説明

プラントおよび蒸気弁

【課題】蒸気遮断時における信頼性の高いプラントを提供する。
【解決手段】一つの実施の形態に係るプラントは、内部ケーシングと、外部ケーシングと、弁体と、弁棒と、弁棒ガイドと、タービンとを具備する。前記内部ケーシングは、内側に蒸気室が設けられる。外部ケーシングは、前記内部ケーシングを収容する。弁体は、前記蒸気室の中に位置する。前記弁棒は、前記弁体に接続される。前記弁棒ガイドは、前記弁棒が進退自在に挿通されたガイド部と、前記弁棒の進行方向に位置して前記蒸気室に開口した出口を有するとともに前記ガイド部に繋がることで前記出口を前記弁体によって閉塞可能な位置に固定した弁座部と、を有する。前記タービンは、前記弁棒ガイドの前記出口に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プラントおよび蒸気弁に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所のような蒸気タービンプラントでは、ボイラーによって生じた蒸気が、発電機に連結されたタービンに供給される。タービンに供給された蒸気は、復水器において水に戻された後、給水ポンプで昇圧され、ボイラーに再度供給される。
【0003】
このようなボイラーとタービンとの間の経路に、蒸気弁が配置される。蒸気弁は、タービンに流入する蒸気の量を調節したり、安全のために蒸気を遮断したりするために用いられる。このような蒸気弁には、十分な信頼性が要求される。
【0004】
蒸気弁は、例えばケーシング、弁体、この弁体を動かすための弁棒、この弁棒をガイドする弁棒ガイド、および弁体が当接し得る弁座を備える。弁棒ガイドおよび弁座はケーシングに固定される。弁体を上下させて弁を開閉させることで、タービンに流入する蒸気の量がコントロールされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−48639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プラントの効率を高めるため、蒸気を高温化および高圧化することが望まれる。高温および高圧の蒸気に耐え得るように、二重構造を有するケーシングが考案されている。このようなケーシングでは、例えば高温および高圧の蒸気にさらされる内部ケーシングに、高温下での強度が高い材料が用いられる。一方、隙間を介して内部ケーシングを覆う外部ケーシングには、従来の材料が用いられる。
【0007】
このような二重構造のケーシングでは、高温高圧の蒸気が通流する際に、内部ケーシングと外部ケーシングとの間で伸び量の差が生じる。このため、弁棒と弁座との位置合わせが難しくなる。このように、二重構造のケーシングを備えた蒸気弁には未だ改良の余地がある。
【0008】
本発明の目的は、蒸気遮断時における信頼性の高いプラントおよび蒸気弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一つの実施の形態に係るプラントは、内部ケーシングと、外部ケーシングと、弁体と、弁棒と、弁棒ガイドと、タービンとを具備する。前記内部ケーシングは、内側に蒸気室が設けられる。外部ケーシングは、前記内部ケーシングを収容する。弁体は、前記蒸気室の中に位置する。前記弁棒は、前記弁体に接続される。前記弁棒ガイドは、前記弁棒が進退自在に挿通されたガイド部と、前記弁棒の進行方向に位置して前記蒸気室に開口した出口を有するとともに前記ガイド部に繋がることで前記出口を前記弁体によって閉塞可能な位置に固定した弁座部と、を有する。前記タービンは、前記弁棒ガイドの前記出口に接続される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施の形態に係るプラントを概略的に示すブロック図。
【図2】第1の実施の形態に係る主蒸気止め弁を示す断面図。
【図3】第1の実施の形態に係る主蒸気止め弁を図2のA−A´切断線に沿って示す断面図。
【図4】第2の実施の形態に係る主蒸気止め弁を示す断面図。
