説明

プラーク防止性作用物質を備えた歯科材料

【課題】歯科材料上のプラークの生息を持続的に抑制し、もしくは遅延させることができるが、歯科材料の製品特性に悪影響を及ぼさない方法を提供する。
【解決手段】プラーク防止性作用物質を備えた歯科材料であって、少なくとも1つの分子分散的に分布されたオクテニジン塩もしくはデクアリニウム塩を含有することを特徴とする歯科材料によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラーク防止性作用物質を備えた歯科材料に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内で持続的に留まるポリマーの歯科材料、特にアクリレート/メタクリレートを基礎とする歯科材料は、口腔清掃が足りないと、その材料表面にプラークを生息させる傾向がある。
【0003】
プラークは、種々の細菌から構成され、該細菌が、タンパク質及び炭水化物によって、例えば歯又は歯科用材料などの表面上に固着する。前記の第一の細菌層は、次いで他の細菌を付着することがあり、それにより三次元のコロニーを形成する。該細菌から放出される特定の物質によって、この"バイオフィルム"は、抗生物質に対してほぼ耐性である。
【0004】
衛生の観点のほかに、プラークは、進行した段階において濃い変色をももたらすので、美観を損なう。
【0005】
プラーク生息の低下は、殺生剤か、又は材料上に細菌が付着することを妨げる歯科材料の疎水性被覆のいずれかによって行うことができる。
【0006】
抗微生物性添加剤として第四級アンモニウム塩を使用することは、長い間知られている。ここで、例えばMicrobeshield社によって、官能基として第四級アンモニウム基を有するシランが製造され、フィルタ、テキスタイル及び創傷の覆いの抗細菌性の仕上げのために販売されている。更に、銀含有のガラス、塩又はゼオライトが、抗微生物性の添加剤として提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US4,206,215号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】メルクインデックス第14版(2006年)、モノグラフ番号:0006754
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、歯科材料上のプラークの生息を持続的に抑制し、もしくは遅延させることができるが、歯科材料の製品特性に悪影響を及ぼさない方法を提供することである。
【0010】
この場合に、以下の核心となる要求が重要である:
− 材料(バルク)内部と材料表面上での、作用物質の均一な分布が保証されるべきであった。すなわち逆に:点状分布は回避されるべきである。
【0011】
− 該材料は、作用物質放出後に、ミクロ孔とマクロ孔を有してはならない(美観、亀裂形成、出発点及び新たな生息)。
【0012】
− 表面上での作用物質の不活性化は、内部(バルク)からの後拡散によって妨げるべきである。
【0013】
− 典型的な口内細菌に対する広い作用スペクトルが得られるように努めるべきである。
【0014】
− 作用物質は、遅延放出されるべきである。
【0015】
− 作用物質は、抗微生物性作用を与えるほど高いが、毒性作用又は刺激作用/過敏作用を生じない放出速度を有するべきである。
【0016】
− 作用物質は、生成物の重合を妨げず、又は材料特性に悪影響を与えてはならず、特に相分離(可塑剤作用)を有してはならない。
【0017】
− 作用物質に対して、典型的な口内細菌が耐性を形成することが低確率でしか起こらないべきであった。
【0018】
オクテニジン、その製造とそのプラーク防止性作用は、自体公知である(メルクインデックス第14版(2006年)、モノグラフ番号:0006754)。前記化合物は、主にマウスウォッシュ中で使用される。US4,206,215号において、そこに記載される抗微生物性作用物質を、塗料又は被覆において使用することも推奨されている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記課題は、プラーク防止性作用物質を備えた歯科材料であって、少なくとも1つの分子分散的に分布されたオクテニジン塩もしくはデクアリニウム塩を含有することを特徴とする歯科材料によって解決される。
【0020】
更に好ましい実施態様は、前記歯科材料であって前記塩が、(メタ)アクリレートを基礎とする歯科分野で慣用の1もしくは複数のモノマー中に溶解された形で存在することを特徴とする歯科材料である。
【0021】
更に好ましい実施態様は、前記歯科材料であって歯科分野で慣用の1もしくは複数のモノマーと、少なくとも1つの分子分散的に溶解されたオクテニジン塩もしくはデクアリニウム塩と、重合開始剤、安定剤及び充填剤の群からの少なくとも1つの物質とを含有する歯科材料である。
【0022】
