説明

プラムリンチドの製造方法

プラムリンチド、37アミノ酸の配列:
【化1】


を有するペプチドが、それぞれアミノ酸残基1−12、13−24、および25−37を含む断片から、3つの断片の収束的合成方法により製造される。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、プラムリンチドの新規な収束的合成に関し、これは式:
【化1】

【0002】
の37量体ペプチドである。
【0003】
本発明は、さらに当該プラムリンチドの合成における中間体として、数個の側鎖が保護されたペプチドに関する。
【0004】
プラムリンチド(25,28,29-pro-h-アミリン;Chem. Abstr. Reg. No. 151126-32-8)は、ヒトアミリンの抗糖尿病性の類似体であり、これは、Amylin Pharmaceuticals, Inc.によりSymlin(登録商標)の商品名で販売されている (WO-A-93/10146)。
【0005】
アミリンおよびアミリン類似体の既知の合成 (WO-A-93/10146, US-A-5424394)には、典型的な段階的アプローチが用いられている。個々のアミノ酸残基は、成長するペプチド鎖に共有結合的に連結し、これは共有結合的に固体樹脂支持体(SPPS)に結合する。当該ペプチド鎖の2および7位のシステイン残基間の分子内ジスルフィド結合は、ペプチド鎖の完成後に形成されるが、これは当該ペプチドが樹脂から切断される前である。その合成経路は、非常に長時間に亘り、いくぶん非効率的であるが、これは満足なカップリング収率を達成するためにいくつかのカップリングステップを繰り返さなければならないためである (US-A-5424394)。
【0006】
一般的に、収束的合成はペプチドを構築するための代替的なアプローチであり、これはもちろんプラムリンチドにも適用される(WO-A-2006/045603)。収束的合成の課題は、既知の収束的合成の欠点を克服するために適切な断片およびそれらのカップリングの順序を見出すことである。これらの欠点は、カップリングおよび精製中の溶解度の問題、SPPSと比較してより低い反応速度、およびカップリング中のC末端断片の非常に高いラセミ化のリスクである。プラムリンチドは、37個のアミノ酸残基からなるため、膨大な数の可能な断片およびカップリングの順序が存在する。しかしながら、先行技術、特にWO-A-2006/045603は、適切な断片およびカップリングの順序の具体的な選択に関しては開示していない。
【0007】
本発明の目的は、プラムリンチドのより効率的な合成を提供することであり、これは、収束的反応の既知の欠点を克服し、工業規模の生産に適している。この目的は、請求項1に記載の合成および請求項10乃至21のペプチド断片により達成された。
【0008】
種々の断片のカップリング方法のいくつかの不成功実験(比較例を参照されたい)の後に、驚くべきことに出願人は、3つのペプチド断片、それらのうちの一つは、あらかじめ形成されたジスルフィド結合を有する2つのシステイン残基を含む、の特異的なカップリングを含む適切な方法を見出した。特に、当該発明の方法は、以下のステップを含む:
(a) 式:
【化2】

【0009】
ここで、Pは側鎖保護基に対して直交する保護基である、
の側鎖が保護されたペプチドを、式:
【化3】

【0010】
の側鎖が保護されたペプチドと反応させ、式:
【化4】

【0011】
ここで、Pは上で定義した通りである、
の側鎖が保護されたペプチドを得ること、
(b) 当該(a)で生成したペプチドの末端のP保護基を除去すること、
(c) 式:
【化5】

【0012】
の側鎖が保護されたペプチドと当該(b)で生成したペプチドとを反応させ、Bocで保護されたアミノ末端を有する側鎖が保護されたプラムリンチドを得て、(c)で得る生成物の側鎖およびアミノ末端を脱保護し、プラムリンチド(I)を得ること。
【0013】
これ以降、「側鎖保護基に対して直交する保護基」の語は、当該側鎖保護基に影響を与えない方法により切断されてもよい保護基を意味するものと解される。
【0014】
好ましくは、当該保護基Pがフルオレン-9-イルメトキシカルボニル(Fmoc)または2-(4-ニトロフェニル-スルホニル)エトキシカルボニル(NSC)である。
【0015】
最も好ましくは、本発明の方法が、以下のステップを含む:
(a) 式:
【化6】

