説明

プラネタリウムファイバ照明装置

【課題】投影ユニットの恒星原板に、実際に投影されるべき恒星の数よりも多いファイバを配置した上で、このファイバの入射端面に光を導く際に、画像生成手段を通すことにより、個別のファイバを通る光量や色を制御または光量をオンオフさせることにより、所望のファイバのみに所定の光量の光を導き、自在な配置で星像を投影し、所望の星空を再現するプラネタリウムファイバ照明装置を提供する。
【解決手段】光源からの光を、透過型液晶パネル4を通過させた後、その像を光ファイバ束13の入射面に結像させる。光ファイバ束13の出射側が投影レンズ10に向かって設置される個々の恒星に相当する点状像を投影するように構成する。光ファイバ束13の本数は、本来投影されるべき恒星の数よりも多く、透過型液晶パネル4の個別の画素の制御により、各光ファイバを通る光をオンオフし、実際に投影すべき恒星の配置に応じた光ファイバのみに光を導く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドーム状スクリーンに星空を投影するプラネタリウム装置に利用するファイバ照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドーム状スクリーンに星空を投影するプラネタリウムとして複数の恒星原板と投影レンズを有し、全天を分割して投影する光学式プラネタリウムが従来より知られている。
恒星原板,投影レンズおよび光源を有する恒星球を、日周軸,緯度軸を中心に回転させることにより、任意の緯度,経度および日時の星空を投影することができる。
これら光学式恒星投影機では、恒星原板の孔の直径を等級に応じた値(大きさ)に設定することにより、恒星の固有の明るさを再現する。すなわち、恒星の光度の平方根に比例した直径に設定することにより、星の明るさを投影される面積に置き換え、擬似的に明るさを再現する。
【0003】
しかしこの方式では、1等星などの輝星の像の直径が大きくなりすぎ、本来は鋭い点像として見えなければならないところが、面積体として見えてしまい不自然である。そこでしばしば、輝星投影機と呼ばれる1等星のそれぞれに専用に割り当てた投影機を用いて、輝度を高めて投影することが行われていた。輝星投影機では、専用の光学系で光を絞り込むために小さく鋭いリアルな輝星像を投影することができる。また、輝星投影機に個別に設けられた光源の明るさを制御するか、または輝星投影機に導く光学系にシャッタを設けることにより、輝星の明るさを個別に制御して瞬き現象などを再現できるものも存在する。さらにドーム状の遮蔽物のパターンに応じてそれぞれの輝星の投影光をオンオフする発明が存在する。
【0004】
また、恒星像の明るさを保ちながら星像を小さくしてリアルにするために、恒星原板に相当する部分に、光ファイバを用いて、個別の恒星にそれぞれファイバで光を導くファイバ光学投影方式が知られている。
一方、近年はこうした恒星原板によらず、コンピュータで生成した映像を液晶やDLP方式などのプロジェクタによって投影するディジタルプラネタリウムが登場している。ディジタルプラネタリウムは、ドーム中心に魚眼レンズを装着したプロジェクタにより、1台で全天を覆うものや、ドーム周辺部に複数のプロジェクタを配置して全天を覆うものなどがある。いずれも、映像信号により星の動きを再現できるため、可動部が必要なく、しかも光学式プラネタリウムでは困難な星の固有運動や低空での減光、複雑なまたたき現象、前景に障害物が存在するシーンで、障害物に重なる恒星を消して不自然さを解消するなどの演出が可能である。
【0005】
しかし従来のプラネタリウム装置には以下のような問題点があった。すなわち、従来の光学式プラネタリウム装置では、投影される星空の日時や緯度,経度を変えることができても、それぞれの恒星の明るさを、遮蔽物が投影されたときに消すなどの演出ができなかった。輝星投影光を任意に遮蔽する発明であっても、それぞれの輝星の投影機にシャッタを設ける方式であり、輝星の数が少なければまだしも、輝星の数が増えた場合には投影機や制御回路が煩雑になりサイズとコストアップになる問題点があった。
