説明

プランジャー一体型弁成形用金型及びプランジャー一体型弁の製造方法

【課題】プランジャー一体型弁を備えるバルブ装置の信頼性を向上させるとともに、プランジャー一体型弁の製造コストを低減することを目的とする。
【解決手段】第2キャビティ6とプランジャー収容部7との間には、周方向に連続する環状の面であり、本体部111aの先端面111eと全周に渡って当接する段差面2jが形成されている。本体部111aをプランジャー収容部7に収納させるとともに、取付部111bを第2キャビティ6に収納させ、本体部111aの先端面111eを全周に渡って段差面2jに押圧させた状態で、保持金型2と基金型1とを一体にし、第1キャビティ5及び第2キャビティ6に弁体の原料90を充填させて、本体部111aの外周面側への原料90の漏出を抑制しつつ、取付部111bに弁体112を一体成形することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ装置を構成するプランジャー一体型弁を製造する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から特許文献1に示されるように、プランジャー一体型弁及びコイルを備えるバルブ装置がある。このプランジャー一体型弁は、円柱状の磁性材料で構成されたプランジャーと、このプランジャーの先端に取り付けられた弁体とから構成されている。上記のバルブ装置は、流路に設けられ、コイルで発生する磁力によりプランジャーが引き寄せられて、弁体が移動することにより、弁体が流路を開放するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−291911号公報(図1、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されるプランジャー一体型弁では、プランジャーと弁体とが別体に形成されていて、弁体の中央部に形成された挿入凹部に、プランジャーの先端に形成された取付突起を圧入させることにより、弁体をプランジャーの先端に取り付けている。このように、圧入により弁体をプランジャーに取り付けているので、挿入凹部と取付突起と圧入部分の寸法精度を高度に維持する必要があり、圧入代を高度に管理する必要がある。もし、挿入凹部と取付突起と圧入部分の寸法精度が維持できない場合には、圧入代の不足等により、弁体がプランジャーから脱落してしまうおそれがあり、プランジャー一体型弁を備えるバルブ装置の信頼性が低下してしまう。また、上述のように、弁体をプランジャーに取り付ける工程が必要なため、プランジャー一体型弁の製造コストが増大し、ひいては、プランジャー一体型弁を備えるバルブ装置の製造コストが増大していた。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、プランジャー一体型弁を備えるバルブ装置の信頼性を向上させるとともに、プランジャー一体型弁の製造コストを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するためになされた、請求項1に係る発明によると、プランジャーの本体部の先端に軸線方向と直交する方向に延在し周方向に連続する環状の先端面の内側に形成された取付部に、弁体を一体成形により固着させるためのプランジャー一体型弁成形用金型であって、
基金型と、基金型と対向して配置され、基金型との対向方向と直交する分割方向に分割される保持金型とを有し、基金型と保持金型との間には、弁体の先端側の弁部の外形に対応した形状の空間である第1キャビティが形成され、保持金型の分割面には、第1キャビティに連続し、弁体の基部側に形成され取付部に固着される固着部の外形に対応した形状の空間である第2キャビティ及び、この第2キャビティに連続しプランジャーの本体部の外形に対応した形状の空間であるプランジャー収容部が形成され、第2キャビティとプランジャー収容部との間には、分割方向に延在し周方向に連続する環状の面であり、本体部の先端面と全周に渡って当接する段差面が形成されている。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1において、プランジャー収容部は、保持金型の基金型と対向する面と反対側の面に開口し、プランジャー収容部の長さは、プランジャーの本体部の長さよりも小さく設定され、保持金型の基金型と対向する面と反対側の面に隣接して配置される押圧金型を更に有する。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2において、弁体は、固着部又は弁部から径方向外側に向かって延設された膜状のダイヤフラム部を有するダイヤフラム弁であり、第1キャビティには、ダイヤフラム部の外形に対応した形状の空間であるダイヤフラム成形部が形成されている。
【0009】
請求項4に係る発明は、プランジャーの本体部の先端に軸線方向と直交する方向に延在し周方向に連続する環状の先端面の内側に形成された取付部に、弁体を一体成形により固着させてプランジャー一体型弁を製造する方法であって、基金型と、基金型と対向して配置され、基金型との対向方向と直交する分割方向に分割される保持金型とを有し、基金型と保持金型との間には、弁体の先端側の弁部の外形に対応した形状の空間である第1キャビティが形成され、保持金型の分割面には、第1キャビティに連続し、弁体の基部側に形成され取付部に固着される固着部の外形に対応した形状の空間である第2キャビティ、及び、この第2キャビティに連続しプランジャーの本体部の外形に対応した形状の空間であるプランジャー収容部が形成され、第2キャビティとプランジャー収容部との間には、分割方向に延在し周方向に連続する環状の面であり、本体部の先端面と全周に渡って当接する段差面が形成されているプランジャー一体型弁成形用金型を用い、保持金型の分割面を合わせて第2キャビティとプランジャー収容部を形成する保持金型一体工程と、本体部をプランジャー収容部に収納させるとともに、取付部を第2キャビティに収納させるプランジャー収納工程と、先端面を全周に渡って段差面に押圧させた状態で、保持金型と基金型とを一体にし、第1キャビティ及び第2キャビティに弁体の原料を充填させて、取付部に弁体を一体成形する弁体一体成形工程と、を含む。