説明

プラント監視システム、方法、及びプログラム

【課題】健全性確認を実施している場合であってもプラント監視が継続されるプラント監視技術を提供する。
【解決手段】プラント監視システム20は、プラント10のプロセス信号Aを通常入力してデジタル変換し、プロセスデータDを出力するA/D回路21(211,212,…21n+1)と、プロセス信号Aを代替入力してデジタル変換し、プロセスデータDを出力する代替回路23と、プロセスデータDを一時保持する保持部40と、プロセス信号Aに代えてテスト信号TをA/D回路21に通常入力してデジタル変換させたテストデータSを検査する検査部50と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラントのプロセス信号を監視するプラント監視技術に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所のプラント監視システムでは、プラント内に設置されたセンサから出力されるプロセス信号を、アナログからデジタルに変換させてから、各種機能を実現させている。このために、このデジタル変換処理の健全性確保が重要であり、プラント停止時の定期検査時において、模擬的なテスト信号をデジタル変換回路に入力してその健全性を確認している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−191821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、プラントが停止中であっても、プラントの監視を継続する必要性がある。しかし、デジタル変換回路にテスト信号が入力されている点検期間は、実質的にプラント監視が実施できない状況になる。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、健全性確認を実施している場合であってもプラント監視が継続されるプラント監視技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
プラント監視システムにおいて、プラントのプロセス信号を通常入力してデジタル変換し、プロセスデータを出力するA/D回路と、前記プロセス信号を代替入力してデジタル変換し、プロセスデータを出力する代替回路と、前記プロセスデータを一時保持する保持部と、前記プロセス信号に代えてテスト信号を前記A/D回路に通常入力してデジタル変換させたテストデータを検査する検査部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、健全性確認を実施している場合であってもプラント監視が継続されるプラント監視技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係るプラント監視システムの第1実施形態を示すブロック図。
【図2】第1実施形態において検査中のプラント監視システムのブロック図。
【図3】(A)は第1設定された切替部の実施形態を示す概念図、(B)は第2設定された切替部の実施形態を示す概念図。
【図4】本発明に係るプラント監視システムの第2実施形態を示すブロック図。
【図5】本発明に係るプラント監視システムの第3実施形態を示すブロック図。
【図6】第3実施形態において検査中のプラント監視システムのブロック図。
【図7】各実施形態におけるプラント監視システムの動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すようにプラント監視システム20は、プラント10のプロセス信号Aを通常入力してデジタル変換しプロセスデータDを出力するA/D回路21(211,212,…21n+1)と、図2に示すように、プロセス信号Aを代替入力してデジタル変換しプロセスデータDを出力する代替回路23と、プロセスデータDを一時保持する保持部40と、プロセス信号Aに代えてテスト信号TをA/D回路21に通常入力してデジタル変換させたテストデータSを検査する検査部50と、を備えている。
【0010】
プラント10は、内部の各種物性値を計測するためのセンサ11(111,112,…11n+1)が数千点にわたり配置されている。これらセンサ11の他端に設けられる端子12(121,122,…12n+1)からは、アナログ電圧値等のプロセス信号Aが出力される。
【0011】
センサ端子12(121,122,…12n+1)の各々は、A/D回路21(211,212,…21n+1)のソケット22(221,222,…22n+1)に着脱自在に接続される。
A/D回路21に入力したプロセス信号Aは、アナログからデジタルに変換されて離散的なプロセスデータDとなって、所定の時間間隔で出力される。
これらA/D回路21は、プラント10の通常動作時に、センサ端子12が接続されてプロセス信号Aを処理するものである。
