説明

プリオン増殖抑制剤

〔課題〕本発明は、低襲性で、プリオン増殖を効果的に阻害する、プリオン増殖抑制剤、BSE、クロイツフェルト−ヤコブ病等のプリオン病の予防剤又は治療剤を提供することを課題とする。
〔解決手段〕本発明に係るプリオン増殖抑制剤は、下記一般式(I)


〔上記式(I)中、R1〜R5は、明細書中のそれと同意義である。〕で表される化合物もしくはその医薬的に許容し得る塩またはこれらの水和物を有効成分として含有することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫酸化糖誘導体、その医薬的に許容し得る塩、またはこれらの水和物を含有するプリオン増殖抑制剤、該プリオン増殖抑制剤を含有するプリオン病の予防剤または治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ウシ海綿状脳症(BSE、狂牛病)やクロイツフェルト−ヤコブ病(CJD)などのプリオン病が問題となっている。BSEやCJDの原因蛋白質である異常プリオン蛋白質は、正常プリオン蛋白質が脳内でその高次構造が大きく変化することにより引き起こされる。この反応は連鎖的で、いったん異常プリオン蛋白質が形成されると、その分解速度は正常プリオン蛋白質に比べきわめて遅く、異常プリオン蛋白質が脳内に蓄積される。
したがって、正常プリオン蛋白質から異常プリオン蛋白質への移行を如何に阻害できるかが、BSEやクロイツフェルト−ヤコブ病などのプリオン病の予防または治療の観点から重要視されている。(非特許文献1、2)
【0003】
現在までにいくつかのプリオン増殖抑制効果を示す化合物が探索されているが、合成のし易さ、安定性、細胞毒性などの観点から、これまで有効な化合物は見出されていない。
たとえば、プリオンの阻害効果を示す化合物としてキナクリンが知られているが、キナクリンの場合、腎臓毒性、肝臓毒性が知られており、生体にとってより穏和な化合物の提供が必要不可欠な状況にある。特に、医薬品の開発においては、脳内に直接、投与することが可能となっているため、副作用などの軽減した化合物の探索が必要である。
【0004】
最近、ヘパラン硫酸がプリオン増殖阻害機能を持つことが報告されている(非特許文献3)。
【0005】
硫酸化糖誘導体やこれを分子内に有する高分子が、セレクチンブロッカーやウイルス阻害機能を示すことが報告されている(非特許文献4〜6)。この中で、一連の硫酸化N−アセチルグルコサミンまたはその高分子体が、ヒトインフルエンザウイルスの持つシアリダーゼに対して、高い阻害機能を有することが報告されているが、プリオン増殖の阻害効果を有することは知られていない。
【非特許文献1】Science, vol. 278, pp. 245-251 (1997)
【非特許文献2】Cell, vol. 93, pp. 337-348 (1998)
【非特許文献3】EMBO Journal, 20, 377-386 (2001)
【非特許文献4】Biomacromolecules, 1, 68-74 (2000)
【非特許文献5】ChemBioChem, 4, 640-647 (2003)
【非特許文献6】Bioorg. Med. Chem. Lett., 13, 2821-2823 (2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、低襲性で、プリオン増殖を効果的に阻害する、プリオン増殖抑制剤、BSE、クロイツフェルト−ヤコブ病等のプリオン病の予防剤又は治療剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本件発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究し、特定の糖誘導体が、低襲性で、しかも優れたプリオン増殖抑制効果を有し、BSE、クロイツフェルト−ヤコブ病などのプリオン病の予防剤または治療剤となることを見出し、本件発明を完成するに至った。特に、特定の糖鎖誘導体の高分子化合物が、顕著なプリオン増殖抑制効果を有することを見出している。すなわち、本件発明は、以下を含む。
【0008】
〔1〕
下記一般式(I)

〔式(I)中、R1は、−OH、−NHAc(式中、Acはアセチル基を示す。)または−NHSO3Hを示し;
2〜R4はそれぞれ独立に、水素原子または−SO3Hを示し;
2、R3およびR4のうちの少なくとも1つが−SO3Hであるか、または、R2、R3およびR4が全て水素原子のときR1は−NHSO3Hを示し;
5は、置換基を有していてもよいC1~6アルキル基、置換基を有していてもよいC2~6アルケニル基、置換基を有していてもよいC2~6アルキニル基、または置換基を有していてもよいC6~10アリール基を示し;
式中、結合

は、エクアトリアル配置またはアキシャル配置のいずれかの配置であることを示す。〕で表される化合物もしくはその医薬的に許容し得る塩またはこれらの水和物を有効成分として含有するプリオン増殖抑制剤。
〔2〕
前記R2、R3およびR4のうちの一つが−SO3Hであり、残りの二つが−Hである、〔1〕に記載のプリオン増殖抑制剤。
〔3〕
前記R1が、−NHSO3Hであり、前記R2、R3およびR4が−Hである、〔1〕に記載のプリオン増殖抑制剤。
〔4〕
前記R5が、置換基を有していてもよいC1~6アルキル基または置換基を有していてもよいC6~10アリール基である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のプリオン増殖抑制剤。
〔5〕
−R1と−OR3とがグルコ配置、ガラクト配置またはマンノ配置のいずれか1つの配置である、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のプリオン増殖抑制剤。
〔6〕
1が−NHAcまたは−NHSO3Hであり、−R1と−OR3とがグルコ配置またはガラクト配置である、〔5〕に記載のプリオン増殖抑制剤。
〔7〕
1が−NHAcまたは−NHSO3Hであり、−R1と−OR3とがグルコ配置またはガラクト配置であり、R3またはR4が−SO3Hである、〔2〕に記載のプリオン増殖抑制剤。
〔8〕
−R1と−OR3とがグルコ配置またはガラクト配置である、〔3〕に記載のプリオン増殖抑制剤。
〔9〕
前記一般式(I)で表される化合物が、
(1)R1=−NHAc、R2=R4=H、R3=−SO3H、R5=−C64−pNO2または−C64−pNHAcであり、−R1と−OR3とがグルコ配置(−R1と−OR3とがエクアトリアル配置)である化合物、
(2)R1=−NHSO3H、R2=R3=H、R4=SO3H、R5=−C64−pNO2または−C64−pNHAcであり、−R1と−OR3とがグルコ配置(−R1と−OR3とがエクアトリアル配置)である化合物、
(3)R1=−NHSO3H、R2=R4=H、R3=SO3H、R5=−C64−pNO2または−C64−pNHAcであり、−R1と−OR3とがグルコ配置(−R1と−OR3とがエクアトリアル配置)である化合物、
(4)R1=−NHAc、R2=R3=H、R4=SO3H、R5=−C64−pNO2または−C64−pNHAcであり、−R1と−OR3とがガラクト配置(−R1がエクアトリアル配置、−OR3がアキシャル配置)である化合物、
(5)R1=−NHAc、R2=R4=H、R3=SO3H、R5=−C64−pNO2または−C64−pNHAcであり、−R1と−OR3とがガラクト配置(−R1がエクアトリアル配置、−OR3がアキシャル配置)である化合物、
(6)R1=−NHAc、R2=SO3H、R3=R4=H、R5=−C64−pNO2または−C64−pNHAcであり、−R1と−OR3とがガラクト配置(−R1がエクアトリアル配置、−OR3がアキシャル配置)である化合物、
(7)R1=−NHAc、R2=R3=H、R4=SO3H、R5=−C64−pNO2または−C64−pNHAcであり、−R1と−OR3とがマンノ配置(−R1がアキシャル配置、−OR3がエクアトリアル配置)である化合物、
(8)R1=−NHAc、R3=SO3H、R2=R4=H、R5=−C64−pNO2または−C64−pNHAcであり、−R1と−OR3とがマンノ配置(−R1がアキシャル配置、−OR3がエクアトリアル配置)である化合物、
(9)R1=−NHAc、R2=SO3H、R3=R4=H、R5=−C64−pNO2または−C64−pNHAcであり、−R1と−OR3とがマンノ配置(−R1がアキシャル配置、−OR3がエクアトリアル配置)である化合物、および
(10)R1=−NHSO3H、R2=R3=R4=H、R5=−C64−pNO2または−C64−pNHAcであり、−R1と−OR3とグルコ配置(−R1と−OR3とがエクアトリアル配置)である化合物、からなる群から選ばれるいずれか一つである、〔1〕に記載のプリオン増殖抑制剤。
〔10〕
下記一般式(II)

〔式(II)中、R1は、−OH、−NHAc(式中、Acはアセチル基を示す。)または−NHSO3Hを示し;
2〜R4はそれぞれ独立に、水素原子または−SO3Hを示し;
2〜R4はそれぞれ独立に、水素原子または−SO3Hを示し;
2、R3およびR4のうちの少なくとも1つが−SO3Hであるか、または、R2、R3およびR4が全て水素原子のときR1は−NHSO3Hを示し;
−A−B−において、Aは炭素原子数1〜6のアルキレン基、フェニレン基またはエチレンオキシ基((C24O)m)(mは1〜10の整数)を示し、Bは単結合、アミド結合、カルボン酸エステル結合またはスルホンアミド結合を示し;
式中、結合

は、エクアトリアル配置またはアキシャル配置のいずれかの配置であることを示す。〕で表される糖鎖含有基の少なくとも1つが、ポリマー鎖に結合した高分子化合物もしくはその医薬的に許容し得る塩またはこれらの水和物を有効成分として含有する、プリオン増殖抑制剤。
〔11〕
前記Aが炭素原子数1〜6のアルキレン基、前記Bが単結合である、〔10〕に記載のプリオン増殖抑制剤。
〔12〕
前記Aがフェニレン基、Bがアミド結合、カルボン酸エステル結合またはスルホンアミド結合である、〔10〕に記載のプリオン増殖抑制剤。
〔13〕
前記ポリマー鎖が、下記一般式(III)

(式(III)中、Y1、Y2、Y3、Y4はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいC1-6アルキル基、置換基を有していてもよいC2-6アルケニル基、置換基を有していてもよいC2-6アルキニル基、置換基を有していてもよいC6-10アリール基、アミド基、カルボン酸エステル基またはスルホンアミド基を示し、nは1〜5000の整数を示し、/は構成成分が任意の割合で存在することを示す。)で表される、〔10〕〜〔12〕のいずれかに記載のプリオン増殖抑制剤。
〔14〕
前記Y1、Y2のいずれか一方が水素原子またはC1-6アルキル基であり、他の一方が置換基を有していてもよいC1-6アルキル基、置換基を有していてもよいC2-6アルケニル基、置換基を有していてもよいC2-6アルキニル基、置換基を有していてもよいC6-10アリール基、アミド基、カルボン酸エステル基またはスルホンアミド基であり、前記Y3、Y4が水素原子である、〔10〕に記載のプリオン増殖抑制剤。
〔15〕
2、R3およびR4のうちの一つが−SO3Hであり、残りの二つが−Hである、〔10〕〜〔14〕のいずれかに記載のプリオン増殖抑制剤。
〔16〕
−R1と−OR3とが、グルコ配置、ガラクト配置またはマンノ配置のいずれか1つの配置である、〔10〕〜〔15〕のいずれかに記載のプリオン増殖抑制剤。
〔17〕
1が−NHAcまたは−NHSO3Hであり、−R1と−OR3とがグルコ配置である、〔10〕〜〔16〕のいずれかに記載のプリオン増殖抑制剤。
〔18〕
1が−OHであり、−R1と−OR3とがガラクト配置である、〔10〕〜〔16〕のいずれかに記載のプリオン増殖抑制剤。
〔19〕
前記一般式(II)で表される化合物が、下記式(IV)

〔式(IV)中、R2、R3およびR4は、いずれか一つが−SO3Hであり、残りが水素原子であり、nは1〜5000の整数を示し、/は構成成分が任意の割合で存在することを示す。〕である、〔10〕に記載のプリオン増殖抑制剤。
〔20〕
前記一般式(II)で表される化合物が、下記式(V)

〔式(V)中、nは1〜5000の整数を示し、/は構成成分が任意の割合で存在することを示す。〕である、〔10〕に記載のプリオン増殖抑制剤。
〔21〕
前記−A−B−ポリマー鎖が、下記式

〔式中、nは1〜5000の整数を示し、/は構成成分が任意の割合で存在することを示す。〕で表され、
前記糖鎖含有基において、R1、R2、R3、R4が、
(101)R1=−NHAc、R2=R3=H、R4=−SO3Hであり、−R1と−OR3とがグルコ配置(−R1と−OR3とがエクアトリアル配置)、
(102)R1=−NHAc、R2=R4=H、R3=−SO3Hであり、−R1と−OR3とがグルコ配置(−R1と−OR3とがエクアトリアル配置)、
(103)R1=−NHAc、R2=−SO3H、R3=R4=Hであり、−R1と−OR3とグルコ配置(−R1と−OR3とがエクアトリアル配置)、または
(104)R1=−NHSO3H、R2=R3=H、R4=−SO3Hであり、−R1と−OR3とがグルコ配置(−R1と−OR3とがエクアトリアル配置)、
(105)R1=−NHAc、R2=R4=H、R3=−SO3Hであり、−R1と−OR3とがガラクト配置(−R1がエクアトリアル配置で、−OR3がアキシャル配置)、
(106)R1=−NHAc、R2=R3=H、R4=−SO3Hであり、−R1と−OR3とがガラクト配置(−R1がエクアトリアル配置で、−OR3がアキシャル配置)、
(107)R1=−NHSO3H、R2=R4=H、R3=−SO3Hであり、−R1と−OR3とがグルコ配置(−R1と−OR3とがエクアトリアル配置)、
(108)R1=−NHSO3H、R2=R4=H、R3=−SO3Hであり、−R1と−OR3とがガラクト配置(−R1がエクアトリアル配置で、−OR3がアキシャル配置)、
(109)R1=−NHSO3H、R2=R3=H、R4=−SO3Hであり、−R1と−OR3とがガラクト配置(−R1がエクアトリアル配置で、−OR3がアキシャル配置)、または、
(110)R1=−NHAc、R2=H、R3=R4=−SO3Hであり、−R1と−OR3とがガラクト配置(−R1がエクアトリアル配置で、−OR3がアキシャル配置)である、〔10〕に記載のプリオン増殖抑制剤。
〔22〕 〔1〕〜〔21〕のいずれかに記載のプリオン増殖抑制剤からなる、プリオン病の予防剤または治療剤。
〔23〕 前記プリオン病が、ウシ海綿状脳症(BSE)、クロイツフェルト−ヤコブ病、孤発性クロイツフェルト−ヤコブ病(sCJD)、変異クロイツフェルト−ヤコブ病(vCJD)、医原性クロイツフェルト−ヤコブ病(iCJD)、家族性クロイツフェルト−ヤコブ病(fCJD)、ゲルストマン-ストライスラー−シャインカー症候群(GSS)、致死性家族性不眠症(FFI)、慢性消耗病(CWD)、ネコ海綿状脳症、スクレイピーまたはクールーである、〔22〕に記載のプリオン病の予防剤または治療剤。
〔24〕 下記一般式(I)

〔式(I)中、R1は、−OH、−NHAc(式中、Acはアセチル基を示す。)または−NHSO3Hを示し;
2〜R4はそれぞれ独立に、水素原子または−SO3Hを示し;
2、R3およびR4のうちの少なくとも1つが−SO3Hであるか、または、R2、R3およびR4が全て水素原子のときR1は−NHSO3Hを示し;
5は、置換基を有していてもよいC1~6アルキル基、置換基を有していてもよいC2~6アルケニル基、置換基を有していてもよいC2~6アルキニル基、または置換基を有していてもよいC6~10アリール基を示し;
式中、結合

は、エクアトリアル配置またはアキシャル配置のいずれかの配置であることを示す。〕で表される化合物もしくはその医薬的に許容し得る塩またはこれらの水和物を有効成分として含有する医薬組成物を用いる、プリオン増殖抑制が有効な疾患の予防または治療方法。
〔25〕 プリオン増殖抑制が有効な疾患の予防剤または治療剤の製造のための、下記一般式(I)

〔式(I)中、R1は、−OH、−NHAc(式中、Acはアセチル基を示す。)または−NHSO3Hを示し;
2〜R4はそれぞれ独立に、水素原子または−SO3Hを示し;
2、R3およびR4のうちの少なくとも1つが−SO3Hであるか、または、R2、R3およびR4が全て水素原子のときR1は−NHSO3Hを示し;
5は、置換基を有していてもよいC1~6アルキル基、置換基を有していてもよいC2~6アルケニル基、置換基を有していてもよいC2~6アルキニル基、または置換基を有していてもよいC6~10アリール基を示し;
式中、結合

