説明

プリオン蛋白蓄積性疾患の診断プローブおよび治療薬ならびにプリオン蛋白の染色剤

プリオン蛋白が蓄積する疾患の診断、予防および/または治療に、あるいは試料中のプリオン蛋白の特異的染色に使用される、式(I)または(II):


で示される化合物またはその塩もしくは溶媒和物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、プリオン蛋白が蓄積する疾患の画像診断プローブ、特に、陽電子放出核種により標識されたプローブ、ならびに該プローブを含む診断用組成物に関する。本発明は、プリオン蛋白が脳に蓄積する疾患の予防/治療用組成物、ならびに試料中のプリオン蛋白の特異的染色剤にも関する。さらに本発明は、プリオン蛋白が脳に蓄積する疾患の診断、予防/治療方法、ならびに試料中のプリオン蛋白の検出方法にも関する。
【背景技術】
いわゆるプリオン蛋白が脳に蓄積する疾患には、ヒトではクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー病(GSS)、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(v−CJD)、致死性家族性不眠症(FFI)、クルー、ヒト以外の動物ではヒツジスクレイピー、ウシ海綿状脳症(BSE)、伝達性ミンク脳症、ネコ海綿状脳症などが知られており、いずれも致死性の感染性神経難病である。
これらの疾患においては、罹患した個体の脳をすりつぶして他の健常な個体に投与すると、疾病を伝播させることが可能であり、さらに罹患した脳では海綿状の病変がおこることから、これらの疾病は、伝達性海綿状脳症(transmisible spongiform encephalopathy;TSE)と呼ばれている。
プリオンという概念は伝達性海綿状脳症の原因因子として感染性蛋白質粒子(proteinaceousinfectious particle)、すなわちプリオン(prion)として1982年スタンレー・プルシナーによって初めて提唱された。プリオンとは病気の伝達に必要不可欠な病原体の本体が蛋白のみであり、自己複製に必要な核酸をそれ自身に含まない病原体の総称である。最近では伝達性海綿状脳症の病原体として異常プリオン蛋白が見出され、また伝達性海綿状脳症においてはプリオン蛋白が蓄積することから、同脳症はプリオン病と呼ばれるのが一般的になってきている。
ヒトプリオン蛋白は253アミノ酸からなる塩基性蛋白で、第20番染色体短腕にコードされている。正常プリオン蛋白はそのなかに3%以下のβシート構造しかもっていないが、異常プリオン蛋白では40%以上の同シート構造をもつことが知られている。すなわち、伝達性海綿状脳症ないしはプリオン病の病因因子、すなわち異常プリオン蛋白の本体とはその蛋白の高次構造の変化、すなわちβシート構造を豊富にもつことによって感染性を獲得した蛋白であり、また、異常プリオン蛋白はそれ自身鋳型となり、正常プリオン蛋白を自己と同じものに変えることが知られている。
正常プリオン蛋白はプロテアーゼにより容易に分解され、界面活性剤で溶解されるが、これに対して異常プリオン蛋白はプロテアーゼ抵抗性で界面活性剤に不溶であり、通常の滅菌ではその感染性は失われない。
クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)はヒトにおける代表的なプリオン病である。これにはその原因が不明とされる弧発性、遺伝子の変異に基づく家族性、医療行為(硬膜移植、角膜移植、等)に基づく医原性が含まれる。
ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー病(GSS)はプリオン遺伝子の変異に基づく遺伝性疾患である。
変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(v−CJD)はウシ海綿状脳症(BSE)に罹患したウシの神経組織を摂取したことが原因と推測されている。
クルーはパプアニューギニアのフォア(Fore)族の間で食人儀式により伝達していたことが知られている。
プリオン病患者数は日本においては年間110から120例の新規患者が発生する。そのなかの約90%が弧発性クロイツフェルト・ヤコブ病、約5%が遺伝性、残りの5%が後天性でそのなかには医原性および変異型クロイツフェルト・ヤコブ病が含まれる。
プリオン病のいくつかは、近年、重大な社会問題として浮かび上がっている。
まず、日本におけるヒト乾燥硬膜移植歴のある患者の医原性クロイツフェルト・ヤコブ病の問題である。日本においては1973年から年間10000枚を超えるヒト乾燥硬膜が脳外科手術時の硬膜の補填に使用されたが、不幸にも異常プリオン蛋白に汚染された硬膜を使用したことによると思われる患者が多発しており、また潜在的に危険な硬膜を使用された疑いのある、およびそのことを完全に否定できない移植歴をもつ患者は20万人にも達すると考えられている。
次に変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の問題である。変異型クロイツフェルト・ヤコブ病は前述したようにウシ海綿状脳症(BSE)に罹患したウシの神経組織を摂取したことが原因と推測されているが、欧州、特に英国では18万頭を超えるウシ海綿状脳症(BSE)が報告されており(Office International des Epizooties,2003年5月8日付けデータ)、また確定あるいは擬似変異型クロイツフェルト・ヤコブ病患者の死者数は132例、生存中の患者を含めると136例に及ぶことから(英国Department of Health、2003年7月11日付けデータ)、今後の推測では数千から数万の患者が発生することが危惧されている。
プリオン病の診断には現時点では、1)進行性痴呆を示すこと、2)脳波検査で周期性同期性放電(PSD)を示すこと、3)CT、MRIで脳萎縮が進行していること、4)脳脊髄液中14−3−3蛋白が増加すること、などを指標に評価する方法が一般的である。しかし、これらの診断法ではこの疾患を確定するには不十分であり、確定診断には、中枢神経系における異常プリオン蛋白の検出が最も確かな方法である。
多くの研究の結果、最初の臨床症状が現れるかなり前に、既にプリオン病特有の神経変性が始まっていることが判ってきた。また同病においては患者を取り巻く家族または臨床家が最初の臨床症状に気づいた時には、中枢神経系の病理像はすでに取り返しのつかない状態まで進行していることが知られている。
プリオン病の病理像は2つの主徴に代表される。すなわち中枢神経系におけるプリオン蛋白の蓄積と海綿状変性である。異常プリオン蛋白はプリオン病において特徴的であり、したがって特に脳内でこの蛋白をマーカーとして検出することが、同病の重要な診断法の1つとなりうる。
プリオン病の診断を目的として、脳内異常プリオン蛋白に特異的に結合する低分子有機化合物の探索が試みられている。しかしこれまでに異常プリオン蛋白に対して特異的に結合し、高い血液−脳関門透過性を有し、さらに毒性等に問題のない低分子有機化合物は未だ見いだされていない。
プリオン病の治療には現時点では特異的な治療法はなく、対症療法が主体である。近年、キナクリン、クロロキン、クロールプロジンなどがプリオン病の治療薬として注目されているが(Doh−uraら、ジャーナル オブ ウイロロジイ、74巻、4894−4897、2000年およびKorthら、プロシーディングス オブ ザ ナショナル アカデミイ オブ サイエンセス USA、98巻、9836−9841、2001年)、その中で最も有望とされたキナクリンにおいても必ずしも期待通りの臨床効果は得られていない。
本発明は、上記事情に鑑み、異常プリオン蛋白に対する結合特異性、ならびに血液−脳関門透過性が高く、プリオン蛋白が蓄積する疾患の診断プローブとして使用できる化合物ならびにかかる化合物を含む診断用組成物およびキットを提供することを課題とする。また本発明は、プリオン蛋白が蓄積する疾患の画像診断プロープとして用いられる標識されたかかる化合物、ならびにかかるプローブを含む画像診断用組成物およびキットも提供する。かかる化合物、組成物およびキットはプリオン蛋白を鮮明に染色するものである。さらにプリオン蛋白が脳に蓄積する疾患、例えば、ヒトではクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー病(GSS)、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(v−CJD)、致死性家族性不眠症(FFI)、クルー、ヒト以外の動物ではヒツジスクレイピー、ウシ海綿状脳症(BSE)、伝達性ミンク脳症、ネコ海綿状脳症などの予防および/または治療用の、かかる化合物を含む組成物を提供すること等も課題とする。さらなる本発明の課題は、上記化合物を用いる、プリオン蛋白が蓄積する疾患の診断方法(画像診断方法を包含)、治療および/または予防方法、ならびにプリオン蛋白の染色方法を提供することである。
【発明の開示】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、式(I)または(II)に示す化合物またはその塩もしくは溶媒和物が異常プリオン蛋白に対して非常に高い結合特異性を有し、さらに血液−脳関門透過性も高いことを見出し、本発明を完成するに至った。したがって、本発明化合物は、プリオン蛋白が蓄積する疾患の正確な早期診断・発見を可能にするものといえる。また、本発明化合物は血液−脳関門透過性も高いことから、生前における非侵襲性の診断が可能となる。さらに本発明化合物は、プリオン蛋白産生細胞による異常プリオン産生を抑制することが見出され、プリオン蛋白が蓄積する疾患の予防および/または治療に有用であることが示された。したがって、本発明は、プリオン蛋白が蓄積する疾患の診断用プローブ、ならびにそれを含む組成物およびキット、ならびにプリオン蛋白が蓄積する疾患の予防および/または治療用組成物、ならびに本発明化合物を用いる、プリオン蛋白が蓄積する疾患の診断方法(画像診断方法を包含)、治療および/または予防方法、ならびにプリオン蛋白の染色方法を提供するものである。
すなわち、本発明は、
(1)プリオン蛋白が蓄積する疾患の診断プローブとして使用される、式(I)または(II):

