説明

プラーク疾患を処置および監視するための材料および方法

本明細書では、不安定プラーク等のプラーク疾患の処置及び管理に適した材料及び方法が開示される。内皮細胞等の細胞及び生体適合性基質からなる移植可能な材料により、前記血管の管腔内側に位置するプラーク関連病変の進行又は悪化を低減させることができる。本発明の移植可能な材料は、管腔内側上の病変部位における、該部位に隣接する、又は該部位の近くにおける血管の外面に直接移植される。或いは、該移植可能な材料は、血管壁を横断又は貫通する管腔内送達デバイスにより、又は血管周囲腔に進入する経皮送達デバイスにより、管腔内側上の病変部位における、該部位に隣接する、又は該部位の近くにおける外面に沈着される。何れの投与様式も、画像化工程の前、又は該工程と同時に行うことができる。本発明により、出血、侵食、亀裂、プラーク関連血栓症及び閉塞、破裂、プラーク病変の転移及び/又は移動を処置することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
2005年12月6日に出願された、この本出願は、35U.S.C.Section 119(e)の下、2004年12月8日に出願された仮特許出願U.S.S.N.60/634,155号;2005年3月21日に出願された仮特許出願U.S.S.N.60/663,859号;および2005年3月19日に出願された仮特許出願U.S.S.N.60/682,054号;_________に出願された仮特許出願U.S.S.N._______号の利益を主張し、同日付で出願された係属中の国際出願PCT/US____________号(代理人整理番号ELV−002PCとしても知られる)および同日付で出願された係属中の国際出願PCT/US____________号(代理人整理番号ELV−009PCとしても知られる)に対する優先権を、35U.S.C.Section120,363および/または365の下で主張する。上述の出願の各々の全内容が、本明細書中に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
不安定プラーク病変のようなプラーク疾患の処置及び管理では、臨床上の課題が依然として満たされないままである。該疾患の発症及び進行は通常検出されず、急性冠症候群(ACS)が発生した時に初めてが明らかになる。その他のより重篤な臨床的続発症(例えば、心筋梗塞、又は更には突発性心臓死)の症状発現の危険性は著しく顕著になる。プラーク疾患の罹患率及び重症度にもかかわらず、ACS前及びACS後の臨床的介入形態はこれまで使用されていない。
【0003】
現在、プラークは、安定型も不安定型の何れも、動脈による脂肪小滴の吸収から形成され、これにより、サイトカインの放出及び炎症の開始を引き起こすと考えられている。サイトカインは単球を血管壁に引き寄せ、その後単球が内膜を超えて浸潤し、マクロファージになる。該マクロファージは更なる脂肪小滴を取り込み始め、泡沫細胞になるが、これは、マクロファージコロニー刺激因子のような因子によって引き起こされる可能性が最も高い。最初は少数の脂肪小滴であったものが、内膜における線維性被膜の形成と共に、血管壁の中膜の内部における脂質プール又は壊死性コアに移行する。
【0004】
例えば、厚い線維性被膜を伴うプラーク、脂質プールを殆ど又は全く伴わないプラーク、及び/或いは、管腔の内皮細胞の損失又は機能不全によって特徴付けられる侵食されたプラークは、安定プラークであると考えられる。破裂及びその後の臨床的続発症の可能性が安定プラークの場合には低下するが、安定プラーク及び不安定プラークは何れも処置及び管理から利益を得ることが考えられる。
【0005】
更なる炎症は、脂質プール又は壊死性コアの大きさを増大させると共に、タンパク質分解酵素(例えば、エラスチン分解性のカテプシン類、基質メタロプロテイナーゼ、及びマクロファージ由来のその他の酵素)の放出を増大させ、これらにより、線維性被膜の破裂の潜在的危険性を増大させる。炎症を起こした当該プラークは、易破綻性の薄い被膜の線維アテローム(thin‐cap fibroatheroma)(TCFA)と呼ぶことができる。TCFA又はその他何れかの種類の易破綻性プラークは、「不安定」プラーク、「高リスク」プラーク又は「血栓症傾向」プラークと見なされる。
【0006】
1種類の不安定プラークは、表在性プラーク傷害又はプラーク侵食として特徴付けることができる。その他の非破裂型不安定プラークは、脈管の管腔に広がる閉塞性血栓又は非閉塞性血栓を誘導することができるか、或いは、プラークの出血を生じさせることができるか、或いは、プラーク部位内における平滑筋細胞の増殖及び/又は血小板凝集若しくはフィブリン凝集を生じさせることができる。その他の種類の非破裂型プラーク、又は非破裂型プラークにおけるその他の形態の血栓症については、将来説明するものと思われる。
【0007】
不安定プラークの線維性被膜の破裂により、通過中の血液が脂質に富んだアテロームコアに曝され、これにより血栓症の危険性が高くなる。加えて、無傷の線維性被膜を伴うプラークは、栄養血管の漏出及び栄養血管内における脈管形成を受け、プラーク内出血を生じる可能性がある。当該プラーク内出血は不安定プラークを不安定にし、プラーク侵食、プラーク破裂及び急性冠症候群を引き起こす。
【0008】
更に、プラークは、プラーク部位の内部で石灰化した小結節を、又は血管の周囲全体の内部で広範な石灰化を発達させ、その結果、内皮細胞の損失及び/又は機能不全、及び/又は線維性被膜の損失をもたらし、これにより、高リスク又は不安定プラークを生じさせる可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一つの目的は、プラーク疾患を処置及び管理するための材料及び方法を提供することである。当該疾患の一つが不安定プラークである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の開示)
本発明では、細胞ベースの治療法を血管周囲に施すことによってプラーク疾患のような管腔内の疾患を効果的に処置できるという発見が利用される。本明細書に開示される通り、細胞、好ましくは内皮細胞、又は内皮様の表現型を有する細胞からなる移植可能な材料は、プラークが存在する血管又はプラーク疾患に冒されやすい血管の外面に配置されると、プラーク疾患を処置及び管理するために使用することができる。この発見により、臨床医は、プラーク疾患、即ちこれまで臨床的な介入又は管理の候補ではなかった疾患の発現及び進行に介入することが可能となる。
【0011】
本発明の方法によれば、移植可能な材料は、開放式の外科手技で、管腔内側上のプラーク病変部位において、該部位に隣接して、又は該部位の近くにおいて管腔外に沈着させることができる。或いは、移植可能な材料は、血管壁を横断する管腔内送達デバイス、又は血管周囲腔に進入する経皮送達デバイスを介して、管腔内側上の病変部位において、該部位に隣接して、又は該部位の近くにおいて管腔外に沈着させることができる。本明細書では、管腔外面とも称される非管腔面が、脈管の外面又は血管周囲面となってもよければ、血管の外膜、中膜又は内膜の内部にあってもよいことが想定される。本発明において、非管腔又は管腔外とは、管腔の内面を除いた任意の面である。
【0012】
一態様では、本発明が、血管の管腔内側上のプラーク負荷部位を処置する方法を提供し、この場合、該方法が、前記脈管の管腔内側上のプラーク負荷部位における、該部位に隣接する、又は該部位の近くにおける前記血管の外面を、移植可能な材料と接触させる工程を含み、ここで、前記移植可能な材料が生体適合性基質及び細胞を含み、且つ、前記移植可能な材料が、プラーク負荷部位におけるプラークの転移又は移動を減少させる、プラーク負荷部位におけるプラーク出血を減少させる、プラーク負荷部位におけるプラーク亀裂を減少させる、プラーク負荷部位におけるプラーク関連血栓症を減少させる、プラーク負荷部位におけるプラーク侵食を減少させる、及び/又はプラーク負荷部位におけるプラーク関連閉塞を減少させる上で有効な量となる。本明細書に記載される送達様式は何れも、プラーク負荷部位の処置に使用することができる。
【0013】
別の現時点で好ましい実施形態では、本発明が、急性冠症候群を処置する方法となり、この場合、該方法が、急性冠症候群に関連する心臓事象の発生率を低下させる上で有効な量で、血管の管腔内側上のプラーク負荷部位における、該部位に隣接する、又は該部位の近くにおける血管の外面を、移植可能な材料と接触させる工程からなる。更に別の現時点で好ましい実施形態では、本発明が、不安定プラークに関連する臨床的続発症を減少させる上で有効な量で、血管の管腔内側上のプラーク負荷部位における、該部位に隣接する、又は該部位の近くにおける血管の外面を、移植可能な材料と接触させることによって、不安定プラークに関連する臨床的続発症を減少させる方法を提供する。臨床的続発症は、急性冠症候群、心筋梗塞、及び突発性心臓死からなる群より選択される。他の実施形態では、本発明が、一般的にプラーク疾患、好ましくはアテローム性動脈硬化に関連するプラーク疾患を処置及び管理する方法を提供する。
【0014】
前述の方法の特定の実施形態では、該接触工程が、最初に前記血管の内壁を横断し、次に、プラーク負荷部位における、該部位に隣接する、又は該部位の近くにおける血管の外面に移植可能な材料を沈着させることによって達成される。該横断工程は、血管壁を横断又は貫通することができる任意の血管内又は管腔内送達デバイスを使用して達成される。特定の他の実施形態では、該接触工程が、移植可能な材料を開放式の外科手技で直接移植することによって達成される。更に他の実施形態では、移植可能な材料が、血管周囲腔に進入する経皮送達デバイスを使用して管腔外に沈着される。本発明において、血管の外面は、非管腔又は管腔外面であると共に、血管周囲腔を占める面であることが想定される。本明細書では、管腔外面とも称される非管腔面が、脈管の外面又は血管周囲面であってもよければ、血管の外膜、中膜又は内膜の内部にあってもよいことが想定される。本発明において、非管腔又は管腔外とは、管腔の内面を除いた任意の面である。
【0015】
前述の方法の何れかにおいて、更なる同定工程を、適切な移植部位の同定の補助として行うことができる。本発明の実施に必須のものではないが、前記の必要に応じた工程は、管腔内又は経皮送達方法の何れかと併せて行うことができる。前記の更なる工程は、本発明の流動性組成物を投与するために使用される管腔内横断工程又は血管周囲進入工程の前に、或いは該工程と同時に行うことができる。前記工程は又、本明細書に開示される通り、移植可能な材料の可撓性の平面実施形態又は流動性組成物の実施形態の何れかを他の位置に直接移植する任意の開放式手術と併せて行うことができる。前記同定工程は、例えば任意の適切な画像化技術によって達成できることが想定される。
【0016】
別の態様では、本発明が、前述の方法の何れか一つによる使用に適切な、生体適合性基質及び細胞からなる移植可能な材料を提供する。特に好ましい実施形態では、該細胞が内皮細胞となる。幾つかの現時点で好ましい実施形態では、内皮細胞が血管内皮細胞となる。更に他の好ましい実施形態では、該細胞が、内皮様の表現型を有する細胞となる。
