説明

プラント設備における操作認証システム

【課題】設備単位で操作をする運転員の操作権限認証を、運転員が携行するタグの固有IDに基づいて行い、かつその運転履歴を制御側に記録することにより操作ミス等を未然に防止し、これによりセーフティロック機能を有するようにしたプラント設備における操作認証システムを提供すること。
【解決手段】プラント設備を操作する操作盤Cに対してある一定の範囲内で、一定の距離に近づくと、操作盤側に配設した認証コントローラ1とタグT間にて光及び電波にて送受信を行って、タグTの持つタグIDを認証コントローラ1にて読み取り、タグTの固有IDをコントローラ1側に予め入力された認証用データベースより判定して位置ID及びタグIDの特定を行い、当該運転員の操作権限等を認証し、この認証結果に基づいて制御シーケンサ2にて操作盤Cの操作可能範囲を決定して特定運転員による操作盤Cの操作権限を付与或いは不可を選択し、かつその付与操作権限範囲内での操作を可能とするとともに、その操作履歴を記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラント設備における操作認証システムに関し、特に、公共ライフライン設備、例えば、電気、ガス、水道、下水道などのプラント設備において、設備操作をする運転員が携行するタグに予め入力した固有IDに基づいて設備単位で運転員の操作権限認証を行い、かつその運転履歴をも記録してセーフティロック機能を有するようにしたプラント設備における操作認証システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気、ガス、水道、下水道などの公共ライフラインのプラント設備においては、設備単位で1台もしくは複数台の操作盤を設置し、この操作盤を予め定めた作業をする運転員が特定の操作を、必要に応じて各操作盤を操作、例えば、公共ライフラインの供給量の調節操作、供給或いは停止の操作をするようにしている。
【0003】
ところで、設備単位で設置している操作盤は、安全のためロックを掛けるようにはしているが、このロックを解除すれば誰でも自由に操作可能となり、さらにロック解除状態で各運転員がそれぞれ個別的に操作を行えるようにして、操作の利便性を図るようにしているが、該操作盤を誰が、いつ、どのような操作を行ったかのデータを全く記録していないか、又はごく一部を記録しているにすぎない。
【0004】
また、通常1事業所内に操作盤は、その操作内容に応じて複数配置され、かつその作業内容によりその操作をする運転員を予め定め、操作の誤りを防止するようにして安全性を高めるようにしている。しかし事業所内に入り、かつ運転操作室に近づくことができれる人であれば、指定された運転員以外のどの作業員でも、例えば、担当者以外の操作権限のない作業員や部外者でも操作可能なため、慣れない作業員や新しい作業員が誤って操作盤を操作するという問題があった。
また、メンテナンス時や故障発生時などにおいても、操作盤の操作履歴が操作盤の制御側に保存されていないため、どの操作を、誰が、いつどのようにして行ったか、を後で確認することができず、故障原因の追及などに時間が掛かるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来のプラント設備における操作盤の有する問題点に鑑み、設備単位で操作をする運転員の操作権限認証を、運転員が携行するタグの固有IDに基づいて行い、かつその運転履歴を制御側に記録することにより操作ミス等を未然に防止し、これによりセーフティロック機能を有するようにしたプラント設備における操作認証システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のプラント設備における操作認証システムは、プラント設備を操作する操作盤に配設した赤外線発光器による発光赤外線の照射エリア内に運転員が入ったとき、当該運転員が携行する固有IDを有するタグと、操作盤側に備えたタグIDの認証用データベースを有する認証コントローラとの間にて光及び電波にて送受信を行って、該タグの固有IDを認証用データベースに基づいて位置ID及びタグIDを判定し、当該運転員の操作権限等を固有IDより認証し、制御シーケンサにより操作盤の操作可能範囲を決定して操作盤の操作権限を付与或いは不可を選択して付与操作権限範囲内での操作を可能とすると共に、その操作履歴を記録するようにしたことを特徴とする。
【0007】
この場合において、認証用データベースに基づいて運転員の操作権限等を固有IDより認証した結果を、各種操作を制御するようにした制御シーケンサにLANを通じて伝達することができる。
【0008】