なお、説明において「通常入力」とは、プロセス信号AがA/D回路21に入力する場合を指す他に、テスト信号TがA/D回路21に入力する場合も指す。
【0012】
代替回路23は、プラント10の検査時に、そのソケット24にセンサ端子12が接続されてプロセス信号Aをデジタル変換してプロセスデータDにするものである。従って、代替回路23の電気回路は、A/D回路21と同じ仕様となっている。
なお、説明において「代替入力」とは、プロセス信号Aが代替回路23に入力する場合を指す他に、テスト信号Tが代替回路23に入力する場合も指す。
【0013】
そして、検査時は、代替回路23で処理されたプロセスデータDが保持部40に入力されるようにし、それ以外の時は、A/D回路21で処理されたプロセスデータDが保持部40に入力されるようにする。
【0014】
保持部40は、プラント10のセンサ11(111,112,…11n+1)の各々に対応するレジスタ41(411,412,…41n+1)が設けられている。これらレジスタ41は、離散的に入力されるプロセスデータDを、順番に保持し、古いものを消去していく。
プラント監視機能部42は、保持部40にアクセスし、リアルタイムのプロセスデータDのうち所望するものを取得して所定の機能を実行する。
【0015】
テスト信号発生器13は、所定の方法でキャリブレーションされたテスト信号Tを出力するものである。このテスト信号Tの伝送ラインの先端に設けられたテスト端子14は、A/D回路21のソケット22(221,222,…22n+1)及び代替回路23のソケット24に着脱自在に接続される。
【0016】
そして、テスト信号Tが、A/D回路21に入力すると、アナログからデジタルに変換された離散的なテストデータSとなって、所定の時間間隔で検査部50に出力される。
【0017】
検査部50は、図2に示すように、A/D回路21からテストデータSを受信する受信部51と、受信したテストデータSの値を表示するテスト出力表示部52と、受信したテストデータSに基づいて検査対象のA/D回路21が合格か不合格であるかを判定する検査結果判定部53と、から構成されている。
【0018】
検査部50は、テスト出力表示部52の表示値が、テスト信号発生器13の出力値(真値)に対して所定の範囲に含まれるか否かによって、検査対象のA/D回路21の合否を判定する。
なお、図1に示されるように、テスト信号Tを代替回路23に入力させてスイッチ32を接続すれば、代替回路23についてもA/D回路21と同様の合否判定を行うことができる。
【0019】
このように、各実施形態において、センサ端子12を代替回路23のソケット24に接続することにより、プラント監視機能を継続しながら、A/D回路21の健全性を確認することができる。
【0020】
切替部30(301,302,…30n+1)は、図3に示すように、A/D回路21と保持部40を電気的に接続/切断する第1スイッチ33と、A/D回路21と検査部50を電気的に接続/切断する第2スイッチ34と、代替回路23と保持部40を電気的に接続/切断する第3スイッチ35とから構成される。
【0021】
そして、図3(A)に示される第1設定においては、A/D回路21が出力するプロセスデータDを保持部40に一時保持する。
また図3(B)に示される第2設定においては、代替回路23が出力するプロセスデータDを保持部40に一時保存するとともに、テストデータSを検査部50で検査させる。
【0022】
検査対象指定部55は、プラント10が通常動作しているときは、図1に示されるように全ての切替部30(301,302,…30n+1)を第1設定(図3(A))とする。
そして、検査時において検査対象指定部55は、図2に示されるように、検査対象のA/D回路21nに対応する切替部30nを第2設定(図3(B))とする。
【0023】
第1実施形態における検査対象指定部55は、検査員が、センサ端子12n及びテスト14の接続を交換した後に(図2)、入力手段(図示略)から検査対象のA/D回路21nを指定して第1設定(図3(A))から第2設定(図3(B))に変更する。これにより、センサ端子12nからのプロセス信号Aは代替回路23に代替入力され、テスト信号TはA/D回路21nに通常入力される。
【0024】
そして、交換したセンサ端子12n及びテスト14の接続を元に戻し、切替部30nの設定を第2設定(図3(B))から第1設定(図3(A))に戻せば、センサ端子12nのプロセス信号Aは、通常入力に戻る。このような手順を繰り返して、検査対象を次のA/D回路21n+1に移す。
【0025】
なお、図3に示される切替部30の構成は、例示であって特に限定されるものでなく、代替回路23からプロセスデータDを出力するレジスタ41nを指定することができ、検査部50にテストデータSを入力させるA/D回路21nを指定することができる機能を有していればよい。