【0016】
の側鎖が保護されたペプチドを、式:
【化7】

【0017】
の側鎖が保護されたペプチドと反応させ、式:
【化8】

【0018】
の側鎖が保護されたペプチドを得ること、
(b) (a)で製造されるペプチドの末端のFmoc保護基を除去すること、
(c) 当該(b)で製造されるペプチドを、式:
【化9】

【0019】
の側鎖が保護されたペプチドと反応させ、Bocで保護されたN末端を有する、側鎖が保護されたプラムリンチドを得ること、および
(d) 当該(c)で得られる生成物の側鎖およびN末端を脱保護し、プラムリンチド(I)を得ること。
【0020】
ステップ(a)乃至(d)は、ペプチド合成の技術において既知の反応条件を用いて行われてもよい。
【0021】
当該カップリングおよび脱保護のステップ(a)、(b)および(c)は、溶液、好ましくはN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中で適切に行われる。
【0022】
好ましくは、6-クロロ-1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(6-Cl-HOBt)、5-クロロ-1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-ベンゾトリアゾリウム 3-オキシドテトラフルオロホスフェート(TCTU)、およびジイソプロピルエチルアミン(DIEA)の組み合わせが、ステップ(a)および(c)でカップリング剤として用いられる。
【0023】
ステップ(b)において、中間体カップリング生成物IVのFmoc保護基の除去は、好ましくはDMF中でピペリジンにより達成される。
【0024】
最後の脱保護のステップ(d)は、好ましくはトリフルオロ酢酸、トリイソプロピルシラン及びフェノールにより行われる。
【0025】
好ましい態様において、ペプチド断片(II)、(III)および(V)において1または1以上のセリンおよびスレオニン残基が擬似プロリン誘導体として存在する。これらの擬似プロリン部分により当該ペプチドの溶解度が向上し、凝集が防止されるか、または減少する。
【0026】
ステップ(d)の後に得られる粗生成物が、従来の方法、例えば、分取HPLCまたは向流分配などにより精製されてもよい。もし精製が必要ならば、同じことがステップ(a)、(b)及び(c)の後に得られる中間体にもあてはまる。
【0027】
当該側鎖が保護されたペプチド断片(II)、 (III)及び(V)は、従来のペプチド合成方法、例えば、液相合成(SPS)または固相合成(SPPS)を用いて調製されてもよい。SPPSの場合、当業者に既知で、かつ保護されたペプチドの調製を可能にするいかなる樹脂が使用されてもよい。ここで、樹脂は、広範な様式で理解されるものとする。したがって、「樹脂」の語は、例えば、固体支持体単独、またはリンカーに直接的に結合する固体支持体を意味するものと解し、これはその間に任意でハンドル(handle)を有する。好ましい樹脂は、トリチル、ブロモベンズヒドリル、シーバーアミド(Sieber amide)またはキサンテニルアミド(XAL)リンカーを有するポリスチレン系樹脂である。トリチル樹脂の例は、2-クロロトリチルクロリド樹脂(CTC樹脂)、トリチルクロリド樹脂、4-メチルトリチルクロリド樹脂および4-メトキシトリチルクロリド樹脂である。シーバーアミド樹脂の例は、9-Fmoc-アミノキサンテン-3-イルオキシ-メリフィールド樹脂 (シーバー樹脂)及び9-Fmoc-アミノキサンテン-3-イルオキシTG樹脂 (NovaSyn(登録商標)TGシーバー樹脂)である。好ましくは、当該CTC樹脂およびシーバー樹脂が用いられ、最も好ましくは、当該CTC樹脂が、遊離型のカルボン酸官能基を含む断片の合成に用いられ、当該シーバー樹脂がチロシンアミドにより終結するC末端断片の製造に用いられる。
【0028】
ペプチド断片(V)におけるジスルフィド架橋は、当該断片がまだ樹脂に結合している間に適切に形成される。擬似プロリン単位は、従来の側鎖保護基を有する個々のセリンまたはスレオニン単位の代わりに、商業的に利用可能な擬似プロリンジペプチドを使用することにより導入されてもよい。
【0029】
本発明のもう一つの目的は、本発明の方法において中間体として有用な側鎖が保護されたペプチドを提供することである。特に、これらのペプチドのうちの一つは、式:
【化10】