【0017】
本明細書で意図及び記載されるように、移植可能な材料は可撓性の平面材料であっても、流動性組成物であってもよい。特定の好ましい実施形態では、該流動性組成物が管腔内又は経皮送達デバイスと共に使用することができる。熟練した臨床医は、このように様々な形態の移植可能な材料によってもたらされる利点、及びそれらの臨床的適性を理解すると思われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本明細書で説明する通り、本発明は、細胞ベースの治療法が、プラーク疾患、特に不安定プラーク疾患の進行を処置、改善、管理及び/又は低下させるために使用できるという発見に基づいている。以下に示す教示は、本発明の材料及び方法を作製及び使用する上で十分な指針を提供し、更に、本発明の材料及び方法の成績を試験、測定及び監視するための適切な判断基準及び対象を同定する上で十分な指針を提供する。
【0019】
(プラーク疾患)
脆弱な患者の同定及び監視:脆弱な患者とは、プラーク疾患又は冠動脈疾患を発症する可能性が高い患者である。脆弱な患者は同定することができ、又、脆弱な患者の状態は、日常的な技法を使用して、プラーク疾患及び急性冠症候群(例えば、不安定プラーク、脆弱な血液、及び脆弱な心筋)に関連する様々なバイオマーカーを監視することによって評価することができる。
【0020】
不安定プラークの同定及び監視:不安定プラーク及び安定プラークは、血管による脂肪小滴の吸収から形成される可能性がある。その後、サイトカインが放出され、これらにより、最終的には血管壁の中膜の内部における壊死性コア及び内膜における線維性被膜の形成に至る可能性がある炎症がもたらされる。当該線維性被膜が厚いか、又は脂質プールに関連していなければ、該病変は非脆弱であり、破裂の可能性がないと見なされる。しかし、脂質プール又は壊死性コアの大きさが増大したり、被膜が薄くなれば、該病変は炎症を起こし、及び/又は易破裂性が高くなる可能性がある。当該易破裂性病変は脆弱と見なされる。病変が無傷であると思われる場合でさえ、プラーク内出血が起こり、最終的にはプラークを不安定にさせ、その後、プラークの侵食、破裂、及び、おそらくはACSを生じる可能性がある。一般的にプラーク疾患の様々な臨床的症状発現、具体的に不安定又は安定プラーク疾患の様々な臨床的症状発現が、既存の臨床文献に詳細に記載されており、当業者によって十分に理解されている。
【0021】
簡潔に説明すると、不安定プラークは特定の臨床的に重要な判断基準に従って同定及び評価することができる。これらの判断基準には、活動性炎症、大きな脂質プール又は壊死性コアを伴う薄い線維性被膜、表在性の血小板凝集を伴う内皮細胞の露出、亀裂又は損傷の生じたプラーク、及び重篤な狭窄が含まれる。不安定プラークの存在、位置及び状態は、当該技術分野で現在公知の数多くの方法によって明らかに特定することができる。例えば、不安定プラークは、患者の血液サンプルにおけるC反応性タンパク質のレベルを測定することによって、ベースライン心電図(EKG)、運動タリウム試験(核ストレス試験)、超音波心臓検査装置、冠動脈造影法又は血管顕微鏡検査法を使用することによって、検出及び監視することができる。更に、日常的な方法を使用して監視することができる更なる副判断基準には、表在性のカルシウム小結節、血管顕微鏡検査法における黄色、プラーク内出血、内皮細胞の機能不全、及び広範な(明確な)リモデリングが含まれる。
【0022】
断層撮影法の様々な方法も又、不安定プラークの状態の検出及び監視に使用することができ、当該方法には、陽電子放射断層撮影法(PET)走査、光干渉又は拡散光断層撮影法、フルオロデオキシグルコース陽電子放射断層撮影法、及び、深部組織における蛍光色素の存在及び濃度を検出するその他の種類の蛍光媒介による断層撮影法が含まれる。
【0023】
更なる検出方法及び監視方法には、実質的な組織学、エラストグラフィー(elastography)、パルポグラフィー(palpography)、経カテーテル比色分析法、サーモグラフィー、血管内超音波検査法、血管内磁気共鳴画像法(MRI)、造影剤強調MRI、組織ドップラー法、電子ビームCT、多断面スパイラルCT、ラマン分光法、マクロファージにより誘導されるプロテアーゼ活性の近赤外線(NIR)分光法、又は、血管の一部分の酸性度を測定する計量化学的プローブが含まれる。
【0024】
脆弱な血液の同定及び監視:脆弱な血液、即ち血栓形成性の血液は、プラーク疾患及び冠動脈疾患等の急性心臓血管系合併症の存在及び/又は状態を示す血清マーカーを含有する血液である。当該血清マーカーには、C反応性タンパク質、インターロイキン−6、可溶性CD40リガンド、可溶性細胞内接着分子、循環する細菌エンドトキシン、可溶性ヒト熱ショックタンパク質60、マイコバクテリウム熱ショックタンパク質65の抗体、及び妊娠関連血漿タンパク質A(PAPP−A)が含まれるが、これらに限定されない。その他の血清学的マーカーには、リポタンパク質のプロフィール、炎症の非特異的マーカー、メタボリック症候群のマーカー、免疫活性化のマーカー、脂質過酸化のマーカー、ホモシステイン、循環するアポトーシスマーカー、ADMA/DDAH、及び循環する非エステル化脂肪酸が含まれる可能性がある。
【0025】
血液の凝固性亢進に関連する更なる血清マーカーにより、冠動脈疾患の存在及び/又は状態を示すことが可能となる。当該血清マーカーには、フィブリノーゲン、D−ダイマー、第V因子ライデン、増大した血小板活性化及び血小板凝集のマーカー、増大した凝固因子、減少した抗凝固因子、減少した内因性線維素溶解活性、プロトロンビンの変異、その他の血栓形成性因子(例えば、抗カルジオリピン抗体)、血小板増加症、鎌状赤血球貧血、赤血球増加症、糖尿病、高コレステロール血症及び高ホモシステイン血症、増大した粘度、並びに、例えば喫煙、脱水、感染、アドレナリン作用の急激な変動、コカイン及びエストロゲン系薬剤により引き起こされる一過性の凝固性亢進が含まれるが、これらに限定されない。
【0026】
脆弱な心筋の同定及び監視:脆弱な心筋とは、被験者の自律神経性緊張に基づく急性虚血にかかりやすい被験者の心筋である。交感神経の活動亢進は、生命を脅かす心室性不整頻拍の発生を促進させるのに対して、迷走神経の活性化は、抗細動作用を及ぼす。虚血性心筋からの強い求心性刺激は、動脈の圧反射を損ない、血流力学的不安定性をもたらす可能性がある。脆弱な心筋を示す要因には、以前のアテローム性動脈硬化に関連した任意の種類の心筋損傷(例えば、虚血)、以前又は新規の心筋梗塞、炎症、線維症、様々な形態の心筋症弁膜性心疾患(例えば、大動脈狭窄及び原発性の電気的障害)、及び/又は、胸部外傷に由来する心臓振とうが含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
本発明による処置が可能な更なる易損性の血管状態には、脆弱な脈管構造が要求に対する不十分な血液供給の一因となる任意の虚血性、低酸素性、又は損傷した脈管構造が含まれる。易損性の血管状態は、血液供給に負の影響を与える任意の損傷又は修復に起因する可能性がある。代表的な易損性には、幾つかの例を挙げると、不安定動脈症候群、例えば、運動誘発性狭心症から安静時狭心症にまで及ぶ一連の不安定性を含めた心臓の不安定狭心症;虚血;間欠性跛行から壊疽、腸管における腸虚血、及び腎虚血にまで及ぶ一連の状態を含めた大動脈及び末梢虚血が含まれる。
【0028】
(移植可能な材料)
一般的考慮事項:本発明の移植可能な材料は、生体適合性マトリクス上に、生体適合性マトリクス内に、および生体適合性マトリクスの範囲内に、もしくは、生体適合性マトリクス内に、または生体適合性マトリクスの範囲内に移植された細胞を含む。「移植された」とは、細胞が本明細書で開示する形成操作の厳しさに耐えるように細胞と細胞および細胞とマトリクスもしくは細胞と細胞または細胞とマトリクスのマトリクス相互作用部にしっかりと付着されることを意味する。本明細書の他の部分で説明するように、本移植可能な材料の処置用実施形態は、好適な表現型を有する近融合、融合または融合後の細胞集団を含む。了解事項として、移植可能な材料の種々の実施形態は、恐らくは、形成操作中に細胞を流してしまい、かつ、特定の細胞は、他の細胞ほどはしっかりと付着されないか、もしくは、移植可能な材料の種々の実施形態は、恐らくは、形成操作中に細胞を流してしまうか、または、特定の細胞は、他の細胞ほどはしっかりと付着されない。必要なのは、移植可能な材料は、本明細書で定める機能上または表現型上の判定基準を満たす細胞を含むということである。
【0029】
本発明の移植可能な材料は、ヒト組織工学の各種重要事項に基づいて開発されたものであり、上述した臨床的なニーズに対応する新規なアプローチを表す。本発明の移植可能な材料は、生体適合性マトリクス上に、生体適合性マトリクス内に、および生体適合性マトリクスの範囲内に、もしくは、生体適合性マトリクス内に、または生体適合性マトリクスの範囲内に移植された生存細胞は、生理学上のフィードバック制御で生理学上の割合で複数の細胞を基本とする製品を血管アクセス構造体および関連の脈管構造に供給することができるという点で類のないものである。本明細書の他の部分で説明するように、本移植可能な材料との使用に適切な細胞は、内皮または内皮的細胞である。これらの細胞および生理学的に動的な投与による複数の化合物の局所的な供給によって、機能的血管アクセス構造体を維持し、かつ、血管アクセス上の合併症および不全、もしくは合併症または不全を減らすことを司るプロセスのより効果的調整が行われる。重要なこととして、例えば、本発明の移植可能な材料の内皮細胞は、例えば、外膜での血管の非内腔面に設置されるために血管内腔内の侵食性血流、または、血管の外面への接触から保護されている。本発明の移植可能な材料は、包まれるか、付着されるか、または他の方法で当該外部目標部位、即ち、吻合およびその周囲、もしくは吻合またはその周囲と接触したとき、ホメオスタシスを再確立する役目をする。即ち、本発明の移植可能な材料は、支えになる生理機能を模倣する環境を実現することができ、かつ、血管アクセス構造体形成、成熟、整合性および安定化もしくは血管アクセス構造体形成、成熟、整合性または安定化に有益である。
【0030】
本発明の目的上、「接触する」とは、本明細書の他の部分で定義されるように、内腔外または非内腔面との直接的または間接的に相互作用することを意味する。特に好適な実施形態の場合、実際的な物理的接触は、効果的であることには必要なものではない。他の実施形態においては、実際的な物理的接触は、好適なものである。本発明を実践する上で必要なのは、損傷または病変部位を処置するのに有効な量で、損傷または病変部位にて、損傷または病変部位近傍、または損傷または病変部位付近にての移植可能な材料の内腔外または非内腔の付着である。特定の病気または損傷の場合、病変または損傷部位は、臨床的に内腔内面に顕在する可能性がある。他の病気または損傷の場合、病変または損傷部位は、臨床的に内腔外または非内腔面上に顕在する可能性がある。一部の病気または損傷において、病変または損傷部位は、臨床的に内腔内面にも内腔外、または非内腔面にも顕在する可能性がある。本発明は、前出の臨床的顕在部のいずれも処置するのに有効である。
