説明

プラント作業支援装置およびプラント作業支援方法

【課題】プラント内における作業対象箇所の探索を支援すること。
【解決手段】プラント作業支援装置は、作業箇所リスト22から特定作業の選択を受け付けると、その特定作業に対応づけられているプラント部品をプラント作業情報13から検索し、検索されたプラント部品を3次元レイアウト情報12から検索することで、検索されたプラント部品の3次元空間内での位置情報を取得し、取得した位置情報を作業対象箇所として3次元レイアウト表示23にて他のプラント部品と区別して表示する。同様に、3次元レイアウト表示23から選択された特定プラント部品に対応する作業箇所リスト22の作業を他の作業と区別して表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラント作業支援装置およびプラント作業支援方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
プラント内の作業をする作業員が、膨大かつ複雑に配置された構成部品の中から、作業対象箇所を目視で発見することは、困難である。作業対象箇所を探索する手間が多いことで、作業の効率低下や、間違いによる不良、また修正のための手戻り作業が発生してしまう。
プラントの構成部品としては、配管、機器、サポート、架台などが挙げられる。さらに、プラントの建屋がコンクリート床、壁により仕切られた部屋構造となっていると、視界が狭くなってしまう。
【0003】
そこで、特許文献1に記載された技術では、プラントを3次元モデルとして表現し、その3次元の仮想空間をさまざまな視点から表示することにより、プラントの内部構成やそのうちの作業対象箇所の把握を支援する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−356813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
なお、特許文献1に記載された3次元モデルでは、プラントの3次元の空間把握にとどまるものであり、そのプラント内で実際に行われる作業の位置や順序については、依然として把握が困難である。例えば、作業リストにおける作業対象箇所は、その作業対象である部品の識別番号などによりテキスト表記されているが、その部品がプラントのどの位置に存在するかについては、作業員が特定することは、困難である。
【0006】
そこで、本発明は、前記した問題を解決し、プラント内における作業対象箇所の探索を支援することを、主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、プラント内の作業対象箇所を3次元の仮想空間として表示することで、プラントの作業員を支援するプラント作業支援装置であって、
前記プラント作業支援装置が、表示制御部を構成するための制御装置と、前記表示制御部の処理対象であるデータが格納される記憶装置とを有しており、
前記記憶装置には、プラントの構成要素である個々のプラント部品についての形状および位置を示す3次元レイアウト情報と、前記作業対象箇所としてのプラント部品と、そのプラント部品に対する作業内容とを対応づけるプラント作業情報とは、それぞれあらかじめ格納されており、
前記制御装置における表示制御部が、
前記プラント作業情報を読み取って取得した作業をリスト形式で表示する作業箇所リストの表示と、前記3次元レイアウト情報を読み取って取得した個々のプラント部品を3次元空間に配置して表示する3次元レイアウト表示とを、前記プラント作業支援装置に接続されている表示装置に対して並べて表示する手段と、
前記プラント作業支援装置に接続されている入力装置を介して、前記作業箇所リストから特定作業の選択の受け付け処理と、その選択にかかる特定作業に対応づけられているプラント部品を前記プラント作業情報から検索し、検索されたプラント部品を前記3次元レイアウト情報から検索することで、検索されたプラント部品の3次元空間内での位置情報の取得処理と、取得した位置情報を前記作業対象箇所として前記3次元レイアウト表示にて他のプラント部品と区別して表示する処理と、を実行する手段と、
前記入力装置を介して、前記3次元レイアウト表示から特定プラント部品の選択を受け付けると、その選択にかかる特定プラント部品に対応づけられている部品識別情報を前記3次元レイアウト情報から検索し、検索された部品識別情報を前記プラント作業情報から検索することで、検索された部品識別情報が示すプラント部品を作業対象とする作業の取得処理と、取得した作業について前記作業箇所リストで他の作業と区別して表示する処理と、を実行する手段とを有することを特徴とする。
