説明

プランジャポンプ

【課題】ポンプ室内で伸縮するコイルばねの安定性を高めることができるプランジャポンプを提供することを課題とする。
【解決手段】縮径部11が形成されたシリンダ孔10を有するポンプボディ100と、拡径部11に圧入された球状の蓋部材20と、蓋部材20との間にポンプ室30を区画し、偏心カム140(駆動部材)に当接しているプランジャ40と、プランジャ40に外嵌されたシール部材40cと、拡径部11内に配置されたコイルばね50と、を備えたプランジャポンプ1であって、コイルばね50は、有効巻き部51と、蓋側座巻き部52と、プランジャ側座巻き部53と、を有し、蓋側座巻き部52の外径は、有効巻き部51の外径よりも大径で拡径部11の内径以下に形成され、プランジャ側座巻き部53の外径は、プランジャ40の外径よりも小径に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プランジャポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
偏心カムなどの駆動部材によってポンプ室内のプランジャ(ピストンとも呼ばれる)を軸方向に往復動させることで、吸入口からポンプ室内に吸入された液体を、ポンプ室の吐出口から吐出させるプランジャポンプがある。
このようなプランジャポンプとしては、シリンダ孔を有するポンプボディと、シリンダ孔に圧入された球状の蓋部材と、蓋部材との間にポンプ室を区画するとともに、駆動部材に当接しているプランジャと、プランジャに外嵌されたシール部材と、蓋部材に当接するとともに、プランジャに当接しているコイルばねと、を備えているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−064129号公報(図4、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来のプランジャポンプでは、シール部材の外径に合わせてシリンダ孔が拡径されている。また、コイルばね全体が同径に形成されており、コイルばねの外径はプランジャの外径と略同径に形成されている。この構成では、シリンダ孔の内径および蓋部材の直径に対してコイルばねの外径が非常に小さくなるため、コイルばねの蓋部材側の端部が蓋部材の径方向にずれる可能性がある。
【0005】
本発明では、ポンプ室内で伸縮するコイルばねの安定性を高めることができるプランジャポンプを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、縮径部および拡径部が形成されたシリンダ孔を有するポンプボディと、前記拡径部に圧入された球状の蓋部材と、前記縮径部内に摺動自在に装着され、一端は前記蓋部材との間にポンプ室を区画し、他端は駆動部材に当接しているプランジャと、前記拡径部内に保持され、前記プランジャに外嵌されたシール部材と、前記拡径部内に配置されたコイルばねと、を備えたプランジャポンプである。
前記コイルばねは、前記プランジャの軸方向に伸縮自在な有効巻き部と、前記蓋部材の表面に当接する蓋側座巻き部と、前記プランジャの端面に当接するプランジャ側座巻き部と、を有している。
そして、前記蓋側座巻き部の外径は、前記有効巻き部の外径よりも大径で前記拡径部の内径以下に形成され、前記プランジャ側座巻き部の外径は、前記プランジャの外径よりも小径に形成されている。
【0007】
本発明では、有効巻き部の外径よりも大径の蓋側座巻き部が蓋部材に当接するので、蓋側座巻き部と有効巻き部とが同径である場合と比べて、コイルばねが蓋部材の径方向にずれ難くなる。したがって、ポンプ室内で伸縮するコイルばねの安定性を高めることができる。
また、蓋部材の表面(球面)でコイルばねの一端を受けることで、コイルばねの軸心と蓋部材の中心とが自動的に調心されるため、コイルばねをポンプ室の中心部に配置することができる。
【0008】
前記したプランジャポンプにおいて、前記有効巻き部の外径を前記プランジャ側座巻き部の外径よりも大径に形成した場合には、コイルばねのばね力を大きくするとともに、ばね力を安定させることができる。この構成では、伸縮する有効巻き部が拡径部の内周面に擦れるのを防ぎつつ、拡径部の内径を有効に利用して、有効巻き部の外径を大きくすることができる。
【0009】
前記したように、本発明のプランジャポンプでは、コイルばねの安定性を高めることができるため、前記プランジャの両端面を平面に形成し、コイルばねの他端をプランジャの端面で直接受けるように構成してもよい。
