ発生装置を提供する。
【0018】
請求項2の発明では、前記コンテナは金属製のケース本体と、当該ケース本体の蓋となる樹脂製のリッドとからなり、前記リッドが前記放射板に密着することを特徴としている。
【0019】
請求項3の発明では、前記リッドの前記放射板との密着部分以外の部分は、金属製であるか又は金属板で覆われることを特徴としている。
【0020】
請求項4の発明では、前記載置台は昇降動作が可能であり、前記リッドの樹脂部分が前記放射板に密着するように位置決めすることができる位置決め手段が備わることを特徴としている。
【0021】
請求項5の発明では、前記放射板は円板状であり、当該放射板には、前記電磁波を遮断する材質で形成された遮蔽板が取付けられ、当該遮蔽板は、前記放射板より小径の円板状であり、前記放射板と同心円上に取付けられることを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明によれば、コンテナがマイクロ波等の電磁波を発生する放射板に密着し、当該密着部分が樹脂製で形成されるため、電磁波は誘電体である樹脂を透過してコンテナ内部へと入射される。したがって、コンテナ内部に効率よく確実にプラズマを形成することができる。このため、コンテナ内の滅菌対象物への滅菌を確実に行うことができる。また、発生させるプラズマは、チャンバではなく、コンテナの容量の大きさでよいため、装置を大型化せず、小型のプラズマ発生装置で滅菌が可能である。このため、省エネルギーに寄与でき、スペース的にも効率がよい。
【0023】
請求項2の発明によれば、コンテナは、金属製のケース本体と、この蓋となる樹脂製のリッドとからなり、放射板にこのリッドが密着するため、放射板から放射された電磁波は確実にリッドを通ってコンテナ内に入射される。また、コンテナの底面及び側面を形成するケース本体を導電体である金属製としたことによって、マイクロ波はこれに遮断され、コンテナ外部に漏れにくくなる。このため、コンテナ内でのプラズマ生成がさらに容易になる。加えて、プラズマにより生成されるラジカル等の滅菌作用を有する活性物質が、チャンバ全体に散逸せずコンテナ内部に留まるため、コンテナより大容量のチャンバ内に滅菌対象物を配置した場合に比べ、コンテナ内部に配置された滅菌対象物への滅菌効果が高く、より効率的で高速な滅菌が可能になる。
【0024】
請求項3の発明によれば、リッドの放射板との密着部分以外の部分は、金属製で形成されるか、又は金属板で覆われるため、コンテナ内からのマイクロ波の漏れを最小限にすることができ、効率よくプラズマをコンテナ内で発生させることができる。
【0025】
請求項4の発明によれば、コンテナをチャンバ内の載置台に載置し、位置決め手段によりコンテナの位置決めを行い、載置台を上昇させることによりリッドの樹脂部分を確実に放射板に密着することができるため、簡便かつ効率よくコンテナをチャンバ内にセットして滅菌対象物への滅菌を行うことができる。位置決め手段としては、載置台の周縁から立ち上がり縁を形成し、この立ち上がり縁の形状をコンテナの外周に合わせるようにしたり、あるいは載置台とコンテナに互いに係合する係合部(例えば凹凸部等)を形成する等、周知の位置決め手段を適用可能である。
【0026】
請求項5の発明によれば、放射板の同心円上に、放射板より小径の遮蔽板が取付けられるため、放射板はコンテナに対し平面ドーナツ状、すなわち放射板の周縁部分のみが面することになり、電磁波は当該周縁部分から放射される。したがって、電磁波がマイクロ波の場合は、体積波プラズマを効率よく確実に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
