説明

プラットホームゲート装置

【課題】鉄道車両内部の乗客に対して、プラットホームゲート装置によって遮られた視覚的情報を含む情報を提供することができるプラットホームゲート装置を提供すること。
【解決手段】プラットホームゲート装置は、鉄道車両に乗降するためのプラットホームの線路側縁端部に立設され、少なくとも一つの扉を前記鉄道車両の進行方向に沿って進退可能に収納する複数の戸袋と、戸袋から突出すると戸袋と共に線路側空間とプラットホーム側空間とを隔てる柵を形成し、戸袋に収納されると鉄道車両の乗客の乗降用通路を開放する扉と、を備え、プラットホームゲート装置の上部に、線路側空間に面した情報表示手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線路側空間に面した情報表示手段を有するプラットホームゲート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄道駅のプラットホームには、線路への乗客の転落及び鉄道車両と乗客の接触を防止する等、安全向上を目的としたプラットホームゲート装置が設けられている。
【0003】
プラットホームゲート装置は、鉄道車両に乗降するためのプラットホームの線路の縁端部に立設され、戸袋に収納された扉が進退可能にスライド移動することで戸袋間に乗降用通路を形成して、必要に応じて乗客がプラットホームと鉄道車両との間を行き来できるようにしている。
【0004】
このようなプラットホームゲート装置の例としては、例えば、戸袋と、戸袋に設けられたガイドレールと、ガイドレールを介して戸袋に摺動自在に支持されたドアと、戸袋に設けられドアを開閉させる駆動プーリ、従動プーリ、モータおよびベルトとを備えたドア開閉装置が下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11―256921
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
乗客の安全向上を目的として設けられる従来方式のプラットホームゲート装置PG'は、一般的には戸袋CA'の高さがプラットホームPFの床面より1300ミリ程度である。よって、当該プラットホームPFに鉄道車両TRが停車する時に、側窓GWの略下半分がプラットホームゲート装置PG'の戸袋CA'によって覆われてしまい、プラットホームPFの外観・状況を鉄道車両TR内より視覚的に捉えることができない場合がある。
【0007】
図4に示すのは、プラットホームPFにて停車中の鉄道車両TRの内部において、乗降用ドアとは離れた座席位置付近より、側窓GWを介して視覚的に捉えることのできるプラットホーム側空間PAを示す正面図である。鉄道車両TRの内部において、乗降用ドアの鴨居部分には液晶モニタ等の情報表示手段が設置されていることが多いが、乗降用ドアと離れた座席位置付近の乗客は当該情報を視認することができない。また戸袋CA'の鉄道車両側側面に停車駅の駅名SNが表示されている場合もあるが、図4に示す様に、当該駅名表示は対応位置に乗客が着席しているだけで視認することが困難となってしまう。当然、ラッシュの時間帯に混み合う車内からは、戸袋CA'の鉄道車両側側面における駅名表示を視認することはほぼ不可能である。また、鉄道駅のプラットホームPFは、運行路線毎に画一的なデザイン・構造をしている場合が多く、このような画一的なデザイン・構造を有するプラットホームPFにプラットホームゲート装置PG'を設けて側窓GWよりの視界が狭くなると、鉄道車両TR内の乗客が各停車駅を視覚的に区別することが困難となる。加えて、混み合う車内においては、乗客が停車駅に関する車掌からのアナウンスを聞き取れない場合もある。
【0008】
この点に関し、上記引用文献1に記載されたドア開閉装置は、戸袋と、当該戸袋に摺動自在に支持されたドアとを用いて乗客の出入りを制限するのみであり、戸袋によって遮られた視覚的な情報を補うことは不可能である。
