プラズモン共鳴検出器
【課題】プラズモン共鳴吸収を有する金属構造体を用いた光学デバイス等の温度変化を検出することができるプラズモン共鳴検出器を提供する。
【解決手段】
導電性基板12、n型半導体層13、i型半導体層14、p型半導体層15、n電極(負電極)11、p電極(正電極)17、絶縁膜16等で構成されたダイオードを温度変化に伴って抵抗値が変化する半導体として用い、このダイオード上に複数の金属ナノ粒子が連結されたナノチェイン2を配置する。光が照射されると、ナノチェイン2が発熱し、ナノチェイン2で発生した熱はダイオードに伝わるが、ダイオードは温度変化によって抵抗値が変化するので、この変化を読み取り、ナノチェイン2の温度又は発熱量を測定し、プラズモン共鳴の有無や強弱を検出する。
【解決手段】
導電性基板12、n型半導体層13、i型半導体層14、p型半導体層15、n電極(負電極)11、p電極(正電極)17、絶縁膜16等で構成されたダイオードを温度変化に伴って抵抗値が変化する半導体として用い、このダイオード上に複数の金属ナノ粒子が連結されたナノチェイン2を配置する。光が照射されると、ナノチェイン2が発熱し、ナノチェイン2で発生した熱はダイオードに伝わるが、ダイオードは温度変化によって抵抗値が変化するので、この変化を読み取り、ナノチェイン2の温度又は発熱量を測定し、プラズモン共鳴の有無や強弱を検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズモン共鳴吸収を有する金属構造体を用いたプラズモン共鳴検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
微細な金属体(例えばナノメートルサイズの金属微粒子)は、その形状やサイズに応じて、可視から赤外の幅広い波長領域のうち、特定の波長領域に「局在(表面)プラズモン共鳴吸収」と称される光学応答を示しうる。局在プラズモン共鳴吸収を示す金属の例には、金、銀、および白金などの貴金属類が含まれるが、金属の種類が同じでも、サイズや形状が異なれば、局在プラズモン共鳴吸収波長も異なる。このような、微細な金属体のサイズや形状の違いによって吸収波長が変化する性質を、各種光学デバイスに応用することが試みられている。
【0003】
基板に、複数の微細な金属体を配置した金属構造体は、局在(表面)プラズモンの原理に基づいて、可視領域から赤外領域まで幅広い領域にプラズモン共鳴吸収を有しうる。このような金属構造体を、光学デバイスやセンサに応用しようとする場合には、そのプラズモン共鳴吸収の波長領域を調整することが重要である。
【0004】
また、金属構造体の表面におけるプラズモンを介した光電場増強現象により、赤外吸収が増強される現象が見いだされている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、これらのメカニズムは明らかにされているとは言えず、増強された吸収の定量的な計測方法なども確立されていない。したがって、所望の赤外領域にプラズモン共鳴周波数を有する金属構造体を作製することができれば、前述の現象を利用する光学デバイスや計測システムが構築されうる。
【0005】
前述の金属構造体が有するプラズモン共鳴吸収の波長領域は、基板上に配置された微細な金属体の「細長さ(微細な金属体がロッド状である場合は、そのアスペクト比)」に影響される。つまり、基板上に細長い(アスペクト比の高い)微細金属を配置すれば、プラズモン共鳴吸収の波長領域は長波長側にシフトし、基板上に短い(アスペクト比の低い)微細金属を配置すれば、プラズモン共鳴吸収の波長領域は短波長側にシフトする。
【0006】
一方、複数のロッド状のナノ金属(金:Au)体を、化学的に結合させて連結させる技術が知られている(例えば、非特許文献2、3参照)。これらのナノ金属体は、あくまでも金属ではない化学物質を介して結合しているのであって、厳密にはナノ金属体同士が直接連結していない金属体単体の構造であるが、長波長側のプラズモン共鳴吸収を得ることができる。
【非特許文献1】Applied Physics A,vol.29,pp.71-75(1982)
【非特許文献2】J.Phys.Chem.B,108,13066(2004)
【非特許文献3】JACS,125,13915(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前述のように、ナノ金属体を用いて光検出器や吸光度測定用デバイス等の光学デバイスを作製した場合、プラズモン共鳴吸収の有無や、プラズモン共鳴吸収の強弱を測定する場合には、顕微FT−IR測定装置等を用いる必要がある。また、ナノ金属体を用いてプラズモン共鳴センサとして利用したい場合でも、光学的に解析・分析する装置が必要であり、大型化してしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するために創案されたものであり、プラズモン共鳴吸収を有する金属構造体を用いたプラズモン共鳴を簡単な構造で検出でき、検出器を小型化することができるプラズモン共鳴検出器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、複数の金属ナノ粒子が互いに連結されたナノチェインと、前記ナノチェインが配置された測温体とを備え、前記ナノチェインのプラズモン共鳴吸収によって生ずる温度変化を、該温度変化に伴う前記測温体の電気的特性の変化により検出することを特徴とするプラズモン共鳴検出器である。
【0010】
また、請求項2記載の発明は、前記測温体は半導体で構成され、前記電気的特性は抵抗値であることを特徴とする請求項1に記載のプラズモン共鳴検出器である。
【0011】
また、請求項3記載の発明は、前記半導体は、ダイオードで構成されていることを特徴とする請求項2に記載のプラズモン共鳴検出器である。
【0012】
また、請求項4記載の発明は、前記ダイオードの電極の周りにナノチェインが配置され、前記ナノチェインを構成する金属ナノ粒子の少なくとも1つの角部が電極の方に向いていることを特徴とする請求項3に記載のプラズモン共鳴検出器である。
【0013】
また、請求項5記載の発明は、前記電極とナノチェインは非接触となるように配置されていることを特徴とする請求項4に記載のプラズモン共鳴検出器である。
【0014】
また、請求項6記載の発明は、前記半導体は、シリコン膜で構成されていることを特徴とする請求項2に記載のプラズモン共鳴検出器である。
【0015】
また、請求項7記載の発明は、前記ナノチェインを構成する金属ナノ粒子の少なくとも1つの角部が、前記シリコン膜上に配置されていることを特徴とする請求項6に記載のプラズモン共鳴検出器である。
【0016】
また、請求項8記載の発明は、前記測温体は熱電対で構成され、前記電気的特性は熱起電力であることを特徴とする請求項1に記載のプラズモン共鳴検出器である。
【0017】
また、請求項9記載の発明は、前記熱電対の測温接点を挟んでナノチェインが配置され、前記ナノチェインを構成する金属ナノ粒子の少なくとも1つの角部が測温接点の方に向いていることを特徴とする請求項8記載のプラズモン共鳴検出器である。
【0018】
また、請求項10記載の発明は、前記測温体は金属で構成され、前記電気的特性は抵抗値であることを特徴とする請求項1に記載のプラズモン共鳴検出器である。
【0019】
また、請求項11記載の発明は、前記測温体においてナノチェインが配置されている領域は、断熱材上に形成されていることを特徴とする請求項8〜請求項10のいずれか1項に記載のプラズモン共鳴検出器である。
【0020】
また、請求項12記載の発明は、前記測温体は焦電体で構成され、前記電気的特性は分極による電荷量であることを特徴とする請求項1に記載のプラズモン共鳴検出器である。
【発明の効果】
【0021】
本発明のプラズモン共鳴検出器は、温度変化に伴って電気的特性が変化する測温体にナノチェインを配置しているため、プラズモン共鳴吸収が起きてナノチェインが発熱すると、その発熱量に伴って測温体の温度が上昇する。測温体の温度が上昇すると、測温体の電気的特性(電気的パラメータ)が変化するので、プラズモン共鳴の有無及び、プラズモン共鳴の強弱(強度)を検出することができる。また、測温体の電気的特性には、抵抗値、熱起電力、分極による電荷量等を用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図1は本発明のプラズモン共鳴検出器の模式的な全体斜視図を示し、図2(a)は図1のA−A断面図を、図2(b)は図1のB−B断面図を示す。
【0023】
図1は、測温体に半導体を用いたプラズモン共鳴検出器の構成例を示す。図1に示す半導体(後述する半導体20)には、ダイオードが用いられており、温度変化に伴って電気的特性の一つである抵抗値が変化する。図1には、ダイオード上に複数の金属ナノ粒子が連結されたナノチェイン2が配置されたプラズモン共鳴検出器が示されている。ダイオードは、PIN接合型のダイオードであり、導電性基板12、n型半導体層13、i型半導体層14、p型半導体層15、n電極(負電極)11、p電極(正電極)17、絶縁膜16等で構成されている。
【0024】
導電性基板12上に、n型半導体層13、i型半導体層14、p型半導体層15が積層されて、導電性基板12の裏面にはn電極(負電極)11が、p型半導体層15上にはp電極(正電極)17が形成される。p電極17はH形状に形成されており、図2からわかるように、p電極17の一部を構成するp電極熱伝導部17aは、p型半導体層15と接触するように形成されている。またp電極熱伝導部17aが配置された領域以外のp型半導体層15上には絶縁膜16が形成されている。絶縁膜16上には、複数のナノチェイン2と、p電極熱伝導部17a以外のp電極17が配置されている。
