説明

プラズマ装置、プラズマ処理ユニット及びプラズマ処理方法

【課題】処理対象物を汚染することなく、広範囲に渡って、均一で高密度のプラズマを効率よく発生させることができる装置を提供する。
【解決手段】容器に装着され、自由空間波長λのマイクロ波が伝搬する矩形導波管である導波管部5と、導波管部5の壁部に、管内波長λgの1/2の間隔で上記壁部の長手方向に形成された矩形状の複数のスロット12から成るスロットアンテナ10と、スロットアンテナ10を有する壁部の外表面に接して設けられ、スロットアンテナ10を覆う誘電体板11とを備え、複数のスロット12は、a)壁部の長軸を挟んで交互に配置され、b)中心軸からの距離が一定であり、c)複数のスロット12の数をn、n×λg/2をλ/2で除して得られる数をmとした場合、m−1<n<mを満たし、d)導波管部5のインピーダンスが、第2導波管5にスロットアンテナ10がない場合のインピーダンスである特性インピーダンスとほぼ等しい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波を利用してプラズマを発生させるプラズマ装置、プラズマ装置によって対象物に表面処理を施すプラズマ処理装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムの表面に無機薄膜を形成することによって、種々の機能を付与した機能性プラスチックフィルムがいろいろな分野で利用されている。機能性プラスチックフィルムの具体例としては、ディスプレイ、太陽電池などに利用される透明導電フィルム、家電製品、電気機器などに利用されるフレキシブル基板がある。また、機能性プラスチックフィルムは、薬品、ガスなどの配管にも利用される。
【0003】
機能性プラスチックフィルムは、その特長を生かして、曲げた状態で製品に取り付けられたり、曲げ伸ばしする箇所に利用されることが多い。機能性プラスチックフィルムが曲げられると、表面に形成された無機薄膜が剥がれることがある。特に、曲げ伸ばしを繰り返したり、温度変化が大きい使用条件では、無機薄膜が剥がれ易く、製品の耐用年数に大きく影響する。そのため、無機薄膜とプラスチックフィルムとの密着力を向上させて、無機薄膜を剥がれ難くすることが、実用上、重要な課題である。
【0004】
そこで、密着力を向上させるために、無機薄膜を形成するプラスチックフィルムの表面を処理する技術が提案されている。表面処理技術の1つに、プラスチックフィルムの表面にプラズマを照射する技術がある(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0005】
また、機能性プラスチックフィルムの利用範囲が広がるとともに、大面積の機能性プラスチックフィルムの需要が増している。そこで、大面積のプラスチックフィルムに表面処理を施すために、広範囲に渡って、均一で高密度のプラズマを発生させる技術が提案されている(例えば、特許文献4及び5)。
【0006】
特許文献4に記載のプラズマ処理装置は、矩形導波管と、矩形導波管に設けられ、導波管アンテナを構成する複数のスロットと、容器とを備え、スロットから容器内に放射された電磁波によってプラズマ生成し、プラズマ処理を行う。また、矩形導波管は、複数備えられ、矩形導波管どうしが接して配置されている。また、スロットは、プラズマ処理する全面積に渡り均一に分布する。これにより、大面積の基板(プラスチックフィルム)を均一なプラズマ密度で処理する。特許文献5にも、概ね同様の構成のプラズマ処理装置が記載されている。
【特許文献1】特開昭63−120163号公報
【特許文献2】特開平11−354292
【特許文献3】特開2002−280196号公報
【特許文献4】特開2004−200390号公報
【特許文献5】特開2005−268652号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の技術には、導波管を伝搬するマイクロ波の伝搬ロスを低減させる余地がある。また、従来の技術では、スロットから発生するプラズマは必ずしも均一ではなく、プラスチックフィルムに照射されるプラズマも、不均一になるという問題もある。本発明は、処理対象物をプラズマ電極の材料で汚染することなく、広範囲に渡って、均一で高密度のプラズマを効率よく発生させることができる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るプラズマ装置は、この目的を達成するために、
容器内にマイクロ波プラズマを発生させるプラズマ装置であって、
矩形の断面形状を形成する壁部を有し、前記容器に装着され、自由空間波長λのマイクロ波を伝送する導波管部と、
上記壁部に、管内波長λgの1/2の間隔で上記導波管部の長手方向に形成された矩形状の複数のスロットから成るスロットアンテナと、
上記スロットアンテナを有する上記壁部の外表面に接して設けられ、上記スロットアンテナを覆う誘電体板とを備え、
上記スロットアンテナを形成する上記複数のスロットは、
a)上記スロットアンテナを有する壁部の長手方向の中心軸を挟んで交互に配置されること、
b)上記中心軸からの距離が一定であること、
c)上記複数のスロットの数をn、n×λg/2をλ/2で除して得られる数をmとした場合、m−1<n<mを満たすこと、
d)マイクロ波電源側から見た上記導波管部のインピーダンスが、逆向きの電源側を見た導波管部の特性インピーダンスとほぼ等しいこと、というa)〜d)の条件を満たす。