また、ファイバ光学投影方式では、それぞれ微妙に異なる恒星の固有の明るさの差を再現するために、ファイバの太さを等級ごとに変えたり、ファイバの出射端にそれぞれ減光させるフィルタや絞りを設けるなどが必要であり、少なくとも数千個以上という膨大な恒星を再現するには、それぞれの恒星の明るさに応じたこれらの装着は非常な手間を伴い、コストアップの原因になるばかりでなく、変光星などの再現は難しいという欠点があった。
【0006】
さらに、従来の光学式恒星投影機では、実際の恒星の配置に応じた孔パターンを有するか、または光ファイバを配置された恒星原板を使用しなければならないが、複数の投影面で星空を完成させる場合、これが複数必要である。しかも当然ながら星の配置は規則的ではないため、投影面ごとに恒星原板は異なるものを用意しなければならないという問題点があった。また、恒星原板は固定した配置の星空しか投影できないため、長年月にわたる星の固有運動や、恒星間飛行を再現することはできなかった。また、恒星の投影位置精度を高く保つには、恒星投影機の設計情報やドームの直径、また投影レンズの歪み特性など多くの幾何学的なパラメータを考慮して恒星原板を設計する必要があるが、設計時に想定したドームの直径と、実際に使うドーム径が一致しなければ、星の投影位置が所望の位置とずれてしまい、修正が難しい問題点があった。さらには、投影レンズには焦点距離などの結像特性に若干のばらつきが生じるため、それぞれの恒星原板の設計時に、これらのばらつきも考慮して、個別のレンズの特性を測定して設計するか、またはばらつきをごく小さくなるように投影レンズを製造する必要があり、製造コストを上昇させていた。特にファイバ方式では1本ずつのファイバを所定の位置に配する作業が非常に手間がかかり、コストの上昇につながるばかりか、万一どれかひとつのファイバが経年劣化や製造上の問題で断線してしまうと、その星が欠損してしまい、修復が非常に困難であるという問題点があった。
【0007】
また、ディジタルプラネタリウムでは、一様に照明された投影面を液晶やDLPなどの素子で遮光することで映像を生成する方式であるため、元々の投影面(ホワイト面)以上の輝度を出すことができず、輝星投影機を用いた光学式プラネタリウムのように輝星をリアルに再現することができない問題点があった。
また、光ファイバや光ファイバ束を用いて複数の恒星投影筒を照明して恒星を投影しつつ高輝星投影筒に光ファイバを用いて高輝度の恒星像を投影し、高輝星投影筒には遮光子によって高輝星を独立に遮光でき、恒星投影筒の照明用光ファイバの光路中には、光ファイバ収束部端面の一部を遮光しながら移動する遮光子を備えた発明が存在する(特許文献1,2)。
【特許文献1】特開2001−109063
【特許文献2】特許第3787249号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしいずれも、高輝星は個別に設けたシャッタにより遮光する方式であるため高輝星の数だけシャッタとその制御回路が必要で煩雑である。また他の恒星をランダムに瞬かせることができるが、こちらは瞬かせるだけの機能しかなく、個別の星のオンオフを独立して制御する機能は一切記載されていない。また、恒星原板に液晶パネルを使用する記載があるものの、液晶パネルは解像度に制約があり、微光星といえども、十分シャープな恒星を投影できる方法を示していない。
【0009】
また、従来の光学式プラネタリウムでは、恒星投影機により恒星を投影することができるが、惑星は恒星天の中で日々刻々と位置を変えるため、恒星と独立した運動機構を持つ専用の投影装置が必要であった。そのために、惑星棚と呼ばれる装置を装着する必要があったが、惑星棚は、ドーム中心に設置する本体投影機のサイズを大きくして観客の視界を妨げるだけでなく、ディジタル映像装置の映像に影を落として映像効果を阻害したりする問題点があった。さらに、恒星投影機と分離独立されたXY制御式惑星投影機は、恒星投影機以外に専用の設置スペースを必要とし、客席数を大きく減じ、また恒星球と分離した機構で、複雑な誤差をコンピュータで補正して制御するが、駆動機構の誤差や経年劣化などにより恒星に対して位置ずれを起こしやすい、また装置の部品点数が増えて製造や保守コストがかさむ欠点があった。さらには、XY式投影機は惑星の数だけ用意しなければならないので、同時に再現できる惑星の数は、XY式投影機の数以上は無理であり、小惑星など多数存在する天体の再現までは難しかった。