【0025】
ナノチェイン2は、プラズモン共鳴吸収を有する金属構造体であり、図7に示されるように、複数の金属ナノ粒子がボトルネックを介して互いに連結されている。図7(a)は各金属ナノ粒子2aの平面形状が正方形に、図7(b)は各金属ナノ粒子2bの平面形状が二等辺三角形に、図7(c)は各金属ナノ粒子2cの平面形状が菱形に形成されている。このように、金属ナノ粒子は、一定の角部を備えた形状となっていることが望ましい。
【0026】
図7の(a)、(b)、(c)のうち、例えば、(a)のナノチェイン2を用いた場合で説明すると、p電極17のライン状に形成されたp電極熱伝導部17aに、ナノチェイン2の金属ナノ粒子2aの角部が向くように配置されている。一方、p電極17の端部の領域とn電極11との間には定電流源18が接続されている。
【0027】
図1のダイオードの具体的な構成の一例を示すと、導電性基板12はn型GaAs基板、n型半導体層13はn型GaAs層、i型半導体層14はノンドープのGaAs層、p型半導体層15はp型GaAs層、絶縁膜16はSiO2等で構成される。n電極11は、例えば、AuGe/Ni/Au等の金属多層膜で、p電極17は、例えば、Ti/Au等の金属多層膜で形成される。また、各半導体層のn型不純物としてはSi等が、p型不純物としてはMg等が用いられる。ダイオードはPN接合型としても良いが、本実施例のようにPIN接合型とすることにより、空乏層領域を拡大して、温度検出領域の幅を広げることができる。
【0028】
ここで、ナノチェイン2の構造について、図7を参照して詳しく説明する。図7(a)〜(c)は金属ナノ粒子の形状が異なるナノチェイン2の構造を示している。ナノチェイン2は、プラズモン共鳴吸収を有する金属構造体であり、図7(a)の場合は、複数の金属ナノ粒子2aがボトルネックを介して互いに連結されている。ここでボトルネックとは、図7(a)に示されるように、金属ナノ粒子2aの一部が重なり合って形成される部位を意味する。つまり、一のナノ粒子2aと隣接するナノ粒子2aとがわずかに重なり合うことによって、一のナノ粒子に含まれる自由電子が、隣接するナノ粒子に移動することをある程度許容することができる。以上のボトルネックに関する構造は、図7(b)の金属ナノ粒子2b、図7(c)の金属ナノ粒子2cについても同様に形成される。
【0029】
ところで、従来技術の非特許文献2、3に示されるような細長い微細金属体単体であるとマルチモードに基づく吸収が発生して、波長選択性が悪くなり、光検出器等の光学デバイスに用いる際には問題となる。しかし、図7のように、金属ナノ粒子2a〜2cを構成したナノチェインを用いると、局在プラズモンの共鳴波長を長波長側に形成することができ、かつ、マルチモードに基づく吸収を示さず(つまり、波長選択性が高い)、テラヘルツ領域の光の検出が可能となる。
【0030】
金属ナノ粒子2a〜2cの材質は、ナノ粒子とされることによって表面プラズモン吸収を生じる金属であればよく、その例には金、銀、白金などの貴金属類が含まれる。また金属ナノ粒子2a〜2cは、これらの金属によって被覆された、他の材料からなるナノ物体であってもよい。
【0031】
上述したように、ナノチェイン2は、複数の金属ナノ粒子がボトルネックを介して互いに連結されているが、複数のボトルネックがある(つまり、3以上の金属ナノ粒子が連結されている)場合は、図7に示すように、それぞれのボトルネック中心は直線上に配置されることが好ましい。ボトルネック中心は直線上に配置されている方が、それぞれのボトルネックを通じて、自由電子が微粒子間を移動しやすくなる。
【0032】
連結される金属ナノ粒子は、厚みを有しているので、3次元形状で言えば、図7(a)の形状は四角柱状、図7(b)は三角柱状、図7(c)は四角柱状である。金属ナノ粒子の形状が三角柱状又は四角柱状である場合は、その稜線同士で金属ナノ粒子が連結されることによって、ボトルネックが形成されることが好ましい。それにより、ボトルネックのネック幅を容易に小さくすることができる。
【0033】
基板に対して垂直上から見たとき、すなわち平面図では金属ナノ粒子は多角形状となって、角部を有していることが好ましい。さらに、連結される金属ナノ粒子の形状は、正方形と長方形からなる面で構成される直方体であることが好ましく、正方形の面が基板面と水平となるように配置されていることが好ましい。つまり、平面図では金属ナノ粒子は正方形と見えることが好ましい。
【0034】
連結される金属ナノ粒子の数は、2〜50程度であることが好ましい。吸収共鳴波長は金属ナノ粒子の数におよそ比例するので、連結される金属ナノ粒子の数(ボトルネックを通じる金属体の長さ)は、目的とする共鳴吸収波長に応じて適宜選択すればよい。
【0035】
連結された金属ナノ粒子における複数のボトルネックは、前述の通り、直線上に配置されていることが好ましいが、この直線上におけるナノチェイン2全体の長さXは、共鳴波長に合わせて設定する。ナノチェイン2の長さXは、連結される金属ナノ粒子のサイズ、および連結される金属ナノ粒子の数などによって調整される。当該ナノチェイン2の長さを長くすると、金属構造体のプラズモン共鳴吸収波長が長波長側にシフトする。
【0036】
上記の内容については、既出願の特願2006−182637に詳しいのであるが、プラズモン共鳴吸収波長が、特にナノチェイン2の長さXに依存することについて、以下に示す。
【0037】
まず、サファイア基板上にナノチェイン2を以下のように形成した。サファイア基板(10mm×10mm)の表面を、アセトン、メタノール、超純水の順に、それぞれ3分間の超音波洗浄をした。洗浄された基板表面に、ポジ型電子リソグラフィ用レジスト(Zep-520a;日本ゼオン株式会社社製)をスピンコート(4000rpm)して、レジスト薄膜(厚さ:200nm)を形成した。加速電圧100kVの電子ビーム露光装置を用いて、1.2μC/cm2のドーズレートで、所望のナノチェイン2のパターンを描画した。現像を30分間行い、リンスして、乾燥させた。
【0038】
次に基板上に金(Au)をスパッタリングして金属膜(40nm)を形成した。金属膜を形成された基板を、レジストリムーバー溶液中に浸漬して、超音波洗浄を行って、レジストの除去、およびリフトオフをした。
【0039】
サファイア基板上に、1から25の直方体状の金属ナノ粒子を連結させた形状を有する金属体をそれぞれ形成して、金属構造体(ナノチェイン2)を得た。金属ナノ粒子の成分は金(Au)とした。各ナノブロック状のナノチェインの各金属ナノ粒子は、基板上面からみたときに100nm×100nmの正方形であって、基板からの高さが40nmである直方体状とした。直方体の稜線で連結するボトルネックを形成し、そのボトルネックのネック幅を4.4nmとした。基板に形成された各ナノチェインの方向をそれぞれ同一として、各ナノチェインの間隔を1000nmで一定とした。
【0040】
上記の形成により得られたそれぞれの金属構造体に、顕微FT−IR測定装置を用いて、その上面から波長を660nm〜7142nm(波数15000cm−1〜1400cm−1)の光を照射し、その吸収度を測定した。得られた結果が、図8(a)および(b)に示される。図8(a)には連結された金属ナノ粒子の数nが1〜7の金属体が配置されたナノチェインのデータが、図8(b)には連結された金属ナノ粒子の数nが6〜25のナノチェインが配置された金属構造体のデータが示される。金属ナノ粒子の数nが1である金属体が配置された金属構造体のスペクトルデータは、ピークが示されていないが、これは表示範囲外(より高エネルギー側)に存在しているためである。
【0041】
図8(a)および(b)に示されるように、連結された金属ナノ粒子の数nを増やして金属体の長さXを長くするほど、スペクトルの半値幅が減少し、光子エネルギーの小さい領域の光(波長の長い光)を吸収することがわかる。これは、共鳴波長が長波長側にシフトすることによって、プラズモンの位相緩和時間が長くなるためであると考えられる。
【0042】
図8に示されるように、金属ナノ粒子を連結させた金属体を配置した金属構造体は、双極子モードのプラズモン共鳴吸収だけが観測された。これは、ボトルネックのナノコンタクトを行き来する自由電子に基づくプラズモン共鳴バンドだけが観測されるためであると推察される。
【0043】
以上のように、ナノチェイン2の長さXを変化させることにより、吸収させる光の波長を変化させることができ、これを応用することにより、波長選択性の高い光の検出が行える。
【0044】
さて、図1のプラズモン共鳴検出器では、上記のナノチェイン2が複数配置されており、各ナノチェインの長さXを変えることにより、その長さに応じたプラズモン共鳴波長の吸収が発生する。
【0045】
上述したように、ナノチェイン2の端部に存在する金属ナノ粒子2aの角部をp電極17のp電極熱伝導部17aに向けて、対向するように配置しているのは、金属ナノ粒子2a〜2cの角部が強電場領域となるので、ナノチェイン2の温度が最も上昇する領域となるからである。また、金属ナノ粒子2aの角部とp電極熱伝導部17aとは非接触となるように、所定の隙間を開けて配置される。これは、金属ナノ粒子2aの角部に形成された強電場領域を崩さないようにするためである。また、他のp電極17の領域とは異なり、p電極熱伝導部17aについては絶縁膜16上に作製するのではなく、p型半導体層16上に接して形成しているのは、空乏層になるべく熱を伝わりやすくするためである。導線で定電流源18と接続されているp電極17の電流導入領域は、例えば100nm×100nm程度の大きさに形成される。
