説明

プラテンローラ

【目的】長期にわたつて繰り返してドツトハンマーによる衝撃を受けても、すぐれた印字特性を保持するプラテンローラを提供するにある。
【構成】芳香族ポリイソシアネートと芳香族ジアミン化合物との反応によつて得られるエラストマーからなり、芳香族ポリイソシアネートと芳香族ジアミン化合物との結合点が実質的にすべて、又は主として尿素結合からなる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、エラストマーからなるプラテンローラに関し、詳しくは、耐衝撃性及び耐熱性にすぐれ、長期にわたつて繰り返してドツトハンマーによる衝撃を受けても、すぐれた印字特性を保持し、かくして、高速プリンタに好適に用いることができるプラテンローラに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、プラテンローラは、多くの場合、ポリテトラメチレングリコールとトリレンジイソシアネートとを架橋剤として3,3'−ジクロロ−4,4'−ジアミノジフエニルメタンを用いて架橋させ、その際に、これらの配合比率を調整し、硬度を適当に調整してなるポリウレタンエラストマーから製造されている。
【0003】しかしながら、近年、コンピユータの大型化高速化に伴い、出力部であるプリンタも高速化が要求されるに至り、しかも、高い信頼性も要求されるに至つている。ここに、従来より知られている上記したようなポリウレタンエラストマーからなるプラテンローラによれば、ドツトハンマーで繰り返して高速の衝撃を受ける間に、ローラ表面に凹みを生じ、長期にわたる使用において印字不良を生じ、かくして、印字の高速化に対応できない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来のプラテンローラにおける上記したような問題を解決するためになされたものであつて、長期にわたつて繰り返してドツトハンマーによる高速の衝撃を受けても、すぐれた印字特性を保持するプラテンローラを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明によるプラテンローラは、ポリアルキレンエーテル鎖又はポリアルキレンエステル鎖を有する高分子量芳香族ジアミン化合物と一般式H2N-X-NH2(式中、Xは、p−フエニレン基又は
【0006】
【化2】


【0007】(式中、Rはメチレン基、エチレン基又はプロピレン基を示し、芳香環は置換基を有していてもよい。)で表わされる低分子量芳香族ジアミン化合物との混合物と芳香族ポリイソシアネートとの反応によつて得られるエラストマーからなり、芳香族ポリイソシアネートと芳香族ジアミン化合物との結合点が実質的にすべて、又は主として尿素結合からなることを特徴とする。
【0008】本発明によるプラテンローラは、ポリイソシアネートを一成分とするエラストマーを構成するに際して、ポリイソシアネートとして、芳香環を含むもの、即ち、芳香族ポリイソシアネートが用いられる。従つて、かかるプラテンローラは、長期にわたつて繰り返してドツトハンマーによる高速の衝撃を受けても、耐衝撃性にすぐれ、耐久性にすぐれる。
【0009】芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、4,4'−ジフエニルメタンジイソシアネート、これを一部カルボジイミド変性したもの、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フエニレンジイソシアネート、3,3'−ジメチル−4,4'−ジイソシアナトジフエニル等を挙げることができる。更に、本発明によるプラテンローラは、上記芳香族ポリイソシアネートを架橋させるための架橋剤として、芳香族ジアミン化合物が用いられて、芳香族ポリイソシアネートと芳香族ジアミン化合物との結合点が実質的にすべて、又は主として、尿素結合からなるので、耐熱性にすぐれており、その結果、長期にわたつて繰り返してドツトハンマーによる高速の衝撃を受けても、印字特性が損なわれない。特に、本発明においては、上記芳香族ポリイソシアネートと芳香族ジアミン化合物との結合点が実質的にすべて尿素結合からなることが好ましい。
【0010】更に、本発明においては、前記芳香族ポリイソシアネートがハードセグメントを構成し、エラストマーに強度を与えると共に、ソフトセグメントを構成する芳香族ジアミン化合物として、分子内にアルキレンエーテル鎖又はアルキレンエステル鎖を有する高分子量芳香族ジアミン化合物が好ましく用いられる。従つて、本発明においては、架橋剤として、低分子量の単量体性の芳香族ジアミン化合物と共に、高分子量の重合体性芳香族ジアミン化合物が用いられる。
【0011】かかる低分子量の単量体性の芳香族ジアミン化合物は、H2N-X-NH2(式中、Xは、p−フエニレン基又は
【0012】
【化3】


【0013】(式中、Rはメチレン基、エチレン基又はプロピレン基を示し、芳香環は置換基を有していてもよい。)で表わされる。このような低分子量の単量体性の芳香族ジアミン化合物の具体例としては、例えば、3,3'−ジクロロ−4,4'−ジアミノジフエニルメタン、4,4'−ジアミノジフエニルメタン、1,4−ジアミノベンゼン、3,3'−ジメトキシ−4,4'−ジアミノビフエニル、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフエニル、4,4'−ジアミノビフエニル、3,3'−ジクロロ−4,4'−ジアミノビフエニル等を挙げることができる。このような低分子量の芳香族ジアミン化合物は、ポリイソシアネートと反応して、剛直なハードセグメントを形成する。
【0014】また、高分子量の重合体性の芳香族ジアミン化合物としては、例えば、
【0015】
【化4】