また、本発明は、このようなプラズマ装置に限らず、プラズマ装置と同様の構成を含んで対象物に表面処理を施すプラズマ処理装置、及び、プラズマ装置を利用して対象物を処理するプラズマ処理方法も含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、電極板を利用せずにプラズマを発生させるため、電極板の物質によって処理対象物を汚染することがない。また、電源側から負荷であるスロットアンテナを有する導波管部を見たインピーダンスが、電源側を見た導波管の特性インピーダンスと整合しているため、マイクロ波パワーが複数のスロットから均一に効率よく放射され、高濃度のプラズマを一様に発生させることができる。その結果、処理対象物に実質的に均一にプラズマを照射することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(実施の形態1)
プラズマ装置は、導波管で接続された機器群が協働することにより効率的にプラズマを発生させる装置であり、例えば、図1に示すように、プラスチックフィルムの表面を処理するプラズマ処理装置1に備えられる。プラズマ処理装置1は、マイクロ波プラズマを発生させるプラズマ装置2と、容器3と、台7とを備える。
【0011】
容器3は、所定のガスが内部に充填され、内部の圧力を一定の範囲で維持できる容器である。容器3は、排気用のポンプ及びガスを供給するボンベが接続される(図示せず)。容器3の内部の圧力は、大気圧でも構わないが、好ましくは、5Pa〜50Paに減圧される。ガスは、例えば、アルゴンガスである。なお、ガスは、表面処理の効果を高めるために、酸素ガス等が混入される等、プラスチックフィルムの種類に応じて適宜選択されてよい。容器3の内部には、プラズマ発生部13と、プラスチックフィルム9と、台7とが設けられる。
【0012】
支持部としての台7は、プラスチックフィルム9(処理対象物)を支持する。プラスチックフィルム9は、所定の大きさに切断されたプラスチックフィルム片である。プラスチックフィルム9の厚さは、柔軟性を備えかつ皺になり難い厚さが好ましい。具体的なプラスチックフィルム9の厚さは、例えば好ましくは5〜500μmの範囲であり、さらに好ましくは8〜300μmの範囲であるが、これらの厚さに限定されるものではない。
【0013】
プラスチックフィルム9は、例えば、有機高分子を溶融して押出した後に、必要に応じて、長手方向、及び/又は、幅方向に延伸、冷却、熱固定等を施したフィルムであり、また例えば、有機高分子を溶媒に溶解してドープを作り、移動する支持体上にドープを流延して流延膜を形成し、この流延膜に乾燥風を送って乾燥させた後に、支持体から流延膜を剥ぎ取って乾燥などすることによって得られるフィルムが挙げられる。原料になる有機高分子としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ナイロン6、ナイロン4、ナイロン66、ナイロン12、ポリ塩化ビニール、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニールアルコール、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキサイド、トリアセチルセルロース、ポリカーボネイト、フッ素樹脂などがあげられるがこれらに限定されない。また、これらの有機高分子は他の有機重合体を共重合したり、ブレンドしたりしてもよい。さらにこの有機高分子には、例えば、紫外線吸収剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤などの機能が知られた添加剤が添加されていてもよい。好ましい具体的例としては、例えば、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム)、二軸延伸ポリフェニレンサルファイドフィルム(PPSフィルム)、二軸延伸ナイロン6フィルム(NY6フィルム)、二軸延伸ナイロンMXD6フィルム(MXD6フィルム)、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(PPフィルム)、二軸延伸全芳香族ポリアミドフィルム(アラミドフィルム)、ポリイミドフィルム(PIフィルム)などが挙げられる。このようなプラスチックフィルムは、有機高分子単層により形成されたものでもよいし、多層に形成されていたものでも構わない。例えば、中の層に可塑剤を入れた有機高分子を使い表層には可塑剤を抜いたものにより形成したプラスチックフィルム、また異なる有機高分子を積層したプラスチックフィルムでも構わない。プラスチックフィルムの表面は、コート処理されていてもよい。なお、処理対象物は、プラスチックフィルム以外であってもよく、例えば、ガラス、セラミック、紙、繊維、布、不織布、金属などであってもよい。
【0014】
プラズマ装置2は、マイクロ波電源15と、アイソレータ17と、パワーメータ19と、整合器21と、プラズマを発生するプラズマ発生部13と、これらを接続する第1導波管4A、テーパ状接続管4B及び接合部4Cとを備える。
【0015】
マイクロ波電源15は、自由空間波長λのマイクロ波を出力する。マイクロ波電源15が出力するマイクロ波は、通常、300MHzから100GHzの周波数帯のいずれかであり、工業用としては例えば、915MHz又は2.45GHzが良く利用される。
【0016】
アイソレータ17は、マイクロ波電源15からプラズマ発生部13に向かう方向(入射方向であり、図1及び2の第2導波管5に平行な矢印が示す方向)にのみマイクロ波を通し、プラズマ発生部13からマイクロ波電源15に向かう方向(反射方向)にマイクロ波を通さない。これによって、プラズマ発生部13から反射されたマイクロ波がマイクロ波電源15にもどることを防止し、マイクロ波電源15を保護する。
【0017】
パワーメータ19は、入射方向と反射方向とのそれぞれに伝搬するマイクロ波の電力を測定する。
【0018】