[式中、DはNR’、S、O、CH=CH、またはCHであり;
R’はH、炭素数1〜4個のアルキル、またはフェニルであり;ここに炭素数1〜4個のアルキルはハロゲンで置換されていてもよく;
EはN、またはCHであり;
は各々独立してH、炭素数1〜4個のアルキル、ハロゲン、OH、炭素数1〜4個のアルキル−OH、炭素数1〜4個のアルキル−O−炭素数1〜4個のアルキル、NH、NH(炭素数1〜4個のアルキル)、N(炭素数1〜4個のアルキル)、NO、O−炭素数1〜4個のアルキル、COOH、およびSOHからなる群より選択され;ここに炭素数1〜4個のアルキルはハロゲンで置換されていてもよく;
QはNまたはCRであり;
はH、炭素数1〜4個のアルキル、ハロゲン、OH、炭素数1〜4個のアルキル−OH、炭素数1〜4個のアルキル−O−炭素数1〜4個のアルキル、NH、NH(炭素数1〜4個のアルキル)、N(炭素数1〜4個のアルキル)、NO、O−炭素数1〜4個のアルキル、COOH、およびSOHからなる群より選択され;ここに炭素数1〜4個のアルキルはハロゲンで置換されていてもよく;
mは0〜4の整数であり;
およびRは独立してH、炭素数1〜4個のアルキル、ハロゲン、OH、炭素数1〜4個のアルキル−OH、炭素数1〜4個のアルキル−O−炭素数1〜4個のアルキル、NH(炭素数1〜4個のアルキル)、NH、N(炭素数1〜4個のアルキル)、NO、O−炭素数1〜4個のアルキル、COOH、およびSOHからなる群より選択され;ここに炭素数1〜4個のアルキルはハロゲンで置換されていてもよく;
あるいはRおよびRは一緒になって、1〜4個のRで置換されていてもよいベンゼン環またはナフタレン環を形成し;
はH、炭素数1〜4個のアルキル、ハロゲン、OH、炭素数1〜4個のアルキル−OH、炭素数1〜4個のアルキル−O−炭素数1〜4個のアルキル、NH、NH(炭素数1〜4個のアルキル)、N(炭素数1〜4個のアルキル)、NO、O−炭素数1〜4個のアルキル、COOH、SOH、および下記(a)〜(e)で示されるいずれかの基からなる群より選択され;ここに炭素数1〜4個のアルキルはハロゲンで置換されていてもよく;


ここに各Rは独立してH、炭素数1〜4個のアルキル、ハロゲン、OH、炭素数1〜4個のアルキル−OH、炭素数1〜4個のアルキル−O−炭素数1〜4個のアルキル、NH、NH(炭素数1〜4個のアルキル)、N(炭素数1〜4個のアルキル)、N=CH−アリル、NO、O−炭素数1〜4個のアルキル、COOH、およびSOHからなる群より選択され;ここに炭素数1〜4個のアルキルはハロゲンで置換されていてもよく;
各Rは独立してH、炭素数1〜4個のアルキル、ハロゲン、OH、炭素数1〜4個のアルキル−OH、炭素数1〜4個のアルキル−O−炭素数1〜4個のアルキル、NH、NH(炭素数1〜4個のアルキル)、N(炭素数1〜4個のアルキル)、NO、O−炭素数1〜4個のアルキル、COOH、SOH、および下記(f)〜(l)で示されるいずれかの基からなる群より選択され;ここに炭素数1〜4個のアルキルはハロゲンで置換されていてもよく;隣接する炭素に結合した2個のRがメチレンジオキシ基を形成してもよく;ここに炭素数1〜4個のアルキルはハロゲンで置換されていてもよく;


ここに各Rは独立してH、炭素数1〜4個のアルキル、ハロゲン、OH、炭素数1〜4個のアルキル−OH、炭素数1〜4個のアルキル−O−炭素数1〜4個のアルキル、NH、NH(炭素数1〜4個のアルキル)、N(炭素数1〜4個のアルキル)、NO、O−炭素数1〜4個のアルキル、COOH、およびSOHからなる群より選択され;ここに炭素数1〜4個のアルキルはハロゲンで置換されていてもよく;
Aは下記(i)〜(ix)で示されるいずれかの環であり;