【0046】
ここで、図1の矢印方向(上方向)から光を受光すると、各ナノチェイン2でナノチェインの長さXに対応したプラズモン共鳴吸収が起こり、各ナノチェイン2が発熱する。各ナノチェイン2で発生した熱は、ナノチェイン2の端部にある金属ナノ粒子の角部からの強い発熱を受けて、p電極17のp電極熱伝導部17aに熱が伝わり、金属で構成されるp電極熱伝導部17aからp型半導体層15、i型半導体層14等の各半導体層に伝わり、空乏層の厚さが変化するので、ダイオードの抵抗値が変化する。そこで、n電極11とp電極17との間の電圧を測定すれば、測定電圧の変化からナノチェイン2の温度変化又は発熱量変化を検出することができる。
【0047】
図5は、半導体20により温度変化を検出する基本構成を示すものである。図1の実施例では、半導体20にPIN接合型ダイオードを用いたので、それに合わせて回路を構成している。図5(a)は、定電流源を用いた検出の構成であり、図1の実施例に対応するものである。半導体20はPIN接合ダイオード、18は定電流源、19は電圧計である。なお、図1では、電圧計19は図示していないが、定電流源18と並列に接続される。
【0048】
PIN接合ダイオードには定電流源18より順方向電流Iを流しその時の電圧Vを電圧計19で読む。この電流−電圧(I−V)特性は図6に示すように温度依存性を持っている。図6のTa、Tb、Tc、Tdは、各々ダイオードの異なる温度を示し、Ta<Tb<Tc<Tdの関係が成り立っている。温度が上昇すると、一般的にダイオードの抵抗値は低下し、順方向電流は増加するため、図のように、I−V特性曲線は左側にシフトする。定電流源を用いた場合には、ある設定電流値になる電圧をVtとすると、図6の点線で示すように、温度Tが上昇すると、電圧Vtが低下するという関係がある。この温度Tと電圧Vtとの相関特性を初めに求めておくことにより、温度を知ることができる。
【0049】
図5(a)の温度検出方法では、定電流Iを流し電圧Vを読む方法としたが、図5(b)の温度検出方法のように、定電圧源を用いるようにしても良い。ここで、図1の実施例に示すPIN接合ダイオードにおいて、定電流源18の接続がなくなり、替わりにp電極17とn電極11との間に定電圧源21と電流計22が直列に接続される。そして、定電圧源21より定電圧Vをかけ、電流計22により電流Iの値を読む。この場合、ある設定電圧値になる電流をItとすると、図6の一点鎖線で示すように、温度Tが上昇すると、電流Itが増加するという関係がある。この温度Tと電流Itとの相関特性を初めに求めておくことにより、温度を知ることができる。
【0050】
以上のように、温度変化又は発熱量の変化を知れば、プラズモン共鳴吸収の大きさを検出することができる。温度変化又は発熱量の変化が大きければ、プラズモン共鳴吸収の強さも大きいことになる。
【0051】
次に、図3に、プラズモン共鳴検出器の他の構成例、すなわち温度変化に伴って、電気的特性の1つである抵抗値が変化する半導体20にシリコン膜を用いた模式的な構成例を示す。Si(シリコン)基板31上に、絶縁膜32、Si(シリコン)膜33が順に積層されている。Si(シリコン)膜33上には、既に説明したナノチェイン2が複数配置されている。また、Si膜33上には、配置されたすべてのナノチェイン2を挟むようにして、両端に電極34と電極35とが対向して設けられている。
【0052】
ここで、絶縁膜32にはSiO2等が用いられ、例えば5μmの膜厚で構成される。Si膜33は、半導体として用いるために、シリコンに少し不純物をドープしており、その膜厚は例えば100nm程度の薄膜で構成される。図3の矢印方向(上方向)から光を受光すると、各ナノチェイン2でナノチェインの長さXに対応したプラズモン共鳴吸収が起こり、各ナノチェイン2が発熱する。各ナノチェイン2で発生した熱はSi膜33に伝わり、Si膜33の温度が上昇する。Si膜33は温度が上昇すると、抵抗値が低下するという作用があり、定電圧源21を用いた場合には、抵抗値が低下すると電極34と電極35との間に流れる電流が増加するので、これを利用して温度変化の検出を行う。
【0053】
図3の構成と図5との構成を比較すると、半導体20には、PIN接合ダイオードの替わりに、低ドープSi膜33が相当し、図5(b)の定電圧源21を用いた構成に相当する。図3には、電極34と電極35の間を流れる電流を計測する電流計22は図示されていないが、電流計22は定電圧源21と直列に接続される。
【0054】
Si膜33の電流−電圧(I−V)特性は、図6と同様な温度依存性を持っている。したがって、定電圧源を用いた場合、ある設定電圧値になる電流をItとすると、図6の一点鎖線で示すように、温度Tが上昇すると、電流Itが増加するという関係がある。この温度Tと電流Itとの相関特性を初めに求めておくことにより、図1の場合と同様、温度を知ることができる。また、図1で、説明したように、5(a)のように、定電流源を用いても良い。
【0055】
図4は、図3のタイプのプラズモン共鳴検出構造を複数用いて、異なる波長λ1〜λNの光を検出しようとするものである。図4(a)に示されるように、λ1、λ2、λ3、λ4と4種類の波長を検出する光検出部が形成されており、4つの光検出部は、絶縁膜32上に形成されている。絶縁膜32はSi基板31上に積層されており、ICソケット40は、4つの光検出部の各温度を測定するための電極38と電極39とを各々4つ備えており、各電極の下には基板等に装着するためのソケットピンが形成されている。すなわち、各光検出部は1対の電極38、39と金線で接続されており、電極38、39の一方は正極に、他方は負極となる。
【0056】
また、各光検出部の拡大図を図4(b)に示す。図4(b)は、図4(a)のSで示される部分、すなわち波長λ1の光検出部を代表的に示したものであるが、他の光検出部も同様である。各光検出部は、異なるプラズモン共鳴周波数を持つように、各ナノチェインの長さXを変えて形成されている。
【0057】
低ドープ薄膜Si33上にナノチェイン2の先端部、特にナノチェイン2を構成する金属ナノ粒子2aの角部が少なくとも低ドープ薄膜Si33に重なるように配置されており、低ドープ薄膜Si33上に形成されたボンディング用パッド36は、金線37を介して電極38、39と接続されている。
【0058】
このように、少なくとも金属ナノ粒子2aの角部を低ドープ薄膜Si33に重なるように配置することにより、ナノチェイン2の強電場部、すなわち温度が最も上昇する領域を低ドープ薄膜Si33上に配置することができ、発熱を速やかに伝達することができる。以上のように構成し、1対の電極38、39の間の回路構成を図5(a)又は(b)のようにすれば、各光検出部の温度変化又は発熱量変化を低ドープ薄膜Si33の抵抗値の変化から検出することができる。そして、温度変化又は発熱量変化から、プラズモン共鳴の有無や大きさ、さらには、共鳴波長の検出を行うことができる。
【0059】
例えば、図4の上方向から光を照射すると、λ1、λ2、λ3、λ4の各波長が対応するナノチェインで共鳴吸収され、共鳴波長を検出することができる。
【0060】
次に、温度変化に伴って、電気的特性の一つである熱起電力が変化する測温体を用いたプラズモン共鳴検出器の模式的な構成例を図9に示す。図9(a)は、プラズモン共鳴検出器の全体構造を示し、図9(b)は、ナノチェイン2が配置された領域の拡大図を示す。
【0061】
基板41上に熱電対42が配置されており、熱電対42上の所定の領域には、ナノチェイン2が複数配置されている。熱電対42は、2つの異種金属膜により形成され、+脚(極)の金属膜42aには、ニッケルとクロムの合金(クロメル)、鉄又は銅、白金ロジウム合金等が用いられる。一方、−脚(極)の金属膜42bには、ニッケル合金(アルメル)、銅とニッケルの合金(コンスタンタン)、白金等が用いられる。この金属膜42a、42bは、蒸着又はスパッタにより形成される。基板41には、汎用性の高い基板、例えば、Si基板やGaAs基板等で構成される。
【0062】
図9(b)に示すように、ナノチェイン2は、測温接点となる金属膜42aと金属膜42bとの接合点を挟んで、両側に配置され、1対以上配置される。一方、図9(a)で、電圧計Vの金属膜42aにおける接続点又は金属膜42bにおける接続点は、基準接点と呼ばれる。熱電対42は、測温接点と基準接点を異なる温度にすると、金属膜42aと金属膜42bとの間に電流が流れ、熱起電力が生じる現象(ゼーベック効果)を利用した温度センサである。図9の矢印方向(上方向)から光又は電磁波を受波すると、各ナノチェイン2でナノチェインの長さXに対応したプラズモン共鳴吸収が起こり、各ナノチェイン2が発熱する。
【0063】
各ナノチェイン2の端部に存在する金属ナノ粒子2aの角部を測温接点に向けて、配置しているのは、金属ナノ粒子2a〜2cの角部が強電場領域となるので、ナノチェイン2の温度が最も上昇する領域となり、測温接点の温度変化で熱起電力が発生するからである。各ナノチェイン2の端部の端部に存在する金属ナノ粒子2aの角部から発生した熱は、測温接点に伝わり、接合部の金属膜42aと金属膜42bの温度が上昇する。このため、基準接点と測温接点で温度差が生じ、熱起電力が発生する。この熱起電力を電圧計Vや電流計等で測定すると、温度変化の検出が行える。このように、熱電対を用いたプラズモン共鳴検出器では、異なる金属の接合点における温度変化に基づいているため、局所的な温度変化の検出に好適である。
【0064】