は、エクアトリアル配置またはアキシャル配置のいずれかの配置であることを示す。〕で表される化合物もしくはその医薬的に許容し得る塩またはこれらの水和物の使用。
〔26〕 〔1〕〜〔21〕のいずれかに記載のプリオン増殖抑制剤を含有する、脳内投与薬剤、経口投与薬剤、または非経口投与薬剤。
〔27〕 〔1〕〜〔21〕のいずれかに記載のプリオン増殖抑制剤を含有する、異常プリオン蛋白質洗浄液。
〔28〕 〔1〕〜〔21〕のいずれかに記載のプリオン増殖抑制剤を含有する、脳内埋め込み型高分子材料。
【0009】
以下に、本明細書において記載する用語、記号等の意義を説明し、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本明細書中においては、化合物の構造式が便宜上一定の異性体を表すことがあるが、特に断りがない限り、本発明には化合物の構造上生ずる総ての幾何異性体、不斉炭素に基づく光学異性体、立体異性体、互変異性体等の異性体および異性体混合物を含み、便宜上の式の記載に限定されるものではなく、いずれか一方の異性体でも混合物でもよい。従って、本発明の化合物には、分子内に不斉炭素原子を有し光学活性体およびラセミ体が存在することがありうるが、本発明においては限定されず、いずれもが含まれる。また、結晶多形が存在することもあるが同様に限定されず、いずれかの結晶形が単一であっても結晶形混合物であってもよい。本発明にかかる化合物には無水物と水和物とが包含される。さらに、本発明に係る化合物は他のある種の溶媒を吸収した溶媒和物を包含する。またさらに、本発明にかかる化合物が生体内で分解されて生じる、いわゆる代謝物も本発明の請求の範囲に包含される。
【0011】
本明細書における「C1~6アルキル基」とは、炭素数1〜6個の脂肪族炭化水素から任意の水素原子を1個除いて誘導される一価の基である、炭素数1〜6個の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を意味し、具体的には例えば、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、2−メチル−1−プロピル基、2−メチル−2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、1−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、2−メチル−1−ブチル基、3−メチル−1−ブチル基、2−メチル−2−ブチル基、3−メチル−2−ブチル基、2,2−ジメチル−1−プロピル基、1−へキシル基、2−へキシル基、3−へキシル基、2−メチル−1−ペンチル基、3−メチル−1−ペンチル基、4−メチル−1−ペンチル基、2−メチル−2−ペンチル基、3−メチル−2−ペンチル基、4−メチル−2−ペンチル基、2−メチル−3−ペンチル基、3−メチル−3−ペンチル基、2,3−ジメチル−1−ブチル基、3,3−ジメチル−1−ブチル基、2,2−ジメチル−1−ブチル基、2−エチル−1−ブチル基、3,3−ジメチル−2−ブチル基、2,3−ジメチル−2−ブチル基等があげられる。
【0012】
本明細書における「C2-6アルケニル基」とは、炭素数2〜6個の直鎖状または分枝鎖状のアルケニル基を意味し、具体的には例えば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等があげられる。
【0013】
本明細書における「C2-6アルキニル基」とは、炭素数2〜6個の直鎖状または分枝鎖状のアルキニル基を意味し、具体的には例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基等があげられる。
【0014】
本明細書中における「C6-10アリール基」とは、炭素数6〜10の芳香族性の炭化水素環式基をいい、具体的には例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが挙げられる。
【0015】
本明細書における「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を意味する。
【0016】
本明細書における「C1-6アルコキシ基」とは前記定義の「C1-6アルキル基」が結合したオキシ基であることを意味する。
具体的には例えば、メトキシ基、エトキシ基、1−プロピルオキシ基、2−プロピルオキシ基、2−メチル−1−プロピルオキシ基、2−メチル−2−プロピルオキシ基、1−ブチルオキシ基、2−ブチルオキシ基、1−ペンチルオキシ基、2−ペンチルオキシ基、3−ペンチルオキシ基、2−メチル−1−ブチルオキシ基、3−メチル−1−ブチルオキシ基、2−メチル−2−ブチルオキシ基、3−メチル−2−ブチルオキシ基、2,2−ジメチル−1−プロピルオキシ基、1−へキシルオキシ基、2−へキシルオキシ基、3−へキシルオキシ基、2−メチル−1−ペンチルオキシ基、3−メチル−1−ペンチルオキシ基、4−メチル−1−ペンチルオキシ基、2−メチル−2−ペンチルオキシ基、3−メチル−2−ペンチルオキシ基、4−メチル−2−ペンチルオキシ基、2−メチル−3−ペンチルオキシ基、3−メチル−3−ペンチルオキシ基、2,3−ジメチル−1−ブチルオキシ基、3,3−ジメチル−1−ブチルオキシ基、2,2−ジメチル−1−ブチルオキシ基、2−エチル−1−ブチルオキシ基、3,3−ジメチル−2−ブチルオキシ基、2,3−ジメチル−2−ブチルオキシ基等があげられる。
【0017】
本明細書における「アシル基」とは、−CORで表される基であり、Rとしては、C1~6アルキル基、C2~6アルケニル基、C2~6アルキニル基、またはC6~10アリール基が挙げられる。Rで示される基は、下記A群の置換基を有していてもよい。
【0018】
<置換基A群>
ハロゲン原子、水酸基、C1~6アルコキシ基、メルカプト基、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、カルボキシル基、アシル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、アミノ基、C1~6アルキルアミノ基、硫酸アミノ基、アシルアミノ基、オキソ基、およびイミノ基。
【0019】
本明細書における「C1-6アルキルアミノ基」とは、アミノ基の1または2つの水素原子を、前記C1-6アルキル基で置換した基を意味する。
【0020】
本明細書における「硫酸アミノ基」とは、アミノ基の1または2つの水素原子を、硫酸基−SO3Hで置換した基を意味する。
【0021】
本明細書における「アシルアミノ基」とは、アミノ基の1または2つの水素原子を、前記アシル基で置換した基を意味する。
【0022】
本明細書における「置換基を有していてもよい」とは、置換可能な部位に、任意に組み合わせて1または複数個の置換基を有してもよいことを意味する。当該置換基とは具体的には例えば、以下の置換基A群から選ばれる基をあげることができる。
【0023】
<置換基A群>
ハロゲン原子、水酸基、C1~6アルコキシ基、メルカプト基、ニトロ基、シアノ基、ホルミル基、カルボキシル基、アシル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、アミノ基、C1~6アルキルアミノ基、硫酸アミノ基、アシルアミノ基、オキソ基、およびイミノ基。
【0024】
これらの置換基のうちでは、水酸基、C1~6アルコキシ基、ニトロ基、カルボキシル基、アミノ基、C1~6アルキルアミノ基、硫酸アミノ基、およびアシルアミノ基から選ばれる少なくとも1つが好ましい。
【0025】
「置換基を有していてもよいC1~6アルキル基」におけるより好ましい置換基としては、水酸基、C1~6アルコキシ基などが挙げられる。
【0026】
「置換基を有していてもよいC2~6アルケニル基」におけるより好ましい置換基としては、水酸基、C1~6アルコキシ基などが挙げられる。
【0027】
「置換基を有していてもよいC2~6アルキニル基」におけるより好ましい置換基としては、水酸基、C1~6アルコキシ基などが挙げられる。
【0028】
「置換基を有していてもよいC6~10アリール基」におけるより好ましい置換基としては、ニトロ基、アミノ基、C1~6アルキルアミノ基、硫酸アミノ基、およびアシルアミノ基が挙げられる。
【0029】
本明細書における「塩」とは、本発明に係る化合物と塩を形成し、かつ薬理学的に許容されるものであれば特に限定されず、例えば、無機酸塩、有機酸塩、無機塩基塩、有機塩基塩、酸性または塩基性アミノ酸塩などがあげられる。
【0030】
無機酸塩の好ましい例としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などがあげられ、有機酸塩の好ましい例としては、例えば酢酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、ステアリン酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩などがあげられる。
【0031】
無機塩基塩の好ましい例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、アンモニウム塩などがあげられ、有機塩基塩の好ましい例としては、例えばジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジエタノールアミン塩、メグルミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩などがあげられる。
【0032】
酸性アミノ酸塩の好ましい例としては、例えばアスパラギン酸塩、グルタミン酸塩などが挙げられ、塩基性アミノ酸塩の好ましい例としては、例えばアルギニン塩、リジン塩、オルニチン塩などがあげられる。
【0033】
本明細書において、「エクアトリアル配置」とは、41(椅子型配置)コンフォメーションを形成する糖ピラノース環に水平な軸方向に配置することを意味し、「アキシャル配置」とは、41(椅子型配置)コンフォメーションを形成する糖ピラノース環に垂直な軸方向に配置することを意味する。
【0034】
本明細書における「ポリマー鎖」は、糖鎖含有基を所望の割合で結合していればよく特に限定されないが、たとえば、下記式(III)で表されるポリマー鎖が挙げられる。

【0035】
式(III)中、Y1〜Y4は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいC1-6アルキル基、置換基を有していてもよいC2-6アルケニル基、置換基を有していてもよいC2-6アルキニル基、置換基を有していてもよいC6-10アリール基、アミド基、カルボン酸エステル基またはスルホンアミド基を示す。nは1〜5000の整数、好ましくは50〜3000の整数を示す。
【0036】
高分子化合物の数平均分子量Mnは、好ましくは300〜150万、さらに好ましくは1万5000〜100万程度の範囲内にあることが望ましい。
【0037】
「/」は、糖鎖含有基を含む構成成分(D)と、Y1、Y2を含む構成成分(E)とが任意の割合で存在することを示すが、Dの導入割合(Dの構成単位数/(D+Eの構成単位数)×100(%))は、好ましくは、構成単位(D)が0.1〜100%、構成単位(E)が0〜99.9%の割合で、さらに好ましくは構成単位(D)が0.5〜50%、構成単位(E)が50〜99.5%の範囲にあることが望ましい。
【0038】
高分子化合物の確認および糖鎖含量の決定は、1H-NMR、13H-NMR、IRなどにより実施することができる。また、数平均分子量は、分子ふるい(ゲル濾過)カラムで分離し、ポリスチレンポリマーなどの標準ポリマーとの比較により決定することができる。また、光散乱動的解析装置により、分子サイズや分子量をポリスチレンポリマーなどの標準ポリマーとの比較により、決定することもできる。さらに、超円心分離による分子量決定も可能である。
構成単位Dと構成単位Eとは、ランダム、ブロック、交互のいずれに配置されていてもよく、このうちでは、ランダムに配置されていることが好ましい。
【0039】
「Y1」、「Y2」、「Y3」、「Y4」としては、より具体的には、たとえば、水素原子、置換基を有していてもよいC1-6アルキル基、置換基を有していてもよいC2-6アルケニル基、置換基を有していてもよいC2-6アルキニル基、置換基を有していてもよいC6-10アリール基、
NH2−CO−、HCO−NH−、NH2−CO−Z−、HCO−NH−Z−などのアミド基;
RCO2−、RCO2Z−、ROC(=O)−などのカルボン酸エステル基(Rは炭素原子数1〜6程度のアルキル基);
NH2−SO2−、HSO2−NH−、NH2−SO2−Z−、HSO2−NH−Z−などのスルホンアミド基などが挙げられる。
【0040】
Zとしては、C1~6のアルキレン基、フェニレン基、エチレンオキシ基((C24O)n)(nは、1〜10の整数)などが挙げられる。
【0041】
本明細書において糖鎖含有基に含まれる、ポリマー鎖に結合基「−A−B−」において、「A」は炭素原子数1〜6のアルキレン基、フェニレン基またはエチレンオキシ基((C24O)m)(mは好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜3の整数)である。炭素原子数1〜6のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などが挙げられ、このうち好ましくはメチレン基が挙げられる。
【0042】
本明細書において「B」は、たとえば、−NH−CO−(ポリマー)、−CO−NH−(ポリマー)、−NH−CO−Z−(ポリマー)、−CO−NH−Z−(ポリマー)などのアミド結合;
−CO2R−(ポリマー)(Rは炭素原子数1〜6程度のアルキル基)などのカルボン酸エステル結合;
−NH−SO2−(ポリマー)、−SO2−NH−(ポリマー)、−NH−SO2−Z−(ポリマー)、−SO2−NH−Z−(ポリマー)などのスルホンアミド結合などが挙げられる。
Zとしては、炭素原子数1〜6のアルキレン基、フェニレン基、エチレンオキシ基((C24O)n)(nは、1〜10の整数)などが挙げられる。
【0043】
前記Bのうちでは、アミド結合が好ましく、アミド結合のうちでは、糖鎖含有基側にアミノ基を有するものがより好ましく、たとえば、−NH−CO−(ポリマー)、−NH−CO−Z−(ポリマー)がさらに好ましく、−NH−CO−(ポリマー)が特に好ましい。
なお、本明細書中「−(ポリマー)」は、結合基Bがポリマー側に結合していることを示す。
【0044】
本明細書において、「プリオン」とは、感染性因子の総称である。
【0045】
本明細書において、「プリオン病」とは、プリオンの感染によって引き起こされる神経疾患であり、プリオンに感染した脳内には、プリオンの主要構成要素である異常型プリオン蛋白質(PrPSc)が蓄積する。また、プリオン病は伝達性海綿状脳症(TSE;transmissible spongiform encephalopathy)と同義語である。これらには、たとえば、スクレイピー、クールー、ウシ海綿状脳症(BSE)、クロイツフェルト−ヤコブ病、変異クロイツフェルト−ヤコブ病(vCJS)、孤発性クロイツフェルト−ヤコブ病(sCJD, sporadic CJD)、家族性クロイツフェルト−ヤコブ病(fCJD, familial CJD)、医原性クロイツフェルト−ヤコブ病(iCJD, iatrogenic CJD)、慢性消耗病(CWD, chronic wasting disease)、致死性家族性不眠症(fetal famillial insomnia,FFI)、ネコ海綿状脳症(feline spongiform encephalopathy)、ゲルストマン-ストライスラー-シャインカー症候群(GSS、Gerstmann-Straussler syndrome)などが挙げられる。
【0046】
本発明のプリオン増殖抑制剤に含まれる、前記一般式(I)で表される化合物(以下「化合物I」ということがある)において、好適な化合物としては、たとえば、下記の化合物が挙げられる。
【0047】
(I−1)前記R1が好ましくは−NHAcまたはNHSO3H、さらに好ましくは−NHAcである化合物。
【0048】
(I−2)前記R2、R3およびR4のいずれか1つが−SO3Hであり、残りの2つが水素原子である化合物で、好ましくはR3またはR4が−SO3Hである化合物。
【0049】
(I−3)前記R2が水素原子、R3が−SO3H、R4が水素原子である化合物。
【0050】
(I−4)前記R1がNHSO3Hであり、前記R2、R3およびR4が水素原子である化合物。
(I−5)前記R5が、置換基を有していてもよいC1~6アルキル基または置換基を有していてもよいC6~10アリール基である化合物。
【0051】
(I−6)前記R5が置換基を有していてもよいC1~6アルキル基である化合物。置換基としては、水酸基またはC1~6アルコキシ基が好ましい。
【0052】
(I−7)前記R5がメチル基、エチル基、プロピル基、2(R)−3−ジヒドロキシ−プロピル基、または2(S)−3−ジヒドロキシ−プロピル基である化合物。
【0053】
(I−8)前記R5が置換基を有していてもよいC6~10アリール基である化合物。好ましい置換基としては、ニトロ基、アミノ基、C1~6アルキルアミノ基、硫酸アミノ基、またはアシルアミノ基が挙げられる。
【0054】
(I−9)前記R5が置換基を有していてもよいフェニル基または置換基を有していてもよいナフチル基である化合物。
【0055】
(I−10)前記R5が下記一般式(VI)で表される基である化合物。

