説明

プラネタリウムにおける投影構造

【課題】プラネタリウムの投影機から出力された光を独立して瞬かせるようにするとともに、一般家庭などにおいても比較的安価に星の瞬きを実現できるようにしたプラネタリウムの投影構造を提供する。
【解決手段】プラネタリウム1の投影機2から出力された光を投影する投影構造3において、前記投影機2から出力された光をそれぞれ異なる方向に反射させる複数の反射面(第一の反射面41や第二の反射面42など)を有してなるスクリーン本体4と、当該スクリーン本体4を揺動可能に保持する保持体5を設けて構成する。この保持体5は、好ましくは、糸などの線状体で構成し、天井や壁面からスクリーン本体4を吊り下げるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラネタリウムの投影機から出力された星の映像を投影するスクリーン本体などの構造に関するものであり、より詳しくは、星の瞬きを再現できるようにした投影構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、科学センターや各種学習施設などには、比較的高機能なプラネタリウムが設置されている。このようなプラネタリウムは、星の映像を出力する投影機と、その投影機から出力された星の映像を投影させるドームとを有し、投影機からドームに星を映し出す際に、各星ごとに光量や色などを調整して実際の星の動きなどを再現できるようにしたものである(特許文献1など)。
【0003】
また、近年では、このようなプラネタリウムを一般家庭などで気軽に楽しめるようにした商品も多数販売されている。このような家庭用のプラネタリウムのうち、多くは、球状もしくは半球状の投影機の中に電球を仕込んでおき、その電球から出力された光を、星座に型取ったピンホールを介して出力し、もしくは、天体を印刷した原板を通して出力された光を室内空間の天井や壁面などに投影できるようにしたものである。
【0004】
しかしながら、このような従来のプラネタリウムにおいては、星座や星の色、星の動きなどをある程度正確に再現することができるものの、実際の天体における星の見え方をリアルに再現することができないといった問題がある。すなわち、実際に存在する星の光のうち、惑星から届く光は光量が大きいために、常に輝いた状態で観察することができる一方、恒星から出力された光は、光量が少ないため、大気の状態によってチカチカと瞬いて見える。これに対して従来のプラネタリウムでは、投影機から出力された光は常に輝くような状態になっているため、惑星であるか恒星であるかを区別させることができず、平面的な光の斑点が並んでいるというイメージしか持たせることができないといった問題を有していた。
【0005】
一方、かかる問題を解決すべく、下記の特許文献2や特許文献3には、星の瞬きを再現できるようにしたプラネタリウムが提案されている。このうち、特許文献2に記載されるプラネタリウムの投影機は、光源を明るくする信号と暗くする信号を繰り返しランダムに送信し、その信号に基づいて投影機から出力される光に瞬きを持たせるようにしたものである。また、特許文献3に記載されるプラネタリウムの投影機は、投影機の投影光路中にオン・オフの制御信号によって高速で開閉する遮光部材を配し、その遮光部材による開閉動作によって瞬きを実現できるようにしたものである。
【特許文献1】特開2006−153936号公報
【特許文献2】特開2000−155522号公報
【特許文献3】特開2000−148007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような瞬きを再現できるようにした装置では、ON・OFF信号や遮光部材の開閉によって多くの星を同時に瞬かせるようにしているため、瞬きに不自然さを与えてしまう。また、比較的高機能なプラネタリウムでは、そのような瞬きを制御する装置を組み込むことができるものの、一般家庭で楽しむような比較的廉価なプラネタリウムでは、このような高機能な装置を設けることができない。
【0007】
そこで、本発明は上記課題に着目してなされたもので、比較的廉価な構成で星に瞬きを持たせて星の見え方をリアルに再現できるようにしたプラネタリウムの投影構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、プラネタリウムの投影機から出力された星の映像を映し出す投影構造において、それぞれ反射角度が異なる複数の反射面構成要素を備えた金属製反射体を備え、当該金属製反射体に前記星の映像を映し出すようにしたものである。
【0009】
このようにすれば、反射角度の異なる反射面構成要素に各星の光が当たり、星の公転などによって各星の光の反射角度を変化させることができるので、簡単な構成で星に瞬きを与えることができるようになる。