さらに、プラズモン共鳴吸収によって発生する熱を逃がさず、測温接点に導くには、測温接点とナノチェイン2が配置されている領域を放熱性の悪い基材上に配置することが望ましい。図9では、金属膜42a及び金属膜42bの領域のうち、測温接点及びナノチェイン2が配置される金属膜領域を基板41上ではなく、断熱材43上に形成している。このようにすれば、熱の拡散を抑制することができ、測温接点に熱を集中させることができるので、高感度の検出器とすることができる。断熱材43は、樹脂絶縁層、例えばSiO2等で構成される。
【0065】
次に、温度変化に伴って、電気的特性の一つである抵抗値が変化する測温体を用いたプラズモン共鳴検出器の模式的な構成例を図10に示す。本実施例では、測温体に測温抵抗素子として知られている金属を用いる。図10(a)は、プラズモン共鳴検出器の全体構造を示し、図10(b)は、ナノチェイン2が配置された領域の拡大図を示す。
【0066】
基板51上に金属膜で構成された電極52A、52Bが配置されており、電極52A、52Bの先は、金属膜で構成された金属53を挟んで接続されている。金属53上には、ナノチェイン2が複数配置されている。金属53は、金属の抵抗値が温度に依存するという性質を利用した測温抵抗素子である。ここで、電極52A、52B、金属53等の金属薄膜は、蒸着又はスパッタにより形成される。測温抵抗素子となる金属53には、白金(Pt)、銅(Cu)、Ni(ニッケル)等が用いられる。基板51は、汎用性の高い基板、例えば、Si基板やGaAs基板等で構成される。
【0067】
図10(b)に示すように、複数又は単数のナノチェイン2が、金属53上に適宜配置される。図10の矢印方向(上方向)から光又は電磁波を受波すると、各ナノチェイン2でナノチェインの長さXに対応したプラズモン共鳴吸収が起こり、各ナノチェイン2が発熱する。各ナノチェイン2から発生した熱は、金属53に伝わり、金属53の温度が上昇する。白金(Pt)を金属53に用いた場合には、白金の電気抵抗が温度に比例して増加する。そこで、図10のように定電圧源を用いた場合、白金の抵抗値が増加すると、電極52A、52Bの間に流れる電流が減少するので、これを利用して温度変化の検出を行う。
【0068】
また、金属53を形成する領域を基板51上とせず、断熱材54上としている。これは、プラズモン共鳴吸収によって発生する熱を逃がさず、金属53に吸収させ、検出感度を上げるためである。断熱材54は、樹脂絶縁層、例えばSiO2等で構成される。
【0069】
なお、電極52A、52Bの部分をすべて、金属53の構成材料と同じにしても良い。例えば、金属53に白金を用いるのであれば、電極52A、52Bもすべて白金で構成することも可能である。しかし、この場合には、ナノチェイン2から発生した熱による温度変化だけではなく、電極52A、52Bの部分に発生した温度変化も混入するので、プラズモン共鳴検出に誤差が生じる恐れがあり、好ましくない。
【0070】
図10の構成の検出器を図9の熱電対を用いた場合と比較すると、温度変化に対する感度は高い。しかし、熱電対と比較すると熱平衡に達するための時間が長いため、応答性は遅く、表面や微小箇所の測定には好ましくないと考えられる。
【0071】
次に、焦電体を測温体として用いたプラズモン共鳴検出器の模式的な構成例を図11に示す。図11は、プラズモン共鳴検出器の全体構造を示す。電極62上に焦電体61が形成されており、焦電体61上にナノチェイン2が複数又は単数形成されている。ナノチェイン2はプラズモン共鳴吸収を行うだけでなく、電極としての機能も兼ねている。焦電体61は、焦電効果を発生させる材料で構成されている。焦電効果とは、温度変化によって分極による表面電荷が変化する現象をいう。強誘電体は必ず焦電体である。焦電体61は、例えば、強誘電体であるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)の膜を作製、その上にナノチェイン2を作製する。焦電体61には、その他の材料として半導体であるLT(タンタル酸リチウム)、LN(ニオブ酸リチウム)や強誘電率樹脂であるPVDF(ポリフッ化ポリビニリデン)等を用いることができる。
【0072】
焦電体61は、常温でも常に自発分極しているが、通常は表面にイオンを吸着しているために分極は観測されない。しかし、温度変化が加わることで分極が変化すると、表面電荷量が変化し、電圧又は電流として変化分を検出することができる。したがって、電気的特性の一つである分極による電荷量の変化から、温度変化を電流または電圧として取り出すことができる。
【0073】
最初に、焦電体61は、常温で自発分極した状態で存在している。次に、図11の矢印方向(上方向)から光又は電磁波を受波すると、各ナノチェイン2でナノチェインの長さXに対応したプラズモン共鳴吸収が起こり、各ナノチェイン2が発熱する。各ナノチェイン2から発生した熱は、焦電体61に伝導し、温度が上昇する。温度が上昇すると、焦電体61の分極状態が変化する。分極状態の変化により、例えば電荷量が小さくなると、ナノチェイン2の表面に吸着していたイオンは、電極62側のイオンと結びつくために、電流が発生して電流計Aで検出できる。温度が最初の状態に戻ると、分極の状態も最初に戻る。このようにして、温度上昇に応じて分極による電荷量も変化するので、この電荷量の変化を電流等の変化として検出する。
【0074】
以上述べたように、測温体に熱電対、金属の測温抵抗素子、焦電体等を用い、温度変化又は発熱量変化に基づく、電気的特性の熱起電力、抵抗値、分極による電荷量等の変化を検出することで、プラズモン共鳴の有無や大きさ、さらには、共鳴波長の検出を行うことができる。
【0075】
なお、ナノチェイン2の作製については、図8の説明のところで、サファイア基板上にナノチェインを形成する方法を具体的に述べているが、製造工程を簡単にまとめると以下のようになる。ナノチェイン2は、好ましくは半導体微細加工技術を用いて製造される。例えば、基板又は基材の表面にレジストをコートして、レジストに所望のナノ金属体の形状を電子線で描画し、この描画を現像してナノ金属体の形状に合わせて基板を露出させる。
【0076】
その後、現像画面上から金属をスパッタリングして金属膜を形成して、リフトオフによりレジストとともに不要な金属膜を除去して金属ナノ粒子2aが連結されたナノチェイン2が形成される。
【0077】
ナノチェインの製造方法は、例えば特願2005−080579または特願2005−258364に記載された金属構造体の製造方法と同様にして行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明のプラズモン共鳴検出器の構造例を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A断面及びB−B断面を示す断面図である。
【図3】本発明のプラズモン共鳴検出器の他の構造例を示す斜視図である。
【図4】図3のプラズモン共鳴検出構造を複数配置したプラズモン共鳴検出器の構造例を示す斜視図である。
【図5】温度検出の回路構成例を示す図である。
【図6】ダイオードの温度をパラメータとするI−V特性を示す図である。
【図7】ナノチェインを用いた光検出部の構成例を示す図である。
【図8】ナノチェインを用いた場合の金属ナノ粒子数とピーク波長との関係を示す図である。
【図9】本発明のプラズモン共鳴検出器の他の構造例を示す斜視図である。
【図10】本発明のプラズモン共鳴検出器の他の構造例を示す斜視図である。
【図11】本発明のプラズモン共鳴検出器の他の構造例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0079】
11 n電極
12 導電性基板
13 n型半導体層
14 i型半導体層
15 p型半導体層
16 絶縁膜
17 p電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズモン共鳴吸収を有する金属構造体を用いたプラズモン共鳴検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
微細な金属体(例えばナノメートルサイズの金属微粒子)は、その形状やサイズに応じて、可視から赤外の幅広い波長領域のうち、特定の波長領域に「局在(表面)プラズモン共鳴吸収」と称される光学応答を示しうる。局在プラズモン共鳴吸収を示す金属の例には、金、銀、および白金などの貴金属類が含まれるが、金属の種類が同じでも、サイズや形状が異なれば、局在プラズモン共鳴吸収波長も異なる。このような、微細な金属体のサイズや形状の違いによって吸収波長が変化する性質を、各種光学デバイスに応用することが試みられている。
【0003】
基板に、複数の微細な金属体を配置した金属構造体は、局在(表面)プラズモンの原理に基づいて、可視領域から赤外領域まで幅広い領域にプラズモン共鳴吸収を有しうる。このような金属構造体を、光学デバイスやセンサに応用しようとする場合には、そのプラズモン共鳴吸収の波長領域を調整することが重要である。
【0004】
また、金属構造体の表面におけるプラズモンを介した光電場増強現象により、赤外吸収が増強される現象が見いだされている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、これらのメカニズムは明らかにされているとは言えず、増強された吸収の定量的な計測方法なども確立されていない。したがって、所望の赤外領域にプラズモン共鳴周波数を有する金属構造体を作製することができれば、前述の現象を利用する光学デバイスや計測システムが構築されうる。
【0005】