【図5】第3の実施の形態に係る主蒸気止め弁を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、第1の実施の形態について、図1から図3を参照して説明する。図1は、第1の実施の形態に係るプラント1を概略的に示すブロック図である。プラント1は、火力発電用の蒸気タービンプラントである。なお、プラント1はこれに限らず、原子力発電用の蒸気タービンプラントのような他のプラントであっても良い。
【0012】
図1に示すように、プラント1は、ボイラー11と、主蒸気止め弁12と、蒸気加減弁13と、高圧タービン14と、再熱蒸気止め弁15と、インターセプト弁16と、中圧タービン17と、低圧タービン18と、復水器21と、給水ポンプ22とを備えている。主蒸気止め弁12と、蒸気加減弁13と、再熱蒸気止め弁15と、インターセプト弁16とは、蒸気弁の一例である。高圧タービン14と、中圧タービン17と、低圧タービン18とは、タービンの一例である。
【0013】
プラント1は、例えば以下のように稼動する。まず、ボイラー11の過熱器11aにおいて発生した蒸気が、主蒸気管24の主蒸気止め弁12および蒸気加減弁13を通って高圧タービン14に供給される。この蒸気は、高圧タービン14で膨張仕事を行う。
【0014】
膨張仕事を終えて排出された高圧排気蒸気は、高圧排気蒸気管25の逆止弁26を通ってボイラー11の再熱器11bに導かれる。この高圧排気蒸気は、再熱器11bで再度過熱(再熱)されて再熱蒸気となる。この再熱蒸気は、再熱蒸気管27の再熱蒸気止め弁15およびインターセプト弁16を通って中圧タービン17および低圧タービン18に供給される。再熱蒸気は、中圧タービン17および低圧タービン18で順次膨張仕事を行う。
【0015】
低圧タービン18にて膨張仕事を終えて排出された低圧排気蒸気は復水器21に導かれる。低圧排気蒸気は、復水器21において凝縮されて復水となる。この復水は、給水ポンプ22により昇圧されてボイラー11に再度供給される。
【0016】
上述したように、蒸気が高圧タービン14、中圧タービン17、および低圧タービン18において膨張仕事をし、各タービン14、17、18を回転駆動させる。これにより、各タービン14、17、18に接続された発電機が発電する。
【0017】
主蒸気管24と高圧排気蒸気管25との間に、高圧バイパス管31が連結されている。高圧バイパス管31は、主蒸気を、高圧タービン14をバイパスさせて、高圧排気蒸気管25からボイラー11の再熱器11bに供給する。
【0018】
高圧バイパス管31の一端は、主蒸気管24のうち主蒸気止め弁12の上流側に連結される。高圧バイパス管31の他端は、高圧排気蒸気管25のうち逆止弁26の下流側に連結されている。高圧バイパス管31の途中には高圧タービンバイパス弁32が設けられている。
【0019】
再熱蒸気管27と復水器21との間に、低圧バイパス管33が連結されている。低圧バイパス管33は、再熱蒸気を、中圧タービン17および低圧タービン18をバイパスさせて復水器21に供給する。
【0020】
低圧バイパス管33の一端は、再熱蒸気管27のうち再熱蒸気止め弁15の上流側に連結される。低圧バイパス管33の他端は、復水器21に連結されている。低圧バイパス管33の途中には低圧タービンバイパス弁34が設けられている。
【0021】
このように高圧バイパス管31および低圧バイパス管33を設けることによって、各タービン14、17、18を停止させる場合においても、高圧バイパス管31および低圧バイパス管33に主蒸気および再熱蒸気をそれぞれ通流させて、蒸気をバイパスさせて循環させ、ボイラー11を単独で運転することができる。
【0022】
図2は、蒸気弁の一例としての主蒸気止め弁12を示す断面図である。図3は、図2のA−A´切断線に沿って主蒸気止め弁12の一部を示す断面図である。図2に示すように、主蒸気止め弁12は、内部ケーシング41と、外部ケーシング42と、弁体43と、弁棒44と、弁棒ガイド45とを備えている。
【0023】
内部ケーシング41は、略球形に形成され、内側に蒸気室51が設けられている。蒸気室51には、ボイラー11で過熱された、例えば700℃の高温高圧の蒸気が流入する。内部ケーシング41は、この高温高圧蒸気に耐え得る高温耐熱鋼によって形成される。高温耐熱鋼は、例えば700℃以上で実用的な強度を有するオーステナイト系合金鋼またはNi基合金鋼である。
