説明

プラズマ雰囲気下での成膜方法及び成膜装置

【課題】被処理材のプラズマダメージを低減できるプラズマ雰囲気下で、被処理材上に成膜原料を効率的に成膜できる成膜方法及び成膜装置を提供することにある。特にガスバリア膜の成膜方法及び成膜装置を提供する。
【解決手段】プラズマ雰囲気下でイオン化した成膜原料を被処理材1上に堆積させる成膜方法であって、磁力線2が被処理材1の成膜面3から離れる方向9に向く磁場環境を形成し、その磁場環境で被処理材1の成膜面3に成膜原料を堆積させる。このときの磁力線2の向きは、磁石のN極からS極に向かう磁力線の向きであって、プラズマを構成する荷電粒子4を成膜面3から離れる方向9にはね返す向きである。そうした磁力線2は、永久磁石又は電磁石のN極を成膜原料が供給される側に近い側に配置し、S極を遠い側に配置する等して実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ雰囲気下で被処理材のプラズマダメージを低減しつつ成膜できる成膜方法及び成膜装置に関し、さらに詳しくは、向きを制御した磁力線によって被処理材の表面で荷電粒子の反発状態を生じさせ、その反発状態下で行う成膜方法及び成膜装置に関する。具体的には、ガスバリア膜を成膜するプラズマ雰囲気下で、被処理材であるプラスチックフィルムのプラズマダメージを低減してガスバリア性のよいガスバリア膜の成膜方法及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
酸素や水蒸気等に対するガスバリア性を備えたガスバリアフィルムとして、基材上に酸化ケイ素や酸化アルミニウム等の無機酸化物膜をガスバリア膜として設けたものが提案されている。こうしたガスバリアフィルムは透明性に優れ、食品や医薬品等の包装材料として、また電子部品や表示素子の保護材料として、また太陽電池バックカバーシート材料として、その需要が大いに期待されている。
【0003】
無機酸化物等からなるガスバリア膜の成膜方法では、真空蒸着法やスパッタリング法のほか、イオンプレーティング法が採用されている。イオンプレーティング法で成膜されたガスバリア膜は、基材への密着性と緻密さの点で、真空蒸着法で成膜されたガスバリア膜よりも優れ、スパッタリング法で成膜されたガスバリア膜と同程度であるという特徴がある。一方、イオンプレーティング法によるガスバリア膜の成膜は、成膜速度の点で、スパッタリング法よりも大きく、真空蒸着法と同程度であるという特徴がある。
【0004】
ガスバリア膜の成膜方法のうち、プラズマ雰囲気下で成膜されるDCスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等においては、そのプラズマを構成する荷電粒子が成膜面にダメージを与えるという難点がある。特に樹脂基材(プラスチック基材)に対しては、プラズマに曝される面を荷電粒子がエッチングし又はポリマーを分解し、樹脂基材に欠陥を生じさせる原因となることが指摘されている。そして、その上に成膜したガスバリア膜は、十分なガスバリア性を得にくいものとなっていた。こうした問題に対し、従来は、出力、成膜時間、プラズマ照射時間等の成膜条件を抑えたり、プラズマ耐性のある下地膜を設けた上でガスバリア膜を成膜したりして対処しなければならなかった。
【0005】
なお、成膜方法又は成膜装置に磁場を適用した技術が幾つか提案されている。例えば特許文献1では、金属酸化物を窒素ガス等のプラズマ空間を通過させて蒸着する蒸着フィルムの製造方法が提案されている。同文献の第0025段落には、プラズマ密度を向上させるために磁場を併用することができる旨が記載されている。また、特許文献2,3では、プラズマビームを生成するプラズマガンを用いたイオンプレーティング装置とプラズマCVD装置が提案されている。それらの装置には、収束コイル、アノード磁石、シート化磁石等が設けられ、プラズマ密度を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−65644号公報(第0025段落)
【特許文献2】特開平11−269636号公報
【特許文献3】特開2000−219961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、従来は、出力、成膜時間、プラズマ照射時間等の成膜条件を抑えたり、プラズマ耐性のある下地膜を設けた上でガスバリア膜を成膜したりして対処していた。しかしながら、これらの手段は、被処理材のプラズマダメージは低減できるものの、成膜効率が低下してしまうという難点がある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、プラズマ雰囲気下で被処理材のプラズマダメージを低減しつつ成膜できる成膜方法及び成膜装置を提供することにある。特にガスバリア膜の成膜方法及び成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者はイオンプレーティング装置を用いてガスバリア膜のガスバリア性を高めるための研究を行っている過程で、プラスチック基材の成膜面の近くに永久磁石を置いてガスバリア膜を成膜したところ、ガスバリア性が高くなることを見つけた。その後さらに検討したところ、磁力線が特定の向きになるように永久磁石を配置したときにその効果が大きいことを見出し、さらに同様の原理は、イオンプレーティング法のみならず、プラズマ雰囲気下でイオン化した成膜原料を被処理材上に堆積させる場合にも適用できることを確認して本発明を完成させた。
【0010】
上記課題を解決するための本発明に係る成膜方法は、プラズマ雰囲気下でイオン化した成膜原料を被処理材上に堆積させる成膜方法であって、磁力線が前記被処理材の成膜面から離れる方向に向く磁場環境を形成し、該磁場環境で前記被処理材の成膜面に前記成膜原料を堆積させることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、磁力線が被処理材の成膜面から離れる方向に向く磁場環境を形成するので、その磁力線が、被処理材の成膜面に向かってくる荷電粒子をはね返すように作用する。その結果、被処理材の成膜面の荷電粒子によるプラズマダメージ(プラズマ損傷;エッチング又はポリマー分解)を抑制することができる。この発明は、被処理材の成膜面のダメージを抑制できる磁場環境で被処理材の成膜面に成膜原料を堆積させるので、欠陥が少ない膜を効率的に(出力を低下させないで)成膜できる。
【0012】
本発明に係る成膜方法において、前記磁力線の向きは、磁石のN極からS極に向かう磁力線の向きであって前記プラズマを構成する荷電粒子を前記成膜面から離れる方向にはね返す向きである。
【0013】
この発明によれば、磁力線の向きは磁石のN極とS極とで形成され、その磁力線によって荷電粒子をはね返すことができる。
【0014】
本発明に係る成膜方法において、前記成膜原料の堆積を、イオンプレーティング法、DCスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法及びプラズマCVD法から選ばれるいずれかで行う。
【0015】
この発明によれば、プラズマ雰囲気下で成膜する上記各種の成膜手段に対して適用でき、得られた膜の膜質を高めることができる。
【0016】
本発明に係る成膜方法において、前記被処理材がプラスチック基材であり、該プラスチック基材上にガスバリア膜を成膜してなることが好ましい。
【0017】