この発明は、電磁波を放出する板状の放射板を有する電磁波発生装置と、前記放射板が配設され、密閉空間を形成するチャンバと、当該チャンバに備わるガス導入口と、前記チャンバ内に備わる載置台と、当該載置台に載置され、滅菌対象物を収容するための箱体状のコンテナとを備え、当該コンテナには通気口が備わり、前記電磁波により、前記ガス導入口から前記通気口を介して前記コンテナ内に導入されたガスをプラズマ化して前記滅菌対象物を前記プラズマにより滅菌するプラズマ発生装置であって、前記コンテナは前記放射板に密着し、少なくとも当該密着部分が樹脂製であるプラズマ発生装置である。
【実施例】
【0028】
図1はこの発明に係るプラズマ発生装置の概略図である。
【0029】
図示したように、プラズマ発生装置1は、マイクロ波発生装置2と、チャンバ3と、チャンバ3に備わるガス導入口4及び排気口5で形成される。マイクロ波発生装置2は、矩形導波管6、中心導体16及び外導体17からなる同軸導波管7、石英板8及び第1導体18、第2導体19からなるランチャー9で形成される。チャンバ3内には、載置台10が備わり、この載置台10は昇降機構11により上下移動可能である。載置台10には、コンテナ20が載置される。このコンテナ20は、ケース本体21と、その蓋体となるリッド22で構成される。リッド22には、前記放射板を成す石英板8の下面形状に合わせた密着部22a(図2参照)が設けられ、この密着部22aを外した位置に通気口23が形成され、その下部にフィルタ24が配設される。このフィルタ24は、気体を通すが菌の侵入は阻止する通気性フィルタである。コンテナ20内には、ラック14が載置され、当該ラック14に滅菌対象物13が載置される。
【0030】
予めチャンバ3内には、ガス導入口4よりプラズマガスが導入される。このプラズマガスは、通気口23及びフィルタ24を通ってコンテナ20内にも充満される。プラズマガスとしては、ヘリウム、アルゴン、窒素、水素、酸素等の各種ガスを利用できる。この後、排気口5に連結された真空バルブ(図示省略)を通して真空ポンプ(図示省略)によりチャンバ3内のガスを排気し、減圧した状態で、マイクロ波電源(マグネトロン)(図示省略)より矩形導波管6、同軸導波管7を伝わって、チャンバ3の上部に設けられた略平行平板状のランチャー9の石英板8からマイクロ波がチャンバ3内に放出される。すなわち、石英板8がマイクロ波の放射板となる。
【0031】
このとき、ランチャー9はコンテナ20の樹脂製のリッド22に密着している。したがって、ランチャー9から放出されたマイクロ波は、その全てが誘電体たる樹脂製のリッド22を透過してコンテナ20内に入射される。その後、コンテナ20内でプラズマガスをプラズマ化して、体積波プラズマを形成する。したがって、コンテナ20内部に効率よく確実にプラズマを形成することができる。このため、コンテナ20内の滅菌対象物13への滅菌を確実に行うことができる。また、発生させるプラズマは、チャンバ3ではなく、コンテナ20の容量の大きさでよいため、装置を大型化せず、小型のプラズマ発生装置で滅菌が可能である。このため、省エネルギーに寄与でき、スペース的にも効率がよい。
【0032】
また、石英板8は円板状であり、石英板8の下面には、電磁波を遮断する材質である導電体で形成された遮蔽板となる第2導体19が取付けられる。当該第2導体19は、石英板8より小径の円板状であり、石英板8と同心円上に取付けられる。このため、放射板たる石英板8はコンテナ20に対し平面ドーナツ状、すなわち放射板(石英板8)の周縁部分のみが面することになり、電磁波は当該周縁部分から放射される。したがって、体積波プラズマがコンテナ20の中央部に固まって形成することを防止し、体積波プラズマをコンテナ20内の全体にわたって効率よく確実に形成することができる。第2導体19に複数個の貫通孔を設け、ここからマイクロ波を通過させて体積波プラズマの内側にさらにマイクロ波を入射してもよい。このようにすれば、より密度の濃い体積波プラズマを形成することができる。なお、第2導体19が石英板8に取付けられている場合には、リッド22の密着部もこれに対応した形状に形成される。
【0033】