【0010】
本発明は上記諸問題を解決するもので、その目的は、投影ユニットの恒星原板に、実際に投影されるべき恒星の数よりも多いファイバを配置した上で、このファイバの入射端面に光を導く際に、画像生成手段を通すことにより、個別のファイバを通る光量や色を制御または光量をオンオフさせることにより、所望のファイバのみに所定の光量の光を導き、自在な配置で星像を投影し、結果的に所望の星空を再現することができるプラネタリウムファイバ照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために本発明の請求項1は、単一または複数の投影ユニット手段により全天の恒星を再現するプラネタリウムの恒星投影機において、光源からの光を、透過型または反射型の画像生成手段を通過させた後、前記画像生成手段の像を、複数の導光手段を束ねた導光束の入射面に結像させて入射させる結像手段を有し、前記導光手段の出射側が投影レンズに向かって設置されることにより個々の恒星に相当する点状像を投影するように構成し、前記導光手段の本数は、本来投影されるべき恒星の数よりも多くなっている構成であって、前記画像生成手段の個別の画素の制御により、個別の導光手段を通る光をオンオフし、実際に投影すべき恒星の配置に応じた導光手段のみに光を導くことにより、所望の星の配置に近い星空を再現することを特徴とする。
本発明の請求項2は、請求項1記載の発明において前記個別の導光手段の透過光量を前記画像生成手段で制御することによって、投影される恒星像の明るさを変更することを特徴とする。
本発明の請求項3は、請求項1または2記載の発明において前記画像生成手段は、透過型素子であり、光源からの光を、前記画像生成手段に通した後、導光束の入射端面に導くことを特徴とする。
本発明の請求項4は、請求項1または2記載の発明において前記画像生成手段は、反射型素子であり、光源からの光を、前記画像生成手段に反射させた後、導光束の入射端面に導くことを特徴とする。
本発明の請求項5は、請求項1,2,3または4記載の発明において前記結像手段は、前記画像生成手段に前記導光束の入射端面を近接させ、前記導光束に画像生成素子の影を落射することを特徴とする。
本発明の請求項6は、請求項1,2,3または4記載の発明において前記結像手段は、前記画像生成手段の像を、結像レンズにより前記導光束の入射端面に結像させることを特徴とする。
本発明の請求項7は、請求項1,2,3,4,5または6記載の発明において前記画像生成手段を光路中に複数設けて前記画素のオンとオフのコントラストを上げ、オフ時の光もれを少なくしたことを特徴とする。
本発明の請求項8は、請求項1,2,3,4,5,6または7記載の発明において前記個別の導光手段をオンオフ制御または光量制御することにより任意の範囲の恒星を減光または消光させ、演出上の事情または現実に観測される天文現象の忠実な再現をすることを特徴とする。
本発明の請求項9は、請求項1,2,3,4,5,6または7記載の発明において前記個別の導光手段をオンオフ制御または光量制御することにより、地平線以下に投影される恒星を遮光することを特徴とする。
本発明の請求項10は、請求項1,2,3,4,5,6または7記載の発明において所定の数の導光手段に所定の光量の光を導くことにより惑星または小惑星を投影することを特徴とする。