更に好ましい実施態様は、前記歯科材料であって前記塩が、塩化物イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、脂肪酸アニオン、カルボン酸アニオン、アルキルスルホン酸及びアリールスルホン酸、アルキル硫酸イオン及びアリール硫酸イオンからなる群からの少なくとも1つのアニオンを有することを特徴とする歯科材料である。
【0023】
更に好ましい実施態様は、前記歯科材料であって前記塩が、100℃の上限までの範囲で温度安定性である歯科材料である。
【0024】
更に好ましい実施態様は、前記歯科材料であって前記塩が、少なくとも1つのラジカル重合できないアニオンを有する歯科材料である。
【0025】
更に好ましい実施態様は、前記歯科材料であって前記塩が、脂肪酸アニオン、カルボン酸アニオン、アルキルスルホン酸及びアリールスルホン酸、アルキル硫酸イオン及びアリール硫酸イオンからなる群からの少なくとも1つのアニオンを有する歯科材料である。
【0026】
更に好ましい実施態様は、前記歯科材料であって前記塩が、15〜40℃の温度範囲で歯科材料中でマイグレーション可能であることを特徴とする歯科材料である。
【0027】
更に好ましい実施態様は、前記歯科材料であって可溶性を媒介(loeslichkeitsvermittelnd)するラジカル重合可能なアニオンとの塩を含有する歯科材料である。
【0028】
更に好ましい実施態様は、前記歯科材料であって付加的に、可溶性を媒介するラジカル重合できないアニオンとの少なくとも1つのオクテニジン塩もしくはデクアリニウム塩を含有する歯科材料である。
【0029】
更に好ましい実施態様は、前記歯科材料であって前記アニオンが重合導入しうる歯科材料。
【0030】
更に好ましい実施態様は、前記歯科材料であってオクテニジン塩及び/又はデクアリニウム塩の全量が、5質量%未満であることを特徴とする歯科材料である。
【0031】
更に好ましい実施態様は、前記歯科材料であって更なる抗微生物性の成分を含有する歯科材料である。
【0032】
更に好ましい実施態様は、前記歯科材料であって前記更なる成分が、モノカチオン性の防腐剤、ジカチオン性の防腐剤、オリゴマーもしくはポリマーのカチオン性の防腐剤及び防腐性の重金属化合物からなる群に由来する歯科材料である。
【0033】
更に好ましい実施態様は、(メタ)アクリレートを基礎とする歯科材料にプラーク防止特性を付与する方法において、重合の前に、少なくとも1つのオクテニジン塩もしくはデクアリニウム塩を分子分散的に(メタ)アクリレート−モノマー中に分布させる方法である。
【0034】
この場合に、オクテニジン塩とは、CAS番号70775−75−6によるジカチオン性のビピリジニウム基本構造を有する化合物を表す。それには、化学的な基本構造の僅かな変更をも含むべきである。例えば中心のアルキル鎖(n=7〜13)の変更、末端のアルキル鎖(n=4〜12)の変更、そしてアニオンの変更も含むべきである。オクテニジン塩の代わりに、構造的に同様の構成を有するデクアリニウム塩であってもよい。
【0035】
係る塩のアニオンとしては、慣用の無機アニオンである塩化物イオン、硫酸イオン及びリン酸イオンの他に、"有機アニオン"(例えば脂肪酸アニオン、カルボン酸アニオン、アルキルスルホン酸及びアリールスルホン酸、アルキル硫酸イオン及びアリール硫酸イオン)も該当する。これらは、ラジカル重合可能ではない。そのための例は、ヘキサン酸イオン、ドデシル酸イオン、ステアリン酸イオン及びドデシル硫酸イオンである。
【0036】
係るオクテニジン塩は、歯科材料中で、ある特定の移動性/マイグレーション能(Mobilitaet/Migrationfaehigkeit)を示す。
【0037】
また、不飽和脂肪酸のラジカル重合可能なアニオン(例えばオレイン酸イオン、ソルビン酸イオン)を使用することもできる。前記のアニオンは、歯科材料の硬化時に重合導入することができ固定化され、一方で、カチオン部分は移動可能である。また、両方のグループのアニオンとの塩の組み合わせも可能である。それにより、塩もしくはカチオンのマイグレーションによる歯科材料からの放出は、種々の速度で可能となる。最後に、材料の摩耗によって、残留放出さえも可能である。
【0038】
本発明によれば、プラーク防止性作用物質を備えた歯科材料は、例えば充填用コンポジット、前装用コンポジット、補綴用材料、義歯用材料、印象材料、保護塗料、フィッシャーシーラント、セメント、接着剤又は象牙質ボンディング剤である。また、蹄材料などの獣医学用材料も該当する。
【0039】
オクテニジン塩又はデクアリニウム塩は、歯科材料において、好ましくは10質量%未満の量で、6質量%まで存在する。それは、特に作用物質放出が、毒性作用がなく、刺激作用がなく、かつ過敏作用がないが、抗微生物作用を有する量であることを意味する。更に、作用物質が嗅覚的にかつ味覚的に中性の量で放出されるように選択されるべきである。歯科材料の変色は、同様に、その量の選択によって回避されるべきである。オクテニジン塩及び/又はデクアリニウム塩は、例えば歯科材料中で、1〜6質量%、有利には3〜6質量%の量で存在する。しかし、マイグレーション能に応じて、1もしくは2質量%の量又は1もしくは2質量%までの量も十分なこともある。