載置台10の周縁には立ち上がり縁26が形成される。この立ち上がり縁26は、ケース本体21の外周に沿うような形状に形成される。さらに、この立ち上がり縁26は、これに沿って載置されたコンテナ20が昇降装置11により上昇したときに、リッド22の密着部22a(図2参照)が確実かつ正確にランチャー9の石英板8に密着するように形成される。これにより、コンテナ20を載置台10の立ち上がり縁26の内周に合わせて載置するだけでコンテナ20の位置決めを行うことができる。この位置決め手段は、これに限られるものでなく、周知の種々の手段を適用可能である。
【0034】
図2はこの発明に係るプラズマ発生装置に用いるコンテナの概略図である。(A)は平面図、(B)は(A)のA−A断面図である。
【0035】
図示したように、リッド22には、通気口23が円を描くように複数個形成される。この通気口23の内側に円板状の石英板8(図1参照)が密着する。25は第2導体19を嵌め込むための凹み部である。ケース本体21は金属製であり、リッド22は樹脂製である。このように、コンテナ20の底面及び側面を形成するケース本体21を導電体である金属製としたことによって、マイクロ波はこれに遮断され、コンテナ20外部に漏れにくくなる。このため、コンテナ20内でのプラズマ生成がさらに容易になる。加えて、プラズマにより生成されるラジカル等の滅菌作用を有する活性物質が、チャンバ3全体に散逸せずコンテナ20内部に留まるため、コンテナ20より大容量のチャンバ3内に滅菌対象物13を配置した場合に比べ、コンテナ20内部に配置された滅菌対象物13への滅菌効果が高く、より効率的で高速な滅菌が可能になる。
【0036】
図3及び図4は、この発明に係るプラズマ発生装置に用いる別のコンテナの概略図である。
【0037】
図3は、リッド22の石英板8(図1参照)との密着部22a以外の部分22bがケース本体21と同様に金属製で形成されたものである。ただし、図ではフィルタ24を保持する部分も樹脂製で形成されたものを示している。このように、リッド22の石英板8との密着部22a以外の部分22bを金属製とすることにより、コンテナ20内からのマイクロ波の漏れを最小限にすることができ、効率よくプラズマをコンテナ20内で発生させることができる。
【0038】
図4は、樹脂製のリッド22の石英板8(図1参照)との密着部22a以外の部分22bをケース本体21と同様の金属製の板材で覆ったものである。このように、リッド22の石英板8との密着部22a以外の部分22bを金属板で覆うことにより、コンテナ20内からのマイクロ波の漏れを最小限にすることができ、効率よくプラズマをコンテナ20内で発生させることができる。この金属板であるカバー材はリッドと一体、あるいは別体でもどちらでもよく、材料としては板金のほか、金属メッシュでも良い。
【0039】
図2のコンテナの場合、樹脂製リッドのランチャーとの密着部以外のところからマイクロ波が漏れるので、図3や図4のコンテナに比べると幾分プラズマ生成の効率が低下するが、リッド全体を樹脂で成形できるため、構造がシンプルで製造コストが安く、図3の構造の金属製リッドに比べて変形しにくい利点がある。
【0040】
図3や図4のコンテナの場合、リッドのランチャーとの密着部以外のところからのマイクロ波の洩れが最小化でき、プラズマ生成の効率が高い。
【0041】
また、図4の発明の場合、後付のカバーを用意することにより、図2のコンテナを用いて簡単に製造することができる。
【0042】
図5はこの発明に係るプラズマ発生装置にコンテナを収容したときに概略図である。
【0043】
コンテナ20をチャンバ3内に収容するときは、チャンバ3に備わる扉27を軸28を支点にして回動させ、扉27を開く。次に、コンテナ20を載置台10の位置決め手段たる立ち上がり縁26に合わせて載置する(図で示した状態)。この後、扉27を閉め、昇降機構11により載置台10を上昇させ、リッド22の密着部22aを石英板8に密着させる。29は扉27を閉めたときにチャンバ3内を確認するためのガラス窓である。
【0044】
図6はこの発明に係る別のプラズマ発生装置の概略図である。また図7は、これに用いるコンテナの概略断面図である。