本発明の請求項11は、請求項1乃至10記載の発明において前記導光手段は光ファイバまたは光ファイバ束であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、導光手段、例えば光ファイバを用いて光学式特有の高輝度でシャープな恒星像を投影可能ながら、ディジタル式プラネタリウムのような、星の配置までも自在に設定できる柔軟度の高い星空を再現することができる。これにより演出機能と星空のリアルさ、美しさの両面を満足させることができる。また、星の配置を自在に設定できることから、例えば恒星間飛行を行った際や、固有運動が生じる1万年以上過去未来の星座の変形や星の配置の移動なども自在に再現することができる。さらに、投影するドーム径が変わっても、ドームに応じた調整が可能であり、なおかつ実際に投影した状態で個別の星の位置を正しく調整できるため、恒星の投影位置精度を容易に高めることができる。さらには、投影ユニットは、専用のものを個別に製造する必要がないため、部品製造や在庫管理を合理化し、コストダウンや保守性を高めることができる。また、複雑な惑星投影機構によらず、惑星や小惑星も再現できるので機器がシンプルになり、また惑星や小惑星の数の制限もない多機能なプラネタリウムを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳しく説明する。
図1は、本発明によるプラネタリウムファイバ照明装置の実施の形態を示す機能型投影ユニットの破断斜視図である。機能型投影ユニットは光学式恒星投影機に搭載される。
光源(図示していない)はメタルハライドランプ等の放電灯や、高輝度発光ダイオード、白色レーザなどが用いられる。光源の光が無偏光の場合は、図示しない偏光板または偏光コンバータ(偏光方向を一方向にそろえる板)を通して直線偏光に変換する。
【0014】
このようにしてランプハウス11の入射照明出力端2から出射した光をコンデンサレンズ3で平行光にした後、透過型液晶パネル4(主に高温ポリシリコンTFT素子等)を通し、結像レンズ5を介して光ファイバ束13の光ファイバ束入力端面6に導く。透過型液晶パネル4,結像レンズ5および光ファイバ束入力端面6は透過型液晶パネル4面の虚像が、光ファイバ束の入射端面に結ぶような距離関係となっている。光ファイバ束13の出射端は分岐され、鏡筒9内の恒星原板7上にそれぞれ接続されている。これを恒星点8と呼ぶ。恒星点8は、恒星原板7上に、例えば所定のピッチの碁盤目状に、またはランダム状に配置される。恒星原板7を出射した恒星点8の光は撮影レンズ10によってドームスクリーンに投影される。
【0015】
図2は、光ファイバ入射端面を光軸方向から図示したものであり、透過型液晶パネルの像が入射端面に結んだ状態を示したものである。
光ファイバ束13は、複数のファイバで構成されており、それぞれが光を導くコア16と、その外層を包むクラッド17で構成されている。この光ファイバ束13の光ファイバ束入力端面6に結ぶ液晶画面像は、幅W画素、高さH画素で構成されている。
液晶画面の画素ピッチが、個々のファイバの径に対してある程度小さくてクラッドの肉厚がある程度あるか、または光ファイバ同士の空隙が透過型液晶パネル4の画素ピッチより大きければ、透過型液晶パネル4の一画素を通る光は1つの光ファイバにしか入射しないような構成にできる。
【0016】
図3は、透過型液晶パネルの制御により特定の光ファイバのみ光を通す例を示す図である。透過型液晶パネル4と光ファイバ束13の位置関係は固定されているから、対象となる光ファイバ21に光を通すには、斜線で示された領域の相当画素20のみ透過させればよいことになる。もちろん、透過型液晶パネル4の透過率を制御することも可能である。この光ファイバに光を通せば、この光ファイバで接続された恒星点から光が出射、すなわち点灯させられる。
【0017】
図4は、恒星原板上の恒星点の配置を示したものである。恒星点22は、イメージサークル23内で碁盤目状に等間隔に配置されている。
このような配置として、透過型液晶パネル4の全面を仮に透過状態にして図1のような投影ユニットを用いてドームスクリーンに投影すると、碁盤目状に規則正しく並んだ星が投影される。ここで透過型液晶パネル4の画素の制御により、任意の光ファイバ出射端の光量が制御できるので、任意の星だけ表示したり、明るさを制御したりすることができる。したがって、この恒星点22のピッチが十分細かければ、本来投影したい星の配置にならい、所望の恒星点のみ所望の明るさで点灯させれば、本物の星空とほぼ同様の投影をすることができる。