【0031】
例えば、内皮細胞は、組み合わせると血管アクセス構造体形成後の急性合併症に関連した生理学上の有害事象を抑制または移動させることができる様々な薬を放出することができる。本明細書で例示するように、正常な生理機能および投与を再現する構成体および使用法は、血管アクセス構造体形成、成熟、整合性および安定化もしくは血管アクセス構造体形成、成熟、整合性または安定化を高めるばかりでなく、当該血管アクセス構造体の長期的開存率を促進するのに有用である。一般的に、処置としては、例えば、処置に関与する動脈および静脈の内腔の外部の血管周囲腔内で、血管アクセス構造体部位にて、血管アクセス構造体部位近傍に、または、血管アクセス構造体部位付近に本発明の移植可能な材料を設置することが含まれる。包まれるか、巻き付かれるか、付着されるか、または他の方法で損傷血管、外傷血管、または病変血管と接触したとき、本移植可能な材料の細胞は、脈管構造に、例えば、血管内の下層の平滑筋細胞に成長調整化合物を供給することができる。内腔外部位に位置するとき、本移植可能な材料の細胞は、血管組織を貫通して内腔に到達することができる複数の調整化合物の連続的な供給を行い、しかも、本移植可能な材料の細胞は、血管内の血流の機械的悪影響から保護されることが企図されている。本明細書で説明するように、1つの好適な内腔外部位は、血管外面である。
【0032】
細胞源:本明細書で説明するように、本発明の移植可能な材料は、細胞を含む。細胞は、同種異形細胞、異種細胞、または自己細胞とすることができる。特定の実施形態においては、生体細胞株は、適切なドナーから導出することができる。特定の他の実施形態においては、細胞株は、死体からまたは細胞バンクから導出することができる。
【0033】
1つの現在好適な実施形態においては、細胞は、内皮細胞である。特に好適な実施形態においては、当該内皮細胞は、血管組織、好ましくは、動脈組織(であるが、これに限定されない)から取得することができる。以下に例示するように、使用に適切な1つの種類の血管内皮細胞は、大動脈内皮細胞である。使用に適切な別の種類の血管内皮細胞は、臍帯静脈内皮細胞である。また、使用に適切な別の種類の血管内皮細胞は、冠動脈内皮細胞である。更に、本発明との使用に適切な別の種類の血管内皮細胞としては、肺動脈内皮細胞、腸骨動脈内皮細胞がある。
【0034】
別の現在好適な実施形態においては、適切な内皮細胞は、非血管組織から取得することができる。非血管組織は、本明細書の他の部分で説明するような任意の管状解剖学的構造体から導出することができるか、または、任意の非血管組織前駆細胞または器官から導出することができる。
【0035】
本明細書中で企図される場合、管状解剖学的構造体とは、内腔表面および外腔表面を有するものである。本発明の目的のために、外腔または非管腔表面とは、管状解剖学的構造体の外側表面であり得るが、これに限定されない。特定の構造において、内腔表面は内皮細胞層であり;特定の他の構造において、内腔表面は、非内皮細胞層である。
【0036】
更に別の実施形態においては、内皮細胞は、血管内皮前駆細胞または幹細胞から導出することができ、尚も別の実施形態においては、内皮細胞は一般的に、前駆細胞または幹細胞から導出することができる。他の好適な実施形態においては、細胞は、血管組織または非血管組織または器官から導出される、非内皮の同種異形細胞、異種細胞、自己細胞とすることができる。また、本発明は、遺伝子学的に変更、改変、または加工される前出細胞のいずれも企図している。
【0037】
更なる実施形態においては、本発明の組成物を形成するために2つまたはそれ以上の種類の細胞が共培養される。例えば、第1の細胞を生体適合性移植可能な材料に導入して、融合するまで培養することができる。第1の細胞型としては、平滑筋細胞、線維芽細胞、幹細胞、内皮前駆細胞、平滑筋細胞と線維芽細胞の組み合わせ、任意の他の所望の細胞型、または、内皮細胞成長を助長する環境の創出に適切な所望の細胞型の組み合わせを挙げることができる。第1の細胞型が融合に到達すると、第2の細胞型が、生体適合性マトリクス内、生体適合性マトリクス上、または生体適合性マトリクスの範囲内で第1の融合細胞型上に播種され、第1の細胞型と第2の細胞型が融合に到達するまで培養される。第2の細胞型としては、例えば、内皮細胞または任意の他の所望の細胞型または細胞型の組み合わせを挙げることができる。第1及び第2の細胞型を段階的に、または、単一の混合体として導入することができることが企図されている。また、平滑筋細胞と内皮細胞の比率を変えるために細胞密度を改変することができることが企図されている。
【0038】
平滑筋細胞または過度の増殖になりやすい別の細胞型の過剰増殖を防止するために、培養法を改変することができる。例えば、第1の細胞型の融合後、培養体に、第2の細胞型導入前に第2の細胞型に適切な付着因子を被覆することができる。例示的な付着因子としては、内皮細胞の付着を向上させるために行われるゼラチンでの培養体の被覆がある。別の実施形態によれば、第2の細胞型培養中にヘパリンを培地に添加して、第1の細胞型の増殖を低減し、かつ、所望の第1の細胞型と第2の細胞型の比率を最適化することができる。例えば、平滑筋細胞の初期成長後、ヘパリンを投与して、平滑筋細胞の成長を抑制して、より大きな内皮細胞と平滑筋細胞の比率を達成することができる。
【0039】
好適な実施形態においては、共培養体の形成は、まず、生体適合性移植可能な材料に平滑筋細胞を播種して血管構造体を形成することによって行われる。平滑筋細胞が融合に到達すると、移植可能な材料上の培養平滑筋細胞上に内皮細胞を播種して、擬似血管を形成する。本明細書で説明する方法に従ってこの実施形態を、例えば、AV移植片または末梢バイパス移植片に投与すると、プロテーゼ移植片材料の整合を促進することができる。
【0040】
本発明の組成物の細胞に必要なのは、1つまたはそれ以上の好適な表現型または機能特性を示すことである。本明細書で先述したように、本発明は、好適なマトリクス(本明細書の他の部分で説明)と関連づけられたときに容易に特定可能な表現型を有する細胞は、動静脈瘻または動静脈移植片などの血管アクセス構造体の処置に関連した血管内皮細胞の生理機能および内腔ホメオスタシス、もしくは血管内皮細胞の生理機能または内腔ホメオスタシスを助長し、回復し、かつ、他の方法で調節するか、もしくは、助長するか、回復するか、かつ、他の方法で調節することができるという発見事項に基づくものである。
【0041】
本発明の目的上、本発明の細胞の特色を示す1つの当該好適な、容易に特定可能な表現型は、以下で説明する体外分析で判断されるような平滑筋細胞の増殖を抑制するかまたは他の方法で妨げることができる点である。これは、本明細書では抑制性表現型という。
【0042】
本発明の組成物の細胞によって示される別の容易に特定可能な表現型は、抗血栓性であるか、または、血小板付着または凝集を抑制することができるという点である。抗血栓性作用は、以下で説明する体外ヘパラン硫酸分析および体外血小板凝集分析、もしくは体外ヘパラン硫酸分析または体外血小板凝集分析で判断することができる。
【0043】
本発明の一般的な具体実施形態においては、細胞は、前出の表現型のうち、2つ以上を示さなくてもよい。特定の実施形態においては、細胞は、前出の表現型のうち、2つ以上を示すことができる。
【0044】
前出の表現型は、各々、血管内皮細胞(であるがこれに限定されない)など、機能的内皮細胞の典型であるが、上記の表現型を示す非内皮細胞は、本発明の目的上、内皮的であり、したがって、本発明との使用に適切であると考えられる。内皮的である細胞は、本明細書では、内皮細胞の機能的類似体または内皮細胞の機能的模倣体ともいう。したがって、一例のみとして、本明細書で開示する材料および方法との使用に適切な細胞としては、内皮的細胞を生じる幹細胞または前駆細胞、元は非内皮細胞であるが本明細書で定めるパラメータを使用して機能的に内皮細胞的に機能する細胞、本明細書で定めるパラメータを使用して内皮的な機能性を有するように加工または他の方法で改変される任意の起源の細胞がある。
【0045】
一般的に、本発明の細胞は、融合、近融合、または融合後の集団内にあってかつ本明細書の別の部分で説明するものなどの好適な生体適合性マトリクスと関連づけられたときに前出の表現型の1つまたはそれ以上を示す。当業者によって認識されるように、細胞の融合、近融合、または融合後の集団は、様々な手法によって容易に特定可能であり、様々な手法のうち最も一般的でありかつ広く容認されているものは、直接鏡検である。その他には、血球計または自動血球計数装置など(であるがこれらの限定されない)の標準細胞数算定法を用いて細胞数/表面積の評価がある。
【0046】
更に、本発明の目的上、内皮的細胞としては、本明細書で定めるパラメータによって判断されるような融合、近融合、または融合後の内皮細胞を機能的および表現型的にエミュレートする、または模倣する細胞があるが、これらに限定されない。
【0047】
したがって、以下に定める詳細な説明および手引きを用いて、当業者である施術者は、本明細書で開示する移植可能な材料の具体実施形態を形成、使用、試験、および特定する方法を認識するであろう。即ち、本明細書で提示する教示内容では、本発明の移植可能な材料の形成および使用に必要な全てが開示されている。また、更に、本明細書で提示する教示内容では、動作面で均等な細胞含有組成物の特定、形成および使用に必要な全てが開示されている。根本的には、必要なのは、均等な細胞含有組成物が本明細書で開示する方法に従って血管アクセス構造体を処置するのに有効であることである。熟練施術者によって理解されるように、本発明の組成物の均等な実施形態は、本明細書で提示する教示内容と共に通常の実験のみを用いて特定することができる。
【0048】
特定の好適な実施形態においては、本発明の移植可能な材料で使用される内皮細胞は、ヒトの死体ドナーの大動脈から単離される。細胞の各ロットは、内皮細胞清潔度、生物学的機能、細菌、カビ、公知のヒト病原体および他の偶発性物質の存在について広範囲に試験された単一のまたは複数のドナーから導出される。細胞は、生体適合性移植可能な材料におけるその後の形成に備えて、培養におけるその後の伸長に向けて周知の手法を用いて凍結保存されて貯蔵される。
【0049】
細胞調製:上述したように、適切な細胞は、様々な組織型および細胞型から取得することができる。特定の好適な実施形態においては、本移植可能な材料において使用されるヒト大動脈内皮細胞は、死体ドナーの大動脈から単離される。他の実施形態においては、ブタ大動脈内皮細胞(Cell Applications、カリフォルニア州サンディエゴ)は、ヒト大動脈内皮細胞の単離に使用されるのと類似の手順によって正常なブタ大動脈から単離される。細胞の各ロットは、内皮細胞生存力、清潔度、生物学的機能、マイコプラズマ、細菌、カビ、酵母、公知のヒト病原体および他の偶発性物質の存在について広範囲に試験された単一のまたは複数のドナーから導出される。細胞は更に、
培養におけるその後の伸長に向けて、および、生体適合性移植可能な材料におけるその後の調製に向けて、周知の手法を用いて、伸長され、特徴づけられて、3回から6回の通過で作業用細胞バンクを調製するために凍結保存される。
【0050】