【0056】
式(VI)中、R6、R7はそれぞれ独立に、水素原子、−NO2または−NHR8を示し、R8は、水素原子、C1~6アルキル基、−SO3Hまたは−C(=O)−R9を示し、R9は、置換基を有していてもよいC1~6アルキル基、置換基を有していてもよいC2~6アルケニル基、置換基を有していてもよいC2~6アルキニル基、または置換基を有していてもよいC6~10アリール基を示す。このうち、R8は、−SO3Hまたは−C(=O)−R9がさらに好ましい。R9は、置換基を有していてもよいC1~6アルキル基がさらに好ましい。
【0057】
(I−11)前記R6、R7がそれぞれ独立に、水素原子、−NO2、−NHAcである化合物。
【0058】
(I−12)前記R6、R7のいずれか一方が水素原子であり、他の一方が−NO2または−NHAcである化合物。
【0059】
(I−13)前記R6、R7のいずれか一方が水素原子であり、他の一方がパラ位に−NO2または−NHAcを有する化合物。
【0060】
(I−14)前記R5が1−ナフチル基または2−ナフチル基である化合物。
【0061】
(I−15)−R1と−OR3とがグルコ配置、ガラクト配置またはマンノ配置のいずれか1つの配置である化合物。
【0062】
(I−16)−R1と−OR3とが好ましくはグルコ配置またはガラクト配置であり、さらに好ましくはグルコ配置である化合物。
【0063】
(I−17)R1が−NHAcまたは−NHSO3Hで、−R1と−OR3とがグルコ配置またはガラクト配置で、前記R2、R3およびR4のいずれか1つが−SO3Hであり残りの2つが水素原子である化合物。このうちより好ましくはR3またはR4が−SO3Hであり、さらに好ましくはR3が−SO3Hである。
(I−18)R1が−NHSO3Hで、−R1と−OR3とがグルコ配置またはガラクト配置で、前記R2、R3およびR4がHである化合物。このうちより好ましくは−R1と−OR3とがグルコ配置である。
【0064】
前記R5に関しては、
(I−5)〜(I−10)、(I−14)の順で好適な順位が上がる。
配置に関しては(I−16)がより好ましい。
【0065】
本発明のプリオン増殖抑制剤に含まれる、前記一般式(II)で表される糖鎖含有基を有する高分子化合物(以下「化合物II」ということがある)において、好適な高分子化合物としては、たとえば下記の高分子化合物が挙げられる。
【0066】
(II−1)前記Aが、炭素原子数が好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3のアルキレン基、前記Bが単結合である高分子化合物。
【0067】
(II−2)前記Aがフェニレン基、Bがアミド結合、カルボン酸エステル結合またはスルホンアミド結合である高分子化合物。Bは好ましくはアミド結合、より好ましくは−NH−CO−(ポリマー)で表されるアミド結合である。Bはパラ位に結合していることが好ましい。
【0068】
(II−3)前記ポリマー鎖が、下記一般式(III)

(式(III)中、Y1、Y2、Y3、Y4はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいC1-6アルキル基、置換基を有していてもよいC2-6アルケニル基、置換基を有していてもよいC2-6アルキニル基、置換基を有していてもよいC6-10アリール基、アミド基、カルボン酸エステル基またはスルホンアミド基を示し、nは1〜5000の整数を示し、好ましくは10〜5000であり、/は構成成分が任意の割合で存在することを示す。)で表される高分子化合物。
【0069】
(II−4)Y1、Y2のうち、一方が水素原子またはC1-6アルキル基であり、他の一方が置換基を有していてもよいC1-6アルキル基、置換基を有していてもよいC2-6アルケニル基、置換基を有していてもよいC2-6アルキニル基、置換基を有していてもよいC6-10アリール基、アミド基、カルボン酸エステル基またはスルホンアミド基である高分子化合物。
【0070】
(II−5)Y1、Y2のうち、一方が水素原子であり、他の一方が置換基を有していてもよいC1-6アルキル基、置換基を有していてもよいC2-6アルケニル基、置換基を有していてもよいC2-6アルキニル基、置換基を有していてもよいC6-10アリール基、アミド基、カルボン酸エステル基またはスルホンアミド基である高分子化合物。
【0071】
(II−6)Y1、Y2のうち、一方が水素原子であり、他の一方がアミド基、カルボン酸エステル基またはスルホンアミド基である高分子化合物。
【0072】
(II−7)Y1、Y2のうち、一方が水素原子であり、他の一方がアミド基である高分子化合物。
【0073】
前記アミド基のうちでは、末端にアミノ基を有する基が好ましく、たとえば、NH2−CO−、NH2−CO−Z−などが挙げられ、このうちではNH2−CO−が好ましい。
【0074】
(II−8)Y3、Y4は、好ましくは水素原子であることが望ましい。
(II−9)糖鎖含有基に関しては、前記R1が−NHAcまたは−OHである化合物。
【0075】
(II−10)前記R2、R3およびR4のうちの少なくとも1つが−SO3Hである化合物。
【0076】
(II−11)前記R2が水素原子、R3が水素原子、R4が−SO3Hである化合物。
【0077】
(II−12)前記R2が水素原子、R3が−SO3H、R4が水素原子である化合物。
【0078】
(II−13)前記R2が−SO3H、R3が水素原子、R4が水素原子である化合物。
【0079】
(II−14)−R1と−OR3とがグルコ配置、ガラクト配置またはマンノ配置のいずれか1つの配置である化合物。
【0080】
(II−15)R1が−NHAcまたは−NHSO3Hであり、−R1と−OR3とがグルコ配置である化合物。
【0081】
(II−16)R1が−OHであり、−R1と−OR3とがガラクト配置である化合物。
【0082】
(II−17)R1が−NHAcであり、−R1と−OR3とがグルコ配置の場合、より好ましくはR2、R3、R4のうちのいずれか一つが−SO3Hであり、さらに好ましくはR2、R3、R4のうちのいずれか一つが−SO3Hでありかつ残りが水素原子である。
【0083】
(II−18)R1が−OHであり、−R1と−OR3とがガラクト配置の場合、より好ましくはR4が−SO3Hであり、さらに好ましくはR4が−SO3HでありかつR2、R3が水素原子である。
【0084】
(II−19)R1が−NHSO3Hであり、−R1と−OR3とがグルコ配置の場合、より好ましくはR2、R3、R4のうちのいずれか一つが−SO3Hであり、さらに好ましくはR2、R3、R4のうちのいずれか一つが−SO3Hでありかつ残りが水素原子である。
【0085】
(II−20)R1が−NHSO3Hであり、−R1と−OR3とがグルコ配置の場合、より好ましくはR2、R3、R4が水素原子である。
【0086】
(II−21)R1が−NHSO3Hであり、−R1と−OR3とがガラクト配置の場合、好ましくはR2、R3、R4のうちのいずれか一つが−SO3Hでありかつ残りが水素原子であり、さらに好ましくはR4が−SO3Hでありかつ残りが水素原子である。
【0087】
このような高分子化合物である化合物IIは、化合物Iと比較してプリオン増殖抑制効果が著しく向上する。
【0088】
以下、一般式(I)または(II)で表される具体的な化合物について、下記に挙げることができるが、本発明は、以下に列記された化合物に限定されるものではない。
【0089】
前記一般式(I)で表される化合物が、下記1〜10で示される化合物。
1:R1=−NHAc、R2=R4=H、R3=SO3H、R5=−C64−pNO2または−C64−pNHAcであり、−R1と−OR3とがグルコ配置(−R1と−OR3とがエクアトリアル配置)である化合物
【0090】
2:R1=−NHSO3H、R2=R3=H、R4=SO3H、R5=−C64−pNO2または−C64−pNHAcであり、−R1と−OR3とがグルコ配置(−R1と−OR3とがエクアトリアル配置)である化合物
【0091】
3:R1=−NHSO3H、R2=R4=H、R3=SO3H、R5=−C64−pNO2または−C64−pNHAcであり、−R1と−OR3とがグルコ配置(−R1と−OR3とがエクアトリアル配置)である化合物
【0092】
4:R1=−NHAc、R2=R3=H、R4=SO3H、R5=−C64−pNO2または−C64−pNHAcであり、−R1と−OR3とがガラクト配置(−R1がエクアトリアル配置、−OR3がアキシャル配置)である化合物
【0093】
5:R1=−NHAc、R2=R4=H、R3=SO3H、R5=−C64−pNO2または−C64−pNHAcであり、−R1と−OR3とがガラクト配置(−R1がエクアトリアル配置、−OR3がアキシャル配置)である化合物
【0094】
6:R1=−NHAc、R2=SO3H、R3=R4=H、R5=−C64−pNO2または−C64−pNHAcであり、−R1と−OR3とがガラクト配置(−R1がエクアトリアル配置、−OR3がアキシャル配置)である化合物
【0095】
7:R1=−NHAc、R2=R3=H、R4=SO3H、R5=−C64−pNO2または−C64−pNHAcであり、−R1と−OR3とがマンノ配置(−R1がアキシャル配置、−OR3がエクアトリアル配置)である化合物
【0096】
8:R1=−NHAc、R3=SO3H、R2=R4=H、R5=−C64−pNO2または−C64−pNHAcであり、−R1と−OR3とがマンノ配置(−R1がアキシャル配置、−OR3がエクアトリアル配置)である化合物
【0097】
9:R1=−NHAc、R2=SO3H、R3=R4=H、R5=−C64−pNO2または−C64−pNHAcであり、−R1と−OR3とがマンノ配置(−R1がアキシャル配置、−OR3がエクアトリアル配置)である化合物
【0098】
10:R1=−NHSO3H、R2=R3=R4=H、R5=−C64−pNO2または−C64−pNHAcであり、−R1と−OR3とグルコ配置(−R1と−OR3とがエクアトリアル配置)である化合物
【0099】
11〜P112:一般式(II)において、R1、R2、R3、R4、R5が下記1'〜12'であり、−A−B−においてAが炭素原子数1〜6のアルキレン基、フェニレン基またはエチレンオキシ基((C24O)m)(mは1〜10の整数)であり、Bが単結合、アミド結合、カルボン酸エステル結合またはスルホンアミド結合である、糖鎖含有基がポリマー鎖に結合した高分子化合物。
【0100】
1':R1=−NHAc、R2=R3=H、R4=SO3H、−A−B−=−C64−pNH−CO−(ポリマー)であり、−R1と−OR3とがグルコ配置(−R1と−OR3とがエクアトリアル配置)である。
【0101】
2':R1=−NHAc、R2=R4=H、R3=SO3H、−A−B−=−C64−pNH−CO−(ポリマー)であり、−R1と−OR3とがグルコ配置(−R1と−OR3とがエクアトリアル配置)である。
【0102】
3':R1=−NHAc、R3=R4=H、R2=SO3H、−A−B−=−C64−pNH−CO−(ポリマー)であり、−R1と−OR3とがグルコ配置(−R1と−OR3とがエクアトリアル配置)である。
4':R1=−NHSO3H、R2=R3=H、R4=SO3H、−A−B−=−C64−pNH−CO−(ポリマー)であり、−R1と−OR3とがグルコ配置(−R1と−OR3とがエクアトリアル配置)である。
【0103】
5':R1=−NHSO3H、R2=R4=H、R3=SO3H、−A−B−=−C64−pNH−CO−(ポリマー)であり、−R1と−OR3とがグルコ配置(−R1と−OR3とがエクアトリアル配置)である。
【0104】
6':R1=−NHAc、R2=R3=H、R4=SO3H、−A−B−=−C64−pNH−CO−(ポリマー)であり、−R1と−OR3とがガラクト配置(−R1がエクアトリアル配置、−OR3がアキシャル配置)である。
【0105】
7':R1=−NHAc、R2=R4=H、R3=SO3H、−A−B−=−C64−pNH−CO−(ポリマー)であり、−R1と−OR3とがガラクト配置(−R1がエクアトリアル配置、−OR3がアキシャル配置)である。
【0106】
8':R1=−NHAc、R2=SO3H、R3=R4=H、−A−B−=−C64−pNH−CO−(ポリマー)であり、−R1と−OR3とがガラクト配置(−R1がエクアトリアル配置、−OR3がアキシャル配置)である。
【0107】
9':R1=−NHAc、R2=R3=H、R4=SO3H、−A−B−=−C64−pNH−CO−(ポリマー)であり、−R1と−OR3とがマンノ配置(−R1がアキシャル配置、−OR3がエクアトリアル配置)である。
【0108】
10':R1=−NHAc、R3=SO3H、R2=R4=H、−A−B−=−C64−pNH−CO−(ポリマー)であり、−R1と−OR3とがマンノ配置(−R1がアキシャル配置、−OR3がエクアトリアル配置)である。
【0109】
11':R1=−NHAc、R2=SO3H、R3=R4=H、−A−B−=−C64−pNH−CO−(ポリマー)であり、−R1と−OR3とがマンノ配置(−R1がアキシャル配置、−OR3がエクアトリアル配置)である。
【0110】
12':R1=−OH、R2=R3=H、R4=SO3H、−A−B−=−C64−pNH−CO−(ポリマー)であり、−R1と−OR3とがガラクト配置(−R1がエクアトリアル配置、−OR3がアキシャル配置)である化合物
【0111】
13':R1=−NHAc、R2=R3=H、R4=SO3H、−A−B−=−C64−pNH−CO−(ポリマー)であり、−R1と−OR3とがガラクト配置(−R1がエクアトリアル配置、−OR3がアキシャル配置)である化合物
【0112】
14':R1=−NHAc、R2=H、R3=R4=SO3H、−A−B−=−C64−pNH−CO−(ポリマー)であり、−R1と−OR3とがガラクト配置(−R1がエクアトリアル配置、−OR3がアキシャル配置)である化合物
【0113】
15':R1=−NHSO3H、R2=R4=H、R3=SO3H、−A−B−=−C64−pNH−CO−(ポリマー)であり、−R1と−OR3とがガラクト配置(−R1がエクアトリアル配置、−OR3がアキシャル配置)である化合物
【0114】
16':R1=−NHSO3H、R2=R3=H、R4=SO3H、−A−B−=−C64−pNH−CO−(ポリマー)であり、−R1と−OR3とがガラクト配置(−R1がエクアトリアル配置、−OR3がアキシャル配置)である化合物
【0115】
これらのうち、1’〜4’、12’が好ましい。
【0116】
21〜P212:一般式(II)において、上記1'〜12'の化合物にそれぞれ対応する糖鎖部分を有し、−A−B−= −C64−pNH−CO−(ポリマー)である糖鎖含有基が、下記式で表されるポリマー鎖(III)に結合した高分子化合物。

【0117】
好ましくは、Y1、Y2のうち一方が水素原子であり、他の一方がアミド基であり、Y3、Y4が水素原子である。アミド基は、前記好ましい態様と同様である。nは1〜5000の整数を示し、糖鎖含有基を0.1〜100%の割合で含有する。
【0118】
31:下記式(IV)で表される高分子化合物。

式(IV)中、R2、R3およびR4は、いずれか一つが−SO3Hであり、残りが水素原子であり、nは1〜5000の整数であり、糖鎖含有基を0.1〜100%の割合で含有する。
【0119】
32:下記式(V)で表される高分子化合物。

式(V)中、nは1〜5000の整数であり、糖鎖含有基を0.1〜100%の割合で含有する。
【0120】
上記の化合物のうちでは、好ましくは化合物1、P11、P12、P13、P112、P21、P22、P23、P212、P31、P32であり、さらに好ましくは化合物1、P12、P22、P31(うちR3が−SO3H)である。
【0121】
本発明の化合物は、細胞に対して特に低襲性(低細胞毒性)であり、プリオンの増殖を効果的に阻害できる。特に、高分子化合物は、プリオン増殖抑制効果が著しく向上する。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】持続的投与による産生抑制効果を示す写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0123】
本発明のプリオン増殖抑制剤は、以下の方法に従い容易に製造することができる。なお、下記製造方法の例において、R1、R2、R3、R4、A、B、Y1、Y2、Y3、Y4、Zは、前記に記載の通りである。
【0124】
スキームA