【0030】
ここで、Pは当該側鎖保護基に直交する保護基である、
の側鎖が保護されたペプチドである。
【0031】
好ましくは、式(II)のペプチドが側鎖保護スキーム:
【化11】

【0032】
および
【化12】

【0033】
ここで、Pは上で定義した通りである、
を有する。
【0034】
好ましくは、当該保護基Pが、FmocまたはNSCである。
【0035】
さらにより好ましくは、PがFmocであり、従って、以下の側鎖が保護されたペプチド:
【化13】

【0036】
が提供され、最も好ましくは、側鎖保護スキーム:
【化14】

【0037】
または
【化15】

【0038】
を有し、かつプラムリンチドの13−24番のアミノ酸を含む。
【0039】
特に、本発明の方法において中間体として有用である前記側鎖が保護されたペプチドには他に、式:
【化16】

【0040】
の側鎖が保護されたペプチドであって、好ましくは、側鎖保護スキーム:
【化17】

【0041】
または
【化18】

【0042】
を有し、プラムリンチドの25−37番のアミノ酸を含むペプチド;及び
式:
【化19】

【0043】
の側鎖が保護されたペプチドであって、好ましくは、側鎖保護スキーム:
【化20】

【0044】
を有し、
プラムリンチドの1−12番のアミノ酸を含むペプチド;及び
式:
【化21】

【0045】
ここで、Rは水素または当該側鎖保護基に対して直交する保護基Pである、
の側鎖が保護されたペプチドであって、好ましくは、側鎖保護スキーム:
【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【0046】
ここで、Rは上で定義した通りである、
のうちの一つを有し、プラムリンチドの13−37番のアミノ酸を含むペプチドである。好ましくは、Rが保護基Pである。より好ましくは、PがFmocおよびNSCよりなる群から選択され、最も好ましくは、PがFmocである。
【0047】

以下の非限定的な例は、本発明の代表的な態様を詳細に説明するだろう。
【0048】
略語
CTC樹脂 = ポリマー支持体上の2-クロロトリチルクロリド
DCM = ジクロロメタン
DIC = ジイソプロピルカルボジイミド
DIEA = ジイソプロピルエチルアミン
HCTU = 2-(6-クロロ-1H-ベンゾトリアゾル-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
TCTU = 5-クロロ-1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-ベンゾトリアゾリウム3-オキシドテトラフルオロホスフェート
HOBt = 1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
6-Cl-HOBt = 6-クロロ-1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
Pbf = 2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル
TFA = トリフルオロ酢酸
例1
【化26】

【0049】
の合成
もし適用可能なら、それぞれの側鎖保護基を有する、Fmocで保護されたアミノ酸を用いて、当該ペプチドをCTC樹脂上に合成した。最後のカップリングステップには、Boc-Lys(Boc)-OHを用いた。アミノ酸番号8および9を擬似プロリンジペプチドFmoc-Ala-Thr(ΨMe,Mepro)-OHとして使用し、これはNovabiochemの商標でMerck Biosciencesから、またはGenzyme Pharmaceuticalsから商業的に入手可能である。システインをFmoc-Cys(Acm)-OH (Acm = アセタミドメチル)誘導体として用いた。当該合成は、150 gのCTC樹脂に、0.64 mmol/gかつ2.5当量の各アミノ酸のローディングにより行った。当該アミノ酸をTCTU/6-Cl-HOBt/DIEA試薬混合物を用いて連結した。各アミノ酸を別々の容器中で0-5℃であらかじめ活性化し、ペプチド合成器に移動し、ここでカップリングステップを20℃で行った。各カップリングステップの完了をカイザー試験(Kaizer test)およびHPLCによりモニターした。いずれのカップリングステップも繰り返す必要がないと思われた。伸長させたペプチドを30℃、N-メチルピロリジノン(PIP/NMP)中で、三度ピペリジン(20 wt.%)で処理することにより、当該Fmoc保護基の切断を達成した。最後の伸長サイクルの後、当該ペプチドをロードした樹脂はNMPで三度洗浄し、窒素で洗い流した。当該ジスルフィド結合は、DMF中、3当量のヨウ素を用い、0℃で、15分以内に形成された。純粋なDMFにより数回洗浄した後、ジクロロメタン中で当該樹脂を1%トリフルオロ酢酸により3度処理し、当該ペプチドを切り離した。ジクロロメタンの蒸発後、黄色のオイルを得た。当該ペプチドを水中で沈殿させ、ろ過し、乾燥させ、222.9 gの白色粉末を得た。
【0050】
例2
【化27】