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成した請求項1に係る発明のプランジャー一体型弁成形用金型においては、保持金型の第2キャビティとプランジャー収容部との間には、分割方向に延在し周方向に連続する環状の面であり、本体部の先端面と全周に渡って当接する段差面が形成されている。これにより、プランジャーの本体部をプランジャー収容部に収納させるとともに、取付部第2キャビティに収納させて、プランジャーを保持金型で保持させ、本体部の先端面を段差面に押圧させると、保持金型の段差面が全周に渡って本体部の先端面で押圧され、本体部の先端面と段差面とが全周に渡って密着する。この結果、第2キャビティのプランジャー収容部に開口する開口部が、本体部の先端面で密封される。この状態で、第1キャビティ及び第2キャビティに弁体の原料を充填させると、第2キャビティのプランジャー収容部に開口する開口部が、本体部の先端面で密封されているので、プランジャーの外周面側への原料の漏出を防ぎつつ、プランジャーの先端に弁体を一体成形により固着させることができる。
【0011】
このように、プランジャーの先端に弁体を一体成形により固着させることが実現可能となったので、従来のように弁体を圧入によりプランジャーに取り付ける必要が無く、圧入代の不足に起因する弁体のプランジャーからの脱落が抑制され、プランジャー一体型弁を備えるバルブ装置の信頼性を向上させることが可能となる。また、弁体をプランジャーに取り付ける工程を省くことができるので、プランジャー一体型弁の製造コストを低減させることが可能となる。
【0012】
上記のように構成した請求項2に係る発明においては、プランジャー収容部は、保持金型の基金型と対向する面と反対側の面に開口し、プランジャー収容部の長さは、プランジャーの本体部の長さよりも小さく設定されている。これにより、本体部の長さに、製作精度の公差内でのバラツキがあったとしても、プランジャー収容部に本体部を収容すると、プランジャー収容部の開口部から本体部の基端部が突出する。このため、本体部の長さにバラツキがあったとしても、保持金型に密着するように押圧金型を移動させることにより、本体部の先端面で段差面を押圧させることができる。このように、プランジャーの本体部の先端面で保持金型の段差面を確実に押圧させることができるので、取付部に弁体を一体成形する際における、本体部の外周面側への原料の漏出を抑制することが可能となる。
【0013】
上記のように構成した請求項3に係る発明においては、第1キャビティには、ダイヤフラム部の外形に対応した形状の空間であるダイヤフラム成形部が形成されている。これにより、ダイヤフラム部を有するダイヤフラム弁を、プランジャーの先端に一体成形することができる。
【0014】
上記のように構成した請求項4に係る発明のプランジャー一体型弁の製造方法においては、本体部をプランジャー収容部に収納させるとともに、取付部を第2キャビティに収納させるプランジャー収納工程と、先端面を全周に渡って段差面に押圧させた状態で、保持金型と基金型とを一体にし、第1キャビティ及び第2キャビティに弁体の原料を充填させて、取付部に弁体を一体成形する弁体一体成形工程とを含む。
【0015】
これにより、弁体一体成形工程において、保持金型の段差面が全周に渡って本体部の先端面で押圧されることにより、第2キャビティのプランジャー収容部に開口する開口部が、本体部の先端面で密封された状態で、弁体が成形されるので、本体部の外周面側への原料の漏出を防ぎつつ、プランジャーの先端に弁体を一体成形により固着させることができる。このように、プランジャーの先端に弁体を一体成形により固着させることが実現可能となったので、従来のように圧入により弁体をプランジャーに取り付ける必要が無く、圧入代の不足に起因する弁体のプランジャーからの脱落が抑制され、プランジャー一体型弁を備えるバルブ装置の信頼性を向上させることが可能となる。また、弁体をプランジャーに取り付ける工程を省くことができるので、プランジャー一体型弁の製造コストを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(A)は、本発明のプランジャー一体型弁の製造方法で製造されるプランジャー一体型弁の側面図である。(B)は、(A)の断面図である。
【図2】プランジャー一体型弁を備えたバルブ装置の断面図である。
【図3】本発明のプランジャー一体型弁成形用金型の一実施形態の断面図である。
【図4】図3に示すプランジャー一体型弁成形用金型のA−A断面図である。
【図5】プランジャー一体型弁製造装置の説明図である。
【図6】本発明のプランジャー一体型弁の製造方法の一実施形態の第1の説明図である。
【図7】本発明のプランジャー一体型弁の製造方法の一実施形態の第2の説明図である。
【図8】本発明のプランジャー一体型弁の製造方法の一実施形態の第3の説明図である。
【図9】プランジャー一体型弁製造方法のフローを表したフロー図である。
【図10】プランジャーの取付部の別例を表した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(バルブ装置の説明)
以下に図1を用いて、本発明のプランジャー一体型弁の製造方法で製造されるプランジャー一体型弁110を説明し、次いで、図2を用いて、プランジャー一体型弁110を備えるバルブ装置100の説明をする。
【0018】
図1に示すように、プランジャー一体型弁110は、プランジャー111と弁体112とから構成されている。なお、図1において、紙面上方を、プランジャー一体型弁110の基端側とし、紙面下方を、プランジャー一体型弁110の先端側とする。
【0019】