ヒトまたはブタ大動脈内皮細胞の調製は、フラスコ当たり約15mlの内皮細胞成長培地の添加で予め準備されたT−75フラスコ内で行われる。ヒト大動脈内皮細胞は、Endothelial Growth Media(EGM−2、Cambrex Biosciences、ニュージャージ州イーストラザーフォード)で調製される。EGM−2は、2%FBSを含むEGM−2 Singlequotsで補足されたEndothelial Cell Basal Media(EBM−2、Cambrex Biosciences)からなる。ブタ細胞は、5% FBSと50μg/mlゲンタミシンとで補足されたEBM−2で調製される。フラスコを、約37℃、5%CO/95%空気、90%湿度にて維持された培養器内に30分間設置する。細胞の1つまたは2つのバイアルを−160℃から−140℃の冷凍装置から取り出して、約37℃で解凍する。各バイアルの解凍した細胞を2つのT−75フラスコ内に約3x10細胞/cm、好ましくは1.0x10を上回るが7.0x10を下回る密度で播種して、細胞が入ったフラスコを培養器に戻す。約8時間から24時間後、使用済み培地を取り出して新しい培地と交換する。培地は、細胞が約85%から100%の融合、好ましくは、60%を上回るが100%を上回らない融合に到達するまで、2日から3日毎に変える。移植可能な材料が臨床的用途を目的としたとしたものであるとき、抗生物質なしの培地のみが、ヒト大動脈内皮細胞の解凍後の培養体内で、かつ、本発明の移植可能な材料の製造において使用される。
【0051】
その後、内皮細胞成長培地を取り出して、細胞の単層を10mlのHEPES緩衝食塩水(HEPES)で洗浄処理する。HEPESを取り除いて、2mlのトリプシンを加えて、細胞をT−75フラスコから脱離させる。脱離が行われたら、3mlのトリプシン中和液(TNS)を加えて酵素反応を停止させる。更に、5mlのHEPESを加えて、血球計を使用して細胞数を数える。細胞浮遊を遠心分離処理して、ヒト細胞の場合には、抗生物質なしでEGM−2を使用して約1.75x10個のセル、ブタ細胞の場合には、5%FBSと50μg/mlゲンタミシンで補足されたEBM−2を使用して約1.50x10個の細胞/mlの密度に調整する。
【0052】
生体適合性マトリクス:本発明によれば、本移植可能な材料は、生体適合性マトリクスを含む。本マトリクスは、細胞の成長および本マトリクスへの、本マトリクス上で、または本マトリクス内での付着に対して許容状態である。本マトリクスは、可撓性でありかつ順応するものである。本マトリクスは、中実、半中実、または流動性多孔質構成体とすることができる。本発明の目的上、流動性構成体とは、針、注射器、またはカテーテルなど(であるがこれらの限定されない)の注入または注入タイプの供給装置を用いて投与しやすい構成体である。押出し、射出または放出を採用する他の供給装置も、本明細書で企図されている。多孔質マトリクスが好適である。好適な流動性構成体は、形状保持構成体である。また、本マトリクスは、可撓性平面形態の形とすることができる。また、本マトリクスは、ゲル、泡、懸濁液、粒子、マイクロキャリア、マイクロカプセル、または繊維構造体の形とすることができる。現在好適なマトリクスは、粒子性形態を有する。
【0053】
本マトリクスは、例えば、血管の外面上に移植されたとき、生体分解する前に、少なくとも約56日から84日間、好ましくは少なくとも約7日、更に好ましくは少なくとも約14日、最も好ましくは少なくとも約28日、移植部位に在することができる。
【0054】
1つの好適なマトリクスは、Gelfoam(登録商標)(Pfizer、ニューヨーク州ニューヨーク)、つまり、吸収可能なゼラチンスポンジ(以下、「Gelfoamマトリクス」)である。Gelfoamマトリクスは、特殊処理精製ブタ真皮ゼラチン溶液から形成された多孔質可撓性外科用スポンジである。
【0055】
別の実施形態によれば、本生体適合性マトリクス材料は、改質マトリクス材料である。本マトリクス材料の種々の改質事項を選択して、細胞が本マトリクスと関連づけられたときに、上述したような細胞の表現型(例えば、抑制表現型)を含め、細胞の機能を最適化および制御、もしくは最適化または制御することができる。1つの実施形態によれば、本マトリクス材料の改質事項には、平滑筋細胞増殖を抑制し、炎症を減らし、ヘパラン硫酸生成を増大し、プロスタサイクリン生成を増大し、および、TGF−β生成を増大するか、もしくは、平滑筋細胞増殖を抑制するか、炎症を減らすか、ヘパラン硫酸生成を増大するか、プロスタサイクリン生成を増大するか、または、TGF−β1生成を増大する細胞の能力を高める付着因子または接着ペプチドを本マトリクスに被覆することが含まれる。例示的な付着因子としては、例えば、フィブロネクチン、フィブリン・ゲル、標準的水性カルボジイミド化学反応を利用した共有付着細胞接着リガンド(例示的なRGDを含む)がある。更なる細胞接着リガンドとしては、RGDY、REDVY、GRGDF、GPDSGR、GRGDY、REDVを含むがこれらに限定されない細胞接着認識配列を有するペプチドがある。
【0056】
別の実施形態によれば、本マトリクスは、Gelfoam以外のマトリクスである。更なる例示的なマトリクス材料としては、例えば、フィブリン・ゲル、アルギン酸塩、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムマイクロキャリア、コラーゲン被覆デキストラン・マイクロキャリア、PLA/GPAおよびpHEMA/MMA共重合体(各共重合体について1%から100%の範囲のポリマー率にて)がある。好適な実施形態によれば、これらの更なるマトリクスは、上記記載しかつ説明するように、付着因子または接着ペプチドを含むように改質される。例示的な付着因子としては、例えば、ゼラチン、コラーゲン、フィブロネクチン、フィブリン・ゲル、標準的水性カルボジイミド化学反応を利用した共有付着細胞接着リガンド(RGDを含む)がある。更なる細胞接着リガンドとしては、RGDY、REDVY、GRGDF、GPDSGR、GRGDY、REDVを含むがこれらに限定されない細胞接着認識配列を有するペプチドがある。
【0057】
移植可能な材料の実施形態:上述のように、本発明の移植可能な材料は、可撓性の平面形態であるか、または流動性組成物であり得る。可撓性の平面形態の場合は、それは、種々の形状およびサイズ(好ましくは、疾患部位において、疾患部位に隣接して、または疾患部位の近くに配置された場合に、血管または管状構造体の外形の外面に適合するような形状およびサイズ)を想定する。この様式における使用のために適した好ましい構成の例は、係属中の出願PCT/US__________(代理人整理番号ELV−002PCとしても知られる)に開示される。その全内容が、本明細書中で参考として援用される。
【0058】
流動性組成物:本明細書で企図されている特定の実施形態においては、本発明の移植可能な材料は、微粒子生体適合性マトリクスを含む流動性組成物である。血管の内部長のナビゲーションによるか、または、経皮的な局所的投与による腔内(脈管間)投与が可能な注入可能なタイプの供給装置との使用に向けた一切の非中実流動性組成物が、本明細書で企図されている。本流動性組成物は、形状保持組成物であることが好ましい。したがって、本明細書で企図されているような流動性タイプの微粒子マトリクス内、流動性タイプの微粒子マトリクス上、または流動性タイプの微粒子マトリクスの範囲内に細胞を含む移植可能な材料は、内径が約22ゲージから約26ゲージの範囲であるとともに、約1mlから約3mlで好ましくは約100万個の細胞を含む微粒子材料を含む約50mgの流動性組成物を供給することができる任意の注入可能な供給装置での使用に向けて形成することができる。
【0059】
現在好適な実施形態によれば、本流動性組成物は、Gelfoam(登録商標)粒子、Gelfoam(登録商標)粉体、微粉砕Gelfoam(登録商標)((Pfizer Inc.、ニューヨーク州ニューヨーク)(以下、「Gelfoam粒子」)、ブタ真皮ゼラチンから導出された製品などの生体適合微粒子マトリクスを含む。別の実施形態によれば、微粒子マトリクスは、架橋結合デキストランのマトリクスに結合された変性コラーゲンで構成された、Cytodex−3(Amersham Biosciences、ニュージャージ州Piscataway)マイクロキャリアである。本発明に従うプラーク疾患の発症および/または進行を処置、管理および/または軽減するための使用に適した、関連する流動性組成物は、係属中の出願PCT/US__________(代理人整理番号ELV−002PCとしても知られる)に開示される。その全内容が、本明細書中で参考として援用される。
【0060】
代替実施形態によれば、生体適合移植微粒子マトリクスは、改質生体適合性マトリクスである。改質事項としては、移植マトリクス材料に関して先述したものがある。
【0061】
移植可能な材料の調製:細胞播種の前に、生体適合性材料を、約37℃、5%CO/95%空気で12時間〜24時間、抗生物質なしでEGM−2の添加によって再水和する。移植可能な材料を、次いで、その再水和容器から取り出し、個々の組織培養皿に入れる。生体適合性材料を、約1.5〜2.0×10細胞(1.25〜1.66細胞/基質のcm)の好ましい密度で播種し、約37℃、5%CO/95%空気、90%湿度に維持したインキュベーターに3〜4時間入れ、細胞接着を促進させる。播種した基質を、次いで、個々の容器(Evergreen,Los Angels,CA)チューブに入れ、EGM−2の0.2μmフィルターを有するキャップで各々閉じ、約37℃、5%CO/95%空気でインキュベートする。その後、細胞がコンフルエントになるまで、培地を2日〜3日ごとに交換する。1つの好ましい実施形態における細胞は6継代目であるが、より少ない継代またはより多い継代もまた使用され得る。本発明のさらなる実施形態に従う、さらなる移植可能な材料の調製プロトコールは、係属中のPCT/US________(代理人整理番号ELV−00__としても知られる)に開示されている。その内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0062】
細胞成長曲線およびコンフルエント:移植可能な材料の試料を3日または4日、6日または7日、9日または10日、12日または13日前後に取り出して、成長特性を評価し、かつ、コンフルエント、ほぼコンフルエント、またはコンフルエント後に到達したか否か判断するために、細胞数を数えて、生存可能であるか査定し、成長曲線を作成して評価する。ブタ大動脈内皮細胞移植ロットを含む移植可能な材料の2つの形成例からの代表的な成長曲線を図3Aおよび図3Bに示す。これらの例においては、移植可能な材料は、可撓性平面形態である。一般的に、当業者は、初期時点(図3Aを参照すると、約2日から6日の間)、次いで、ほぼコンフルエント段階(図3Aを参照すると、約6日から8日の間)、次いで、細胞がコンフルエントに到達した後の細胞数の平坦域(図3Aを参照すると、約8日から10日の間)での細胞数の増加の観察および細胞がコンフルエント後であるとき(図3Aを参照すると、約10日から14日の間)の細胞数の維持など、初期、中期、後期時点での問題のない細胞成長の兆候を認識するであろう。本発明の目的上、少なくとも72時間平坦域にある細胞集団が好ましい。