また、1台の認証コントローラにより、事業所内の現場毎に配設された複数台の操作盤に、それぞれの操作権限を付与或いは不可を選択して付与し、各操作盤毎の操作履歴を記録するようにすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のプラント設備における操作認証システムによれば、プラント設備を操作する操作盤に配設した赤外線発光器による発光赤外線の照射エリア内に運転員が入ったとき、当該運転員が携行する固有IDを有するタグと、操作盤側に備えたタグIDの認証用データベースを有する認証コントローラとの間にて光及び電波にて送受信を行って、該タグの固有IDを認証用データベースに基づいて位置ID及びタグIDを判定し、当該運転員の操作権限等を固有IDより認証し、制御シーケンサにより操作盤の操作可能範囲を決定して操作盤の操作権限を付与或いは不可を選択して付与操作権限範囲内での操作を可能とすると共に、その操作履歴を記録するようにすることにより、正規のタグを所有した運転員でない限り、また指定された制御以外に操作盤の適正操作をすることができないので、不正な制御或いは誤操作を未然に防止することができるとともに、操作履歴にて誤操作、故障などを早期発見することができる。
【0010】
また、認証用データベースに基づいて運転員の操作権限等を固有IDより認証した結果を、各種操作を制御するようにした制御シーケンサにLANを通じて伝達するようにすることにより、認証コントローラと制御シーケンサとの接続が簡易となり、かつ認証コントローラと制御シーケンサ間が離れる場合であっても簡易に接続し、情報伝達が正確に行うことができる。
【0011】
また、1台の認証コントローラにより、事業所内の現場毎に配設された複数台の操作盤に、それぞれの操作権限を付与或いは不可を選択して付与し、各操作盤毎の操作履歴を記録するようにすることにより、事業所内の現場毎に複数台の操作盤が配設される場合であっても、1台の認証コントローラにて各現場の操作盤制御を個別的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明のプラント設備における操作認証システムの実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1〜図3に、本発明のプラント設備における操作認証システムの一実施例を示す。
本発明のプラント設備における操作認証システムは、プラント設備に配設される操作盤には認証コントローラ(CTL)1を配備し、この認証コントローラ(CTL)1と、操作権限を有する運転員が携行するようにしたタグTとより構成する。
このタグTには所属部署、氏名年齢、所有資格及び操作権限等の個人データを入力したタグID(固有ID)を有するようにし、該タグTを携行した運転員(作業者又は操作者)M1、M2、M3、・・・、Mnが、プラント設備を操作する操作盤Cに対してある一定の範囲内で、一定の距離に近づく、例えば、操作盤Cに配設した赤外線発光器3による発光赤外線の受光エリア内に入る或いは近づくと、操作盤側に配設した認証コントローラ(CTL)1とタグT間にて光、及びアンテナA1、A2を介して電波にて送受信を行って、タグTの持つタグIDを認証コントローラ1にて読み取り、該タグの固有IDをコントローラ1側に予め入力された認証用データベースより判定して位置ID及びタグIDの特定を行い、当該運転員の操作権限等を認証し、この認証結果に基づいて制御シーケンサ2にて操作盤Cの操作可能範囲を決定して特定運転員による操作盤Cの操作権限を付与或いは不可を選択し、かつその付与操作権限範囲内での操作を可能とするとともに、その操作履歴を記録するようにする。
また、操作盤Cには、設備の各種制御を可能とするためのスイッチ、コントロールレバー、計測計、モニター等を備えるとともに赤外線発光器3を配設する。
【0014】
なお、この認証コントローラ(CTL)1による認証結果は、認証コントローラ1よりLAN等を通じて操作盤Cに付設した制御シーケンサ(SQC)2に伝達するとともに、このタグT、操作盤に配設したコントローラCTL間の送受信は、光と無線信号とにて行うもので、認証コントローラ側の赤外線発光器3による発光赤外線(光信号)をタグTにて受光し、かつタグTの信号は、無線信号により受信器を介して認証コントローラ1側へ伝達されるようにする。
【0015】
このタグT、認証コントローラ(CTL)1間の無線通信は、特に限定されるものではないが、例えば、RFID(Radio Frequency Identification(電波方式認識)。本明細書において、「RFID」という。)にて行うことができる。