プランジャー111は、磁気吸着性を有する(透磁性の高い)磁性材料で構成されている。上記磁性材料には、電磁ステンレス鋼(例えばフェライト系ステンレス鋼)等の鉄系金属等が含まれる。プランジャー111は、ブロック形状の本体部111aと、この本体部111aの先端(図1においては下端)から突出形成された取付部111bとから構成されている。本実施形態では、本体部111aは、断面円形状を有する円柱形状である。本体部111aの先端には、プランジャー111の軸線a(軸線方向)と直交する方向に延在する面である先端面111eが形成されている。詳しく説明すると、先端面111eは、本体部111aの周方向に連続する環状の面である。
【0020】
取付部111bは、環状の先端面111eの内側に形成されている。言い換えると、取付部111bは、本体部111aの先端面111eに、本体部111aと同軸に形成されている。そして、取付部111bの幅寸法は、本体部111aの幅寸法(外径)よりも小さくなっている。本実施形態では、取付部111bは、扁平な円柱形状であり、その基端(本体部111aとの接続部)の外周面に固着溝111cが全周に渡って形成されている。本体部111aの基部には、本体部111aの基端側に開口する空間であるスプリング収納部111dが形成されている。
【0021】
取付部111bには、弁体112が一体に成形により固着されている。弁体112は、ゴムや軟質樹脂等の可撓材料で構成されている。本実施形態では、弁体112は、その中心に形成された弁本体部112aと、弁本体部112aの径方向外側に向かって延設された膜状のダイヤフラム部112bとから構成されたダイヤフラム弁である。なお、弁体112の取付部111bへの成形方法については、後で詳細に説明する。
【0022】
弁本体部112aは、プランジャー111の取付部111bの外側に一体に成型されている。本実施形態では、弁本体部112aの外形は、扁平な円柱形状である。弁本体部112aの基部側は、取付部111bに固着している固着部112jとなっている。プランジャー111の先端面111eの外縁部は、固着部112j(弁本体部112a)に覆われておらず露出している。つまり、本体部111aの外径よりも、弁本体部112aの外径のほうが小さくなっている。
【0023】
弁本体部112aの先端側は、所定の肉厚を有する弁部112iとなっている。弁部112iの先端には、シール面112cが形成されている。本実施形態では、シール面112cは、プランジャー一体型弁110の軸線aと直交する平面である。
【0024】
ダイヤフラム部112bは、弁本体部112a(固着部112j又は弁部112i)の外周面から、弁本体部112aの径方向外側に延設された膜状である。本実施形態では、ダイヤフラム部112bは、その内側に形成された内側部112dと、この内側部112dの外側に形成された外側部112eとから構成されている。更に詳しく説明すると、内側部112dは、接続部112fと傾斜部112gとから構成されている。接続部112fは、弁部112i(弁本体部112a)の外周面に接続し、外側に位置するにつれてプランジャー一体型弁110の先端側に突出している。傾斜部112gは、接続部112fの外側に接続し、外側に位置するにつれてプランジャー一体型弁110の基端側に位置するように傾斜している。
【0025】
外側部112eは、プランジャー一体型弁110の軸線aと直交する方向に形成されたリング状の平膜形状である。外側部112eの外縁には、プランジャー一体型弁110の軸線a方向に突出するリング状の固定部112hが形成されている。
【0026】
以下に、図2を用いて、プランジャー一体型弁110を備えるバルブ装置100の説明をする。バルブ装置100は、流体(ガスや液体)が流れる流路に配設される。このバルブ装置100は、ボディー101、コイル103、カバー104、スプリング105、スリーブ107、コア108、支持板109、支持帯体(図示せず)、上述したプランジャー一体型弁110を有する。
【0027】
ボディー101は、流路に取り付けられる。ボディー101の先端(図2において上端)には、ボディー101の先端方向に開放する中空状の流体室101aが形成されている。そして、ボディー101には、流体室101aに連通する流入流路101b及び流出流路101cが形成されている。本実施形態では、流入流路101bは、流体室101aの幅方向中央に連通するようにボディー101に形成されている。流出流路101cは、流入流路101bの外側のボディー101に形成されている。流入流路101bの流体室101aへの開口部は、弁口101dとなっている。
【0028】
ボディー101先端の流体室101aの周縁には、リング状に凹陥した固定溝101eが形成されている。プランジャー一体型弁110は、流体室101aの開口部に、この開口部を閉塞するように配設されている。具体的には、固定溝101eに弁体112の固定部112hが係合し、弁体112が流体室101aの開口部を閉塞している。そして、プランジャー111が、流体室101aの開口部の外側に配置されている。このように、ダイヤフラム部112bを有する弁体112が流体室101aの開口部を閉塞しているので、流体室101aの気密性が保たれ、流体の流体室101aからの漏洩が抑制される。弁部112i(シール面112c)は、弁口101dと対向している。
【0029】
スリーブ107は、オースティナイト系ステンレス鋼等の非磁性材料で構成されている。スリーブ107は、有底筒状のガイド部107aと、ガイド部107aの開口端からガイド部107aの軸方向に対して直角な径方向外側に向かって形成された板状のフランジ部107bとから構成されている。ガイド部107aの内部形状は、プランジャー111の外形に対応した形状となっている。
【0030】
スリーブ107は、ガイド部107aが流体室101aの開口部の外側に位置し、流体室101aの開口部を閉塞するようにボディー101の先端に配設されている。具体的には、フランジ部107bが、ボディー101の流体室101aの周縁に、ダイヤフラム部112bの外側部112eを介して、密着している。ガイド部107a内には、プランジャー111の本体部111aが収納されている。プランジャー111は、ガイド部107a内で摺動可能となっている。