【0040】
歯科材料中での重合導入のため又は均一な分布のために、該塩は、適宜、相応のモノマーもしくはモノマー混合物に添加される。好適なモノマーの例は、歯科分野で慣用のもの、例えばモノマーの(メタ)アクリレート、例えばエチレングリコールジメタクリレートEDMA、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレートTEGDMA、グリセリンジメタクリレートGDMA、グリセリントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリトリトールジメタクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ビスフェノールAの誘導体、例えばビスフェノールA−ジメタクリレート及びビスフェノールA−ジグリコールジメタクリレート、ジイソシアネート及びヒドロキシアルキルメタクリレートから得られるウレタンメタクリレート、並びにDE3703080号A1もしくはDE3703120号A1によるポリオール、ジイソシアネート及びヒドロキシアルキルメタクリレートの反応生成物;C1〜C12−、有利にはC1〜C4−アルキルメタクリレート、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピル−メタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート及びt−ブチルメタクリレート、ヒドロキシアルキル−C1〜C4−メタクリレート、例えば2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、トリエチレングリコールモノメタクリレート、アルコキシ−C1〜C4−アルキルメタクリレート、例えば2−メトキシエチルメタクリレート、3−メトキシブチルメタクリレート及びエチルトリグリコールメタクリレートである。好適なモノマーは、そのうち、それぞれモノマー自体、該モノマーから製造される重合可能なプレポリマー並びにそれらの混合物である。
【0041】
好適な充填剤は、特に石英粉及びガラスセラミック粉、酸化アルミニウム及び/又は酸化ケイ素である。それには、いわゆるマイクロフィラー(その粒子はnm範囲にある)、例えば高分散性の超微細な熱分解法シリカもしくは沈降シリカと、いわゆるマクロフィラー(その粒子はマイクロメートル範囲にある)、特に粒状シリカもしくは粉砕歯科ガラスとが該当する。前記ガラスは、ほぼ、バリウムガラス粉末、ケイ酸バリウムガラス粉末、ケイ酸リチウムガラス粉末もしくはケイ酸アルミニウムガラス粉末、有利にはバリウム、ストロンチウムもしくは希土類でドープされていてよいケイ酸アルミニウムガラスである(DE−PS2458380号を参照)。約1〜10マイクロメートルの平均粒度を有する微粉砕されたガラスもしくは石英並びに約10〜400nmの平均粒度を有する高分散性SiO2が好ましい。
【0042】
該歯科用組成物の硬化は、使用される重合開始剤の種類に応じて、熱的重合、光化学的重合又はレドックス誘導性のラジカル重合によって行うことができる。
【0043】
熱的開始剤のための有利な例は、公知のペルオキシド、例えばジベンゾイルペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、t−ブチルペルオクトエート又はt−ブチルペルベンゾエート並びにアゾビスイソブチロエチルエステル、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、ベンゾピナコール又は2,2−ジメチルベンゾピナコールである。
【0044】
有利な光開始剤は、ベンゾフェノン、ベンゾイン並びにそれらの誘導体又はα−ジケトン又はその誘導体、例えば9,10−フェナントレンキノン、ジアセチル又は4,4−ジクロロベンジルである。カンファーキノン及び2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン及び特に有利にはα−ジケトンを、還元剤としてのアミン、例えば4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸エステル、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチル−sym−キシリジン又はトリエタノールアミンと組み合わせて使用することが特に好ましい。更に、アシルホスフィン、例えば2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−又はビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−N−プロピルフェニルホスフィンオキシドも特に適している。
【0045】