【0010】
また、このような発明において、好ましくは、金属製反射体を揺動させる揺動体を備えるようにし、この揺動体によって金属製反射体を揺動させるようにする。
【0011】
このように構成すれば、金属製反射体の揺動によって星に瞬きを持たせることができ、天体を公転させなくても星に瞬きを持たせることができる。しかも、その反射角をランダムに設定することで、各星ごとに瞬きのタイミングをずらすことができるようになる。
【0012】
さらに、金属製反射体を設ける場合、金属表面を有する紙葉類に皺を付けた後、引き延ばすことによって複数の反射角を有する反射面を形成する。
【0013】
このようにすれば、アルミ箔などのような市場に流通している比較的安価な金属箔を用いて簡単に金属製反射体を形成することができるようになる。なお、ここで、金属製反射体としては、アルミ箔などのような金属箔だけでなく、表面に金属蒸着させた紙などを用いるようにしてもよい。
【0014】
加えて、スクリーン本体を揺動させる場合、建物の天井から吊り下げられた保持体によって揺れを生じさせる。
【0015】
このようにすれば、保持体によって吊り下げられたスクリーン本体を、エアコンの風などによって揺動させることができるため、簡単な構造で金属製反射体を揺動させることができるようになる。
【0016】
また、このような金属製反射体を独立して複数設けるようにする。
【0017】
このように構成すれば、各金属製反射体を、小さな風の力などによって容易に揺動させることができ、しかも、各金属製反射体の揺動状態を異なるようにすることによって瞬きに変化を与えることができるようになる。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、プラネタリウムの投影機から出力された星の映像を映し出す投影構造において、それぞれ反射角度が異なる複数の反射面構成要素を備えた金属製反射体を備え、当該金属製反射体に前記星の映像を映し出すようにしたので、簡単な構成で星に瞬きを持たせることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態におけるプラネタリウム1の構造の概要を示した図であり、図2は、そのプラネタリウム1を構成する金属製反射体であるスクリーン本体4の拡大図を示したものである。
【0020】
この実施の形態におけるプラネタリウム1は、天体を再現する映像を出力する投影機2と、その投影機2から出力された映像を映し出すスクリーン本体4と、そのスクリーン本体4を保持する保持体5とを備えてなるもので、そのスクリーン本体4、および、そのスクリーン本体4を保持する保持体5とによって投影スクリーン体3を構成し、スクリーン本体4を僅かに揺動させることによって投影機2から出力された光に瞬きを持たせるようにしたものである。以下、本実施の形態におけるスクリーン本体4および保持体5からなる投影スクリーン体3の構成について詳細に説明する。
【0021】
まず、スクリーン本体4は、例えば、アルミ箔などのような薄い金属箔や、表面に金属膜を有する色紙などの紙葉類によって構成され、投影機2からの光を様々な方向に反射させるように構成される。これらのスクリーン本体4は、好ましくは、反射角度を僅かながら変化させる複数の反射面構成要素を多数形成しておくような状態にしておく。このような反射面構成要素を形成する場合、例えば、金属箔を一度丸めることなどによって多くの皺を設け、その後、その金属箔を平面状に引き延ばすことによって複数の反射面構成要素を形成する。このような方法によって皺を設けると、異なる反射角を有する微少の平面部分を多数形成することができ、瞬きの頻度を高くすることができるようになる。そして、このように形成されたスクリーン本体4を、室内空間における天井6aや壁面6bの内側に沿うように取り付ける。
【0022】
室内空間の天井6aや壁面6bからスクリーン本体4を取り付ける場合、線状の保持体5によって吊り下げた状態で天井6aや壁面6bに取り付ける。このとき、保持体5としては、例えば、糸などのように比較的可撓性を有する線状体を用いるとよい。このとき、保持体5を一又は複数本用意し、一端側を室内空間の天井6aに貼り付けるとともに、他端側をスクリーン本体4の裏面側に貼り付けるようにする。天井6aに保持体5を貼り付ける場合は粘着テープなどを用い、スクリーン本体4を揺動できるような状態にしておく。具体的には、スクリーン本体4の重心に1本の糸を取り付けて揺動できるようにしておくか、あるいは、2本の糸をスクリーン本体4の裏面に貼り付けて揺動できるような状態にしておく。なお、3本以上の糸を用いた場合は、スクリーン本体4が揺動できないように固定されてしまうため、3箇所以上で保持する場合は、ゴムなどのような比較的伸縮容易な弾性体で保持する。そして、このようにスクリーン本体4を揺動可能に保持体5で吊り下げることによって自由に揺動させるようにしておく。