前述の金属構造体が有するプラズモン共鳴吸収の波長領域は、基板上に配置された微細な金属体の「細長さ(微細な金属体がロッド状である場合は、そのアスペクト比)」に影響される。つまり、基板上に細長い(アスペクト比の高い)微細金属を配置すれば、プラズモン共鳴吸収の波長領域は長波長側にシフトし、基板上に短い(アスペクト比の低い)微細金属を配置すれば、プラズモン共鳴吸収の波長領域は短波長側にシフトする。
【0006】
一方、複数のロッド状のナノ金属(金:Au)体を、化学的に結合させて連結させる技術が知られている(例えば、非特許文献2、3参照)。これらのナノ金属体は、あくまでも金属ではない化学物質を介して結合しているのであって、厳密にはナノ金属体同士が直接連結していない金属体単体の構造であるが、長波長側のプラズモン共鳴吸収を得ることができる。
【非特許文献1】Applied Physics A,vol.29,pp.71-75(1982)
【非特許文献2】J.Phys.Chem.B,108,13066(2004)
【非特許文献3】JACS,125,13915(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前述のように、ナノ金属体を用いて光検出器や吸光度測定用デバイス等の光学デバイスを作製した場合、プラズモン共鳴吸収の有無や、プラズモン共鳴吸収の強弱を測定する場合には、顕微FT−IR測定装置等を用いる必要がある。また、ナノ金属体を用いてプラズモン共鳴センサとして利用したい場合でも、光学的に解析・分析する装置が必要であり、大型化してしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するために創案されたものであり、プラズモン共鳴吸収を有する金属構造体を用いたプラズモン共鳴を簡単な構造で検出でき、検出器を小型化することができるプラズモン共鳴検出器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、複数の金属ナノ粒子が互いに連結されたナノチェインと、前記ナノチェインが配置された測温体とを備え、前記ナノチェインのプラズモン共鳴吸収によって生ずる温度変化を、該温度変化に伴う前記測温体の電気的特性の変化により検出することを特徴とするプラズモン共鳴検出器である。
【0010】
また、請求項2記載の発明は、前記測温体は半導体で構成され、前記電気的特性は抵抗値であることを特徴とする請求項1に記載のプラズモン共鳴検出器である。
【0011】
また、請求項3記載の発明は、前記半導体は、ダイオードで構成されていることを特徴とする請求項2に記載のプラズモン共鳴検出器である。
【0012】
また、請求項4記載の発明は、前記ダイオードの電極の周りにナノチェインが配置され、前記ナノチェインを構成する金属ナノ粒子の少なくとも1つの角部が電極の方に向いていることを特徴とする請求項3に記載のプラズモン共鳴検出器である。
【0013】
また、請求項5記載の発明は、前記電極とナノチェインは非接触となるように配置されていることを特徴とする請求項4に記載のプラズモン共鳴検出器である。
【0014】
また、請求項6記載の発明は、前記半導体は、シリコン膜で構成されていることを特徴とする請求項2に記載のプラズモン共鳴検出器である。
【0015】
また、請求項7記載の発明は、前記ナノチェインを構成する金属ナノ粒子の少なくとも1つの角部が、前記シリコン膜上に配置されていることを特徴とする請求項6に記載のプラズモン共鳴検出器である。
【0016】
また、請求項8記載の発明は、前記測温体は熱電対で構成され、前記電気的特性は熱起電力であることを特徴とする請求項1に記載のプラズモン共鳴検出器である。
【0017】
また、請求項9記載の発明は、前記熱電対の測温接点を挟んでナノチェインが配置され、前記ナノチェインを構成する金属ナノ粒子の少なくとも1つの角部が測温接点の方に向いていることを特徴とする請求項8記載のプラズモン共鳴検出器である。
【0018】
また、請求項10記載の発明は、前記測温体は金属で構成され、前記電気的特性は抵抗値であることを特徴とする請求項1に記載のプラズモン共鳴検出器である。
【0019】
また、請求項11記載の発明は、前記測温体においてナノチェインが配置されている領域は、断熱材上に形成されていることを特徴とする請求項8〜請求項10のいずれか1項に記載のプラズモン共鳴検出器である。
【0020】
また、請求項12記載の発明は、前記測温体は焦電体で構成され、前記電気的特性は分極による電荷量であることを特徴とする請求項1に記載のプラズモン共鳴検出器である。
【発明の効果】
【0021】
本発明のプラズモン共鳴検出器は、温度変化に伴って電気的特性が変化する測温体にナノチェインを配置しているため、プラズモン共鳴吸収が起きてナノチェインが発熱すると、その発熱量に伴って測温体の温度が上昇する。測温体の温度が上昇すると、測温体の電気的特性(電気的パラメータ)が変化するので、プラズモン共鳴の有無及び、プラズモン共鳴の強弱(強度)を検出することができる。また、測温体の電気的特性には、抵抗値、熱起電力、分極による電荷量等を用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図1は本発明のプラズモン共鳴検出器の模式的な全体斜視図を示し、図2(a)は図1のA−A断面図を、図2(b)は図1のB−B断面図を示す。
【0023】
図1は、測温体に半導体を用いたプラズモン共鳴検出器の構成例を示す。図1に示す半導体(後述する半導体20)には、ダイオードが用いられており、温度変化に伴って電気的特性の一つである抵抗値が変化する。図1には、ダイオード上に複数の金属ナノ粒子が連結されたナノチェイン2が配置されたプラズモン共鳴検出器が示されている。ダイオードは、PIN接合型のダイオードであり、導電性基板12、n型半導体層13、i型半導体層14、p型半導体層15、n電極(負電極)11、p電極(正電極)17、絶縁膜16等で構成されている。
【0024】
導電性基板12上に、n型半導体層13、i型半導体層14、p型半導体層15が積層されて、導電性基板12の裏面にはn電極(負電極)11が、p型半導体層15上にはp電極(正電極)17が形成される。p電極17はH形状に形成されており、図2からわかるように、p電極17の一部を構成するp電極熱伝導部17aは、p型半導体層15と接触するように形成されている。またp電極熱伝導部17aが配置された領域以外のp型半導体層15上には絶縁膜16が形成されている。絶縁膜16上には、複数のナノチェイン2と、p電極熱伝導部17a以外のp電極17が配置されている。
【0025】
ナノチェイン2は、プラズモン共鳴吸収を有する金属構造体であり、図7に示されるように、複数の金属ナノ粒子がボトルネックを介して互いに連結されている。図7(a)は各金属ナノ粒子2aの平面形状が正方形に、図7(b)は各金属ナノ粒子2bの平面形状が二等辺三角形に、図7(c)は各金属ナノ粒子2cの平面形状が菱形に形成されている。このように、金属ナノ粒子は、一定の角部を備えた形状となっていることが望ましい。
【0026】
図7の(a)、(b)、(c)のうち、例えば、(a)のナノチェイン2を用いた場合で説明すると、p電極17のライン状に形成されたp電極熱伝導部17aに、ナノチェイン2の金属ナノ粒子2aの角部が向くように配置されている。一方、p電極17の端部の領域とn電極11との間には定電流源18が接続されている。
【0027】
図1のダイオードの具体的な構成の一例を示すと、導電性基板12はn型GaAs基板、n型半導体層13はn型GaAs層、i型半導体層14はノンドープのGaAs層、p型半導体層15はp型GaAs層、絶縁膜16はSiO2等で構成される。n電極11は、例えば、AuGe/Ni/Au等の金属多層膜で、p電極17は、例えば、Ti/Au等の金属多層膜で形成される。また、各半導体層のn型不純物としてはSi等が、p型不純物としてはMg等が用いられる。ダイオードはPN接合型としても良いが、本実施例のようにPIN接合型とすることにより、空乏層領域を拡大して、温度検出領域の幅を広げることができる。
【0028】
ここで、ナノチェイン2の構造について、図7を参照して詳しく説明する。図7(a)〜(c)は金属ナノ粒子の形状が異なるナノチェイン2の構造を示している。ナノチェイン2は、プラズモン共鳴吸収を有する金属構造体であり、図7(a)の場合は、複数の金属ナノ粒子2aがボトルネックを介して互いに連結されている。ここでボトルネックとは、図7(a)に示されるように、金属ナノ粒子2aの一部が重なり合って形成される部位を意味する。つまり、一のナノ粒子2aと隣接するナノ粒子2aとがわずかに重なり合うことによって、一のナノ粒子に含まれる自由電子が、隣接するナノ粒子に移動することをある程度許容することができる。以上のボトルネックに関する構造は、図7(b)の金属ナノ粒子2b、図7(c)の金属ナノ粒子2cについても同様に形成される。
【0029】
ところで、従来技術の非特許文献2、3に示されるような細長い微細金属体単体であるとマルチモードに基づく吸収が発生して、波長選択性が悪くなり、光検出器等の光学デバイスに用いる際には問題となる。しかし、図7のように、金属ナノ粒子2a〜2cを構成したナノチェインを用いると、局在プラズモンの共鳴波長を長波長側に形成することができ、かつ、マルチモードに基づく吸収を示さず(つまり、波長選択性が高い)、テラヘルツ領域の光の検出が可能となる。
【0030】
金属ナノ粒子2a〜2cの材質は、ナノ粒子とされることによって表面プラズモン吸収を生じる金属であればよく、その例には金、銀、白金などの貴金属類が含まれる。また金属ナノ粒子2a〜2cは、これらの金属によって被覆された、他の材料からなるナノ物体であってもよい。