その他の手段は、後記する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、プラント内における作業対象箇所の探索を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に関するプラント作業支援システムおよびその動作を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に関する3次元レイアウト情報の構成要素である個々の基本図形を示す立体図である。
【図3】本発明の一実施形態に関する3種類の作業対応形状の例を示す立体図である。
【図4】本発明の一実施形態に関する作業箇所リストと3次元レイアウト表示との連動表示画面を示す画面図である。
【図5】本発明の一実施形態に関する作業箇所リストの表示順序の決定処理を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に関する3次元レイアウト表示のカメラ視点移動処理の説明図である。
【図7】本発明の一実施形態に関する3次元レイアウト表示のカメラ視点移動処理の適用結果を示す画面図である。
【図8】本発明の一実施形態に関する3次元レイアウト表示のカメラ視点移動処理の適用結果を示す別の画面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を、各図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1(a)は、プラント作業支援システムを示す構成図である。プラント作業支援システムは、プラント作業支援装置1が、入力装置11と、表示装置15と接続されて構成される。
プラント作業支援装置1は、制御装置であるCPU(Central Processing Unit)とメモリとハードディスク(記憶手段)とネットワークインタフェースを有するコンピュータとして構成され、このコンピュータは、CPUが、メモリ上に読み込んだプログラムを実行することにより、各処理部を動作させる。
入力装置11は、キーボードやマウスなどで構成され、プラント作業支援装置1への操作データなどの入力に使用される。
表示装置15は、液晶ディスプレイなどで構成され、プラント作業支援装置1からの画面出力を表示する。
なお、プラント作業支援装置1と入力装置11と表示装置15とは、別々の装置として構成されていてもよいし、同一の筐体内に収容してもよい。例えば、入力装置11と表示装置15とを同じ筐体に収容するタッチパネル型のディスプレイを用いてもよいし、プラント作業支援装置1が入力装置11と表示装置15とを収容する一体型コンピュータ(ノートパソコン、タブレットPC、スレートPC、スマートフォンなど)として構成してもよい。
そして、プラント作業支援システムは、プラント作業員が実際に作業を行うためにプラント内を歩行するときに携帯させてもよいし、プラント作業の計画者や管理者に対して、作業前に作業内容を事前確認するために、管理室などで使用させてもよい。
【0012】
プラント作業支援装置1は、表示制御部14と、記憶装置16とを有する。
記憶装置16には、3次元レイアウト情報12と、プラント作業情報13とが、あらかじめ格納されている。
3次元レイアウト情報12は、プラント内部の3次元空間における構成部品のレイアウト情報を格納する(詳細は、図2,表1で後記)。プラント内部の構成部品とは、例えば、配管31(図3)、機器、サポート、および、躯体(建築物の骨組み)が挙げられる。
プラント作業情報13は、プラント内での作業(建設作業や保全作業など)ごとの対象箇所の情報を格納する(詳細は、表2で後記)。
これらの格納される情報の入手方法として、入力装置11を介して管理者から入力されるデータをもとに作成してもよいし、外部のネットワークを介してダウンロードしたデータとしてもよいし、プラント作業支援装置1に挿入された記憶媒体から読み取ったデータとしてもよい。
【0013】
表示制御部14は、表示装置15に出力する画面の表示内容を制御するとともに、入力装置11を介して受け付ける操作データをもとに、その表示内容を適宜変更する。例えば、表示制御部14は、3次元レイアウト情報12とプラント作業情報13とを読み取り、3次元レイアウト情報12が示すプラント内部の3次元空間における、プラント作業情報13が示す作業リストの対象となる個々の作業箇所を、ユーザにわかりやすく表示する(詳細は、図4で後記)。
【0014】
図1(b)は、表示制御部14が実行するプラント作業支援処理を示すフローチャートである。以下、図1(b)の処理概要を一通り説明する。このフローチャートを構成する個々の処理の詳細については、図2以下で説明する。
【0015】