【0023】
このようにスクリーン本体4を室内空間に設けた状態で投影機2から光を出力した場合の状態を図3に示す。
【0024】
投影機2から出力された星の光は、スクリーン本体4の金属表面に向かって出力され、スクリーン本体4の所定の反射面に入射される。このとき光が入射した反射面を第一の反射面41とする。この第一の反射面41に向かって光が出力されると、その光は、入射角と同じ反射角で正反射される。また、このスクリーン本体4が多少の濁りを有している場合は、その反射角と異なる角度で小さく乱反射し、スクリーン本体4の表面に薄膜を形成している場合は違った色の光として反射される。このとき、正反射される光の方向7にいる観察者Aがその光の反射状態をみると、強い光の星として見ることができ、一方、正反射の方向7から外れた位置にいる図示しない観察者がその光の反射状態をみると、弱い光の違った色の星として見ることができる。
【0025】
この状態でスクリーン本体4にエアコンや扇風機の風などが当たると、スクリーン本体4が僅かながら揺動し、投影機2から出力された光の入射する反射面の位置が変化する。このとき、第一の反射面41に隣接する第二の反射面42に光が入射すると、その入射した光は、入射角と同じ反射角で正反射し、また、その反射角と異なる角度で乱反射する。この状態を先ほどの第一の反射面41における正反射の方向7の観察者が見ると、今度は同じ星を弱い光の星として、また、違った色の星として見ることができる。
【0026】
このように上記実施の形態によれば、複数の反射面構成要素を有するように構成されたスクリーン本体4を線状の保持体5で吊り下げ、エアコンや扇風機の風によってスクリーン本体4を揺動させるようにしたので、安価かつ簡単な方法で星の光に瞬きを持たせることができるようになる。
【0027】
<第二の実施の形態>
次に、第二の実施の形態における投影スクリーン体3の構成について説明する。上記第一の実施の形態では、金属箔に皺を設けて複数の反射面を形成するようにしたが、この第二の実施の形態では、一の反射角を有する反射体構成要素43を独立して複数設けることによってスクリーン本体4を構成するようにしている。
【0028】
図4および図5にその実施の形態における反射体構成要素43の例を示す。図4および図5において、43は、金属箔などで構成された反射体構成要素を示している。この反射体構成要素43としては、例えば、スパンコールなどを用いることができる。この反射体構成要素43も、第一の実施の形態と同様に、金属反射面を有するようにしている。そして、このような反射体構成要素43を、布体に一定の距離を設けて縫いつけ、その布体を室内空間の天井6aや壁面6bに取り付ける。この反射体構成要素43を天井6aに取り付ける場合は、第一の実施の形態と同様に線状の保持体5を用い、また、壁面6bなどに反射体構成要素43を取り付ける場合は、ある程度反射体構成要素43の反射面を投影機2側に向けておけるようにすべく、細い針金やゴムなどの保持体5を用いる。但し、このように反射体構成要素43を取り付ける場合、反射体構成要素43の角度が風などによって自由に変化できるような状態としておく。
【0029】
そして、このように室内空間の全面に反射体構成要素43を取り付けた後、投影機2を用いて星を投影すると、その出力された光が、一の反射体構成要素43に入射し、その正反射位置にいる観察者に対して強い反射光が照射する。一方、室内空間の風などによって反射体構成要素43の角度が微少に変化した場合、その反射体構成要素43からの乱反射光がその観察者に届くため、弱い光の星として認識される。そして、これらの反射体構成要素43の揺動を繰り返すことによって星に瞬きを与えることができるようになる。
【0030】
このように、上記実施の形態によれば、反射角度の異なる複数の反射面構成要素(第一の反射面41や第二の反射面42など)を備えたスクリーン本体4を備え、このスクリーン本体4に星の映像を映し出すようにしたので、星の公転や観察者の見る位置の僅かな変化によって反射面が変化し、これに伴って、星に瞬きを与えることができるようになる。しかも、低コストかつ簡単に光の瞬きを実現することができるようになる。
【0031】
また、上記実施の形態では、スクリーン本体4を揺動させるようにしたので、スクリーン本体4の揺動によって天体の星が固定した状態であっても、星に瞬きを与えることができるようになる。
【0032】