【0031】
支持板109に形成された挿通穴109aにガイド部107aが挿通した状態で、支持板109がネジ等でボディー101の先端に取り付けられている。つまり、支持板109は、ボディー101の先端との間で、ダイヤフラム部112bの外側部112eとスリーブ107のフランジ部107bを挟み込むことにより、ダイヤフラム部112b及びスリーブ107をボディー101に固定している。
【0032】
スプリング収納部111dには、スプリング105が圧縮された状態で収納されている。圧縮されているスプリング105の一端がガイド部107aの底部と当接するとともに、スプリング105の他端がスプリング収納部111dの底部と当接していることにより、スプリング105がプランジャー111をボディー101の弁口101d方向(閉弁方向)に付勢している。
【0033】
コイル103は、ガイド部107aの外周外側に巻回されている。本実施形態では、コイル103は、ガイド部107aの外周外側に配設されたボビン106に巻回されている。なお、コイル103及びボビン106の外側は、カバー104で覆われている。カバー104は、例えばカラス繊維でフィラー強化されたポリフェニレンスルファイド樹脂で構成され、モールド成型によりコイル103及びボビン106と一体に成型されている。コア108は、ブロック状であり、ガイド部107aの底板の外側に隣接して配設されている。両端が同一方向に屈曲形成された支持帯体(図示せず)が、コイル103、コア108、スリーブ107を覆い、その両端が支持板109に固着している。コア108、支持板109及び支持帯体は、磁性材料である電磁ステンレス鋼等で構成されている。支持板109及び支持帯体は、磁力線が漏れるのを防ぐヨークとしての役目を担っている。
【0034】
コイル103に励磁電流が通電されていない状態では、スプリング105の付勢力によって、弁部112iのシール面112cが弁口101dに押し当てられて、弁口101dが閉塞されている(図2の状態)。一方で、コイル103に励磁電流が通電されると、磁界が発生し、磁気吸引力が発生する。この結果、プランジャー111が、コア108側に吸引され、コア108方向(開弁方向)に移動し、これに伴い、弁部112iが開弁方向に移動して、弁口101dが開放される。すると、流体が、流入流路101b、流体室101a、流出流路101cの順に流れる。
【0035】
(プランジャー一体型弁成形用金型の説明)
以下に、図3を用いて、プランジャー一体型弁110を製造するために用いられるプランジャー一体型弁成形用金型10の好ましい実施形態について説明する。プランジャー一体型弁成形用金型10は、いずれもブロック状の基金型1、保持金型2、押圧金型3とから構成されている。
【0036】
基金型1と保持金型2は、互いに対向して配置される。なお、以下の説明において、基金型1と保持金型2の対向方向を、プランジャー一体型弁成形用金型10及びこれを構成する金型1〜3の軸線方向(対向方向)とし、この軸線方向と直交する方向を、プランジャー一体型弁成形用金型10及びこれを構成する金型1〜3の幅方向(分割方向)とする。
【0037】
保持金型2は、複数の金型で構成され、保持金型2の幅方向に分割可能となっている。言い換えると、保持金型2は、基金型1と保持金型2との対向方向と直交する方向である分割方向に分割可能となっている。本実施形態では、保持金型2は、第1保持金型2aと第2保持金型2bの2つの金型から構成されている、2分割構造となっている。第1保持金型2aには第1分割面2eが形成され、第2保持金型2bには第2分割面2fが形成されている。第1分割面2e、第2分割面2fは、保持金型2の分割面である。
【0038】
図3に示すように、基金型1と保持金型2が当接している状態では、基金型1と保持金型2との間には、第1キャビティ5が形成される。第1キャビティ5の形状は、弁体112の先端側の外形に対応した形状の空間である。本実施形態では、第1キャビティ5には、ダイヤフラム部112bの外形に対応した形状の空間であるダイヤフラム成形部5aが、後述する第2キャビティ6との連続部分から第2キャビティ6の径方向外側に向かって形成されている。つまり、第1キャビティ5は、弁体112の弁部112i及びダイヤフラム部112bの外形に対応した形状の空間である。
【0039】
更に説明すると、基金型1の保持金型2と対向する面である当接面1aには、弁体112の表面(プランジャー一体型弁110の先端側の面)に対応した形状の第1弁体外形形成部1bが形成されている。そして、保持金型2の基金型1と対向する面である当接面2cには、弁体112の裏面(プランジャー一体型弁110の基端側の面)の対応した形状の第2弁体外形形成部2dが形成されている。このように、互いに対向して離間している第1弁体外形形成部1bと第2弁体外形形成部2dとから、第1キャビティ5が形成されている。
【0040】
図3に示すように、第1保持金型2aと第2保持金型2bが合体した状態(一体となった状態)では、第1保持金型2aと第2保持金型2bの間には、空間である第2キャビティ6及びプランジャー収容部7が形成されている。つまり、第1分割面2eには第1凹部2gが凹陥形成され、第2分割面2fには第2凹部2hが凹陥形成され、第1凹部2gと第2凹部2hは第2キャビティ6及びプランジャー収容部7の内部形状を構成している。
【0041】
第2キャビティ6は、第1キャビティ5と連続している。第2キャビティ6は、弁体112の固着部112jの外形に対応した形状の空間である。言い換えると、第2キャビティ6は、弁体112の基部側の外形に対応した形状の空間となっている。本実施形態では、第2キャビティ6は、扁平な円柱形状の空間である。
【0042】
