説明

プラントコントロ−ラの電源装置

【課題】
本発明の目的はバッテリを産業廃棄物として処理することなく交換費用も必要とせずに揮発性メモリのバックアップ電源を確保することができるプラントコントロ−ラの電源装置を提供することにある。
【解決手段】
プラントコントロ−ラ1の揮発性メモリ2は交流電源6の交流電圧を直流電圧に変換して給電される。交流電源6の停電時にはプラントに備えられている所内直流電源8から揮発性メモリ2に給電する。所内直流電源8は非常用交流電源電圧を直流電圧に変換して浮動充電されるバッテリを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発電プラント、化学プラントなどの制御に使用されるプラントコントロ−ラの電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、発電プラント、化学プラントなどにおいては分散配置された複数台のプラントコントロ−ラにより制御するようにしている。コントロ−ラは論理演算手段とROMやRAMなどのメモリから構成されている。RAMには制御演算プログラムや演算結果が格納される。
【0003】
RAMは揮発性メモリであり、電源断時にデータが消去される。このため、電源断時にはバッテリによりバックアップしコントロ−ラのメモリ電源を確保するようにしている。このような電源バックアップについては下記特許文献1、2などに記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−51978号公報
【特許文献2】特開2000−295789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プラントコントロ−ラのメモリバックアップ電源としてのバッテリは取扱いを簡単にすると共にコストの点から市販されているニッカド電池などが用いられている。バッテリの寿命は比較的短寿命であり、2〜3年程度で交換する必要がある。プラントコントロ−ラは大規模プラントになると数十台程設置されている。したがって、多くのバッテリを産業廃棄物として処理しなければならず、その上、交換費用も発生するという問題点を有する。
【0006】
本発明の目的はバッテリを産業廃棄物として処理することなく交換費用も必要とせずに揮発性メモリのバックアップ電源を確保することができるプラントコントロ−ラの電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴とするところは、交流電圧を直流電圧に変換してプラントコントロ−ラの揮発性メモリに給電する交流電源の停電時にはプラントに備えられている所内直流電源から揮発性メモリに給電するようにしたことにある。
【0008】
具体的には、プラントの所内直流電源は非常用交流電源電圧を直流電圧に変換して浮動充電されるバッテリを備え、交流電源の停電時には所内直流電源から複数台のコントロ−ラの揮発性メモリに給電する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は交流電源の停電時にプラントに備えられている所内直流電源から揮発性メモリに給電するようにしているので、バッテリを産業廃棄物として処理することなく交換費用も必要とせずに揮発性メモリのバックアップ電源を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
プラントは所内直流電源を備えている。所内直流電源はプラントの非常用交流電源電圧を直流電圧に変換して浮動充電されるバッテリを有している。プラントを制御する複数台のコントロ−ラはそれぞれ揮発性メモリが設けられている。交流電源は交流電圧を直流電圧に変換して複数台のコントロ−ラの揮発性メモリに給電する。交流電源の停電時には所内直流電源から複数台のコントロ−ラの揮発性メモリに給電する。
【実施例】
【0011】
図1に本発明の一実施例を示す。
【0012】
図1において、制御コントローラ(プラントコントローラ)1は揮発性メモリ(RAM)2と論理演算装置3が設けられている。プラントコントローラ1は複数台設置されている。交流電源6の交流電圧(100V)は電圧変換装置7で直流電圧に変換され揮発性メモリ2と論理演算装置3に給電される。
【0013】
電圧変換装置7は交流―直流変換装置で、直流電圧の大きさは5V程度である。揮発性メモリ2は逆流防止用ダイオード4を介して電圧変換装置7から直流電圧を加えられる。論理演算装置3は交流電源6の遮断時(停電時)に電源バックアップ不要なものである。
【0014】
所内直流電源8の直流電圧(100V)は電圧変換装置9で電圧変換され、開閉器10と逆流防止用ダイオード5を介して揮発性メモリ2に給電される。電圧変換装置9は直流―直流変換装置で、直流電圧の大きさは3V程度である。電圧変換装置9は直流―直流変換装置で、開閉器10を介して複数台のコントローラ1に給電する。電圧変換装置9の出力側には低電圧検出装置11が設けられている。