この構成では、プランジャの端部にコイルばねの受け部を設ける必要がないため、プランジャポンプの製造コストを低減することができる。
また、プランジャの両端が同じ形状となり、シリンダ孔へのプランジャの組み付け方向が限定されないため、プランジャの組み付け性を向上させることができる。
【0010】
前記したプランジャポンプにおいて、前記蓋側座巻き部を円形断面の線材によって形成し、前記プランジャ側座巻き部には、前記プランジャの端面に面接触する当接面を形成した場合には、プランジャ側座巻き部とプランジャとの接触部位は平面同士が面接触することになり、蓋側座巻き部と蓋部材との接触部位は曲面同士が線接触することになるため、コイルばねの安定性をより高めることができる。
【0011】
前記したプランジャポンプにおいて、前記蓋部材の一部が、前記蓋側座巻き部よりも前記プランジャ側座巻き部側に入り込んでいるように構成することが好ましい。
この構成では、蓋側座巻き部が蓋部材の表面と拡径部の内周面との間の環状の空間に入り込んだ状態となるため、蓋側座巻き部を蓋部材に対してより安定させることができ、コイルばねをポンプ室の中心部に確実に配置することができる。
【0012】
前記したプランジャポンプにおいて、前記蓋側座巻き部を、前記ポンプ室の吸入口および吐出口よりも前記シリンダ孔の一端側に配置することが好ましい。
この構成では、蓋側座巻き部が吸入口および吐出口と対向しない位置に配置されるため、吸入口および吐出口とポンプ室内との間に流路を確保することができる。また、プランジャポンプの駆動時に、吸入口および吐出口に生じる負圧の影響を蓋側座巻き部が受け難いため、蓋側座巻き部を蓋部材に対して安定させることができる。
【0013】
前記したプランジャポンプにおいて、前記有効巻き部の内径を、前記プランジャの外径よりも大径に形成することが好ましい。
この構成では、シリンダ孔に対してコイルばねが反対向きに組み込まれた場合に、蓋側座巻き部および有効巻き部にプランジャが挿入され、プランジャに有効巻き部が囲繞した状態となる。この状態では、コイルばねをシリンダ孔に組み込んだときに、コイルばねに荷重が発生しないため、コイルばねをシリンダ孔に対して誤組したことを簡単かつ確実に把握することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のプランジャポンプでは、ポンプ室内で伸縮するコイルばねの安定性を高めるとともに、コイルばねをポンプ室の中心部に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態のプランジャポンプを示した側断面図である。
【図2】本実施形態のプランジャポンプを示した分解斜視図である。
【図3】本実施形態のコイルばねの各部の径と、プランジャおよび拡径部の径との比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態では、自動車などの車両に搭載されるブレーキ液圧制御装置の油圧発生装置として用いられるプランジャポンプを例示する。
なお、以下の説明において、一端側とは図1の左側に対応し、他端側とは図1の右側に対応している。
【0017】
プランジャポンプ1は、図1に示すように、シリンダ孔10を有するポンプボディ100と、シリンダ孔10の一端を封止する蓋部材20と、蓋部材20との間にポンプ室30を区画するとともに、偏心カム140(特許請求の範囲における「駆動部材」)に当接しているプランジャ40と、プランジャ40に外嵌されたシール部材40cと、プランジャ40を偏心カム140側に押圧するコイルばね50と、を備えている。
このプランジャポンプ1は、プランジャ40がシリンダ孔10内で軸方向に往復動することで、吸入口110からポンプ室30内に吸入されたブレーキ液が、ポンプ室30の吐出口120から吐出される。
【0018】
ポンプボディ100は、車両に搭載される略直方体の金属部品であり、その内部には複数の油路(図示せず)の他に、プランジャ40が挿入される円形断面のシリンダ孔10が設けられている(図2参照)。
【0019】
シリンダ孔10の一端はポンプボディ100の一面101に開口し、他端は軸受穴130に連通している。つまり、シリンダ孔10は、ポンプボディ100の一面101から中心部に向けて図1の左右方向に延びている。
【0020】