【0024】
内部ケーシング41は、蒸気室51に接続された内部入口管52を有している。内部ケーシング41には、一対のガイド部挿通孔53が設けられている。一対のガイド部挿通孔53は、互いに同軸線上に設けられる。一対のガイド部挿通孔53の内周面に、それぞれラビリンスパッキン部54が設けられている。ラビリンスパッキン部54は、例えば溝または襞によって、複数の絞りを設けた部分である。
【0025】
外部ケーシング42は、内側に収容室56と、管挿入口57と、ガイド部挿入口58とが設けられている。収容室56に内部ケーシング41が収容される。収容室56には段部61が設けられ、この段部61が内部ケーシング41を支持する。
【0026】
内部ケーシング41が段部61に支持されて収容室56に収容されると、内部ケーシング41と外部ケーシング42との間に、隙間Gが形成される。隙間Gを含む収容室56には、例えば、蒸気室51に流入する高温高圧の蒸気よりも低温低圧の蒸気が供給される。このため、外部ケーシング42は、内部ケーシング41よりも蒸気室51の高温高圧の蒸気から受ける影響が少ない。
【0027】
外部ケーシング42は、内部ケーシング41の高温耐熱鋼よりも耐熱性が低い低温耐熱鋼によって形成される。低温耐熱鋼は、例えば、耐熱温度が約570度のCr−Mo−V鋼に代表されるフェライト系合金などの低クロム合金耐熱鋼である。
【0028】
管挿入口57とガイド部挿入口58とは、それぞれ収容室56に開口している。管挿入口57とガイド部挿入口58とのそれぞれの内周面に、ラビリンスパッキン部62が設けられている。
【0029】
管挿入口57に、内部ケーシング41の内部入口管52が挿入される。管挿入口57のラビリンスパッキン部62は、内部入口管52の外周面に面している。ガイド部挿入口58は、内部ケーシング41のガイド部挿通孔53と同軸線上に設けられている。
【0030】
外部ケーシング42は、外部入口管64と、外部出口管65と、複数の係止具66と、蓋部材67とを有している。外部入口管64は、内部ケーシング41の内部入口管52に連通している。外部入口管64は、主蒸気管24を介して、ボイラー11に接続されている。
【0031】
外部出口管65は、ガイド部挿入口58に連通している。外部出口管65は、主蒸気管24を介して、蒸気加減弁13に接続されている。係止具66は、収容室56の内壁に取り付けられ、内部ケーシング41を収容室56に保持している。蓋部材67は、収容室56を塞いでいる。
【0032】
弁体43は、蒸気室51の中に位置している。弁体43に、弁棒44が接続されている。弁棒44は、主蒸気止め弁12の外に設けられた駆動装置に連結されている。この駆動装置は、弁棒44を介して弁体43を変位させる。
【0033】
弁棒ガイド45は、ガイド部71と、弁座部72と、複数のボルト73とを有している。複数のボルト73は、連結部材の一例である。
【0034】
ガイド部71は、例えば外部ケーシング42と同じ低温耐熱鋼によって、円筒状に形成されている。なお、ガイド部71は、外部ケーシング42と異なる材料によって形成されても良い。
【0035】
ガイド部71の一方の端部は、蓋部材67に固定されている。ガイド部71の他方の端部は、内部ケーシング41の一方のガイド部挿通孔53に挿通されている。ガイド部71は、その一部である底面部分が蒸気室51に露出されている。一方のガイド部挿通孔53のラビリンスパッキン部54は、ガイド部71の外周面に面している。
【0036】
ガイド部71に、弁棒44が進退自在に挿通されている。ガイド部71は、弁体43がガイド部挿通孔53と同軸線上で滑らかに上昇又は下降するように、弁棒44をガイドしている。すなわち、弁棒44の軸心は、ガイド部71によってガイド部挿通孔53と同軸線上に配置される。
【0037】
弁座部72は、例えば内部ケーシング41と同じ高温耐熱鋼によって、円筒状に形成される。すなわち、弁座部72は、ガイド部71よりも耐熱性が高い。なお、弁座部72は内部ケーシング41と異なる材料によって形成されても良い。
【0038】
弁座部72の一方の端部は、ガイド部挿入口58に挿入される。弁座部72の他方の端部は、内部ケーシング41の他方のガイド部挿通孔53に挿通されている。弁座部72は、その一部である上面部分が蒸気室51に露出されている。