【0016】で表わされるポリテトラメチレングリコールビス(p−アミノベンゾエート)、
【0017】
【化5】


【0018】で表わされるポリプロピレングリコールビス(p−アミノベンゾエート)、
【0019】
【化6】


【0020】で表わされるポリオキシブチレングリコールビス(p−アミノベンゾエート)、
【0021】
【化7】


【0022】で表わされるポリオキシエチレンプロピレンエーテルグリコールビス(p−アミノベンゾエート)等が好ましく用いられる。これらのなかでは、特に、ポリテトラメチレングリコールビス(p−アミノベンゾエート)が好ましく用いられる。特に、本発明においては、これらは、その分子量が1000〜3000であることか好ましい。
【0023】更に、本発明においては、低分子量の単量体性の芳香族ジアミン化合物と高分子量の重合体性の芳香族ジアミン化合物とは、前者が5〜40重量%、後者が60〜95重量%の割合で用いることが好ましい。本発明によるプラテンローラは、上述したような高分子量及び低分子量の芳香族ジアミン化合物の混合物からなる架橋剤と芳香族ポリイソシアネートとを混合攪拌し、これを所定の金型中に注入し、架橋反応させた後、金型から成形物を取出し、更に、加熱下に二次架橋させた後、所要の寸法に研磨加工することによつて得ることができる。
【0024】特に、本発明によれば、一次架橋温度を80〜110℃とし、二次架橋温度を140〜160℃とすることによつて、ハードセグメントの凝集が増し、耐熱製及び耐衝撃性を向上させることができる。
【0025】
【発明の効果】以上のように、本発明によるプラテンローラは、芳香族ポリイソシアネートと芳香族ジアミン化合物との反応によつて得られるエラストマーからなり、芳香族ポリイソシアネートと芳香族ジアミン化合物との結合点が実質的にすべて、又は主として尿素結合からなる。従つて、かかるエラストマーは、ソフトセグメント中にアルキレンエーテル鎖又はアルキレンエステル鎖を有するので、エラストマーとしての特性を保持しており、他方、ハードセグメントを構成するポリイソシアネート成分と低分子量の芳香族ジアミン化合物が芳香環を有して剛直であるので、耐衝撃性及び耐熱性にもすぐれる。
【0026】かくして、本発明によるプラテンローラは、長期にわたつて繰り返してドツトハンマーによる衝撃を受けても、すぐれた印字特性を保持しており、近年の高速プリンタのためのプラテンローラとして好適に用いることができる。
【0027】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。以下においては、プラテンローラについて、次の項目を調べて、評価した。
用紙エンボス用紙の裏面にエンボスが発生するまでのプリントしたシート数を調べた。
多葉紙複写性ノンカーボン紙にプリントしたときの複写力に変化がみられるまでのシート数を調べた。
用紙張力の変化初期に設定した用紙について、その張力に変化がみられるまでのプリントしたシート数を調べた。
用紙折り畳み性エンボスによる用紙の折り畳み性に及ぼす影響を調べた。
【0028】実施例1芳香族ジアミン化合物として、ポリテトラメチレングリコールビス(p−アミノベンゾエート)と3,3'−ジクロロ−4,4'−ジアミノジフエニルメタンとの混合物(イハラケミカル工業(株)製ポレアR−300A、アミン価188.1KOHmg/g)を用い、これを5mmHgの減圧下に50℃に2時間加熱し、脱泡した。
【0029】芳香族ポリイソシアネートとしては、4,4'−ジフエニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製ミリオネートMT、イソシアネート基含量33.6%)を45℃に加熱し、溶融させた。上記芳香族ジアミン化合物100重量部に上記芳香族ポリイソシアネート44重量部を加え、混合し、芯金を挿入した110℃の金型に注入し、1時間硬化させた後、金型から取出し、更に、150℃で6時間加熱し、二次架橋させた後、所定の寸法に研磨加工して、本発明によるプラテンローラを得た。
【0030】JIS A硬度:75用紙エンボス: 2000シート後もなし多葉紙複写性: 2000シート後もなし用紙張力の変化:2000シート後もなし用紙折り畳み性:2000シート後もなし
【0031】実施例2芳香族ジアミン化合物100重量部に対して、芳香族ポリイソシアネートとして、4,4'−ジフエニルメタンジイソシアネートの2量体と4,4'−ジフエニルメタンジイソシアネートとの混合物(三井東圧化学(株)製、イソシアネート基含量29%)51重量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、プラテンローラを得た。
【0032】JIS A硬度:73用紙エンボス: 2000シート後もなし多葉紙複写性: 2000シート後もなし用紙張力の変化:2000シート後もなし用紙折り畳み性:2000シート後もなし