【0018】
図5は本発明によるプラネタリウムファイバ照明装置でオリオン座を投影したときの表示の例を説明するための図である。
白丸25で表示されているのが本物の星の厳密な位置である。また、碁盤目の交点に配置されているのが光ファイバによる恒星点の位置である。ここで、それぞれの白丸で表される恒星に最も近い恒星点を選び出し、これをその恒星に相当する明るさで表示(黒丸26)すれば、オリオン座が投影される。
光ファイバはあらかじめ固定されているため、星の位置は、完全に任意に設定できるわけではない。従って、光ファイバが配置されているピッチが大きければ、光ファイバの本数が少なくできる反面、投影される星の位置は所望の位置に比べてずれてしまう。
【0019】
本図では、説明容易のためピッチを荒く書いているため、黒丸で表示される星の位置にはずれが生じているのが分かる。しかし実際にはピッチを十分細かくすることにより、表示される位置の誤差は実用上支障のない範囲に収めることができる。また、互いに近接している星などで、非常に細かい位置関係の再現が求められる特定の星は、別途設けた輝星投影機などによって投影すれば良い。
投影できる恒星の数が多ければ、すなわち最微等級が暗ければ、より星の分布密度が細かく、より光ファイバの本数とピッチが密であることが求められるので、製造コストと所望する性能に応じて、適切なピッチと恒星の最微等級を設定するのが良い。例えば、5.0等級まで投影するのであれば、ピッチは角度にして0.1度程度が適切と考えられる。また、この実施の形態では光ファイバの配置を規則的な碁盤目状としたが、おおむね密度が保たれていれば必ずしも碁盤目状である必要はなく、たとえばランダムの配置でも良い。
【0020】
プラネタリウムでは、よりリアルな星空を再現するには、より暗い星まで投影することが望ましいが、その場合、一定より明るい星のみ本発明によるファイバ照明装置で投影し、それより暗い微光星は別途設けた公知の光学式プラネタリウム同様の投影ユニットにより投影すれば良い。また、別途設置したディジタル投影により微光星を投影してもよい。いずれの方法でも、微光星であれば、従来形の光学式投影ユニットやディジタル投影装置でも、星像を肥大させずに投影することが可能なため、結果的にすべての星像がきわめてシャープで小さく、きわめてリアルな星空を再現することができる。
【0021】
また、上記の実施の形態では、星の色が考慮されていなかったが、透過形液晶パネルに色素等を有するカラー液晶パネルを使用すれば、個別の星の色も再現できる。また、モノクロの液晶パネルを3枚使用し色合成をしてもよい。
図6は、3枚の液晶パネルを用いて星の色を再現する投影ユニットの光源部分の実施の形態を示す図である。
【0022】
ライトガイド30によって入射した光は、コンデンサレンズ31によって平行光にされた後、色分解プリズム32によって、赤とそれ以外の色に分けられる。赤い光はプリズム35によって90度曲げられ、コンデンサレンズ36を経由して液晶パネル(R)37に入射する。赤以外の色は、色分解プリズム33によって緑と青に分けられ、緑の光はコンデンサレンズ36を経由して液晶パネル(G)39に、青い光はプリズム34および40で180度曲げられ、コンデンサレンズ41を経由して液晶パネル(B)42にそれぞれ入射する。各液晶パネルを通過した光は色合成プリズム43に各方向から入射し、合成されて結像レンズ44を介して光ファイバ束入射端面45に結像する。液晶パネル(R),(G),(B)それぞれを制御することにより、個別の光ファイバを通る光量のみならず色も制御でき、結果的に投影される星の色を個別に制御することができる。
【0023】
図7は透過形液晶パネルを制御する制御回路のブロック図であり、このブロック図によって具体的手順を説明する。この制御回路は、投影ユニット毎に設けられる。