【0039】
他方のガイド部挿通孔53のラビリンスパッキン部54は、弁座部72の外周面に面している。同様に、ガイド部挿入口58のラビリンスパッキン部62は、弁座部72の外周面に面している。また、弁座部72の底面は、ガイド部挿入口58の縁に当接して支持されている。
【0040】
弁座部72は、弁棒44の進行方向に位置し、蒸気室51に開口する出口75を有している。出口75は、外部ケーシング42の外部出口管65に連通している。このため、出口75は、蒸気加減弁13および主蒸気管24を介して、高圧タービン14に接続されている。
【0041】
弁座部72は、下降した弁体43を受け止めることが可能である。弁座部72の所定の位置に弁体43が当接することで、弁体43と弁座部72とが線接触し、出口75が閉塞される。
【0042】
弁座部72は、複数の柱部76を有している。複数の柱部76は、弁座部72の上面部分から、ガイド部71に向かってそれぞれ延びている。複数の柱部76は、ガイド部71にそれぞれ当接している。図3に示すように、複数の柱部76の間には、スリット77がそれぞれ形成されている。このため、蒸気室51に流入した蒸気は、スリット77を通って出口75に抜ける。
【0043】
図2に示すように、複数のボルト73は、ガイド部71から、弁座部72の柱部76にそれぞれ挿通されている。複数のボルト73は、弁座部72をガイド部71に連結する。複数のボルト73は、ガイド部71と弁座部72の柱部76との中に挿通されており、蒸気室51において露出されない。
【0044】
弁座部72がガイド部71に連結されて繋がることで、弁座部72の出口75は、弁棒44の進行方向との同軸線上に固定される。言い換えると、出口75は、弁体43によって閉塞可能な位置に固定される。
【0045】
このような弁棒ガイド45は、ガイド部71が外部ケーシング42の蓋部材67に固定され、弁座部72がガイド部挿入口58の縁に支持されることで、外部ケーシング42に固定されている。一方、弁棒ガイド45は、ガイド部挿通孔53およびガイド部挿入口58から僅かに離間している。弁棒ガイド45は、内部ケーシング41に対し非接触である。このため、弁棒ガイド45は、内部ケーシング41に対して相対的に変位可能である。なお、弁棒ガイド45が内部ケーシング41に接触していても良い。
【0046】
一対のガイド部挿通孔53のラビリンスパッキン部54が、弁棒ガイド45の外周面にそれぞれ面している。このため、蒸気室51に流入する高温高圧の蒸気が外部ケーシング42の収容室56に漏れることが抑制される。
【0047】
管挿入口57のラビリンスパッキン部62が、内部ケーシング41の内部入口管52の外周面に面している。さらに、ガイド部挿入口58のラビリンスパッキン部62が、弁棒ガイド45のガイド部71の外周面に面している。このため、収容室56に供給された蒸気が漏れることが抑制される。
【0048】
第1の実施の形態によれば、上記構成の主蒸気止め弁12を開いて蒸気を通流させる場合、前記駆動装置によって弁棒44を介して弁体43を上昇させる。これにより、弁体43が弁座部72から離間し、出口75が開放される。すなわち、主蒸気止め弁12が開く。
【0049】
主蒸気止め弁12が開くことで、ボイラー11から、高温高圧の蒸気が内部ケーシング41の蒸気室51に流入する。蒸気室51に流入した蒸気は、弁棒ガイド45の複数のスリット77を通り、出口75から流出する。通流する蒸気の量は、弁体43の位置によって調整可能である。
【0050】
流入した高温高圧の蒸気により、内部ケーシング41が加熱されて伸びる。一方、外部ケーシング42は、内部ケーシング41および収容室56に供給された低温低圧の蒸気を介して、蒸気室51の高温高圧の蒸気から熱を受ける。外部ケーシング42の温度上昇は内部ケーシング41の温度上昇よりも低くなる。このため、外部ケーシング42の伸び量は内部ケーシング41の伸び量よりも少ない。なお、材料の熱膨張率によっては、外部ケーシング42の伸び量が内部ケーシング41の伸び量よりも大きくとも良い。
【0051】