プランジャー収容部7は、第2キャビティ6と連続している。プランジャー収容部7は、プランジャー111の本体部111aの外形に対応した形状となっている。本実施形態では、プランジャー収容部7は、断面円形状を有する円柱形状の空間である。但し、プランジャー収容部7の軸線方向の長さβ(深さ)は、プランジャー111の本体部111aの長さα(図1の(A)に示す)よりも僅かに(0.05〜1mm程度)短くなっている。また、プランジャー収容部7の内径は、プランジャー111の本体部111aの外径よりも僅かに大きくなっている。プランジャー収容部7は、第2キャビティ6と連通している。プランジャー収容部7は、保持金型2の基金型1と対向する面と反対側の面である対向面2pに開口している。
【0043】
第2キャビティ6の幅寸法(内径)は、プランジャー収容部7の幅寸法(内径)よりも小さくなっている。つまり、第1保持金型2aと、第2保持金型2bには、それぞれ、第2キャビティ6の側方から第2キャビティ6に突出する突出部2k、突出部2mが形成されている。
【0044】
突出部2k、突出部2mの上面、言い換えると、第2キャビティ6とプランジャー収容部7との連続部分(連通部分)には、周方向に連続する環状の面である段差面2jが形成されている(図4に示す)。段差面2jは、保持金型2の幅方向に平行な面であり、言い換えると、保持金型2の分割方向に延在する面(保持金型2の軸線方向と直交する面)である。段差面2jの外縁形状は、本体部111aの断面の外縁に対応した形状となっている。本実施形態では、図4に示すように、段差面2jの外縁形状は、円形状となっていて、段差面2jは、周方向に連続し、所定の幅を有する円環形状となっている。後述するように、段差面2jは、本体部111aの先端面111eと全周に渡って当接し、密着する。なお、本体部111aの外径が10mmの場合には、突出部2k、2m(段差面2j)の幅は、1mm程度である。
【0045】
押圧金型3は、保持金型2の対向面2pに隣接して配置される。言い換えると、押圧金型3は、保持金型2に形成されたプランジャー収容部7の開口部を閉塞するように、保持金型2に隣接して配置される。
【0046】
(プランジャー一体型弁の製造装置の説明)
以下に、図5を用いて、プランジャー一体型弁110を製造するためのプランジャー一体型弁の製造装置50の説明をする。
基金型1、第1保持金型2a、第2保持金型2b、押圧金型3は、それぞれ、ガイド21〜23によって移動可能に保持されている。具体的には、基金型1は、複数のガイド21によって、保持金型2に対して離接する方向(軸線方向)に移動可能に保持されている。第1保持金型2a、第2保持金型2bもまた、それぞれ、複数のガイド22によって、互い離接する方向(幅方向、分割方向)に移動可能に保持されている。押圧金型3もまた、複数のガイド23によって、保持金型2に対して離接する方向(軸線方向)に移動可能に保持されている。
【0047】
基金型1、第1保持金型2a、第2保持金型2b、押圧金型3は、それぞれの移動方向に移動させるシリンダー等の駆動源31〜33によって移動される。駆動源31〜33が、シリンダー(電気式、エア式、油圧式を含む)である場合には、それぞれの駆動源31〜33は、シャフト31a〜33aと、シャフト31a〜33aの先端に設けられた取付部材31b〜33bを有している。そして、基金型1、第1保持金型2a、第2保持金型2b、押圧金型3は、それぞれ、取付部材31b〜33bによって、シャフト31a〜33aの先端に取り付けられている。
【0048】
(プランジャー一体型弁の製造方法の説明)
以下に、図6〜図8のプランジャー一体型弁の製造方法の説明図、及び、図9のプランジャー一体型弁の製造方法のフロー図を用いて、プランジャー一体型弁110の製造方法の各工程について説明する。なお、以下に説明する実施形態では、コンプレッション成型により、プランジャー111の取付部111bに弁体112を一体成型する実施形態である。また、基金型1及び保持金型2は予め加熱されている。なお、上記した駆動源31〜33を稼働させることにより、各金型1〜3が移動する。
【0049】
まず、S12「保持金型一体工程」において、図6の(A)に示すように、第1保持金型2aと第2保持金型2bを合体させて(一体にして)、保持金型2に第2キャビティ6及びプランジャー収容部7を形成する。この状態では、基金型1は保持金型2から離間し、更に、押圧金型3(図示せず)もまた保持金型2から離間している。なお、後述するS16の工程において、プランジャー111の本体部111aをプランジャー収容部7に挿入し易くするために、第1保持金型2aと第2保持金型2bとは、僅かに(0.1〜数mm)離間していても差し支え無い。
【0050】
次に、S14「原料配置工程」において、図6の(A)に示すように、基金型1の第1弁体外形形成部1b上に、弁体112の原料90(ゴムや軟質樹脂の原料)を載置する。この原料90の体積は、成型される弁体112の体積と同一である。なお、このS14の工程は、S12の工程の後でなくても、S20の工程の前であれば、S16、S18の工程の後に実行しても差し支え無い。
【0051】
次に、S16「プランジャー収納工程において」、図6の(B)に示すように、プランジャー収容部7内に、プランジャー111を取付部111b側から挿入する。すると、プランジャー111の本体部111aの先端面111eが、保持金型2の突出部2k、2mの上面である段差面2jと当接し、プランジャー111が第1保持金型2a及び第2保持金型2bで挟持された状態で保持される。この状態では、プランジャー111の取付部111bは、第2キャビティ6内に収納されている。上述したように、プランジャー収容部7の長さβは、本体部111aの長さαよりも僅かに短いので、本体部111aの基端部が、プランジャー収容部7の開口部から僅かに突出した状態となっている。
【0052】