恒星データメモリ部50は、投影すべき恒星の位置を記憶している。本来の恒星のデータは赤道座標で与えられるが、まず恒星投影機上の投影ユニットの取り付け角や位置を元に、投影ユニット上の相対角位置に変換されている必要がある。
図8は投影ユニット上の相対角位置を説明するための図である。
恒星投影機60上に取り付けられた投影ユニット61は、あらかじめ設定された赤経,赤緯方向に光軸が向けられてセットされている。この光軸と、光軸とドーム上の恒星像のなす角を、赤経方向と赤緯方向で表した角度が、投影ユニット上の相対角位置(Ax ,Ay)である。赤経赤緯から、ax,ay に変換する具体的計算方法は、従来の光学式プラネタリウムの設計手法と同様であるので説明を省略する。
【0024】
図7において、恒星データメモリ部50には、(Ax,Ay) の形で、その投影ユニットで投影されるべき全恒星の位置情報と、明るさ情報が記憶されている。
一方、輝点インデックスメモリ部51は、輝点をドームスクリーンに投影したときの投影像の投影ユニット上の相対角位置(Ax,Ay) 情報と、この輝点を点灯させるための透過型液晶パネル上の画素座標をインデックスにした情報を記憶したものである。これをすべての輝点について記憶する。光ファイバの入射端に対して結像する透過型液晶パネルの画素のサイズが小さいので、通常、1つの輝点に対応する液晶画素は複数となる。従って、輝点座標- 液晶画素インデックスメモリ部の構造は図9のようになる。すなわち、複数の輝点のそれぞれの座標(Ax,Ay) を記憶する輝点座標記憶部62、個々の輝点に対応し複数の液晶画素座標を記憶する液晶画素記憶部63があり、所定の値が記憶されている。輝点にはシーケンシャルな番号(輝点番号1,2,3・・・n)が割り振られる。
【0025】
この輝点インデックスメモリ部51と、恒星データメモリ部50のリンクを行うのがデータリンカ52である。恒星データそれぞれに対して、対応する輝点番号を設定するものである。このデータリンカ52で作成された恒星データと輝点番号の関連テーブルが、輝点−恒星データリンクテーブル53に記憶される。
表示コントローラ54は、データリンカ52を参照して、ひとつ1つの恒星データにリンクされた輝点インデックスメモリ部51から液晶画素の座標を読み出して、恒星の明るさに相当する輝度で透過型液晶パネル56の画面に描画する。実際の透過型液晶パネル56への描画駆動は、液晶パネルコントローラ55を介して行う。
【0026】
輝点インデックスメモリ部51に格納するデータを作成するには様々な方法が考えられるが、恒星原板面をカメラ撮像した状態で、透過型液晶パネル56の画素を一つずつ光らせ、発光する点の座標を撮像し、その映像を画像処理して輝点の座標を取得、これと発光させた透過型液晶パネル56の画素座標をリンクさせるなどの手段を取れば自動的に行うことができる。
また、輝点−恒星データリンクテーブル53のデータを得るには、恒星データを1つずつ読み出した上、輝点インデックスメモリ部51から輝点座標をひとつひとつ読み出し、この恒星データのax,ay に最も近い輝点の(ax,ay) を検索し、この輝点番号を、恒星データと関連づけて記憶すればよい。このとき、もしある恒星データに対する距離が所定の範囲内にある輝点が見つからない時は、投影不能としてエラーを表示したり、別途ブライトスター投影機で投影すべき恒星データとして出力することもできる。
【0027】
このようにして、任意の恒星データに基づく星野を投影することができる。これにより、従来は投影面の数だけ専用に制作された恒星原板を制作しなければならず、しかも投影するドーム径やレンズの特性が異なれば、それにも併せて異なる恒星原板を制作する必要があったが、本発明によれば、投影する恒星の位置、明るさをデータで指定できるため、投影ユニットを含めて共通の部品として製作すればよいので、量産化しやすく制作コストを下げることができる。また万一の破損時の補修部品としても共通で用意すれば良いので部品管理や保守面でも負担を軽くすることができる。
【0028】