伸び量の差により、内部ケーシング41は外部ケーシング42に対して相対的に変位し得る。この場合、外部ケーシング42にのみ固定された弁棒ガイド45は、内部ケーシング41に対して相対的に変位する。これにより、内部ケーシング41と外部ケーシング42との伸び量の差によって、弁棒ガイド45が、例えば内部ケーシング41から拘束されるような外力を受けることが抑制されている。
【0052】
弁棒ガイド45の弁座部72は、ガイド部71に繋がることで出口75を弁体43によって閉塞可能な位置に固定する。すなわち、弁体43と弁座部72の当接位置がずれること、および出口75が閉塞不可能になることが抑制される。
【0053】
主蒸気止め弁12を閉じて蒸気の流れを遮断する場合、前記駆動装置によって弁棒44を介して弁体43を下降させる。これにより、弁体43が弁座部72に当接し、出口75が閉塞される。すなわち、主蒸気止め弁12が閉じる。
【0054】
上記構成のプラント1によれば、蒸気室51に蒸気が流入した際に、伸び量の差により、内部ケーシング41と外部ケーシング42とが相対的に変位し得る。このため、例えば外部ケーシング42の外部出口管65と、内部ケーシング41の一対のガイド部挿通孔53とが同軸線上からずれる場合がある。これに対し、弁棒ガイド45の弁座部72がガイド部71に繋がっているため、出口75は弁棒44の軸心と同軸線上に固定され、互いにずれることが抑制されている。したがって、内部ケーシング41と外部ケーシング42との伸び量の差が生じたとしても、弁体43が出口75を閉塞することができる。すなわち、蒸気遮断時における主蒸気止め弁12の信頼性が向上する。さらに、内部ケーシング41と外部ケーシング42との相対的な変位によって弁棒44に曲げ方向の力が作用すること、および当該力によって弁棒44の動きに支障をきたすことを抑制できる。
【0055】
弁棒ガイド45は、外部ケーシング42に固定され、内部ケーシング41に対して相対的に変異可能である。言い換えると、弁棒ガイド45は、外部ケーシング42に連動する一方、内部ケーシング41に対してはある程度自由である。これにより、内部ケーシング41と外部ケーシング42との伸び量の差が生じたとしても、出口75が弁棒44の軸心からずれることが抑制される。さらに、弁棒ガイド45が、内部ケーシング41と外部ケーシング42との伸び量の差によって、内部ケーシング41から拘束するような外力を受けることを抑制できる。
【0056】
弁座部72は、ガイド部71と別個の部材である。弁座部72が高温耐熱鋼で形成される一方、ガイド部71は低温耐熱鋼で形成される。高温耐熱鋼は、一般的に低温耐熱鋼よりも高価である。これにより、高価な高温耐熱鋼が使用される部分を低減させ、主蒸気止め弁12を廉価に製造することができる。
【0057】
ボルト73は、ガイド部71および弁座部72の柱部76に挿通され、蒸気室51において露出されない。これにより、高温高圧の蒸気によってボルト73が損傷することを抑制できる。また、ボルト73が挿通される柱部76が高温耐熱鋼によって形成された弁座部72に設けられることで、ボルト73が損傷することがさらに抑制される。
【0058】
ガイド部挿通孔53の内周面に、ラビリンスパッキン部54が設けられている。また、管挿入口57およびガイド部挿入口58に、それぞれラビリンスパッキン部62が設けられている。これにより、内部ケーシング41が外部ケーシング42に対し相対的に変位可能な状態を保ちつつ、蒸気の漏れを抑制することができる。
【0059】
次に、図4を参照して、第2の実施の形態について説明する。なお、以下に開示する複数の実施形態において、第1の実施形態のプラント1と同一の機能を有する構成部分には同一の参照符号を付す。さらに、当該構成部分については、その説明を一部または全て省略することがある。
【0060】
図4は、第2の実施の形態に係る主蒸気止め弁15を示す断面図である。図4に示すように、第2の実施形態の主蒸気止め弁15では、ガイド部挿通孔53にラビリンスパッキン部54が設けられる代わりに、弁棒ガイド45にスライドブッシュ81が嵌められている。
【0061】
スライドブッシュ81は、弁棒ガイド45の外周面に接する複数のリングと、弁棒ガイド45の外周面から離間した複数のリングとが交互に積み重ねられて形成されている。スライドブッシュ81は、シール性を有するとともに、弁棒ガイド45の径方向(図4における横方向)への変位に追従する。