S11として、3次元レイアウト情報12と、プラント作業情報13との照合を行い、作業対応形状を作成する。照合処理とは、プラント作業情報13で示される作業について、その作業対象である部品を3次元レイアウト情報12から特定する処理である。そして、特定された部品における作業対象箇所を視覚的にわかりやすく表示するための作業対応形状を作成する。
【0016】
S12として、プラント作業情報13に含まれているプラント作業のリストについて、その作業の表示順序を決定する。例えば、表示順序を作業順序と同じようにすることで、作業員は作業順序を把握することができる。
【0017】
S13として、S12で決定された表示順序で整列された作業箇所リスト22(図4参照)と、S11で作成された作業対応形状を含む3次元レイアウト表示23(図4参照)とを、連動して表示装置15に表示する。なお、「連動」とは、作業箇所リスト22と3次元レイアウト表示23とで、作業対象箇所(作業対応形状)を互いの表示で対応させて表示することを指す。
【0018】
S14として、S13の作業箇所リスト22と3次元レイアウト表示23との連動表示において、選択された作業対象箇所を確認させるための、3次元レイアウト表示23内でのカメラ視点移動処理(ズーム表示、回り込み表示)を実行する。これにより、作業員は、現在位置から作業対象箇所までの経路を3次元で視覚的に確認できるので、作業時間の短縮が期待できる。
【0019】
図2は、3次元レイアウト情報12の構成要素である個々の基本図形の例を3つ挙げる立体図である。プラント設備の3次元形状は、これらの基本図形の組み合わせにより定義される。これらの基本図形は、例えば、設計用の3次元CADツールなどを利用して、入力装置11を通して作成される。
図2(a)は、配管などに用いられるパイプ形状(PIPE)を示す。PIPEを特定するパラメータとして、直径値dと、左端座標p0と、右端座標p1とが挙げられる。
図2(b)は、配管をカーブさせるときなどに用いられるL型パイプ形状(PELB)を示す。PELBを特定するパラメータとして、直径値dと、左端座標p1と、交点座標p0と、右端座標p2とが挙げられる。
図2(c)は、機器などに用いられる直方体形状(BL)を示す。BLを特定するパラメータとして、4つの頂点座標p0〜p3が挙げられる。
【0020】
【表1】

【0021】
表1は、3次元レイアウト情報12のデータ格納形式を示す。個々の構成部品は、構成部品の「部品ID」と、構成部品の分類を示す「種別」と、構成部品の設計上の属性値である「属性」と、構成部品の「形状」とが対応づけられている。
例えば、1行目の部品ID「spIN1D-012A-58」は、図2(a)で示したパイプ形状(PIPE)の部品であり、直径値d=100と、左端座標p0(20000,15000,1000)と、右端座標p1(20000,17000,1000)とで形状が特定される。なお、座標は、3次元の位置を示す(x座標、y座標、z座標)のベクトルとして表現されている。
【0022】
【表2】

【0023】
表2は、プラント作業情報13のデータ格納形式を示す。プラント作業情報13は、作業ごとの作業対象箇所IDと、作業種別と、作業対象の部品を示す部品IDとが対応づけられている。プラント作業情報13は、3次元レイアウト情報12をもとにして、入力装置11を通してユーザにより作成される。
なお、部品IDは、3次元レイアウト情報12とプラント作業情報13とで同じ部品には同じIDが割り当てられている。これにより、プラント作業情報13から部品IDを検索キーとして3次元レイアウト情報12を検索することで、作業ごとの作業対象の部品が、3次元レイアウト情報12のどの部品を示すものかを特定する(対応づける)ことができる。
例えば、プラント作業情報13の1行目の作業対象箇所ID「MS-6-1」の識別貼付(シールを配管に貼り付ける作業)は、部品ID「spIN1D-012A-58」を検索キーとすることで、3次元レイアウト情報12の1行目の配管を対象とする作業であることがわかる。
【0024】
さらに、3次元レイアウト情報12とプラント作業情報13とを対応づける検索キーとして、部品IDを用いる代わりに、他のパラメータを用いてもよい。例えば、プラント作業情報13において、プラント作業情報13の「種別」に対応する列を新たに用意し、その「種別」を検索キーとすることで、1つの作業で同じ種別である複数の部品を対応づけることができる。
これにより、「すべての配管にシールを貼る」などの複数の作業対象箇所を一括指定する作業をプラント作業情報13で記述することができる。
【0025】