この発明によれば、被処理材としてプラスチック基材を用い、そのプラスチック基材上にガスバリア膜を成膜する場合に特に好ましく適用できる。磁力線の向きを制御した磁場環境により荷電粒子をはね返すことができるので、プラスチック基材が荷電粒子によってエッチングされたり分解されたりするのを低減できる。その結果、プラスチック基材上に成膜したガスバリア膜の欠陥を抑制でき、緻密でガスバリア性のよいガスバリア膜を成膜できる。
【0018】
本発明に係る成膜方法において、前記ガスバリア膜が、プラズマ雰囲気下で形成された無機酸化物膜、無機窒化物膜、無機炭化物膜、無機酸化炭化物膜、無機窒化炭化物膜、無機酸化窒化物膜、及び無機酸化窒化炭化物膜から選ばれるいずれかである。
【0019】
上記課題を解決するための本発明に係る成膜装置は、成膜チャンバー内のプラズマ雰囲気下でイオン化した成膜原料を被処理材上に堆積させる成膜装置であって、前記被処理材を保持する被処理材保持装置と、前記被処理材保持装置又はその近傍に設けられて、磁力線が前記被処理材の成膜面から離れる方向に向く磁場環境を形成する磁場形成装置と、を有することを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、磁力線が被処理材の成膜面から離れる方向に向く磁場環境を形成する磁場形成装置を備えるので、その磁場形成装置で形成された磁力線が、被処理材の成膜面に向かってくる荷電粒子をはね返すように作用する。その結果、被処理材の成膜面の荷電粒子によるプラズマダメージ(プラズマ損傷;エッチング又はポリマー分解)を抑制することができる。したがって、この発明は、被処理材の成膜面のダメージを抑制できる磁場環境で被処理材の成膜面に成膜原料を堆積させる成膜装置であり、欠陥が少ない膜を効率的に成膜できる装置である。
【0021】
本発明に係る成膜装置において、前記磁場形成装置は、永久磁石又は電磁石を有し、該永久磁石又は電磁石のN極を前記成膜原料が供給される側に近い側に配置し、S極を遠い側に配置する。
【0022】
この発明によれば、磁場形成装置を構成する永久磁石又は電磁石のN極を、成膜原料が供給される側に近い側に配置し、S極を遠い側に配置して、磁力線が被処理材の成膜面から離れる方向に向く磁場環境を形成している。
【0023】
本発明に係る成膜装置において、前記磁場形成装置が、前記被処理材の成膜面の反対面側に設けられている。
【0024】
この発明によれば、磁場形成装置を被処理材の成膜面の反対面側に設けているので、被処理材の裏面(背面)から成膜面(表面)の方向に磁力線を向けることができ、磁力線を被処理材の成膜面から離れる方向に向くようにすることができる。
【0025】
本発明に係る成膜装置において、前記磁場形成装置が、前記被処理材の成膜面側の周縁近傍に設けられている。
【0026】
この発明によれば、磁場形成装置を被処理材の成膜面側に設けているので、永久磁石又は電磁石のN極を成膜面に近い側に配置し、S極を成膜面から離れる側に配置して、磁力線を被処理材の成膜面から離れる方向に向くようにすることができる。
【0027】
本発明に係る成膜装置は、イオンプレーティング装置、DCスパッタリング装置、マグネトロンスパッタリング装置及びプラズマCVD装置から選ばれる装置である。
【0028】
この発明によれば、プラズマ雰囲気下で成膜する上記各種の成膜装置とすることができ、得られた膜の膜質を高めることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る成膜方法及び成膜装置によれば、磁力線が被処理材の成膜面に向かってくる荷電粒子をはね返すように作用するので、被処理材の成膜面の荷電粒子によるプラズマダメージ(プラズマ損傷;エッチング又はポリマー分解)を抑制することができる。その結果、被処理材の成膜面のダメージを抑制できる磁場環境で被処理材の成膜面に成膜原料を堆積させることができ、欠陥が少ない膜を効率的に成膜できる。
【0030】
特に本発明に係る成膜方法及び成膜装置によれば、ガスバリア膜を成膜するプラズマ雰囲気下で、被処理材であるプラスチックフィルムのプラズマダメージを低減してガスバリア性のよいガスバリア膜を効率的に成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る成膜方法の原理の説明図である。
【図2】本発明に係る成膜装置の代表例(イオンプレーティング装置)の一例を示す模式的な構成図である。
【図3】磁場形成装置の一例を示す模式図である。
【図4】図3に示す磁場形成装置の斜視図である。
【図5】磁場形成装置の他の一例を示す模式図である。
【図6】図5に示す磁場形成装置の斜視図である。
【図7】磁場形成装置のさらに他の一例を示す模式図である。
【図8】本発明に係るガスバリアフィルムの一例を示す模式的な断面図である。
【図9】本発明に係るガスバリアフィルムの他の一例を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、本発明に係る成膜方法及び成膜装置について詳しく説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0033】
[成膜方法]
本発明に係る成膜方法は、図1にその原理を示すように、プラズマ雰囲気下でイオン化した成膜原料を被処理材1上に堆積させる成膜方法であって、磁力線2が被処理材1の成膜面3から離れる方向9に向く磁場環境を形成し、その磁場環境で被処理材1の成膜面3に成膜原料を堆積させる方法である。
【0034】
プラズマ雰囲気下では、電離によって生じた荷電粒子4が存在する。被処理材1の成膜面3に向かう荷電粒子4は、その成膜面3をエッチングしたり分解したりして被処理材1にダメージを与える。本発明では、磁力線2が被処理材1の成膜面3から離れる方向9に向く磁場環境が形成されている。その磁場環境は、図1(A)に示すように、磁力線2が被処理材1の成膜面3に向かってくる荷電粒子4をはね返すように作用する。その結果、成膜面3の荷電粒子4によるプラズマダメージ(プラズマ損傷;エッチング又は分解)を抑制することができる。成膜面3のプラズマダメージの抑制は、図1(B)に示すように、欠陥が少ない膜5を効率的に成膜できるという利点がある。
【0035】
なお、「荷電粒子」とは、一般的には電離した気体のことであり、プラズマ雰囲気を形成するための中性分子(例えばアルゴンガス等)が電離し、正の電荷を持つイオン(Ar)と負の電荷を持つ電子(e)とに分かれて飛び回っている物質のことである。また、「磁力線2が成膜面3から離れる方向」とは、図1(A)(B)に示すように、成膜面3に垂直な方向又は成膜面3に対して0°を超える角度を持つ方向のことであり、成膜面3に平行な方向と成膜面3に向かう方向を除く意味である。磁場環境は、磁力線2の全てが成膜面3から離れる方向9に向いていることが好ましいが、磁力線2の一部が成膜面3から離れる方向9に向いている場合であってもよい。磁力線2の一部が成膜面3から離れる方向9に向く場合は、成膜面から離れる方向9に向かう磁力線2の割合が5割を超え、成膜面3に平行な磁力線又は成膜面3に向かう磁力線の割合が5割未満であることが好ましい。こうした磁力線2の割合(全部又は5割を超える)は、成膜面の全面の各所において満たされていることが好ましい。
【0036】