シリンダ孔10の軸線方向の中間部から一端側の部位には、段付き円筒状の拡径部11が形成され、シリンダ孔10の軸線方向の中間部よりも他端側の部位には、円筒状の縮径部12が形成されている。
拡径部11は、シール部材40cを収容するための空間であり、シール部材40cの外径に合わせて縮径部12よりも拡径されている。
また、シリンダ孔10の一端側の開口部13は拡径部11よりも拡径されており、環状の底部13aが形成されている。
【0021】
拡径部11には、金属製の球体である蓋部材20が圧入されており、蓋部材20によってシリンダ孔10の一端が封止されている。
蓋部材20の外径は、シリンダ孔10の拡径部11の内径よりも僅かに大きく形成されている。さらに、蓋部材20の中心よりもシリンダ孔10の一端側には、蓋部材20の抜け止め部11aが形成されている。
【0022】
抜け止め部11aは、シリンダ孔10の内周面(孔壁部)を塑性変形させることで形成された部位である。抜け止め部11aは、蓋部材20を拡径部11に圧入するときに、開口部13の底部13aが拡径部11の内方に突出するように、治具によって底部13aを押し潰して、蓋部材20に拡径部11の内周面をかしめて形成する。
【0023】
軸受穴130には、偏心カム140が収められている。偏心カム140は、ポンプボディ100に取り付けられた電動モータ(図示せず)の出力軸に設けられている。
偏心カム140の中心位置P1は、出力軸の軸中心P2に対して偏心している。偏心カム140は、出力軸の回転に伴って、出力軸の軸中心P2回りに回転する。
【0024】
プランジャ40は、シリンダ孔10の縮径部12内に摺動自在に挿入される円形断面の金属部品である(図2参照)。プランジャ40の一端40aは拡径部11内に突出し、プランジャ40の他端40bは軸受穴130内に突出している。
プランジャ40の一端40aの外面と、拡径部11の内周面と、拡径部11内に突出した蓋部材20の表面とによって、シリンダ孔10内にポンプ室30が区画されている。
【0025】
プランジャ40の略中間位置にはシール部材40cが外嵌されている。シール部材40cは樹脂製の環状部材であり、シール部材40cによってプランジャ40の外周面と拡径部11の内周面との間が液密にシールされている。
シール部材40cは、拡径部11の底部に内嵌された二体の環状のストッパ11b,11cの間に位置決めされている。
【0026】
プランジャ40の一端40a側の端面41aおよび他端40b側の端面41bは、軸方向に垂直な平面に形成されている。すなわち、プランジャ40は、両端が同じ形状となっている。
【0027】
プランジャ40の他端40b側の端面41bは、偏心カム140のカム面141に当接している。出力軸を回転させたときには、プランジャ40はカム面141に押されてシリンダ孔10の一端側に向けて軸方向に移動する。
【0028】
コイルばね50は、円形断面の線材50aを巻回して形成された弾性部材である。コイルばね50は、プランジャ40の軸方向に伸縮自在な有効巻き部51と、蓋部材20の表面に当接する蓋側座巻き部52と、プランジャ40の端面41aに当接するプランジャ側座巻き部53と、を有している。
【0029】
コイルばね50は、圧縮された状態で拡径部11内に配置されており、プランジャ40を偏心カム140側に押圧している。そして、偏心カム140に押されてプランジャ40が移動した後に、カム面141がプランジャ40から離れる方向に変位したときには、プランジャ40はコイルばね50の押圧力によってカム面141側に移動する。これにより、プランジャ40がカム面141に当接した状態に保たれる。
【0030】
図3に示すように、プランジャ側座巻き部53の外径D3は、プランジャ40の外径D5よりも小径に形成されている。
また、プランジャ側座巻き部53の先端側(プランジャ40側)には、プランジャ40の端面41aに平行な当接面53aが、例えば、研磨等の加工によって形成されている。つまり、プランジャ側座巻き部53とプランジャ40との接触部位の少なくとも一部は平面同士が面接触している。
したがって、プランジャ側座巻き部53はプランジャ40の端面41aに安定して当接しており、プランジャ40の端面41aによってプランジャ側座巻き部53を確実に受けている。
【0031】
有効巻き部51の外径D1は、プランジャ側座巻き部53の外径D3よりも大径で、拡径部11の内径D6よりも小径に形成されている。
また、有効巻き部51の内径D4は、プランジャ40の外径D5よりも大径に形成されている。
【0032】