【0051】
の合成
当該合成は、例1に記載した方法と同様の方法で行い、当該断片のC末端アミノ酸(Fmoc-Gly-OH)が結合したCTC樹脂を80g用い、0.66 g mmol/gのローディングを得た。当該鎖の伸長は、2.2から2.5当量のFmocが保護されたアミノ酸により行った。DIC/6-Cl-HOBt活性化(2.5当量)を用いてC末端に隣接するPhe残基のカップリングステップを一度繰り返したが、一方、残りの各アミノ酸には一度のカップリングステップで十分であった。当該擬似プロリン単位を、Fmoc-Ser(tBu)-Ser(ΨMe,Mepro)-OHジペプチド構築ブロック(building block)を用いて導入した。伸長段階の完了後、当該保護されたペプチドを、ジクロロメタン中、2%トリフルオロ酢酸を用いて2バッチ(two batches)に、樹脂から切り離した。組み合わせた切断溶液を真空中で濃縮し、当該ペプチドを水により沈殿させ、ろ過し、乾燥し、143 gの粗ペプチドを得た。Ser(ΨMe,Mepro)擬似プロリンの代わりにSer(tBu)単位を含む当該対応するペプチドを同様に製造し、これはFmoc-Ser(tBu)-Ser(ΨMe,Mepro)-OHジペプチドの代わりに 2つのFmoc-Ser(tBu)-OH構築ブロックを用いた(例10を参照されたい)。
【0052】
例3
【化28】

【0053】
の合成
当該ペプチドをシーバー樹脂上で(150 g、0.55 mmol/gローディング)、標準のFmoc化学を用いて合成した。Fmoc-Gly-Ser(ΨMe,Mepro)-OHジペプチドを構築ブロックとして用いて、擬似プロリン単位を導入した。当該カップリングおよびFmoc脱保護のステップは例1に記載された通り行った。当該ペプチドの樹脂からの切断は、ジクロロメタン中、3%トリフルオロ酢酸を用いて行った。当該ペプチドをロードした樹脂をTFA/DCM溶液で5回処理し、溶媒の蒸発後、黄色のオイルを得た。当該ペプチドを水中で沈殿させ、ろ過および乾燥し、145.75 gの白色粉末を得た。
【0054】
Fmoc-Gly-Ser(ΨMe,Mepro)-OHジペプチドの代わりにFmoc-Ser(tBu)-OHおよびFmoc-Gly-OHを用いて、Ser(ΨMe,Mepro)擬似プロリンの代わりにSer(tBu)単位を含む対応するペプチドを同様に製造した(例9を参照されたい)。
【0055】
ジクロロメタン中での5%トリフルオロ酢酸による切断の結果、保護されていないセリン側鎖を有する対応するペプチドを形成した。
【0056】
例4
【化29】

【0057】
の合成
例2で得られる当該Fmocが保護されたペプチド(4.57 g)を、DMF (52 g)中で10分間、6-Cl-HOBt(0.31 g)、TCTU(0.63 g)、およびDIEA (0.60 g)によりあらかじめ活性化し、次に例3で得られるペプチド(3.80 g)と、さらにDIEA (0.78 g)を加え、当該断片のカップリング反応を達成した。0.5時間後、さらに6-Cl-HOBt (0.03g)及びTCTU (0.06 g)を加え、当該反応混合物の温度を20℃まで上げた。当該反応混合物を0-5℃まで冷却することにより徐々に反応させ、水溶性溶液中で当該ペプチドを沈殿させ、ろ過及び洗浄した。
【0058】
収率:7.63 g。
【0059】
一方または両方の擬似プロリン単位がSer(tBu)によって置換されるか、またはN末端近傍の擬似プロリン単位がSer(tBu)により置換され、かつC末端近傍の擬似プロリンが保護されていないセリンによって置換される、対応するぺプチドを同様の方法により製造した。
【0060】
例5
【化30】