本発明者は、こうした磁場環境を有した成膜方法について、イオンプレーティング装置を用いた成膜時に確認し、ガスバリア性を高めたガスバリアフィルムを得た。そして、同様の原理によれば、イオンプレーティング装置のみならず、プラズマ雰囲気下でイオン化した成膜原料を被処理材上に堆積させるDCスパッタリング装置、マグネトロンスパッタリング装置、プラズマCVD装置等、プラズマ雰囲気で成膜する装置を用いて成膜する場合にも適用できることを確認した。したがって、本発明に係る成膜方法は、イオンプレーティング装置を用いたイオンプレーティング法での成膜に適用できるのみならず、DCスパッタリング装置を用いたDCスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング装置を用いたマグネトロンスパッタリング法、プラズマCVD装置を用いたプラズマCVD法においても適用できる。
【0037】
以下では、イオンプレーティング装置を用いた例で本発明に係る成膜装置を説明すると共に、併せて本発明に係る成膜方法を説明する。なお、本発明は図2に示すイオンプレーティング装置及び方法の実施形態に限定されず、上記した他の成膜装置及び成膜方法にも同様に適用できる。
【0038】
[成膜装置]
本発明に係る成膜装置は、図2のイオンプレーティング装置101で例示するように、成膜チャンバー106内のプラズマ雰囲気下でイオン化した成膜原料を被処理材1上に堆積させる成膜装置である。そして、この成膜装置は、被処理材1を保持する被処理材保持装置と、被処理材保持装置又はその近傍に設けられて、磁力線が被処理材1の成膜面3から離れる方向(図1(A)の符号9)に向く磁場環境を形成する磁場形成装置と、を少なくとも有する。
【0039】
成膜チャンバー内のプラズマ雰囲気下でイオン化した成膜原料を被処理材上に堆積させる成膜装置としては、図2に示すイオンプレーティング装置のみならず、DCスパッタリング装置、マグネトロンスパッタリング装置、プラズマCVD装置等を挙げることができる。これらの装置は、周知のように、いずれも、成膜原料をプラズマ雰囲気に供給する装置(成膜原料供給装置)と、プラズマ雰囲気を形成する装置(プラズマ形成装置)と、被処理材を保持する被処理材保持装置とを有している。本発明は、磁力線3が被処理材1の成膜面3から離れる方向9に向く磁場環境を形成する磁場形成装置を有する点に特徴がある。以下では、各装置についての代表例を説明するが、それらに限定されるものではない。
【0040】
(イオンプレーティング装置)
イオンプレーティング装置の基本原理は、真空蒸着とプラズマの複合技術であって、ガスプラズマを利用して成膜原料の蒸発粒子をイオン化又は励起粒子化し、活性化して、化合物膜を成膜する技術である。こうしたイオンプレーティング装置で化合物膜を形成するには、成膜チャンバー内のプラズマ雰囲気に反応性ガスを導入して、その反応性ガスをイオン化して蒸発粒子と結合させ、化合物膜を合成させる反応性イオンプレーティング装置を用いる。イオンプレーティング装置の特徴は、放電によるプラズマ形成装置と、蒸発源である成膜原料を供給する成膜原料供給装置とを兼ね備えていることである。放電手段で分けると、直流励起型と高周波励起型とに大別される。蒸発機構で分ければ、ホローカソード型と、イオンビーム型と分けることもできる。
【0041】
図2に例示するホローカソード型イオンプレーティング装置101について詳しく説明する。このイオンプレーティング装置101は、真空チャンバー102と、このチャンバー102内に配設された供給ロール103a、巻き取りロール103b、コーティングドラム104と、バルブを介して真空チャンバー102に接続された真空排気ポンプ105と、仕切り板109,109と、その仕切り板109,109で真空チャンバー102と仕切られた成膜チャンバー106と、この成膜チャンバー106内の下部に配設された坩堝107と、アノード磁石108と、成膜チャンバー106の所定位置(図示例では成膜チャンバーの右側壁)に配置された圧力勾配型プラズマガン110、収束用コイル111、シート化磁石112、圧力勾配型プラズマガン110へのアルゴンガスの供給量を調整するためのバルブ113と、成膜チャンバー106にバルブを介して接続された真空排気ポンプ114と、反応性ガスである酸素ガス等の供給量を調整するためのバルブ116とを備えている。なお、図示のように、供給ロール103aと巻き取りロール103bはリバース機構が装備されており、両方向の巻き出し、巻き取りが可能となっているロール・トゥ・ロール法を可能にする装置であるが、一般的なバッチ式の装置であっても構わない。
【0042】
イオンプレーティング装置101を用いた成膜は以下のように行われる。先ず、真空チャンバー102、成膜チャンバー106内を、真空排気ポンプ105,114により所定の真空度まで減圧し、次いで、必要に応じて成膜チャンバー106内に酸素ガス等(反応性ガス)を所定流量導入し、真空排気ポンプ114と成膜チャンバー106との間にあるバルブの開閉度を制御することにより、チャンバー106内を所定圧力に保ち、基材フィルムを走行させ、アルゴンガスを所定流量導入した圧力勾配型プラズマガン110にプラズマ生成のための電力を投入し、アノード磁石108上の坩堝107にプラズマ流を収束させて照射することにより成膜原料24を蒸発させ、高密度プラズマにより蒸発分子をイオン化させて、成膜面に所定の種類の膜を成膜する。
【0043】
好ましいイオンプレーティング装置は、ハースに照射された電流が、プラズマガンに安定的に帰還できるように、帰還電極を備えたものである。こうした装置としては、特開平11−269636号公報に記載されるように、プラズマガンのプラズマビームの照射出口部に、プラズマビームの周囲を取り囲み、電気的に浮遊状態として突出させた絶縁管と、この絶縁管の外周側を取り巻くとともに、出口部よりも高い電位状態とした電子帰還電極と、を設けたイオンプレーティング装置を用いればよい。
【0044】
イオンプレーティング装置101では、成膜原料供給装置として、坩堝107と反応性ガス導入装置117とを挙げることができる。坩堝107に収容される成膜原料24としては、被処理材1の成膜面3上に成膜する膜の種類に応じた各種の材料を挙げることができる。例えば、ガスバリア膜を成膜する場合には、Si、Zn、Sn等の各種の元素、又はこれら元素を含む無機酸化物、無機窒化物、無機炭化物、無機酸化窒化物、無機酸化炭化物、無機窒化炭化物等の無機化合物、又はそれらの元素の複合材料(合金材料)を用いることができる。
【0045】
反応性ガス導入装置117は、成膜チャンバー106に取り付けられている。図2の例では、酸素ガスを反応性ガスとして用いている。酸素ガスは、流量調整装置119とバルブ116とを経て成膜チャンバー106内に導入される。
【0046】
なお、イオンプレーティング装置は、図2に示すタイプのイオンプレーティング装置に限定されず、公知の他のイオンプレーティング装置であってもよい。また、図2の例は、長尺フィルムを被処理材1として連続成膜できるロール・トゥ・ロール法を可能にする装置であるが、一般的なバッチ式の装置であっても構わない。
【0047】
(プラズマCVD装置)
プラズマCVD装置は、プラズマ放電中で、系内のガスが衝突により相互に活性化してラジカルとなり、熱的励起のみによっては不可能な低温下での反応を可能にする装置である。このプラズマCVD装置では、通常、平行平板型の電極構造が用いられ、高周波電力は対向する一方の電極(上部電極)より投入される。被処理材は、背後からヒータによって加熱され、電極間の放電中での反応により膜が形成される。プラズマCVD装置は、プラズマの発生に用いる周波数により、HF(数十〜数百kHz)、RF(13.56MHz)及びマイクロ波(2.45GHz)に分類される。マイクロ波を用いる場合は、反応ガスを励起し、アフターグロー中で成膜する方法と、ECR条件を満たす磁場(875Gauss)中にマイクロ波導入するECRプラズマCVD法とに大別される。プラズマ発生方法で分類すると、容量結合方式(平行平板型)と誘導結合方式(コイル方式)とに分類される。本発明では、各種のプラズマCVD装置に対して適用でき、特に限定されない。