【0016】
なお、タグTは運転員等が所持する場合、人が携行しやすい大きさ、形状とし、名札やバッチの如く形成して胸に装着するか、首から吊り下げるようにし、操作盤側からの発光赤外線を受光できるように構成するもので、これは特に限定されるものではないが、例えば、1つのケース内に、赤外線発光を受光できるようにした受光フォトダイオードと、この受光フォトダイオードにて受光した光信号を位置IDに変換するようにした受信回路と、この位置IDとタグID(固有ID)を合成するようにしたID合成回路と、合成IDを電波、例えば、無線信号に合成する発信回路とより構成する。
【0017】
また、認証コントローラ1は、図示省略したが、一般にRFIDとして使用されている構成を採用し、特に限定されるものではないが、例えば、位置ID生成回路及び認証判定回路からなる計算機CPUと、外部I/O制御回路と、前記位置ID生成回路にて形成された位置IDの信号を光信号に変換するようにして位置ID生成回路に接続する光信号変換回路と、タグIDと位置IDをキーにデータベースから認証結果を取得するよう認証判定回路に接続した認証用データベースと、認証判定回路と外部I/O制御回路の間に接続し、かつ操作盤の各種スイッチ類を制御するようにした制御回路、及び合成IDを位置IDとタグIDに変換するようにしたID変換回路とから構成する。
【0018】
また、認証コントローラ1の光信号変換回路には、赤外線発光器3、例えば、赤外線発光LEDを接続して光信号変換回路からの位置ID信号を光信号に変換し赤外線を発光させ、固有IDを有するタグTを所持している運転員(作業者又は操作者)M1、M2、M3、・・・、Mnが、前記赤外線発光器3の赤外線照射エリア内に侵入すると該タグTにてこの赤外線信号を受光するように構成する。
【0019】
この赤外線発光器(赤外線発光LED)3は、1台の操作盤Cに対して少なくとも1つを配置するものとし、かつ運転員M1、M2、M3、・・・、Mnのいずれか指定された一人の運転員が予め定めた位置に着座或いは近づいたとき、タグTとの通信が行えるようにすると共に、操作盤Cが複数台隣接配置される場合には、互いに光による通信が混信しないよう、ある程度の指向性を有するものが望ましい。
また、操作盤Cが、例えば、図2に示すように、中央監視センターには複数台を隣接して配置され、また複数ある現場1、現場2、現場nには、それぞれの現場に各操作盤Cを配置されるような場合には、1台の認証コントローラ1と、各操作盤C、Cに配設された複数個の赤外線発光器(赤外線発光LED)3が接続されるようにする。
【0020】
次に、本発明のプラント設備における操作認証システムの作用について説明する。
タグTを所持しない者が赤外線発光器(赤外線発光LED)3の発光赤外線の受光エリア内の操作盤に近づいても、認証コントローラ1の赤外線発光器(発光LED)3からの赤外線を受光することができないので、認証コントローラ1側にて位置ID信号を受光できず、従ってこのような場合は認証コントローラ1側との通信が不能となり、制御シーケンサ(SQC)2にて操作盤Cの制御を不能とする。
このため、制御盤Cに近づていも制御盤Cは操作することができない。これにより不正又は誤操作を防止することができる。
【0021】
また、正規のタグTを所持した運転員M1、M2が、予め設定された認証コントローラCTLの赤外線の受光エリア内に近づくと、当該操作盤Cには常時認証コントローラCTLからの位置IDが赤外線信号に変換されて赤外線発光器(発光LED)3から発光されているので、この発光に基づく位置ID信号をタグTの受光フォトダイオードにて受光し、この光信号を受信回路にて位置IDに変換し、次いでID合成回路により、この位置IDとタグID(固有ID)を合成した合成IDを発信回路よりアンテナA1、A2を介して電波、例えば、無線信号にて発信する。
【0022】
この無線信号となった合成IDを受信器のアンテナA2にて受信し、その受信信号を認証コントローラCTL内の外部I/O制御回路に伝達する。この受信した合成IDを認証コントローラCTL内のID変換回路にて解析し、合成IDを位置IDとタグID(固有ID)の信号に分解して認証判定回路に伝達する。
【0023】
この認証判定回路では、タグIDと位置IDをキーに認証用データベースから認証結果を取得し、その判定結果を制御回路、外部I/O制御回路を介してLANにて制御シーケンサ(SQC)2に伝達するようにする。
この制御シーケンサ2により操作盤Cの操作可能範囲を決定し、操作盤Cの操作権限を選択して、該付与操作権限範囲内での操作を可能とし、これにより運転員はスイッチ、コントロールレバーにてモータMの運転、停止、バルブVの開閉操作、スイッチSのオンオフなどの必要なキー操作C2を、計測計やモニターC1等を目認しながら行うことができる。