【0045】
滅菌対象物13が長尺のものである場合、コンテナ20もこれに応じて長尺化する(図では図1で示したコンテナ20の2個分の長さ)。このような場合は、リッド22に密着部22aを複数設け(図では2個)、これに応じてマイクロ波発生装置2も複数個設ける(図では2個)。このような構成とすれば、コンテナ20が大型化してもその内部に効率よく確実に体積波プラズマを形成することができる。なお、図1で示したような大きさのコンテナ20を2個並べて載置することもできる。こうすれば、2個のコンテナ20を一回の滅菌操作で一度に滅菌できる。したがって、滅菌処理能力が向上する。このような小型コンテナ1個のみを滅菌するときは、1個のランチャー9のみで滅菌操作をすればよい。その他の構成、作用、効果は図1のものと同様である。
【0046】
図8はこの発明に係るさらに別のプラズマ発生装置の概略図である。
【0047】
図示したように、このプラズマ発生装置1は、チャンバ3の下部にマイクロ波発生装置2及びランチャー9が形成されたものである。ランチャー9は、載置台10の一部として機能する。また、コンテナ20のケース本体21の下面の一部を樹脂製とし、この部分21aが石英板8と密着する。すなわち、コンテナ20の少なくとも石英板8との密着部が樹脂製で形成された構成を示している。このような構成にしても、石英板8から放射されたマイクロ波は樹脂部分を通ってコンテナ20内に全て入射される。この場合は、マイクロ波をコンテナ20の内部から漏れることを防止するため、リッド22は全て金属製で形成することが好ましい。コンテナ20の位置合わせは立ち上がり縁26により行われる。このプラズマ発生装置1を用いれば、コンテナ20を載置台10に載置するだけで、ガスとマイクロ波によりプラズマを発生させて滅菌を行うことができる。すなわち、載置台10の昇降機構が不要となり、装置全体として構造が簡単になり、作業工程も簡便化する。
【0048】
図9はこの発明に係る高周波を利用したプラズマ発生装置の(A)はスパイラルコイルの平面図、(B)は概略断面図である。
【0049】
図示したように、このプラズマ発生装置1は、ラジオ波等の高周波を用いてプラズマを発生させ、滅菌対象物を滅菌するものである。高周波発生手段として、チャンバ3の上部に、平行平板状のアンテナ34と、これに接続されるRF線30が用いられる。アンテナ34は、導体板31と、スパイラルコイル32と、誘電体33で構成される。なお、スパイラルコイル32の代わりに、ワンターンのコイルを用いてもよい。導体板31は誘電体33の上部を覆う。スパイラルコイル32は、誘電体33内に埋設される。RF線30は、スパイラルコイル32と連通する。
【0050】
RF線30から高周波電流がスパイラルコイル32に流され、アンテナ34から高周波が放出される。アンテナ34と密着した樹脂製のリッド22を介してコンテナ20内に放射される。このときコンテナ20内に発生するプラズマは誘電結合型プラズマと呼ばれる薄い平面状のプラズマ(表面波プラズマ)である。このような平面状のプラズマでも、コンテナ20が小さく、これに応じて滅菌対象物13が小さい場合には、十分滅菌することができる。このような高周波によるプラズマによっても、酸素ラジカルやヒドロキシル基といった活性物質や紫外線が発生し、滅菌コンテナ内部に配置された滅菌対象物の滅菌が可能になる。
【0051】
このようにすれば、滅菌コンテナを内包できるような大容積の体積波プラズマを発生できるようなマイクロ波発生装置に比べると、ランチャーに加えチャンバもより小型化ができるため、真空ポンプも含めて小型化が可能で、装置がよりコンパクト、軽量にでき、装置のコスト上も省エネルギー効果上も有利となる。その他の構成、作用、効果は図1の例と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】この発明に係るプラズマ発生装置の概略図である。
【図2】この発明に係るプラズマ発生装置に用いるコンテナの概略図である。