蓋側座巻き部52の外径D2は、有効巻き部51の外径D1よりも大径で、拡径部11の内径D6よりも僅かに小径に形成されている。このようにすると、蓋側座巻き部52の径方向への移動は、拡径部11の内周面によって規制され、コイルばね50がポンプ室30(拡径部11)の中心部に配置される。
また、プランジャ40からコイルばね50に荷重が付与され、コイルばね50が圧縮されたときに、蓋側座巻き部52は拡径部11の内周面に当接して大きくずれないため、有効座巻き部51が拡径部11の内周面に接触するのを防ぐことができる。
また、蓋側座巻き部52の先端側は、例えば、研磨等の加工がされておらず、蓋部材20との接触部位は、曲面同士が線接触している。
【0033】
なお、蓋側座巻き部52の外径D2を、拡径部11の内径D6と同径に形成してもよいが、本実施形態のように、蓋側座巻き部52の外径D2を、拡径部11の内径D6よりも僅かに小径に形成し、蓋側座巻き部52の外周部と、拡径部11の内周面との間に隙間を形成することで、コイルばね50をシリンダ孔10内に挿入するときに、蓋側座巻き部52が拡径部11の内周面に擦れるのを防ぐことが好ましい。
【0034】
前記したように、本実施形態のコイルばね50は、小径のプランジャ側座巻き部53、中径の有効巻き部51、大径の蓋側座巻き部52からなる三段の部位によって構成されている(図2参照)。
また、図1に示すように、蓋側座巻き部52は、吸入口110および吐出口120よりもシリンダ孔10の一端側に配置されている。つまり、蓋側座巻き部52が吸入口110および吐出口120に対向しない位置に配置されている。
【0035】
コイルばね50では、蓋側座巻き部52よりもプランジャ側座巻き部53側に蓋部材20の一部が入り込んでいる。つまり、蓋側座巻き部52は蓋部材20の表面と拡径部11の内周面との間の環状の空間に入り込んでいる。
【0036】
そして、コイルばね50の一端が蓋部材20の表面(球面)にガイドされ、コイルばね50の軸心と、蓋部材20の中心とが調心されることで、コイルばね50と蓋部材20とが同心位置に配置され、コイルばね50はポンプ室30の中心部に配置されている。
【0037】
シリンダ孔10の内周面には、ポンプ室30に開口した吸入口110および吐出口120が形成されている。
吸入口110は、ポンプボディ100内の吸入液路110Aに通じており、吸入口110を通じて吸入液路110Aからブレーキ液がポンプ室30内に吸入される。
吐出口120は、ポンプボディ100内の吐出液路120Aに通じており、吐出口120を通じてポンプ室30内のブレーキ液が吐出液路120Aに吐出される。
【0038】
吸入液路110Aには、ポンプ室30内へのブレーキ液の流入のみを許容する逆止弁である吸入弁60が設けられている。
吸入弁60は、吸入孔65が貫通している円筒部材64と、吸入孔65のポンプ室30側の開口部を封止する吸入弁体61と、吸入弁体61を収容するリテーナ62と、リテーナ62内に収められたばね部材63と、を備えている。
【0039】
円筒部材64は、円筒状の金属部品であり、吸入液路110A内に内嵌されている。円筒部材64の中心部に形成された吸入孔65のポンプ室30側の開口縁部には、漏斗状に拡径した弁座が形成されている。
吸入弁体61は、球状の金属部品であり、吸入孔65の弁座に当接することで吸入孔65の開口部を封止している。
リテーナ62は、有底の円筒状の蓋体であり、開口部が円筒部材64のポンプ室30側の端部に外嵌されている。リテーナ62内には吸入弁体61が収められている。また、リテーナ62には複数の連通孔が形成されており、リテーナ62内と吸入液路110A内とが連通している。
ばね部材63は、リテーナ62の底面と吸入弁体61との間に圧縮状態で配置されたコイルばねであり、吸入弁体61を吸入孔65側に押圧している。
【0040】
吸入弁60は、吸入液路110Aの下流側のブレーキ液圧から上流側(ポンプ室30側)のブレーキ液圧を差し引いたときの値が、開弁圧(ばね部材63の付勢力)以上になったときに、吸入弁体61が吸入孔65から離間して開弁する。
【0041】
吐出液路120Aには、ポンプ室30内からのブレーキ液の流出のみを許容する逆止弁である吐出弁70が設けられている。
吐出弁70は、吐出孔75が貫通している円筒部材74と、吐出孔75のポンプ室30側の開口部を封止する吐出弁体71と、吐出弁体71を収容するリテーナ72と、リテーナ72内に収められたばね部材73と、を備えている。