恒星を投影する光は、原板全面をくまなく照明する従来の光学系と異なり、光ファイバにより輝点に光を導き、その収束部を集中的に照明するので、従来のフォトリソグラフィーで製造された恒星原板を使用する方式に比べて、高効率で高輝度の星像を得ることができる。また、実施の形態では具体的なアルゴリズムを記載していないが、透過型液晶パネルは任意の画素を任意の透過率に制御可能なため、投影される恒星を個別に瞬かせたり、ドームスクリーン上で地平線下に隠れる部分や別途映写される他の物体と重なる部分をマスキングするなど、従来の光学式プラネタリウムでは不可能であった演出機能を持たせることができる。また、投影機のセッティングにおいても、投影ユニット自体を動かさずに電気的に恒星の位置を調整できるため設置調整コストが低廉で、かつ高精度の調整を行うことができる。
【0029】
図10は透過型液晶パネル部分の他の実施の形態を説明するための図である。
液晶パネルなどでは、コントラストの制限があり、遮光状態に設定しても完全に遮光することができない。そこで遮光時の明度をより下げ、コントラストを上げるため、液晶パネルを複数個カスケードで並べることにより、コントラストを向上させることができる。本図ではライトガイド70から出射する光はコンデンサレンズ71で平行光にされ、第1透過型液晶パネル72で各画素および各光ファイバの光量が制御される。第1透過型液晶パネル72を出た光はリレーレンズ73によって第2透過型液晶パネル74に結像させ、第2透過型液晶パネル74で各画素および光ファイバの光量が制御される。第2透過型液晶パネル74を出射した光は、結像レンズ75によって光ファイバ入射面76に結像される。
【0030】
以上の実施の形態は透過型液晶パネルについて説明したが、透過型液晶パネルなどの透過型素子に限らず、たとえばDMD素子やLCOS素子などのような反射型素子においても実施可能である。DMD素子を利用した例では、光源ランプからの光が集光レンズでDMD素子面に集光され、DMD素子で反射した光が結像レンズを通じて光ファイバ入射端端にDMD素子の像を結ぶ構成とすることにより、透過型液晶パネルと同様の効果を有する。
【産業上の利用可能性】
【0031】
ドーム状スクリーンに星空を投影するプラネタリウム装置に利用するファイバ照明装置である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明によるプラネタリウムファイバ照明装置の実施の形態を示す機能型投影ユニットの破断斜視図である。
【図2】光源方向から見たファイバ入射端面を示す図である。
【図3】光源方向から見たファイバ入射端面における制御の対象を説明するための図である。
【図4】恒星原板の恒星点の配置を説明するための図である。
【図5】本発明によるプラネタリウムファイバ照明装置でオリオン座を投影したときの表示の例を説明するための図である。
【図6】3枚の液晶パネルを用いて星の色を再現する投影ユニットの光源部分の実施の形態を示す図である。
【図7】本発明における液晶パネルを制御する制御回路の実施の形態を示すブロック図である。
【図8】投影ユニット上の相対角位置を説明するための図である。
【図9】輝点座標−液晶画素インデックスメモリ部の構造を説明するための図である。
【図10】他の液晶パネル部分の実施の形態を説明するための図である。
【符号の説明】
【0033】
1 入射照明用ファイバ
2 入射照明出力端
3 コンデンサレンズ
4 透過型液晶パネル
5 結像レンズ
6,45 光ファイバ束入力端面
7 恒星原板
8 恒星点
9 鏡筒
10 投影レンズ
11 ランプハウス
12 機能型投影ユニット
16 コア
17 クラッド
18 液晶画面像
19 光ファイバ
20 相当画素
21 対象となる光ファイバ
22 恒星点
23 イメージサークル
25 白丸
26 黒丸
30 ライトガイド
31,36,38,41 コンデンサレンズ
32,33 色分解プリズム
34,35,40 プリズム
37,39,42 液晶パネル
43 色合成プリズム
44 結像レンズ
45 光ファイバ束入力端面
50 恒星データメモリ部
51 輝点インデックメモリ部
52 データリンカ
53 輝点・恒星データリンクテーブル