【図3】この発明に係るプラズマ発生装置に用いる別のコンテナの概略図である。
【図4】この発明に係るプラズマ発生装置に用いる別のコンテナの概略図である。
【図5】この発明に係るプラズマ発生装置にコンテナを収容したときに概略図である。
【図6】この発明に係る別のプラズマ発生装置の概略図である。
【図7】図6のプラズマ発生装置に用いるコンテナの概略断面図である。
【図8】この発明に係るさらに別のプラズマ発生装置の概略図である。
【図9】この発明に係る高周波を利用したプラズマ発生装置の(A)はスパイラルコイルの平面図、(B)は概略断面図である。
【図10】従来のマイクロ波を用いたプラズマ発生装置の概略図である。
【符号の説明】
【0053】
1:プラズマ発生装置、2:マイクロ波発生装置、3:チャンバ、4:ガス導入口、5:排気口、6:矩形導波管、7:同軸導波管、8:石英板、9:ランチャー、10:載置台、11:昇降機構、13:滅菌対象物、14:ラック、16:中心導体、17:外導体、18:第1導体、19:第2導体、20:コンテナ、21:ケース本体、22:リッド、22a:密着部、23:通気口、24:フィルタ、25:凹み部、26:立ち上がり縁、27:扉、28:軸、29:ガラス窓、30:RF線、31:導体板、32:スパイラルコイル、33:誘電体、34:アンテナ、51:プラズマ発生装置、52:マイクロ波発生装置、53:チャンバ、54:ガス導入口、55:排気口、56:矩形導波管、57:同軸導波管、58:石英板、59:ランチャー、60:載置台、61:昇降機構、62:滅菌袋、63:滅菌対象物、64:ラック、65:体積波プラズマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を放出する板状の放射板を有する電磁波発生装置と、
前記放射板が配設され、密閉空間を形成するチャンバと、
当該チャンバに備わるガス導入口と、
前記チャンバ内に備わる載置台と、
当該載置台に載置され、滅菌対象物を収容するための箱体状のコンテナとを備え、
当該コンテナには通気口が備わり、
前記電磁波により、前記ガス導入口から前記通気口を介して前記コンテナ内に導入されたガスをプラズマ化して前記滅菌対象物を前記プラズマにより滅菌するプラズマ発生装置であって、
前記コンテナは前記放射板に密着し、少なくとも当該密着部分が樹脂製であることを特徴とするプラズマ発生装置。
【請求項2】
前記コンテナは金属製のケース本体と、当該ケース本体の蓋となる樹脂製のリッドとからなり、
前記リッドが前記放射板に密着することを特徴とする請求項1に記載のプラズマ発生装置。
【請求項3】
前記リッドの前記放射板との密着部分以外の部分は、金属製であるか又は金属板で覆われることを特徴とする請求項2に記載のプラズマ発生装置。
【請求項4】
前記載置台は昇降動作が可能であり、前記リッドの樹脂部分が前記放射板に密着するように位置決めすることができる位置決め手段が備わることを特徴とする請求項2又は3に記載のプラズマ発生装置。
【請求項5】
前記放射板は円板状であり、当該放射板には、前記電磁波を遮断する材質で形成された遮蔽板が取付けられ、当該遮蔽板は、前記放射板より小径の円板状であり、前記放射板と同心円上に取付けられることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプラズマ発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−218083(P2009−218083A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−60473(P2008−60473)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(597145539)ジーマ株式会社 (1)
【出願人】(304023318)国立大学法人静岡大学 (416)
【Fターム(参考)】