この吐出弁70は、前記した吸入弁60と同じ構成の逆止弁であり、吐出液路120Aの上流側(ポンプ室30側)のブレーキ液圧から下流側のブレーキ液圧を差し引いたときの値が、開弁圧(ばね部材73の付勢力)以上になったときに、吐出弁体71が吐出孔75から離間して開弁する。
【0042】
次に、本実施形態のプランジャポンプ1の動作について説明する。
図1に示すように、ポンプ室30内にブレーキ液が満たされた状態で、回転する偏心カム140のカム面141に押されて、プランジャ40が一端側に向けて軸方向に往動作したときには、ポンプ室30の容積が減少し、ポンプ室30内のブレーキ液の液圧が上昇する。これにより、吐出弁70が開弁して、ポンプ室30内のブレーキ液が吐出口120を通じて吐出液路120Aに吐出される。
【0043】
続いて、プランジャ40が最も一端側まで移動し、ポンプ室30内の容積が最小となった後に、カム面141はプランジャ40から離れる方向に変位する。このとき、プランジャ40は、コイルばね50からの押圧力によって、カム面141側に向けて軸方向に復動作してポンプ室30の容積が増大する。
ポンプ室30の容積が増大することで、ポンプ室30内は負圧状態となり、吸入弁60が開弁して、ブレーキ液が吸入液路110Aから吸入口110を通じてポンプ室30内に吸入される。
【0044】
そして、プランジャ40が最も他端側まで復動作して、ポンプ室30の容積が最大となった後に、プランジャ40はカム面141に押されて再び往動作し、前記した往動作の場合と同様に、ポンプ室30内のブレーキ液がプランジャ40によって加圧されて吐出液路120Aに吐出される。
【0045】
以上のように構成されたプランジャポンプ1では、図3に示すように、有効巻き部51の外径よりも大径の蓋側座巻き部52が蓋部材20に当接し、蓋側座巻き部52が蓋部材20の表面と拡径部11の内周面との間の環状の空間に入り込んでいる。さらに、プランジャ側座巻き部53とプランジャ40との接触部位の少なくとも一部は平面同士が面接触し、蓋側座巻き部52と蓋部材20との接触部位は曲面同士が線接触している。
したがって、プランジャポンプ1では、蓋側座巻き部52と有効巻き部51とが同径である場合と比べて、コイルばね50が蓋部材20の径方向にずれ難いため、ポンプ室30内で伸縮するコイルばね50の安定性を高めることができる。
【0046】
また、蓋部材20の表面(球面)でコイルばね50の一端を受けることで、コイルばね50の軸心と蓋部材20の中心とが自動的に調心されるため、コイルばね50をポンプ室30の中心部に配置することができる。
【0047】
そして、プランジャポンプ1では、プランジャ40の一端40aにコイルばね50の受け部を設けることなく、コイルばね50の他端をプランジャ40の端面41aで直接受けるように構成しても、コイルばね50を十分に安定させることができるため、製造コストを低減することができる。
【0048】
また、プランジャ40の両端40a,40bが同じ形状となり、シリンダ孔10へのプランジャ40の組み付け方向が限定されないため、プランジャ40の組み付け性を向上させることができる。
【0049】
また、有効巻き部51の外径D1がプランジャ側座巻き部52の外径D3よりも大径に形成されているため、コイルばね50のばね力を大きくするとともに、ばね力を安定させることができる。この構成では、伸縮する有効巻き部51が拡径部11の内周面に擦れるのを防ぎつつ、拡径部11の内径D6を有効に利用して、有効巻き部51の外径D1を大きくすることができる。
【0050】
また、図1に示すように、蓋側座巻き部52が吸入口110および吐出口120と対向しない位置に配置されているため、吸入口110および吐出口120とポンプ室30内との間に流路を確保することができる。また、プランジャポンプ1の駆動時に、吸入口110および吐出口120に生じる負圧の影響を蓋側座巻き部52が受け難いため、蓋側座巻き部52を蓋部材20に対して安定させることができる。
【0051】
また、有効巻き部51の内径D4が、プランジャ40の外径D5よりも大径に形成されているため、シリンダ孔10に対してコイルばね50が反対向きに組み込まれた場合に、蓋側座巻き部52および有効巻き部51にプランジャ40が挿入され、プランジャ40に有効巻き部51が囲繞した状態となる。この状態では、コイルばね50をシリンダ孔10に組み込んだときに、コイルばね50に荷重が発生しないため、コイルばね50をシリンダ孔10に対して誤組したことを簡単かつ確実に把握することができ、コイルばね50の誤組みを防ぐことができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