【0125】
スキームB

【0126】
スキームC

【0127】
スキームD

【0128】
スキームE

【0129】
スキームF

【0130】
スキームG

【0131】
<スキームA>
(1)化合物(2a)の合成
N−アセチルグルコサミン塩酸塩(1a; 2位のアミノ基と4位の水酸基は、ともにエクアトリアル配置のグルコ型の場合のほか、N−アセチルガラクトサミン塩酸塩;2位のアミノ基がエクアトリアル配置、4位の水酸基はアキシャル配置のガラクト型の場合やN−アセチルマンノサミン塩酸塩;2位のアミノ基がアキシャル配置、4位の水酸基はエクアトリアル配置のガラクト型の場合でもよい)(いずれも市販品を用いることができる)を、溶媒中、1)NaOMe/MeOH、NaOH, KOH、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジンなどで中和し、2)トリフルオロ酢酸エチルエステル(TFAE)またはトリフルオロ酢酸無水物(TFAA)などのTFA化試薬と反応させる。
溶媒は、メタノール、エタノール、DMF、ピリジンなどが挙げられる。反応1)、2)は、1つの容器で連続して行ってもよく、独立して実施してもよい。
反応は、通常、約10〜30℃、好ましくは約22℃(室温)にて、約10分〜約2日間かけて実施できる。
【0132】
(2)化合物(3a)の合成
次に、1位の水酸基のハロゲン置換および他の水酸基の保護を行う。
たとえば、トリフルオロ酢酸基(TFA)でアミノ基を保護した化合物(2a)を塩化アセチルなどのハロゲン化アセチル化合物と反応させ、化合物(3a)を合成することができる。
また、化合物(2a)をピリジン中、無水酢酸と反応させ、その後、臭化水素−酢酸(HBr−AcOH)などと反応させて、化合物(3a)のブロム体を得ることができる。
反応は、約−20℃〜室温で、好ましくは、約−20〜10℃にて、約10分〜約2日間かけて実施できる。
【0133】
(3)化合物(4a)の合成
化合物(3a)を有機溶媒および水溶液の2相系で、相関移動触媒の存在下に、R5−O−Qと反応させることにより、化合物(4a)を得ることができる。R5は式(I)中のそれと同義であり、Qは、水素原子、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどであり、好ましくは水素原子である。
有機溶媒としては、塩化メチレン、THF、ジエチルエーテルなどが挙げられる。水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの水溶液が挙げられる。相関移動触媒としては、テトラブチルアンミニウムブロミドなどが挙げられる。
反応は、通常、約0〜30℃にて、約10分〜約2日間かけて実施できる。
【0134】
(4)化合物(5a)の合成
化合物(4a)を、NaOMe/MeOH、KOMe/MeOHなどで処理して、水酸基の保護基を脱保護した化合物(5a)を得ることができる。
反応は、好ましくは−10℃〜30℃、さらに好ましくは0℃〜4℃で、1分〜5時間で実施できる。反応温度が0℃〜4℃の温度の場合、30分〜100分程度である。
【0135】
(5)化合物(6a)の合成
さらに、0.1M 〜0.5M NaOH 水溶液で処理し、TFAを脱保護した化合物(6a)を得ることができる。水酸化カリウムや水酸化リチウムを使用してもよい。
反応は、好ましくは−10℃〜30℃、さらに好ましくは0℃〜4℃で、1分〜5時間で実施できる。反応温度が0℃〜4℃の温度の場合、30分〜100分程度である。
【0136】
(6)化合物(7a)の合成
化合物(6a)に、溶媒中、硫酸化試薬を反応させて化合物(7a)を得ることができる。硫酸化試薬としては、三酸化硫黄トリメチルアミン複合体、三酸化硫黄ジメチルホルムアミド複合体、三酸化硫黄ピリジン複合体などが挙げられる。溶媒としては、たとえば、ジメチルホルムアミド(DMF)、THF(テトラヒドロフラン)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、ピリジンなどが挙げられ、好ましくはジメチルホルムアミド、ピリジンを用いる。必要に応じて、トリエチルアミンのような塩基を加えてよい。
反応は、通常、約10℃〜約60℃、好ましくは約30〜50℃にて、約1時間〜約10時間、好ましくは約1〜3時間にわたり実施する。
【0137】
<スキームB>
スキームBは、化合物(5a)の3位、4位または6位、および2位のN硫酸化を行う工程である。工程Bでは、化合物(5a)のうち、R5がパラニトロフェニル基である場合の例を示す。
工程B1は、化合物(5a')の糖鎖の6位を硫酸化し、さらに、2位のN硫酸化を行う工程である。
工程B2は、化合物(11a)を経由して、化合物(5a')の糖鎖の3位または4位を硫酸化し、さらに、2位のN硫酸化を行う工程である。
【0138】
(1) 化合物(8a)の合成(工程B1)
化合物(8a)は、適当な溶媒中、化合物(5a')に過剰の硫酸化試薬を反応させて得ることができる。過剰とは、糖原料に対して1モル当量〜20モル当量で、好ましくは、1.2モル当量〜9モル当量である。
【0139】
硫酸化試薬としては、たとえば、三酸化硫黄トリメチルアミン複合体、(三酸化硫黄ジメチルホルムアミド複合体, 三酸化硫黄ピリジン複合体)などが挙げられる。溶媒としては、たとえば、ジメチルホルムアミド(DMF)、THF(テトラヒドロフラン)、DMSO(ジメチルスルホキシド)などが挙げられ、好ましくはジメチルホルムアミド、(ピリジン)を用いる。必要に応じて、トリエチルアミンのような塩基を加えても良い。
反応は、通常、約10℃〜約60℃、好ましくは約30〜50℃にて、約1時間〜約10時間、好ましくは約1〜3時間にわたり実施できる。
【0140】
(2) 化合物(9a)の合成
前記スキームAにおける、化合物(5a)から化合物(6a)を製造する方法と同様の方法により実施することができる。
【0141】
(3)化合物(10a)の合成
前記スキームAにおける、化合物(6a)から化合物(7a)を製造する方法と同様の方法により実施することができる。
【0142】
(4)化合物(11a)の合成(工程B2)
化合物(11a)は、適当な溶媒中、塩基の存在下、化合物(5a')に保護試薬UXを反応させて得ることができる。Uは保護基、Xは脱離基である。
ここで、Uは、シリル系の保護基または、アシル系の保護基であり、いずれも糖の6位を選択的に保護する。シリル系の保護基には、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基などがあげられる。アシル系の保護基には、ピバロイル基、ベンゾイル基などがあげられる。
【0143】
tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基を糖の6位に導入するには、対応するtert-ブチルジメチルシリルクロリド、tert-ブチルジメチルシリルトリメチルスルフォネート、tert-ブチルジフェニルシリルクロリド、tert-ブチルジフェニルシリルトリメチルスルフォネートを、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミンなどの存在下、好ましくは0℃〜50℃で、10分〜24時間反応させる。
【0144】
一方、ピバロイル基、ベンゾイル基を糖の6位に導入するには、塩化ピバロイル、塩化ベンゾイルとピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミンなどの存在下、好ましくは0℃〜50℃で、10分〜24時間反応させる。
【0145】
(5)化合物(12a)、(14a)の合成
化合物(11a)を、適当な溶媒中、過剰の硫酸化試薬を反応させて、3位または4位の水酸基を硫酸化し、さらに、6位の保護基を脱保護する。過剰とは、糖原料に対して1モル当量〜20モル当量で、好ましくは、1.2モル当量〜9モル当量である。
【0146】
硫酸化試薬としては、たとえば、三酸化硫黄トリメチルアミン複合体、(三酸化硫黄ジメチルホルムアミド複合体, 三酸化硫黄ピリジン複合体)などが挙げられる。溶媒としては、たとえば、ジメチルホルムアミド(DMF)、THF(テトラヒドロフラン)、DMSO(ジメチルスルホキシド)などが挙げられ、好ましくはジメチルホルムアミド、ピリジンを用いる。必要に応じて、トリエチルアミンのような塩基を加えても良い。
硫酸化反応は、通常、約10℃〜約60℃、好ましくは約30〜50℃にて、約1時間〜約10時間、好ましくは約1〜3時間にわたり実施できる。
【0147】
3位または4位が硫酸化された化合物の選択性は、おおむね3位:4位=1:1〜3:1であり、両者は、順相系のカラムクロマトグラフィーで精製することができる。通常、充填剤にシリカゲルを、溶離液にクロロホルムーメタノール混液を使用するが、次の工程において、逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:水)で分離・精製しても良い。
【0148】
つぎに、各成分を分離後、保護基Uがシリル系の場合には、脱離試薬としてテトラブチルアンモニウムフルオライド(TBAF)などで処理して、(12a)もしくは(14a)を得ることができる。
保護基Uがアシル系の場合には、NaOMe/MeOH、KOMe/MeOHなどで処理し、(12a)もしくは(14a)をそれぞれ得ることができる。
(11a)の硫酸化、つづく保護基Uの脱保護を行い、(12a)および(14a)とした後に、各成文を分離精製してもよい。この場合には、逆送系の充填剤(C−18など)を用い、溶離液には、水、水―メタノールを使用することが好ましい。
【0149】
(6)化合物(13a)、(15a)の合成
スキームAにおける(5)化合物(6a)の合成、(6)化合物(7a)の合成で示した方法と同様の方法を用いて、化合物(12a)、化合物(14a)から、化合物(13a)、化合物(15a)を得ることができる。
【0150】
<スキームC>
(1)化合物(16a)の合成
スキームCは、化合物(6a)のアミノ基をアセチル化する方法を示す。
化合物(16a)は、化合物(6a)を溶媒中、アセチル化剤と反応させて得ることができる。
アセチル化剤としては、無水酢酸などを用いることができる。溶媒としては、メタノールなどを用いることができる。
また、トリエチルアミン、炭酸カリウム等の塩基の存在下に、上記反応を行ってもよい。
反応は、通常、約0〜30℃にて、約10分〜約24時間かけて実施できる。
なお、(16a)のうち、pNP N−アセチルグルコサミン、pNP N−アセチルガラクトサミン、pNP N−アセチルマンノサミンは、市販品を使用してもよい。
【0151】
<スキームD>
スキームDは、R5がフェニレン基(特に、パラニトロフェニル基)を有する場合における、誘導体上の水酸基またはアミノ基の硫酸化の方法を示すものである。
【0152】
工程D1
工程D1は、化合物(17a)の糖鎖の6位を硫酸化して、化合物(18a)を製造する方法を示すものである。化合物(18a)は、適当な溶媒中、化合物(17a)に過剰の硫酸化試薬を反応させて得ることができる。過剰とは、糖原料に対して1モル当量〜20モル当量で、好ましくは、1.2モル当量〜9モル当量である。
【0153】
硫酸化試薬としては、たとえば、三酸化硫黄トリメチルアミン複合体、(三酸化硫黄ジメチルホルムアミド複合体, 三酸化硫黄ピリジン複合体)などが挙げられる。溶媒としては、たとえば、ジメチルホルムアミド(DMF)、THF(テトラヒドロフラン)、DMSO(ジメチルスルホキシド)などが挙げられ、好ましくはジメチルホルムアミド、(ピリジン)を用いる。必要に応じて、トリエチルアミンのような塩基を加えても良い。
反応は、通常、約10℃〜約60℃、好ましくは約30〜50℃にて、約1時間〜約10時間、好ましくは約1〜3時間にわたり実施できる。
グルコ配置、ガラクト配置またはマンノ配置の化合物(17a)は、市販品を用いることもできる。
【0154】
工程D2
工程2は、化合物(19a)を経由して、化合物(17a)の糖鎖の3位または4位を硫酸化し、それぞれ、化合物(20a)または化合物(21a)を製造する方法を示すものである。
【0155】
(1)化合物(19a)は、化合物(17a)の糖鎖の6位の水酸基に保護基を導入する工程である。化合物(19a)は、適当な溶媒中、塩基の存在下、化合物(17a)に保護試薬UXを反応させて得ることができる。Uは保護基、Xは脱離基である。
ここで、Uは、シリル系の保護基または、アシル系の保護基であり、いずれも糖の6位を選択的に保護する。シリル系の保護基には、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基などがあげられる。アシル系の保護基には、ピバロイル基、ベンゾイル基などがあげられる。
【0156】
tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基を糖の6位に導入するには、対応するtert-ブチルジメチルシリルクロリド、tert-ブチルジメチルシリルトリメチルスルフォネート、tert-ブチルジフェニルシリルクロリド、tert-ブチルジフェニルシリルトリメチルスルフォネートを、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミンなどの存在下、好ましくは0℃〜50℃で、10分〜24時間反応させる。
【0157】
一方、ピバロイル基、ベンゾイル基を糖の6位に導入するには、塩化ピバロイル、塩化ベンゾイルとピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミンなどの存在下、好ましくは0℃〜50℃で、10分〜24時間反応させる。
【0158】
(2)得られた化合物(19a)を、工程D1と同様の方法により水酸基の硫酸化を行い、3位または4位が硫酸化された化合物を得ることができる。さらに、保護基Uを脱離させるため、脱離試薬を、適当な溶媒中で反応させることにより、化合物(20a)、(21a)を得ることができる。
化合物(19a)を、適当な溶媒中、過剰の硫酸化試薬を反応させて、3位または4位の水酸基を硫酸化し、さらに、6位の保護基を脱保護する。
【0159】
硫酸化試薬としては、たとえば、三酸化硫黄トリメチルアミン複合体、(三酸化硫黄ジメチルホルムアミド複合体, 三酸化硫黄ピリジン複合体)などが挙げられる。溶媒としては、たとえば、ジメチルホルムアミド(DMF)、THF(テトラヒドロフラン)、DMSO(ジメチルスルホキシド)などが挙げられ、好ましくはジメチルホルムアミド、(ピリジン)を用いる。必要に応じて、トリエチルアミンのような塩基を加えても良い。
硫酸化反応は、通常、約10℃〜約60℃、好ましくは約30〜50℃にて、約1時間〜約10時間、好ましくは約1〜3時間にわたり実施できる。
【0160】
3位または4位が硫酸化された化合物の選択性は、おおむね3位:4位=1:1〜3:1であり、両者は、順相系のカラムクロマトグラフィーで精製することができる。通常、充填剤にシリカゲルを、溶離液にクロロホルムーメタノール混液を使用するが、次の工程において、逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:水)で分離・精製しても良い。
【0161】
つぎに、各成分を分離後、保護基Uがシリル系の場合には、脱離試薬としてテトラブチルアンモニウムフルオライド(TBAF)などで処理して、(20a)もしくは(21a)を得ることができる。
保護基Uがアシル系の場合には、NaOMe/MeOH、NaOH水溶液やLiOH水溶液などで処理し、(20a)もしくは(21a)をそれぞれ得ることができる。
【0162】
(19a)の硫酸化、つづく保護基Uの脱保護を行い、(20a)および(21a)とした後に、各成文を分離精製してもよい。この場合には、逆送系の充填剤(C−18など)を用い、溶離液には、水、水―メタノールを使用することが好ましい。
【0163】
<スキームE>
スキームEは、ベンゼン環に結合するニトロ基を、他の官能基に変換する方法を示すものである。
【0164】
工程E1
工程E1は、化合物(18a)のニトロ基をN−アシル化して、化合物(22a)を製造する方法を示すものである。
【0165】
(1)まず、適当な溶媒中、触媒の存在下、化合物(18a)のニトロ基を水素で還元してアミノ基に変換する。
(2)さらに、適当な溶媒中、適当な塩基の存在下、ハロゲン化アシルと反応させて、化合物(22a)を製造することができる。
【0166】
(1)の水素還元工程において、触媒としては、パラジウム等の触媒が挙げられる。パラジウム触媒としては、たとえば、水酸化パラジウム、パラジウム/カーボン、パラジウムブラックなどが挙げられる。溶媒としては、水、メタノール、エタノール、エーテル、酢酸エチルなどが挙げられる。触媒の使用量は、化合物(18a)に対して1〜50質量%程度の範囲にあればよい。反応は、水素雰囲気が1〜100気圧程度の範囲で、通常、約10〜30℃、好ましくは約22℃(室温)にて、約10分〜約2日間かけて実施できる。
【0167】
(2)のアシル化工程において、アシル化剤XCOR9のうち、Xはハロゲン原子を示し、たとえば、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。R9は式(IV)中のR9と同様であり、置換基を有していてもよいC1~6アルキル基、置換基を有していてもよいC2~6アルケニル基、置換基を有していてもよいC2~6アルキニル基、または置換基を有していてもよいC6~10アリール基を示す。アシル化工程においては、酸無水物を用いることもでき、たとえば、アセチル基を導入する場合は、無水酢酸のような酸無水物を用いることが好ましい。
【0168】
塩基としては、たとえば、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸セシウム、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジンのような有機系塩基などが挙げられる。これらの塩基系有機塩基を混ぜ合わせても良い。溶媒としては、たとえば、無機系塩基を使用するときには、水、メタノール、エタノールが好ましく、また、有機系塩基の場合には、エーテル、塩化メチレン、THFなどが挙げられる。塩基としてのピリジンを溶媒に使用しても良い。反応は、通常、約−50〜80℃にて、約10分〜約2日間かけて実施できる。
【0169】
工程E2
工程E2は、化合物(18a)のニトロ基をN−硫酸化して、化合物(23a)を製造する方法を示すものである。
【0170】
(1)まず、工程E1の(1)と同様にして、化合物(18a)のニトロ基を水素で還元してアミノ基に変換する。
(2)さらに、適当な溶媒中、硫酸化試薬と反応させて、化合物(23a)を製造することができる。
【0171】
(2)の硫酸化は、ニトロ基がアミノ基に変換された化合物を、適当な溶媒中、0.8〜1.5当量の硫酸化試薬と反応させて実施することができる。
【0172】
硫酸化試薬としては、たとえば、三酸化硫黄トリメチルアミン複合体、(三酸化硫黄ジメチルホルムアミド複合体, 三酸化硫黄ピリジン複合体)などが挙げられる。溶媒としては、たとえば、ジメチルホルムアミド(DMF)、THF(テトラヒドロフラン)、DMSO(ジメチルスルホキシド)などが挙げられ、好ましくはジメチルホルムアミド、ピリジンを用いる。必要に応じて、トリエチルアミンのような塩基を加えても良い。
【0173】
反応は、通常、約10℃〜約60℃、好ましくは約30〜50℃にて、約1時間〜約10時間、好ましくは約1〜3時間にわたり実施できる。
【0174】
前記工程1〜5に係る反応はグルコ配置、ガラクト配置およびマンノ配置のいずれの配置の糖鎖含有基にも適用することができる。
【0175】
<スキームF(工程F1)>
スキームFは、高分子化合物の製造方法を示す。
工程F1は、化合物(24a)のアグリコン部分の末端に不飽和二重結合を有する化合物と、重合可能モノマーHY1C=CY2Hとを共重合させて化合物(25a)を製造する工程である。共重合反応は、公知の方法で行うことができ、適当な溶媒中、必要に応じ重合開始剤の存在下、化合物(24a)と重合可能モノマーを反応させる。
【0176】
重合可能モノマーとしては具体的には、たとえば、(メタ)アクリルアミドなどのアミド類;(メタ)アクリル酸などのカルボン酸、(メタ)アクリル酸のメチルエステルあるいはエチルエステル類、酢酸ビニル、酢酸アリルなど、カルボン酸またはそのエステル類;ビニルスルホン酸アミドなどのスルホンアミドなどが挙げられる。
【0177】
前記溶媒としては、化合物(24a)、モノマーが溶解するものであればよく、限定されない。たとえばTHF、メタノール、DMF、DMSOなどを用いることができる。
【0178】
重合開始剤としては、たとえば2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などを用いることができる。また、このようなアゾ化合物の他に、過酸化物、有機金属化合物などを用いることもできる。
【0179】
上記THF等の溶媒に溶解しないモノマーを用いる場合は、たとえば、超純水を溶媒として用い、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、4,4’−アゾビスシアノ吉草酸などの重合開始剤を用いて重合を行うことができる。
【0180】
重合は、原料の種類により異なり限定されないが、通常、たとえば、室温〜100℃程度の温度範囲で、1〜72時間程度の時間で実施することができる。
【0181】
<スキームG(工程G1)>
スキームGは、スキームFの具体例を示すものである。
工程G1では、まず、(1)化合物(18a)のニトロ基を、末端に不飽和結合を有するN−アシル基に変換して化合物(26a)を製造する。(2)さらに、該化合物(26a)を適当な重合可能モノマーと共重合させて高分子化合物(27a)を製造する方法を示すものである。
【0182】
(1)のN−アシル化は、適当な溶媒中、触媒の存在下、化合物(18a)のニトロ基を水素で還元してアミノ基に変換し、さらに、適当な溶媒中、適当な塩基の存在下、末端に不飽和基を有するハロゲン化アシルと反応させて、化合物(26a)を製造することができる。
【0183】
水素還元工程において、触媒としては、パラジウム等の触媒が挙げられる。パラジウム触媒としては、たとえば、水酸化パラジウム、パラジウム/カーボン、パラジウムブラックなどが挙げられる。溶媒としては、水、メタノール、エタノール、エーテル、酢酸エチルなどが挙げられる。触媒の使用量は、化合物(18a)に対して1〜50質量%程度の範囲にあればよい。反応は、水素雰囲気が1〜100気圧程度の範囲で、通常、約10〜30℃、好ましくは約22℃(室温)にて、約10分〜約2日間かけて実施できる。
【0184】
末端不飽和基含有のアシル化工程において、たとえばアシル化剤XCOZCH=CH2を用いる場合、Xはハロゲン原子を示し、たとえば、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。Zとしては、炭素原子数1〜6のアルキレン基、フェニレン基、エチレンオキシ基((C24O)n)などが挙げられる。アシル化剤としては、たとえば、アクリル酸クロリドなどが挙げられる。アシル化剤は、不飽和炭素にさらに、メチル基等の置換基を有する、クロトニルクロリド、メタクリロイルクロリドなどであってもよい。
【0185】
塩基としては、たとえば、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸セシウム、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジンのような有機系塩基などが挙げられる。これらの塩基系有機塩基を混ぜ合わせても良い。溶媒としては、たとえば、無機系塩基を使用するときには、水、メタノール、エタノールが好ましく、また、有機系塩基の場合には、エーテル、塩化メチレン、THFなどが挙げられる。メタノール、エタノールについては、トリエチルアミンなどと用いても良く、通常好ましく使用される。塩基としてのピリジンを溶媒に使用しても良い。反応は、通常、約−50〜80℃にて、約10分〜約2日間かけて実施できる。
【0186】
(2)の共重合反応は、前記工程F1と同様にして行うことができ、適当な溶媒中、必要に応じ重合開始剤の存在下、化合物(26a)と重合可能モノマーを反応させて行う。前記溶媒、重合開始剤、重合可能モノマーは前記工程F1と同様のものを用いることができる。
【0187】
重合は、原料の種類により異なり限定されないが、通常、たとえば、室温〜100℃程度の温度範囲で、1〜72時間程度の時間で実施することができる。
【0188】
また、化合物(25a)は、主鎖上に官能基を有するポリマーと、該官能基と結合可能な基を有する一般式(I)で表される化合物に対応する糖含有化合物とを反応させて製造することもできる。
【0189】
化合物I、IIにおいて、R1が−OHである化合物についても、たとえば、市販のp-ニトロフェニル β-D-ガラクトピラノシドなどを原料として、上記と同様の方法を適用することにより、水酸基の硫酸化等を行うことができる。
【0190】
以上が化合物I、高分子化合物II(「高分子化合物II」を「化合物II」ということがある)の製造方法の代表例であるが、本発明化合物の製造における原料化合物・各種試薬は、塩や水和物あるいは溶媒和物を形成していてもよく、いずれも出発原料、使用する溶媒等により異なり、また反応を阻害しない限りにおいて特に限定されない。用いる溶媒についても、出発原料、試薬等により異なり、また反応を阻害せず出発物質をある程度溶解するものであれば特に限定されない。本発明に係る化合物I、IIがフリー体として得られる場合、前記の化合物I、IIが形成していてもよい塩またはそれらの水和物の状態に常法に従って変換することができる。
【0191】
本発明に係る化合物I、IIが化合物I、IIの塩または化合物I、IIの水和物として得られる場合、前記の化合物I、IIのフリー体に常法に従って変換することができる。
【0192】
また、本発明に係る化合物I、IIについて得られる種々の異性体(例えば幾何異性体、不斉炭素に基づく光学異性体、回転異性体、立体異性体、互変異性体、等)は、通常の分離手段、例えば再結晶、ジアステレオマー塩法、酵素分割法、種々のクロマトグラフィー(例えば薄層クロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、等)を用いることにより精製し、単離することができる。
【0193】
本発明のプリオン増殖抑制剤を、プリオン病の治療剤又は予防剤として使用する場合、その投与方法は、経口的、非経口的(静脈内的、筋肉内的、皮下的)、腹腔的、局所的(点滴、散剤、軟膏、ゲルまたはクリーム)投与および吸入(口腔内または鼻スプレー)などが挙げられる。その投与形態としては、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤、水性および非水性の経口用溶液および懸濁液、および個々の投与量に小分けするのに適応した容器に充填した非経口用溶液が挙げられる。また投与形態は、皮下移植のような調節された放出処方物を包含する種々の投与方法に適応させることもできる。
【0194】
前記製剤は、賦形剤、滑沢剤(コーティング剤)、結合剤、崩壊剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤などの添加剤を用いて周知の方法で製造される。
【0195】
例えば、賦形剤としては、デンプン、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン等のデンプン、乳糖、結晶セルロース、リン酸水素カルシウム等を挙げることができる。
【0196】
コーティング剤としては、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セラック、タルク、カルナウバロウ、パラフィン等を挙げることができる。
【0197】
結合剤としては、例えばポリビニルピロリドン、マクロゴール及び前記賦形剤と同様の化合物を挙げることができる。
【0198】
崩壊剤としては、例えば前記賦形剤と同様の化合物及びクロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドンのような化学修飾されたデンプン・セルロース類を挙げることができる。
【0199】
安定剤としては、例えばメチルパラベン、プロピルパラベンのようなパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコールのようなアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール、クレゾールのようなフェエノール類;チメロサール;デヒドロ酢酸;及びソルビン酸を挙げることができる。
【0200】
矯味矯臭剤としては、例えば通常使用される、甘味料、酸味料、香料等を挙げることができる。
【0201】
また、液剤を製造するための溶媒としては、エタノール、フェノール、クロロクレゾール、精製水、蒸留水等を使用することができる。
【0202】
界面活性剤又は乳化剤としては、例えば、ポリソルベート80、ステアリン酸ポリオキシル40、ラウロマクロゴール等を挙げることができる。
【0203】
化合物I、IIを、プリオン増殖抑制剤、あるいはプリオン病の治療剤若しくは予防剤として使用する場合、化合物I、II又はその医薬的に許容されうる塩の使用量は、症状、年齢、体重、相対的健康状態、他の投薬の存在、投与方法等により異なる。例えば、患者(温血動物、特に人間)に対して、一般に有効な量は、有効成分(化合物I)として、経口剤の場合、一日につき体重1kg当たり好ましくは0.1〜1000mg、さらに好ましくは体重1kg当たり1〜300mgであり、一日当たりの使用量は、普通の体重の成人患者に対しては、好ましくは10〜800mgの範囲にある。非経口剤の場合、一日につき体重1kg当たり好ましくは0.1〜1000mg、さらに好ましくは体重1kg当たり10〜800mgである。これを1日1回又は数回に分けて、症状に応じて投与することが望ましい。
【0204】
また、化合物I、IIは、生理食塩水などに溶解して得られる脳内投与点滴液としても用いることもできる。
さらに、化合物I、IIを適当な生理食塩水に溶解させた水溶性液体は、前記脳内に直接投与する点滴液の他、脳外科手術などで使用される乾燥硬膜のプリオンの洗浄液として使用されうる。すなわち、従来、脳外科手術で除去された患者の硬膜は、ヒト乾燥硬膜を移植して使用していたために、しばしば、プリオンで汚染されクロイツフェルト−ヤコブ病を発症してきた。この硬膜は、熱処理に向かないので、移植に準じた方法で使用されてきたため、プリオンで汚染した乾燥硬膜を使用すると、クロイツフェルト−ヤコブ病が発症することが知られている。本硫酸化糖含有水溶液で汚染された硬膜を洗浄すれば、安全にプリオンを除外、もしくは、プリオンの形成を抑制できる。
【0205】
またさらに、化合物I、IIは脳内埋め込み型の材料として用いることもできる。クロイツフェルト−ヤコブ病などの将来の発症を予防するために、脳外科手術の際、化合物I、II、特に、脳内に滞留しやすい高分子化合物である化合物IIを脳内に注入、または埋め込むことも可能である。脳腫瘍、脳梗塞、脳内出血などの手術の際に、予防的に、該化合物I、II、特に化合物IIを脳に添加して、該疾病を予防する対策にも利用できる。
なお、本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
【実施例】
【0206】
以下本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
下記に化合物Iに係る化合物の合成工程(製造工程1)および化合物IIに係る高分子化合物の合成工程(製造工程2)を示す。式中、Yは−CONH2を示す。
【0207】
製造工程1