【0048】
(スパッタリング装置)
マグネトロンスパッタリング装置は、電極上に配置されたターゲット材料(成膜原料)に、真空中でArイオンが衝突し、ターゲットの原子を飛び出させ、対向する被処理材上に付着させる成膜装置である。マグネトロンスパッタリング装置は、従来のDCグロー放電や高周波によって発生させたプラズマを利用する2極スパッタ方式や、熱陰極を付加する3極スパッタ方式をさらに改良したものであって、ターゲット表面に磁界を印加し、二次電子をローレンツ力で捉えてサイクロイド又はトロコイド運動させることによりArガスとのイオン化衝突の頻度を増大させ、ターゲット付近に高密度プラズマを生成させて成膜速度の高速化を実現した装置である。この装置によれば、電子が磁界による束縛から逃れて被処理材に入射するまでにイオン化衝突による運動エネルギーの低減が十分なされるために、高エネルギーな荷電粒子(電子)の被処理材への過大な衝突が起こらず、それに伴う基板温度上昇が抑制されるという利点がある。
【0049】
成膜原料はターゲットとして配置してスパッタリングで成膜する。なお、化合物膜を形成する場合は、スパッタ時に反応性ガスを導入して行う反応性スパッタリング装置としてもよい。
【0050】
DCスパッタリング装置は、金属ターゲットのみをスパッタリングするDC電圧を印加したDC2極スパッタリング装置を挙げることができるが、DC電圧を印加するDCマグネトロンスパッタ装置であってもよい。特にDCマグネトロンスパッタリング装置では、SIP(Self−Ionized Plasma)技術を搭載した装置であってもよい。SIP技術は、電子閉じ込め能力が強い磁場分布上に高いDC電圧を印加することにより、高密度プラズマで高いイオン化密度を実現することができる。
【0051】
(被処理材保持装置)
被処理材保持装置は、被処理材を成膜チャンバー106内に保持する装置である。被処理材保持装置としては、被処理材を枚葉毎に設けることができる平板や、長尺フィルムを連続的に保持するドラム104(図2参照)を挙げることができる。被処理材については後述する。
【0052】
(磁場形成装置)
磁場形成装置21は、被処理材保持装置又はその近傍に設けられて、磁力線2が被処理材1の成膜面3から離れる方向(図1(A)の符号9)に向く磁場環境を形成する装置である。図2のイオンプレーティング装置101で説明すれば、図3〜図7に示すように、ドラム104上の被処理材1(長尺フィルム)の成膜面3から離れる方向9に磁力線2を形成する装置である。
【0053】
図2のイオンプレーティング装置101では、長尺のプラスチック基材1をロール・トゥ・ロールで供給するチャンバー102と、成膜を行うチャンバー106との間を仕切る仕切板109に開口部が形成され、その開口部で、成膜チャンバー106内にコーティングドラム104が露出し、コーティングドラム104の一部が曝される。コーティングドラム104で搬送されるフィルム状の被処理材(プラスチック基材)1が通過するとき、その曝された部分が成膜面3となる。露出したコーティングドラム104の周縁領域(開口部の周縁部)には、通常、図2に示すように、マスクプレート22が設けられている。後述する磁場形成装置21のうち図5〜図7に示す磁場形成装置21は、マスクプレート22に設けられた態様である。
【0054】
マスクプレート22としては、図示のように、中央に成膜面3に対応するくり抜き開口部を有する板状部材を例示でき、一般的にはステンレス鋼板等からなるものが多い。磁場形成装置21は、マスクプレート22の開口部の全周(実施例2では全周に配置しているが、図示はしていない。)に設けられていることが好ましいが、図6に示すように対向する2辺に沿って設けられていてもよい。また、磁場形成装置21は、マスクプレート22以外に設けられていてもよく、例えば、仕切板109に直接設けられていてもよいし、その他の取付治具に設けられていてもよい。
【0055】
図3〜図7に示す磁場形成装置21は、永久磁石であっても電磁石であってもよい。永久磁石としては、アルニコ磁石、フェライト磁石、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石等を挙げることができる。電磁石は、磁性材料の芯(鉄芯等)の周りにコイルを巻き、通電することによって磁力を発生させるものである。本発明では、図3〜図7に示すように、永久磁石又は電磁石のN極を成膜原料が供給される側(成膜原料供給装置側)に近い側に配置し、S極を遠い側に配置する。こうした配置により、磁力線2が被処理材1の成膜面3から離れる方向9に向く磁場環境を形成している。なお、磁場形成装置21は、イオンプレーティング装置以外のプラズマCVD装置やスパッタリング装置に対しても同様に適用できる。
【0056】
図3及び図4は、磁場形成装置21が被処理材1の成膜面3の反対面側に設けられている例である。この例では、磁場形成装置21を被処理材1の成膜面3の反対面側に設けているので、被処理材1の裏面(背面)から成膜面(表面)3の方向に磁力線2を向けることができ、磁力線2を被処理材1の成膜面3から離れる方向9に向くようにすることができる。成膜面3における磁力線2は、N極を被処理材1に近い側(成膜原料の供給側に近い側)に配置し、S極を被処理材1の遠い側(成膜原料の供給側に遠い側)に配置することにより、N極からでる磁力線2の向きを成膜面3から離れる方向9に向けている。磁力線2は永久磁石又は電磁石で構成でき、図4に示すように、複数の永久磁石又は電磁石を並設して構成できる。
【0057】
なお、図3及び図4の例では、磁場形成装置21は円筒状のコーティングドラム104内に配置されているが、その配置態様は、コーティングドラム104の回転とは連動せずに一定の位置(図3を参照)に配置する構造形態としてもよいし、円筒状のコーティングドラム104と一体化させて一緒に回転する構造形態(図4を参照)としてもよい。一体化させた構造形態としては、永久磁石又は電磁石を、円筒状のコーティングドラム104の内壁面側の円周全面がN極になるように配置し、中心側がS極になるように配置することにより構成できる。また、枚葉型のバッチ装置の場合には、被処理材1を保持する平板の裏面に磁石を設けたり、平板の内部に磁石を設けたりすることができる。
【0058】
図5及び図6は、磁場形成装置21が被処理材1の成膜面側の周縁近傍に設けられている例である。この例では、磁場形成装置21を被処理材1の成膜面側の周縁近傍に設け、具体的には、磁場形成装置21を構成する永久磁石又は電磁石のN極を、成膜面3に近い側に配置し、S極を成膜面3から離れる側に配置している。こうして、磁力線2を被処理材1の成膜面3から離れる方向9に向けている。具体的には、マスクプレート22上に、N極とS極が横方向を向くように(「成膜面と平行」ということもできる。)設けている。この場合も、磁力線は永久磁石又は電磁石で構成でき、複数の永久磁石又は電磁石を並設して構成できる。
【0059】