ここに各Rは独立してH、炭素数1〜4個のアルキル、ハロゲン、OH、炭素数1〜4個のアルキル−OH、炭素数1〜4個のアルキル−O−炭素数1〜4個のアルキル、NH、NH(炭素数1〜4個のアルキル)、N(炭素数1〜4個のアルキル)、NO、O−炭素数1〜4個のアルキル、フェニル、COOH、およびSOHからなる群より選択され;ここに炭素数1〜4個のアルキルはハロゲンで置換されていてもよく;
XはNまたはCHであり;
YはNまたはCHであり;
ZはO、S、CHまたはN−C2p+1であり;
pは0〜4の整数である]
で示される化合物またはその塩もしくは溶媒和物;
(2)BF−124、BF−125、BF−126、BF−133、BF−136、BF−142、BF−143、BF−147、BF−148、BF−150、BF−151、BF−154、BF−160、BF−162、BF−165、BF−168、BF−172、BF−180、BF−191、BF−192、BF−196、BF−197、BF−198、BF−200、BF−201、BF−203、BF−206、BF−208、BF−225、BF−227、BF−228、N−227、N−228、N−276、N−282、N−283、およびN−407からなる群より選択される(1)に記載の化合物;
(3)BF−124、BF−148、BF−165、BF−168、BF−191、BF−192、BF−196、BF−197、BF−198、BF−200、BF−201、BF−203、BF−206、BF−208、BF−227、BF−228、N−276、N−277、およびN−313からなる群より選択される(1)に記載の化合物;
(4)標識されている(1)ないし(3)のいずれかに記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物;
(5)放射性核種で標識されている(1)ないし(3)のいずれかに記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物;
(6)γ線放出核種で標識されている(1)ないし(3)のいずれかに記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物;
(7)99mTc、111In、67Ga、201Tl、123Iおよび133Xeからなる群より選択されるγ線放出核種で標識されている(1)ないし(3)のいずれかに記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物;
(8)99mTcおよび123Iからなる群より選択されるγ線放出核種で標識されている(1)ないし(3)のいずれかに記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物;
(9)陽電子放出核種で標識されている(1)ないし(3)のいずれかに記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物;
(10)11C、13N、15Oおよび18Fからなる群より選択される陽電子放出核種で標識されている(1)ないし(3)のいずれかに記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物;
(11)18Fで標識されている(1)ないし(3)のいずれかに記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物;
(12)(1)ないし(11)のいずれかに記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物および医薬上許容される担体を含む、プリオン蛋白が蓄積する疾患の診断用組成物;
(13)(1)ないし(11)のいずれかに記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を必須の構成成分として含む、プリオン蛋白が蓄積する疾患の診断用キット;
(14)(1)ないし(11)のいずれかに記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を用いることを特徴とする、プリオン蛋白が蓄積する疾患の診断方法;
(15)該化合物が(2)に記載の化合物である、(12)に記載の組成物、(13)に記載のキット、または(14)に記載の方法;
(16)(5)ないし(11)のいずれかに記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物および医薬上許容される担体を含む、プリオン蛋白が蓄積する疾患の画像診断用組成物;
(17)(8)に記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を含む(16)に記載の組成物;
(18)(11)に記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を含む(16)に記載の組成物;
(19)(5)ないし(11)のいずれかに記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を必須の構成成分として含む、プリオン蛋白が蓄積する疾患の画像診断用キット;
(20)(8)に記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を必須の構成成分として含む(19)に記載のキット;
(21)(11)に記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を必須の構成成分として含む(19)に記載のキット;
(22)(5)ないし(11)のいずれかに記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を用いることを特徴とする、プリオン蛋白が蓄積する疾患の画像診断方法;
(23)該化合物がγ線放出核種または陽電子放出核種で標識された(3)に記載の化合物であり、該画像診断がPETまたはSPECTによるものである、(16)〜(18)のいずれかに記載の組成物、(19)〜(21)のいずれかに記載のキット、または(22)に記載の方法;
(24)(1)ないし(11)のいずいれかに記載の化合物またはその塩もくは溶媒和物を含む試料中のプリオン蛋白の染色用組成物;
(25)(1)ないし(11)のいずいれかに記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を必須構成成分として含む試料中のプリオン蛋白の染色用キット;
(26)(1)ないし(11)のいずいれかに記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を用いることを特徴とする、試料中のプリオン蛋白の染色方法;
(27)該化合物が(2)に記載の化合物である、(24)に記載の組成物、(25)に記載のキット、または(26)に記載の方法;
(28)生体内にプリオン蛋白が蓄積する疾患を有する個体の体外診断のための、(1)ないし(11)のいずれかに記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を含む組成物;
(29)生体内にプリオン蛋白が蓄積する疾患を有する個体の体外診断のための、(1)ないし(11)のいずれかに記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を必須構成成分として含むキット;
(30)被験動物から試料を得て、該試料に(1)ないし(11)のいずれかに記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を接触させることを特徴とする、生体内にプリオン蛋白が蓄積する疾患を有する個体の体外診断方法;
(31)該化合物がBF−168、BF−191、BF−192、BF−196、BF−197、BF−198、BF−200、BF−201、BF−203、BF−206、BF−208、BF−227、BF−228、N−278からなる群より選択されるものである、(28)に記載の組成物、(29)に記載のキット、または(30)に記載の方法;
(32)(1)に記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物および医薬上許容される担体を含有する、生体内のプリオン蛋白の蓄積が病因または病因の一部となる疾患の予防および/または治療用医薬組成物;
(33)疾患が伝達性海綿状脳症あるいはプリオン病からなる群より選択される(32)に記載の医薬組成物;
(34)(1)に記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を対象に投与することを特徴とする、生体内のプリオン蛋白の蓄積が病因または病因の一部となる疾患の予防および/または治療方法;
(35)疾患が伝達性海綿状脳症あるいはプリオン病からなる群より選択される(34)に記載の方法;
(36)生体内のプリオン蛋白の蓄積が病因または病因の一部となる疾患の予防および/または治療のための、(1)に記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物の使用;
(37)疾患が伝達性海綿状脳症あるいはプリオン病からなる群より選択される(36)に記載の使用;
(38)生体内のプリオン蛋白の蓄積が病因または病因の一部となる疾患の予防および/または治療のための医薬の製造のための本発明化合物の使用;
(39)疾患が伝達性海綿状脳症あるいはプリオン病からなる群より選択される(38)に記載の使用;
(40)該化合物がBF−130、BF−135、BF−136、BF−141、BF−146、BF−148、BF−150、BF−153、BF−168、N−220、N−221、N−223、N−224、N−232、N−243、N−246、N−407、N−437、N−441、N−453、N−457、BF−192、BF−193、BF−198、BF−199、BF−201、BF−203、BF−204、BF−206、BF−208、BF−211、BF−213、BF−227、BF−231からなる群より選択されるものである、(32)または(33)に記載の組成物、(34)または(35)に記載のキット、(36)または(37)に記載の方法、あるいは(38)または(39)に記載の方法;
(41)該化合物がBF−130、BF−135、BF−146、N−407、N−437、N−441、N−453、N−457、BF−208、BF−227、BF−231、BF−192、BF−193、BF−198、BF−199、BF−201、BF−203、BF−204、BF−206、BF−208、BF−211、BF−213、N−220、N−221、N−223、N−224からなる群より選択されるものである、(32)または(33)に記載の組成物、(34)または(35)に記載のキット、(36)または(37)に記載の方法、あるいは(38)または(39)に記載の方法;
(42)(1)に記載の式(I)の化合物または式(II)の化合物の標識化前駆体;ならびに
(43)トシレート誘導体であるBF−168、BF−224またはN−227の標識化前駆体
を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
図1は本発明化合物(BF−124、N−276、N−277、BF−283、BF−162)によるGSS患者脳切片における異常型プリオン蛋白の斑状沈着物(クルー斑:図中の矢印)の検出を示す(スケールバーは100μm)。
図2は本発明化合物(BF−125、N−282、BF−133、BF−145、BF−148、BF−165)によるGSS患者脳切片における異常型プリオン蛋白の斑状沈着物(クルー斑:図中の矢印)の検出を示す(スケールバーは100μm)。
図3は本発明化合物(BF−168、BF−169)によるGSS患者脳切片における異常型プリオン蛋白の斑状沈着物(クルー斑:図中の矢印)の検出を示す(スケールバーは100μm)。
図4は本発明化合物(BF−126、BF−166、N−398)によるGSS患者脳切片における異常型プリオン蛋白の斑状沈着物(クルー斑:図中の矢印)の検出を示す(スケールバーは100μm)。
図5は本発明化合物(BF−136)によるGSS患者脳切片における異常型プリオン蛋白の斑状沈着物(クルー斑:図中の矢印)の検出を示す(スケールバーは100μm)。
図6は本発明化合物(BF−142)によるGSS患者脳切片における異常型プリオン蛋白の斑状沈着物(クルー斑:図中の矢印)の検出を示す(スケールバーは100μm)。
図7は本発明化合物(BF−151)によるGSS患者脳切片における異常型プリオン蛋白の斑状沈着物(クルー斑:図中の矢印)の検出を示す(スケールバーは100μm)。
図8は本発明化合物(BF−154)によるGSS患者脳切片における異常型プリオン蛋白の斑状沈着物(クルー斑:図中の矢印)の検出を示す(スケールバーは100μm)。
図9は本発明化合物(N−310、N−313)によるGSS患者脳切片における異常型プリオン蛋白の斑状沈着物(クルー斑:図中の矢印)の検出を示す(スケールバーは100μm)。
図10は本発明化合物(BF−227)によるGSS患者脳切片における異常型プリオン蛋白の斑状沈着物(クルー斑:図中の矢印)の検出を示す(スケールバーは100μm)。
図11は本発明化合物(N−277)によるGSS患者脳切片における異常型プリオン蛋白の斑状沈着物(クルー斑:図中の矢印)の検出を示す(スケールバーは100μm)。
図12は本発明化合物(N−407)によるGSS患者脳切片における異常型プリオン蛋白の斑状沈着物(クルー斑:図中の矢印)の検出を示す(スケールバーは100μm)。
図13は本発明化合物(N−408、N−438、N−440、N−441、N−454)によるGSS患者脳切片における異常型プリオン蛋白の斑状沈着物(クルー斑:図中の矢印)の検出を示す(スケールバーは100μm)。
図14は本発明化合物(SA−271)によるGSS患者脳切片における異常型プリオン蛋白の斑状沈着物(クルー斑:図中の矢印)の検出を示す(スケールバーは100μm)。
図15は本発明化合物(BF−179)によるGSS患者脳切片における異常型プリオン蛋白の斑状沈着物(クルー斑:図中の矢印)の検出を示す(スケールバーは100μm)。
図16(PrP GSS)はGSS患者脳切片における異常型プリオン蛋白の免疫染色を示す。
図17は本発明化合物(BF−124、N−276、N−277、BF−283、BF−162)による異常型プリオン蛋白持続感染培養細胞ScNa2細胞における異常型プリオン蛋白(図中3つの矢印)の産生阻害効果を示す。
図18は本発明化合物(BF−125、N−282、BF−133、BF−135)による異常型プリオン蛋白持続感染培養細胞ScNa2細胞における異常型プリオン蛋白(図中3つの矢印)の産生阻害効果を示す。
図19は本発明化合物(BF−140、BF−145、BF−146、BF−148)による異常型プリオン蛋白持続感染培養細胞ScNa2細胞における異常型プリオン蛋白(図中3つの矢印)の産生阻害効果を示す。
図20は本発明化合物(BF−165、BF−168、BF−169、BF−173、BF−180)による異常型プリオン蛋白持続感染培養細胞ScNa2細胞における異常型プリオン蛋白(図中3つの矢印)の産生阻害効果を示す。
図21は本発明化合物(BF−126、BF−166、N−398、N−404、N−442)による異常型プリオン蛋白持続感染培養細胞ScNa2細胞における異常型プリオン蛋白(図中3つの矢印)の産生阻害効果を示す。
図22は本発明化合物(BF−136)による異常型プリオン蛋白持続感染培養細胞ScNa2細胞における異常型プリオン蛋白(図中3つの矢印)の産生阻害効果を示す。
図23は本発明化合物(BF−137、BF−138、BF−139、BF−141、BF−142)による異常型プリオン蛋白持続感染培養細胞ScNa2細胞における異常型プリオン蛋白(図中3つの矢印)の産生阻害効果を示す。
図24は本発明化合物(BF−151、BF−161)による異常型プリオン蛋白持続感染培養細胞ScNa2細胞における異常型プリオン蛋白(図中3つの矢印)の産生阻害効果を示す。
図25は本発明化合物(BF−153、SA−272)による異常型プリオン蛋白持続感染培養細胞ScNa2細胞における異常型プリオン蛋白(図中3つの矢印)の産生阻害効果を示す。
図26は本発明化合物(N−411)による異常型プリオン蛋白持続感染培養細胞ScNa2細胞における異常型プリオン蛋白(図中3つの矢印)の産生阻害効果を示す。
図27は本発明化合物(BF−158、BF−170、N−310、N−313)による異常型プリオン蛋白持続感染培養細胞ScNa2細胞における異常型プリオン蛋白(図中3つの矢印)の産生阻害効果を示す。
図28は本発明化合物(BF−187、BF−189)による異常型プリオン蛋白持続感染培養細胞ScNa2細胞における異常型プリオン蛋白(図中3つの矢印)の産生阻害効果を示す。
図29は本発明化合物(N−402、N−457、N−491)による異常型プリオン蛋白持続感染培養細胞ScNa2細胞における異常型プリオン蛋白(図中3つの矢印)の産生阻害効果を示す。
図30は本発明化合物(N−407)による異常型プリオン蛋白持続感染培養細胞ScNa2細胞における異常型プリオン蛋白(図中3つの矢印)の産生阻害効果を示す。
図31は本発明化合物(N−408、N−438、N−439、N−440、N−441)による異常型プリオン蛋白持続感染培養細胞ScNa2細胞における異常型プリオン蛋白(図中3つの矢印)の産生阻害効果を示す。
図32は本発明化合物(N−452、N−453、N−454、N−455)による異常型プリオン蛋白持続感染培養細胞ScNa2細胞における異常型プリオン蛋白(図中3つの矢印)の産生阻害効果を示す。
図33は本発明化合物(N−437、N−463、N−464、N−465、N−467、N−468)による異常型プリオン蛋白持続感染培養細胞ScNa2細胞における異常型プリオン蛋白(図中3つの矢印)の産生阻害効果を示す。
図34は本発明化合物(N−469、N−471、N−472、N−473、N−475)による異常型プリオン蛋白持続感染培養細胞ScNa2細胞における異常型プリオン蛋白(図中3つの矢印)の産生阻害効果を示す。
図35は本発明化合物(SA−271)による異常型プリオン蛋白持続感染培養細胞ScNa2細胞における異常型プリオン蛋白(図中3つの矢印)の産生阻害効果を示す。
図36は本発明化合物(BF−178、BF−179)による異常型プリオン蛋白持続感染培養細胞ScNa2細胞における異常型プリオン蛋白(図中3つの矢印)の産生阻害効果を示す。
発明の詳細な説明
本発明の化合物は一般式(I)または(II):

で示されるものであり、プリオン蛋白に対する特異性が高い。したがって、それらの化合物(その塩もしくは溶媒和物を包含)を、プリオン蛋白が蓄積する疾患の診断、予防および/または治療に使用することができる。また、式(I)または(II)の化合物をプリオン蛋白の染色剤として使用することもできる。式(I)または(II)の化合物は標識されていてもよく、特に、放射性標識された式(I)または(II)の化合物はプリオン蛋白が蓄積する疾患の画像診断に適している。
本発明の診断プローブとして使用される物質は上の一般式(I)または(II)で示される化合物またはその塩もしくは溶媒和物である。特に断らない限り、本明細書において診断という場合には画像診断を含むものとする。
以下、式(I)または(II)の化合物の構造および各置換基について説明する。
本明細書において、「炭素数1〜4個のアルキル」という場合、メチル、エチル、プロピル、ブチル、およびそれらの構造異性体を包含するものとする。
「ハロゲン」はフッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。
DはNR’、S、O、CH=CH、またはCHである。R’はH、炭素数1〜4個のアルキル、またはフェニルであり、ここに炭素数1〜4個のアルキルはハロゲンで置換されていてもよい。好ましくは、DはS、O、CHであり、好ましくは、R’はHである。
EはNまたはCHである。
各Rは独立してH、炭素数1〜4個のアルキル、ハロゲン、OH、炭素数1〜4個のアルキル−OH、炭素数1〜4個のアルキル−O−炭素数1〜4個のアルキル、NH、NH(炭素数1〜4個のアルキル)、N(炭素数1〜4個のアルキル)、NO、O−炭素数1〜4個のアルキル、COOH、およびSOHからなる群より選択され、ここに炭素数1〜4個のアルキルはハロゲンで置換されていてもよい。好ましいRは水素、炭素数1〜4個のアルキル、およびハロゲンである。
QはNまたはCRである。
はH、炭素数1〜4個のアルキル、ハロゲン、OH、炭素数1〜4個のアルキル−OH、炭素数1〜4個のアルキル−O−炭素数1〜4個のアルキル、NH、NH(炭素数1〜4個のアルキル)、N(炭素数1〜4個のアルキル)、NO、O−炭素数1〜4個のアルキル、COOH、およびSOHからなる群より選択され、ここに炭素数1〜4個のアルキルはハロゲンで置換されていてもよい。
好ましいRは水素、および炭素数1〜4個のアルキルである。
mは0〜4の整数であり、好ましくは、mは0または1である。mが1以上の場合、本発明の化合物にはシス、トランス異性体が存在しうるが、いずれであってもかまわない。
およびRは独立してH、炭素数1〜4個のアルキル、ハロゲン、OH、炭素数1〜4個のアルキル−OH、炭素数1〜4個のアルキル−O−炭素数1〜4個のアルキル、NH、NH(炭素数1〜4個のアルキル)、N(炭素数1〜4個のアルキル)、NO、O−炭素数1〜4個のアルキル、COOH、およびSOHからなる群より選択され、ここに炭素数1〜4個のアルキルはハロゲンで置換されていてもよい。あるいはRおよびRは一緒になって、1〜4個のRで置換されていてもよいベンゼン環またはナフタレン環を形成してもよい。好ましいRおよびRは水素およびメチルである。RおよびRが一緒になって置換されていてもよいベンゼン環を形成する場合も好ましい。
はH、炭素数1〜4個のアルキル、ハロゲン、OH、炭素数1〜4個のアルキル−OH、炭素数1〜4個のアルキル−O−炭素数1〜4個のアルキル、NH、NH(炭素数1〜4個のアルキル)、N(炭素数1〜4個のアルキル)、NO、O−炭素数1〜4個のアルキル、COOH、SOH、および下記(a)〜(e)で示されるいずれかの基からなる群より選択され、ここに炭素数1〜4個のアルキルはハロゲンで置換されていてもよい。