【0063】
細胞計数は、トリプシン−EDTA溶液中での0.8mg/mlコラゲナーゼ溶液での一定分量の移植可能な材料の完全な分離によって達成される。分離移植可能な材料の容積を測定後、公知の容積の細胞浮遊を0.4%トリパンブルー(4:1の細胞とトリパンブルーの比率)で希釈して、生存率をトリパンブルー排除によって査定する。血球計を使用して生存可能細胞、生存不可能細胞、総細胞数を数え上げる。生存可能細胞数と培養日数をプロットして成長曲線を作成する。細胞は、送出されてコンフルエントに到達した後に移植される。
【0064】
本発明の目的上、コンフルエントとは、移植可能な材料の可撓性平面形態(1.0x4.0x0.3cm)時にて少なくとも約4x10個の細胞/cm、好ましくは約7x10から1x10個の総細胞数、好ましくは、生体適合内時にて約7x10から1x10個の総細胞数/一定分量(50mgから70mg)の存在と定義されている。その両方について、細胞生存率は、少なくとも約90%、好ましくは80%を下回らないほどである。細胞が12日または13日までにコンフルエントしなかった場合、培地を変えて、培養を更に1日続行する。このプロセスをコンフルエントに到達するまで、または、播種後14日まで続行する。14日目に、細胞がコンフルエントしなかった場合、ロットを破棄する。細胞がプロセス内チェックを行ってから細胞がコンフルエントしていると判断された場合、最終培地交換を行う。この最終培地交換は、フェノールレッドなしかつ抗生物質なしでEGM−2を使用して行う。培地交換直後に、チューブには、送出用無菌プラグシールキャップが取り付けられる。
【0065】
機能および特性の評価:本明細書で説明する本発明の目的上、移植可能な材料は、更に、移植前に機能性の兆候がないか試験される。例えば、ならし培地を培養期間中に回収して、培養内皮細胞によって生成される成長因子−β(TGF−β)、基本線維芽細胞増殖因子(b−FGF)、窒素酸化物を変換してヘパラン硫酸のレベルを確かめる。特定の好適な実施形態においては、移植可能な材料が本明細書で説明する目的に使用することができるのは、総細胞数が少なくとも約2x10個の細胞/cm、好ましくは、可撓性平面形態の少なくとも約4x10個の細胞/cm、生存可能細胞の割合が少なくとも約80%から90%、好ましくは≧90%、最も好ましくは少なくとも約90%、ならし培地中のヘパラン硫酸が少なくとも約0.5microg/10個の細胞/日から1.0microg/10個の細胞/日、好ましくは少なくとも約1.0microg/10個の細胞/日のときである。ならし培地中のTGF−βは、少なくとも約200picog/ml/日から300picog/ml/日、好ましくは少なくとも約300picog/ml/日、ならし培地中のb−FGFは、約200picog/ml未満、好ましくはわずか約400picog/mlである。
【0066】
ヘパラン硫酸レベルは、通常のジメチルメチレン・ブルーコンドロイチナーゼABC分離分光光度計検定を用いて計ることができる。全硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)レベルの判断は、回収培地中で希釈した公知の量の精製コンドロイチン硫酸を使用して生成した標準的曲線と未知の試料を比較するジメチルメチレンブルー(DMB)色素結合検定を用いて行う。DMB発色試薬の添加前にコンドロイチンおよびデルマタン硫酸を分離するようにならし培地の更なる試料をコンドロイチナーゼABCと混合させる。一般的に515nmから525nmであるGAG標準と混合させたDMB色素の最大波長吸収度にて全ての吸収度を判断する。ヘパラン硫酸/10個の細胞/日の濃度の計算は、方法としては、ならし培地試料中の全硫酸化グリコサミノグリカン濃度からコンドロイチンおよびデルマタン硫酸の濃度を差し引く。コンドロイチナーゼABC活性は、精製コンドロイチン硫酸の試料を分離することとで確認する。ならし培地試料は、分離量が精製コンドロイチン硫酸の100%未満であった場合は妥当に補正する。また、ヘパラン硫酸レベルは、単クローン抗体を採用するELISA検定を用いて計ることができる。
【0067】
TGF−βレベルおよびb−FGFレベルは、単クローン抗体または多クローン抗体、好ましくは多クローンを採用するELISA検定を用いて計ることができる。また、調製回収培地は、ELISA検定を用いて計ることができ、試料は、調製培地に存在するTGF−βレベルおよびb−FGFレベルについて妥当に補正することができる。
【0068】
窒素酸化物(NO)レベルは、標準的なGries反応検定を用いて計ることができる。窒素酸化物の性質が過渡的かつ揮発性であるために、大半の検出方法には不適切なものとなっている。しかしながら、窒素酸化物の2つの安定した分解生成物、硝酸塩(NO)および亜硝酸塩(NO)は、通常の分光法を用いて検出することができる。Gries反応検定では、硝酸還元酵素がある場合には亜硝酸塩が硝酸塩に酵素によって変換される。亜硝酸塩は、約540nmの範囲の可視光を吸収する着色アゾ染料生成物として比色分析で検出される。システム中に存在する窒素酸化物のレベルの判断は、全ての亜硝酸塩を硝酸塩に変換し、未知の試料中の亜硝酸塩の総濃度を判断し、その後、亜硝酸塩に変換された硝酸塩の公知の量を用いて生成された標準的な曲線と結果的に得られる亜硝酸塩濃度を標準的な曲線と比較することで行う。
【0069】
先述した好適な抑制表現型の評価は、上述した定量的ヘパラン硫酸検定、TGF−β検定、NOおよびb−FGF検定、もしくはヘパラン硫酸検定、TGF−β検定、NOまたはb−FGF検定、ならびに、以下のような平滑筋細胞成長および血栓症抑制の定量的体外検定を用いて行う。本発明の目的上、移植可能な材料は、これらの代替体外検定の1つまたはそれ以上によって移植可能な材料が好適な抑制表現型を示していると確認されたときに移植準備完了状態である。
【0070】
体外で平滑筋細胞成長の抑制を評価するために、培養内皮細胞に関連した抑制の大きさを判断する。平滑筋細胞成長培地(SmGM−2、Cambrex Bioscience)中で24穴組織培養プレート内にブタ大動脈平滑筋細胞またはヒト大動脈平滑筋細胞をまばらに播種する。細胞を24時間かけて自然付着させる。その後、48時間から72時間かけて、培地を、0.2%FBSを含む平滑筋細胞基本培地(SmBM)と入れ換えて細胞の成長を抑止する。ならし培地をコンフルエント後の内皮細胞培養液から形成し、2X SMC成長培地と1:1で希釈して、培養液に加える。平滑筋細胞成長抑制の正の制御が、各検定において含まれる。3日から4日後、コールターカウンタを使用して各試料内の細胞数を数え上げる。平滑筋細胞増殖に対するならし培地の効果の判断は、ならし培地の添加直前のウェル当たりの平滑筋細胞数を、3日から4日間ならし培地と調製培地(成長因子の有無を問わず標準的な成長培地)とに晒した後のウェル当たりの平滑筋細胞数を比較することで行う。ならし培地試料に関連した抑制の大きさを正の制御に関連した抑制の大きさと比較する。好適な実施形態によれば、移植可能な材料は、ヘパラン制御が可能である抑制の約20%をならし培地が示した場合には抑制力があるみなされる。
【0071】
体外で血栓症を評価するために、培養内皮細胞にかけたヘパラン硫酸のレベルを判断する。ヘパラン硫酸は、抗増殖性特性も抗血栓性特性も有する。通常のジメチルメチレン・ブルーコンドロイチナーゼABC分離分光光度計検定またはELISA検定を用いて(両検定は、詳細に先に説明)、10個の細胞当たりのヘパラン硫酸の濃度を計算する。ならし培地中のヘパラン硫酸が少なくとも約0.5microg/10個の細胞/日から1.0microg/10個の細胞/日、好ましくは少なくとも約1.0microg/10個の細胞/日であるとき、本明細書で説明する目的に向けて移植可能な材料を使用することができる。
【0072】
血栓症の抑制を評価する別の方法では、多血小板血漿に関連した体外にて血小板凝集能の抑制の大きさを判断する。室温でクエン酸ナトリウムをブタ血液試料に添加してブタ血漿を取得する。緩やかな速度で、遠心分離機でクエン酸塩添加血漿を分離させて、赤血球および白血球を小球状にすると、血漿中に浮遊する血小板が残る。コンフルエント後の内皮細胞培養液からならし培地を形成して、一定分量の多血小板血漿に添加する。血小板凝集剤(作用薬)を対照として血漿に添加する。血小板作用薬としては、一般に、アラキドン酸、ADP、コラーゲン、エピネフリン、リストセチン(ミズーリ州セントルイスのSigma−Aldrich Co.より販売)がある。更なる一定分量の血漿では、基線自然血小板凝集について評価するために血小板作用薬またはならし培地は添加されない。また、血小板凝集の正の制御は、各検体に含められる。血小板凝集抑制の例示的な正の制御としては、アスピリン、ヘパリン、アブシキマブ(ReoPro(登録商標)、Eli Lilly、インディアナ州インディアナポリス)、チロフィバン(Aggrastat(登録商標)、Merck & Co.、Inc.、ニュージャージ州ホワイトハウスステーション)、またはエプチフィバチド(Integrilin(登録商標)、Millennium Pharmaceuticals, Inc.、マサチューセッツ州ケンブリッジ)がある。その後、全ての試験条件の結果的に得られる血小板凝集を、血小板凝集計を使用して測定する。血小板凝集計は、光学的密度をモニタすることで血小板凝集を測定するものである。血小板が凝集するにつれて、試料を通過することができる光が増える。血小板凝集計は、「血小板凝集単位」、つまり、血小板が凝集する速度の関数での結果を知らせる。凝集能の判断は、作用薬添加後6分にて最大凝集能と評価される。血小板凝集に対するならし培地の効果は、ならし培地添加前の基線血小板凝集をならし培地を正の制御と多血小板血漿が晒された後の基線血小板凝集と比較することで行う。結果は、基線の百分率で表される。ならし培地試料に関連した抑制の大きさを正の制御に関連した抑制の大きさと比較する。好適な実施形態によれば、移植可能な材料は、ならし培地が正の制御が可能である制御の約20%を示した場合には抑制力があるとみなされる。
【0073】
移植に対して準備完了状態であるとき、可撓性平面形態を含む本移植可能な材料は、各々が、好ましくは、cm当たり、約45mlから60ml、好ましくは約50mlで、好ましくは約5x10個の細胞/cmから8x10個の細胞/cm、好ましくは少なくとも約4x10個の細胞/cm、少なくとも90%生存可能細胞、例えば、単一の死体ドナー株から導出されたヒト大動脈内皮細胞、内皮成長培地(例えば、フェノールレッドおよび抗体を含まない内皮成長培地(EGM−2))を有する1x4x0.3cm(1.2cm)無菌部片を含む最終製品容器で供給される。また、ブタ大動脈内皮細胞が使用されるとき、成長培地は、フェノールレッドを含まないが5%FBSおよび50μg/mlゲンタミシンで補足されるEBM−2である。
【0074】