表示制御部14は、3次元空間内の位置である作業対象箇所をユーザに把握させるために、作業対応形状を作成する(S11)。作成された作業対応形状は、3次元レイアウト情報12に部品IDが割り当てられて追加情報として登録されるとともに、その割り当てられた部品IDがプラント作業情報13にも登録される。以下、図3を参照して、3種類の作業対応形状を例示する。
【0026】
図3(a)に示す作業種別「フィットアップ」は、2つの配管31を所定位置で付き合わせて仮固定する(換言すると、複数のプラント部品としての配管を一体化する)作業である。配管31の接続部分である所定位置を示すために、仮想的な形状(円盤32bまたは板形状32a)を、作業対応形状として作成する。
なお、作業種別「フィットアップ」の作業対応形状は、実際の作業に使用される物理的な材料ではなく、あくまで作業対象箇所を示すためだけの画面表示される仮想的な形状である。よって、フィットアップの作業によって、円盤32bまたは板形状32aが2つの配管31の接続箇所に固定されるわけではない。
【0027】
図3(b)に示す作業種別「識別貼付」は、配管31の表面上に、帯状の形状であるシール32cを貼り付ける(巻き付ける)作業である。このシール32cには、配管31内を流れる流体や気体の流れ方向を示す矢印と、配管31の識別No「100A-ES-001」とが印刷されている。なお、シール32cは、円盤32bや板形状32aと異なり、実際の作業に使用される物理的な材料であり、図3(b)は、識別貼付が行われた後に配管31に貼り付けられるシール32cを示す。このシール32cを作業員に示すことで、作業の効率化とミス防止をはかることができる。
【0028】
ここで、流れ方向は、3次元レイアウト情報12の形状情報の座標点の順序から取得できる。流れ方向を示す情報として矢印の代わりに、シール32cの流れ方向の上流側と下流側とで、シール32cの色を変えてもよい。
【0029】
なお、配管31の表面におけるシール32cの配置位置は、シール32cの視認性を考慮して決める必要があり、プラント内の歩行ルートより見易い点を探索することで行う。つまり、シール32cの配置位置探索は、対象箇所と同一のエリア内の、種別が通路である部品を用いて、この通路上の特定位置を視点とし、そこからの配管31の表面の各点が可視であるかの判定処理を、通路上の視点を移動させながら行い、最も多くの位置から可視である点を、作業対象箇所として判定することで行う。
【0030】
図3(c)に示す作業種別「保温」は、配管31を外側から覆う配管被覆形状である保温材32dを配置する作業である。保温材32dの大きさは、例えば、次の式により計算される。
(保温材32dの保温厚)=(内部流体の温度)×(第1係数)+(配管31の肉厚)×(第2係数)+(内部流体の系統から特定される値)
(保温材32dの半径)=(保温材32dの保温厚)+(配管31の半径)
【0031】
S13として、S12で決定された表示順序で整列された作業箇所リスト22と、S11で作成された作業対応形状を含む3次元レイアウト表示23とを、連動して表示装置15に表示する。なお、「連動」とは、作業箇所リスト22と3次元レイアウト表示23とで、作業対象箇所(作業対応形状)を互いの表示で対応させて表示することを指す。
【0032】
図4は、S13で表示される画面の一例を示す。この図4の表示画面では、メニュー表示21と、作業箇所リスト22と、3次元レイアウト表示23とが1つの画面内に表示されている。
【0033】
メニュー表示21は、作業箇所リスト22と3次元レイアウト表示23との表示内容を指定するための操作用画面である。
「建屋」や「エリア」のプルダウンメニューから該当する項目を選択すると、作業箇所リスト22や3次元レイアウト表示23の表示対象データが、選択された項目のデータへと切り替わる。
「リスト」、「リスト+3D」、「3D」のラジオボタンは、作業箇所リスト22と3次元レイアウト表示23とを表示するか否かを指定するためのボタンである。「リスト」や「リスト+3D」が選択されると作業箇所リスト22が表示対象となり、「リスト+3D」や「3D」が選択されると3次元レイアウト表示23が表示対象となる。
「全対象」、「未登録」、「登録済み」の各タブは、作業箇所リスト22のレコードの数を示す。例えば、図4では、作業箇所リスト22のレコードが53件あり、そのうちの「シール貼付結果」列の「OK」または「除外」チェックが押された登録済みの件数が37件あり、チェックが押されていない未登録の件数が16件あることを示している。
「1,2,3,4,5」という表記は、現在表示している作業箇所リスト22のページ数を示し、その右側の「リスト表示」ボタンは、そのボタンの押下により、作業箇所リスト22を全画面表示する。
【0034】