なお、図5及び図6の例では、磁場形成装置21をマスクプレート22に設けているが、仕切板109に直接設けてもよいし、マスクプレート22以外の他の取付治具に設けてもよい。また、「周縁近傍」とは、磁場形成装置21を被処理材に接触させない程度に近い距離で設けることを意味し、マスクプレートとして機能しない程度の大きな距離ではなく、接触する程に接近した距離でもないことを意味する。
【0060】
図7は、磁場形成装置21が被処理材1の成膜面側の周縁近傍に設けられている他の例である。この例は、図5及び図6の例と同様、磁場形成装置21を被処理材1の成膜面側の周縁近傍に設け、具体的には、磁場形成装置21を構成する永久磁石又は電磁石のN極を成膜原料の供給側に配置し、S極を成膜原料の供給側から離れる側に配置している。こうして、磁力線2を被処理材1の成膜面3から離れる方向9に向けている。具体的には、マスクプレート22上に、N極とS極が縦方向を向くように(「成膜面と垂直」ということもできる。)設けている。この場合も、磁力線は永久磁石又は電磁石で構成でき、複数の永久磁石又は電磁石を並設して構成できる。
【0061】
なお、図7の例では、磁場形成装置21をマスクプレート22に設けているが、仕切板109に直接設けてもよいし、マスクプレート22以外の他の取付治具に設けてもよい。
【0062】
以上説明した磁場形成装置21において、その磁力線の強さは、磁力線2を生じさせる永久磁石又は電磁石の磁場の強さでコントロールすることができる。永久磁石では、磁石の種類を選択して調整でき、電磁石では電流の大きさで調整できる。また、磁場の強さは、被処理材1に対するプラズマダメージを効果的に低減できることが重要であるため、どのような種類の膜を成膜するか、どの成膜手段(イオンプレーティング法、プラズマCVD法、スパッタリング法等)で成膜するか、どのような装置(成膜速度をアシストする各種の装置が取り付けられた装置)で成膜するか、等で任意に設定することが重要である。したがって、磁場の強さは一概に特定できないが、一例としては、10mT〜500mTとすることもできる。磁場が強い方がプラズマ(荷電粒子)をはね返す効果は大きいが、大きすぎると成膜原料の蒸着粒子をはね返してしまうことがあるので、その点の調整は必要となる。いずれにしても、磁力線2を被処理材1の成膜面3から離れる方向9に向けることができる磁場形成装置21を設けることにより、磁場形成装置21を設けない従来の成膜装置に比べて、被処理材1のダメージを低減して膜質を高めることができる。
【0063】
以上説明したように、本発明に係る成膜方法及び成膜装置によれば、磁力線が被処理材の成膜面から離れる方向9に向く磁場環境を形成する磁場形成装置を備えるので、その磁場形成装置で形成された磁力線が、被処理材の成膜面に向かってくる荷電粒子をはね返すように作用する。その結果、被処理材の成膜面の荷電粒子によるプラズマダメージ(プラズマ損傷;エッチング又は分解)を抑制することができる。したがって、本発明によれば、被処理材の成膜面のダメージを抑制できる磁場環境で被処理材の成膜面に成膜原料を堆積させる成膜装置であり、欠陥が少ない膜を成膜できる装置である。
【0064】
本発明に係る成膜方法及び成膜装置は、上記のようにプラズマダメージを受けやすいプラスチック基材に対して有効であるが、プラスチック基材に限らず、プラズマダメージを避けたい被処理材1上への成膜に対しても広く適用できる。例えば、薄膜トランジスタの製造工程において、プラズマ雰囲気下で絶縁膜上に半導体膜や透明導電膜を成膜する際における絶縁膜のプラズマダメージを低減することもできる。また、半導体膜上にプラズマ雰囲気で他の層を成膜する場合にも、半導体膜に対するプラズマダメージを低減できる。また、有機EL素子の製造工程において、プラズマ雰囲気下で電荷輸送層、発光層等の有機層上に各種の膜(他の有機層や導電膜等)を成膜する際における有機層プラズマダメージを低減することもできる。同様に、その他の機能素子を構成する膜の成膜時に、被処理材に対するプラズマダメージを低減できる。
【0065】
[ガスバリア膜の成膜方法及び成膜装置]
本発明に係る成膜方法と成膜装置によれば、図8及び図9に示すように、フィルム状(又はシート状)のプラスチック基材1上にガスバリア膜5を成膜してガスバリアフィルム11,11’を製造できる。こうして製造されたガスバリアフィルム11,11’は、磁力線2の向きを制御した磁場環境により荷電粒子を反発させた態様でガスバリア膜5が成膜されるので、プラスチック基材1が荷電粒子によってエッチングされたり分解されたりするのを低減できる。その結果、プラスチック基材1上に成膜したガスバリア膜5の欠陥を抑制でき、緻密でガスバリア性のよいガスバリア膜5を成膜できるという利点がある。
【0066】
図8に示すガスバリアフィルム11は、プラスチック基材1と、プラスチック基材1上に設けられたガスバリア膜5とで構成されたものであり、図9に示すガスバリアフィルム11’は、プラスチック基材1と、プラスチック基材1上に設けられた平坦化膜6と、平坦化膜6上に設けられたガスバリア膜5とで構成されたものである。これらのガスバリアフィルムは、図2に示すイオンプレーティング装置101で製造できることはもちろん、上記したプラズマCVD装置、DCスパッタリング装置、マグネトロンスパッタリング装置等の各種の装置で製造できる。
【0067】
(プラスチック基材)
プラスチック基材1は、ガスバリア膜5を成膜することができる樹脂シート又は樹脂フィルムであれば特に制限はない。プラスチック基材1の構成材料としては、例えば、環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン(APO)系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン2,6−ナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリサルホン(PS)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂、シクロポリオレフィン(CPO)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、エチレン−四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、三フッ化塩化エチレン(PFA)、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(FEP)、フッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニル(PVF)、パーフルオロ−パーフロロプロピレン−パーフロロビニルエーテル共重合体(EPA)等を挙げることができる。本発明では、プラズマ雰囲気下でのガスバリア膜5の成膜時にプラズマダメージを受けるおそれのあった樹脂基材を問題なく適用できる。
【0068】
また、上記の樹脂材料以外にも、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物よりなる樹脂組成物、上記アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物よりなる樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、メタクリレート等のオリゴマーを多官能アクリレートモノマーに溶解した樹脂組成物等の光硬化性樹脂、及びこれらの混合物等を用いることもできる。さらに、これらの樹脂の1種又は2種以上をラミネート、コーティング等の手段により積層させたものをプラスチック基材1として用いることもできる。なお、樹脂シート又は樹脂フィルム以外でも、ガラスやシリコンウエハを基材として用いることができる。