他の好適な実施形態においては、流動的な特定の形態を含む移植可能な材料は、例えば、各々が、好ましくは、約45mlから60ml、好ましくは一定分量当たり約50mlの内皮成長培地中に約7x10から約1x10個の総内皮細胞数が移植された約50mgから60mgの微粒子材料を含む、フィルタキャップまたは予め装荷された注射器で改変された密封組織培養容器を含む、最終製品容器で供給される。
【0075】
移植可能な材料の保存期間:コンフルエント、ほぼコンフルエント、またはコンフルエント後の細胞集団を含む本移植可能な材料は、室温で安定した生存可能な状態で少なくとも2週間維持することができる。当該移植可能な材料は、更なるFBSの有無を問わず、約45mlから60mlで、更に好ましくは50ml、輸送培地内で維持されることが好ましい。輸送培地は、フェノールレッドなしでEGM−2を含む。FBSは、最大約10%または総濃度約12FBSまで、輸送培地の容積に添加することができる。しかしながら、FBSは移植前に本移植可能な材料から取り出さなければならないために、輸送培地内で使用されるFBSの量を制限して移植前に必要とされる洗浄処理長を短縮することが好適である。
【0076】
移植可能な材料の凍結保存:コンフルエント細胞集団を含むコンフルエント移植可能な材料は、完全解凍時に臨床的潜在性または完全性を減じることなく、保存および診療所への輸送、もしくは保存または診療所への輸送に向けて凍結保存することができる。本移植可能な材料は、15mlのクライオバイアル(Nalgene(登録商標)、Nalge Nunc Int’l、ニューヨーク州ロチェスター)内に、約10%のDMSO、約2%から8%のDextranおよび約50%から75%のFBSを含む約5mlのCryoStor CS−10溶液(BioLife Solutions、ニューヨーク州オズウィーゴ)で凍結保存することが好ましい。クライオバイアルは、低温イソプロパノール水槽内に入れ、80℃冷凍装置に移送して4時間、その後に、液体窒素(−150℃から−165℃)に移送する。
【0077】
冷凍保存した一定分量単位の本移植可能な材料は、その後、室温で約15分間、次いで、更に約15分間、室温水槽内でゆっくりと解凍する。本移植可能な材料は、その後、約15mlの洗浄液で約3回洗浄する。洗浄液は、フェノールレッドはなく、50μg/mlのゲンタミシンを有するEBMを含む。最初の2回の洗浄工程は、室温で約5分間行う。最後回の洗浄工程は、5%CO中で37℃にて約30分間行う。
【0078】
解凍および洗浄処置後に、解凍保存材料を約10mlの回復液中で約48時間自然放置する。ブタ内皮細胞の場合、回復液は、5%COで37℃にて5%FBSおよび50μg/mlのゲンタミシンで補足されたEBM−2である。ヒト内皮細胞の場合、回復液は、抗生物質がないEGM−2である。保存または輸送に向けて使用および梱包前、もしくは使用または梱包前に、更なる解凍後の状態調整を少なくとも更に24時間実行することができる。
【0079】
移植直前に、培地を別の容器に移し、移植可能な材料を約250mlから500mlの殺菌生理食塩水(USP)で洗浄する。最終製品容器内の培地は、必要であれば臨床現場に輸送中に細胞生存率を維持するために少量のFBSを含む。FBSは、表題9CFR:動物および動物製品、に従って細菌、カビ、他のウィルス性因子の存在について広範囲にわたって試験済みである。洗浄処置は、移植直前に採用し、これによって、移送されたFBSの量が好ましくはインプラント当たり0ngから60ng/に減じられる。
【0080】
ヒト患者の総細胞負荷は、好ましくは約1.6x10個の細胞/kg体重から2.6x10個の細胞/kg体重であるが、約2x10個の細胞/kg体重を上回り、また、わずか2x10個の細胞/kg体重であると考えられる。
【0081】
移植可能な材料の投与:本発明の移植可能な材料は、流動性組成物に含まれると、生体適合性微粒子基質及び細胞、好ましくは内皮細胞、より好ましくは血管内皮細胞を含み、この場合、該細胞は、約0.8×10細胞/mg、より好ましくは約1.5×10細胞/mg、最も好ましくは約2×10細胞/mgの好ましい密度で、約90%が生存可能であり、又、ヘパラン硫酸を少なくとも約0.5〜1.0マイクログラム/10細胞/日、好ましくは少なくとも約1.0マイクログラム/10細胞/日で、TGF−βを少なくとも約200〜300ピコグラム/ml/日、好ましくは少なくとも約300ピコグラム/ml/日で、b−FGFを約200ピコグラム/ml未満、好ましくは約400ピコグラム/ml未満で含有する馴化培地を産生することができ、且つ、先に記載した阻害性表現型を示すことができる。
【0082】
一般的に本発明において、移植可能な微粒子材料の投与は、プラーク疾患の近くにおける、該疾患に隣接する、又は該疾患の部位に限局化される。移植可能な材料の沈着部位は管腔外である。本明細書で想定されるように、限局された管腔外の沈着は、以下のように達成することができる。
【0083】
特に好ましい実施形態では、該流動性組成物が、最初に、適切な針、カテーテル又はその他の適切な経皮送達デバイスを使用して、経皮投与され、血管周囲腔に進入し、その後、管腔外部位に沈着される。或いは、該流動性組成物は、針、カテーテル又はその他の適切な送達デバイスを、所望の管腔外部位への送達を容易にする同定工程と併せて使用して経皮送達される。該同定工程は、経皮送達の前又は該送達と同時に行うことができる。該同定工程は、幾つかの例を挙げると、血管内超音波検査、その他の日常的な超音波検査、透視検査及び/又は内視鏡検査の方法を使用して達成することができる。該同定工程は、必要に応じて行われ、本発明の方法を実施するために必須のものではない。
【0084】
該流動性組成物は又、管腔内、即ち血管内に投与することもできる。例えば、該組成物は、血管内に挿入することが可能な任意のデバイスによって送達することができる。この場合、当該管腔内送達デバイスは、血管の管腔壁を横断又は貫通して、血管の非管腔面に達する横断又は貫通デバイスを備える。次いで、該流動性組成物を、プラーク負荷部位における、該部位に隣接する、又は該部位の近くにおける血管の非管腔面に沈着させる。
【0085】
本明細書では、管腔外面とも称される非管腔面が、脈管の外面又は血管周囲面であってもよければ、血管の外膜、中膜又は内膜の内部にあってもよいことが想定される。本発明において、非管腔又は管腔外とは、管腔の内面を除いた任意の面である。
【0086】
本明細書で想定される横断又は貫通デバイスは、例えば、単一の送達ポイント、又は所望の幾何学的構造にて構成された複数の送達ポイントにて、プラークに関連した病変を破壊することなく、血管の非管腔面に流動性組成物を送達することが可能となる。複数の送達ポイントは、幾つかの例を挙げると、例えば、円形、ブルズアイ、又は線状配列にて配列することができる。横断又は貫通デバイスは又、例えば、複数の送達ポイントを含むバルーンステントのようなステント穿孔器の形態であってもよい。
【0087】
本発明の好ましい実施形態によれば、貫通デバイスが、プラーク関連病変部位の近位又は遠位の何れかの血管の管腔内面を介して挿入される。一部の臨床対象では、プラーク関連病変部位における貫通デバイスの挿入によって、病変の破壊又は破裂をもたらす可能性がある。従って、当該対象においては、プラークから一定の距離を置いた位置、好ましくは当面の特定の状況によって左右される臨床医によって決定される距離を置いた位置に貫通デバイスを挿入するように、注意する必要がある。
【0088】
好ましくは、流動性組成物が、処置する病変部位においる、該部位に隣接する、又は該部位の近くにおける血管の血管周囲面に沈着される。該組成物は、プラーク関連病変に関連した広範な位置、例えば、該病変に、該病変に隣接して、例えば、該病変の上流に、該病変の反対側の脈管外面に沈着されてもよい。好ましい実施形態によれば、隣接部位が、プラーク関連病変部位の約2mm〜約20mmの範囲内にある。別の好ましい実施形態では、部位が約21mm〜約40mmの範囲内にあり;更に別の好ましい実施形態では、部位が約41mm〜約60mmの範囲内にある。別の好ましい実施形態では、部位が約61mm〜約100mmの範囲内にある。或いは、隣接部位が、該沈着組成物が血管に対する所望の効果をプラーク関連病変の近傍で示すことができる、臨床医が決定したその他何れかの隣接位置となる。
【0089】
別の実施形態では、該流動性組成物が、プラーク疾患部位における、該部位に隣接する、又は該部位の近くにおける、手術によって露出させた管腔外部位に直接送達される。この場合、送達は、該部位を直接観察することによって誘導及び指向される。又この場合、送達は、前述の同定工程と同時に使用することによって補助されてもよい。繰り返しになるが、該同定工程は必要に応じて行われる。
【0090】
本発明の別の実施形態によれば、移植可能な材料の可撓性の平面形態が、プラーク疾患部位における、該部位に隣接する、又は該部位の近くにおける、手術によって露出させた管腔外部位に局所送達される。一つの場合では、少なくとも1片の移植可能な材料が、移植可能な材料の一方の末端を脈管の下に通すことによって所望の部位に適用される。次いで、両端が、移植可能な材料を中心に保持したまま、脈管の周りに巻きつけられる。該両端は、材料を所定の位置で固定するために互いに重ね合わせる。他の場合では、移植可能な材料は、脈管の周囲を完全に包む必要がない。例えば、脈管の外面に合わせ、該外面を接触させ、罹患部位を処置する上で有効な量で移植されることだけが必要であるにすぎない。
【実施例】
【0091】
1.プラーク侵食
White Carneauとして知られるハトモデル(Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 23: 535−42 (2003);J. Hered. 92: 439−42 (2001);Atherosclerosis 65: 29−35 (1987);Arch. Pathol. Lab. Med. 102: 581−6 (1978))を、本発明の組成物及び方法を使用して、プラーク侵食等のプラーク疾患の処置及び管理を実証するために試験する。自然発生プラーク保有動物を、標準的な技法、例えば、血管造影法、サーモグラフィー、血管内超音波検査法、及び/又はタンパク質分解活性を測定するNIS分光法によって同定する。二つの動物群を同じように維持するが、一方の群は有効量の移植可能な材料を受容する。プラーク侵食等のプラーク疾患の低減及び/又は改善を、一定の時間にわたり監視する。本発明の材料及び方法により処置されるハトでは、大動脈及びその周囲における少なくともプラーク侵食の低減及び/又は改善が示されることが期待される。
【0092】
別の動物モデルであるTg53ラット(Mol. Med. 7: 831−44 (2001))を、本発明の組成物及び方法を使用して、プラーク侵食等の冠動脈疾患の処置及び管理を実証するために試験する。前記モデルは又、ヒトのプラーク疾患の特徴及び不均一性を繰り返すその他のプラーク関連現象、例えば、プラーク炎症、基質分解、アポトーシス、血管新生、血栓症及び出血を試験するためにも使用される。プラーク保有動物を、血管造影法、サーモグラフィー、血管内超音波検査法、及び/又はタンパク質分解活性を測定するプローブによって同定する。二つの動物群を同じように維持するが、一方の群は有効量の移植可能な材料を受容する。プラーク侵食及び冠動脈疾患のその他の徴候の低減及び/又は改善を、一定の時間にわたり監視する。本発明の材料及び方法により処置されるラットでは、冠動脈におけるプラーク侵食及び冠動脈疾患の低減及び/又は改善が示されることが期待される。