【0062】
スライドブッシュ81は、一方のガイド部挿通孔53に面するガイド部71の外周面に嵌められている。スライドブッシュ81とガイド部挿通孔53との間には隙間が介在している。
【0063】
スライドブッシュ81の底面は、内部ケーシング41に当接している。内部ケーシング41に、保持部材82が取り付けられている。保持部材82は、スライドブッシュ81の上面に当接している。すなわち、スライドブッシュ81は、内部ケーシング41と保持部材82とに挟持される。
【0064】
スライドブッシュ81により、ガイド部挿通孔53とガイド部71との間の隙間がシールされ、蒸気室51の高温高圧の蒸気が収容室56に漏れることが防がれる。さらに、弁棒ガイド45は、内部ケーシング41に対し変位可能である。
【0065】
また、管挿入口57にラビリンスパッキン部62が設けられる代わりに、内部入口管52の外周面にスライドブッシュ83が嵌められている。スライドブッシュ83と管挿入口57との間には隙間が介在している。
【0066】
スライドブッシュ83の一方の端面は、管挿入口57の縁に当接している。外部ケーシング42に、保持部材84が取り付けられている。保持部材84は、スライドブッシュ83の他方の端面に当接している。すなわち、スライドブッシュ83は、管挿入口57の縁と保持部材84とに挟持される。
【0067】
スライドブッシュ83により、管挿入口57と内部入口管52との間の隙間がシールされ、収容室56の蒸気が漏れることが防がれる。さらに、内部入口管52は、外部ケーシング42に対し変位可能である。
【0068】
さらに、ガイド部挿入口58にラビリンスパッキン部62が設けられる代わりに、弁座部72の外周面にスライドブッシュ85が嵌められている。スライドブッシュ85とガイド部挿入口58との間には隙間が介在している。
【0069】
スライドブッシュ85の底面は、ガイド部挿入口58の縁に当接している。外部ケーシング42に、保持部材86が取り付けられている。保持部材86は、スライドブッシュ85の上面に当接している。すなわち、スライドブッシュ85は、ガイド部挿入口58の縁と保持部材86とに挟持される。
【0070】
スライドブッシュ85により、ガイド部挿入口58と弁座部72との間の隙間がシールされ、収容室56の蒸気が漏れることが防がれる。さらに、弁座部72は、外部ケーシング42に対し変位可能である。
【0071】
上記構成の第2の実施の形態のプラント1によれば、内部ケーシング41と外部ケーシング42との伸び量の差が生じたとしても、スライドブッシュ81,85は、弁棒ガイド45の変位に追従する。これにより、蒸気の漏れが防がれるとともに、弁棒ガイド45が拘束力を受けることを抑制できる。
【0072】
以下に、図5を参照して第3の実施の形態について説明する。図5は、第3の実施の形態の主蒸気止め弁12を示す断面図である。図5に示すように、主蒸気止め弁12は、ケースガイド一体部90を有している。
【0073】
ケースガイド一体部90は、内部ケーシング41と、ガイド部71と、弁座部72と、内部出口管91とを有している。内部ケーシング41と、ガイド部71と、内部出口管91とは、一体に形成されている。弁座部72は、内部ケーシング41に取り付けられている。このため、弁座部72は、ガイド部71に繋がっている。
【0074】
内部出口管91は、弁座部72の出口75に連通している。内部出口管91は、ガイド部挿入口58に挿入されている。内部出口管91の外周面に、スライドブッシュ85が嵌められている。
【0075】
上記構成の第3の実施の形態によれば、ケースガイド一体部90のガイド部71は、蓋部材67に固定されている。これにより、蒸気室51に高温高圧の蒸気が流入した際に、ケースガイド一体部90は、蓋部材67を基点として伸びる。これにより、出口75が弁棒44の軸心からずれ難い。したがって、内部ケーシング41と外部ケーシング42との伸び量の差が生じたとしても、弁体43が出口75を閉塞することができ、蒸気遮断時における主蒸気止め弁12の信頼性が向上する。
【0076】