整合器21は、自身に接続される電源側及び負荷側の導波管のインピーダンス整合をする。すなわち、整合器21は、自身からマイクロ波電源15に向って接続される導波管のインピーダンスと、自身からプラズマ発生部3に向って接続される導波管のインピーダンスとを一致させる。これにより、マイクロ波の反射が無くなり又は低減し、反射方向に戻るマイクロ波の反射電力を無くす又は低減させることができる。従って、マイクロ波の伝搬効率を向上させることができる。
【0019】
第1導波管4Aは、マイクロ波電源15から供給されるマイクロ波を伝送する矩形導波管であって、マイクロ波電源15と、アイソレータ17と、パワーメータ19と、整合器21とを順に接続する。また、テーパ状接続管4Bは、整合器21に接続されるプラズマ発生部13側の第1導波管4Aと、プラズマ発生部13とを接続する矩形の断面形状がマイクロ波の伝送方向に緩やかに変化する導波管である。第1導波管4Aとテーパ状接続管4Bは、フランジ継手で接続される(図示せず)。接合部4Cは、テーパ状接続管4Bとプラズマ発生部13とを接続する部分であり、例えば、フランジ継手で接続されている部分である。
【0020】
プラズマ発生部13は、図2の平面図及び図3の側方断面図に示すように、容器3に装着され、容器3の中にプラズマを発生させる部位であって、第2導波管(導波管部)5と、スロットアンテナ10と、誘電体板11とを備える。なお、実施の形態では、容器3の上部に装着される例を説明するが、プラズマ発生部13は、容器3の内部に装着されてもよい。
【0021】
第2導波管5は、できるだけ少ない伝搬ロスでマイクロ波を伝搬できるように、テーパ状接続管4Bにより第1導波管4Aに接続されている。なお、第2導波管5と第1導波管4Aとは、後述するように接合部4Cでの反射をできる限り低減して、少ない伝搬ロスでマイクロ波を伝搬できるような接続であれば、テーパ状接続管4Bとは異なるもの又は異なる方法を用いて接続されてもよい。第2導波管5は、容器3の上部に装着される。第2導波管5は、矩形導波管であって、矩形の断面形状を形成する壁部を有する。管内波長λgは、しゃ断波長をλcとすると、1/λg=1/λ−1/λcとなることが知られている。ここに、矩形導波管である第2導波管5の高さをa、幅をbとすると、TEmnモードでのしゃ断波長λcは、式1で表される。したがって、管内波長λgは、マイクロ波電源15が供給するマイクロ波の周波数と第2導波管5の断面形状によって決まる。
【数1】

【0022】
スロットアンテナ10は、第2導波管5の壁部のうち、台7と対向する壁部に設けられ、管内波長λgの1/2の間隔で第2導波管5の長手方向に形成された矩形状の複数のスロット12から成る。スロットの配置の詳細は、図4を参照して後述する。
【0023】
誘電体板11は、スロットアンテナ10を有する壁部の外表面に接して設けられ、スロットアンテナ10を覆う。誘電体板11は、スロットアンテナ10を有する壁部の外表面に接して、スロットアンテナ10を覆う取付面と、その取付面に対向するプラズマ発生面とを有する。誘電体板11の厚さは、マイクロ波の波長λの4分の1以下であることが好ましい。また、誘電体板11の材料は、石英(SiO)、アルミナ(Al)等のように、マイクロ波の誘電体損が低く耐熱性のあるものが好ましい。
【0024】
図4は、図2及び図3に示すスロットアンテナ10における複数のスロット12の配置を説明するための図であり、スロットアンテナを有する導波管部5の上下を逆にした状態を示す。図4の矢印は、マイクロ波の伝送方向、すなわち上記の入射方向を示す。また、第2導波管5は、幅a、高さbの長方形断面の中空を有し、壁の厚みはtである。
【0025】
図4の複数のスロット12は、TE10モードの場合の複数のスロット12の例であり、スロットアンテナ10を有する壁部の長軸23を挟んで交互の2列に形成され、第2導波管5の端部に最も近い第1スロット12から順に、長軸23に沿って第6スロット12まで6つ形成されている例を示す。各スロット12は、長辺方向の長さがl、短辺方向の長さがwの細長い長方形の形状を有する。スロット12の長辺方向は、長軸23と平行に設けられ、スロット12の長辺方向の中心軸25は、長軸23からの距離が一定Xlである。
【0026】
第1スロット12の長辺方向の中心は、第2導波管5の端部から管内波長3λg/4となる位置に設けられる。長軸23と平行な方向に第2導波管5を見た場合に、各スロット12同士の間隔は、管内波長λgの半分(λg/2)である。また、長軸23と垂直な方向に第2導波管5を見た場合に、スロット12が形成されない部分の長さをdとしている。なお、第1スロット12の長辺方向の中心は、第2導波管5の端部から管内波長3λg/4+n・λg/2(n:自然数)となる位置に設けられてもよい。
【0027】
スロット幅が狭く(2log10(l/w)>>1)、スロット周が第一共鳴近傍であり(l+w≒λ/2)、導波管が完全導体でかつ無限に薄い(t≒0)という理想化された条件の下で、第2導波管5の特性インピーダンスで規格化された1個のスロットの等価コンダクタンスgは、(式2)で表されることが知られている(”Microwave Antenna Theory and Design” edited by Samuel Silver,published by Boston Technical Lithographers,Inc.1963年参照)。
【数2】

【0028】