【0093】
2.プラーク亀裂
Tg53ラット(Mol. Med. 7: 831−44 (2001)を、本発明の組成物及び方法を使用して、プラーク侵食等の冠動脈疾患の処置及び管理を実証するために試験する。前記モデルは又、ヒトのプラーク疾患の特徴及び不均一性を繰り返すその他のプラーク関連現象、例えば、プラーク炎症、基質分解、アポトーシス、血管新生、血栓症及び出血を試験するためにも使用される。プラーク保有動物を、血管造影法、サーモグラフィー、血管内超音波検査法、及び/又はタンパク質分解活性を測定するプローブによって同定する。二つの動物群を同じように維持するが、一方の群は有効量の移植可能な材料を受容する。プラーク亀裂及び冠動脈疾患のその他の徴候の低減及び/又は改善を、一定の時間にわたり監視する。本発明の材料及び方法により処置されるラットでは、冠動脈におけるプラーク亀裂及び冠動脈疾患の低減及び/又は改善が示されることが期待される。
【0094】
プラークの亀裂等のプラーク疾患を試験するための別のモデルには、FHC(高LDL血症ブタ)(Ann. N Y Acad. Sci. 748: 283−92 (1995))がある。前記モデルは又、心筋梗塞等の冠動脈疾患の進行を試験するためにも使用することができる。前記モデルを、本発明の組成物及び方法を使用して、プラークの亀裂等のプラーク疾患及び冠動脈疾患の処置及び管理を実証するために試験する。プラーク保有動物を、血管造影法、サーモグラフィー、血管内超音波検査法、及び/又はタンパク質分解活性を測定するプローブによって同定する。二つの動物群を同じように維持するが、一方の群は有効量の移植可能な材料を受容する。プラーク亀裂及び疾患進行の低減及び/又は改善を、一定の時間にわたり監視する。本発明の材料及び方法により処置されるブタでは、プラークの亀裂等のプラーク疾患の低減及び/又は改善、並びに、冠動脈疾患の徴候(例えば、壊死性コア病変、線維性被膜、石灰化、血管新生、出血及び亀裂形成)の発生率の低下が示されることが期待される。
【0095】
3.プラーク出血
Tg53ラット(Mol. Med. 7: 831−44 (2001))を、本発明の組成物及び方法を使用して、プラーク出血等の冠動脈疾患の処置及び管理を実証するために試験する。前記モデルは又、ヒトのプラーク疾患の特徴及び不均一性を繰り返すその他のプラーク関連現象、例えば、プラーク炎症、基質分解、アポトーシス、血管新生、血栓症及び出血を試験するためにも使用される。プラーク保有動物を、血管造影法、サーモグラフィー、血管内超音波検査法、及び/又はタンパク質分解活性を測定するプローブによって同定する。二つの動物群を同じように維持するが、一方の群は有効量の移植可能な材料を受容する。プラーク出血及び冠動脈疾患のその他の徴候の低減及び/又は改善を、一定の時間にわたり監視する。本発明の材料及び方法により処置されるラットでは、冠動脈におけるプラーク出血及び冠動脈疾患の低減及び/又は改善が示されることが期待される。
【0096】
プラーク出血等のプラーク疾患を試験するための他のモデルには、FHC(高LDL血症ブタ)(Ann. N Y Acad. Sci. 748: 283−92 (1995))がある。前記モデルは又、心筋梗塞等の冠動脈疾患の進行を試験するために使用することができる。前記モデルを、本発明の組成物及び方法を使用して、プラーク疾患及びプラーク侵食等の冠動脈疾患の処置及び管理を実証するために試験する。プラーク保有動物を、血管造影法、サーモグラフィー、血管内超音波検査法、及び/又はタンパク質分解活性を測定するプローブによって同定する。二つの動物群を同じように維持するが、一方の群は有効量の移植可能な材料を受容する。プラーク出血及び疾患進行の低減及び/又は改善を、一定の時間にわたり監視する。本発明の材料及び方法により処置されるブタでは、プラーク出血等のプラーク疾患の低減及び/又は改善、並びに冠動脈疾患の徴候(例えば、壊死性コア病変、線維性被膜、石灰化、血管新生、出血及び亀裂形成が含まれる)の発生率の低下が示されることが期待される。
【0097】
プラーク出血並びに冠動脈アテローム性動脈硬化症(CAA)を試験するための別のモデルには、アフリカミドリザル(Arterioscler. Thromb. 12: 1274−83 (1992))がある。高脂肪食餌を与えた動物を、本発明の組成物及び方法を使用して、プラーク出血並びにCAAの病因の処置及び管理を実証するために試験する。プラーク保有動物を、血管造影法、サーモグラフィー、血管内超音波検査法、及び/又はタンパク質分解活性を測定するプローブによって同定する。二つの動物群を同じように維持するが、一方の群は有効量の移植可能な材料を受容する。プラーク出血並びにCAA進行の低減及び/又は改善を、一定の時間にわたり監視する。本発明の材料及び方法により処置されるサルでは、プラーク出血の低減及び/又は改善、並びにCAAの発生率の低下が示されることが期待される。
【0098】
4.プラーク関連閉塞
Tg53ラット(Mol. Med. 7: 831−44 (2001))を、本発明の組成物及び方法を使用して、プラーク関連閉塞等の冠動脈疾患の処置及び管理を実証するために試験する。前記モデルは又、ヒトのプラーク疾患の特徴及び不均一性を繰り返すその他のプラーク関連現象、例えば、プラーク炎症、基質分解、アポトーシス、血管新生、血栓症及び出血を試験するためにも使用される。プラーク保有動物を、血管造影法、サーモグラフィー、血管内超音波検査法、及び/又はタンパク質分解活性を測定するプローブによって同定する。二つの動物群を同じように維持するが、一方の群は有効量の移植可能な材料を受容する。プラーク関連閉塞及び冠動脈疾患のその他の徴候の低減及び/又は改善を、一定の時間にわたり監視する。本発明の材料及び方法により処置されるラットでは、冠動脈におけるプラーク関連閉塞並びに冠動脈疾患の低減及び/又は改善が示されることが期待される。
【0099】
White Carneauとして知られるハトモデル(Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 23: 535−42 (2003);J. Hered. 92: 439−42 (2001);Atherosclerosis 65: 29−35 (1987);Arch. Pathol. Lab. Med. 102: 581−6 (1978))を、本発明の組成物及び方法を使用して、プラーク関連閉塞等のプラーク疾患の処置及び管理を実証するために試験する。自然発生プラーク保有動物を、標準的な技法、例えば、血管造影法、サーモグラフィー、血管内超音波検査法、及び/又はタンパク質分解活性を測定するプローブによって同定する。二つの動物群を同じように維持するが、一方の群は有効量の移植可能な材料を受容する。プラーク関連閉塞等のプラーク疾患の低減及び/又は改善を、一定の時間にわたり監視する。本発明の材料及び方法により処置されるハトでは、大動脈及びその周囲における少なくともプラーク関連閉塞の低減及び/又は改善が示されることが期待される。
【0100】
プラーク関連閉塞等のプラーク疾患を試験するための別のモデルには、FHC(高LDL血症ブタ)(Ann. N Y Acad. Sci. 748: 283−92 (1995))がある。前記モデルは又、心筋梗塞等の冠動脈疾患の進行を試験するためにも使用することができる。前記モデルを、本発明の組成物及び方法を使用して、プラーク関連閉塞等の冠動脈疾患の処置及び管理を実証するために試験する。プラーク保有動物を、血管造影法、サーモグラフィー、血管内超音波検査法、及び/又はタンパク質分解活性を測定するプローブによって同定する。二つの動物群を同じように維持するが、一方の群は有効量の移植可能な材料を受容する。プラーク関連閉塞及び疾患進行の低減及び/又は改善を、一定の時間にわたり監視する。本発明の材料及び方法により処置されるブタでは、プラーク関連閉塞等のプラーク疾患の低減及び/又は改善、並びに冠動脈疾患の徴候(例えば、壊死性コア病変、線維性被膜、石灰化、血管新生、出血及び亀裂形成)の発生率の低下が示されることが期待される。
【0101】
プラーク関連閉塞を試験するための更なるモデルには、WatanabeHHL MIウサギ(J. Atheroscler. Thromb. 11: 184‐9 (2004);Circulation 97: 2433‐44 (1998))がある。これは又、突然の心臓事象と相関する種々のプラークを示す自然発症心筋梗塞モデルでもある。前記モデルは、管腔のマクロファージ集積により引き起こされるほぼ閉塞したプラークに代表される。前記モデルを、本発明の組成物及び方法を使用して、プラーク関連閉塞及び心筋梗塞の発生の処置及び管理を実証するために試験する。プラーク保有動物を、血管造影法、サーモグラフィー、血管内超音波検査法、及び/又はマクロファージ集積及び/又はタンパク質分解活性を測定するプローブによって同定する。二つの動物群を同じように維持するが、一方の群は有効量の移植可能な材料を受容する。プラーク関連閉塞及び心筋梗塞の発生の低減及び/又は改善を、一定の時間にわたり監視する。本発明の材料及び方法により処置されるウサギでは、プラーク関連閉塞の低減及び/又は改善、並びに心筋梗塞の発生率の低下が示されることが期待される。
【0102】
5.プラーク関連血栓症
プラーク関連血栓症並びにプラークの破裂を試験するための別のモデルには、ApoE/LDLrノックアウトマウス(Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 23: 1608−14 (2003);Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 22: 788−92 (2002);Circulation 105: 2766−71 (2002))がある。当該マウスに高脂肪食餌を与えた上で、前記モデルを、本発明の組成物及び方法を使用して、プラーク関連血栓症及びプラーク破裂の処置及び管理を実証するために試験する。脂肪を与えたマウスは、破裂して管腔血栓を形成するプラーク病変を発症する。プラーク保有動物を、血管造影法、サーモグラフィー、血管内超音波検査法、及び/又はタンパク質分解活性を測定するプローブによって同定する。二つの動物群を同じように維持するが、一方の群は有効量の移植可能な材料を受容する。プラーク関連血栓症及び破裂の低減及び/又は改善を、一定の時間にわたり監視する。本発明の材料及び方法により処置されるマウスでは、プラーク関連血栓症及びプラーク破裂の低減及び/又は改善が示されることが期待される。
【0103】
