説明

プラネタリウム装置

【課題】 プラネタリウム装置において、操作卓から離れた観客席の中や正面でオペレータが操作しながら解説することを可能とする。
【解決手段】 ドーム内に設置した1台または複数台のビデオカメラ1により、ドーム内のオペレータを撮影してその映像を制御装置10に取り込み、オペレータの手に取り付けられた目印の位置の変化を運動情報として検出すると共に、この運動情報をオペレータが意図するプラネタリウム装置の動作命令として解析し、各投映機および演出装置に制御信号を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は光学式プラネタリウム投映機、またはビデオプロジェクタからスクリーンに星野を投映するプラネタリウム投映機に関し、より詳細にはオペレータによる操作手段に改良を加えたプラネタリウム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラネタリウム装置はオペレータにより操作されるが、従来の手動操作においては、光学式プラネタリウム投映機の軸を回転させる手法として、ドーム内に設置された操作卓のパネルに配置されたボリウムをオペレータが捻ることにより、操作卓に接続されたプラネタリウム制御装置によって天文計算が行われ、その結果に基づいて軸を回転させるのが一般的であった。また、プロジェクタからスクリーンに星野を投映するプラネタリウム投映機においても同様の制御方法が採用されてきた。
【0003】
しかし、操作卓による制御方法においては、プラネタリウム上演中の暗闇の中で、オペレータが記憶に頼り、手探りでパネルに配置されたボリウムを探さなければならないため不便であった。また、オペレータはプラネタリウム装置を操作するためには、操作卓に手が届く範囲にオペレータが居る必要があり、オペレータは操作卓を離れることができなかった。
【0004】
ところで、オペレータの体にその動きを検出するセンサを装着し、その動きに応じて機械を操作する技術は広く知られたおり(特許文献1)、これをプラネタリウム装置の操作に適用した発明も公知である(特許文献2)。
【特許文献1】特開平08- 014911公報
【特許文献2】特開2001−356684公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の特許文献2に記載の発明はオペレータの腕の動きに応じてプラネタリウム装置の制御を行おうというものであり、これらに応じた腕の動きを予め決めておかなければならない。しかしながら、実際のプラネタリウム装置において想定される動作は多種多様であり、腕の動きの種類もこれらに応じて多種多様なものとならざるを得ず、オペレータにおいてこれらを覚えておくことは大変な負担である。
【0006】
一方、人間の習性として無意識に腕を動かすことがあり、この無意識の動きによりプラネタリウム装置に誤った制御指示を出すおそれもある。
【0007】
また、オペレータはセンサを体に装着しなければならない煩わしさがあった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のプラネタリウム装置は以上の従来技術の問題点に鑑みて創作されたものであり、ドーム内に設置した1台または複数台のビデオカメラにより、ドーム内のオペレータの挙動を撮影してその映像を制御装置に取り込み、オペレータの手に取り付けられた目印の位置の変化を運動情報として検出すると共に、この運動情報をオペレータが意図するプラネタリウム装置の動作命令として解析し、各投映機および演出装置に制御信号を送信することを特徴とする
【0009】
また、ここでは第2発明として、前記のプラネタリウム装置においてオペレータにより引き起こされる運動情報のうちの任意のもののみをオペレータの選択により有効とする手段および、運動情報をオペレータが意図する種類の装置に対する命令として選択する手段を設けることも開示する。
【0010】
なお、前記のプラネタリウム装置の動作命令としては例えば次のようなものが挙げられる。
(1) 光学式プラネタリウム投映機の軸の回転。
(2) ビデオプロジェクタからスクリーンに投映される映像の回転。
(3) 観客に対する宇宙空間の飛行の疑似体験。
(4) 光学式プラネタリウム投映機の電球の調光。
(5) ビデオプロジェクタからスクリーンに投映される映像の全部または一部の明るさの設定。
(6) 自動演出プログラムの読み込み、再生、停止、一時停止。
【発明の効果】
【0011】
以上の構成からなるこの発明のプラネタリウム装置によれば、操作卓に全く手を触れることなく、オペレータは手を傾けたり、捻ったり、振ったりする感覚的な動作により、操作卓から離れた場所でも、オペレータの思いのままに光学式プラネタリウム投映機の軸やビデオプロジェクタから投映された映像を回転させたり、恒星電球を調光させたり、自動演出ファイルを再生させたりできるようになる。
【0012】
従来は、操作卓が客席の後方に設置されており、また操作卓から離れて操作できることに制限があったため、オペレータが観客に対面して解説を行うことが困難だった。この発明により、オペレータは操作卓から離れた観客席の中や正面で解説が可能になり、学習投映においては生徒の理解力の向上に寄与する。また、対面することにより観客との対話が可能なプラネタリウム投映が可能になる。
【0013】
一方、オペレータは特別なセンサを体に装着する必要がないので、通常の状態で操作を行うことができ煩わしさがない。
【0014】
次に、第2発明によれば、オペレータにより引き起こされる運動情報の内の任意のもののみをオペレータの選択により有効とするので、無意識の動きによりプラネタリウム装置に誤った制御指示を出すことがない。
【0015】