スロットの数をnとした場合に、n・g=1(式3)を満たすようにスロットを形成することによって、マイクロ波電源側から第2導波管5を見たインピーダンスは、第2導波管5にスロットアンテナ10がない場合の第2導波管5の特性インピーダンスと整合する。すなわち、第2導波管5と同じ形状でスロットアンテナを有さない導波管をプラズマ発生部13に接合した場合、接合部分で、マイクロ波電源側を見たインピーダンスと、プラズマ発生部13を含む負荷側を見たインピーダンスとがほぼ等しい。そのため、上記(式3)を満たすようにスロットを形成することで、プラズマ発生部13の入力端における反射が除去され、又は低減し、効率よくマイクロ波を供給できる。また、インピーダンスが整合している場合、各スロットから放出されるマイクロ波の出力がほぼ等しくなり、均一なプラズマを発生することが可能になる。なお、接合部4Cからマイクロ波電源側に接続される導波管が第2導波管5とは異なる断面形状の第1導波管4Aである場合、両者の特性インピーダンスが違うために、その接合部分でマイクロ波の反射が起こる。この反射を減らす方法の一つとして、第1導波管部4Aと第2導波管5とを滑らかに接続する矩形断面をもつテーパ状接続管4Bを設ける方法が有効である。このテーパ状接続管4Bの長さを自由空間波長に比べて数倍程度に長くすると、テーパ状接続部4Bのインピーダンスが第1導波管4Aの特性インピーダンスから第2導波管5の特性インピーダンスまでにゆるやかに変化するので、上記接合部4Cでの反射を実用上、無視できるレベルまで減らすことが可能である。
【0029】
また、dは、式4で表される。
【数3】

dは、スロットが存在しない間隔であるため、できるだけ小さい方が好ましい。dを小さくすることによって、第2導波管5の壁部の全体にマイクロ波を出力できるため、プラズマ発生部13は均一なプラズマを発生することが可能になる。インピーダンスを整合しながら、できるだけdを小さくするには、プラズマを発生させる領域長L(=n・λg/2)をλ/2で除した数n´を越えないもっとも近い整数nでLを除した長さの2倍をλgに設定するとよい。すなわち、スロットの数をn、n×λg/2をλ/2で除して得られる数をmとした場合、m−1<n<mを満たす場合に、インピーダンスを整合しながら、dを小さくすることができる。
【0030】
導波管のスロットを有する壁部の中心軸方向に、スロットが存在しない間隔dを小さくし、かつ、インピーダンスを整合させるという、上記の条件を満たす具体例を図5に示す。図5に示す例は、2.45GHz、TE10モードの場合の一例で、a=150mm、Xl=48mm(2・Xl=96mm)、w=1mm、l=60mm、d=7mmである。これは、具体例の1つにすぎず、本発明がこれに限定されるものではないことはもちろんである。
【0031】
このような構成により、マイクロ波電源15からマイクロ波が供給される。マイクロ波は、第1導波管4A及びテーパ状接続管4Bを伝搬し、接続部4Cを介して、容器3に装着されたプラズマ発生部13にまで伝搬する。マイクロ波は、スロット12及び誘電体板11を介して、容器3の中を伝搬して、ガスを電離させてプラズマを生成する。マイクロ波のパワーが低い場合は薄いプラズマとなり、真空容器内を体積波としてマイクロ波が伝搬する。パワーが高くなり、プラズマの密度がカットオフ密度を超えるとマイクロ波はプラズマ表面で反射され、誘電体板の表面に沿って伝わる表面波となり、この波の強い電場で電子が加速されて放電が起こりプラズマが維持される。発生した高密度プラズマが、プラスチックフィルム9の表面に照射する。このようにして、プラスチックフィルム9は、表面処理される。
【0032】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2に係るプラズマ発生部13のスロットアンテナ10近傍を示す図である。本図のプラズマ発生部13は、実施の形態2に係るプラズマ装置の容器3を切り欠いて示す下方からの斜視図である。実施の形態2のプラズマ発生部13は、第2導波管5と、スロットアンテナ10と、誘電体板11とを実施の形態1と同様に備え、更に、図6に示すように、誘電体板11のプラズマ発生面近傍に複数の永久磁石53を備える。
【0033】
なお、図6には、永久磁石53が、プラズマ発生面のスロット12の近傍に対向する位置の近傍に設けられる例を示すが、永久磁石の配置は、これに限られない。永久磁石53は、例えば、誘電体板11の取付面、すなわち、スロット12を有する第2導波管5の壁部と誘電体板11との間に挟むように設けられてもよく、誘電体板11の取付面とプラズマ発生面の両方に設けられてもよい。また、永久磁石53の形状、間隔、配置等は、適宜最適なものが選択されてよい。また、設置時の永久磁石53の磁極の向きは、どのようなものであってもよく、適宜最適なものが選択されてよい。さらに、永久磁石53の代わりに例えば電磁石のような磁極の向きを変更できる磁石が配置されてもよく、その場合、磁極の向きが適宜制御されてもよい。
【0034】
このように、磁石を誘電体板に設けることによって、低圧下でプラズマを生成しても、プラズマの拡散が磁石の磁場によって抑制され、容器の内壁に衝突して消滅することが減少する。そのため、磁場がない場合よりも1桁程度低い低圧下であっても、比較的高濃度でプラズマを維持することが可能になる。また、これにより、プラズマでの表面処理をするための容器内の環境の構築が容易になる。さらに、後述するように表面処理の後に、例えば無機薄膜の生成処理などが施されるが、プラズマ装置から後続する処理装置にプラスチックフィルムを自動的に移動させる場合の差動排気が僅かですむため、実用性が向上する。なお、電子サイクロトロン共鳴が起きるような環境の場合も、低圧で高密度のプラズマを維持でき、上述の効果を奏することが可能になる。
【0035】
(実施の形態3)
次に、実施の形態1で説明したプラズマ装置を薄膜形成プロセスでのプラズマ源として利用する薄膜形成装置について説明する。図7は、本発明の一実施の形態に係る薄膜形成装置を示す。薄膜形成装置は、プラズマによる表面処理を利用して長尺のプラスチックフィルムに連続的に無機薄膜を形成する装置である。