【0208】
製造工程2

【0209】
〔製造例1〕
p−ニトロフェニル 2−アセトアミド−2−デオキシ−6−スルホ−β−D−グルコピラノシド ナトリウム塩(化合物2)(6SGN))の合成

製造工程Aに示すとおり、p−ニトロフェニル 2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシド(1)(1.0 g, 29.2 mmol)(アルドリッチ社製)をN,N−ジメチルホルムアミド(20 mL)に溶解し、40℃において、三酸化硫黄トリメチルアミン複合体(2.4 g, 17.5 mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(10 mL)溶液を30分かけて滴下し、40℃で2時間磁気攪拌した。次いで、得られた反応混合物にメタノール(20 mL)を加え、1昼夜攪拌した後、減圧下で溶媒を留去した。得られた残査を、逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:水)で分離・精製した。得られたシロップをイオン交換樹脂(Dowex Na+)で処理し、ろ過後凍結乾燥することで目的とする化合物(2)(657 mg, 51 %)を得た。
【0210】
1H-NMR (300MHz, D2O, tert-BuOH=1.23 ppm) δ 8.136 (bd, 8.3 Hz, aromatics), 7.119 (bd, 8.3 Hz, aromatics), 5.289(d, 8.4 Hz, H-1), 4.409 (dd, 2.1 Hz and 11.4 Hz, H-6), 4.253 (dd, 5.7 Hz and 11.4 Hz, H-6'), 4.057 (dd, 8.4 Hz and 10.2 Hz, H-2), 3.943 (m, H-5), 3.725 (dd, 9.0 Hz and 10.2 Hz, H-3), 3.624 (dd, 9.0 Hz and 9.6 Hz, H-4), 2.036 (s, Ac). 13C-NMR (75MHz, D2O, tert-BuOH=31.3 ppm) δ 176.9(C=O), 163.5, 144.4, 127.9, 118.3, 100.4 (C-1), 75.9, 75.0, 71.2, 68.7, 56.9, 23.8. 元素分析:計算値(C14H17N2NaO11S) C, 37.84; H, 3.86; N, 6.30, 実験値 C, 37.35; H, 3.89; N, 6.28. FAB-MS 468 [M+Na+H]+.
【0211】
〔製造例2〕
p−ニトロフェニル 2−アセトアミド−3−スルホ−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシド ナトリウム塩(6)(3SGN)、p−ニトロフェニル−2−アセトアミド−4−スルホ−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシド ナトリウム塩(7)(4SGN)の合成


【0212】
p−ニトロフェニル 2−アセトアミド−6−tert−ブチルジフェニルシリル−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシド(5)の合成
製造工程Aに示すとおり、p−ニトロフェニル 2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシド(1)(300 mg、0.87 mmol)(アルドリッチ社製)をピリジン(10 mL)に溶解し、ジメチルアミノピリジン(10 mg)、tert−ブチルジフェニルシリルクロリド(TBDS-Cl)340 μL、1.31 mmol)を窒素雰囲気下で加え、室温で24時間磁気攪拌した。反応終了後、反応溶液にメタノール(10 mL)を加え1昼夜磁気攪拌した。減圧濃縮後、酢酸エチルで希釈し有機相を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と水で分液洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム:メタノール=7:1)で分離精製し、エタノールから再結晶させることで、黄色の結晶の目的とする化合物(5)(470 mg、92 %)を得た。
【0213】
p−ニトロフェニル 2−アセトアミド−3−スルホ−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシド ナトリウム塩(6)、p−ニトロフェニル−2−アセトアミド−4−スルホ−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシド ナトリウム塩(7)の合成
得られた化合物(5)(130 mg、0.22 mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(4 mL)に溶解し、50℃において、三酸化硫黄トリメチルアミン複合体(186 mg、1.32 mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(10 mL)溶液を30分かけて滴下し、50℃で12時間磁気攪拌した。次いで、得られた反応混合物にメタノール(10 mL)加え1時間攪拌した後、減圧下で溶媒を留去した。残査を、テトラヒドロフラン(5 mL)に溶解し、TBAF(147 μL、0.33 mmol)を窒素雰囲気下で加え3時間攪拌した。その残査を減圧下で溶媒を留去した後、逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:水)で分離・精製した。得られたシロップをイオン交換樹脂(Dowex Na+)で処理し、ろ過後凍結乾燥することで目的とする化合物(6)(40 mg)、化合物(7)(28 mg)を収率42 %で得た。
【0214】
1H-NMR (δppm, 500 MHz, D2O, 30 ℃):
(6): 8.03 (d, 2H, フェニル基のH), 7.02 (d, 2H, フェニル基のH), 5.28 (d, 1H, J1,2 = 8.5 Hz, H-1), 4.36 (dd, 1H, J2,3, = 10.5, J3,4 = 10.5 Hz, H-3), 3.99 (dd, 1H, J1,2 = 8.5 Hz, J2,3 = 10.5 Hz, H-2), 3.87 (dd, 1H, JH-5, H-6proS = 1.5 Hz, JH-6proS, H-6proR = 12.0 Hz, H-6proS), 3.68 (dd, 1H, JH-5, H-6proR = 5.4 Hz, JH-6proR, H-6proS 11.1 Hz, H-6proR), 3.60 (m, 1H, H-5), 3.60 (m, H-4), 1.85 (s, 3H)
(7): 8.11 (d, 2H, フェニル基のH), 7.05 (d, 2H, フェニル基のH), 5.20 (d, 1H, J1,2 = 8.5 Hz, H-1), 4.18 (dd, 1H, J2,3, = 10.5, J3,4 = 10.5 Hz, H-4), 3.98 (dd, 1H, J1,2 = 8.5 Hz, J2,3 = 10.5 Hz, H-2), 3.80 (m, 2H, H-6proS, H-6proR), 3.70 (m, 2H, H-5, H3), 1.87 (s, 3H)
【0215】
〔製造例3〕
p−アセトアミドフェニル 2−アセトアミド−6−スルホ−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシド ナトリウム塩(8)の合成