【0061】
の合成
例4において得られたFmocが保護されたペプチド(7.54 g)をDMF (25.1 mL)に溶解し、40℃まで温めた。ピペリジン(0.44 g)を添加し、当該Fmoc保護基を切り離した。2時間後、当該溶液を15℃まで冷却し、水(50 mL)を添加し、ろ過により単離した生成物を沈殿させた。当該湿生成物をDMF/EtOH/水(25.1 mL/12.5 mL/ 62.6 mL)で3度、水(50 mL)で2度、水/EtOH (1:1 v:v, 50 mL)で2度洗浄した。
【0062】
収率:7.03 g。
【0063】
一方または両方の擬似プロリン単位がSer(tBu)によって置換されるか、又はN末端近傍の擬似プロリン単位がSer(tBu)により置換され、かつC末端近傍の擬似プロリン単位が保護されていないセリン側鎖により置換される、対応するペプチドのFmoc保護基を同様の方法により切断した。
【0064】
例6
【化31】

【0065】
の合成
例1(3.73 g)および例5(6.87 g)で得られた当該側鎖が保護されたペプチドをDMF (80 mL)に溶解し、6-Cl-HOBt (0.26 g)を添加した。当該混合物を0℃まで冷却し、TCTU(0.55 g)およびDIEA(0.96 mL)を添加した。1時間後、当該反応混合物を室温にし、攪拌をさらに3時間続けた。当該反応混合物を0℃まで冷却し、水(150 mL)を添加することにより当該生成物を沈殿させた。当該沈殿したペプチドをろ過により分別し、水で洗浄した(2×75 mL)。
【0066】
収率:10.87 g。
【0067】
1つまたは2つのみの、擬似プロリン単位を有する対応するペプチドを上記の各断片から同様の方法により製造した。
【0068】
例7
プラムリンチドの合成(脱保護)
例6で得られた保護されたプラムリンチド(10.65 g)をトリフルオロ酢酸(101.2 mL)、トリイソプロピルシラン(2.66 mL)およびフェノール(2.66 g)の混合物に溶解し、20℃で4時間攪拌した。当該脱保護されたペプチドをジイソプロピルエーテル(530 mL)の添加により沈殿させ、40分攪拌を続け、当該生成物をG3フリット(frit)によりろ過して分離した。
【0069】
収率:粗プラムリンチド7.5 g。
【0070】
当該粗ペプチドを、Kromasil(登録商標)100-10-C18上の分取HPLC(20×2.5 cmカラム、流速30 mL/min)により精製した。第一段階において、アセトニトリル/0.2 Mトリエチルアンモニウムホスフェート(pH 2.2)を用い、当該粗ペプチドを20 mg粗ペプチド/mLのカラムローディングで勾配溶出により精製した。当該生成物を含む分画を当量の水により希釈し、さらに同カラムから勾配溶出(アセトニトリル/1%酢酸、カラムローディング8 mgペプチド/mL)することにより精製した。純粋な生成物を含む当該溶出分画を真空中で濃縮し、ろ過し、凍結乾燥し、97.5%の純度のプラムリンチドを得た。
【0071】
例8
【化32】

【0072】
の合成
例8の標的化合物は、擬似プロリンジペプチドが使用されなかったことを除いては、環化前の例1の中間体である。当該合成は、Fmoc-9Thr(tBu)-OH、Fmoc-8Ala-OHおよびカップリング混合物としてのHCTU/DIEAを除いては、例1と同様に小規模で行われ、57%の純度の標的化合物を得た。
【0073】
例9
【化33】

