説明

プラズマ発生装置

【課題】プラズマ発生領域の体積を大きくしたプラズマ発生装置の提供。
【解決手段】大気圧プラズマ発生装置100であって、長手方向に伸び、プラズマを発生する柱状のプラズマ化領域Pを内包する絶縁体から成る筐体10と、プラズマ化領域Pにプラズマ発生ガスを前記長手方向に対して垂直な方向から長手方向に一様に供給するガス導入部12と、プラズマ化領域Pにおいて、前記長手方向に離間して配置された1対の電極2a,2bと、プラズマ化領域Pに接続され、そのプラズマ化領域Pで生成された前記プラズマを排出し、プラズマ化領域Pの長手方向に沿って配列され、前記プラズマ発生ガスの流れる方向に長く伸びた多数の孔から成る排出部24とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ発生装置に関する。特に、いわゆる大気圧プラズマ発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、特許文献1及び2に記載された大気圧プラズマ発生装置を出願している。向かい合う電極面にマイクロサイズの凹凸形状を施すことで、ホローカソード放電を生じさせてプラズマを発生させるものである。当該プラズマ発生領域(プラズマ化領域)を通過するようにプラズマ発生用ガスを導入すれば、少なくともその一部がプラズマ化したガスを噴出させることができる。これにより、単相の商用100V電源から昇圧機で数kV程度の高周波を発生させて、簡便に高密度な大気圧プラズマを発生させることができる。
【特許文献1】特開2006−196210
【特許文献2】特開2006−272039
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1及び2の技術では、電極間隔を広くすると放電が不安定となり、逆に間隔を1cm以上とした場合は放電維持が不可能となる。そこで特許文献1及び2においては、例えば長手方向を有する領域をプラズマ化領域とする場合、当該長手方向の長さの電極を用いていた。しかし、そのような長い電極を互いに向き合わせた場合、プラズマ化の均一化に問題があった。このために例えば液晶パネル等の表面の一部のような、比較的幅の広い領域へのプラズマ処理に十分には有効利用できない。或いは、プラズマ発生領域の体積自体を大きくすることも困難である。このため、高密度な大気圧プラズマを発生しうるものでありながら、その有効利用範囲が限定されたものとなっていた。
【0004】
本発明は上記課題を解決するためのものであり、その目的は、プラズマ発生領域の体積を大きくしたプラズマ発生装置である。また、追加的には、そのような大気圧プラズマ発生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、大気圧プラズマ発生装置において、長手方向に伸び、プラズマを発生する柱状のプラズマ化領域を内包する絶縁体から成る筐体と、プラズマ化領域にプラズマ発生ガスを長手方向に対して垂直な方向から長手方向に一様に供給するガス導入部と、プラズマ化領域において、長手方向に離間して配置された1対の電極と、プラズマ化領域に接続され、そのプラズマ化領域で生成されたプラズマを排出し、プラズマ化領域の長手方向に沿って配列され、プラズマ発生ガスの流れる方向に長く伸びた多数の孔から成る排出部とを有することを特徴とするプラズマ発生装置である。
【0006】
本発明は、大気圧において、線状にプラズマを発生させ、対象物に線状にプラズマを照射する装置である。排出部の孔は、長手方向に沿って一列であっても、多数列であっても良い。また、孔の直径は、プラズマ化領域に隣接する根元部と、先端とで異なっていても良い。先端の直径は、根元部の直径よりも小さくとも良い。また、逆に、先端の直径は、根元部の直径よりも大きくとも良い。この孔の直径はテーパ状に変化しても、段階的に変化しても良い。孔の先端を、対象物から離して使用する場合には、排出部の孔の長さを短くしても、対象物との間には、放電が形成されない。この場合には、処理効果が減少するが、ガス流量を増加させることで、孔の先端が対象物から離れていても十分な処理効果を得ることができる。
第2の発明は、第1の発明において、ガス導入部は、プラズマ発生ガスをプラズマ化領域に対して、長手方向に一様に供給し、長手方向に対して垂直な方向に案内する多数の案内部から成る拡散部を有することを特徴とする。これにより、プラズマ化領域の長手方向に沿って、一様にプラズマ発生ガスを供給することができる。この案内部は、格子状に形成されていても、多数の孔の壁面で構成されていても良い。
第3の発明は、第1又は第2の発明において、排出部における孔の長さは、プラズマを照射する対象物に対して、放電が形成されない長さであることを特徴とする。これにより、対象物に損傷を与えることがない。孔の長さは、ラジカルの死活を考えると、放電が形成されない長さのうちで、最も短い長さが最も良い。
【0007】