室温で実施される重合用の開始剤としては、有利にはレドックス開始剤組合せ、例えばベンゾイルペルオキシド又はラウリルペルオキシドとN,N−ジメチル−sym−キシリジン又はN,N−ジメチル−p−トルイジンとの組合せが使用される。
【0046】
以下の実施例は、本発明をより詳細に説明するものである。部とパーセントの表示は、特に記載がない限り、上記の発明の詳細な説明と同様に、質量に対するものである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、作用物質を用いた場合と用いない場合での、ポリマー材料(コンポジットVenus(登録商標)、Heraeus Kulzer)に対する、動的培養(流動チャンバ)の5日後でのプラーク細菌(混合培養、5種)の付着を示している。
【実施例】
【0048】
均質に分子分散的に分布しているオクテニジン二塩酸塩を有する歯科用コンポジットの製造
オクテニジン二塩酸塩を、コンポジット中のオクテニジン二塩酸塩の最終濃度が3もしくは6質量%となる量のBis−GMA中に軽く加熱しつつ溶解させる。
【0049】
反応性希釈剤としてのTEDMA、慣用の光開始剤及び安定剤を添加し、1μm以下の粒度の歯科用ガラス65質量%を添加し、レオロジー調節のために、約8質量%の熱分解法シリカAerosil OX50を添加して、充填用コンポジットを完成させる。必要であれば、着色顔料を色の調節のために添加する。
【0050】
均質に分子分散的に分配されたオクテニジン二乳酸塩を有する歯科用コンポジットの製造
オクテニジン二乳酸塩を、UDMA、TEDMA及び脂肪族のジメタクリレートからなる混合物に、オクテニジン二乳酸塩の最終濃度が3もしくは6質量%となる量で添加する。オクテニジン二乳酸塩が完全に溶けるまで軽く加熱しつつ撹拌する。
【0051】
慣用の光開始剤及び安定剤を添加し、ケイ酸を基礎とするプレポリマー45質量%を添加し、レオロジー調節のために、種々の型のシリカ約30質量%を添加して、該コンポジットを完成させる。必要であれば、着色顔料を色の調節のために添加する。
【0052】
オクテニジン二乳酸塩の製造
100mlのメタノールを、丸底フラスコ中に入れる。相応のモル量のオクテニジン二塩酸塩を添加した後に、10分間撹拌し、そして化学量論量の乳酸銀を添加する。約60分間にわたり還流下に沸騰させ、次いで残留物を濾別し、溶剤を流出させる。
【0053】
試験体への硬化
抗微生物性の添加剤を持たせたコンポジットVenus(登録商標)(Heraeus Kulzer社)を、塗布によって鋼金型中で20mm直径と1mmの厚さの試験プレートに加工する。歯科医用ランプTranslux Energy(登録商標)(Heraeus Kulzer社)で、ISO4049からの規定に相応して照射することで、試験体を硬化させる。
【0054】
抗微生物作用の試験
以下の滅菌サンプルを、流動チャンバ(Fliesskammer)中に入れた:
作用物質を含まないVenus(登録商標)参照材料
3%の作用物質を有するVenus(登録商標)
6%の作用物質を有するVenus(登録商標)
1×チタン(対照)
引き続き、その流動チャンバを、プラーク付着試験の実施のために、新たに準備された細菌混合培養(ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、ストレプトコッカス・サングイニス(Streptococcus sanguinis)、アクチノマイセス・ビスコサス(Actinomyces viscosus)、フソバクテリウム・ヌクレアツム(Fusobacterium nucleatum)、ベイロネラ・パルブラ(Veillonella parvula))を対数増殖期で個々の細菌種の定義された割合で含有するバイオリアクターと接続した。該混合培養のインキュベーションは、連続培養操作に相応して嫌気的に37℃で、pH=7.2で、かつ5.0g/lの炭素源としてのサッカロースで実施した。蠕動ポンプによって、細菌混合培養を、流動チャンバ中に材料表面上で導いた。バイオフィルム形成の試験は、5日間の時間にわたって実施した。流動チャンバからサンプルを取り出した後に、それらのサンプルを、付着していない細菌の除去のためにすすいだ。
【0055】
分析:
サンプル表面上での細菌付着の分析は、付着した生存している微生物と死滅した微生物の選択的な蛍光染色に従って行った。
【0056】
結果:
該作用物質の添加は、付着している細菌の量に対して、特に付着している細菌ポピュレーションの生存率に対して明らかな効果を有している。図1に、作用物質を用いた場合と用いない場合での、ポリマー材料(コンポジットVenus(登録商標)、Heraeus Kulzer)に対する、動的培養(流動チャンバ)の5日後でのプラーク細菌(混合培養、5種)の付着が示されている。約80%だけの細菌数の減少が観察された。
【0057】