次に、S18「プランジャー押圧工程」において、図7の(C)に示すように、押圧金型3を保持金型2の対向面2pに隣接させた後に、押圧金型3を保持金型2に密着させるように移動させ、押圧金型3でプランジャー111の本体部111aの基端を押圧させる。上述したように、プランジャー111の本体部111aの基端部が、プランジャー収容部7の開口部から僅かに突出しているので、押圧金型3は本体部111aの基端を押圧し、次いで、本体部111aの先端面111eが突出部2k、2mの段差面2jを全周に渡って押圧する。すると、先端面111eと段差面2jとが全周に渡って密着し、第2キャビティ6のプランジャー収容部7への開口部が本体部111aで密封される。
【0053】
次に、S20「弁体一体成形工程」において、図7の(D)に示すように、押圧金型3でプランジャー111の本体部111aの基端を押圧させた状態を維持したまま、基金型1と保持金型2及び押圧金型3を近接させて、基金型1の当接面1aと保持金型2の当接面2cを当接させ、基金型1と保持金型2を一体にする。すると、原料90が第1キャビティ5及び第2キャビティ6内で充填されて、プランジャー111の取付部111bに弁体112が一体成形される。このように、第2キャビティ6のプランジャー収容部7への開口部が本体部111aで密封された状態で、弁体112が成形されるので、本体部111aの外周面側への原料90の漏出が抑制される。なお、このS20の工程において、原料90の第1キャビティ5及び第2キャビティ6内での充填に伴い、基金型1と保持金型2との当接面1a、2cから空気が逃げるようになっている。
【0054】
原料90が、ゴムの原料の場合には、加熱された基金型1及び保持金型2により、加硫され(原料90に含まれる硫黄により橋架され)、弁体112が成形される。
【0055】
次に、S22「型抜き工程」において、図8の(E)に示すように、保持金型2から基金型1及び押圧金型3を離間させ、次いで、図8の(F)に示すように、第1保持金型2aと第2保持金型2bを、互いに離間させて(分割方向に移動させて)、プランジャー一体型弁110が完成する(S24)。なお、ダイヤフラム部112bは、膜状であり柔軟性を有するので、型抜きの際に、第1保持金型2aと第2保持金型2bの移動に伴いダイヤフラム部112bが柔軟に変形し、ダイヤフラム部112bが破損しない。
【0056】
本実施形態では、取付部111bに固着溝111cが形成されていて、この固着溝111cに弁体112の材料であるゴムや樹脂が充填されている。このため、弁体112が取付部111bに強固に固着され、弁体112が取付部111bから容易に脱落することが無い。
【0057】
上述した実施形態のプランジャー一体型弁成形用金型10によれば、図3に示すように、保持金型2の分割面2e、2fに形成された第2キャビティ6とプランジャー収容部7との間には、保持金型2の分割方向に延在し周方向に連続する環状の面であり、本体部111aの先端面111eと全周に渡って当接する段差面2jが形成されている。このため上述したように、本体部111aの先端面111eを全周に渡って段差面2jに押圧させることにより、本体部111aの先端面111eと段差面2jとが全周に渡って密着した状態で、取付部111bに弁体112を一体成形させることができる。
【0058】
従来では、プランジャー111の先端に弁体112を一体成形する場合には、本体部111aの外周面の全周に保持金型2を押し当てて、原料90の漏出を抑制しようとしていた。しかし、本体部111aの外径寸法は、製造されたプランジャー111によって微妙に異なるので、保持金型2と本体部111aとの間に隙間が開いてしまうことから、本体部111aの外周面に原料90が漏出してしまう。もし仮に、本体部111aの外周面に原料90が漏出した本体部111aをスリーブ107のガイド部107a内に収納し、プランジャー一体型弁110をバルブ装置100に組み付けてしまうと、本体部111aの外周面に漏出した原料90により、スリーブ107内に収納された本体部111aの摺動が阻害され、バルブ装置100が不良品となってしまう。
【0059】
一方で、本発明のプランジャー一体型弁成形用金型10では、保持金型2に第2キャビティ6に突出する突出部2k、2mが形成され、これら突出部2k、2mに、周方向に連続する環状の段差面2jが形成されている。これにより、本体部111aの先端面111eを突出部2k、2mの段差面2jに押圧させることにより、本体部111aの先端面111eと段差面2jとを全周に渡って密着させることができる。この結果、第2キャビティ6のプランジャー収容部7へ連続する開口部が、本体部111aの先端面111eで密封された状態で、第1キャビティ5及び第2キャビティ6に原料90を充填させることができる。このため、本体部111aの外周面側への原料90の漏出を抑制しつつ、取付部111bに弁体112を一体成形により固着させることができる。
【0060】
このように、本発明では、従来では困難であったプランジャー111の先端への弁体112の一体成形が可能となったので、従来のように弁体112を圧入によりプランジャー111に取り付ける必要が無い。このため、圧入代の不足に起因する弁体112のプランジャー111からの脱落が抑制され、バルブ装置100の信頼性を向上させることが可能となる。また、弁体112をプランジャー111に取り付ける工程を省くことができるので、プランジャー一体型弁110の製造コストを低減することが可能となる。
【0061】
また、上述した実施形態のプランジャー一体型弁成形用金型10によれば、図3に示すように、プランジャー収容部7は、保持金型2の基金型1と対向する面と反対側の面である対向面2pに開口し、プランジャー収容部7の長さβは、プランジャー111の本体部111aの長さα(図1の(A)に示す)よりも小さく設定されている。
【0062】