第4の発明は、第1乃至第3の発明の何れかにおいて、排出部の孔の先端部の直径を、0.1mm以上、1mm以下としたことを特徴とする。これにより、プラズマ粒子のうちでラジカルのみを対象物に照射することができる。すなわち、電子は、孔の壁面に吸収される。
【0008】
第5の発明は、第1乃至第4の発明の何れかにおいて、排出部の孔の長さは、一対の電極の間の距離の1/2以上としたことを特徴とする。この場合には、対象物に対して放電が発生することが防止される。
第6の発明は、第1乃至第5の発明の何れかにおいて、排出部の孔は、長手方向の垂直方向に対して、傾斜している傾斜部を有することを特徴とする。この場合には、電子を孔の傾斜部壁面で効率良く吸収することができ、より純度の高いラジカルを対象物に照射することができる。また、紫外線、真空紫外線、可視光線などが対象物に照射されることが防止される。また、傾斜部の壁面で、プラズマ化領域で発光した紫外線が遮られるので、孔の先端から紫外線が対象物に照射されることが防止される。これにより、対象物が紫外線などのプラズマ化領域から発光した光から受ける損傷を防止することができる。
第7の発明は、第1乃至第6の発明の何れかにおいて、1対の電極は、1cm以上50cm以下の距離で離間して配置されていることを特徴とする。
第8の発明は、第1乃至第7の発明の何れかにおいて、1対の電極の少なくとも一方には、他方と対向する表面に凹凸が形成されていることを特徴とする。
第9の発明は、第1乃至第7の発明の何れかにおいて、柱状のプラズマ化領域の長手方向の長さLcmと、長手方向に垂直な断面積σmm2の関係は、2≦Lσ≦200且つ3≦σ≦25であることを特徴とする。この範囲の時に、効果的にプラズマを発生させることができる。より望ましくは、2≦Lσ≦100且つ3≦σ≦25である。
第10の発明は、排出部の孔のガス流に垂直な断面は、円、楕円、配列方向に垂直な方向に長辺を有する長方形又はスリット状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
絶縁体から成る筐体に囲まれた、或いは挟まれた空間に大気圧プラズマが形成される。この絶縁体に囲まれた、或いは挟まれた柱状の空間でプラズマの長尺化が図られている。ここで絶縁体の役割は、その内面が帯電することで、長手方向を有する体積の大きなプラズマ化領域全体のプラズマ化を安定させるものであると考えられる。
【0010】
プラズマ発生ガスは、ガス導入部から、プラズマ化領域の長手方向に垂直な方向に供給されて、排出部の有する多数の孔から排出される。これにより、長手方向に沿って一様な密度のラジカルが孔の先端から対象物に対して線状に照射される。特許文献1及び2に記載された凹凸面を有する電極を用いたホローカソード放電を利用すると、容易に大気圧プラズマを生成できる。排出部の孔の長さが、排出部の孔の長さは、一対の電極の間の距離の1/2以上の場合には、プラズマを照射する対象物に対して放電が発生することが防止される。孔の長さは、一対の電極の間の距離の1/2が、最も望ましい。これよりも長いと、プラズマ化領域からラジカルが対象物に到達するまでの距離が長くなるため、ラジカルが死活されるので、望ましくない。電極間距離が40mmの時に、この孔の長さは、20mmである時、最適であることが分かった。本発明の柱状のプラズマ化領域の長手方向の長さL(cm)は1以上50以下であり、長手方向に垂直な断面積σ(mm2)は3以上25以下である。柱状のプラズマ化領域は、断面積σが小さいほど長さLを長くできる。また、筐体部が実質的に筒状である方が、長さLを長くできる。Lとσの関係は2≦Lσ≦200であればプラズマを安定して生成できることが実験で確かめられた。また、より効果的にプラズマを良好に発生させ得る範囲は、2≦Lσ≦100且つ3≦σ≦25である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
筐体は、内部で発生するプラズマに対して耐性の強い材料を用いることが必要であり、例えば焼結窒化ホウ素(PBN)のようなセラミックスが好ましい。電極の材料としては、ステンレス、モリブデン、タンタル、ニッケル、銅、タングステン、白金、又は、これらの合金などを使用することができる。ホローカソード放電を生じせしめる凹部を形成する面は、1〜30mm程度の厚さとするのが望ましい。厚くすることで、凹部を多段に形成することができ、ガスの流速を向上させてプラズマの生成密度を向上させることができる。ホローカソード放電を生じせしめる凹部は、例えば深さを0.5mm程度とすると良い。凹部はドット状に不連続に形成されても、溝状に連続して形成されても良いが、連続していた方が望ましい。凹部の形状は、円柱面状、半球面状、角柱面状、角錐状、その他任意に形成できる。
【0012】