また、その操作履歴を記録し、これにより誰が、いつ、どのような操作を行ったかを後刻検査することができる。
【0024】
また、図2に示す実施例は、事業所内に複数の設備が有する場合、中央監視センター(又は中央監視操作室)内に、設備毎の操作盤を隣接配設し、また現場事務所等内には各現場毎に現場操作盤を配設したものである。
この場合、中央監視センターの設備毎の各操作盤には赤外線発光器(赤外線発光LED)3を配備し、この各赤外線発光器(赤外線発光LED)3を認証コントローラCTLとLANにて接続し、かつ各設備毎の各操作盤は制御シーケンサSQCとLANにて接続されている。
また、現場事務所内の複数の現場操作盤には赤外線発光器(赤外線発光LED)3を配備し、この各赤外線発光器(赤外線発光LED)3を認証コントローラCTLと接続し、この認証コントローラCTLと制御シーケンサSQCとをLANにて接続し、かつ制御シーケンサSQCと現場操作盤とを、補助継電器盤4を介して接続されている。
【0025】
この場合、運転員M1と運転員M2とが正規のタグを所持し、指定された操作盤宅前に着座し、操作盤を付与操作権限範囲内で操作を可能であるが、正規のタグを所持していない運転員M3は、操作権限を付与されないので操作盤Cを操作することができない。
このようにして複数台の操作盤が配置され、かつ複数の運転員にて同時に操作する場合においても、不正な操作、誤操作を防止することができる。
【0026】
以上、本発明のプラント設備における操作認証システムについて、実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明のプラント設備における操作認証システムは、設備単位で運転員の操作権限認証を行い、運転履歴、セーフティロック機能を有するという特性を有していることから、プラント設備の操作認証システムの用途に好適に用いることができるほか、例えば、生産工場の安全管理や作業員の監視の用途にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のプラント設備における操作認証システムの一実施例を示すフロー説明図である。
【図2】同具体的な実施例のフロー説明図である。
【図3】本発明のプラント設備における操作認証システムの概略外観図である。
【符号の説明】
【0029】
1 コントローラCTL
2 制御シーケンサSQC
3 赤外線発光器(赤外線発光LED)
4 補助継電器盤
T タグ
C 操作盤
M1、M2、M3、・・・、Mn 運転員(作業者又は操作者)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラント設備を操作する操作盤に配設した赤外線発光器による発光赤外線の照射エリア内に運転員が入ったとき、当該運転員が携行する固有IDを有するタグと、操作盤側に備えたタグIDの認証用データベースを有する認証コントローラとの間にて光及び電波にて送受信を行って、該タグの固有IDを認証用データベースに基づいて位置ID及びタグIDを判定し、当該運転員の操作権限等を固有IDより認証し、制御シーケンサにより操作盤の操作可能範囲を決定して操作盤の操作権限を付与或いは不可を選択して付与操作権限範囲内での操作を可能とすると共に、その操作履歴を記録するようにしたことを特徴とするプラント設備における操作認証システム。
【請求項2】
認証用データベースに基づいて運転員の操作権限等を固有IDより認証した結果を、各種操作を制御するようにした制御シーケンサにLANを通じて伝達するようにことを特徴とする請求項1記載のプラント設備における操作認証システム。
【請求項3】
1台の認証コントローラにより、事業所内の現場毎に配設された複数台の操作盤に、それぞれの操作権限を付与或いは不可を選択して付与し、各操作盤毎の操作履歴を記録するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載のプラント設備における操作認証システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−119860(P2006−119860A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−306306(P2004−306306)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(000233206)日立機電工業株式会社 (64)
【Fターム(参考)】