ここに各Rは独立してH、炭素数1〜4個のアルキル、ハロゲン、OH、炭素数1〜4個のアルキル−OH、炭素数1〜4個のアルキル−O−炭素数1〜4個のアルキル、NH、NH(炭素数1〜4個のアルキル)、N(炭素数1〜4個のアルキル)、N=CH−アリル、NO、O−炭素数1〜4個のアルキル、COOH、およびSOHからなる群より選択され、ここに炭素数1〜4個のアルキルはハロゲンで置換されていてもよい。
好ましいRはH、NH、NH(炭素数1〜4個のアルキル)、N(炭素数1〜4個のアルキル)である。好ましいRはH、ハロゲン、NH、NH(炭素数1〜4個のアルキル)、N(炭素数1〜4個のアルキル)であり、またRは(a)〜(e)のいずれかであってもよい。
各Rは独立してH、炭素数1〜4個のアルキル、ハロゲン、OH、炭素数1〜4個のアルキル−OH、炭素数1〜4個のアルキル−O−炭素数1〜4個のアルキル、NH、NH(炭素数1〜4個のアルキル)、N(炭素数1〜4個のアルキル)、NO、O−炭素数1〜4個のアルキル、COOH、SOH、および下記(f)〜(l)で示されるいずれかの基からなる群より選択され、ここに炭素数1〜4個のアルキルはハロゲンで置換されていてもよく、隣接する炭素に結合した2個のRがメチレンジオキシ基を形成してもよく、ここに炭素数1〜4個のアルキルはハロゲンで置換されていてもよい。


ここに各Rは独立してH、炭素数1〜4個のアルキル、ハロゲン、OH、炭素数1〜4個のアルキル−OH、炭素数1〜4個のアルキル−O−炭素数1〜4個のアルキル、NH、NH(炭素数1〜4個のアルキル)、N(炭素数1〜4個のアルキル)、NO、O−炭素数1〜4個のアルキル、COOH、およびSOHからなる群より選択され、ここに炭素数1〜4個のアルキルはハロゲンで置換されていてもよい。
およびRが一緒になってベンゼン環またはナフタレン環を形成する場合、それらに対する好ましい置換基RはH、ハロゲン、OH、NO、NH、置換されていてもよい炭素数1〜4個のアルキルであり、上記(f)〜(l)のいずれかであってもよい。好ましいRはH、ハロゲン、NHである。Aは下記(i)〜(ix)で示されるいずれかの環であり、

ここに各Rは独立してH、炭素数1〜4個のアルキル、ハロゲン、OH、炭素数1〜4個のアルキル−OH、炭素数1〜4個のアルキル−O−炭素数1〜4個のアルキル、NH、NH(炭素数1〜4個のアルキル)、N(炭素数1〜4個のアルキル)、NO、O−炭素数1〜4個のアルキル、フェニル、COOH、およびSOHからなる群より選択され、ここに炭素数1〜4個のアルキルはハロゲンで置換されていてもよい。
好ましい環Aはベンゼン環およびナフタレン環である。好ましいRはH、炭素数1〜4個のアルキル、ハロゲン、OHである。
XはNまたはCHである。YはNまたはCHである。ZはO、S、CHまたはN−C2p+1であり、pは0ないし4の整数である。好ましくは、ZはO、S、CH、N−CHである。
式(I)または(II)の化合物の塩も本発明に包含される。式(I)または(II)の化合物中の窒素原子またはいずれかの官能基とともに塩が形成されてもよい。例えば、化合物中にカルボキシル基またはスルホン酸基が存在するような場合、これと金属との間に塩が形成されてもよい。かかる塩の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウムのごときアルカリ金属との塩、マグネシウム、カルシウム、バリウムのごときアルカリ土類金属との塩等が挙げられる。式(I)または(II)の化合物が水酸基を含む場合、その水素がナトリウム、カリウム等の金属となっている化合物も、本発明に包含される。さらに、式(I)または(II)の化合物と金属塩とで形成される錯体(例えば塩化マグネシウム、塩化鉄のごとき金属塩とで形成される錯体)も本明細書においては式(I)または(II)の化合物の塩に含めることとする。対象の体内に適用される組成物またはキットまたは方法に本発明化合物の塩を使用する場合、それは医薬上許容される塩であることが好ましい。また、本発明化合物(I)はその置換基の種類によっては陰イオンとともにオニウム塩を形成してもよく、かかる陰イオンとしてはハロゲン化物イオン、有機酸イオン、スルホン酸イオン、過塩素酸イオン等が挙げられる。かかるオニウム塩も医薬上許容されるものであることが好ましい。式(I)または(II)の化合物の医薬上許容される塩としては、例えば、塩素、臭素、ヨウ素のごときハロゲン化物イオンとの塩、あるいはナトリウム、カリウム、カルシウムのごとき金属との塩などがある。かかる塩は本発明に包含される。さらに本発明化合物は塩化鉄、塩化コバルトのごとき金属塩とで錯体を形成する場合もあり、かかる錯体も本発明に包含される。また、式(I)または(II)の化合物の溶媒和物も本発明に包含される。溶媒和物としては、水和物、メタノール和物、エタノール和物、アンモニア和物等が挙げられる。対象の体内に適用される組成物またはキットまたは方法に本発明化合物の溶媒和物を使用する場合、それは医薬上許容される溶媒和物であることが好ましい。医薬上許容される溶媒和物としては、水和物、エタノール和物等が挙げられる。
本明細書において、「本発明化合物」、「本発明の化合物」という場合には式(I)または式(II)で示される化合物をいい、それらは未標識であっても標識されていてもよい。また、存在する場合にはそれらの塩および溶媒和物を包含するものとする。例えば、「N−437」という場合、未標識または標識された化合物N−437を包含し、さらにその塩(例えば、臭化水素酸塩)または溶媒和物(存在する場合には)を包含するものとする。
本発明の化合物の例を表1に示した。上述のごとく、これらの化合物はプリオン蛋白に対する特異性が高いので、プリオン蛋白蓄積性疾患の診断プローブ、プリオン蛋白の特異的染色剤、あるいはプリオン蛋白蓄積性疾患の治療薬等としての用途がある。
プリオン蛋白の染色の鮮明さの点からみると、好ましい本発明の化合物としては、BF−124、BF−125、BF−126、BF−133、BF−136、BF−142、BF−143、BF−147、BF−148、BF−150、BF−151、BF−154、BF−160、BF−162、BF−165、BF−168、BF−172、BF−180、BF−191、BF−192、BF−196、BF−197、BF−198、BF−200、BF−201、BF−203、BF−206、BF−208、BF−225、BF−227、BF−228、N−227、N−228、N−276、N−282、N−283、N−407などが挙げられる(実施例3、図1〜図4参照)
抗プリオン作用の点からみると(実施例4、図17〜36参照)、好ましい本発明の化合物としては、BF−130、BF−135、BF−136、BF−141、BF−146、BF−148、BF−150、BF−153、BF−168、N−220、N−221、N−223、N−224、N−232、N−243、N−246、N−407、N−437、N−441、N−453、N−457、BF−192、BF−193、BF−198、BF−199、BF−201、BF−203、BF−204、BF−206、BF−208、BF−211、BF−213、BF−227、BF−231などが挙げられる。さらに、脳移行性、急性毒性等のデータを加えて勘案すると(実施例のセクション参照)、本発明の抗プリオン作用化合物のなかでも、BF−130、BF−135、BF−146、N−407、N−437、N−441、N−453、N−457、BF−208、BF−227、BF−231、BF−192、BF−193、BF−198、BF−199、BF−201、BF−203、BF−204、BF−206、BF−208、BF−211、BF−213、N−220、N−221、N−223、N−224などがさらに好ましい。これらの化合物は抗プリオン作用が高いことから、プリオン蛋白に対する特異性が高いと考えられるので、上記のようなプリオン蛋白の染色にも有用と考えられる。このような化合物の例としては、BF−135、BF−146、BF−148、BF−168が挙げられる(実施例3、図1〜図15、実施例4、表4、図17〜36参照)。
