【0009】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、プラットホームゲート装置によって遮られた視覚的情報を含む情報を表示するための情報表示手段を有するプラットホームゲート装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係るプラットホームゲート装置は、鉄道車両に乗降するためのプラットホームの線路側縁端部に立設され、少なくとも一つの扉を鉄道車両の進行方向に沿った横方向に沿って進退可能に収納する複数の戸袋と、戸袋から突出すると戸袋と共に線路側空間とプラットホーム側空間とを隔てる柵を形成し、戸袋に収納されると鉄道車両の乗客の乗降用通路を開放する扉と、を備え、戸袋の上部に、線路側空間に面した情報表示手段を有する、ものである。
【0011】
本発明によれば、鉄道車両内において乗降用のドアから離れた乗客であっても、プラットホームに停車中の鉄道車両内部から、側窓を介して、停車駅に関する情報を含む視覚的な情報を得ることが可能となる。
【0012】
更に本発明に係るプラットホームゲート装置は、情報表示手段が駆動部を備え、戸袋に昇降可能に格納されているように構成されてもよい。
【0013】
この好ましい態様では、使用状況に応じて情報表示手段を格納することが可能であるので、乗客等との接触による破損の可能性を低減することができる。さらに、情報表示手段が戸袋内に格納されるので、プラットホームにおける乗客の通行領域に情報表示手段が突出することがなく、乗客の通行の妨げとならない。
【0014】
更に本発明に係るプラットホームゲート装置は、情報表示手段が駆動部を備え、戸袋の、線路側空間に面した側面又はプラットホーム側空間に面した側面に昇降可能に取付けられているように構成されてもよい。
【0015】
この好ましい態様では、情報表示手段を有しない既存の戸袋等に対して、情報表示手段を追加的に取付けることができる。また、情報表示手段が故障した際には、情報表示手段のユニットごとの換装や修理対応が可能であり、メンテナンス性に優れる。
【0016】
更に本発明に係るプラットホームゲート装置は、情報表示手段が制御部を備え、当該制御部が、鉄道車両がプラットホームに到着する際に情報表示手段を上昇させ、鉄道車両における乗客の乗降が完了すると情報表示手段を下降させるように構成されても良い。
【0017】
この好ましい態様では、車両の入線のタイミングに合わせて情報表示手段を上昇させ、鉄道車両の停車中にのみ車両内部の乗客に対して情報を提供しつつ、鉄道車両の発車時には情報表示手段を下降させて、鉄道車両とプラットホームゲート装置との間の線路側空間における乗客の取り残しの有無を容易に視認できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、鉄道車両内部の乗客に対して、プラットホームゲート装置によって遮られた視覚的情報を含む情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るプラットホームゲート装置の鉄道車両の進行方向に垂直な方向の断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るプラットホームゲート装置の戸袋に設けられた情報表示手段を、停車中の鉄道車両内部より見た正面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るプラットホームゲート装置を線路側空間より見た正面図である。
【図4】従来方式のプラットホームゲート装置を用いる場合の、停車中の鉄道車両内部より見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0021】
図1に示すのは、本発明の実施形態に係るプラットホームゲート装置PGの鉄道車両TRの進行方向に垂直な方向の断面図である。プラットホームゲート装置PGは、鉄道車両TRが入線してくる鉄道駅のプラットホームPFの線路側の縁端部EAに立設されており、扉DOと、扉DOを鉄道車両TRの進行方向に沿った方向に進退可能に収納する戸袋CAとからなる。ここで扉DOは、戸袋CAから最大に突出すると戸袋CAと共にプラットホームPF上の空間を線路側空間RAとプラットホーム側空間PAとに隔てる柵を形成し、戸袋CAに完全に収納されると鉄道車両TRの乗客の乗降用通路を開放する。本実施形態に係るプラットホームゲート装置PGは、鉄道車両TRへの乗客の乗込みが完了すると、扉DOが閉じられ、プラットホームゲート装置PGが柵となって線路側空間RAとプラットホーム側空間PAとを隔離する。本実施形態に係るプラットホームゲート装置PGの戸袋CAは、その上面UCの開口IAより突出した情報表示手段1を有している。