製造例1で得られたp−ニトロフェニル 2−アセトアミド−6−スルホ−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシド ナトリウム塩(2)(50 mg, 0.11 mmol)を脱イオン水 (2 mL) に溶解させ、触媒量の水酸化パラジウム炭素を加え、室温、水素雰囲気下で2時間磁気攪拌した。反応終了後、セライトろ過により触媒を除去し、減圧濃縮した。残査を再び脱イオン水(2 mL) に溶解させ0℃において、炭酸カリウム(46 mg, 0.33 mmol)を加えしばらく攪拌した。0℃において、無水酢酸(32 μl, 0.33 mmol)を滴下し3時間攪拌した。反応溶液を中和後、減圧濃縮し、シロップを逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:水)で分離・精製した。得られたシロップをイオン交換樹脂(Dowex Na+)で処理し、ろ過後、凍結乾燥することで白色固体の目的とする化合物(8)(41 mg 80 %)を得た。
【0216】
1H NMR (δppm, 500 MHz, D2O, 30 ℃) δ 7.33 (d, 2H, J = 9.0 Hz, フェニル基のH), 7.06 (d, 2H, J = 9.0 Hz, フェニル基のH), 5.12 (d, 1H, J = 8.5 Hz, H-1), 4.37 (dd, 1H, J = 2.0, 11.5 Hz, H-6proS), 4.23 (dd, 1H, J = 5.5, 11.5 Hz, H-6proR), 3.97 (dd, 1H, J = 8.0, 10.5 Hz, H-2), 3.84 (m, 1H, H-5), 3.65 (dd, 1H, J = 10.0, 10.0 Hz, H-3), 3.61 (dd, 1H, J = 9.0, 9.5 Hz, H-4), 2.13, 2.02 (sx2, 6H, acetamido groups);
旋光度[α]D = -78.9o (c = 0.11 水);
赤外吸収スペクトルIR (KBr) 3299 (OH), 1660 and 1548 (amide), 1226 (OSO3);
FAB+マススペクトル: 479 [M+Na]+
【0217】
〔製造例4〕
p−アクリロイルアミドフェニル 2−アセトアミド−6−スルホ−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシド ナトリウム塩(3)の重合体(4)(Poly 6SGN)の合成


【0218】
製造工程Bに示すとおり、製造例1で得られた化合物(2)(200 mg, 0.45 mmol)をメタノール(10 mL)と水(10 mL)の混合溶媒に溶解し、10%水酸化パラジウム炭素(10 mg)を加えた後、水素雰囲気下で1.5時間激しく磁気攪拌した。得られた反応混合物をセライトろ過し、そのろ液を減圧濃縮した。残査を水(2.0 mL)とテトラヒドロフラン(2.0 mL)に溶解し、炭酸カリウム(187 mg, 0.45 mmol)を加えた後、0℃に冷却した。更に、アクリル酸クロリド(55 μL, 0.67 mmol)のテトラヒドロフラン(2 mL)溶液を滴下し、室温で2時間、磁気攪拌した。得られた反応混合物を減圧濃縮し、その残査を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:水)で分離・精製した。得られたシロップをイオン交換樹脂(Dowex Na+)で処理し、ろ過後、凍結乾燥することで目的とする化合物(3)(130 mg, 61 %)を得た。
【0219】
1H NMR (δppm, 500 MHz, D2O, 30 ℃) δ 7.41 (d, 2H, J = 9.0 Hz, フェニル基のH), 7.08 (d, 2H, J = 9.0 Hz, フェニル基のH), 6.40 (dd, 1H, J = 10.0, 17.0 Hz, アクリロイル基のH), 6.28 (dd, 1H, J = 1.0, 17.0 Hz, アクリロイル基のH), 5.83 (dd, 1H, J = 1.0, 10.0 Hz, アクリロイル基のH), 5.12 (d, 1H, J = 8.5 Hz, H-1), 4.38 (dd, 1H, J = 2.0, 11.5 Hz, H-6proS), 4.23 (dd, 1H, J = 5.5, 11.5 Hz, H-6proR), 3.97 (dd, 1H, J = 8.5, 10.0 Hz, H-2), 3.84 (m, 1H, H-5), 3.65 (dd, 1H, J = 10.0, 10.0 Hz, H-3), 3.61 (dd, 1H, J = 10.0, 9.5 Hz, H-4), 2.02 (s, 3H, アセトアミド基)
【0220】
上記で得られた化合物(3)(10 mg, 21.3 μmol)とアクリルアミド(15 mg, 213 μmol)を脱気水(100 μL)に溶解し、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(2.3 μmol)を加えた。その混合物に対して、凍結脱気を減圧下で3回行い、重合試験管内に収容して、減圧下で封管し、60℃で12時間、インキュベートした。その後、重合試験管を開封し、次いで、反応混合物をイオン交換水に希釈して、透析チューブ(MW8000 cut off)内で2日間透析した。水を減圧下で留去した後、凍結乾燥して、白色固体である糖鎖含有する高分子化合物(4)(10 mg, 40 %)を得た。
【0221】
数平均分子量Mn = 3.1 x 105、(SECにより同定、スタンダード:プルラン、展開溶媒:PBS);
1H NMR(δppm, 500 MHz, D2O, 50 ℃):7.60(brs,2H,フェニル基のH)、7.27(brs,2H,フェニル基のH)、5.32(brs, 1H,H-1)、4.57-3.78(m、6H,H-2,H-3,H-4,H-5,H-6,H-6')、2.52-2.22(brm, 主鎖のメチングループ)、2.10(brs, 3H,アセチルグループ)、2.00-1.75(brs, 主鎖のメチレングループ);
高分子化合物(4)中の糖鎖導入率=8%(1H NMRスペクトルによって決定)
【0222】
〔製造例5〕
p−アクリロイルアミドフェニル 2−アセトアミド−4−スルホ−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシド ナトリウム塩(9)の重合体(10)(Poly 4SGN)の合成


【0223】
製造例2で合成した、p−ニトロフェニル 2−アセトアミド−4−スルホ−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシド ナトリウム塩(7)を用い、製造例4と同様にして、p−アクリロイルアミドフェニル 2−アセトアミド−4−スルホ−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシド ナトリウム塩(9)を製造した。
【0224】
1H-NMR (δppm, 500 MHz, D2O, 30 ℃) δ7.30 (d, 2H, フェニル基のH), 6.95 (d, 2H, フェニル基のH), 6.28 (dd, 1H, J = 10.0, 17.0 Hz, アクリロイル基のH), 6.19 (dd, 1H, J = 1.0, 17.0 Hz, アクリロイル基のH), 5.72 (dd, 1H, J = 1.0, 10.0 Hz, アクリロイル基のH), 5.02 (d, 1H, J1,2 = 8.5 Hz, H-1), 4.17 (dd, 1H, J3,4, = 10.5, J4,5 = 10.5 Hz, H-4), 3.93 (dd, 1H, J1,2 = 8.5 Hz, J2,3 = 10.5 Hz, H-2), 3.83 (dd, 1H, J = 2.0, 12.5 Hz, H-6proS) 3.75 (dd, 1H, J = 9.0, 12.5 Hz, H-6proR), 3.64 (m, 2H, H-5, H3), 1.89 (s, 3H, Ac)
【0225】
上記で得られた化合物(9)(10 mg, 20.6 μmol)とアクリルアミド(19.4 mg, 206 μmol)を脱気水(200 μL)に溶解し、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(0.6 mg, 2.3 μmol)を加えた。その混合物に対して、凍結脱気を減圧下で3回行い、重合試験管内に収容して、減圧下で封管し、60℃で3時間、インキュベートした。その後、重合試験管を開封し、次いで、反応混合物をイオン交換水に希釈して、透析チューブ(MW8000 cut off)内で2日間透析した。水を減圧下で留去した後、凍結乾燥して、白色固体である高分子化合物(10)(15 mg, 50 %)を得た。
【0226】
高分子化合物(10)中の糖鎖導入率=7.7 mol %(1H NMRスペクトルによって決定)。1H NMR(δppm, 500 MHz, D2O, 50 ℃):7.39(brs,2H,フェニル基のH)、7.08(brs,2H,フェニル基のH)、5.15(brs, 1H,H-1)、4.30 (brt, 1H, H-4), 4.06-3.73(brm, 5H,H-2,H-3,H-5,H-6,H-6')、2.23-2.17(brm, 主鎖のメチングループ)、2.02(brs, 3H,アセチルグループ)、1.77-1.60(brm, 主鎖のメチレングループ)。
【0227】
〔製造例6〕
p−アクリロイルアミドフェニル 2−アセトアミド−3−スルホ−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシド ナトリウム塩(11)の重合体(12)(Poly 3SGN)の合成


【0228】
製造例2で合成した、p−ニトロフェニル 2−アセトアミド−3−スルホ−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシド ナトリウム塩(6)を用い、製造例4と同様にして、p−アクリロイルアミドフェニル 2−アセトアミド−3−スルホ−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシド ナトリウム塩(11)を製造した。
【0229】
1H-NMR (δppm, 500 MHz, D2O, 30 ℃) δ7.31 (d, 2H, フェニル基のH), 6.95 (d, 2H, フェニル基のH), 6.28 (dd, 1H, J = 10.0, 17.0 Hz, アクリロイル基のH), 6.19 (dd, 1H, J = 1.0, 17.0 Hz, アクリロイル基のH), 5.72 (dd, 1H, J = 1.0, 10.0 Hz, アクリロイル基のH), 5.02 (d, 1H, J1,2 = 8.5 Hz, H-1), 4.33 (dd, 1H, J2,3, = 10.5, J3,4 = 10.5 Hz, H-3), 3.93 (dd, 1H, J1,2 = 8.5 Hz, J2,3 = 10.5 Hz, H-2), 3.83 (dd, 1H, J = 2.0, 12.5 Hz, H-6proS) 3.75 (dd, 1H, J = 9.0, 12.5 Hz, H-6proR), 3.64 (m, 2H, H-5, H4), 1.87 (s, 3H, Ac)
【0230】
上記で得られた化合物(11)(10 mg, 20.6 μmol)とアクリルアミド(19.4 mg, 206 μmol)を脱気水(200 μL)に溶解し、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(0.6 mg, 2.3 μmol)を加えた。その混合物に対して、凍結脱気を減圧下で3回行い、重合試験管内に収容して、減圧下で封管し、60℃で3時間、インキュベートした。その後、重合試験管を開封し、次いで、反応混合物をイオン交換水に希釈して、透析チューブ(MW8000 cut off)内で2日間透析した。水を減圧下で留去した後、凍結乾燥して、白色固体である高分子化合物(12)(11 mg, 40 %)を得た。
【0231】
高分子(12)中の糖鎖導入率=9.0 mol %(1H NMRスペクトルによって決定)。1H NMR(δppm, 500 MHz, D2O, 50 ℃):7.37(brs,2H,フェニル基のH)、7.08(brs,2H,フェニル基のH)、5.25(brs, 1H,H-1)、4.05 (brt, 1H, H-3), 3.95-3.63(brm, 5H,H-2,H-4,H-5,H-6,H-6')、2.31-2.19(brm, 主鎖のメチングループ)、1.99(brs, 3H,アセチルグループ)、1.76-1.54(brm, 主鎖のメチレングループ)。
【0232】
〔製造例7〕
p-(N-アクリルアミド)フェニル 6-O-スルフォ-β-D-ガラクトピラノシド ナトリウム塩(14)の重合体(15)(Poly6SGal)の合成



【0233】
p-ニトロフェニル 6−スルフォ−β-D-ガラクトピラノシド ナトリウム塩(13)の合成
市販のp-ニトロフェニル(pNP) β-D-ガラクトピラノシド(Sigma社製N1252, 600 mg, 1.99 mmol)およびビストリブチルスズオキシド(0.764 mL, 1.5 mmol)をTHF-ベンゼン (1:1,全量 50 mL)にけん濁加させ、3時間加熱環流しながら共沸して生成する水を除去した。その後、溶媒を留去し、残査を乾燥DMF10mlに溶解し三酸化硫黄トリメチルアミン錯体(1.4 g, 0.01 mol) を加え、60 ℃ で3 時間反応させた。 反応液にベンジルアルコール (8 mL) を加え、溶媒を減圧濃縮した。
【0234】
残査をODS(C−18)カラムで精製し、イオン交換樹脂 (Dowex Na+)で処理して、硫酸基が2つ導入されたpNP 3,6-di-O-スルフォ-β-D-ガラクトピラノシド ナトリウム塩を得た(980 mg,97%)。
【0235】
[α]D = -35o (c = 0.7 in H2O);
1H NMR (D2O, t-BuOH = 1.23 ppm) δ 8.271 and 7.278 (d, J = 9.3 Hz, pNP), 5.330 (d, J = 7.8 Hz, H-1), 4.484 (dd, J = 3.3 and 9.6 Hz, H-3), 4.429 (d, J = 3.3Hz, H-4), 4.34-3.93 (m, H-6 and H-6'), 4.013 (dd, J = 7.8 and 9.6 Hz, H-2); 13C NMR (t-BuOH = 31.3 ppm) δ 163.6, 144.5, 128.0, 118.4, 101.3, 81.3, 74.7, 70.2, 68.8, 68.3; FABMS 527 [M+ + Na - 1].
【0236】
次に、このようにして得たジ硫酸化糖化合物80mgを、0.25 M 酢酸緩衝液 (pH 6.8, 2 mL)に溶解し、市販のスルファターゼ(Sigma社製S9626, E.C.3.1.6.1, Helix pomatia由来, 5 mg)を加え、 37℃ で 2 日間反応させた。反応液を Sephadex LH-20, ODSの順で精製し, イオン交換樹脂 (Dowex Na+)で処理してpNP 6−スルフォ−β-D-ガラクトピラノシド ナトリウム塩(13)を得た( 60 mg 、94%)。
【0237】
[α]D = -64.4o (c = 3.1 in H2O);
1H NMR (D2O, t-BuOH = 1.23 ppm) δ 8.195 and 7.213 (d, J = 9.2 Hz, pNP), 5.174 (d, J = 7.3 Hz, H-1), 4.29-4.17 (m, H-6 and H-6'), 4.075 (bd, J = 3.0 Hz, H-4), 3.875 (dd, J = 7.3 and 9.9 Hz, H-2), 3.823 (dd, J = 3.0 and 9.9 Hz, H-3); 13C NMR (t-BuOH = 31.3 ppm) δ 163.5, 144.1, 127.8, 118.2, 101.6, 74.9, 73.9, 71.9, 69.9, 68.7. FABMS 426 [M+ + Na]. Anal. Calcd. for C12H14NNaO11S・2H2O: C, 32.81; H, 4.13; N, 3.19; S,7.30. Found: C, 32.42; H, 3.44; N, 2.95; S, 6.88.
【0238】
p-(N-アクリルアミド)フェニル 6-O-スルフォ-β-D-ガラクトピラノシド ナトリウム塩.(14)の合成
上記で合成した6−スルフォ−β-D-ガラクトピラノシド ナトリウム塩(13) (100 mg, 0.62 mmol) および触媒量のパラジウムをメタノール10mlに加え、水素気流下で還元した。さらに、製造例4と同様にして、アクリル酸クロリドと反応させ、p-(N-アクリルアミド)フェニル 6-O-スルフォ-β-D-ガラクトピラノシド ナトリウム塩(14)85 mgを得た。
【0239】
1H NMR (D2O, rt) δ(ppm) 7.40 (d, 2H, J = 9.0 Hz, aromatic-H), 7.15 (d, 2H, J = 9.2 Hz, aromatic-H), 6.35 (m, 2H, vinyl H, 5.80 (d, 1H, vinyl H), 5.00 (d, 1H, J = 7.8 Hz, H-1), 4.29-4.00 (m, 3H, H-6S + H-6R + H-4), 3.80 (d, 2H, H-3 + H-2).
【0240】
p-(N-アクリルアミド)フェニル 6-O-スルフォ-β-D-ガラクトピラノシド ナトリウム塩.(14)の重合体(15)の合成
製造例4と同様にして、上記化合物(14)を、アクリルアミド(15 mg, 213 μmol)および2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩の存在下共重合させ、6-O-スルフォ-β-D-ガラクトピラノシドを側鎖に有する高分子化合物(15)を得た。
【0241】
(Gal:acrylamide = 6:94):
1H NMR (D2O, 60 ℃) δ(ppm) 7.55 (br, aromatic-H), 7.25 (br, aromatic-H), 5.27 (br, Gal H-1), 4.4-4.2 (br, Gal H-4 + H-6S + H-6R), 3.9 (br, Gal H-3 + H-5 + H-2), 2.6-2.3 (br, CH-CH2), 2.0-1.5 (br, CH-CH2-).
【0242】
〔製造例8〕
p−アクリロイルアミドフェニル 2−デオキシ−2−アセトアミド−β−D−グルコピラノシド(16)およびその重合体(17)(PolyGlcNAc)の合成