本発明においては、プリオン蛋白が蓄積する疾患を有する個体において、インビボで特異的に異常プリオン蛋白に結合する、標識された式(I)または(II)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を、プリオン蛋白が蓄積する疾患の画像診断プローブとして使用する。あとで、実施例にて示すように、本発明化合物により生体内の異常プリオン蛋白が鮮明に染色される。本明細書における「プリオン蛋白が蓄積する疾患」とは、プリオン蛋白の脳内蓄積を主徴とする疾病をいい、プリオン蛋白をマーカーとして診断可能な疾病としては、例えば、ヒトではクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー病(GSS)、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(v−CJD)、致死性家族性不眠症(FFI)、クルー、ヒト以外の動物ではヒツジスクレイピー、ウシ海綿状脳症(BSE)、伝達性ミンク脳症、ネコ海綿状脳症などがあげられる。本明細書においてこれらの疾病をまとめて、プリオン病ということがある。
上述のごとく、最初の臨床症状が現れるかなり前に、既にプリオン病に特徴的な神経変性特有の神経変性が始まっていることが判ってきた。プリオン病が発症するかなり以前にプリオン蛋白の蓄積が始まると考えられる。したがって、プリオン蛋白を早期に検出することにより、プリオン病の早期発見・診断が可能になる。
よって、式(I)または(II)で示される化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を含む本発明のプリオン病診断用組成物は、その早期発見・診断に有用である。
さらに本発明は、被験動物から試料を得て、これに本発明の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を接触させることを特徴とする、生体内にプリオン蛋白が蓄積する疾患を有する個体の検出方法にも関する。被験動物は哺乳動物、例えばウシ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、サル等が挙げられ、ヒトも被験動物に包含される。被験動物から得られる生体試料はいずれの種類のものであってもよく、生検試料、剖検試料を問わない。試料としては脳試料および脊髄試料が一般的であるが、尿や血液等の体液であってもよい。得られた生体試料を本発明の化合物と接触させ、次いで、試料中のプリオン蛋白と本発明化合物との結合を、適当な手段、例えば顕微鏡観察により検出、観察あるいは同定するのが一般的である。試料の種類、試料の取得方法、試料と本発明の化合物との接触方法等は、当業者が目的に応じて容易に選択することができるものである。あるいは化合物が標識されている場合には適当な手段、例えば、蛍光計、酵素反応の測定、シンチレーションカウンター等により同定を行なうこともできる。標識には、蛍光物質、アフィニティー物質、酵素基質、放射性核種等があり、これらの標識、化合物への結合方法、ならびに検出手段・方法は当該分野においてよく知られている。
したがって、本発明化合物はプリオン病の体外診断薬として使用することができる。本発明化合物は異常プリオン蛋白に結合することから、ヒトおよび動物のプリオン病の染色剤および体外診断薬としても応用できる。これまで免疫染色およびウェスタン ブロットで異常プリオン蛋白を確認することによって確定診断してきたプリオン病を、本発明化合物を用いることにより、より容易に診断することができる。
例えば、これまでの技術ではウシ海綿状脳症の異常プリオン蛋白を確認するには同プリオン蛋白を1次検査および1次検査の再検査としてエライザ法、2次検査の確認検査の1つとしてウエスタン ブロット法、2次検査のもう1つの確認検査として組織切片の免疫組織学的検査により確認しているが、脳切片または脳ホモジネートを、本発明化合物を用いて染色または定量することにより、より容易かつ短時間で異常プリオン蛋白を確認し、プリオン病を診断することができる。またリンパ組織、尿、血液中のプリオン蛋白を、本発明化合物を用いて確認することにより、プリオン病を診断することができる。さらにウシ由来食品、ウシ由来医療用製剤(例えばゼラチンカプセル)、ウシ由来化粧品(例えばコラーゲン)等中の異常プリオン蛋白を、本発明化合物を用いて確認することができる。
したがって、本発明は、被験動物から得た試料あるいはプリオン病(例えば、ウシ海綿状脳症)に罹病している疑いのある動物由来の製品に本発明の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を接触させることを特徴とする、生体内にプリオン蛋白が蓄積する疾患を有する個体の体外診断方法、ならびにかかる体外診断方法に使用される、本発明の化合物を含む体外診断用組成物および本発明の化合物を必須構成成分として含む体外診断用キットを提供する。これらの場合、本発明化合物は標識されていなくても、あるいは標識されていてもよく、試料を対象から取り出してから染色するので、塩もしくは溶媒和物は医薬上許容されるものでなくてもよい。かかる体外診断に使用するのに好ましい本発明化合物としては、BF−168、BF−191、BF−192、BF−196、BF−197、BF−198、BF−200、BF−201、BF−203、BF−206、BF−208、BF−227、BF−228、N−278などが挙げられる。
さらに本発明は、本発明の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒物を用いることを特徴とする、プリオン蛋白が蓄積する疾患の診断方法に関する。該方法は、対象から試料(例えば、脳試料)を取得し、これに本発明の化合物を接触させて、試料中のプリオン蛋白と本発明の化合物との結合を適当な手段(例えば、顕微鏡観察)により検出することにより行なわれる。さらに本発明は、放射性標識された本発明化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を用いることを特徴とする、プリオン蛋白が蓄積する疾患の画像診断方法にも関する。本発明の化合物を対象体内に投与し、一定時間後に上述のごとくPET等の装置にて非侵襲的に画像を得てもよい。これらの方法における試料の種類、取得方法、本発明の化合物との接触方法、プリオン蛋白と本発明の化合物との結合の検出方法等、あるいは本発明化合物の対象への投与方法、投与量、画像診断装置および方法等は当業者が適宜選択して本発明を実施することができる。
プリオン蛋白が蓄積する疾患のインビボでの診断においては本発明化合物を標識したものを診断プローブとして使用するのが一般的である。プリオン蛋白が蓄積する疾患の画像診断には通常、放射性核種で標識したプローブを使用する。当該分野においてよく知られた方法により種々の放射性核種で本発明化合物を標識することができる。例えば、H、14C、35S、131I等は以前から使用されている放射性核種であり、インビトロでの利用例が多い。画像診断プローブおよびその検出手段に求められる一般的要件としては、インビボで診断できること、患者へのダメージが少ないこと(特に非侵襲的であること)、検出感度が高いこと、半減期が適当な長さであること(標識プローブ調製時間、診断時間が適当であること)等が挙げられる。そこで、最近では、高い検出感度と物質透過性を示すγ線を利用した陽電子断層撮影法(PET)またはγ線放出核種によるコンピューター断層撮影法(SPECT)が用いられるようになってきた。このうち、PETは、陽電子放出核種から正反対の方向に放射される2本のγ線を1対の検出器により同時計数法により検出するので、解像力や定量性に優れた情報が得られるので好ましい。SPECT用には99mTc、111In、67Ga、201Tl、123I、133Xe等のγ線放出核種で本発明化合物を標識することができる。99mTcおよび123IがSPECによく用いられている。PET用には11C、13N、O、18F、62Cu、68Ga、76Br等の陽電子放出核種で本発明化合物を標識することができる。陽電子放出核種のなかでも、半減期が適当であること、標識しやすさ等の点から11C、13N、15O、18Fが好ましく、18Fが特に好ましい。陽電子放出核種、γ線放出核種等の放射線放出核種での本発明化合物の標識位置は、式(I)または(II)中のいずれの位置であってもよい。例えば、本発明化合物中のベンゼン環上の水素が、18Fのごとき陽電子放出核種で置換されていてもよく、本発明化合物の骨格を構成する炭素原子が11Cであってもよい。また例えば、本発明化合物を18Fで標識する場合、側鎖のいずれかに18Fが含まれていてもよく、あるいは化合物中の環上の置換基が18F自体であってもよい。例えば、オキサゾリン環のベンゼン環部分の置換基R18Fであってもよい。いずれの位置に標識を結合させるかは当業者が適宜決定でき、そのような標識化合物を容易に合成することができる。かかる標識された式(I)または(II)の化合物も本発明に包含される。
また、式(I)または(II)で示される化合物の標識体を得るための前駆体(本明細書において「標識化前駆体」という)も本発明に包含される。標識化前駆体は、標識化すべき化合物の構造、使用標識等により種々のものある。例えば、18Fにて標識される好ましい本発明化合物としてはBF−168、BF−224およびN−227等が挙げられ、その場合の標識化前駆体はトシレート誘導体が好ましい。BF−168、BF−224およびN−227の好ましいトシレート誘導体としてはBF−167、BF−223およびBF−226が挙げられる(表1参照)。
一般的には、これらの核種はサイクロトロンまたはジェネレーターと呼ばれる装置により産生される。当業者は、産生核種に応じた産生方法および装置が選択可能である。そのようにして産生された核種を用いて本発明化合物を標識することができる。
これらの放射性核種で標識された標識化合物の製造方法は当該分野においてよく知られている。代表的な方法としては、化学合成法、同位体交換法および生合成法がある。化学合成法は従来から広く用いられており、放射性の出発物質を用いること以外は通常の化学合成法と本質的に変わらない。この方法により種々の核種が化合物に導入されている。同位体交換法は、簡単な構造の化合物中のH、35S、125I等を複雑な構造の化合物中に移して、これらの核種で標識された複雑な構造の化合物を得る方法である。生合成法は14C、35S等で標識した化合物を微生物等の細胞に与えてこれらの核種が導入された代謝産物を得る方法である。
標識位置については、通常の合成と同様に合成スキームを目的に応じて設計することにより、所望位置に標識を導入することができる。かかる設計は当業者によく知られている。
また、例えば、比較的半減期の短い11C、13N、15O、18F等の陽電子放出核種を用いる場合、病院等の施設内の設置された(超)小型サイクロトロンから所望核種を得て、上記の方法により所望化合物を所望位置で標識して、即座に診断、検査、治療等に使用することも可能となっている。
これらの当業者に公知の方法により、本発明化合物の所望位置に所望核種を導入して標識することができる。
画像診断の際の本発明標識化合物の対象への投与は局所的であってもよく、あるいは全身的であってもよい。投与経路としては、皮内、腹腔内、静脈、動脈、または脊髄液への注射または輸液等があるが、疾病の種類、使用核種、使用化合物、対象の状態、検査部位等の要因により選択できる。本発明プローブを投与して、プリオン蛋白への結合および崩壊のための十分な時間経過後、PET、SPECT等の手段で検査部位を調べることができる。これらの手段は、疾病の種類、使用核種、使用化合物、対象の状態、検査部位等の要因に応じて適宜選択できる。
放射性核種で標識された本発明化合物の用量は、疾病の種類、使用核種、使用化合物、対象の年齢、身体的状態、性別、疾病の程度、検査部位等により様々である。特に、対象の被曝量については十分に注意する必要がある。例えば、11C、13N、15O、18Fのごとき陽電子放出核種により標識された本発明化合物の放射能量は、通常には、3.7メガベクレルないし3.7ギガベクレル、好ましくは、18メガベクレルないし740メガベクレルの範囲である。