以上述べた少なくとも一つの実施形態のプラントによれば、弁棒が挿通されたガイド部と、出口を有する弁座部とが繋がり、前記出口が弁体によって閉塞可能な位置に固定される。これにより、蒸気遮断時における信頼性が高まる。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0078】
1…プラント、12…主蒸気止め弁、14…高圧タービン、41…内部ケーシング、42…外部ケーシング、43…弁体、44…弁棒、45…弁棒ガイド、51…蒸気室、54,62…ラビリンスパッキン部、71…ガイド部、72…弁座部、73…ボルト、75…出口、81,83,85…スライドブッシュ、90…ケースガイド一体部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に蒸気室が設けられた内部ケーシングと、
前記内部ケーシングを収容した外部ケーシングと、
前記蒸気室の中に位置した弁体と、
前記弁体に接続された弁棒と、
前記弁棒が進退自在に挿通されたガイド部と、前記弁棒の進行方向に位置して前記蒸気室に開口した出口を有するとともに前記ガイド部に繋がることで前記出口を前記弁体によって閉塞可能な位置に固定した弁座部と、を有した弁棒ガイドと、
前記弁棒ガイドの前記出口に接続されたタービンと、
を具備したことを特徴とするプラント。
【請求項2】
前記弁棒ガイドは、前記外部ケーシングに固定され、前記内部ケーシングに対して相対的に変位可能であることを特徴とする請求項1のプラント。
【請求項3】
前記弁座部は、前記ガイド部と別個の部材であり、連結部材によって前記ガイド部に連結されたことを特徴とする請求項2に記載のプラント。
【請求項4】
前記連結部材は、前記蒸気室において、前記ガイド部と前記弁座部との中に挿通されたことを特徴とする請求項3に記載のプラント。
【請求項5】
前記内部ケーシングおよび前記外部ケーシングの少なくとも一方が、前記弁棒ガイドに面するラビリンスパッキン部を有したことを特徴とする請求項4に記載のプラント。
【請求項6】
前記弁棒ガイドに取り付けられ、前記弁棒ガイドと前記内部ケーシングとの間の隙間をシールするスライドブッシュをさらに具備することを特徴とする請求項4に記載のプラント。
【請求項7】
前記弁座部は、前記ガイド部よりも耐熱性が高いことを特徴とする請求項3に記載のプラント。
【請求項8】
内側に蒸気室が設けられた内部ケーシングと、
前記内部ケーシングを収容した外部ケーシングと、
前記蒸気室の中に位置した弁体と、
前記弁体に接続された弁棒と、
前記弁棒が進退自在に挿通されたガイド部と、前記弁棒の進行方向に位置して前記蒸気室に開口した出口を有するとともに前記ガイド部に繋がることで前記出口を前記弁体によって閉塞可能な位置に固定した弁座部と、を有した弁棒ガイドと、
を具備したことを特徴とする蒸気弁。
【請求項9】
前記弁棒ガイドは、前記外部ケーシングに固定され、前記内部ケーシングに対して相対的に変位可能であることを特徴とする請求項8の蒸気弁。
【請求項10】
前記弁座部は、前記ガイド部と別個の部材であり、連結部材によって前記ガイド部に連結されたことを特徴とする請求項9に記載の蒸気弁。
【請求項11】
前記連結部材は、前記蒸気室において、前記ガイド部と前記弁座部との中に挿通されたことを特徴とする請求項10に記載の蒸気弁。
【請求項12】
前記内部ケーシングおよび前記外部ケーシングの少なくとも一方が、前記弁棒ガイドに面するラビリンスパッキン部を有したことを特徴とする請求項11に記載の蒸気弁。
【請求項13】
前記弁棒ガイドに取り付けられ、前記弁棒ガイドと前記内部ケーシングとの間の隙間をシールするスライドブッシュをさらに具備することを特徴とする請求項11に記載の蒸気弁。
【請求項14】
前記弁座部は、前記ガイド部よりも耐熱性が高いことを特徴とする請求項10に記載の蒸気弁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−29074(P2013−29074A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165624(P2011−165624)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】