未変性のポリマー材料は、約50:50の生存細菌と死滅細菌の分布を有する(図1を参照)。作用物質の添加によって、その比率は、死滅細菌の方向に明らかにシフトする(10%生存、90%死滅)。そのことは、使用した添加剤の抗細菌作用についての明らかな裏付けである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラーク防止性作用物質を備えた歯科材料であって、少なくとも1つの分子分散的に分布されたオクテニジン塩もしくはデクアリニウム塩を含有することを特徴とする歯科材料。
【請求項2】
請求項1に記載の歯科材料であって、前記塩が、(メタ)アクリレートを基礎とする歯科分野で慣用の1もしくは複数のモノマー中に溶解された形で存在することを特徴とする歯科材料。
【請求項3】
請求項1に記載の歯科材料であって、歯科分野で慣用の1もしくは複数のモノマーと、少なくとも1つの分子分散的に溶解されたオクテニジン塩もしくはデクアリニウム塩と、重合開始剤、安定剤及び充填剤の群からの少なくとも1つの物質とを含有する歯科材料。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の歯科材料であって、前記塩が、塩化物イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、脂肪酸アニオン、カルボン酸アニオン、アルキルスルホン酸及びアリールスルホン酸、アルキル硫酸イオン及びアリール硫酸イオンからなる群からの少なくとも1つのアニオンを有することを特徴とする歯科材料。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の歯科材料であって、前記塩が、100℃の上限までの範囲で温度安定性である歯科材料。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の歯科材料であって、前記塩が、少なくとも1つのラジカル重合できないアニオンを有する歯科材料。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の歯科材料であって、前記塩が、脂肪酸アニオン、カルボン酸アニオン、アルキルスルホン酸及びアリールスルホン酸、アルキル硫酸イオン及びアリール硫酸イオンからなる群からの少なくとも1つのアニオンを有する歯科材料。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の歯科材料であって、前記塩が、15〜40℃の温度範囲で歯科材料中でマイグレーション可能であることを特徴とする歯科材料。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の歯科材料であって、可溶性を媒介するラジカル重合可能なアニオンとの塩を含有する歯科材料。
【請求項10】
請求項9に記載の歯科材料であって、付加的に、可溶性を媒介するラジカル重合できないアニオンとの少なくとも1つのオクテニジン塩もしくはデクアリニウム塩を含有する歯科材料。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の歯科材料であって、前記アニオンが重合導入しうる歯科材料。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項に記載の歯科材料であって、オクテニジン塩及び/又はデクアリニウム塩の全量が、5質量%未満であることを特徴とする歯科材料。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項に記載の歯科材料であって、更なる抗微生物性の成分を含有する歯科材料。
【請求項14】
請求項13に記載の歯科材料であって、前記更なる成分が、モノカチオン性の防腐剤、ジカチオン性の防腐剤、オリゴマーもしくはポリマーのカチオン性の防腐剤及び防腐性の重金属化合物からなる群に由来する歯科材料。
【請求項15】
(メタ)アクリレートを基礎とする歯科材料にプラーク防止特性を付与する方法において、重合の前に、少なくとも1つのオクテニジン塩もしくはデクアリニウム塩を分子分散的に(メタ)アクリレート−モノマー中に分布させる方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−263366(P2009−263366A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110371(P2009−110371)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(399011900)ヘレーウス クルツァー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (56)
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Kulzer GmbH 
【住所又は居所原語表記】Gruener Weg 11, D−63450 Hanau, Germany
【Fターム(参考)】