また本発明は、本発明化合物を含む、プリオン蛋白が蓄積する疾患の画像診断用組成物を提供する。本発明組成物は、本発明化合物および医薬上許容される担体を含む。組成物中の本発明化合物は標識されていることが好ましい。上記のごとき標識法は様々であるが、インビボでの画像診断用途には放射性核種(特にC、13N、15O、18Fのごとき陽電子放出核種)で標識されていることが望ましい。本発明組成物の形態は、その目的からすれば注射あるいは輸液可能な形態であることが好ましい。したがって、医薬上許容される担体は液体であるものが好ましく、リン酸カリウム緩衝液、生理食塩水、リンゲル液、蒸留水等のごとき水性溶媒、あるいはポリエチレングリコール、植物性油脂、エタノール、グリセリン、ジメチルスルホキサイド、プロピレングリコール等のごとき非水性溶媒があるが、これらに限らない。担体と本発明化合物との配合比率は、適用部位、検出手段等に応じて適宜選択できるが、通常には10万対1ないし2対1の比率であり、好ましくは1万対1ないし10対1の比率である。また、本発明組成物はさらに公知の抗菌剤(例えば、抗生剤等)、局所麻酔剤(例えば、塩酸プロカイン、塩酸ジブカイン等)、バッファー(例えば、トリス−塩酸バッファー、ヘペスバッファー等)、浸透圧調節剤(例えば、グルコース、ソルビトール、塩化ナトリウム等)等を含有していてもよい。
さらに本発明は、本発明化合物を必須の構成成分として含む、プリオン蛋白が蓄積する疾患の診断用キットを提供する。通常には、キットは、本発明化合物、それを溶解する溶剤、バッファー、浸透圧調節剤、抗菌剤、局所麻酔剤等の各成分を別個に、あるいはいくつかを一緒にしてそれぞれの容器に入れたものをひとまとめにしたものである。本発明化合物は未標識であっても、標識されていてもよい。未標識の場合、上で説明したような通常の方法により、使用前に本発明化合物を標識することができる。また本発明化合物は凍結乾燥粉末等の固形として提供してもよく、あるいは適当な溶媒中に溶解して提供してもよい。溶剤としては上述の本発明組成物に用いる担体と同様のものであってよい。また、バッファー、浸透圧調節剤、抗菌剤、局所麻酔剤等の各成分も上述の本発明組成物に使用するものと同様のものであってよい。容器は種々のものを適宜選択できるが、本発明化合物への標識導入操作に適した形状とすることもでき、化合物の性質に応じて遮光性の材質のものとしてもよく、あるいは患者への投与に便利なようにバイアル、または注射器等の形状とすることもできる。また、キットは診断に必要な器具類、例えば注射器、輸液セット、あるいは例えば陽電子放出核種にて標識された本発明化合物の場合にはPET装置に使用する器具類等を適宜含んでいてもよい。通常、キットには説明書を添付する。
上述のようなPETやSPECTのプローブとして使用するのに好ましい本発明化合物としては、BF−124、BF−148、BF−165、BF−168、BF−191、BF−192、BF−196、BF−197、BF−198、BF−200、BF−201、BF−203、BF−206、BF−208、BF−227、BF−228、N−276、N−277、N−313などの標識体、一般的には放射性標識体、好ましくはγ線放出核種(例えば、99mTc、123I)または陽電子放出核種(例えば、18F)で標識された上記化合物が挙げられる(化合物の標識法および標識位置等については上で説明したとおりである)。
さらに本発明化合物は、プリオン蛋白に特異的に結合する性質を有しているので、脳試料のごとき試料中に含まれるプリオン蛋白の特異的染色剤としても使用することができる。したがって、本発明は、本発明化合物またはその塩もしくは溶媒和物を含有する、試料中のプリオン蛋白を特異的に染色するための組成物を提供する。さらに本発明は、本発明化合物またはその塩もしくは溶媒和物を必須構成成分として含有する、試料中のプリオン蛋白を特異的に染色するためのキットを提供する。これらの場合、本発明化合物は標識されていなくても、あるいは標識されていてもよく、試料を対象から取り出してから染色するので、塩もしくは溶媒和物は医薬上許容されるものでなくてもよい。また、キットには取扱説明書を添付するのが通常である。本発明は、本発明の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を用いることを特徴とする、試料中のプリオン蛋白の特異的染色方法にも関する。これらの本発明の染色用組成物、キット、あるいは染色方法を用いて試料中のプリオン蛋白を染色する際の条件は、当業者が適宜選択することができ、容易に染色を行なうことができるものである。かかる染色剤として使用される好ましい本発明化合物としては、BF−124、BF−125、BF−126、BF−133、BF−136、BF−142、BF−143、BF−147、BF−148、BF−150、BF−151、BF−154、BF−160、BF−162、BF−165、BF−168、BF−172、BF−180、BF−191、BF−192、BF−196、BF−197、BF−198、BF−200、BF−201、BF−203、BF−206、BF−208、BF−225、BF−227、BF−228、N−227、N−228、N−276、N−282、N−283、N−407などが挙げられる。
さらに上述のごとく、本発明化合物は異常プリオン蛋白に特異的であることから、異常プリオン蛋白の細胞毒性を抑制し、あるいは細胞による異常プリオン産生を抑制するものと考えられる。
したがって、本発明は、本発明化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物および医薬上許容される担体を含有する、プリオン蛋白の蓄積が病因または病因の一部となる疾患、例えば、ヒトではクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー病(GSS)、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(v−CJD)、致死性家族性不眠症(FFI)、クルー、ヒト以外の動物ではヒツジスクレイピー、ウシ海綿状脳症(BSE)、伝達性ミンク脳症、ネコ海綿状脳症等のプリオン病の予防および/または治療用医薬組成物に関する。
かかる医薬組成物の処方形態は様々であるが、液体処方が好ましく、特に注射用処方が好ましい。かかる注射用処方を脳内に直接注入することもでき、あるいは、後で実施例にて示すように本発明化合物は血液/脳関門透過性が高いので、上記医薬組成物を静脈注射または静脈点滴用に処方して投与することもできる。かかる液体処方の調製は当該分野にて公知の方法で行うことができる。溶液の調製は、本発明化合物を適当な担体、注射用水、生理食塩水、リンゲル液等に溶解し、フィルター等で滅菌し、その後、適当な容器、例えば、バイアルまたはアンプルに充填する。また、溶液を凍結乾燥させ、使用時に適当な担体で再度溶液を調製することも可能である。本発明化合物を例えばエチレンオキサイドにさらすことにより滅菌し、次いで、滅菌済み液体担体懸濁することにより懸濁液の調製を行うことができる。かかる処方の調製法および他の調製法は当該分野で公知である。
本発明化合物の投与量は、患者の病状、性別、年齢、体重等に左右されるが、一般的には、体重70kgの成人の場合、1日あたり0.1mgないし1g、好ましくは1mgないし100mg、より好ましくは5mgないし50mgである。一定期間かかる投与量で処置を行い、結果により投与量を増減することができる。
さらに本発明は、本発明化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を対象に投与することを特徴とする、生体内のプリオン蛋白の蓄積が病因または病因の一部となる疾患の予防および/または治療方法、ならびにかかる疾病の治療および/または予防のための本発明化合物の使用にも関する。かかる疾病としては上記のものが挙げられ、本発明の方法にて治療および/または予防される好ましい疾病としては伝達性海綿状脳症あるいはプリオン病が挙げられる。
かかる治療および/または予防方法における本発明化合物の投与量、投与方法などは、プリオン蛋白が蓄積する疾患の治療および/または予防用医薬組成物に関して上で述べたとおりである。かかる治療および/または予防に用いる本発明化合物は標識されていなくてもよいが、例えば、治療すべき部位へのデリバリーの確認を容易化するために放射性標識されていてもよい。また、かかる治療および/または予防の対象はプリオン蛋白に汚染あるいは感染されうる動物であり、特にウシおよびヒトが挙げられる。
さらに本発明は、生体内のプリオン蛋白の蓄積が病因または病因の一部となる疾患、特に伝達性海綿状脳症あるいはプリオン病の予防および/または治療のための、本発明化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物の使用、ならびに生体内のプリオン蛋白の蓄積が病因または病因の一部となる疾患、特に伝達性海綿状脳症あるいはプリオン病の予防および/または治療のための医薬の製造のための本発明化合物の使用にも関する。
上記のような生体内のプリオン蛋白の蓄積が病因または病因の一部となる疾患の治療および/または予防に好ましい本発明化合物としては、BF−130、BF−135、BF−136、BF−141、BF−146、BF−148、BF−150、BF−153、BF−168、N−220、N−221、N−223、N−224、N−232、N−243、N−246、N−407、N−437、N−441、N−453、N−457、BF−192、BF−193、BF−198、BF−199、BF−201、BF−203、BF−204、BF−206、BF−208、BF−211、BF−213、BF−227、BF−231などが挙げられる。抗プリオン作用、TCおよび安全濃度域あるいは変異原性等を勘案すると、上記のような生体内のプリオン蛋白の蓄積が病因または病因の一部となる疾患の治療および/または予防に関し、さらに好ましい本発明化合物は、BF−130、BF−135、BF−146、N−407、N−437、N−441、N−453、N−457、BF−208、BF−227、BF−231、BF−192、BF−193、BF−198、BF−199、BF−201、BF−203、BF−204、BF−206、BF−208、BF−211、BF−213、N−220、N−221、N−223、N−224などである。
【実施例】
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的かつ詳細に説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施例に限定されるものと解してはならない。
実施例1:本発明化合物の脳内移行性
マウスに本発明化合物を静脈内投与し、インビボにおける脳移行性を測定した。試験は下記手順によった。
(1)マウスは30−40g(7週齢、n=3)のSlc:ICR(日本SLC)を用いた。
(2)被験化合物は1N HCl、ポリエチレングリコール400、DMSOの混合液で溶解、DMSOまたはエチルアルコールで八日以後、精製水にて希釈して、尾静脈より注入し、投与より2分後にエーテル麻酔下で腹部大動脈からヘパリン処理注射筒を用いての採血、脳の採材をおこなった。
(3)血液は採血後4℃、14,000rpmで10分間遠心し上清を血漿として−80℃で保存した。脳(小脳を含む)は採材後−80℃で保存した。
(4)使用時には血漿は溶解後、精製水で希釈した後、コンディショニングしたC18固相抽出カートリッジ(bond elute C18、200mg、Varian)に添加しメチルアルコールにて溶出した。または溶解後ジエチルエーテル/シクロヘキサン混合液を加え震盪した後、遠心し油層を分注した。
(5)脳は使用時には凍結したまま湿重量を測定し生理食塩水を加え、ホモジェナイズを行った。ホモジェネートを10分間遠心し、上清をコンディショニングしたC18固相抽出カートリッジに添加し、メチルアルコールにて溶出を行った。または湿重量を測定後ジエチルエーテル/シクロヘキサン混合液を加えホモジネートし震盪した後、遠心し油層を分注した。
(6)高速液体クロマトグラフィを用い、吸光および蛍光を検出した。
(7)血漿、脳それぞれについて、投与量に対する血漿もしくは脳内の被験化合物含有量(%ID(注射量)/mlまたはg)を求めた。
(8)被験化合物は高速液体クロマトグラフィを用い、吸光および蛍光(を検出した。
(9)血漿、脳それぞれについて、投与量に対する血漿もしくは脳内の被験化合物含有量(%ID(注射量)/mlまたはg)を求めた。
表2にマウスにおける被験化合物静脈内投与2分後の脳移行を示した。