【0031】
上述したように、ナノチェイン2は、複数の金属ナノ粒子がボトルネックを介して互いに連結されているが、複数のボトルネックがある(つまり、3以上の金属ナノ粒子が連結されている)場合は、図7に示すように、それぞれのボトルネック中心は直線上に配置されることが好ましい。ボトルネック中心は直線上に配置されている方が、それぞれのボトルネックを通じて、自由電子が微粒子間を移動しやすくなる。
【0032】
連結される金属ナノ粒子は、厚みを有しているので、3次元形状で言えば、図7(a)の形状は四角柱状、図7(b)は三角柱状、図7(c)は四角柱状である。金属ナノ粒子の形状が三角柱状又は四角柱状である場合は、その稜線同士で金属ナノ粒子が連結されることによって、ボトルネックが形成されることが好ましい。それにより、ボトルネックのネック幅を容易に小さくすることができる。
【0033】
基板に対して垂直上から見たとき、すなわち平面図では金属ナノ粒子は多角形状となって、角部を有していることが好ましい。さらに、連結される金属ナノ粒子の形状は、正方形と長方形からなる面で構成される直方体であることが好ましく、正方形の面が基板面と水平となるように配置されていることが好ましい。つまり、平面図では金属ナノ粒子は正方形と見えることが好ましい。
【0034】
連結される金属ナノ粒子の数は、2〜50程度であることが好ましい。吸収共鳴波長は金属ナノ粒子の数におよそ比例するので、連結される金属ナノ粒子の数(ボトルネックを通じる金属体の長さ)は、目的とする共鳴吸収波長に応じて適宜選択すればよい。
【0035】
連結された金属ナノ粒子における複数のボトルネックは、前述の通り、直線上に配置されていることが好ましいが、この直線上におけるナノチェイン2全体の長さXは、共鳴波長に合わせて設定する。ナノチェイン2の長さXは、連結される金属ナノ粒子のサイズ、および連結される金属ナノ粒子の数などによって調整される。当該ナノチェイン2の長さを長くすると、金属構造体のプラズモン共鳴吸収波長が長波長側にシフトする。
【0036】
上記の内容については、既出願の特願2006−182637に詳しいのであるが、プラズモン共鳴吸収波長が、特にナノチェイン2の長さXに依存することについて、以下に示す。
【0037】
まず、サファイア基板上にナノチェイン2を以下のように形成した。サファイア基板(10mm×10mm)の表面を、アセトン、メタノール、超純水の順に、それぞれ3分間の超音波洗浄をした。洗浄された基板表面に、ポジ型電子リソグラフィ用レジスト(Zep-520a;日本ゼオン株式会社社製)をスピンコート(4000rpm)して、レジスト薄膜(厚さ:200nm)を形成した。加速電圧100kVの電子ビーム露光装置を用いて、1.2μC/cm2のドーズレートで、所望のナノチェイン2のパターンを描画した。現像を30分間行い、リンスして、乾燥させた。
【0038】
次に基板上に金(Au)をスパッタリングして金属膜(40nm)を形成した。金属膜を形成された基板を、レジストリムーバー溶液中に浸漬して、超音波洗浄を行って、レジストの除去、およびリフトオフをした。
【0039】
サファイア基板上に、1から25の直方体状の金属ナノ粒子を連結させた形状を有する金属体をそれぞれ形成して、金属構造体(ナノチェイン2)を得た。金属ナノ粒子の成分は金(Au)とした。各ナノブロック状のナノチェインの各金属ナノ粒子は、基板上面からみたときに100nm×100nmの正方形であって、基板からの高さが40nmである直方体状とした。直方体の稜線で連結するボトルネックを形成し、そのボトルネックのネック幅を4.4nmとした。基板に形成された各ナノチェインの方向をそれぞれ同一として、各ナノチェインの間隔を1000nmで一定とした。
【0040】
上記の形成により得られたそれぞれの金属構造体に、顕微FT−IR測定装置を用いて、その上面から波長を660nm〜7142nm(波数15000cm−1〜1400cm−1)の光を照射し、その吸収度を測定した。得られた結果が、図8(a)および(b)に示される。図8(a)には連結された金属ナノ粒子の数nが1〜7の金属体が配置されたナノチェインのデータが、図8(b)には連結された金属ナノ粒子の数nが6〜25のナノチェインが配置された金属構造体のデータが示される。金属ナノ粒子の数nが1である金属体が配置された金属構造体のスペクトルデータは、ピークが示されていないが、これは表示範囲外(より高エネルギー側)に存在しているためである。
【0041】
図8(a)および(b)に示されるように、連結された金属ナノ粒子の数nを増やして金属体の長さXを長くするほど、スペクトルの半値幅が減少し、光子エネルギーの小さい領域の光(波長の長い光)を吸収することがわかる。これは、共鳴波長が長波長側にシフトすることによって、プラズモンの位相緩和時間が長くなるためであると考えられる。
【0042】
図8に示されるように、金属ナノ粒子を連結させた金属体を配置した金属構造体は、双極子モードのプラズモン共鳴吸収だけが観測された。これは、ボトルネックのナノコンタクトを行き来する自由電子に基づくプラズモン共鳴バンドだけが観測されるためであると推察される。
【0043】
以上のように、ナノチェイン2の長さXを変化させることにより、吸収させる光の波長を変化させることができ、これを応用することにより、波長選択性の高い光の検出が行える。
【0044】
さて、図1のプラズモン共鳴検出器では、上記のナノチェイン2が複数配置されており、各ナノチェインの長さXを変えることにより、その長さに応じたプラズモン共鳴波長の吸収が発生する。
【0045】
上述したように、ナノチェイン2の端部に存在する金属ナノ粒子2aの角部をp電極17のp電極熱伝導部17aに向けて、対向するように配置しているのは、金属ナノ粒子2a〜2cの角部が強電場領域となるので、ナノチェイン2の温度が最も上昇する領域となるからである。また、金属ナノ粒子2aの角部とp電極熱伝導部17aとは非接触となるように、所定の隙間を開けて配置される。これは、金属ナノ粒子2aの角部に形成された強電場領域を崩さないようにするためである。また、他のp電極17の領域とは異なり、p電極熱伝導部17aについては絶縁膜16上に作製するのではなく、p型半導体層16上に接して形成しているのは、空乏層になるべく熱を伝わりやすくするためである。導線で定電流源18と接続されているp電極17の電流導入領域は、例えば100nm×100nm程度の大きさに形成される。
【0046】
ここで、図1の矢印方向(上方向)から光を受光すると、各ナノチェイン2でナノチェインの長さXに対応したプラズモン共鳴吸収が起こり、各ナノチェイン2が発熱する。各ナノチェイン2で発生した熱は、ナノチェイン2の端部にある金属ナノ粒子の角部からの強い発熱を受けて、p電極17のp電極熱伝導部17aに熱が伝わり、金属で構成されるp電極熱伝導部17aからp型半導体層15、i型半導体層14等の各半導体層に伝わり、空乏層の厚さが変化するので、ダイオードの抵抗値が変化する。そこで、n電極11とp電極17との間の電圧を測定すれば、測定電圧の変化からナノチェイン2の温度変化又は発熱量変化を検出することができる。
【0047】
図5は、半導体20により温度変化を検出する基本構成を示すものである。図1の実施例では、半導体20にPIN接合型ダイオードを用いたので、それに合わせて回路を構成している。図5(a)は、定電流源を用いた検出の構成であり、図1の実施例に対応するものである。半導体20はPIN接合ダイオード、18は定電流源、19は電圧計である。なお、図1では、電圧計19は図示していないが、定電流源18と並列に接続される。
【0048】
PIN接合ダイオードには定電流源18より順方向電流Iを流しその時の電圧Vを電圧計19で読む。この電流−電圧(I−V)特性は図6に示すように温度依存性を持っている。図6のTa、Tb、Tc、Tdは、各々ダイオードの異なる温度を示し、Ta<Tb<Tc<Tdの関係が成り立っている。温度が上昇すると、一般的にダイオードの抵抗値は低下し、順方向電流は増加するため、図のように、I−V特性曲線は左側にシフトする。定電流源を用いた場合には、ある設定電流値になる電圧をVtとすると、図6の点線で示すように、温度Tが上昇すると、電圧Vtが低下するという関係がある。この温度Tと電圧Vtとの相関特性を初めに求めておくことにより、温度を知ることができる。
【0049】
図5(a)の温度検出方法では、定電流Iを流し電圧Vを読む方法としたが、図5(b)の温度検出方法のように、定電圧源を用いるようにしても良い。ここで、図1の実施例に示すPIN接合ダイオードにおいて、定電流源18の接続がなくなり、替わりにp電極17とn電極11との間に定電圧源21と電流計22が直列に接続される。そして、定電圧源21より定電圧Vをかけ、電流計22により電流Iの値を読む。この場合、ある設定電圧値になる電流をItとすると、図6の一点鎖線で示すように、温度Tが上昇すると、電流Itが増加するという関係がある。この温度Tと電流Itとの相関特性を初めに求めておくことにより、温度を知ることができる。
【0050】
以上のように、温度変化又は発熱量の変化を知れば、プラズモン共鳴吸収の大きさを検出することができる。温度変化又は発熱量の変化が大きければ、プラズモン共鳴吸収の強さも大きいことになる。
【0051】