作業箇所リスト22は、プラント作業情報13の各エントリを表示するものであり、作業ごとの識別子である「No」と、その作業を行ったか否かを示す「シール貼付結果」と、その作業対象である(シール32cが貼られる)配管31の口径と、シール32cの印刷内容である表示内容(系統略称、配管番号)とその表示フォント(文字寸法)とを、表形式で対応づけている。
なお、「シール貼付結果」列の「OK」または「除外」チェックが押されたエントリは、今後の作業対象ではないので、それらのエントリを作業箇所リスト22の表示から除外(非表示)とすることで、今後の作業を作業員に把握させることができる。
【0035】
3次元レイアウト表示23は、3次元レイアウト情報12を3次元空間として表示したものである。3次元レイアウト表示23は、現場内での実際の見え方に対応したウォークスルー表示(図4で図示)と、全体を見渡すためのアイソメトリック表示(図示省略)を切替えることができる。
ウォークスルー表示では、カメラの視点が作業員の目線の位置であるため、現在の位置からの対象の探索を容易にする。アイソメトリック表示では、カメラの視点が天井に備え付けられる監視カメラのようにプラント全体を俯瞰する視点であるので、全体の作業箇所の配置を把握することができる。
【0036】
表示制御部14は、作業箇所リスト22と3次元レイアウト表示23とを作業対応形状を用いて連動表示させる。以下、連動表示の詳細を説明する。
まず、作業箇所リスト22内の所定行が選択行61としてユーザから選択(クリック)されると、その選択行61が示す作業の作業対応形状の部品IDをプラント作業情報13から特定し、特定した部品IDに対応する3次元レイアウト情報12の作業対応形状をハイライト表示63する。
さらに、ハイライト表示63されたシール32cが貼られる配管31も、ハイライト表示62してもよい。なお、作業箇所リスト22の選択行61ではないエントリが示す作業の作業対応形状も、併せてハイライト表示64,65してもよい。なお、ユーザから選択されている作業対応形状のハイライト表示63と、ユーザから選択されていない作業対応形状のハイライト表示64,65とを区別して(色やハイライトパターンを互いに異なるものにするなどして)表示してもよい。
一方、3次元レイアウト表示23からハイライト表示63〜65のいずれかがユーザから選択(クリック)されると、その選択された作業対応形状の部品IDを3次元レイアウト情報12から特定し、その特定した部品IDをキーとして、プラント作業情報13から該当する作業を特定する。そして、表示制御部14は、特定した作業を作業箇所リスト22の選択行61とする。
【0037】
このように、作業箇所リスト22と3次元レイアウト表示23とを連動表示することによって、作業箇所リスト22による作業内容の把握と、3次元レイアウト表示23による作業位置の把握とを一度に行うことができる。
【0038】
さらに、プラント作業支援装置1に位置特定手段を持たせることにより、作業箇所リスト22や3次元レイアウト表示23の表示内容に、位置特定手段で特定された現在位置を反映してもよい。
位置特定手段とは、例えば、無線LANやZigbeeタグを利用した通信基地局の判定や、屋内GPS、またはゲートタイプのRFIDなどによって自動的に取得するか、または直接位置情報の入力を受け付けることで実現できる。
作業箇所リスト22については、特定された現在位置の付近に存在する作業対応形状に対応する作業を示す行を、選択行61として指定することで、現在位置を反映する方法が挙げられる。これにより、選択行61以降の作業を、今後実施する作業として容易に把握させることができる。
3次元レイアウト表示23については、3次元レイアウト表示23のカメラ視点やカメラの向きを、位置特定手段で特定された現在位置に基づいて更新することで、現在位置を反映する方法が挙げられる。
【0039】
S12では、作業箇所リスト22を図4の画面に表示するときの作業箇所リスト22を構成する個々の作業の表示順序を決定する。決定された適切な表示順序により、作業員に効率的に作業を行わせることができる。以下、表示順序の決定処理の一例を3通り例示する。
1つめの決定処理の例は、プラント作業情報13内の作業対象箇所IDを参照して、その作業対象箇所IDを昇順または降順に整列させて表示順序とする例である。
【0040】
2つめの決定処理の例は、図5(a)に示すように、作業対象箇所間の近傍度を参照して、表示順序を決定する例である。
例えば、6つの作業対象箇所(L1〜L6)について、現在位置がL1であるとする。現在位置L1からみて、他の作業対象箇所(L2〜L6)との間の距離をそれぞれ計算し、その計算結果から最も短い距離である作業対象箇所L2を、L1からみて次の作業とする。なお、作業対象箇所間の距離の計算には、3次元レイアウト情報12における空間座標(形状列に記載)が用いられる。