【0243】
p−ニトロフェニル 2−デオキシ−2−アセトアミド−β−D−グルコピラノシド(pNP GlcNAc)(1)(200 mg, 0.53 mmol)(アルドリッチ社製)をメタノール(10 mL)と水(10 mL)の混合溶媒に溶解し、10%水酸化パラジウム炭素(10 mg)を加えた後、水素雰囲気下で3時間激しく磁気攪拌した。得られた反応混合物をセライトろ過し、そのろ液を減圧濃縮した。残査を水(4 mL)とテトラヒドロフラン(2 mL)に溶解し、炭酸カリウム(242 mg, 1.75 mmol)を加えた後、0℃に冷却した。更に、アクリル酸クロリド(71 μL, 0.88 mmol)のテトラヒドロフラン(1 mL)溶液を滴下し、室温で1時間、磁気攪拌した。得られた反応混合物を減圧濃縮し、その残査を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:水)で分離・精製した。凍結乾燥することで目的とする化合物(16)(166 mg, 78 %)を得た。
【0244】
上記で得られた化合物(16)(10 mg, 27.3 μmol)とアクリルアミド(19.4 mg, 274 μmol)をジメチルスルホキシド(200 μL)に溶解し、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(0.4 mg, 2.6 μmol)を加えた。その混合物に対して、凍結脱気を減圧下で3回行い、重合試験管内に収容して、減圧下で封管し、60℃で12時間、インキュベートした。その後、重合試験管を開封し、次いで、反応混合物をイオン交換水に希釈して、透析チューブ(MW8000 cut off)内で2日間透析した。水を減圧下で留去した後、凍結乾燥して、白色固体である高分子化合物(17)(15 mg, 50 %)を得た。
【0245】
高分子化合物(17)中の糖鎖導入率=7.7 mol %(1H NMRスペクトルによって決定)。1H NMR(δppm, 500 MHz, D2O, 50 ℃):7.35(brs,2H,フェニル基のH)、7.05(brs,2H,フェニル基のH)、5.10(brs, 1H,H-1)、3.90-3.32(m、6H,H-2,H-3,H-4,H-5,H-6,H-6')、2.30-2.17(brm, 主鎖のメチングループ)、2.00(brs, 3H,アセチルグループ)、2.01-1.60(brm, 主鎖のメチレングループ)。
【0246】
製造工程3

【0247】
〔製造例9〕
2-デオキシ-2-トリフルオロアセトアミド-D-グルコピラノシド(19)の合成
D-グルコサミン 塩酸塩(18)20.1 g (93.1 mmol)と、NaOMe7.5g(13mmol)とをメタノール250 mlに溶かし、1時間攪拌した。次に2 モル当量のCF3COOEtを加え撹拌した。5時間後にさらに2.5g(46mmol)のCF3COOEtを加え攪拌した。18時間後、重曹水で中和をし、ろ過により沈殿物を除去した。ろ液を室温に放置したところ、結晶(塩)が析出したのでろ過して除いた。これを3回繰り返し、塩をできる除去して化合物(19)を得た。収量:35.0 g 収率 > 99 %
【0248】
〔製造例10〕
1−クロロ−2−デオキシ−2−トリフルオロアセトアミド−3,4,6−トリ−O−アセチル−α−D−グルコピラノシド(20)の合成
化合物(19) 20.0 gに75mlのアセチルクロライドを0℃で注意深く滴下した。18時間後、CHCl3を500ml加え、重曹水、水の順に洗浄した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;CHCl3)で精製し、目的とする化合物(20)を得た。収量:9.03 g 収率:29.6 %
【0249】
1H-NMR (500MHz, r.t. CDCl3)
δ 6.74 (d, 1H, J = 9Hz, NHTFA) 6.24 (d, 1H, JH1-H2 = 4 Hz, H1) 5.39 (dd, 1H, JH2-H3 = 10.5 Hz, JH3-H4 = 10 Hz, H3) 5.25 (t, 1H, JH3-H4 H4-H5 = 10 Hz, H4) 4.50 (ddd, 1H, JH1-H2 = 4 Hz, JH2-NHTFA = 8.5 Hz, JH2-H3 = 11 Hz, H2) 4.22 (m, 2H, H5, H6) 4.14 (m, 1H, H6) 2.12 (s, 3H, 6-Ac) 2.08, 2.07 (s, each 3H, 3 or 4 Ac)
【0250】
〔製造例11〕
p-ニトロフェニル 2-デオキシ-2-トリフルオロアセトアミド-3,4,6-トリ-O-アセチル-β-D-グルコピラノシド(21)の合成
化合物(20)5.50 g (13.1 mmol)、CH2Cl2 55ml、1N NaOH 水溶液55mlの溶液に、パラ−ニトロフェノール3.64g(26.2 mmol)とBu4NBr 4.2g (13.1 mmol)を加え、激しく攪拌した。2時間後、CHCl3を少量加え、1N NaOHで2回、食塩水で1回洗浄後、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン: 酢酸エチル = 4 :1)で精製し、化合物(21)を得た。収量:2.64g 収率:23.5 %
【0251】
1H-NMR (500MHz, r.t. CDCl3)
δ 8.22 (d, 2H, J = 2 Hz, H-ortho of pNP) 7.06 (d, 2H, J = 2.5 Hz, H-meta of pNP) 6.60 (d, 1H, JH1-H2 = 9 Hz, H1) 5.38 (dd, 1H, JH2-H3 = 10.5 Hz, JH3-H4 = 9.5 Hz, H3) 5.35 (d, 1H, J = 8 Hz, NHTFA) 5.20 (t, 1H, JH3-H4, H4-H5 = 9.5 Hz, H4) 4.31 (dd and dd, 2H, JH1-H2 = 9 Hz, JH2+NHTFA-H3 = 18.5 Hz, and JH5-H6 = 5.5 Hz, JH6-H6 = 12.5 Hz, H2 and H6ProR) 4.20 (dd, 1H, JH5-H6 = 2.5 Hz, JH6-H6 = 12.5 Hz, H6ProS) 3.96 (ddd, 1H, JH5-H6ProR = 5.5 Hz, JH5-H6ProS = 2.5 Hz, JH4-H5 = 9.5 Hz, H5) 2.10 (s, 3H, 6-Ac) 2.09, 2.08 (each s, each 3H, 3 or 4-Ac)
【0252】
〔製造例12〕
p-ニトロフェニル 2-デオキシ-2-トリフルオロアセトアミド-β-D-グルコピラノシド(22)の合成
化合物(21)1.51 g (2.9 mmol)を100 mlのメタノールに溶かし、NaOMe 15.6 mg (0.29 mmol)を加え、室温で3時間30分攪拌した。
シリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム: メタノール = 10 : 1)で精製し、化合物(22)を得た。 収量:1.10 g 収率:95.7 %
【0253】
1H-NMR (500MHz, r.t. CD3OD)
δ 8.22 (d, 2H, J = 9.5 Hz, H-ortho of pNP) 7.17 (d, 2H, J = 9.5 Hz, H-meta of pNP) 5.26 (d, 1H, JH1-H2 = 8.5 Hz, H1), 4.02 (dd, 1H, JH1-H2 = 8.5 Hz, JH2-H3 = 10.5 Hz, H2), 3.94 (dd, 1H, JH5-H6 = 2.5 Hz, JH6-H6 = 12.5 Hz, H6ProS), 3.73 (dd, 1H, JH5-H6 = 5.5 Hz, JH6-H6 = 12.5 Hz, H6ProR), 3.40 (dd, 1H, JH2-H3, JH3-H4 = 10.5 Hz, H3), 3.51 (m, 1H, H5), 3.36 (dd, 1H, JH3-H4, JH4-H5 = 9.5 Hz, H4)
【0254】
〔製造例13〕
p-ニトロフェニル 2-アミノ-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシド(23)の合成
化合物(22)149mg (0.38 mmol)を 0.1M 水酸化ナトリウム水溶液2mlに0℃で溶解し、30分撹拌した。その後、0.1N HCl水溶液で注意深くpH7とし、ろ過後濃縮した。逆相カラム(ODS C−18)で精製して、化合物(23)を100mg (89%)得た。
【0255】
1H-NMR (500MHz, r.t. CD3OD)
δ 8.22 (d, 2H, J = 9.5 Hz, H-ortho of pNP) 7.26 (d, 2H, J = 9.0 Hz, H-meta of pNP) 5.02 (d, 1H, JH1-H2 = 8.0 Hz, H1), 3.90 (dd, 1H, JH5-H6 = 2.5 Hz, JH6-H6 = 12.0 Hz, H6ProS), 3.71 (dd, 1H, JH5-H6 = 5.5 Hz, JH6-H6 = 12.0 Hz, H6ProR), 3.51 (m, 1H, H5), 3.40 (dd, 1H, JH2-H3, JH3-H4 = 8.5 Hz, H3), 3.36 (dd, 1H, JH3-H4, JH4-H5 = 9.0 Hz, H4), 2.89 (dd, 1H, JH1-H2 = 8.0 Hz, JH2-H3 = 9.5 Hz, H2)
【0256】
〔製造例14〕
p-ニトロフェニル 2-スルファミド-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシド ナトリウム塩(24)の合成
化合物(23)207 mg (0.69 mmol)をDMF 50 mlに溶解し、Me3NSO3を144 mg(1.03 mmol)加えた。室温で攪拌し、反応の進行を逆相TLC (10 % CH3COOH : メタノール = 2 : 1)で確認した。反応終了後、メタノール10 mlを加え、濃縮して残査を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;水)で精製、続いて、イオン交換樹脂(Dowex Na+)で処理し化合物(24)を得た。収量:158 mg 収率:60.3 %
【0257】
1H-NMR (300MHz, 30.0℃ D2O)
δ 8.19 (d, 2H, J = 9.5 Hz, H-ortho of pNP), 7.18 (d, 2H, J = 9.5 Hz, H-meta of pNP) 5.31 (d, 1H, JH1-H2 = 8.0 Hz, H1), 3.69 (dd, 1H, JH5-H6 = 2.5 Hz, JH6-H6 = 12.5 Hz, H6ProS), 3.67 (dd, 1H, JH5-H6 = 5.5 Hz, JH6-H6 = 12.5 Hz, H6ProR), 3.67 (dd, 1H, J = 9.0 Hz, J = 10.5 Hz, H3), 3.61 (m, 1H, H5), 3.49 (dd, 1H, JH3-H4, JH4-H5 = 9.5 Hz, H4), 3.27 (dd, 1H, JH1-H2 = 8.0 Hz, JH2-H3 = 10.0 Hz, H2)
【0258】
〔製造例15〕
p-ニトロフェニル 2-スルファミド-2−デオキシー6−O−スルフォ-β-D-グルコピラノシド 2ナトリウム塩(25)の合成

製造工程3で製造した化合物(22)を出発原料として、明細書中のスキームBで示される化合物5aから10aを合成するのと同様の方法を用いて、化合物(25)を合成した。
〔製造例16〕
p-nitrophenyl 2-acetamide-4-O-sulfo-2-deoxy-β-D-galactopyranoside, sodium salt (4SGalNAc)(26)の合成

【0259】
市販の4-nitrophenyl N-acetyl-β-D-galactosaminide (Sigma, N9003)の100mgを乾燥DMF 2mLに溶解し、これに三酸化硫黄-DMF コンプレックスの179mgを加え、40℃で6時間反応させた。反応液にメタノール1mLを加え、1時間撹拌後、減圧濃縮して粗生成物を得、逆送カラムクロマトグラフィーで精製して、目的の4SGalNAc(化合物(26))を40mg (31%)得た。
【0260】
1H-NMR (600MHz, D2O) δ 8.18 (d, J=9.2 Hz, aromatic), 7.16 (d, J=9.2 Hz, aromatic), 5.30 (d, J=8.4 Hz, H-1), 4.79 (brd, J=2.4 Hz, H-4), 4.23 (dd, J=8.4 and 11.2 Hz, H-2), 4.07-4.03 (m, H-3 and H-5), 3.87 (dd, J=4.2 and 12.0 Hz, H-6), 3.83 (dd, J=2.4 and 12.0 Hz, H-6’), 2.80 (s, -NHCH3).
【0261】
〔製造例17〕
重合体(27)の合成

【0262】
上記製造例15で製造した化合物25を用い、前記製造例7と同様の方法により、重合体(27)を製造した。
〔実施例1〕
<薬理データ>
生物試験と抑制試験の概要:マウス馴化スクレイピーChandler株が持続感染したマウス神経芽細胞(Race et al., 1988)の培養液に一定量の試験試料(糖モノマーと糖ポリマー)の希釈液を加えて72時間培養を行った。プリオン感染価とPrPScの存在は相関することから(Caughey et al., 1993)、PrPScを指標に被験物質の抗プリオン効果を判定した。細胞が産生するPrPScをSDS-PAGE電気泳動とウエスタンブロット(WB)法によって確認を行った。その結果、グルコサミンから合成される特定の硫酸化糖とその高分子化合物が顕著な異常プリオン産生抑制効果を示す事が判明した。
【0263】
1.生理活性試験の方法(PrPSCの検出)
1) マウス馴化スクレイピーChandler株が持続感染しているマウス神経芽細胞を限界希釈法によりクローニングしたプリオン持続感染細胞I3/I5の培養液に一定量の試験試料(糖モノマーと糖ポリマー)の希釈液を加えて72時間培養を行った。
2) 細胞の溶解を界面活性剤(0.5% Triton X-100、0.5% sodium deoxycholate)と金属キレート剤(5 mM EDTA)を含む緩衝液(150mM NaCl in 10 mM Tris-HCl, pH 7.5)で行った。
3) 遠心処理(200 x g, 2 min)して除核した後、プロテアーゼK(PK、20 μg/mL PK, 37 ℃, 45分)で処理した。
4) PKによるタンパク質分解を2mM Pefablocで止めた後、遠心処理(100,000 x g, 2 h)によりPrPScを回収して、SDS-Page電気泳動とWBを行った。PrPScの検出には、一次抗体として抗PrPモノクローナル抗体31C6を、二次抗体として西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗マウス免疫グロブリン(Amersham Bioscience社)を使用した。表1におけるPrPsc産生量はLAS-1000 chemiluminescence analyzer(富士フィルム社)を使用して化学発光を取り込み、フォトンカウントの定量解析により求めた。阻害剤が無い場合の産生量を100として、PrPsc産生量を測定した。A±Bで表される数値において、Aの数値が小さいほど抑制効果が大きいことを示す。Bは偏差を示す。
【0264】
図1の持続的投与による産生抑制効果は、ECLウエスタンブロッテイング検出試薬(Amersham Bioscience社)を使用して、X線フィルム上に可視化して示した。
【0265】
表1、表2の結果は、下記の本発明に係る化合物(4)(10)(12)(15)(27)(7)(24)(25)(26)(ナトリウム塩)と、比較例として化合物(17)(poly-GlcNAc)および化合物(1)(GlcNAc)とのPrPsc産生抑制効果を比較したものである。
【0266】
化合物(4):Poly-6SGN
化合物(10):Poly-4SGN
化合物(12):Poly-3SGN
化合物(15):Poly-6SGal
化合物(27):Poly-2,6SGN
化合物(7):4SGN
化合物(24):2SGN
化合物(25):2,6SGN
化合物(26):4SGalNAc
【0267】
2.結果
上記化合物それぞれを100μg/mL, 10μg/mL, 1μg/mLの濃度に希釈して試料液を加えて細胞培養を行ない、上述の方法によってPrPSCの産生抑制効果を調べた。結果を表1、表2に示す。
【0268】
【表1】