【0036】
薄膜形成装置は、巻出ロール41から長尺のプラスチックフィルム39を、ガイドロール43を通って、プラズマ処理ユニット33aに連続的に巻き出す巻出ユニット31と、プラスチックフィルム39にプラズマを照射して表面処理をするプラズマ処理ユニット(プラズマ処理装置)33aと、ガイドロール43に案内されてメインロール45によって移動するプラスチックフィルム39にスパッタターゲット47を使用したスパッタリングにより無機薄膜を形成する製膜ユニット35と、無機薄膜が形成されたプラスチックフィルム39をガイドロール43の案内で巻取ロール49に巻き取る巻取ユニット37とを備える。
【0037】
プラズマ処理ユニット33aは、プラズマ処理ユニット33aの筐体である容器を備え、また、実施の形態1と同様に、容器内のガスの圧力及び構成を制御するために、容器からガスを排気する真空ポンプ及びガスを供給するボンベが接続される(図示せず)。プラズマ処理ユニット33aは、所定の圧力でガスが充填された容器内に配置されたプラズマ発生部13を有する。プラズマ発生部13は、プラスチックフィルム39の幅と同程度又はそれよりも広い幅を有し、実施の形態1と同様に、第2導波管5と、図示しないスロットアンテナ(10)及び誘電体板(11)とを有する。誘電体板のプラズマ発生面は、順次移動するプラスチックフィルム39に対向して配置される。巻き出し装置31及び製膜ユニット35のガイドロール43が、支持部として、順次移動するプラスチックフィルム39を支持する。なお、薄膜形成装置を構成する各ユニットは、別体になっており、各ユニット内の圧力やガスの構成は、ユニット毎に制御されることが好ましいが、複数のユニットが一体の構成であってもよい。
【0038】
このような構成の薄膜形成装置によって、巻出ユニット31の巻出ロール41から長尺のプラスチックフィルム39を送り出し、プラズマ処理ユニット33aでの表面処理と製膜ユニット35での薄膜形成処理とをプラスチックフィルム39に順次実行した後に、巻取ユニット37の巻取ロール49に薄膜が形成されたプラスチックフィルム39を巻き取る。これにより、無機薄膜が形成された長尺のプラスチックフィルムを製造することができる。また、プラズマ処理ユニット33aで高密度のプラズマでの表面処理がなされた後に、処理された表面に無機薄膜が形成されるため、密着力が高い無機薄膜が形成されたプラスチックフィルムの製造が可能になる。
【0039】
なお、製膜ユニット35は、スパッタリングによって薄膜を形成することとしたが、薄膜形成の方法はこれに限られない。製膜ユニット35での薄膜は、例えば、他のPVD(物理的気相成長)技術、CVD(化学的気相成長)技術等を利用した方法で形成されてもよい。これらの方法によっても、本発明に係るプラズマ処理ユニットで処理を施した表面に薄膜を形成することで、薄膜とプラスチックフィルムとの密着力を高めることが可能になる。
【0040】
(実施の形態4)
本実施の形態の薄膜形成装置は、図8に示すように、プラズマ処理ユニット33bを除いて、実施の形態3の薄膜形成装置と同様の構成である。プラズマ処理ユニット33bは、プラスチックフィルムを送り出す処理ロール(支持部)51と、処理ロール51の面に対向して配置される複数のプラズマ発生部13と、巻出ユニット31から巻き出されたプラスチックフィルム39を処理ロール51に案内するガイドロール43と、処理ロール51から送り出されたプラスチックフィルム39を製膜ユニット35に案内するガイドロール43とを備える。複数のプラズマ発生部13は、第2導波管5と、上記第2導波管5に設けた図示しないスロットアンテナ(10)及び誘電体板(11)とを有する。複数のプラズマ発生部13は、処理ロール51の回転方向に並べて配置され、各プラズマ発生部13は、処理ロール51の幅と同程度又はそれより広い幅を有する。プラズマ発生部13の誘電体板のプラズマ発生面は、プラスチックフィルム39を支持する処理ロール51の周表面に対向する。
【0041】
プラズマ発生面と処理ロール51の周表面との距離は、処理ロール51及び/又はプラズマ発生部13の位置を制御する距離調整機構部(図示せず)により、一定の範囲で任意の距離に調整できる。これにより、プラスチックフィルムに照射するプラズマの密度を調整することができ、プラスチックフィルムに施す表面処理の程度を調整することが可能になる。また、処理ロール51に対向するプラズマ発生部13のプラズマ発生面は、好ましくは、プラスチックフィルム39を支持する処理ロール51の周表面の形状に応じて湾曲している。これにより、処理ロール51の周表面を移動するプラスチックフィルム39と、プラズマ発生面との距離を常に一定にすることができる。そのため、処理ロール51の移動中にプラスチックフィルム39に照射されるプラズマは、均一になる。そのため、プラズマの照射量の調整が容易になる。
【0042】
処理ロール51は、周表面の温度を制御し、これにより周表面に支持するプラスチックフィルム39の温度を調整する温度調整手段を備える(図示せず)。温度調整手段は、例えば、処理ロール51内に配置され、冷媒が循環する管と、管を循環させる冷媒の量及び/又は温度を制御する冷媒制御部を備える。プラスチックフィルムの温度は、好ましくは、−(マイナス)20度から40度程度に調整される。一般にプラスチックフィルムは、熱によって変形し、変性する等、損傷し易いが、温度調整手段を備えることによって、プラズマ照射の熱によるプラスチックフィルムの損傷を防ぐことが可能になる。
【0043】