さらに、第一の実施の形態では、第一の反射面41と第二の反射面42を形成する場合、金属箔に皺を付けた後、引き延ばすことによって複数の反射面を形成するようにしたので、市場に流通している安価なアルミ箔などを利用してスクリーン本体4を形成することができるようになる。
【0033】
加えて、第一の反射面41と第二の反射面42を揺動させる際、建物の天井6aから吊り下げられた保持体5によって揺れを生じさせるようにしたので、エアコンや扇風機の風などによってスクリーン本体4を揺らすことができ、簡単な構造で星に瞬きを与えることができるようになる。
【0034】
また、第二の実施の形態では、スパンコールなどの反射体構成要素43を複数壁面6bに敷設するとともに、その反射体構成要素43を揺動させるように保持体5で保持させるようにしたので、小さな風の力によって反射体構成要素43を揺動させることができ、きれいな瞬きを実現することができるようになる。
【0035】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0036】
例えば、上記実施の形態では、エアコンや扇風機の風などによってスクリーン本体4を揺動させるようにしたが、これに限らず、強制的な加振装置によってスクリーン本体4を揺動させるようにしてもよい。また、第二の実施の形態のように複数の反射体構成要素43を用いてスクリーン本体4を構成する場合は、部分的に反射体構成要素43の揺動と固定を選択するようにしてもよい。このような方法としては、例えば、惑星を投影する場所については反射体構成要素43を固定しておき、常に同じ輝きの状態としておいて恒星と惑星の違いを説明する場合などに有効である。
【0037】
また、上記実施の形態では、線状の保持体5でスクリーン本体4や反射体構成要素43を保持させるようにしたが、これに限らず、スクリーン本体4などを揺動させることのできるような部材であればどのような部材で保持するようにしてもよい。
【0038】
さらに、上記実施の形態では、スクリーン本体4や反射体構成要素43を金属体によって構成しているが、これに限らず、紙やプラスチックなどに金属蒸着を施して構成するようにしてもよい。または、ある程度の反射率を維持できる場合は、その他の素材で構成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第一の実施の形態におけるプラネタリウムの概略を示す図
【図2】同形態におけるスクリーン本体近傍の拡大図
【図3】同形態におけるスクリーン本体の反射状態を示す図
【図4】本発明の第二の実施の形態におけるスクリーン本体の拡大図
【図5】同形態における反射体構成要素の反射状態を示す図
【符号の説明】
【0040】
1・・・プラネタリウム
2・・・投影機
3・・・投影スクリーン体
4・・・スクリーン本体
41・・・第一の反射面
42・・・第二の反射面
43・・・反射体構成要素
5・・・保持体
50・・・布体
6a・・・天井
6b・・・壁面
7・・・正反射の方向
A・・・観察者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラネタリウムの投影機から出力された星の映像を映し出す投影構造において、
それぞれ反射角度が異なる複数の反射面構成要素を備えた金属製反射体を備え、当該金属製反射体に前記星の映像を映し出すようにしたことを特徴とするプラネタリウムにおける投影構造。
【請求項2】
プラネタリウムの投影機から出力された星の映像を映し出す投影構造において、
それぞれ反射角度の異なる複数の反射面構成要素を備えた金属製反射体と、
当該金属製反射体を揺動させる揺動体とを備えてなることを特徴とするプラネタリウムにおける投影構造。
【請求項3】
前記金属製反射体が、金属表面を有する紙葉類に皺を付けた後、引き延ばして複数の反射面構成要素を形成したものである請求項1に記載のプラネタリウムにおける投影構造。
【請求項4】
前記揺動体が、建物の天井から金属製反射体を吊り下げる保持体によって構成されるものである請求項1または2に記載のプラネタリウムにおける投影構造。
【請求項5】
前記金属製反射体を独立して複数設けた請求項1または2に記載のプラネタリウムにおける投影構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−31571(P2009−31571A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−196066(P2007−196066)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(506283400)
【Fターム(参考)】