これにより、本体部111aの長さに、製作精度の公差内でのバラツキがあったとしても、図6の(B)に示すように、プランジャー収容部7に本体部111aを収容すると、プランジャー収容部7の開口部から本体部111aの基端部が突出する。このため、本体部111aの長さにバラツキがあったとしても、確実に押圧金型3で本体部111aの基端を押圧させることができ、確実に本体部111aの先端面111eで段差面2jを押圧させることができる。このように、プランジャー111の本体部111aの先端面111eで保持金型2の段差面2jを確実に押圧させることができるので、取付部111bに弁体112を一体成形する際に、本体部111aの外周面側への原料90の漏出を抑制することが可能となる。
【0063】
また、上述した実施形態のプランジャー一体型弁成形用金型10によれば、図3に示すように、第1キャビティ5には、ダイヤフラム部112bの外形に対応した形状の空間であるダイヤフラム成形部5aが、第2キャビティ6との連続部分から第2キャビティ6の径方向外側に向かって形成されている。これにより、ダイヤフラム部112bを有するダイヤフラム弁を、プランジャー111の先端に一体成形させることができる。
【0064】
上述した実施形態のプランジャー一体型弁110の製造方法によれば、図7の(D)に示すように、S18「弁体一体成形工程」において、本体部111aの先端面111eを全周に渡って段差面2jに押圧させた状態で、保持金型2と基金型1とを一体にし、第1キャビティ5及び第2キャビティ6に弁体112の原料90を充填させて、取付部111bに弁体112を一体成形する。
【0065】
これにより、保持金型2の段差面2jが全周に渡って本体部111aの先端面111eで押圧されることにより、第2キャビティ6のプランジャー収容部7へ連続する開口部が、本体部111aの先端面111eで密封された状態で、第1キャビティ5及び第2キャビティ6に原料90を充填させることができる。このため、本体部111aの外周面側への原料90の漏出を抑制しつつ、取付部111bに弁体112を一体成形させて固着させることができる。
【0066】
なお、上記説明した実施形態では、プランジャー一体型弁成形用金型10は、押圧金型3を有しているが、押圧金型3を有さない実施形態であっても差し支え無い。この実施形態の場合には、保持金型2上には、プランジャー収容部7内に収納された本体部111a基端を押圧するためのプッシャー(図示せず)が配設されている。この実施形態であっても、前記プッシャーが本体部111a基端を押圧することにより、本体部111aの先端面111eが突出部2k、2mの段差面2jを押圧している状態で、弁体112を成形することができ、本体部111aの外周面側への原料90の漏出を抑制することができる。
【0067】
また、上記説明した実施形態では、コンプレッション成形により取付部111bに弁体112を一体成形している。しかし、本発明は、このような実施形態に限定されず、本発明の技術的思想は、射出成形により取付部111bに弁体112を一体成形する実施形態にも適用可能なことは言うまでも無い。この実施形態の場合には、基金型1や保持金型2には、第1キャビティ5及び第2キャビティ6の少なくとも一方に、ゴムや樹脂を射出するためのゲート、ランナー、スプルーが形成されている。
【0068】
また、上記説明した実施形態では、基金型1は一体に構成されているが、基金型1は複数の金型から構成された分割構造であっても差し支え無い。また、上記説明した実施形態では、保持金型2は2分割構造であるが、保持金型2は3分割以上の構造であっても差し支え無い。
【0069】
また、上記説明した実施形態では、基金型1が保持金型2の下方に位置したプランジャー一体型弁成形用金型10の姿勢で、プランジャー111の取付部111bに弁体112を一体成形している。しかし、基金型1が保持金型2の上方に位置したプランジャー一体型弁成形用金型10の姿勢や、基金型1が保持金型2の側方に位置したプランジャー一体型弁成形用金型10の姿勢で、プランジャー111の取付部111bに弁体112を一体成形することにしても差し支え無い。
【0070】
また、プランジャー111の本体部111aが角柱形状であれば、プランジャー収容部7は本体部111aの外形に対応した角柱形状の空間となっている。この実施形態の場合には、段差面2jの外縁は、本体部111aの断面形状に対応した多角形状となっている。
【0071】
上記説明した実施形態では、弁体112が固着する取付部111bは、プランジャー111の本体部111aの先端面111eから突出形成されている。しかし、本体部111aの先端面111eに、凹陥形成された取付部であっても差し支え無い。
【0072】
上記説明した実施形態では、本体部111aの先端に形成された先端面111eは、本体部111aの軸線に対して直交した平面となっている。しかし、先端面111eはこれに限定されず、本体部111aの軸線に対して略直交している平面、つまり、円錐面状(テーパー状)であっても差し支え無い。保持金型2に形成された段差面2jは、これら先端面111eに対応した形状であり、先端面111eと全周に渡って当接するようになっている。
【0073】
上記説明した実施形態では、取付部111bへの弁体112の固着をより確実にするために、S20「弁体一体形成工程」の前に、取付部111bに加硫接着剤を塗布している。なお、加硫接着剤には、シアノアクリレート系、アルキルフェノールアルデヒド縮合体の加硫接着剤が含まれる。なお、図1の(B)に示す実施形態では、取付部111bには、固着溝111cが形成されていて、上述のように、弁体112が取付部111bに強固に固着されることから、取付部111bへの加硫接着剤の塗布は必ずしも必須では無い。
【0074】
プランジャー111の先端に形成された取付部の形状は、図1の(B)に示す実施形態に限定されず、図10の(A)〜(D)に示すような形状の取付部111f、111g、111h、111qであっても差し支え無い。
【0075】
図10の(A)に示す取付部111fは、プランジャー111の本体部111aの先端面111eの中央に凹陥して形成されている。取付部111fは、奥に向かって徐々に内径が大きくなっている。このため、取付部111fに固着された弁体112の脱落が防止される。