プラズマを発生させるためのガスは、大気圧で、空気、酸素、例えばHe、Ne、Arその他の希ガス、窒素、水素などを用いることができる。空気や酸素を用いることにより、活性な酸素ラジカルが得られ、有機汚染物質の効果的な除去が可能となる。また、空気を用いれば経済的である。たとえば、希ガスであるArを用いた場合には、Arプラズマが処理対象に照射される時、周囲の酸素分子がArプラズマにより酸素ラジカルになる。この酸素ラジカルにより、処理対象物表面の有機汚染物質を効果的に除去することができる。また、ガスとしてArガス以外に使用しないので、経済的でもある。以上の理由から、空気とArとの混合ガスを用いても良い。ガスの流速、供給量、或いは真空度は任意に設定できる。また、本発明は高周波によりプラズマを発生させるものではなく、電極に接続する電源は、直流、交流、パルス、その他任意であって、周波数に制限はない。
【0013】
また、排出部の有する多数の孔の出口から対象物にプラズマガスを噴射する場合の距離は、ガスの流速とも関係するが、例えば2mm〜20mmの範囲が望ましい。さらに望ましくは、3mm〜12mmであり、最も望ましくは、4mm〜8mmである。酸素ラジカルを発生させる場合、処理対象の表面において酸素ラジカルの密度が最も高く、電子密度が最も低くなるような距離に設定するのが良い。これにより、処理対象のチャージアップ損傷を防止でき、最も、効率の良い洗浄が可能となる。さらに、処理対象に対して斜め方向からプラズマを照射しても良い。斜め方向からプラズマを照射することで、例えば偏光フィルムや液晶封止剤にプラズマが照射されて製品に対する悪影響を防止することができる。また、プラズマを照射したくない部分には、プラズマを含まない空気などのガスを吹き付けて、プラズマが拡散しないようにすることができる。
【0014】
また、電極の酸化防止には、窒素やAr、又は、還元作用のある水素を含むガスを用いて酸素濃度を低くすると良い。また、複数種類のプラズマを発生させることで、有機汚染物質のみ除去し、他の領域には反応しないようにすることも可能である。また、処理対象へのプラズマの照射部分から反応後のガスを吸引しておくのが望ましい。これにより有機汚染物質と反応した分子が他の領域に付着することが防止される。さらに、プラズマの温度と密度をレーザ光の吸収分光分析などを用いて測定し、所定の温度と密度になるように、印加電圧の大きさ、パルス印加であれば、デューティ比、照射時間、ガス流速などをフィードバック制御することが望ましい。
【0015】
これにより、品質の高い洗浄と洗浄時間の短縮を実現することができる。また、複数個の孔の出口を直線状に配置して形成したとして、孔の直径と長さを適正に設定することにより、必要な部分にのみプラズマを照射することが可能となる。また、ガスを冷却しておいて、本装置に供給してプラズマ化するのが望ましい。これにより、プラズマの温度が必要以上に上昇することが防止され、例えば液晶表示装置等に対する影響、たとえば、偏光フィルムへの損傷を防止することが可能となる。本発明は、非常に小型にすることができる。よって、これらのプラズマを吹き出す排出部の孔を複数設け、て、基板において異方性導電性フィルム(ACF)の貼付部分にのみプラズマを高密度で照射することが可能となると共に、液晶表示器組付装置の空いている狭い空間であっても、有効に本洗浄装置を有効に取り付けることが可能となる。また、排出部の孔は、プラズマ化領域の長手方向に直交する線に対して、その線を中心とする360度回の任意方向に、傾斜させるようにしても良い。このようにすると、プラズマの吹き出し方向を変化させることができる。
以上の全ての発明において、大気圧が望ましいが、減圧でも、加圧でも良く、大気圧には、0.5〜2気圧程度も大気圧とする。排出部の孔の先端部の直径は、0.1mm以上、1mm以下とすると良い。この孔の直径が小さい程、ガスの流速が速くなり、ラジカルを消滅させることなく、対象物に照射できる確率が高くなるので、望ましい。ので、この場合に、良好にラジカルを放射することができる。排出部の孔の長さは、一対の電極の間の距離の1/2以上とすることで、対象物に対する放電を有効に防止することができる。
【実施例1】
【0016】
図1は本発明の具体的な他の実施例に係るプラズマ発生装置100の構成を示す断面図である。図2は、図1のプラズマ発生装置100のプラズマ化領域Pの長手方向に垂直な断面図(部分図)である。
【0017】
図1のプラズマ発生装置100は、アルミナ(Al23)を原料とする焼結体から成る筐体10を有する。筐体10の内部には、長手方向に直線状に伸びた(以下、この方向をx軸方向という)プラズマ化領域Pが設けられている。筐体10は、直径8mmの孔15と、直径5mmの2つの孔13と、その孔13の形成された拡散板14と、案内部16とを含むガス導入部12を有している。孔13は、x軸方向に長辺を有する長方形状、スリット状であっても良い。ガスは、孔15から導入されて拡散板14によりx軸方向に2分されて、孔13から、プラズマ化領域P領域の方に案内される。案内部16は、プラズマ化領域Pのx軸方向に一様に、x軸方向に垂直な方向(以下、この方向でガスが流れる向きをy軸方向という)にガスを流すための直径1.5mmの多数の孔を有する。案内部16は、多数の孔が格子状に配設されたものの壁面であり、多数の孔とこの壁面とで、拡散部18が構成される。プラズマ化領域Pの下流側には、第1排出部21と第2排出部22とから成る排出部20が形成されている。第1排出部21は、y軸方向に軸方向を有する孔23が、x軸方向に沿って多数配設されている。また、第2排出部22は、y軸方向に軸方向を有する孔24がx軸方向に沿って多数配設されている。孔23、24の直径は、0.5mm、孔23の長さは4mm、孔24の長さは16mmである。孔23、24のx軸方向の間隔は2.5mmで、それぞれ、16個、設けられている。