同様に、作業対象箇所L2からみて、他の作業対象箇所(L3〜L6)との間の距離をそれぞれ計算し、その計算結果から最も短い距離である作業対象箇所L3を、L2からみて次の作業とする。このようにして、作業箇所リスト22の表示順序として、L1→L2→L3→L4→L5→L6の順序を決定する。
【0041】
3つめの決定処理の例は、図5(b)に示すように、作業対象箇所の発見容易度を参照して、表示順序を決定する例である。
例えば、8つの作業対象箇所(M1〜M8)について、現在位置がM1であるとする。現在位置M1からみて、次の作業対象箇所を選択するときに、現在位置M1が属する配管31である配管C1に着目し、その同じ配管C1に属する他の作業対象箇所(M2〜M4)を、他の配管C2に属する作業対象箇所(M5〜M8)よりも先に(優先的に)選択する。
これにより、プラントの構造物の配置上の特徴から、配管31であればルート順にたどることが容易であるため、現在の作業対象箇所から次の作業対象箇所への発見容易度を高めることができる。
さらに、配管C2に属する作業対象箇所(M5〜M8)について、上流または下流からの並び順(M5→M6→M7→M8)を表示順序とすることで、発見容易度を高めることができる。
【0042】
以上説明した3通りの表示順序の決定処理について、いずれか1つだけを用いてもよいし、複数の決定処理を組み合わせてもよい。組み合わせて用いるときには、各決定処理で決定された順序に対して、決定処理ごとの重み値を乗算する重み付け加算によって、最終的な表示順序を決定する。
これにより、作業がしやすい順序に作業箇所リスト22の表示順序が整列されるため、作業対象箇所を発見しやすくなるとともに、作業対象箇所間の移動距離を短縮化できるので、作業時間を短くすることができる。
【0043】
以下、図6〜図8を参照して、S14のカメラ視点移動処理の詳細を説明する。
【0044】
図6(a)は、3次元レイアウト表示23のカメラ視点移動処理を説明するために、2次元の表示(作業員などを天井から真下に見下ろす)での説明図である。
カメラ視点移動処理(ズーム表示、回り込み表示)は、カメラの現在位置を作業対象箇所(作業対象79)に近づける処理である。カメラの現在位置は、始点71から転換点72を経由して終点73まで移動する。
【0045】
ズーム表示は、始点71から転換点72までの移動処理であり、現在位置と作業対象箇所との間を最短距離で直線移動(接近)する処理である。なお、一般的にデジタルカメラなどに搭載されている「ズーム機能」では、カメラの位置を変えずに、レンズの焦点距離を変更することにより対象物が拡大されて表示されるが、本明細書での「ズーム表示」とは、3次元レイアウト表示23の仮想空間内でカメラの位置を前進させることにより対象物に近づく結果、対象物が拡大されて表示されることを指す。
【0046】
回り込み表示(右側への回り込み)は、転換点72から終点73までの移動処理であり、現在位置と作業対象箇所との間に存在する遮蔽物78にぶつからないように、遮蔽物78を迂回するように円弧移動する処理である。図6(a)では、円弧移動の円の中心は、作業対象79の中央としている。
そして、回り込み表示を終えた終点73から視線を作業対象79へ向ける(図では終点73からの矢印)ことで、3次元レイアウト表示23において、作業対象箇所が画面上に表示される。
【0047】
なお、遮蔽物78の有無の判定方法は、例えば、3次元レイアウト表示23の作業対象箇所の位置を示す仮想的な点に対して、3次元空間上の奥行き値を計算する。そして、計算した奥行き値よりも手前に存在する点(遮蔽物78の点)があるか否かを判定することで、実現される。遮蔽物78が存在しないときには、ズーム表示だけで回り込み表示は不要である。
【0048】
図6(b)は、3次元レイアウト表示23のカメラ視点移動処理を説明するために、3次元の表示(作業員などを天井からななめ下に見下ろす)での説明図である。図6(a)との違いとして、回り込み表示を右側への回り込みではなく、上側への回り込み(遮蔽物78を飛び越えるように回り込む)を行っている点が、挙げられる。さらに、図6(b)では、円弧移動の円の中心は、遮蔽物78の中央としている。
【0049】
このように、転換点72から終点73までの回り込み表示は、円弧移動の円の中心からその円周上の転換点72までの円(正確には3次元空間なので「球」)を想定し、その球の表面(円周)を辿ることと、遮蔽物78に衝突しないことを許容する限り、任意の軌道(上下左右など、どの方向でも)を選択してもよい。さらに、任意の軌道のうちの、円弧の長さ(カメラ視点の移動距離)が最も短くなるように、円の中心や、転換点72の位置や、軌道の方向を選択してもよい。
【0050】