これにより、全てのA/D回路21の健全性を連続的に確認している最中でも、プラント監視機能を継続することができる。
【0026】
(第2実施形態)
図4に示すように第2実施形態のプラント監視システムは、保持部40において一時保持されているプロセスデータDがエラー信号であるか否かに基づいて切替部30を第1設定(図3(A))又は第2設定(図3(B))にする設定判断部54を備えている。
なお、図4において図1と同一又は相当する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0027】
A/D回路21は、センサ11が断線等してプロセス信号Aが検出可能な電圧範囲を逸脱して入力された場合に、エラー信号を出力するようになっている。
センサ端子12nが、ソケット22nから切断された場合も同じ状況となり、A/D回路21nからエラー信号が出力される。
【0028】
このために、設定判断部54は、センサ端子12の引き抜きにより新たにエラー信号の出力されたA/D回路21n+1を次の検査対象と判断することができる。そして、検査対象指定部55は、検査員の操作に頼らずに、次の検査対象のA/D回路21n+1に対応する切替部30n+1の設定を、第1設定(図3(A))から第2設定(図3(B))に自動的に変更させることができる。また、前回の検査対象であったA/D回路21nからテスト端子14が抜かれた場合も、このA/D回路21nから出力されるエラー信号に基づいて、切替部30nの設定を第2設定(図3(B))から第1設定(図3(A))に自動的に戻すことができる。
これにより、検査員の入力手段(図示略)への操作手続が省略され、検査作業の効率化及び誤操作の防止が図られる。
【0029】
(第3実施形態)
図5に示すように第3実施形態のプラント監視システム20は、複数のプロセス信号Aの各々をデジタル変換処理するA/D回路21が共通の基板25(251〜25N)に実装され、この基板25を単位として交換自在に構成されている。
これに伴って、ソケット22も対応する基板25に実装されることになり、これらソケット22に接続するセンサ端子12は、コネクタ15(151〜15N)によって一体化している。また同様に、テスト信号Tを入力させるテスト端子14も、コネクタ16によって一体化しており、対応するソケット24も基板26に実装されている。
【0030】
このために、図6に示すように第3実施形態のプラント監視システム20におけるA/D回路21の健全性検査は、一つのコネクタ15を構成している端子12の数だけ、一度に実施することができる。そして、いずれか一つのA/D回路21が不良である場合は、基板25を単位として良品に交換される。
検査結果判定部53は、基板25の識別情報を所持し、不良のA/D回路21が検出された場合は、実装されている基板25の識別情報を表示して作業員に交換を促す。
【0031】
これにより、検査員によるセンサ端子12及びテスト14の交換回数を削減することができ、検査作業の効率化が図られる。
なお、図6において、設定判断部54(図4)の記載を省略しているが、これを設けて、自動的に検査対象を切り替えることもできる。
【0032】
図7のフローチャートを参照して各実施形態におけるプラント監視システムの動作説明をする(適宜、図1、図2参照)。
プラント監視システム20は、通常状態において、プラント10のプロセス信号Aを通常入力してデジタル変換したプロセスデータDに基づいてその監視機能を担っている(S11)。
【0033】
定期検査に先立って、テスト信号Tが、代替回路23において正確なテストデータSにデジタル変換されているかについて確認する(S12)。そして、検査対象となるA/D回路21nからセンサ端子12nを抜いてプロセス信号Aの入力を切断する(S13)。
【0034】
そして、検査対象となるA/D回路21nに対応する切替部30nを第1設定から第2設定に切り替える(S14)。引き抜いたセンサ端子12nを代替回路23に接続してプロセス信号Tを代替入力すると、デジタル変換されたプロセスデータDに基づいて監視機能が担われる(S15,S16)。
このように、通常状態であるか定期検査であるかにかかわらず、センサ11nから出力されたプロセス信号Aは、プロセスデータDに変換されてからレジスタ41に一時保持されてプラント10の監視機能を中断させない。
【0035】
そして、テスト端子14が検査対象のA/D回路21nに接続されてテスト信号Tが通常入力すると(S17)、デジタル変換されたテストデータSに基づいてこのA/D回路21nの検査の合否が判定される(S18)。
もし不合格であれば(S18;NO)、A/D回路21nを交換し(S19)、再度同じ検査を実施する(S17,S18)。
【0036】