試験した本発明化合物の投与2分後の脳内含有量は、いずれも1%ID/g以上であった。中枢神経系を対象としたPETまたはSPECT用化合物の脳移行性は、0.5%ID/g以上あれば十分と考えられている。その意味でこれらの本発明化合物は極めての脳移行性の高い化合物である。
実施例2:本発明化合物の急性毒性
本発明化合物の急性毒性をマウスを用いて静脈内投与で検討した。Crj:CDl系雄性マウスを一群4匹として使用した(各群の平均体重は31−32gであった)。各化合物はHCl、ポリエチレングリコール400、蒸留水の混合液、またはDMSOに溶解後、蒸留水にて希釈し、尾静脈を介して投与し、以後7日まで観察した。本発明化合物について上記方法により行った急性毒性試験の結果を表3に示す。



試験したほとんどの本発明化合物の静脈内投与時の最大耐量はほとんど10mg/kgまたはそれ以上であった。一般にヒトでのPET撮影にはポジトロン標識および未標識化合物の総投与量として、1×10−12から1×10−5mg/kgの静脈内投与が用いられ、多くの場合、1×10−10から1×10−7mg/kgの静脈内投与が用いられる。本発明化合物で得られた値をPET撮影時に必要な総化合物量と比較してみると、両者の間には少なくとも10万倍以上の開きがあることから、これらの化合物のはPET撮影用のプローブとしては極めて安全性の高い化合物と考えられる。
実施例3:剖検脳切片における異常プリオン蛋白の描出
病理学的に確定診断されたゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群(GSS)および弧発性クロイツフェルト・ヤコブ病(sCJD)患者の剖検脳ホルマリン固定切片(7μm厚)を脱パラフィン・脱脂処理し、50%エタノールに溶解した被験化合物溶液(10−200μM)で30分間染色した。50%エタノールにて分別を行った後に水洗し、コンフォーカル・レイザー顕微鏡(ライカ社、DMRXA)にてFITCフィルターあるいはUVフィルターを用いて切片上の蛍光シグナルを観察した。組織切片中の異常プリオン蛋白の検出は、Doh−uraらの方法(ジャーナル オブ ニューロパソロジイ アンド エクスペリメンタル ニューロロジイ、59巻、774−785ページ、2000年)に従い、脱パラフィン・脱脂処理した組織切片を希塩酸(1−2mM)中でオートクレーブ10分間処理を行い、抗ヒトプリオン蛋白抗体3F4(Senetec社、500倍希釈)を一次抗体、ホースラディシュペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体を2次抗体として免疫反応を行い、呈色反応はディアミノベンチジンを用いた。
本発明化合物の例としてBF−124、N−276、N−227、BF−283、BF−162(以上図1)、BF−125、N−282、BF−133、BF−145、BF−148、BF−165(以上図2)、BF−168、BF−169(以上図3)、BF−126、BF−166、N−398(以上図4)、BF−136(図5)、BF−142(図6)、BF−151(図7)、BF−154(図8)、N−310、N−313(以上図9)、BF−227(図10)、N−227(図11)、N−407(図12)、N−408、N−438、N−440、N−441、N−454(以上図13)、SA−271(図14)、BF−179(図15)を用いて試験した。いずれの化合物を用いてもGSS患者脳において、小脳皮質を中心に斑状の蛍光シグナルが見られた。これらの斑状構造物は、連続する切片におけるプリオン蛋白の免疫染色で確認された異常プリオン蛋白の斑状沈着物(クルー斑)に一致していた。図16にはGSS患者脳切片における異常型プリオン蛋白の免疫染色を示す。
いずれの化合物も特異的にプリオン蛋白アミロイド斑が描出され、非特異的な染色像(例えば血管や結合織)は認められなかった(図1〜図15)。このように、本発明化合物は試料中のプリオン蛋白の描出性に優れ、プリオン蛋白に特異的な染色剤として使用できることがわかった。
実施例4:異常プリオン持続培養細胞モデルにおける抗プリオン作用の検討
ヒツジプリオン病であるスクレイピーの感染因子が持続感染したマウス神経芽細胞腫細胞(ScN2a)(Raceら、ジャーナル オブ ウイロロジイ、62巻、2845−2849、1998年)を使用して、被験化合物(表4に掲載)の異常(蛋白分解酵素抵抗性)プリオン蛋白の産生阻害効果をDoh−uraらの方法(ジャーナル オブ ウイロロジイ、74巻、4894−4897、2000年)に従い検討した。細胞(培養フラスコにコンフルエント状態の細胞数の十分の一の細胞数)を継代する際に培養液(10%牛胎児血清加OPTI−MEM培地(GIBCO BRL社))中に100%ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した被験化合物溶液を種々の濃度(1nM−1μM)で加えた。DMSO単独を培地中に加えたものをコントロールとした。4日後にコントロールの細胞がコンフルエントとなった状態で、化合物投与群の細胞増殖障害の有無を細胞数計測により評価した後に細胞をリン酸バッファーで洗い、溶解液(0.5%デオキシコール酸、0.5%Nonidate P40、リン酸バッファー)で細胞を溶解した。細胞溶解液を軽遠心して核酸成分を除き、上清にプロテイナーゼK(最終濃度10μg/ml)を加え,37℃30分間反応させた。次にセリンプロテアーゼ阻害剤PMSF(最終濃度10μg/ml,4℃)を加えて反応を止め、反応液を超遠心(371,000g、30分、室温)した。その沈渣を1×SDSサンプルバッファーに懸濁し熱変性後に15%Tris−グリシン−SDSポリアクリルアミドゲルで電気泳動した。泳動蛋白はPVDFメンブレンに転写し、抗プリオン蛋白抗体(PrP2B(プリオン蛋白アミノ酸残基89−103のペプチドに対するウサギ・ポリクローナル抗体)、5000倍希釈)を一次抗体、アルカリフォスファターゼ標識抗ウサギIgG抗体を二次抗体としたウェスタンブロット法を行い、CDP−Star反応液(アマーシャム社)にてシグナルを可視化した。かかるブロッティングによる試験には、本発明化合物BF−124、N−276、N−277、BF−283、BF−162(以上図17)、BF−125、N−282、BF−135(以上図18)、BF−140、BF−145、BF−146、BF−148(以上図19)、BF−165、BF−168、BF−169、BF−173、BF−180(以上図20)、BF−126、BF−166、N−398、N−404、N−442(以上図21)、BF−136(図22)、BF−137、BF−138、BF−139、BF−141、BF−142(以上図23)、BF−151、BF−161(以上図24)、BF−153、SA−272(以上図25)、N−411(図26)、BF−158、BF−170、N−310、N−313(以上図27)、BF−187、BF−189(図28)、N−402、N−457、N−491(以上図29)、N−407(図30)、N−408、N−438、N−439、N−440、N−441(以上図31)、N−452、N−453、N−454、N−455(以上図32)、N−437、N−463、N−464、N−465、N−467、N−468(以上図33)、N−469、N−471、N−472、N−473、N−475(以上図34)、AS−271(図35)、BF−178、BF−179(以上図36)を用いた。
いずれの化合物においてもScN2aにおける異常プリオン蛋白の産生阻害効果を認めた(表4、図5〜8)。異常プリオン蛋白産生を50%に抑える化合物濃度(IC50(50%阻害濃度))は0.8〜1000nMであり、また細胞増殖を障害する濃度(TC;毒性濃度)はほとんどの化合物において10〜100μMであった。また、被験化合物の安全濃度域(TC/IC50)は100から100000の間と考えられた(表4)。
なかでも、BF−130、BF−135、BF−136、BF−141、BF−146、BF−148、BF−150、BF−153、BF−168、N−220、N−221、N−224、N−232、N−243、N−246、N−407、N−441、N−453、N−457はIC50が小さく、以上プリオン蛋白産生阻害効果が大きいことがわかった。このうちBF−130、BF−135、BF−146、N−407、N−441、N−453、N−457はTCが高く、したがって安全濃度域も高く、優れた効果を有する化合物であることがわかった。
一方、キナクリンの安全濃度域は5であった(Doh−uraら、ジャーナル オブ ウイロロジイ、74巻、4894−4897、2000年より引用)。