【0069】
プラスチック基材1の厚さは、3μm以上500μm以下、好ましくは12μm以上300μm以下程度であることが好ましい。この範囲内の厚さのプラスチック基材1は、フレキシブルであるとともに、ロール状に巻き取ることもできる点で好ましい。
【0070】
プラスチック基材1は、長尺材であってもよいし枚葉材であってもよいが、長尺の基材を好ましく用いることができる。長尺のプラスチック基材1の長手方向の長さは特に限定されないが、例えば10m以上の長尺フィルムが好ましく用いられる。なお、長さの上限は限定されず、例えば10km程度のものであってもよい。
【0071】
プラスチック基材1には、種々の性能確保のために添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては従来公知のものを適宜用いることができ、例えば、ブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、塩素捕獲剤等を挙げることができる。なお、プラスチック基材1を、透明性が必要とされるOLED等の発光素子の基板として用いる場合には、プラスチック基材1は無色透明であることが好ましい。より具体的には、例えば400nm〜700nmの範囲内でのプラスチック基材1の平均光透過度が80%以上の透明性を有するように構成することが好ましい。こうした光透過度はプラスチック基材1の材質と厚さに影響されるので両者を考慮して構成される。
【0072】
(平坦化膜)
ガスバリア膜5は、図8に示すようにプラスチック基材1上に直接設けてもよいが、図9に示すようにプラスチック基材1上に平坦化膜6を設け、その上にガスバリア膜5を設けてもよい。平坦化膜6をプラスチック基材1とガスバリア膜5との間に設けることにより、プラスチック基材1の表面が有する凹凸や突起をなくして平坦面にすることができるので、ガスバリア膜5の欠陥を低減でき、ガスバリア性を高めることができる。本発明によれば、この平坦化膜6に対するプラズマダメージを低減できるので、その平坦化膜6上に形成したガスバリア膜5の膜質を高めることができ、ガスバリア性を向上させることができる。
【0073】
平坦化膜6としては、従来公知のものを適宜用いればよく、その材料としては、例えば、ゾル・ゲル材料、電離放射線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、及びフォトレジスト材料等を挙げることができる。こうした有機材料で形成した平坦化膜6は、応力緩和機能も兼ね備えることから好ましい。より具体的な材料としては、アクリレートを含む高分子化合物が汎用的なものとして挙げられるが、他には、スチレン、フェノール、エポキシ、ニトリル、アクリル、アミン、エチレンイミン、エステル、シリコーン、アルキルチタネート化合物、イオン高分子錯体等、光硬化又は熱硬化性のもの、高分子化合物と金属アルコキシドの加水分解生成物の混合物等を含む、高分子化合物が適宜使用される。
【0074】
特にガスバリア機能を保持させつつ膜の形成を容易にする観点からは、電離放射線硬化型樹脂を用いることが好ましい。より具体的には、アクリレート基やエポキシ基をもつ反応性のプレポリマー、オリゴマー、及び/又は単量体を適宜混合した電離放射線硬化型樹脂;、その電離放射線硬化型樹脂に必要に応じてウレタン系、ポリエステル系、アクリル系、ブチラール系、ビニル系等の熱可塑性樹脂を混合して液状とした液状組成物のような、分子中に重合性不飽和結合を有し、紫外線(UV)や電子線(EB)を照射することにより、架橋重合反応を起こして3次元の高分子構造に変化する樹脂;を好ましく用いることができる。
【0075】
平坦化膜6は、こうした樹脂を、例えば、ロールコート法、ミヤバーコート法、及びグラビアコート法等の従来公知の塗布方法で塗布・乾燥・硬化させることにより形成することができる。また、平坦化膜6の形成材料として、ガスバリア膜5との良好な密着性を確保する観点からは、ガスバリア膜5と同じ材料系の塗膜を形成できるゾル・ゲル法を用いたゾル・ゲル材料を用いることも好ましい。ゾル・ゲル法とは、有機官能基と加水分解基を有するシランカップリング剤と、このシランカップリング剤が有する有機官能基と反応する有機官能基を有する架橋性化合物とを少なくとも原料として構成された塗料組成物の塗工方法、及び塗膜のことをいう。有機官能基と加水分解基を有するシランカップリング剤としては、従来公知のものを適宜用いることができる。また、平坦化膜6の材料として、耐熱性の観点からは、従来公知のカルドポリマーを用いることも好ましい。なお、平坦化膜6の厚さは、通常0.05μm以上、好ましくは0.1μm以上、また、通常10μm以下、好ましくは5μm以下である。
【0076】
(ガスバリア膜)
ガスバリア膜5は、プラズマ環境下で且つ上記した磁場環境下で形成された膜であれば特に限定されず、各種の材料からなるものを挙げることができる。
【0077】
具体的には、無機酸化物(MOx)膜、無機窒化物(MNy)膜、無機炭化物(MCz)膜、無機酸化炭化物(MOxCz)膜、無機窒化炭化物(MNyCz)膜、無機酸化窒化物(MOxNy)膜、及び無機酸化窒化炭化物(MOxNyCz)膜から選ばれるいずれかの膜を挙げることができる。Mとしては、珪素、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、インジウム、カルシウム、ジルコニウム、チタン、ホウ素、ハフニウム、バリウム等の金属元素を挙げることができる。Mは単体でもよいし2種以上の元素であってもよい。各無機化合物は、具体的には、酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化インジウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウム等の酸化物;窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化マグネシウム等の窒化物;炭化珪素等の炭化物;硫化物;等を挙げることができる。また、これらの無機化合物から選ばれた2種以上の複合体(酸化窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物、酸化窒化炭化物)であってもよい。また、SiOZnのように金属元素を2種以上含む複合体(酸化窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物、酸化窒化炭化物)であってもよい。
【0078】
好ましいMとしては、珪素、アルミニウム、チタン等の金属元素を挙げることができる。特にMが珪素の酸化珪素からなるガスバリア膜5は、透明で高いガスバリア性を発揮し、また、窒化珪素からなるガスバリア膜5はさらに高いガスバリア性を発揮する。特に酸化珪素と窒化珪素の複合体(無機酸化窒化物(MOxNy))であることが好ましく、酸化珪素の含有量が多いと透明性が向上し、窒化珪素の含有量が多いとガスバリア性が向上する。また、Mが珪素と亜鉛のSiOZnやMが珪素と錫のSiOSnからなるガスバリア膜5は、透明で高いガスバリア性を発揮する。
【0079】