例えば、図1に示すプランジャ40の一端40aに、コイルばね50の他端を受ける受け部を形成してもよい。受け部としては、コイルばね50の他端側の開口部に挿入される突起部が形成された部材を、プランジャ40の一端40aに被せるように構成されたものがある。また、プランジャ40の端面41aに、コイルばね50の他端側の開口部に挿入される突起部を形成してもよい。
【0053】
また、本実施形態のコイルばね50は、図3に示すように、三段の部位(プランジャ側座巻き部53、有効巻き部51、蓋側座巻き部52)によって構成されているが、プランジャ側座巻き部53の外径と有効巻き部51の外径とを同径に構成し、小径のプランジャ側座巻き部53および有効巻き部51と、大径の蓋側座巻き部52とからなる二段の部位によってコイルばねを構成してもよい。
また、有効巻き部をプランジャ側座巻き部から蓋側座巻き部に向かうに従って拡径し、コイルばねを円錐台形に形成してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 プランジャポンプ
10 シリンダ孔
11 拡径部
12 縮径部
20 蓋部材
30 ポンプ室
40 プランジャ
40c シール部材
50 コイルばね
51 有効巻き部
52 蓋側座巻き部
53 プランジャ側座巻き部
53a 当接面
60 吸入弁
70 吐出弁
100 ポンプボディ
110 吸入口
120 吐出口
140 偏心カム
D1 有効座巻き部の外径
D2 蓋側座巻き部の外径
D3 プランジャ側座巻き部の外径
D4 有効巻き部の内径
D5 プランジャの外径
D6 拡径部の内径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縮径部および拡径部が形成されたシリンダ孔を有するポンプボディと、
前記拡径部に圧入された球状の蓋部材と、
前記縮径部内に摺動自在に装着され、一端は前記蓋部材との間にポンプ室を区画し、他端は駆動部材に当接しているプランジャと、
前記拡径部内に保持され、前記プランジャに外嵌されたシール部材と、
前記拡径部内に配置されたコイルばねと、を備えたプランジャポンプであって、
前記コイルばねは、前記プランジャの軸方向に伸縮自在な有効巻き部と、前記蓋部材の表面に当接する蓋側座巻き部と、前記プランジャの端面に当接するプランジャ側座巻き部と、を有し、
前記蓋側座巻き部の外径は、前記有効巻き部の外径よりも大径で前記拡径部の内径以下であり、
前記プランジャ側座巻き部の外径は、前記プランジャの外径よりも小径であることを特徴とするプランジャポンプ。
【請求項2】
前記有効巻き部の外径は、前記プランジャ側座巻き部の外径よりも大径であることを特徴とする請求項1に記載のプランジャポンプ。
【請求項3】
前記プランジャの両端面が平面であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプランジャポンプ。
【請求項4】
前記蓋側座巻き部は、円形断面の線材によって形成され、
前記プランジャ側座巻き部には、前記プランジャの端面に面接触する当接面が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のプランジャポンプ。
【請求項5】
前記蓋部材の一部が、前記蓋側座巻き部よりも前記プランジャ側座巻き部側に入り込んでいることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のプランジャポンプ。
【請求項6】
前記蓋側座巻き部は、前記ポンプ室の吸入口および吐出口よりも前記シリンダ孔の一端側に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のプランジャポンプ。
【請求項7】
前記有効巻き部の内径は、前記プランジャの外径よりも大径であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のプランジャポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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