図7は、回り込み表示(上側への回り込み)を行ったときのスクリーンショットを示す3次元レイアウト表示23の一例である。
初期状態の図7(a)では、遮蔽物78(2本の配管)だけが表示されており、その配管31の奥に位置する作業対象79を確認することは、困難である。
次に、図7(b)において、表示制御部14は、図7(a)の状態からズーム表示で前方にカメラ視点を移動させた後、上側への回り込み表示を開始することで、2本の配管31の奥に位置する作業対象79を確認させる。
さらに、図7(c)において、表示制御部14は、図7(b)の状態から上側への回り込み表示を完了することで、カメラ視点が2つの遮蔽物78を飛び越えて、作業対象79を容易に確認させることができる。
【0051】
図8は、回り込み表示(左側への回り込み)を行ったときのスクリーンショットを示す3次元レイアウト表示23の一例である。
初期状態の図8(a)では、遮蔽物78として、バルブ76だけが表示されており、その奥に位置する作業対象79を確認することは、困難である。
次に、図8(b)において、表示制御部14は、図8(a)の状態からズーム表示を行って柱77に近づいた後、その柱77を外側から迂回する左側への回り込み表示を行うことで、バルブ76の奥に位置する作業対象79を確認させる。
さらに、図8(c)において、表示制御部14は、図8(b)の状態からズーム表示を行うことで、作業対象79を容易に確認させることができる。
このように、ズーム表示や回り込み表示の回数は、1回に限定されず、複数回行ってもよい。例えば、遮蔽物78が迷路のように入り組んでいるときには、ズーム表示→回り込み表示→ズーム表示→回り込み表示→ズーム表示→…と複数回のカメラ視点移動処理を行ってもよい。
【0052】
以上説明したS14のカメラ視点移動処理(ズーム表示および回り込み表示)により、3次元レイアウト表示23から作業対象箇所を容易に発見させることができるので、作業の効率化(作業時間の短縮、作業品質の向上)を実現できる。
一方、3次元レイアウト表示23から、手動で(例えば、前に移動したいときには「↑」キーを押すことで)カメラ視点移動を行う比較例では、視点位置、視線方向制御などのビューイング操作が複雑であるため、狭険で作業性の悪いプラントの現場内において、システム操作に不慣れな作業員が自在に操作を行うことは困難である。さらに、手動でのカメラ操作では、プラント内は構成部品が入り組んでいるため、作業対象箇所が手前の部品に遮られた死角にあり、画面上での判別が容易でない場合も多い。
【符号の説明】
【0053】
1 プラント作業支援装置
11 入力装置
12 3次元レイアウト情報
13 プラント作業情報
14 表示制御部
15 表示装置
16 記憶装置
21 メニュー表示
22 作業箇所リスト
23 3次元レイアウト表示
31 配管
32a 板形状
32b 円盤
32c シール
32d 保温材
61 選択行
62 作業対象配管
63〜65 作業対応形状
71 始点
72 転換点
73 終点
78 遮蔽物
79 作業対象

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラント内の作業対象箇所を3次元の仮想空間として表示することで、プラントの作業員を支援するプラント作業支援装置であって、
前記プラント作業支援装置は、表示制御部を構成するための制御装置と、前記表示制御部の処理対象であるデータが格納される記憶装置とを有しており、
前記記憶装置には、プラントの構成要素である個々のプラント部品についての形状および位置を示す3次元レイアウト情報と、前記作業対象箇所としてのプラント部品と、そのプラント部品に対する作業内容とを対応づけるプラント作業情報とが、それぞれあらかじめ格納されており、
前記制御装置における表示制御部は、
前記プラント作業情報を読み取って取得した作業をリスト形式で表示する作業箇所リストの表示と、前記3次元レイアウト情報を読み取って取得した個々のプラント部品を3次元空間に配置して表示する3次元レイアウト表示とを、前記プラント作業支援装置に接続されている表示装置に対して並べて表示する手段と、
前記プラント作業支援装置に接続されている入力装置を介して、前記作業箇所リストから特定作業の選択の受け付け処理と、その選択にかかる特定作業に対応づけられているプラント部品を前記プラント作業情報から検索し、検索されたプラント部品を前記3次元レイアウト情報から検索することで、検索されたプラント部品の3次元空間内での位置情報の取得処理と、取得した位置情報を前記作業対象箇所として前記3次元レイアウト表示にて他のプラント部品と区別して表示する処理と、を実行する手段と、