【0033】実施例3芳香族ジアミン化合物として、ポリテトラメチレングリコールビス(p−アミノベンゾエート)と3,3'−ジクロロ−4,4'−ジアミノジフエニルメタンとの混合物(イハラケミカル工業(株)製ポレアR−200A、アミン価150KOHmg/g)を用い、芳香族ポリイソシアネートとして、1,5−ナフタレンジイソシアネート(住友バイエルウレタン(株)製デスモジユール15、イソシアネート基含量40%)を用いた。上記芳香族ジアミン化合物100重量部に上記芳香族ポリイソシアネート30重量部を用い、実施例1と同様にして、本発明によるプラテンローラを得た。
【0034】JIS A硬度:75用紙エンボス: 2000シート後もなし多葉紙複写性: 2000シート後もなし用紙張力の変化:2000シート後もなし用紙折り畳み性:2000シート後もなし
【0035】比較例1ポリテトラメチレングリコールとトリレンジイソシアネートとから得られるウレタンプレポリマー(武田薬品工業(株)製タケネートL−2790、イソシアネート基含量9.0%)を5mmHgの減圧下に100℃に2時間加熱して脱泡した。アミン末端低分子量架橋剤として3,3'−ジクロロ−4,4'−ジアミノジフエニルメタンを120℃に加熱して溶融させた。上記ウレタンプレポリマー100重量部に上記架橋剤28重量部を混合し、以下、実施例1と同様にして、プラテンローラを得た。
【0036】JIS A硬度:73用紙エンボス: 1500シートにて発生多葉紙複写性: 1500シートにて変化用紙張力の変化:1500シートにて張力低下用紙折り畳み性:1500シートで良好
【0037】比較例2ポリテトラメチレングリコール(三洋化成工業(株)製PTMG−2000、水酸基価56.1)を5mmHgの減圧下に120℃に2時間加熱して脱水した。このポリオール100重量部に1,5−ナフタレンジイソシアネート60重量部を加え、5mmHgの減圧下に15分間攪拌して、ウレタンプレポリマーを調製した。このウレタンプレポリマーに架橋剤として1,4−ブタンジオール19重量部を加え、混合した後、実施例1と同様にして、プラテンローラを得た。
【0038】JIS A硬度:73用紙エンボス: 1500シートにて発生多葉紙複写性: 1500シートにて変化用紙張力の変化:1500シートでは変化なし用紙折り畳み性:1500シートで良好
【0039】比較例3ポリテトラメチレングリコールと4,4'−ジフエニルメタンジイソシアネートとから得られるウレタンプレポリマー(三井東圧化学(株)製ハイプレンQ−583、イソシアネート基含量14.8%)を5mmHgの減圧下に100℃に2時間加熱して脱泡した。このウレタンプレポリマー100重量部に低分子量架橋剤としてビスヒドロキシエトキシベンゼン33重量部を混合し、以下、実施例1と同様にして、プラテンローラを得た。
【0040】JIS A硬度:75用紙エンボス: 1000シートにて発生多葉紙複写性: 1000シートにて変化用紙張力の変化:1000シートにて張力低下用紙折り畳み性:900シートから紙詰まり発生
【0041】比較例4ポリテトラメチレングリコールと水素添加4,4'−ジフエニルメタンジイソシアネートとから得られるウレタンプレポリマー(三洋化成工業(株)製サンプレンP668、イソシアネート基含量9.5%)を5mmHgの減圧下に100℃に2時間加熱して脱泡した。このウレタンプレポリマー100重量部に低分子量架橋剤として4,4'−ジアミノジフエニルメタン2133重量部を混合し、以下、実施例1と同様にして、プラテンローラを得た。
【0042】JIS A硬度:80用紙エンボス: 500シートにて発生多葉紙複写性: 500シートにて変化用紙張力の変化:500シートにて張力低下用紙折り畳み性:450シートから紙詰まり発生

【特許請求の範囲】
【請求項1】ポリアルキレンエーテル鎖又はポリアルキレンエステル鎖を有する高分子量芳香族ジアミン化合物と一般式H2N-X-NH2(式中、Xは、p−フエニレン基又は
【化1】


(式中、Rはメチレン基、エチレン基又はプロピレン基を示し、芳香環は置換基を有していてもよい。)で表わされる低分子量芳香族ジアミン化合物との混合物と芳香族ポリイソシアネートとの反応によつて得られるエラストマーからなり、芳香族ポリイソシアネートと芳香族ジアミン化合物との結合点が実質的にすべて、又は主として尿素結合からなることを特徴とするプラテンローラ。
【請求項2】高分子量芳香族ジアミン化合物がポリテトラメチレングリコールビス(p−アミノベンゾエート)、ポリプロピレングリコールビス(p−アミノベンゾエート)、ポリオキシブチレングリコールビス(p−アミノベンゾエート)、ポリオキシエチレンプロピレンエーテルグリコールビス(p−アミノベンゾエート)、又はこれらの2種以上の混合物であることを特徴とする請求項1記載のプラテンローラ。