なお、プラズマ発生部13が2個である例を図8に示すが、プラズマ発生部13の数は、これに限られず、3個以上であっても良い。これにより、プラズマを広範囲に発生させることができるため、各プラズマ発生部13で生成するプラズマが少なくても十分な表面処理を行うことができる。そのため、高密度のプラズマによる急激な加熱を防止でき、プラスチックフィルムを熱によって損傷する危険を減らすことが可能になる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を示して本発明に関連するマイクロ波プラズマの効果を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。実施例に用いたプラズマ装置の条件について説明する。容器は、直径30cm、高さ40cmの金属製で円筒状の容器である。容器の中に設けた矩形導波管の長さは、50cmである。プラズマ発生部に設けた誘電体板は、直径30cmの円板状である。
【0045】
(実施例1)
実施例1において、ガスは、アルゴンであり、圧力は13Paとした。供給するマイクロ波の周波数は、2.45GHz、電力は1kWである。プラスチックフィルムは、プラズマ発生面から50mmの位置に配置し、厚さ100μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(東洋紡績株式会社製、A4100)である。プラズマ照射時間は、5秒間とした。このような条件で表面処理をした後に、表面処理をしたプラスチックフィルムの表面の各種元素の量をESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)で測定した。実施例1での測定結果が図9及び図10に示される。図9及び図10は、それぞれ、珪素(Si)、フッ素(F)の測定結果を示す。図9において、位置61はSiOのスペクトル、位置63は金属Siのスペクトル、点線の楕円領域65はシリコンのスペクトルを示す。又、図10において、点線の楕円領域67はフッ素のスペクトルを示す。未処理のPETフィルムと比較すると、表面汚染であるフッ素が除去されている。
【0046】
(比較例1)
比較例1では、装置内に設置した磁場をかけたボロンドープシリコンの平板電極に直流電圧をかけプラズマを発生させた。ガスは、アルゴンであり、圧力は0.6Paとした。直流電力は4.6w/cmで供給した。プラスチックフィルムは、電極から95mmの位置に配置し、厚さ100μmのPETフィルム(東洋紡績株式会社製、A4100)である。プラズマ照射は、2.5秒間とした。未処理のフィルム表面と比較してフッ素元素は検出されないが、電極材料であるシリコン元素が不純物としてフィルム表面に存在しているのがわかる。
【0047】
(実施例2)
実施例2において、ガスは、アルゴン100%と混合ガス(アルゴン90%,酸素10%)であり、全圧力は13Paとした。供給するマイクロ波の周波数は、2.45GHz、電力は0.5kWである。プラスチックフィルムは、プラズマ発生面から100mmの位置に配置し、厚さ100μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(東洋紡績株式会社製、A4100)である。プラズマ照射時間は、0、2、5、10、30秒間の5水準実施した。このような条件で、各ガスについてプラズマ照射時間を変えて表面処理をした後に、水との接触角を測定した。図11は、測定結果を示し、実施例2Aは、アルゴン100%での測定結果を、実施例2Bは、混合ガスでの測定結果を示す。プラズマに数秒間さらすだけで接触角が低下し、表面処理の効果が現れた。微量の酸素を添加すると劇的に処理効果が向上する。
【0048】
(実施例3)
実施例3では、実施例2と比較して、プラスチックフィルムの材料を、PETフィルムからポリイミドフィルムに変えた。ポリイミドフィルムは、PETフィルムより耐熱性に優れるので、マイクロ波の出力も上げている。具体的には、実施例3において、ガスは、アルゴン100%と混合ガス(アルゴン90%,酸素10%)であり、全圧力は13Paとした。供給するマイクロ波の周波数は、2.45GHz、電力は1kWである。プラスチックフィルムは、プラズマ発生面から50mmの位置に配置し、厚さ50μmのポリイミドフィルム(東レデュポン株式会社製、カプトン(登録商標))である。プラズマ照射時間は、0、2、5、10、30秒間の5水準実施した。このような条件で、各ガスについてプラズマ照射時間を変えて表面処理をした後に、水の接触角を測定した。図12は、測定結果を示し、実施例3Aは、アルゴン100%での測定結果を、実施例3Bは、混合ガスでの測定結果を示す。PETフィルムのプラズマ処理と同様に、短時間で処理効果が現れ、酸素添加により効果も確認された。
【0049】
(実施例4)
実施例4において、ガスは、アルゴン100%と混合ガス(アルゴン90%,酸素10%)であり、全圧力は65Paとした。供給するマイクロ波の周波数は、2.45GHz、電力は1kWである。プラスチックフィルムは、プラズマ発生面から50mmの位置に配置し、厚さ50μmのポリイミドフィルム(東レデュポン株式会社製、カプトン(登録商標))である。プラズマ照射時間は、5秒間である。
【0050】
このような条件で、表面処理をした後に、表面処理をしたプラスチックフィルムの表面の炭素(C)及び酸素(0)をESCAで測定した。図13及び14は、それぞれ、炭素(C)及び酸素(O)の測定結果を示す。図13において、位置69はC=O、位置71はC−OH、位置73はC−O−C又はC−N、位置75はC−Cの結合を示す。図14において、位置79はC−O−C又はC−OH、位置81はC=Oを示す。実施例4Aは、アルゴン100%での測定結果を、実施例4Bは、混合ガスでの測定結果を、比較例2は、未処理のポリイミドフィルムでの測定結果を示す。これらのデータからプラズマ処理によってC−OH結合が表面に形成され、化学的な表面処理が進行することが分かった。