図10の(B)に示す取付部111gは、プランジャー111の本体部111aの先端面111eの中央に凹陥して形成されている。取付部111gの内面にはネジ溝が形成されている。このため、取付部111gに固着した弁体112の脱落が防止される。
【0076】
図10の(C)に示す取付部111hは、プランジャー111の本体部111aの先端面111eの中央に凹陥形成された固着凹部111jと、本体部111aの先端部外縁から径方向外側にフランジ状に延設されたフランジ部111kとから構成されている。この実施形態では、固着凹部111jに弁体112の弁本体部112aが固着し、フランジ部111kに弁体112のダイヤフラム部112bが固着している。
【0077】
図10の(D)に示す実施形態では、プランジャー111の先端には、嵌合凹部111pが形成されていて、この嵌合凹部111pに別部材111iが嵌合されている。別部材111iは、嵌合凹部111pに嵌合する有底筒状の固着部111mと、この固着部111mの開口端部に固着部111mの軸方向に対して直角な半径方向に延在するフランジ部111nとから構成されている。固着部111mにより形成される空間が取付部111qとなっていて、フランジ部111nの表面は、先端面111eとなっている。フランジ部111nの外径は、本体部111aの外径よりも大きくなっている。この実施形態では、取付部111qに、弁体112の弁本体部112aが固着し、フランジ部111nに弁体112のダイヤフラム部112bが固着している。
【符号の説明】
【0078】
1…基金型、 2…保持金型、 2j…段差面、 3…押圧金型、
5…第1キャビティ、 5a…ダイヤフラム成形部、 6…第2キャビティ、 7…プランジャー収容部
10…プランジャー一体型弁成形用金型
90…原料
100…バルブ装置、 110…プランジャー一体型弁
111…プランジャー、 111a…本体部、 111b…取付部、 111e…先端面、 111f、111g、111h、111q…取付部
112…弁体、 112b…ダイヤフラム部、 112j…固着部、 112i…弁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プランジャーの本体部の先端に軸線方向と直交する方向に延在し周方向に連続する環状の先端面の内側に形成された取付部に、弁体を一体成形により固着させるためのプランジャー一体型弁成形用金型であって、
基金型と、前記基金型と対向して配置され、前記基金型との対向方向と直交する分割方向に分割される保持金型とを有し、
前記基金型と前記保持金型との間には、前記弁体の先端側の弁部の外形に対応した形状の空間である第1キャビティが形成され、
前記保持金型の分割面には、前記第1キャビティに連続し、前記弁体の基部側に形成され前記取付部に固着される固着部の外形に対応した形状の空間である第2キャビティ、及び、この第2キャビティに連続し前記プランジャーの本体部の外形に対応した形状の空間であるプランジャー収容部が形成され、
前記第2キャビティと前記プランジャー収容部との間には、前記分割方向に延在し周方向に連続する環状の面であり、前記本体部の先端面と全周に渡って当接する段差面が形成されているプランジャー一体型弁成形用金型。
【請求項2】
請求項1において、
前記プランジャー収容部は、前記保持金型の前記基金型と対向する面と反対側の面に開口し、
前記プランジャー収容部の長さは、前記プランジャーの本体部の長さよりも小さく設定され、
前記保持金型の前記基金型と対向する面と反対側の面に隣接して配置される押圧金型を更に有するプランジャー一体型弁成形用金型。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記弁体は、前記固着部又は前記弁部から径方向外側に向かって延設された膜状のダイヤフラム部を有するダイヤフラム弁であり、
前記第1キャビティには、前記ダイヤフラム部の外形に対応した形状の空間であるダイヤフラム成形部が形成されているプランジャー一体型弁成形用金型。
【請求項4】
プランジャーの本体部の先端に軸線方向と直交する方向に延在し周方向に連続する環状の先端面の内側に形成された取付部に、弁体を一体成形により固着させてプランジャー一体型弁を製造する方法であって、
基金型と、前記基金型と対向して配置され、前記基金型との対向方向と直交する分割方向に分割される保持金型とを有し、
前記基金型と前記保持金型との間には、前記弁体の先端側の弁部の外形に対応した形状の空間である第1キャビティが形成され、
前記保持金型の分割面には、前記第1キャビティに連続し、前記弁体の基部側に形成され前記取付部に固着される固着部の外形に対応した形状の空間である第2キャビティ、及び、この第2キャビティに連続し前記プランジャーの本体部の外形に対応した形状の空間であるプランジャー収容部が形成され、
前記第2キャビティと前記プランジャー収容部との間には、前記分割方向に延在し周方向に連続する環状の面であり、前記本体部の先端面と全周に渡って当接する段差面が形成されているプランジャー一体型弁成形用金型を用い、
前記保持金型の前記分割面を合わせて前記第2キャビティと前記プランジャー収容部を形成する保持金型一体工程と、
前記本体部を前記プランジャー収容部に収納させるとともに、前記取付部を前記第2キャビティに収納させるプランジャー収納工程と、
前記先端面を全周に渡って前記段差面に押圧させた状態で、前記保持金型と前記基金型とを一体にし、前記第1キャビティ及び前記第2キャビティに前記弁体の原料を充填させて、前記取付部に前記弁体を一体成形する弁体一体成形工程と、を含むプランジャー一体型弁製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−91274(P2013−91274A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235578(P2011−235578)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】