【0074】
の合成
対応する擬似プロリンジペプチドの代わりのFmoc-33Gly-OHおよびFmoc-34Ser(tBu)-OH、並びにカップリング混合物としてのTCTU/6-Cl-HOBt/DIEAの代わりのHCTU/DIEA以外は、当該合成は例3と同様に小規模で行われ、60%の純度の標的化合物を得た。
【0075】
例10
【化34】

【0076】
の合成
対応する擬似プロリンジペプチドの代わりの19および20位のFmoc-Ser(tBu)-OH以外は、例2と同様に合成が行われ、93%の純度の標的化合物を得た。
【0077】
比較例C1-C3:種々の断片のカップリング方法
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

のプラムリンチドの製造方法であって:
(b) 式:
【化2】

ここで、Pは側鎖を保護する基に直交する保護基である、
の側鎖が保護されたペプチドを式:
【化3】

の側鎖が保護されたペプチドと反応させ、
式:
【化4】

ここで、Pは上で定義される通りである、
の側鎖が保護されたペプチドを得ること、
(e) (a)で製造されるペプチドの末端のP保護基を除去すること、
(f) (b)で製造されるペプチドを式:
【化5】

の側鎖が保護されたペプチドと反応させ、Bocで保護されたアミノ末端を有する側鎖が保護されたプラムリンチドを得ること、及び
(g) (c)で得られる生成物の側鎖とアミノ末端を脱保護し、プラムリンチド(I)を
得ることを具備する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、PがFmocである方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、PがNSCである方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法であって、段階(a)及び(c)が溶液中で行われる方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、N,N-ジメチルホルムアミドが溶媒として使用される方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法であって、カップリングステップ(a)乃至(c)が6-クロロ-1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、5-クロロ-1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-ベンゾトリアゾリウム3-オキシドテトラフルオロホスフェート及びジイソプロピルエチルアミンの組み合わせにより達成される方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法であって、脱保護のステップ(b)がDMF中でピペリジンにより行われる方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法であって、最後の脱保護のステップ(d)がトリフルオロ酢酸、トリイソプロピルシランおよびフェノールの混合物により行われる方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法であって、ペプチド断片(II)、(III)及び(V)のうちの少なくとも一つがそのセリン残基またはスレオニン残基のいずれか一つにおいて擬似プロリン部分を含む方法。
【請求項10】
式:
【化6】

ここで、Pは当該側鎖保護基に直交する保護基である、
の側鎖が保護されたペプチド。
【請求項11】
請求項10に記載のペプチドであって、:
【化7】

および
【化8】

ここで、Pは請求項10で定義される通りである、
からなる群より選択されるペプチド。
【請求項12】
請求項10または11に記載のペプチドであって、PがFmocであるペプチド。
【請求項13】
請求項10または11に記載のペプチドであって、PがNSCであるペプチド。
【請求項14】
式:
【化9】

の側鎖が保護されたペプチド。
【請求項15】
請求項14に記載のペプチドであって:
【化10】

及び
式:
【化11】

からなる群より選択されるペプチド。
【請求項16】
式:
【化12】

の側鎖が保護されたペプチド。
【請求項17】
請求項16に記載のペプチドであって:
【化13】

であるペプチド。
【請求項18】
式:
【化14】

ここで、Rが水素または側鎖保護基に直交する保護基Pである、
を有する側鎖が保護されたペプチド。
【請求項19】
請求項18に記載のペプチドであって:
【化15】

【化16】

【化17】

および
【化18】

ここで、Rは請求項18で定義される通りである、
からなる群より選択されるペプチド。
【請求項20】
請求項18または19に記載のペプチドであって、Rが当該保護基Pであるペプチド。
【請求項21】
請求項20に記載のペプチドであって、PがFmoc及びNSCからなる群より選択されるペプチド。
【請求項22】
プラムリンチドの合成における、請求項9乃至21のいずれか1項に記載のペプチドの中間体としての使用。

【公表番号】特表2010−531828(P2010−531828A)
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513770(P2010−513770)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【国際出願番号】PCT/EP2008/005325
【国際公開番号】WO2009/003666
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(398075600)ロンザ アーゲー (58)
【Fターム(参考)】