【0051】
また、上記条件で、表面処理をした後に、表面処理をしたプラスチックフィルムの表面粗さを測定した。図15は、ポリイミドフィルムの処理面の表面粗さを測定した結果を示す。表面粗さは、AFM(原子間力顕微鏡)を用いて表面の凹凸の高さを計測し、そのRMS(二乗平均平方根)を指標とする。実施例4Aは、アルゴン100%での測定結果を、実施例4Bは、混合ガスでの測定結果を、比較例2は、未処理のポリイミドフィルムでの測定結果を示す。このデータから、プラズマ処理によって表面粗さが増加し、物理的処理も進行することがわかる。また、酸素を添加した方が化学的にも物理的にも処理効果が大きいことが判明した。
【0052】
(実施例5)
実施例5において、ガスは、アルゴンであり、圧力は65Paとした。供給するマイクロ波の周波数は、2.45GHz、電力は1kWである。プラスチックフィルムは、プラズマ発生面から100mmの位置に配置し、ポリイミドフィルム(PMDA−ODA)である。プラズマ照射時間は、5秒間である。次に、表面処理したポリイミドフィルムに、DCマグネトロンスパッタリング法によって、銅の薄膜を形成した。薄膜形成処理では、0.65Paのアルゴン雰囲気で、ターゲットは無酸素銅、ターゲットとポリイミドフィルムとの距離は100mm、供給電力は50Wとした。形成した薄膜の厚さは、100nmである。続けて、薄膜が形成されたポリイミドフィルムを装置から取り出し、電気めっき法によりさらに銅層を20μm積層した。電気めっきは一般的な方法でめっき液として硫酸銅、陽極に銅板を使用したものである。JIS C6471に基づきスパッタリング法と電気めっきにより積層した銅層をポリイミドフィルムとスパッタリングによる銅層との界面よりはがし、90°の剥離角により密着力を測定した。結果を図16に示す。
【0053】
(実施例6)
実施例6では、ガスが混合ガス(アルゴン90%,酸素10%)である以外は、実施例5と同じである。
(比較例3)
比較例3では、プラズマ表面処理のプラズマ発生源として、マイクロ波プラズマの代わりに、平板電極プラズマを用いた。電極には銅を用い、供給したマイクロ波の周波数は13.56MHz、電力は200Wとし、アルゴンプラズマ中で5秒間、フィルムの処理を行い実施例5と同様に銅の薄膜を形成し、密着力を測定した。結果を図16に示す。
(比較例4)
表面処理を行わず、実施例5と同様の方法で銅の薄膜を形成し、密着力を測定した。結果を図16に示す。比較例3及び4のそれぞれに比べて、マイクロ波プラズマを利用して表面処理を施した実施例5及び6の方が密着力が増加している。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、プラズマ発生装置に利用でき、具体的には、プラスチックフィルム等を基板とするFPC、ITO等の無機薄膜を形成する前処理として、基板の表面処理をするためにプラズマを発生させる装置等に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施の形態に係るプラズマ処理装置の構成の概要を示す図。
【図2】本発明の実施の形態1に係るスロットアンテナを有する第2導波管の平面図。
【図3】本発明の実施の形態1に係るスロットアンテナを有する第2導波管の側方断面図。
【図4】本発明の実施の形態1に係るスロットアンテナを有する第2導波管の配置を示す図。
【図5】スロットアンテナを有する導波管部の配置の具体例を示す図。
【図6】本発明の実施の形態2に係るスロットアンテナを有する第2導波管の構成を示す切り欠き図。
【図7】本発明の実施の形態3に係るプラズマ処理ユニットを備える薄膜形成装置の構成の概要を示す図。
【図8】本発明の実施の形態4に係るプラズマ処理ユニットを備える薄膜形成装置の構成の概要を示す図。
【図9】プラスチックフィルムの処理面をESCAで測定した珪素(Si)スペクトルを示す図。
【図10】プラスチックフィルムの処理面をESCAで測定したフッ素(F)スペクトルを示す図。
【図11】PETフィルムを表面処理する時間と処理面での水の接触角との関係を示す図。
【図12】ポリイミドフィルムを表面処理する時間と処理面での水の接触角との関係を示す図。
【図13】ポリイミドフィルムの処理面をESCAで測定した炭素(C)スペクトルを示す図。
【図14】ポリイミドフィルムの処理面をESCAで測定した酸素(O)スペクトルを示す図。
【図15】ポリイミドフィルムの処理面の表面粗さを測定した結果を示す図。
【図16】ポリイミドフィルムの処理面に形成した銅層の剥離強度を示す図。
【符号の説明】
【0056】
1 プラズマ処理装置,2 プラズマ装置,3 容器,4A 第1導波管,4B テーパ状接続管,4C 接続部,5 第2導波管,7 台,9 プラスチックフィルム,10 スロットアンテナ,11 誘電体板,12 スロット,13 プラズマ発生部,31 巻出ユニット,33a・33b プラズマ処理ユニット,35 製膜ユニット,37 巻取ユニット,39 プラスチックフィルム,41 巻出ロール,43 ガイドロール,45 メインロール,47 スパッタターゲット,49 巻取ロール,51 処理ロール,53 永久磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内にマイクロ波プラズマを発生させるプラズマ装置であって、
矩形の断面形状を形成する壁部を有し、前記容器に装着され、自由空間波長λのマイクロ波を伝送する導波管部と、
上記壁部に、管内波長λgの1/2の間隔で上記導波管部の長手方向に形成された矩形状の複数のスロットから成るスロットアンテナと、
上記スロットアンテナを有する上記壁部の外表面に接して設けられ、上記スロットアンテナを覆う誘電体板とを備え、