Tg53ラット(Mol. Med. 7: 831−44 (2001))を、本発明の組成物及び方法を使用して、プラーク関連血栓症等の冠動脈疾患の処置及び管理を実証するために試験する。前記モデルは又、ヒトのプラーク疾患の特徴及び不均一性を繰り返すその他のプラーク関連現象、例えば、プラーク炎症、基質分解、アポトーシス、血管新生、血栓症及び出血を試験するためにも使用される。プラーク保有動物を、血管造影法、サーモグラフィー、血管内超音波検査法、及び/又はタンパク質分解活性を測定するプローブによって同定する。二つの動物群を同じように維持するが、一方の群は有効量の移植可能な材料を受容する。プラーク関連血栓症及び冠動脈疾患のその他の徴候の低減及び/又は改善を、一定の時間にわたり監視する。本発明の材料及び方法により処置されるラットでは、冠動脈におけるプラーク関連血栓症の侵食及び冠動脈疾患の低減及び/又は改善が示されることが期待される。
【0104】
6.食餌誘導による高コレステロール血症動物モデル
White New Zealandウサギ(Circulation 97: 2433−44 (1998))を、アテローム性動脈硬化の誘導モデルにおいて使用する。プラーク病変又はプラーク様病変に対する羅病性を、4週間にわたって0.2%コレステロールの食餌によって誘導する。羅病性を有する動物を、血管造影法、サーモグラフィー、血管内超音波検査法、及び/又はタンパク質分解活性を測定するプローブによって同定する。次いで、動物を、両側腸骨動脈露出手法においてバルーンカテーテルを使用して、誘導された傷害に曝す。その後、プラーク病変又はプラーク様病変の蓄積を監視する。二つの動物群を同じように維持するが、一方の群は有効量の移植可能な材料を受容する。プラーク疾患の低減及び/又は改善を、一定の時間にわたり監視する。本発明の材料及び方法により処置されるウサギでは、プラーク疾患の低減及び/又は改善が示されることが期待される。
【0105】
7.ヒト試験
これまでにACSを経験していないプラーク保有候補の集団を、例えば、先に定義した脆弱な患者に関連したマーカー等を使用して同定する。例えば、病歴を聴取することによって、脆弱な心筋について候補を同定する。候補は又、血清に存在する易損性血液マーカー、例えば、C反応性タンパク質、インターロイキン−6及び/又は接着分子等の存在についても同定する。候補の不安定プラークは又、例えば、血管造影法、サーモグラフィー、血管内超音波検査法、及び/又はタンパク質分解活性を測定するNIR分光法を使用しても同定する。
【0106】
集団を二つの群に分け、そのうちの一方の群が、有効量の本発明の移植可能な材料を受容する。プラーク疾患の範囲及び重症度の低減及び/又は改善を、血管造影法、サーモグラフィー、血管内超音波検査法、及び/又はタンパク質分解活性を測定するプローブを使用して、一定の時間にわたり監視する。又、ACSの発生率について前記群を比較する。本発明の材料及び方法により処置される候補では、プラーク疾患の低減及び/又は改善が示され、且つ、処置候補の方がACSの発生率が低いことが期待される。
【0107】
ACSの発症を少なくとも1度経験するプラーク保有候補の集団も又同定する。集団を二つの群に分け、そのうちの一方の群が、有効量の本発明の移植可能な材料を受容する。プラーク疾患の範囲及び重症度の低減及び/又は改善を、例えば、血管造影法、サーモグラフィー、血管内超音波検査法、及び/又はタンパク質分解活性を測定するプローブ等を使用して、一定の時間にわたり監視する。又、ACSの臨床的続発症、例えば心筋梗塞の発生率について前記群を比較する。本発明の材料及び方法により処置される候補では、プラーク疾患の低減及び/又は改善が示され、且つ、処置候補の方が続発症、例えば心筋梗塞の発生率が低いことが期待される。
【0108】
本発明は、その趣旨又は本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具体化される場合がある。従って、本実施形態は限定のためではなく、説明のためのものと考え、本発明の範囲は、前記の説明によらず、不随する特許請求の範囲により示されると考えるべきであり、特許請求範囲の意味及び等価の範囲内に含まれる変更は全て、本発明の範囲内に包含されるものとして意図される。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】図1A及び図1Bは、本発明の例示的実施形態による代表的な細胞増殖曲線である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラーク負荷部位を処置する方法であって、血管の管腔内側上の、該プラーク負荷部位における、該部位に隣接する、又は該部位の近くにおける該血管の外面を、移植可能な材料と接触させる工程を含み、ここで該移植可能な材料は、生体適合性基質及び細胞を含み、該移植可能な材料は、該プラーク負荷部位を処置する上で有効な量である、方法。
【請求項2】
前記有効量により、前記プラーク負荷部位におけるプラーク出血が低減される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有効量により、前記プラーク負荷部位におけるプラーク亀裂が低減される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記有効量により、前記プラーク負荷部位におけるプラーク関連血栓症が低減される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記有効量により、前記プラーク負荷部位におけるプラーク侵食が低減される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記有効量により、前記プラーク負荷部位におけるプラーク関連閉塞が低減される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記有効量により、前記プラーク負荷部位におけるプラークの転移又は移動が低減される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
プラーク疾患を処置する方法であって、血管の管腔内側上の病変における、該病変に隣接する、又は該病変の近くにおける該血管の外面を、移植可能な材料と接触させる工程を含み、ここで該移植可能な材料は生体適合性基質及び細胞を含み、該移植可能な材料は、プラーク疾患を処置する上で有効な量である、方法。
【請求項9】
急性冠症候群を処置する方法であって、血管の管腔内側上のプラーク負荷部位における、該部位に隣接する、又は該部位の近くにおける該血管の外面を、移植可能な材料と接触させる工程を含み、ここで該移植可能な材料は生体適合性基質及び細胞を含み、該移植可能な材料は、急性冠症候群に関連する心臓事象の発生率を低下させる上で有効な量である、方法。
【請求項10】
不安定プラークに関連する臨床的続発症を減少させる方法であって、血管の管腔内側上のプラーク負荷部位における、該部位に隣接する、又は該部位の近くにおける該血管の外面を、移植可能な材料と接触させる工程を含み、ここで該移植可能な材料は生体適合性基質及び細胞を含み、該移植可能な材料は、不安定プラークに関連する臨床的続発症を減少させる上で有効な量であり、該臨床的続発症が、急性冠症候群、心筋梗塞、突発性心臓死からなる群より選択される、方法。
【請求項11】
前記移植可能な材料の沈着が、前記血管の内壁を横断又は貫通し、その後、該移植可能な材料を前記プラーク負荷部位に、該部位に隣接して、又は該部位の近くに沈着させることによって達成される、請求項1、8、9又は10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記移植可能な材料の沈着が、経皮投与によって血管周囲腔に進入し、その後、該移植可能な材料を前記プラーク負荷部位に、該部位に隣接して、又は該部位の近くに沈着させることによって達成される、請求項1、8、9又は10の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記移植可能な材料を前記血管の外面に沈着させる部位を同定する工程をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記同定工程が、前記横断若しくは貫通工程の前、又は横断若しくは貫通工程と同時に行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記同定工程が画像化によって達成される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記移植可能な材料を前記血管の外面に沈着させる部位を同定する工程をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記同定工程が、前記進入工程の前、又は進入工程と同時に行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記同定工程が画像化によって達成される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
請求項1、8、9又は10に記載の方法の何れか一つにおける使用に適した、移植可能な材料。
【請求項20】
可撓性の平面形態である、請求項19に記載の移植可能な材料。
【請求項21】
流動性組成物である、請求項19に記載の移植可能な材料。
【請求項22】
前記流動性組成物が形状保持特性を有する、請求項21に記載の移植可能な材料。
【請求項23】
前記細胞が、内皮細胞、又は内皮様の表現型を有する細胞である、請求項19に記載の移植可能な材料。
【請求項24】
前記細胞が、コンフルエントな細胞集団、ほぼコンフルエントな細胞集団、コンフルエント後の細胞集団、及び該細胞集団の何れか一つの表現型を有する細胞からなる群より選択される、請求項23に記載の移植可能な材料。
【請求項25】
前記血管の外面が非管腔面である、請求項1、8、9又は10の何れか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記血管の外面が血管周囲腔を占める、請求項1、8、9又は10の何れか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記移植可能な材料が流動性組成物である、請求項11又は12の何れか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記プラーク疾患がアテローム性動脈硬化に関連する、請求項8に記載の方法。
【請求項29】
前記プラークが、不安定プラーク又は安定プラークである、請求項8に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−522738(P2008−522738A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545559(P2007−545559)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/044090
【国際公開番号】WO2006/062962
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(507188913)パーバシス セラピューティクス, インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】