【0018】
プラズマ化領域Pは、x軸方向に垂直な断面の短辺を2mm、長辺を5mmの長方形とし、長辺をy軸方向と、x軸方向の長さを4cmとした。電極2a及び2bは、図3に示す形状をしている。電極2a及び2bは図3に示す通り、互いに対向する面が深さ0.5mm程度の凹部(ホロー)Hを多数有した凹凸面となっている。電源は、60Hz、100Vの商用交流電源を用いている。電極2a及び2bの印加電圧は、この商用電源電圧を約9kVに昇圧し、電極2a、2b間の給電電流は、20mAとした。アルゴンをガス導入部12から、x軸方向に導入すると、電極2a及び2b間を4cm迄離間しても、プラズマ化が確認された。
プラズマ発生装置110は、液晶表示器のガラス基板において、異方性導電フィルム(ACF)を貼付する部分を、ACFを貼付する前に洗浄することで、ACFの基板に対する接着度を向上させることができる。
また、電極2a及び2b間を長さ4cmとして、プラズマ化領域Pの断面を正方形として、一辺の長さを変化させたところ、5mm以下で安定して放電した。また、プラズマ化領域Pの断面の一辺の長さを5mmとして、電極2a及び2b間の長さを変化させたところ、距離4cm以下で安定して放電した。
【0019】
次に、この装置を用いて、液晶表示器のガラス基板の表面を、アルゴンガスのプラズマにより親水処理を行った。処理を行う前の接触角は50度であったが、処理後の接触角は7度であった。また、図1において、第2排出部22を設けなかった装置の場合には、ガラス基板と孔23の先端との間に放電が見られた。しかし、図1の本実施例の装置によると、このような放電は見られなかった。このことから、本装置においては、対象物に損傷を与えることなく、プラズマ処理を実行することができる。また、図1において、第2排出部22を設けなかった装置と、第2排出部22を設けた図1の装置についてについて、酸素をアルゴンガスと共にプラズマ発生ガスとして供給して、孔の先端から5mmの位置での、酸素ラジカル濃度を測定した。酸素の混合比率は0%〜4%の範囲で変化させて、それぞれの場合において、真空紫外吸収分光法を用いて酸素ラジカル密度を測定した。第2排出部22を設けても、酸素ラジカル密度は、3×1014/cm3 〜7×1014/cm3 が得られ、第2排出部22を設けない装置では、3×1014/cm3 〜2.4×1015/cm3 であった。第2排出部22を設けても、特に、親水処理の効果が劣化するものではない。また、プラズマ化領域Pでの電子密度は、酸素の混合比率が3%、ガス流量が3L/min の時、2×1016/cm3 であった。
【実施例2】
【0020】
次に、本実施例装置について、図4を参照して説明する。本実施例は、実施例1の第2排出部22を、y軸方向に対して傾斜した孔26を有する傾斜排出部27と、y軸方向に沿った直線排出部25とで構成した。他の構成は、実施例1と同一である。傾斜排出部22は、y軸に対して、10度傾斜させた。傾斜範囲は3度〜30度の範囲が望ましい。さらに望ましくは、5度〜20度の範囲が良い。要は、孔24の開口から、孔23の開口が見通せない、一軸上にない状態とすることが良い。y軸への射影の長さは、12mm、直線排出部25の長さは4mmである。このような構成により、排出部20において、確実に電子を孔の壁面に吸収して、ラジカルだけを孔24の先端から放射することができる。この実施例2の装置では、プラズマを照射して親水処理を行った後の接触角は、9.5度と、実施例1の装置に比べて若干、大きくなったが、対象物に対する放電の防止を確実に行うことができた。また、傾斜排出部27を設けることにより、孔24の開口から、プラズマ化領域Pを見通すことができなくなる。このため、プラズマ化領域Pで発光した紫外線が、孔26の壁面で遮られ、紫外線が、対象物に照射されなくなった。この結果、対象物が紫外線により損傷を受けることが防止された。
【0021】