前記入力装置を介して、前記3次元レイアウト表示から特定プラント部品の選択の受け付け処理と、その選択にかかる特定プラント部品に対応づけられている部品識別情報を前記3次元レイアウト情報から検索し、検索された部品識別情報を前記プラント作業情報から検索することで、検索された部品識別情報が示すプラント部品を作業対象とする作業の取得処理と、取得した作業について前記作業箇所リストで他の作業と区別して表示する処理と、を実行する手段とを有することを特徴とする
プラント作業支援装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記3次元レイアウト表示にて前記作業対象箇所を表示する処理において、前記作業箇所リストで指定されている作業内容が複数のプラント部品としての配管を一体化する作業であるフィットアップであるときには、そのフィットアップ対象である複数の配管の接続箇所に、プラント部品ではない目印としての板形状または円盤を表示することを特徴とする
請求項1に記載のプラント作業支援装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記作業箇所リストを表示するときの複数の作業の表示順序を決定する処理として、複数の作業それぞれの前記作業対象箇所の位置情報を前記3次元レイアウト情報から取得し、前記作業対象箇所間の距離が近い作業であるほど、表示順序を先にするように表示順序を決定することを特徴とする
請求項1または請求項2に記載のプラント作業支援装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記作業箇所リストを表示するときの複数の作業の表示順序を決定する処理として、複数の作業それぞれの前記作業対象箇所が属する配管の情報を前記3次元レイアウト情報から取得し、同じ配管に属する複数の前記作業対象箇所について、表示順序を先にするように表示順序を決定することを特徴とする
請求項1または請求項2に記載のプラント作業支援装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記3次元レイアウト表示にて前記作業対象箇所を表示する処理において、前記作業対象箇所のプラント部品が他のプラント部品で遮蔽されているときには、前記作業対象箇所または他のプラント部品を中心とする円の円弧軌道に従って、前記3次元レイアウト表示でのカメラ視点を移動させて表示することを特徴とする
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のプラント作業支援装置。
【請求項6】
プラント内の作業対象箇所を3次元の仮想空間として表示することで、プラントの作業員を支援するプラント作業支援装置による作業支援方法であって、
前記プラント作業支援装置は、表示制御部を構成するための制御装置と、前記表示制御部の処理対象であるデータが格納される記憶装置とを有しており、
前記記憶装置には、プラントの構成要素である個々のプラント部品についての形状および位置を示す3次元レイアウト情報と、前記作業対象箇所としてのプラント部品と、そのプラント部品に対する作業内容とを対応づけるプラント作業情報とが、それぞれあらかじめ格納されており、
前記制御装置における表示制御部は、
前記プラント作業情報を読み取って取得した作業をリスト形式で表示する作業箇所リストの表示と、前記3次元レイアウト情報を読み取って取得した個々のプラント部品を3次元空間に配置して表示する3次元レイアウト表示とを、前記プラント作業支援装置に接続されている表示装置に対して並べて表示し、
前記プラント作業支援装置に接続されている入力装置を介して、前記作業箇所リストから特定作業の選択を受け付け、その選択にかかる特定作業に対応づけられているプラント部品を前記プラント作業情報から検索し、検索されたプラント部品を前記3次元レイアウト情報から検索することで、検索されたプラント部品の3次元空間内での位置情報を取得し、取得した位置情報を前記作業対象箇所として前記3次元レイアウト表示にて他のプラント部品と区別して表示し、
前記入力装置を介して、前記3次元レイアウト表示から特定プラント部品の選択を受け付け、その選択にかかる特定プラント部品に対応づけられている部品識別情報を前記3次元レイアウト情報から検索し、検索された部品識別情報を前記プラント作業情報から検索することで、検索された部品識別情報が示すプラント部品を作業対象とする作業を取得し、取得した作業について前記作業箇所リストで他の作業と区別して表示することを特徴とする
プラント作業支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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