そして、合格になれば(S18;YES)、テスト端子14を検査対象のA/D回路21nから抜いてテスト信号Tを切断し(S20)、対応する切替部30nを第2設定から第1設定に戻す(S21)。さらに、代替回路23に接続されていたセンサ端子12nを元のA/D回路21nに接続すれば、プロセス信号Aは通常入力に戻る(S22,S23)。
【0037】
次のA/D回路21n+1に対し(図3)、順番に、テスト端子14を接続してテスト信号Tの入力を実行し(S24;NO →S13)、全てのA/D回路21について検査を実施したところで終了する(S24;YES)。
【0038】
以上述べた少なくともひとつの実施形態のプラント監視システムによれば、プラント信号Aの通常入力に用いるA/D回路21とは別個に設けた代替回路23が存在することにより、定期検査でA/D回路の健全性を評価している期間においても、プラント監視機能を持続させることが可能となる。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0040】
10…プラント、11(111,112,…11n+1)…センサ、12(121,122,…12n+1)…センサ端子、13…テスト信号発生器、14…テスト端子、15,16…コネクタ、20…プラント監視システム、21(211,212,…21n+1)…A/D回路、22(221,222,…22n+1)…ソケット、23…代替回路、24…ソケット、25,26…基板、30(301,302,…30n+1)…切替部、32…スイッチ、33…第1スイッチ、34…第2スイッチ、35…第3スイッチ、40…保持部、41(411,412,…41n+1)…レジスタ、42…プラント監視機能部、50…検査部、51…テストデータ受信部、52…テスト出力表示部、53…検査結果判定部、54…設定判断部、55…検査対象指定部、A…プロセス信号、D…プロセスデータ、T…テスト信号、S…テストデータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントのプロセス信号を通常入力してデジタル変換し、プロセスデータを出力するA/D回路と、
前記プロセス信号を代替入力してデジタル変換し、プロセスデータを出力する代替回路と、
前記プロセスデータを一時保持する保持部と、
前記プロセス信号に代えてテスト信号を前記A/D回路に通常入力してデジタル変換させたテストデータを検査する検査部と、を備えることを特徴とするプラント監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載のプラント監視システムにおいて、
前記A/D回路が出力する前記プロセスデータを前記保持部に一時保持させる第1設定と、前記代替回路が出力する前記プロセスデータを前記保持部に一時保存させるとともに前記テストデータを前記検査部に検査させる第2設定とを有する切替部を備えることを特徴とするプラント監視システム。
【請求項3】
請求項2に記載のプラント監視システムにおいて、
前記保持部に一時保持されているプロセスデータがエラー信号であるか否かに基づいて前記第1設定又は前記第2設定の判断をする設定判断部を備えることを特徴とするプラント監視システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のプラント監視システムにおいて、
複数の前記プロセス信号の各々をデジタル変換処理する前記A/D回路が共通の基板に実装され交換自在に構成されることを特徴とするプラント監視システム。
【請求項5】
プラントのプロセス信号を通常入力してA/D回路でデジタル変換する第1変換ステップと、
前記プロセス信号を代替入力して代替回路でデジタル変換する第2変換ステップと、
前記第1変換ステップ又は第2変換ステップで変換されたプロセスデータを一時保持する保持ステップと、
前記第2変換ステップに同期してテスト信号を前記A/D回路に通常入力してデジタル変換させたテストデータを検査する検査ステップと、を含むことを特徴とするプラント監視方法。
【請求項6】
コンピュータに、
プラントのプロセス信号を通常入力してA/D回路でデジタル変換する第1変換ステップ、
前記プロセス信号を代替入力して代替回路でデジタル変換する第2変換ステップ、
前記第1変換ステップ又は第2変換ステップで変換されたプロセスデータを一時保持する保持ステップ、
前記第2変換ステップに同期してテスト信号を前記A/D回路に通常入力してデジタル変換させたテストデータを検査する検査ステップ、を実行させることを特徴とするプラント監視プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−58027(P2013−58027A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195167(P2011−195167)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】