これらのガスバリア膜5は、プラズマ環境下で、且つ上記した磁場形成装置21で形成された磁場環境下で成膜される。プラズマ環境下での成膜方法としては、DCスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、高電力パルススパッタリング法等のようにプラズマ環境下で行うスパッタリング法;イオンプレーティング法;プラズマCVD法や大気圧プラズマCVD法等のCVD法;を挙げることができる。これらの成膜方法は、成膜材料の種類、成膜のし易さ、工程効率等を考慮して選択すればよい。
【0080】
ガスバリア膜5を成膜する際のプラズマは、プラスチック基材1にダメージを与えることがある。特に、樹脂の脆性破壊、延性破壊、疲労破壊、クレーズ破壊、境界破壊、層間破壊、応力破壊、相分離破壊等のダメージを生じさせる。その原因は、プラスチック基材1の成膜面3がプラズマに直接曝されると、荷電粒子によってポリマーの分子構造が切断されることに基づくと考えられている。本発明では、磁力線2の向きを制御した磁場環境下でガスバリア膜5を成膜したとき、得られたガスバリアフィルムのガスバリア性が高まった。この結果は、制御された磁力線2が荷電粒子を反発し、その結果、プラスチック基材1が荷電粒子でエッチングされたり分解されたりするのが低減したものと考えられる。
【0081】
ガスバリア膜5の厚さは、通常10nm以上、500nm以下である。この範囲とすれば、ガスバリア性、フレキシビリティを確保しつつ、色味の調整もしやすくなり、生産性も確保しやすいという利点がある。
【0082】
(その他の膜)
ガスバリアフィルムには、上記した平坦化膜6の他、必要に応じて各種の膜を設けることができる。例えば、透明導電膜、ハードコート膜、保護膜、帯電防止膜、防汚膜、防眩膜、カラーフィルタ等から選ばれるいずれかを挙げることができる。これらのうち、透明導電膜、帯電防止膜、防汚膜、防眩膜、カラーフィルタを、ガスバリアフィルム11の構成要素として設けることが好ましい。
【0083】
上記した平坦化膜6と同様の平坦化膜をガスバリア膜5上に形成してもよい。ガスバリア膜5上に平坦化膜を形成すれば、ガスバリア膜5表面が有する凹凸や突起をなくして平坦面にすることができるので、特に有機EL素子や電子ペーパー素子等のディスプレイ用途に適用した場合に、ムラやぎらつき等をなくすことができるという利点がある。ガスバリア膜5上に形成する平坦化膜については、上記した平坦化膜6の構成(材料、成膜方法、厚さ等)と同じであるのでここではその説明は省略する。
【0084】
透明導電膜(図示しない)は、特にガスバリアフィルムを有機EL素子や電子ペーパー素子等の表示素子用途に用いる場合、ガスバリア膜5の上に設ける電極として利用することができる。透明導電膜は、特に限定されないが、その形成材料としては、インジウム−錫系酸化物(ITO)、インジウム−錫−亜鉛系酸化物(ITZO)、ZnO系、CdO系、及びSnO系等を挙げることができ、特にITO膜が好ましい。これらは、抵抗加熱蒸着法、誘導加熱蒸着法、EB蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法、及びプラズマCVD法等の真空成膜法によって形成することができる。こうした透明導電膜をプラズマ雰囲気下で設ける場合も、磁場形成装置21を備えた本発明に係る成膜装置を利用すれば、ガスバリア膜5に対するダメージを低減できるので有利である。また、透明導電膜を、金属アルコキシド等の加水分解物や、透明導電粒子と金属アルコキシド等の加水分解物を塗布して形成される無機酸化物を主成分とするコーティング膜としてもよい。
【0085】
透明導電膜の厚さは、通常10nm以上、好ましくは60nm以上、より好ましくは100nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは450nm以下、より好ましくは200nm以下とする。
【0086】
なお、上記の平坦化膜、透明導電膜以外の機能膜であるハードコート膜、保護膜、帯電防止膜、防汚膜、防眩膜、カラーフィルタ等についての説明は省略するが、それらの膜については、従来公知の技術を適用できる。また、バックカバーシートの場合においては、耐加水分解膜やシーラント膜を設けてもよい。この説明も省略するが、それらの膜についても従来公知の技術を適用できる。
【実施例】
【0087】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【0088】
[実施例1]
プラスチック基材1として長尺のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡株式会社製、厚さ100μm、商品名:A4300)を用い、そのプラスチック基材1上に、ザ・インクテック株式会社製のOELV30(商品名)を連続コーティングして厚さ5μmの平坦化膜6を形成した。最初に、平坦化膜6を形成した長尺のプラスチック基材1を図2に示すロール・トゥ・ロール対応型のイオンプレーティング装置101の真空チャンバー102内に設置した。成膜チャンバー106内の坩堝107には成膜原料24(株式会社高純度化学研究所製の蒸着材料:酸化珪素粒)を収納した。
【0089】
磁場形成装置21として、図4に示すように、円筒状のコーティングドラム104の内壁面の円周全面がN極になるようにフェライト磁石(80mT)を多数配置し、中心側がS極になるように配置した。磁場形成装置21は、コーティングドラム104と一体化しており、コーティングドラム104と一緒に回転する。この磁場形成装置21は、PETフィルムの成膜面3の反対面側に設けた態様であり、こうした配置により、PETフィルムの裏面(背面)から成膜面(表面)3の方向に磁力線2を向け、磁力線2をPETフィルムの成膜面3から離れる方向9に向くようにした。
【0090】
次に、真空引きを行って成膜チャンバー106内の真空度を9×10−4まで到達させた後、プラズマガンに昇華ガスであるアルゴンガスを12sccmと放電電力を投入して、64Aの放電電流と156Vの放電電圧を発生させ、昇華ガスをプラズマ化した。収束コイルに所定の磁場を発生させることにより、プラズマ化した昇華ガスからなるプラズマ化昇華ガス流を所定方向に曲げ、これによってプラズマ化した昇華ガスを成膜チャンバー106内の成膜材料24に向けて照射した。プラズマ化した昇華ガスによって、成膜原料24は昇華するとともにイオン化した。イオン化した成膜原料24が、プラズマダメージが低減されたPETフィルムの成膜面3に堆積することにより、厚さ83nmのガスバリア膜5を成膜した。なお、イオンプレーティングの実施時間は2.4秒間であった。sccmとはstandard cubic per minuteの略であり、以下の実施例、比較例においても同様である。こうして実施例1に係るガスバリアフィルム11’を作製した。
【0091】
得られたガスバリアフィルムについて、ガスバリア膜5の水蒸気透過率を測定したところ0.09g/m/dayであった。水蒸気透過率の測定は、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製 TERMATRAN−W3/31)を用い、温度38℃、湿度100%RHで行った。なお、全光線透過率を併せて測定したところ89%であった。全光線透過率は、スガ試験機株式会社製の装置(SMカラーコンピューターSM−C)を使用し、JIS K7105に準拠して測定した。
【0092】
[実施例2]