54 表示コントローラ
55 液晶パネルコントローラ
56 液晶パネル
60 恒星投影機
61 投影ユニット
62 輝点座標記憶部
63 液晶画素座標記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一または複数の投影ユニット手段により全天の恒星を再現するプラネタリウムの恒星投影機において、
光源からの光を、透過型または反射型の画像生成手段を通過させた後、前記画像生成手段の像を、複数の導光手段を束ねた導光束の入射面に結像させて入射させる結像手段を有し、
前記導光手段の出射側が投影レンズに向かって設置されることにより個々の恒星に相当する点状像を投影するように構成し、
前記導光手段の本数は、本来投影されるべき恒星の数よりも多くなっている構成であって、前記画像生成手段の個別の画素の制御により、個別の導光手段を通る光をオンオフし、実際に投影すべき恒星の配置に応じた導光手段のみに光を導くことにより、所望の星の配置に近い星空を再現することを特徴としたプラネタリウムファイバ照明装置。
【請求項2】
前記個別の導光手段の透過光量を前記画像生成手段で制御することによって、投影される恒星像の明るさを変更することを特徴とする請求項1記載のプラネタリウムファイバ照明装置。
【請求項3】
前記画像生成手段は、透過型素子であり、光源からの光を、前記画像生成手段に通した後、導光束の入射端面に導くことを特徴とする請求項1または2記載のプラネタリウムファイバ照明装置。
【請求項4】
前記画像生成手段は、反射型素子であり、光源からの光を、前記画像生成手段に反射させた後、導光束の入射端面に導くことを特徴とする請求項1または2記載のプラネタリウムファイバ照明装置。
【請求項5】
前記結像手段は、前記画像生成手段に前記導光束の入射端面を近接させ、前記導光束に画像生成素子の影を落射することを特徴とする請求項1,2,3または4記載のプラネタリウムファイバ照明装置。
【請求項6】
前記結像手段は、前記画像生成手段の像を、結像レンズにより前記導光束の入射端面に結像させることを特徴とする請求項1,2,3または4記載のプラネタリウムファイバ照明装置。
【請求項7】
前記画像生成手段を光路中に複数設けて前記画素のオンとオフのコントラストを上げ、オフ時の光もれを少なくしたことを特徴とする請求項1,2,3,4,5または6記載のプラネタリウムファイバ照明装置。
【請求項8】
前記個別の導光手段をオンオフ制御または光量制御することにより任意の範囲の恒星を減光または消光させ、演出上の事情または現実に観測される天文現象の忠実な再現をすることを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6または7記載のプラネタリウムファイバ照明装置。
【請求項9】
前記個別の導光手段をオンオフ制御または光量制御することにより、地平線以下に投影される恒星を遮光することを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6または7記載のプラネタリウムファイバ照明装置。
【請求項10】
所定の数の導光手段に所定の光量の光を導くことにより惑星または小惑星を投影することを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6または7記載のプラネタリウムファイバ照明装置。
【請求項11】
前記導光手段は光ファイバまたは光ファイバ束であることを特徴とする請求項1乃至10記載のプラネタリウムファイバ照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−237481(P2009−237481A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86466(P2008−86466)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(508067839)有限会社大平技研 (6)
【Fターム(参考)】