【0269】
【表2】

表1、表2から、本発明の化合物(7)、(24)、(25)、(26)、(4)、(10)、(12)、(15)、(27)については、10-100μg/mLの濃度で高いPrPsc産生抑制効果が認められた。
また、阻害剤が無い場合の産生量を100として、PrPsc産生量を半分(約50)に減少させる抑制剤の濃度(IC50 )として比較を行うと、抑制効果の強さはPoly-4SGN (IC50 = 2-4 μg/mL) > Poly-6SGN (5-8 μg/mL) >4SGN (8-10 μg/mL)の順となり、活性に対して高分子効果が認められた。
【0270】
3.硫酸化糖ポリマーの長期間処理によるPrPsc産生抑制効果
図1は、化合物(4):Poly-6SGN、化合物(10):Poly-4SGNを、それぞれ20μg/mLずつ3、6および9日間細胞培養液に加えて、持続的な抑制効果を調べたものである。化合物(4)(Poly-6SGN)は、添加日数とともにPrPScの産生が減少し、9日目に、ほぼ完全にPrPSc産生が終息した。化合物(10)(Poly-4SGN)では抑制効果がより顕著であり、6日目には、ほぼ産生が終息した。
【0271】
以上の細胞実験から、本発明で用いる化合物が、プリオン持続感染細胞に於て、顕著なPrPSc産生抑制効果を示すことが判った。これら抑制剤の持続的投与によって、細胞レベルでのPrPSc産生を完全に制止できることが判明した。
プリオン感染価とPrPScの存在は相関することから、これらの化合物がプリオンの増殖阻害活性を有すると判断できる。以上の結果は、安価な糖資源であるグルコサミンなどから、プリオン増殖抑制効果を有するプリオン病治療薬の開発が可能であることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0272】
本発明に係る化合物I、IIまたはその医薬的に許容し得る塩は、優れたプリオン増殖抑制作用を有し、細胞に対して低襲性(低細胞毒性)で、異常プリオン蛋白質の増殖を効果的に阻害することができるので、プリオン病の予防剤または治療剤として有用である。このため、本発明に係る化合物I、IIまたはその医薬的に許容し得る塩は、スクラピー、ウシ海綿状脳症(BSE)、クロイツフェルト−ヤコブ病のようなプリオン病の予防剤または治療剤として有用である。
【0273】
さらに、本発明はプリオン病を予防又は治療する方法に関するものである。これらの方法は、開示した化合物I、IIまたはその医薬的に許容し得る塩を含む医薬組成物の医薬的に有効な量を、このような治療を必要とするかまたはこのような疾患または状態にかかった患者、動物に投与する工程を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)

〔式(I)中、R1は、−OH、−NHAc(式中、Acはアセチル基を示す。)または−NHSO3Hを示し;
2〜R4はそれぞれ独立に、水素原子または−SO3Hを示し;
2、R3およびR4のうちの少なくとも1つが−SO3Hであるか、または、R2、R3およびR4が全て水素原子のときR1は−NHSO3Hを示し;
5は、置換基を有していてもよいC1~6アルキル基、置換基を有していてもよいC2~6アルケニル基、置換基を有していてもよいC2~6アルキニル基、または置換基を有していてもよいC6~10アリール基を示し;
式中、結合

は、エクアトリアル配置またはアキシャル配置のいずれかの配置であることを示す。〕で表される化合物もしくはその医薬的に許容し得る塩またはこれらの水和物を有効成分として含有するプリオン増殖抑制剤。
【請求項2】
前記R2、R3およびR4のうちの一つが−SO3Hであり、残りの二つが−Hである、請求項1に記載のプリオン増殖抑制剤。
【請求項3】
前記R1が、−NHSO3Hであり、前記R2、R3およびR4が−Hである、請求項1に記載のプリオン増殖抑制剤。
【請求項4】
前記R5が、置換基を有していてもよいC1~6アルキル基または置換基を有していてもよいC6~10アリール基である、請求項1〜3のいずれかに記載のプリオン増殖抑制剤。
【請求項5】
−R1と−OR3とがグルコ配置、ガラクト配置またはマンノ配置のいずれか1つの配置である、請求項1〜4のいずれかに記載のプリオン増殖抑制剤。
【請求項6】
1が−NHAcまたは−NHSO3Hであり、−R1と−OR3とがグルコ配置またはガラクト配置である、請求項5に記載のプリオン増殖抑制剤。
【請求項7】
1が−NHAcまたは−NHSO3Hであり、−R1と−OR3とがグルコ配置またはガラクト配置であり、R3またはR4が−SO3Hである、請求項2に記載のプリオン増殖抑制剤。
【請求項8】
−R1と−OR3とがグルコ配置またはガラクト配置である、請求項3に記載のプリオン増殖抑制剤。
【請求項9】
前記一般式(I)で表される化合物が、
(1)R1=−NHAc、R2=R4=H、R3=−SO3H、R5=−C64−pNO2または−C64−pNHAcであり、−R1と−OR3とがグルコ配置(−R1と−OR3とがエクアトリアル配置)である化合物、
(2)R1=−NHSO3H、R2=R3=H、R4=SO3H、R5=−C64−pNO2または−C64−pNHAcであり、−R1と−OR3とがグルコ配置(−R1と−OR3とがエクアトリアル配置)である化合物、
(3)R1=−NHSO3H、R2=R4=H、R3=SO3H、R5=−C64−pNO2または−C64−pNHAcであり、−R1と−OR3とがグルコ配置(−R1と−OR3とがエクアトリアル配置)である化合物、
(4)R1=−NHAc、R2=R3=H、R4=SO3H、R5=−C64−pNO2または−C64−pNHAcであり、−R1と−OR3とがガラクト配置(−R1がエクアトリアル配置、−OR3がアキシャル配置)である化合物、
(5)R1=−NHAc、R2=R4=H、R3=SO3H、R5=−C64−pNO2または−C64−pNHAcであり、−R1と−OR3とがガラクト配置(−R1がエクアトリアル配置、−OR3がアキシャル配置)である化合物、
(6)R1=−NHAc、R2=SO3H、R3=R4=H、R5=−C64−pNO2または−C64−pNHAcであり、−R1と−OR3とがガラクト配置(−R1がエクアトリアル配置、−OR3がアキシャル配置)である化合物、
(7)R1=−NHAc、R2=R3=H、R4=SO3H、R5=−C64−pNO2または−C64−pNHAcであり、−R1と−OR3とがマンノ配置(−R1がアキシャル配置、−OR3がエクアトリアル配置)である化合物、
(8)R1=−NHAc、R3=SO3H、R2=R4=H、R5=−C64−pNO2または−C64−pNHAcであり、−R1と−OR3とがマンノ配置(−R1がアキシャル配置、−OR3がエクアトリアル配置)である化合物、
(9)R1=−NHAc、R2=SO3H、R3=R4=H、R5=−C64−pNO2または−C64−pNHAcであり、−R1と−OR3とがマンノ配置(−R1がアキシャル配置、−OR3がエクアトリアル配置)である化合物、および
(10)R1=−NHSO3H、R2=R3=R4=H、R5=−C64−pNO2または−C64−pNHAcであり、−R1と−OR3とグルコ配置(−R1と−OR3とがエクアトリアル配置)である化合物、からなる群から選ばれるいずれか一つである、請求項1に記載のプリオン増殖抑制剤。
【請求項10】
下記一般式(II)

〔式(II)中、R1は、−OH、−NHAc(式中、Acはアセチル基を示す。)または−NHSO3Hを示し;
2〜R4はそれぞれ独立に、水素原子または−SO3Hを示し;
2、R3およびR4のうちの少なくとも1つが−SO3Hであるか、または、R2、R3およびR4が全て水素原子のときR1は−NHSO3Hを示し;
−A−B−において、Aは炭素原子数1〜6のアルキレン基、フェニレン基またはエチレンオキシ基((C24O)m)(mは1〜10の整数)を示し、Bは単結合、アミド結合、カルボン酸エステル結合またはスルホンアミド結合を示し;
式中、結合

は、エクアトリアル配置またはアキシャル配置のいずれかの配置であることを示す。〕で表される糖鎖含有基の少なくとも1つが、ポリマー鎖に結合した高分子化合物もしくはその医薬的に許容し得る塩またはこれらの水和物を有効成分として含有する、プリオン増殖抑制剤。
【請求項11】
前記Aが炭素原子数1〜6のアルキレン基、前記Bが単結合である、請求項10に記載のプリオン増殖抑制剤。
【請求項12】
前記Aがフェニレン基、Bがアミド結合、カルボン酸エステル結合またはスルホンアミド結合である、請求項10に記載のプリオン増殖抑制剤。
【請求項13】
前記ポリマー鎖が、下記一般式(III)

(式(III)中、Y1、Y2、Y3、Y4はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいC1-6アルキル基、置換基を有していてもよいC2-6アルケニル基、置換基を有していてもよいC2-6アルキニル基、置換基を有していてもよいC6-10アリール基、アミド基、カルボン酸エステル基またはスルホンアミド基を示し、nは1〜5000の整数を示し、/は構成成分が任意の割合で存在することを示す。)で表される、請求項10〜12のいずれかに記載のプリオン増殖抑制剤。
【請求項14】
前記Y1、Y2のいずれか一方が水素原子またはC1-6アルキル基であり、他の一方が置換基を有していてもよいC1-6アルキル基、置換基を有していてもよいC2-6アルケニル基、置換基を有していてもよいC2-6アルキニル基、置換基を有していてもよいC6-10アリール基、アミド基、カルボン酸エステル基またはスルホンアミド基であり、前記Y3、Y4が水素原子である、請求項10に記載のプリオン増殖抑制剤。
【請求項15】
2、R3およびR4のうちの一つが−SO3Hであり、残りの二つが−Hである、請求項10〜14のいずれかに記載のプリオン増殖抑制剤。
【請求項16】
−R1と−OR3とが、グルコ配置、ガラクト配置またはマンノ配置のいずれか1つの配置である、請求項10〜15のいずれかに記載のプリオン増殖抑制剤。
【請求項17】
1が−NHAcまたは−NHSO3Hであり、−R1と−OR3とがグルコ配置である、請求項10〜16のいずれかに記載のプリオン増殖抑制剤。
【請求項18】
1が−OHであり、−R1と−OR3とがガラクト配置である、請求項10〜16のいずれかに記載のプリオン増殖抑制剤。
【請求項19】
前記一般式(II)で表される化合物が、下記式(IV)

〔式(IV)中、R2、R3およびR4は、いずれか一つが−SO3Hであり、残りが水素原子であり、nは1〜5000の整数を示し、/は構成成分が任意の割合で存在することを示す。〕である、請求項10に記載のプリオン増殖抑制剤。
【請求項20】
前記一般式(II)で表される化合物が、下記式(V)

〔式(V)中、nは1〜5000の整数を示し、/は構成成分が任意の割合で存在することを示す。〕である、請求項10に記載のプリオン増殖抑制剤。
【請求項21】
前記−A−B−ポリマー鎖が、下記式

〔式中、nは1〜5000の整数を示し、/は構成成分が任意の割合で存在することを示す。〕で表され、
前記糖鎖含有基において、R1、R2、R3、R4が、
(101)R1=−NHAc、R2=R3=H、R4=−SO3Hであり、−R1と−OR3とがグルコ配置(−R1と−OR3とがエクアトリアル配置)、
(102)R1=−NHAc、R2=R4=H、R3=−SO3Hであり、−R1と−OR3とがグルコ配置(−R1と−OR3とがエクアトリアル配置)、
(103)R1=−NHAc、R2=−SO3H、R3=R4=Hであり、−R1と−OR3とグルコ配置(−R1と−OR3とがエクアトリアル配置)、
(104)R1=−NHSO3H、R2=R3=H、R4=−SO3Hであり、−R1と−OR3とがグルコ配置(−R1と−OR3とがエクアトリアル配置)、
(105)R1=−NHAc、R2=R4=H、R3=−SO3Hであり、−R1と−OR3とがガラクト配置(−R1がエクアトリアル配置で、−OR3がアキシャル配置)、
(106)R1=−NHAc、R2=R3=H、R4=−SO3Hであり、−R1と−OR3とがガラクト配置(−R1がエクアトリアル配置で、−OR3がアキシャル配置)、
(107)R1=−NHSO3H、R2=R4=H、R3=−SO3Hであり、−R1と−OR3とがグルコ配置(−R1と−OR3とがエクアトリアル配置)、
(108)R1=−NHSO3H、R2=R4=H、R3=−SO3Hであり、−R1と−OR3とがガラクト配置(−R1がエクアトリアル配置で、−OR3がアキシャル配置)、
(109)R1=−NHSO3H、R2=R3=H、R4=−SO3Hであり、−R1と−OR3とがガラクト配置(−R1がエクアトリアル配置で、−OR3がアキシャル配置)、または、
(110)R1=−NHAc、R2=H、R3=R4=−SO3Hであり、−R1と−OR3とがガラクト配置(−R1がエクアトリアル配置で、−OR3がアキシャル配置)である、請求項10に記載のプリオン増殖抑制剤。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれかに記載のプリオン増殖抑制剤からなる、プリオン病の予防剤または治療剤。
【請求項23】
前記プリオン病が、ウシ海綿状脳症(BSE)、クロイツフェルト−ヤコブ病、孤発性クロイツフェルト−ヤコブ病(sCJD)、変異クロイツフェルト−ヤコブ病(vCJD)、医原性クロイツフェルト−ヤコブ病(iCJD)、家族性クロイツフェルト−ヤコブ病(fCJD)、ゲルストマン-ストライスラー−シャインカー症候群(GSS)、致死性家族性不眠症(FFI)、慢性消耗病(CWD)、ネコ海綿状脳症、スクレイピーまたはクールーである、請求項22に記載のプリオン病の予防剤または治療剤。
【請求項24】
下記一般式(I)

〔式(I)中、R1は、−OH、−NHAc(式中、Acはアセチル基を示す。)または−NHSO3Hを示し;
2〜R4はそれぞれ独立に、水素原子または−SO3Hを示し;
2、R3およびR4のうちの少なくとも1つが−SO3Hであるか、または、R2、R3およびR4が全て水素原子のときR1は−NHSO3Hを示し;
5は、置換基を有していてもよいC1~6アルキル基、置換基を有していてもよいC2~6アルケニル基、置換基を有していてもよいC2~6アルキニル基、または置換基を有していてもよいC6~10アリール基を示し;
式中、結合

は、エクアトリアル配置またはアキシャル配置のいずれかの配置であることを示す。〕で表される化合物もしくはその医薬的に許容し得る塩またはこれらの水和物を有効成分として含有する医薬組成物を用いる、プリオン増殖抑制が有効な疾患の予防または治療方法。
【請求項25】
プリオン増殖抑制が有効な疾患の予防剤または治療剤の製造のための、下記一般式(I)

〔式(I)中、R1は、−OH、−NHAc(式中、Acはアセチル基を示す。)または−NHSO3Hを示し;
2〜R4はそれぞれ独立に、水素原子または−SO3Hを示し;
2、R3およびR4のうちの少なくとも1つが−SO3Hであるか、または、R2、R3およびR4が全て水素原子のときR1は−NHSO3Hを示し;
5は、置換基を有していてもよいC1~6アルキル基、置換基を有していてもよいC2~6アルケニル基、置換基を有していてもよいC2~6アルキニル基、または置換基を有していてもよいC6~10アリール基を示し;
式中、結合

は、エクアトリアル配置またはアキシャル配置のいずれかの配置であることを示す。〕で表される化合物もしくはその医薬的に許容し得る塩またはこれらの水和物の使用。

【図1】
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【国際公開番号】WO2005/077382
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【発行日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−518052(P2005−518052)
【国際出願番号】PCT/JP2005/002439
【国際出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(598091860)財団法人名古屋産業科学研究所 (23)
【Fターム(参考)】