実施例1において、磁場形成装置21の配置を代えて成膜した他は、実施例1と同様にして実施例2のガスバリアフィルムを作製した。磁場形成装置21の配置としては、図5及び図6に示すように、PETフィルムの成膜面側の近くに設けたマスクプレート22に磁場形成装置21を設けた。この磁場形成装置21は、フェライト磁石(80mT)のN極が成膜面3に近い開口部側に向き、S極を成膜面3から離れる側に向くようにして、すなわちN極とS極が横方向を向くようにして、開口部を囲む全周に複数配置した。こうした配置により、磁力線2をPETフィルムの成膜面3から離れる方向9に向くようにした。
【0093】
得られたガスバリアフィルムのガスバリア膜5の厚さは86nmであり、その水蒸気透過率を実施例1と同様に測定したところ0.14g/m/dayであった。
【0094】
[実施例3]
実施例1において、磁場形成装置21の配置を代えて成膜した他は、実施例1と同様にして実施例3のガスバリアフィルムを作製した。磁場形成装置21の配置としては、図7に示すように、PETフィルムの成膜面側の近くに設けたマスクプレート22に磁場形成装置21を設けた。この磁場形成装置21は、フェライト磁石(80mT)が縦方向を向くように立て、そのN極が成膜原料の供給側に向き、S極が成膜原料の供給側から離れる側(すなわち成膜面側)に向くようにして、開口部を囲む全周に複数配置した。こうした配置により、磁力線2をPETフィルムの成膜面3から離れる方向9に向くようにした。
【0095】
得られたガスバリアフィルムのガスバリア膜5の厚さは90nmであり、その水蒸気透過率を実施例1と同様に測定したところ0.08g/m/dayであった。
【0096】
[実施例4]
実施例2において、120mTのフェライト磁石を同様に配置した他は実施例2と同様にして、実施例4のガスバリアフィルムを作製した。得られたガスバリアフィルムのガスバリア膜5の厚さは81nmであり、その水蒸気透過率を実施例1と同様に測定したところ0.09g/m/dayであった。
【0097】
[実施例5]
実施例2において、10mTのフェライト磁石を同様に配置した他は実施例2と同様にして、実施例4のガスバリアフィルムを作製した。得られたガスバリアフィルムのガスバリア膜5の厚さは90nmであり、その水蒸気透過率を実施例1と同様に測定したところ0.24g/m/dayであった。
【0098】
[実施例6]
実施例2と同様の装置構成と基材を用い、蒸発源としてSiONを用いたスパッタリング成膜を行った。それ以外は実施例2と同様にして実施例6のガスバリアフィルムを作製した。得られたガスバリアフィルムのガスバリア膜(SiON膜)の厚さは95nmであり、その水蒸気透過率を実施例1と同様に測定したところ0.04g/m/dayであった。また、全光線透過率を併せて測定したところ78%であった。
【0099】
[比較例1]
実施例2において、マスクプレート22に設けられた磁場形成装置21を取り除き、それ以外は実施例2と同様(65Aの放電電流、155Vの放電電圧)にして比較例1のガスバリアフィルムを作製した。得られたガスバリアフィルムのガスバリア膜5の厚さは84nmであり、その水蒸気透過率を測定したところ1.0g/m/dayであった。また、全光線透過率は89%であった。
【0100】
[比較例2]
実施例6において、磁場形成装置21を取り除き、蒸発源としてSiONを用いたスパッタリング成膜を行った。それ以外は実施例2と同様(65Aの放電電流、155Vの放電電圧)にして比較例2のガスバリアフィルムを作製した。得られたガスバリアフィルムのガスバリア膜(SiON膜)の厚さは93nmであり、その水蒸気透過率を実施例1と同様に測定したところ0.38g/m/dayであった。
【符号の説明】
【0101】
1 被処理材
2 磁力線
3 成膜面
4 荷電粒子
5 膜(ガスバリア膜)
6 平坦化膜
9 成膜面から離れる方向
11,11’ ガスバリアフィルム
21 磁石
22 マスクプレート
24 成膜原料
【0102】
101 ホローカソード型イオンプレーティング装置
102 真空チャンバー
103a 供給ロール
103b 巻き取りロール
104 コーティングドラム
105 真空排気ポンプ
106 成膜チャンバー
107 坩堝
108 アノード磁石
109 仕切り板
110 圧力勾配型プラズマガン
111 収束用コイル
112 シート化磁石
113 バルブ
114 真空排気ポンプ
116 バルブ
117 反応性ガス導入装置
118 装置筐体
119 流量調整装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ雰囲気下でイオン化した成膜原料を被処理材上に堆積させる成膜方法であって、磁力線が前記被処理材の成膜面から離れる方向に向く磁場環境を形成し、該磁場環境で前記被処理材の成膜面に前記成膜原料を堆積させることを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
前記磁力線の向きは、磁石のN極からS極に向かう磁力線の向きであって前記プラズマを構成する荷電粒子を前記成膜面から離れる方向にはね返す向きである、請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記成膜原料の堆積を、イオンプレーティング法、DCスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法及びプラズマCVD法から選ばれるいずれかで行う、請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記被処理材がプラスチック基材であり、該プラスチック基材上にガスバリア膜を成膜してなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記ガスバリア膜が、プラズマ雰囲気下で形成された無機酸化物膜、無機窒化物膜、無機炭化物膜、無機酸化炭化物膜、無機窒化炭化物膜、無機酸化窒化物膜、及び無機酸化窒化炭化物膜から選ばれるいずれかである、請求項4に記載の成膜方法。
【請求項6】
成膜チャンバー内のプラズマ雰囲気下でイオン化した成膜原料を被処理材上に堆積させる成膜装置であって、
前記被処理材を保持する被処理材保持装置と、
前記被処理材保持装置又はその近傍に設けられて、磁力線が前記被処理材の成膜面から離れる方向に向く磁場環境を形成する磁場形成装置と、
を有することを特徴とする成膜装置。
【請求項7】
前記磁場形成装置は、永久磁石又は電磁石を有し、該永久磁石又は電磁石のN極を前記成膜原料が供給される側に近い側に配置し、S極を遠い側に配置する、請求項6に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記磁場形成装置が、前記被処理材の成膜面の反対面側に設けられている、請求項7に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記磁場形成装置が、前記被処理材の成膜面側の周縁近傍に設けられている、請求項7に記載の成膜装置。
【請求項10】
イオンプレーティング装置、DCスパッタリング装置、マグネトロンスパッタリング装置及びプラズマCVD装置から選ばれる装置である、請求項6〜9のいずれか1項に記載の成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−246777(P2011−246777A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122338(P2010−122338)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】