次に、図3に、プラズモン共鳴検出器の他の構成例、すなわち温度変化に伴って、電気的特性の1つである抵抗値が変化する半導体20にシリコン膜を用いた模式的な構成例を示す。Si(シリコン)基板31上に、絶縁膜32、Si(シリコン)膜33が順に積層されている。Si(シリコン)膜33上には、既に説明したナノチェイン2が複数配置されている。また、Si膜33上には、配置されたすべてのナノチェイン2を挟むようにして、両端に電極34と電極35とが対向して設けられている。
【0052】
ここで、絶縁膜32にはSiO2等が用いられ、例えば5μmの膜厚で構成される。Si膜33は、半導体として用いるために、シリコンに少し不純物をドープしており、その膜厚は例えば100nm程度の薄膜で構成される。図3の矢印方向(上方向)から光を受光すると、各ナノチェイン2でナノチェインの長さXに対応したプラズモン共鳴吸収が起こり、各ナノチェイン2が発熱する。各ナノチェイン2で発生した熱はSi膜33に伝わり、Si膜33の温度が上昇する。Si膜33は温度が上昇すると、抵抗値が低下するという作用があり、定電圧源21を用いた場合には、抵抗値が低下すると電極34と電極35との間に流れる電流が増加するので、これを利用して温度変化の検出を行う。
【0053】
図3の構成と図5との構成を比較すると、半導体20には、PIN接合ダイオードの替わりに、低ドープSi膜33が相当し、図5(b)の定電圧源21を用いた構成に相当する。図3には、電極34と電極35の間を流れる電流を計測する電流計22は図示されていないが、電流計22は定電圧源21と直列に接続される。
【0054】
Si膜33の電流−電圧(I−V)特性は、図6と同様な温度依存性を持っている。したがって、定電圧源を用いた場合、ある設定電圧値になる電流をItとすると、図6の一点鎖線で示すように、温度Tが上昇すると、電流Itが増加するという関係がある。この温度Tと電流Itとの相関特性を初めに求めておくことにより、図1の場合と同様、温度を知ることができる。また、図1で、説明したように、5(a)のように、定電流源を用いても良い。
【0055】
図4は、図3のタイプのプラズモン共鳴検出構造を複数用いて、異なる波長λ1〜λNの光を検出しようとするものである。図4(a)に示されるように、λ1、λ2、λ3、λ4と4種類の波長を検出する光検出部が形成されており、4つの光検出部は、絶縁膜32上に形成されている。絶縁膜32はSi基板31上に積層されており、ICソケット40は、4つの光検出部の各温度を測定するための電極38と電極39とを各々4つ備えており、各電極の下には基板等に装着するためのソケットピンが形成されている。すなわち、各光検出部は1対の電極38、39と金線で接続されており、電極38、39の一方は正極に、他方は負極となる。
【0056】
また、各光検出部の拡大図を図4(b)に示す。図4(b)は、図4(a)のSで示される部分、すなわち波長λ1の光検出部を代表的に示したものであるが、他の光検出部も同様である。各光検出部は、異なるプラズモン共鳴周波数を持つように、各ナノチェインの長さXを変えて形成されている。
【0057】
低ドープ薄膜Si33上にナノチェイン2の先端部、特にナノチェイン2を構成する金属ナノ粒子2aの角部が少なくとも低ドープ薄膜Si33に重なるように配置されており、低ドープ薄膜Si33上に形成されたボンディング用パッド36は、金線37を介して電極38、39と接続されている。
【0058】
このように、少なくとも金属ナノ粒子2aの角部を低ドープ薄膜Si33に重なるように配置することにより、ナノチェイン2の強電場部、すなわち温度が最も上昇する領域を低ドープ薄膜Si33上に配置することができ、発熱を速やかに伝達することができる。以上のように構成し、1対の電極38、39の間の回路構成を図5(a)又は(b)のようにすれば、各光検出部の温度変化又は発熱量変化を低ドープ薄膜Si33の抵抗値の変化から検出することができる。そして、温度変化又は発熱量変化から、プラズモン共鳴の有無や大きさ、さらには、共鳴波長の検出を行うことができる。
【0059】
例えば、図4の上方向から光を照射すると、λ1、λ2、λ3、λ4の各波長が対応するナノチェインで共鳴吸収され、共鳴波長を検出することができる。
【0060】
次に、温度変化に伴って、電気的特性の一つである熱起電力が変化する測温体を用いたプラズモン共鳴検出器の模式的な構成例を図9に示す。図9(a)は、プラズモン共鳴検出器の全体構造を示し、図9(b)は、ナノチェイン2が配置された領域の拡大図を示す。
【0061】
基板41上に熱電対42が配置されており、熱電対42上の所定の領域には、ナノチェイン2が複数配置されている。熱電対42は、2つの異種金属膜により形成され、+脚(極)の金属膜42aには、ニッケルとクロムの合金(クロメル)、鉄又は銅、白金ロジウム合金等が用いられる。一方、−脚(極)の金属膜42bには、ニッケル合金(アルメル)、銅とニッケルの合金(コンスタンタン)、白金等が用いられる。この金属膜42a、42bは、蒸着又はスパッタにより形成される。基板41には、汎用性の高い基板、例えば、Si基板やGaAs基板等で構成される。
【0062】
図9(b)に示すように、ナノチェイン2は、測温接点となる金属膜42aと金属膜42bとの接合点を挟んで、両側に配置され、1対以上配置される。一方、図9(a)で、電圧計Vの金属膜42aにおける接続点又は金属膜42bにおける接続点は、基準接点と呼ばれる。熱電対42は、測温接点と基準接点を異なる温度にすると、金属膜42aと金属膜42bとの間に電流が流れ、熱起電力が生じる現象(ゼーベック効果)を利用した温度センサである。図9の矢印方向(上方向)から光又は電磁波を受波すると、各ナノチェイン2でナノチェインの長さXに対応したプラズモン共鳴吸収が起こり、各ナノチェイン2が発熱する。
【0063】
各ナノチェイン2の端部に存在する金属ナノ粒子2aの角部を測温接点に向けて、配置しているのは、金属ナノ粒子2a〜2cの角部が強電場領域となるので、ナノチェイン2の温度が最も上昇する領域となり、測温接点の温度変化で熱起電力が発生するからである。各ナノチェイン2の端部の端部に存在する金属ナノ粒子2aの角部から発生した熱は、測温接点に伝わり、接合部の金属膜42aと金属膜42bの温度が上昇する。このため、基準接点と測温接点で温度差が生じ、熱起電力が発生する。この熱起電力を電圧計Vや電流計等で測定すると、温度変化の検出が行える。このように、熱電対を用いたプラズモン共鳴検出器では、異なる金属の接合点における温度変化に基づいているため、局所的な温度変化の検出に好適である。
【0064】
さらに、プラズモン共鳴吸収によって発生する熱を逃がさず、測温接点に導くには、測温接点とナノチェイン2が配置されている領域を放熱性の悪い基材上に配置することが望ましい。図9では、金属膜42a及び金属膜42bの領域のうち、測温接点及びナノチェイン2が配置される金属膜領域を基板41上ではなく、断熱材43上に形成している。このようにすれば、熱の拡散を抑制することができ、測温接点に熱を集中させることができるので、高感度の検出器とすることができる。断熱材43は、樹脂絶縁層、例えばSiO2等で構成される。
【0065】
次に、温度変化に伴って、電気的特性の一つである抵抗値が変化する測温体を用いたプラズモン共鳴検出器の模式的な構成例を図10に示す。本実施例では、測温体に測温抵抗素子として知られている金属を用いる。図10(a)は、プラズモン共鳴検出器の全体構造を示し、図10(b)は、ナノチェイン2が配置された領域の拡大図を示す。
【0066】
基板51上に金属膜で構成された電極52A、52Bが配置されており、電極52A、52Bの先は、金属膜で構成された金属53を挟んで接続されている。金属53上には、ナノチェイン2が複数配置されている。金属53は、金属の抵抗値が温度に依存するという性質を利用した測温抵抗素子である。ここで、電極52A、52B、金属53等の金属薄膜は、蒸着又はスパッタにより形成される。測温抵抗素子となる金属53には、白金(Pt)、銅(Cu)、Ni(ニッケル)等が用いられる。基板51は、汎用性の高い基板、例えば、Si基板やGaAs基板等で構成される。
【0067】
図10(b)に示すように、複数又は単数のナノチェイン2が、金属53上に適宜配置される。図10の矢印方向(上方向)から光又は電磁波を受波すると、各ナノチェイン2でナノチェインの長さXに対応したプラズモン共鳴吸収が起こり、各ナノチェイン2が発熱する。各ナノチェイン2から発生した熱は、金属53に伝わり、金属53の温度が上昇する。白金(Pt)を金属53に用いた場合には、白金の電気抵抗が温度に比例して増加する。そこで、図10のように定電圧源を用いた場合、白金の抵抗値が増加すると、電極52A、52Bの間に流れる電流が減少するので、これを利用して温度変化の検出を行う。
【0068】
また、金属53を形成する領域を基板51上とせず、断熱材54上としている。これは、プラズモン共鳴吸収によって発生する熱を逃がさず、金属53に吸収させ、検出感度を上げるためである。断熱材54は、樹脂絶縁層、例えばSiO2等で構成される。
【0069】
なお、電極52A、52Bの部分をすべて、金属53の構成材料と同じにしても良い。例えば、金属53に白金を用いるのであれば、電極52A、52Bもすべて白金で構成することも可能である。しかし、この場合には、ナノチェイン2から発生した熱による温度変化だけではなく、電極52A、52Bの部分に発生した温度変化も混入するので、プラズモン共鳴検出に誤差が生じる恐れがあり、好ましくない。
【0070】
図10の構成の検出器を図9の熱電対を用いた場合と比較すると、温度変化に対する感度は高い。しかし、熱電対と比較すると熱平衡に達するための時間が長いため、応答性は遅く、表面や微小箇所の測定には好ましくないと考えられる。
【0071】