上記スロットアンテナを形成する上記複数のスロットは、
a)上記スロットアンテナを有する壁部の長手方向の中心軸を挟んで交互に配置されること、
b)上記中心軸からの距離が一定であること、
c)上記複数のスロットの数をn、n×λg/2をλ/2で除して得られる数をmとした場合、m−1<n<mを満たすこと、
d)マイクロ波電源側から見た上記導波管部のインピーダンスが、逆向きの電源側を見た導波管部の特性インピーダンスとほぼ等しいこと、というa)〜d)の条件を満たすことを特徴とするプラズマ装置。
【請求項2】
容器内で処理対象物にプラズマを照射することによって、上記対象物の表面を処理するプラズマ処理装置であって、
上記容器内にマイクロ波プラズマを発生させるプラズマ発生部と、
上記プラズマ発生部に対向した状態で上記対象物を支持する支持部とを備え、
矩形の断面形状を形成する壁部を有し、上記容器に装着され、自由空間波長λのマイクロ波を伝送する導波管部と、
上記壁部に、管内波長λgの1/2の間隔で上記導波管部の長手方向に形成された矩形状の複数のスロットから成るスロットアンテナと、
上記スロットアンテナを有する上記壁部の外表面に接して設けられ、上記スロットアンテナを覆う誘電体板とを備え、
上記スロットアンテナを形成する上記複数のスロットは、
a)上記スロットアンテナを有する壁部の長手方向の中心軸を挟んで交互に配置されること、
b)上記中心軸からの距離が一定であること、
c)上記複数のスロットの数をn、n×λg/2をλ/2で除して得られる数をmとした場合、m−1<n<mを満たすこと、
d)マイクロ波電源側から見た上記導波管部のインピーダンスが、逆向きの電源側を見た導波管部の特性インピーダンスとほぼ等しいこと、というa)〜d)の条件を満たすことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
上記誘電体板またはその近傍に、上記対象物と対向する側に複数の永久磁石を更に備えることを特徴とする請求項2記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
上記対象物は、長尺のプラスチックフィルムであり、
上記支持部は、上記プラスチックフィルムを連続的に移動させることを特徴とする請求項2または3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
上記支持部は、自身が支持している上記プラスチックフィルムの温度を調節するための温度調整手段を有することを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
上記プラズマ発生部と上記対象物との距離を調整する距離調整機構部を更に備えることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
上記プラズマ発生部は、上記プラスチックフィルムとの距離が一定となるように、上記支持部の上記プラスチックフィルムを支持する面の形状に応じて湾曲することを特徴とする請求項2から6のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
上記プラズマ発生部は、プラスチックフィルムの移動方向に沿って複数設けられることを特徴とする請求項2から7のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
上記支持部は、回転可能であり、回転することによって、上記プラスチックフィルムを順次移動させるロールであることを特徴とする請求項2から8のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
矩形の断面形状を形成する壁部を有し、中空容器に装着され、自由空間波長λのマイクロ波を伝送する導波管部と、
上記壁部に、管内波長λgの1/2の間隔で上記導波管部の長手方向に形成された矩形状の複数のスロットから成るスロットアンテナと、
上記スロットアンテナを有する上記壁部の外表面に接して設けられ、上記スロットアンテナを覆う誘電体板とを備え、
上記スロットアンテナを形成する上記複数のスロットは、
a)上記スロットアンテナを有する壁部の長手方向の中心軸を挟んで交互に配置されること、
b)上記中心軸からの距離が一定であること、
c)上記複数のスロットの数をn、n×λg/2をλ/2で除して得られる数をmとした場合、m−1<n<mを満たすこと、
d)マイクロ波電源側から見た上記導波管部のインピーダンスが、逆向きの電源側を見た導波管部の特性インピーダンスとほぼ等しいこと、というa)〜d)の条件を満たすプラズマ発生部を利用して対象物の表面処理を行う表面処理方法であって、
上記導波管部の壁に形成されたスロットアンテナからマイクロ波を放射するステップと、
上記マイクロ波によって、上記プラズマ発生部が備える上記誘電体板の表面にプラズマを発生させるステップと、
発生した上記プラズマを上記対象物に照射するステップとを含むことを特徴とするプラズマ処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−224269(P2009−224269A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69890(P2008−69890)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(500433225)学校法人中部大学 (105)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【出願人】(508084021)株式会社システック (2)
【Fターム(参考)】