上記全実施例において、これらのプラズマ発生装置を軸方向に、又は、軸に平行に平行に多数段もうけて、大面積の処理が可能となるようにしても良い。軸方向にn個設けると、上記の例では、4ncmの幅で、対象物を処理することができる。このとき、物は、軸に垂直な方向(x軸、及びy軸に垂直な方向に)搬送することで、さらに、大面積の処理が可能となる。また、軸に平行に多数設けて、x軸、及びy軸に垂直な方向に対象物を搬送した場合には、プラズマ照射処理を確実に行うことができる。また、孔23、24、26のガス流に対して垂直な断面形状は、円形を他、長円、図1、4のx軸及びらy軸に垂直な方向に長手方向を有する長方形、スリットなどであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、対象物体に対して直線状にプラズマを照射して、表面処理する装置に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の具体的な一実施例に係るプラズマ発生装置の構成を示す断面図。
【図2】同実施例装置の要部の断面図。
【図3】同実施例装置の電極の構造を示した断面図。
【図4】本発明の具体的な他の実施例に係るプラズマ発生装置の構成を示した断面図。
【符号の説明】
【0024】
100:プラズマ発生装置
10:筐体
12:ガス導入部
P:プラズマ化領域
16:案内部
18:拡散部
23,25,26:孔
20:拡散部
21:第1拡散部
22:第2拡散部
27:傾斜排出部
24:直線排出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧プラズマ発生装置において、
長手方向に伸び、プラズマを発生する柱状のプラズマ化領域を内包する絶縁体から成る筐体と、
前記プラズマ化領域にプラズマ発生ガスを前記長手方向に対して垂直な方向から長手方向に一様に供給するガス導入部と、
前記プラズマ化領域において、前記長手方向に離間して配置された1対の電極と、
前記プラズマ化領域に接続され、そのプラズマ化領域で生成された前記プラズマを排出し、前記プラズマ化領域の長手方向に沿って配列され、前記プラズマ発生ガスの流れる方向に長く伸びた多数の孔から成る排出部と
を有することを特徴とするプラズマ発生装置。
【請求項2】
前記ガス導入部は、前記プラズマ発生ガスを前記プラズマ化領域に対して、長手方向に一様に供給し、長手方向に対して垂直な方向に案内する多数の案内部から成る拡散部を有することを特徴とする請求項1に記載のプラズマ発生装置。
【請求項3】
前記排出部における前記孔の長さは、前記プラズマを照射する対象物に対して、放電が形成されない長さであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプラズマ発生装置。
【請求項4】
前記排出部の前記孔の先端部の直径は、0.1mm以上、1mm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のプラズマ発生装置。
【請求項5】
前記排出部の前記孔の長さは、前記一対の電極の間の距離の1/2以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のプラズマ発生装置。
【請求項6】
前記排出部の孔は、前記長手方向の垂直方向に対して、傾斜している傾斜部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のプラズマ発生装置。
【請求項7】
前記1対の電極が、1cm以上50cm以下の距離で離間して配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のプラズマ発生装置。
【請求項8】
前記1対の電極の少なくとも一方には、他方と対向する表面に凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のプラズマ発生装置。
【請求項9】
前記柱状のプラズマ化領域の長手方向の長さLcmと、長手方向に垂直な断面積σmm2の関係は、2≦Lσ≦200且つ3≦σ≦25であることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のプラズマ発生装置。
【請求項10】
前記排出部の孔のガス流に垂直な断面は、円、楕円、配列方向に垂直な方向に長辺を有する長方形又はスリット状であることを特徴とする請求項1乃至請求項9の何れか1項に記載のプラズマ発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−101936(P2013−101936A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−261153(P2012−261153)
【出願日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【分割の表示】特願2008−42056(P2008−42056)の分割
【原出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(304036008)NUエコ・エンジニアリング株式会社 (59)
【出願人】(395022731)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】