【0022】
図2に示すのは、停車した鉄道車両TRの内部より、側窓GWを介して視認できるプラットホームゲート装置PGの戸袋CAに設けられた情報表示手段1を示す正面図である。モニタ2と枠体3を備える情報表示手段1は、枠体3に取付けられた駆動部DR(図示せず)によってプラットホームゲート装置PGの戸袋CAの内部に昇降可能に格納でき、戸袋CAの上面UCの開口IAより最大に上昇した位置で静止している。なお、モニタ2には、停車駅の駅名SN等を含む情報を表示している。
【0023】
本実施形態に係る情報表示手段1におけるモニタ2は、液晶モニタ等の任意の表示手段であって良く、その大きさは、鉄道車両TRの側窓GWの全面のうち、戸袋CAによって鉄道車両TR内部からの視界が遮られる部分を除いた視認可能領域FAに収まるサイズであればよい。図に示す情報表示手段1は、視認可能領域FAの略左半分部分を覆っており、乗客は視認可能領域FAの残りの略右半分部分を通してプラットホームPFの状況を視認することができる。なお、設置される情報表示手段1の個数、大きさ及び取り付け位置はプラットホームPFの状況等の諸条件を基に任意に決定できる。
【0024】
情報表示手段1に表示し得るコンテンツは、駅名、乗り換え案内、現在時刻、発車時刻等の鉄道の運行に関する情報に加えて、当該停車駅の周辺の商業施設の案内や広告、緊急ニュース速報等がある。例えば、本実施形態にかかる情報表示手段1は、従前の鉄道車両TR内の鴨居に設けられていたモニタと比較して表示面積が広く情報量が多いので、モニタ2内の一部に駅名等の鉄道運行に関する情報を表示しつつ、同時に広告を映し出す事も可能である。また、例えば先頭車両近くの階段より良好にアクセスできる特定の駅舎出口の周辺施設広告を先頭車両に対応する戸袋CAに取付けられた情報表示手段1にのみ表示し、最後尾車両近くの階段より良好にアクセスできる特定の駅舎出口の周辺施設広告を最後尾車両に対応する戸袋CAに取付けられた情報表示手段1にのみ表示するというように、プラットホームPFにおける鉄道車両TRの停止位置に応じて、情報表示手段1の表示コンテンツに適宜変化を与えることもできる。
【0025】
図3に示すのは、図1及び図2に示すプラットホームゲート装置PGの戸袋CAの上面UCの開口IAより最大に上昇した位置で静止した情報表示手段1をプラットホームPFのプラットホーム側空間PAより見た正面図である。
【0026】
図3に示すように、情報表示手段1が最大に上昇した状態で固定され、鉄道車両TR内部の乗客に対して種々様々な情報を提供している際、プラットホームPF側から見たとき、情報表示手段1が設けられた戸袋CAの背後の空間、即ち鉄道車両TRとプラットホームゲート装置PGとの間の線路側空間RAの状況が視認し難くなる。特に鉄道車両TRの出発に際してプラットホームゲート装置PGの扉DOを閉じて乗降用通路PDが閉鎖され、鉄道車両TRとプラットホームゲート装置PGとの間の線路側空間RAに取り残された乗客PSが情報表示手段1の背面に入り込んでしまうと、プラットホームPFに居る駅員からも、プラットホームPFに設置されたカメラ手段等からもその存在を確認することができない。
【0027】
よって、本実施形態に係るプラットホームゲート装置PGは、さらに情報表示手段1の昇降を管理する為の制御部CU(図示せず)を有している。例えば、制御部CUは、鉄道車両TRがプラットホームPFに到着する際に駆動部DRを駆動させて情報表示手段1を上昇させ、乗客の乗降中、即ち鉄道車両TRの停車中にのみ車両内部の乗客に対してモニタ2に映し出した情報を提供する。次に、制御部CUは、乗客の乗降が完了しプラットホームゲート装置PGの扉DOが閉鎖されると、鉄道車両TRの発車前に駆動装置を駆動させて情報表示手段1を下降させて戸袋CAに格納する。これにより、鉄道車両TRとプラットホームゲート装置PGとの間の線路側空間RAにおける乗客の取り残しの有無が容易に確認可能となり、鉄道車両TRをより安全に運行することができる。