次に、焦電体を測温体として用いたプラズモン共鳴検出器の模式的な構成例を図11に示す。図11は、プラズモン共鳴検出器の全体構造を示す。電極62上に焦電体61が形成されており、焦電体61上にナノチェイン2が複数又は単数形成されている。ナノチェイン2はプラズモン共鳴吸収を行うだけでなく、電極としての機能も兼ねている。焦電体61は、焦電効果を発生させる材料で構成されている。焦電効果とは、温度変化によって分極による表面電荷が変化する現象をいう。強誘電体は必ず焦電体である。焦電体61は、例えば、強誘電体であるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)の膜を作製、その上にナノチェイン2を作製する。焦電体61には、その他の材料として半導体であるLT(タンタル酸リチウム)、LN(ニオブ酸リチウム)や強誘電率樹脂であるPVDF(ポリフッ化ポリビニリデン)等を用いることができる。
【0072】
焦電体61は、常温でも常に自発分極しているが、通常は表面にイオンを吸着しているために分極は観測されない。しかし、温度変化が加わることで分極が変化すると、表面電荷量が変化し、電圧又は電流として変化分を検出することができる。したがって、電気的特性の一つである分極による電荷量の変化から、温度変化を電流または電圧として取り出すことができる。
【0073】
最初に、焦電体61は、常温で自発分極した状態で存在している。次に、図11の矢印方向(上方向)から光又は電磁波を受波すると、各ナノチェイン2でナノチェインの長さXに対応したプラズモン共鳴吸収が起こり、各ナノチェイン2が発熱する。各ナノチェイン2から発生した熱は、焦電体61に伝導し、温度が上昇する。温度が上昇すると、焦電体61の分極状態が変化する。分極状態の変化により、例えば電荷量が小さくなると、ナノチェイン2の表面に吸着していたイオンは、電極62側のイオンと結びつくために、電流が発生して電流計Aで検出できる。温度が最初の状態に戻ると、分極の状態も最初に戻る。このようにして、温度上昇に応じて分極による電荷量も変化するので、この電荷量の変化を電流等の変化として検出する。
【0074】
以上述べたように、測温体に熱電対、金属の測温抵抗素子、焦電体等を用い、温度変化又は発熱量変化に基づく、電気的特性の熱起電力、抵抗値、分極による電荷量等の変化を検出することで、プラズモン共鳴の有無や大きさ、さらには、共鳴波長の検出を行うことができる。
【0075】
なお、ナノチェイン2の作製については、図8の説明のところで、サファイア基板上にナノチェインを形成する方法を具体的に述べているが、製造工程を簡単にまとめると以下のようになる。ナノチェイン2は、好ましくは半導体微細加工技術を用いて製造される。例えば、基板又は基材の表面にレジストをコートして、レジストに所望のナノ金属体の形状を電子線で描画し、この描画を現像してナノ金属体の形状に合わせて基板を露出させる。
【0076】
その後、現像画面上から金属をスパッタリングして金属膜を形成して、リフトオフによりレジストとともに不要な金属膜を除去して金属ナノ粒子2aが連結されたナノチェイン2が形成される。
【0077】
ナノチェインの製造方法は、例えば特願2005−080579または特願2005−258364に記載された金属構造体の製造方法と同様にして行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明のプラズモン共鳴検出器の構造例を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A断面及びB−B断面を示す断面図である。
【図3】本発明のプラズモン共鳴検出器の他の構造例を示す斜視図である。
【図4】図3のプラズモン共鳴検出構造を複数配置したプラズモン共鳴検出器の構造例を示す斜視図である。
【図5】温度検出の回路構成例を示す図である。
【図6】ダイオードの温度をパラメータとするI−V特性を示す図である。
【図7】ナノチェインを用いた光検出部の構成例を示す図である。
【図8】ナノチェインを用いた場合の金属ナノ粒子数とピーク波長との関係を示す図である。
【図9】本発明のプラズモン共鳴検出器の他の構造例を示す斜視図である。
【図10】本発明のプラズモン共鳴検出器の他の構造例を示す斜視図である。
【図11】本発明のプラズモン共鳴検出器の他の構造例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0079】
11 n電極
12 導電性基板
13 n型半導体層
14 i型半導体層
15 p型半導体層
16 絶縁膜
17 p電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金属ナノ粒子が互いに連結されたナノチェインと、
前記ナノチェインが配置された測温体とを備え、
前記ナノチェインのプラズモン共鳴吸収によって生ずる温度変化を、該温度変化に伴う前記測温体の電気的特性の変化により検出することを特徴とするプラズモン共鳴検出器。
【請求項2】
前記測温体は半導体で構成され、前記電気的特性は抵抗値であることを特徴とする請求項1に記載のプラズモン共鳴検出器。
【請求項3】
前記半導体は、ダイオードで構成されていることを特徴とする請求項2に記載のプラズモン共鳴検出器。
【請求項4】
前記ダイオードの電極の周りにナノチェインが配置され、前記ナノチェインを構成する金属ナノ粒子の少なくとも1つの角部が電極の方に向いていることを特徴とする請求項3に記載のプラズモン共鳴検出器。
【請求項5】
前記電極とナノチェインは非接触となるように配置されていることを特徴とする請求項4に記載のプラズモン共鳴検出器。
【請求項6】
前記半導体は、シリコン膜で構成されていることを特徴とする請求項2に記載のプラズモン共鳴検出器。
【請求項7】
前記ナノチェインを構成する金属ナノ粒子の少なくとも1つの角部が、前記シリコン膜上に配置されていることを特徴とする請求項6に記載のプラズモン共鳴検出器。
【請求項8】
前記測温体は熱電対で構成され、前記電気的特性は熱起電力であることを特徴とする請求項1に記載のプラズモン共鳴検出器。
【請求項9】
前記熱電対の測温接点を挟んでナノチェインが配置され、前記ナノチェインを構成する金属ナノ粒子の少なくとも1つの角部が測温接点の方に向いていることを特徴とする請求項8記載のプラズモン共鳴検出器。
【請求項10】
前記測温体は金属で構成され、前記電気的特性は抵抗値であることを特徴とする請求項1に記載のプラズモン共鳴検出器。
【請求項11】
前記測温体においてナノチェインが配置されている領域は、断熱材上に形成されていることを特徴とする請求項8〜請求項10のいずれか1項に記載のプラズモン共鳴検出器。
【請求項12】
前記測温体は焦電体で構成され、前記電気的特性は分極による電荷量であることを特徴とする請求項1に記載のプラズモン共鳴検出器。
【請求項1】
複数の金属ナノ粒子が互いに連結されたナノチェインと、
前記ナノチェインが配置された測温体とを備え、
前記ナノチェインのプラズモン共鳴吸収によって生ずる温度変化を、該温度変化に伴う前記測温体の電気的特性の変化により検出することを特徴とするプラズモン共鳴検出器。
【請求項2】
前記測温体は半導体で構成され、前記電気的特性は抵抗値であることを特徴とする請求項1に記載のプラズモン共鳴検出器。
【請求項3】
前記半導体は、ダイオードで構成されていることを特徴とする請求項2に記載のプラズモン共鳴検出器。
【請求項4】
前記ダイオードの電極の周りにナノチェインが配置され、前記ナノチェインを構成する金属ナノ粒子の少なくとも1つの角部が電極の方に向いていることを特徴とする請求項3に記載のプラズモン共鳴検出器。
【請求項5】
前記電極とナノチェインは非接触となるように配置されていることを特徴とする請求項4に記載のプラズモン共鳴検出器。
【請求項6】
前記半導体は、シリコン膜で構成されていることを特徴とする請求項2に記載のプラズモン共鳴検出器。
【請求項7】
前記ナノチェインを構成する金属ナノ粒子の少なくとも1つの角部が、前記シリコン膜上に配置されていることを特徴とする請求項6に記載のプラズモン共鳴検出器。
【請求項8】
前記測温体は熱電対で構成され、前記電気的特性は熱起電力であることを特徴とする請求項1に記載のプラズモン共鳴検出器。
【請求項9】
前記熱電対の測温接点を挟んでナノチェインが配置され、前記ナノチェインを構成する金属ナノ粒子の少なくとも1つの角部が測温接点の方に向いていることを特徴とする請求項8記載のプラズモン共鳴検出器。
【請求項10】
前記測温体は金属で構成され、前記電気的特性は抵抗値であることを特徴とする請求項1に記載のプラズモン共鳴検出器。
【請求項11】
前記測温体においてナノチェインが配置されている領域は、断熱材上に形成されていることを特徴とする請求項8〜請求項10のいずれか1項に記載のプラズモン共鳴検出器。
【請求項12】
前記測温体は焦電体で構成され、前記電気的特性は分極による電荷量であることを特徴とする請求項1に記載のプラズモン共鳴検出器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−175124(P2009−175124A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272431(P2008−272431)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】
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