また、第2発明によれば、運動情報をオペレータが意図する種類の装置に対する命令として選択する手段を有するので、オペレータにより引き起こされる運動の種類は最小限とすることが可能となり、オペレータに過度の負担をかけることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の具体的実施例を添付図面に基づいて説明する。図1はこの発明のプラネタリウム装置の全体のブロック図である。図中符号1はドーム内に設置した1台または複数台のビデオカメラであり、ドーム内のオペレータを撮影してその映像を制御装置(ホストコンピュータ)に送信する。図中符号10は受信した映像から運動情報を取り出し、これをオペレータが意図するプラネタリウム装置の動作命令として解析し、各投映機および演出装置に制御信号を送信する制御装置(ホストコンピュータ)である。この制御装置10は通常の操作卓(コンソールパネル)12も備える。図中符号20はプラネタリウム装置の光学式恒星投映機22、光学式惑星投映機23、アクセサリー21を制御するためのプラネタリウム制御コンピュータ、図中符号30はプラネタリウム装置の各種のビデオプロジェクタ32を制御するためのビデオ映像制御コンピュータであり、前記の制御装置10からの制御信号を受け付ける。なお、ビデオカメラ1は制御装置10に状態を絶え間なく送信しても、あるいは変化の生じたときだけ送信するようにしても、どちらでもよい。
【0017】
図中符号2はオペレータが携帯する送信機であり、オペレータにより引き起こされる運動情報のうちの任意のもののみをオペレータの選択により有効としたり、運動情報をオペレータが意図する種類の装置に対する命令として選択するために使用される。
【0018】
この発明において、オペレータの手に取り付けられた目印の位置の変化を運動情報として検出するには、例えば、オペレータの5本の指に目印を取り付け、グー、チョキ、パーを判定したり、腕を回す、肘を伸ばす、肘を曲げる動作を判定することが想定できる。
【0019】
また、検出したオペレータの手の動きは、投映装置の制御だけではなく、
(1) 自動演出ファイルを開いたり、
(2) 自動演出ファイルを再生したり、
(3) 自動演出ファイルの再生を停止または一時停止したり、
〜できるようにしてもよい。
【0020】
例えば、手の形に対して、あらかじめ自動演出ファイルを登録しておき、人差し指だけを1本立てた手の形を認識したときは、自動演出ファイルの1番を開く、
人差し指と中指の2本立てた手の形を認識したときは、自動演出ファイルの2番目を開く、 左から右への手の動きを検出したときは、自動演出ファイルを再生する、
上から下への手の動きを検出したときは、自動演出ファイルの再生を停止する、
〜ことなどが想定できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明のプラネタリウム装置のブロック図。
【符号の説明】
【0022】
1 ビデオカメラ
10 制御装置(ホストコンピュータ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドーム内に設置した1台または複数台のビデオカメラにより、ドーム内のオペレータの挙動を撮影してその映像を制御装置に取り込み、オペレータの手に取り付けられた目印の位置の変化を運動情報として検出すると共に、この運動情報をオペレータが意図するプラネタリウム装置の動作命令として解析し、各投映機および演出装置に制御信号を送信することを特徴とするプラネタリウム装置。
【請求項2】
オペレータにより引き起こされる運動情報のうちの任意のもののみをオペレータの選択により有効とする手段および、運動情報をオペレータが意図する種類の装置に対する命令として選択する手段を設けたことを特徴とする請求項1記載のプラネタリウム装置。
【請求項3】
検出したオペレータの運動情報により判定されるオペレータが意図するプラネタリウム装置の動作は、光学式プラネタリウム投映機の軸の回転である請求項1または2記載のプラネタリウム装置。
【請求項4】
検出したオペレータの運動情報により判定されるオペレータが意図するプラネタリウム装置の動作は、ビデオプロジェクタからスクリーンに投映される映像の回転である請求項1から3のいずれかに記載のプラネタリウム装置。
【請求項5】
検出したオペレータの運動情報により判定されるオペレータが意図するプラネタリウム装置の動作は、観客に対する宇宙空間の飛行の疑似体験である請求項1から4のいずれかに記載のプラネタリウム装置。
【請求項6】
検出したオペレータの運動情報により判定されるオペレータが意図するプラネタリウム装置の動作は、光学式プラネタリウム投映機の電球の調光である請求項1から5のいずれかに記載のプラネタリウム装置。
【請求項7】
検出したオペレータの運動情報により判定されるオペレータが意図するプラネタリウム装置の動作は、ビデオプロジェクタからスクリーンに投映される映像の全部または一部の明るさの設定である請求項1から6のいずれかに記載のプラネタリウム装置。
【請求項8】
検出したオペレータの運動情報により判定されるオペレータが意図するプラネタリウム装置の動作は、自動演出プログラムの読み込み、再生、停止、一時停止である請求項1から7のいずれかに記載のプラネタリウム装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−169060(P2009−169060A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6635(P2008−6635)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000142894)株式会社五藤光学研究所 (9)
【Fターム(参考)】