【0028】
このように本実施形態に係る情報表示手段1は、鉄道車両TRがプラットホームPFに入線していない時間帯には常に戸袋CAの内部に格納されているので、プラットホームPFを通行する乗客と接触して破損してしまう可能性が低減され、線路側空間RAに存在する案内表示等の視認性も低下させない。また、戸袋CAの内部に格納されることで、プラットホームPFにおける乗客の通行領域に向かって情報表示手段が突出してしまうことがないので、プラットホームPFを通行する乗客の移動を妨げることがなく、特にラッシュ時におけるプラットホームPFの混雑を有意に防止し得る。
【0029】
また、情報表示手段1は昇降用の駆動部DRを備えたユニットとして別体で提供することもできる。このようなユニット型の情報表示手段1は、初期的に戸袋CAに内蔵されるだけでなく、情報表示手段1を有しない既存の戸袋CA等に対して追加的に後付けすることができる。この場合、鉄道駅における建築限界を考慮した上で、ユニット型の情報表示手段1を戸袋CAの線路側空間RAに面した側面に設置出来れば、内蔵型と同様に、プラットホームPFにおける乗客の通行領域に情報表示手段1が突出することがなく、乗客の通行を妨げない。また、プラットホームPFにおける乗客通行空間が充分に広い場合には、プラットホーム側空間PAに面した側面にユニット型の情報表示手段1を設置しても良く、この場合には、鉄道車両TRとプラットホームゲート装置PGとの間の線路側空間RAを広く維持することができるので、緊急時の乗客の避難経路を広く取ることができる。また、ユニット型の情報表示手段1が故障した際には、ユニットごと取り外しての修理対応が可能であり、交換品との換装も容易に行えるのであるので、故障対応時におけるメンテナンス性が格段に向上する。
【0030】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0031】
1:情報表示手段
2:モニタ
3:枠体
PG:プラットホームゲート装置
CA:戸袋
DO:扉
CU:制御部
DR:駆動部
IA:開口
UC:上面
FA:視認可能領域
GW:側窓
RA:線路側空間
PA:プラットホーム側空間
PD:乗降用通路
PS:乗客
SN:駅名
TR:鉄道車両
PF:プラットホーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両に乗降するためのプラットホームの線路側縁端部に立設されるプラットホームゲート装置であって、
少なくとも一つの扉を前記鉄道車両の進行方向に沿って進退可能に収納する複数の戸袋と、
前記戸袋から突出すると前記戸袋と共に線路側空間とプラットホーム側空間とを隔てる柵を形成し、前記戸袋に収納されると前記鉄道車両の乗客の乗降用通路を開放する扉と、を備え、
前記戸袋の上部に、線路側空間に面した情報表示手段を有することを特徴とするプラットホームゲート装置。
【請求項2】
前記情報表示手段が駆動部を備え、前記戸袋内部に昇降可能に格納されている、請求項1に記載のプラットホームゲート装置。
【請求項3】
前記情報表示手段が駆動部を備え、前記戸袋の、前記線路側空間に面した側面又は前記プラットホーム側空間に面した側面に昇降可能に取付けられている、請求項1に記載のプラットホームゲート装置。
【請求項4】
前記情報表示手段が制御部を備え、
前記制御部は、前記鉄道車両が前記プラットホームに到着する際に前記情報表示手段を上昇させ、前記鉄道車両における乗客の乗降が完了すると前記情報表示手段を下降させる、請求項1乃至3の何れかに記載のプラットホームゲート装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−224277(P2012−224277A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95207(P2011−95207)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(712004783)株式会社総合車両製作所 (40)
【Fターム(参考)】