【0015】
図2に所内直流電源8の一例構成図を示す。
【0016】
図2において、非常用電源母線21には非常用ディ−ゼル発電機20が接続されている。
所内直流電源母線25は開閉器22、電圧変換装置24および開閉器23を介して非常用電源母線21に接続されている。電圧変換装置24は交流―直流変換装置で、直流電圧の大きさは100Vである。
【0017】
電圧変換装置24の直流出力側には開閉器26を介して浮動充電されるバッテリ27が接続されている。バッテリ27は通常鉛蓄電池などが使用される。また、所内直流電源母線25にはそれぞれ開閉器28を介して複数の所内系統29が接続されている。
【0018】
所内直流電源8は交流電源6の遮断時に主要機器の破損を防止するためのポンプ類の電源、遮断器の投入・遮断操作電源、ボイラや発電機などの主要機器の保護回路電源、補機類のインターロック電源、警報表示電源、非常灯用電源などに供される。図1の所内直流電源8は所内系統29の1つとなる。
【0019】
この構成において、交流電源6の正常時には電圧変換装置7で変換された直流電圧(5V)が揮発性メモリ2と論理演算装置3に給電される。揮発性メモリ2は逆流防止用ダイオード4を介して直流電圧を加えられる。
【0020】
この状態にあるときに交流電源6が停電すると、所内直流電源8の非常用ディ−ゼル発電機20を起動して非常用電源母線21の電源確保が行われる。非常用電源母線21の交流電圧は電圧変換装置24により直流電圧に変換される。電圧変換装置24の直流出力電圧は所内直流電源母線25に加えられ、また、バッテリ27が電圧変換装置24の直流出力電圧により浮動充電される。
【0021】
所内系統29の1つである所内直流電源8の直流電圧(100V)は電圧変換装置9で3V程度に電圧変換され、開閉器10と逆流防止用ダイオード5を介して揮発性メモリ2に給電される。電圧変換装置9で電圧変換された直流電圧は開閉器10を介して複数台のコントローラ1に給電される。したがって、コントロ−ラ1を構成する揮発性メモリ2のバックアップ電源を確保することができる。
【0022】
所内直流電源8つまり電圧変換装置9の直流電圧は低電圧検出装置11で監視される。低電圧検出装置11はコントロ−ラ1への供給電圧がメモリ2のバックアップ電圧以下になるとメモリ2のバックアップ電源異常を保守員に通知する。
【0023】
このようにしてプラントコントローラの揮発性メモリの電源バックアップを行うのであるが、交流電源の停電時にプラントに備えられている所内直流電源から揮発性メモリに給電するようにしているので、バッテリを産業廃棄物として処理することなく交換費用も必要とせずに揮発性メモリのバックアップ電源を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態を示す構成図である。
【図2】本発明の所内直流電源の一例構成図である。
【符号の説明】
【0025】
1…プラントコントローラ、2…揮発性メモリ(RAM)、3…論理演算装置、4、5…逆流防止用ダイオード、6…交流電源、7…電圧変換装置、8…所内直流電源、9…電圧変換装置、10…開閉器、11…低電圧検出装置、20…非常用ディ−ゼル発電機、21…非常用電源母線、24…電圧変換装置、25…所内直流電源母線、27…バッテリ、29…所内系統。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所内直流電源を備えたプラントと、揮発性メモリを有するプラントコントロ−ラと、交流電圧を直流電圧に変換して前記揮発性メモリに給電する交流電源とを具備し、前記交流電源の停電時には前記所内直流電源から前記揮発性メモリに給電するようにしたことを特徴とするプラントコントローラの電源装置。
【請求項2】
プラントと、前記プラントの非常用交流電源電圧を直流電圧に変換して浮動充電されるバッテリを備えた所内直流電源と、前記プラントの制御を行う複数台のコントロ−ラと、複数台のコントロ−ラのそれぞれ設けられている揮発性メモリと、交流電圧を直流電圧に変換して前記複数台のコントロ−ラの揮発性メモリに給電する交流電源とを具備し、前記交流電源の停電時には前記所内直流電源から前記複数台のコントロ−ラの揮発性メモリに給電するようにしたことを特徴とするプラントコントローラの電源装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−166540(P2006−166540A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−352315(P2004−352315)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(390023928)日立エンジニアリング株式会社 (134)
【Fターム(参考)】