以上の実施例に示したように、本発明化合物が斑状の異常プリオン蛋白沈着を容易に描出し、感染細胞で病原因子である異常プリオン蛋白の産生を阻害することが明かとなった。この結果は、これらの化合物がプリオン病患者において異常プリオン蛋白を描出するためのプリオン・バイオイメージング・プローブに応用できるだけでなく、プリオン病の治療薬や予防薬として応用できる可能性があることを示している。
プリオン病の標的臓器は中枢神経系であり、感染因子プリオンすなわち異常プリオン蛋白は中枢神経系内に蓄積して神経変性をきたす。プリオン病の確定診断には脳内に沈着した異常プリオン蛋白を証明することであるが、生存中は脳外科手術による脳組織の生検を行わない限り診断を確定することは出来ない。また、動物実験では発症以前の段階から既に異常プリオン蛋白の脳内蓄積が始まっており、病気が進行するに従ってその沈着量が増加することが判明している(Doh−uraら、ジャーナル オブ ジェネティック ウイロロジイ、80巻、1551−1556、1999年)。組織切片上でアミロイドである異常プリオン蛋白を描出する試薬としてはコンゴーレッドやチオフラビンなどが知られているが、今回検討した化合物はいずれもこれらの試薬よりも、より高感度かつ特異的に異常プリオン蛋白の斑状沈着物を描出した。したがって、脳移行性が高いこれらの化合物を放射性同位元素で標識し、プリオン病が疑われる患者の末梢より投与することにより、PETやSPECTといった核医学的方法にて脳内に沈着した異常プリオン蛋白を描出し、プリオン病の早期診断や病気の進行状況把握に利用できる。
一方、プリオン病の感染因子プリオンの増殖を阻害する化合物は予防薬・治療薬として期待される。プリオンの増殖とは、異常プリオン蛋白の産生であることから、この産生を阻害・抑制する化合物がプリオン病治療薬である。本発明化合物は異常プリオン蛋白の産生を阻害しており、それらの安全濃度域も1,000から100,000の間と推測された。
これまで、異常プリオン蛋白産生阻害剤として有効であることが報告されている化合物にはコンゴーレッドや硫酸多糖体(Caughey and Roymond、ジャーナル オブ ニューロケミストリイ、59巻、768−771、1992年、Caughey and Roymond、ジャーナル オブ ウイロロジイ、67巻、643−650、1993年)、環状テトラピロール(ポルフィリン化合物やフタロシアニン化合物)(Caugheyら、プロシーディングス オブ ザ ナショナル アカデミイ オブ サイエンセス USA、95巻、12117−12122、1998年)、分枝ポリアミン(ポリアミドアミンやポリプロピレンイミンデンドリマー)(Supattaponeら、ジャーナル オブ ウイロロジイ、75巻、3453−3461、2001年)、キナクリンやクロロキンなどのリソゾーム蓄積性薬剤やE−64dシステインプロテアーゼ阻害剤(Doh−uraら、ジャーナル オブ ウイロロジイ、74巻、4894−4897、2000年)などがあげられる。これらの化合物は脳移行性に問題があり、また脳移行性に優れていてもその安全濃度域が極めて狭く実用化には向かないものが大半である。例えば、上述の化合物はキナクリンを除いて脳移行性は極めて低い。また最近、話題を集めているキナクリンは安全濃度域が極めて狭い(10以下)ことが報告されている(Doh−uraら、ジャーナル オブ ウイロロジイ、74巻、4894−4897、2000年)。これらの従来の薬剤とは異なり、本発明の化合物は異常プリオン蛋白産生阻害剤として有効である上に、脳移行性が極めて高く、安全性も極めて高い。
次に本発明化合物の体外診断薬としての利用可能性について述べる。本発明化合物は異常プリオン蛋白に結合することから、ヒトおよび動物のプリオン病の染色剤および体外診断薬としても応用できる。エライザ法、ウエスタン ブロット、免疫染色で異常プリオン蛋白を確認することによって確定診断してきたプリオン病を、本発明化合物を用いることにより、より容易に診断することができる。
例えば、これまでの技術ではウシ海綿状脳症の異常プリオン蛋白を確認するには同プリオン蛋白をエライザ法、ウエスタン ブロット法、または免疫染色により確認しているが、脳切片または脳ホモジネートを本発明化合物を用いて染色または定量することにより、より容易かつ短時間で異常プリオン蛋白を確認し、プリオン病を診断することができる。またリンパ組織、尿、血液中の異常プリオン蛋白を本発明化合物を用いて確認することにより、プリオン病を診断することができる。さらにウシ由来食品、ウシ由来医療用製剤(例えばゼラチンカプセル)、ウシ由来化粧品(例えばコラーゲン)等中の異常プリオン蛋白を本発明化合物を用いて確認することができる。
以上説明したように、本発明化合物は、異常プリオン蛋白に対する特異性が高く、血液−脳関門透過性が高く、しかも極めて安全性の高いものである。したがって、本発明化合物はプリオン病の早期診断・発見に極めて有用である。本発明によれば、本発明化合物を含む、プリオン蛋白が蓄積する疾患の診断用組成物およびキットが提供される。本発明化合物を用いる、プリオン蛋白が蓄積する疾患の診断方法も提供される。さらに本発明によれば、本発明化合物を含有する、プリオン蛋白の蓄積が病因または病因の一部となる疾患の予防および/または治療用の組成物も提供される。本発明の化合物を対象に投与することを特徴とする、プリオン蛋白が蓄積する疾患の治療および/または予防方法も提供される。本発明により、プリオン蛋白が蓄積する疾患の診断の早期診断・発見と組み合わせて、プリオン病の早期有効治療が可能となる。さらに本発明によれば、本発明化合物含む、試料中のプリオン蛋白の染色用組成物およびキット、本発明化合物を用いる、試料中のプリオン蛋白の染色方法も提供される。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】

【図26】

【図27】

【図28】

【図29】

【図30】

【図31】

【図32】

【図33】

【図34】

【図35】

【図36】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリオン蛋白が蓄積する疾患の診断プローブとして使用される、式(I)または(II):

[式中、DはNR’、S、O、CH=CH、またはCHであり;
R’はH、炭素数1〜4個のアルキル、またはフェニルであり;ここに炭素数1〜4個のアルキルはハロゲンで置換されていてもよく;
EはN、またはCHであり;
は各々独立してH、炭素数1〜4個のアルキル、ハロゲン、OH、炭素数1〜4個のアルキル−OH、炭素数1〜4個のアルキル−O−炭素数1〜4個のアルキル、NH、NH(炭素数1〜4個のアルキル)、N(炭素数1〜4個のアルキル)、NO、O−炭素数1〜4個のアルキル、COOH、およびSOHからなる群より選択され;ここに炭素数1〜4個のアルキルはハロゲンで置換されていてもよく;
QはNまたはCRであり;
はH、炭素数1〜4個のアルキル、ハロゲン、OH、炭素数1〜4個のアルキル−OH、炭素数1〜4個のアルキル−O−炭素数1〜4個のアルキル、NH、NH(炭素数1〜4個のアルキル)、N(炭素数1〜4個のアルキル)、NO、O−炭素数1〜4個のアルキル、COOH、およびSOHからなる群より選択され;ここに炭素数1〜4個のアルキルはハロゲンで置換されていてもよく;
mは0〜4の整数であり;
およびRは独立してH、炭素数1〜4個のアルキル、ハロゲン、OH、炭素数1〜4個のアルキル−OH、炭素数1〜4個のアルキル−O−炭素数1〜4個のアルキル、NH(炭素数1〜4個のアルキル)、NH、N(炭素数1〜4個のアルキル)、NO、O−炭素数1〜4個のアルキル、COOH、およびSOHからなる群より選択され;ここに炭素数1〜4個のアルキルはハロゲンで置換されていてもよく;
あるいはRおよびRは一緒になって、1〜4個のRで置換されていてもよいベンゼン環またはナフタレン環を形成し;
はH、炭素数1〜4個のアルキル、ハロゲン、OH、炭素数1〜4個のアルキル−OH、炭素数1〜4個のアルキル−O−炭素数1〜4個のアルキル、NH、NH(炭素数1〜4個のアルキル)、N(炭素数1〜4個のアルキル)、NO、O−炭素数1〜4個のアルキル、COOH、SOH、および下記(a)〜(e)で示されるいずれかの基からなる群より選択され;ここに炭素数1〜4個のアルキルはハロゲンで置換されていてもよく;

ここに各Rは独立してH、炭素数1〜4個のアルキル、ハロゲン、OH、炭素数1〜4個のアルキル−OH、炭素数1〜4個のアルキル−O−炭素数1〜4個のアルキル、NH、NH(炭素数1〜4個のアルキル)、N(炭素数1〜4個のアルキル)、N=CH−アリル、NO、O−炭素数1〜4個のアルキル、COOH、およびSOHからなる群より選択され;ここに炭素数1〜4個のアルキルはハロゲンで置換されていてもよく;
各Rは独立してH、炭素数1〜4個のアルキル、ハロゲン、OH、炭素数1〜4個のアルキル−OH、炭素数1〜4個のアルキル−O−炭素数1〜4個のアルキル、NH、NH(炭素数1〜4個のアルキル)、N(炭素数1〜4個のアルキル)、NO、O−炭素数1〜4個のアルキル、COOH、SOH、および下記(f)〜(l)で示されるいずれかの基からなる群より選択され;ここに炭素数1〜4個のアルキルはハロゲンで置換されていてもよく;隣接する炭素に結合した2個のRがメチレンジオキシ基を形成してもよく;ここに炭素数1〜4個のアルキルはハロゲンで置換されていてもよく;


ここに各Rは独立してH、炭素数1〜4個のアルキル、ハロゲン、OH、炭素数1〜4個のアルキル−OH、炭素数1〜4個のアルキル−O−炭素数1〜4個のアルキル、NH、NH(炭素数1〜4個のアルキル)、N(炭素数1〜4個のアルキル)、NO、O−炭素数1〜4個のアルキル、COOH、およびSOHからなる群より選択され;ここに炭素数1〜4個のアルキルはハロゲンで置換されていてもよく;
Aは下記(i)〜(ix)で示されるいずれかの環であり;


ここに各Rは独立してH、炭素数1〜4個のアルキル、ハロゲン、OH、炭素数1〜4個のアルキル−OH、炭素数1〜4個のアルキル−O−炭素数1〜4個のアルキル、NH、NH(炭素数1〜4個のアルキル)、N(炭素数1〜4個のアルキル)、NO、O−炭素数1〜4個のアルキル、フェニル、COOH、およびSOHからなる群より選択され;ここに炭素数1〜4個のアルキルはハロゲンで置換されていてもよく;
XはNまたはCHであり;
YはNまたはCHであり;
ZはO、S、CHまたはN−C2p+1であり;
pは0〜4の整数である]
で示される化合物またはその塩もしくは溶媒和物。
【請求項2】
BF−124、BF−125、BF−126、BF−133、BF−136、BF−142、BF−143、BF−147、BF−148、BF−150、BF−151、BF−154、BF−160、BF−162、BF−165、BF−168、BF−172、BF−180、BF−191、BF−192、BF−196、BF−197、BF−198、BF−200、BF−201、BF−203、BF−206、BF−208、BF−225、BF−227、BF−228、N−227、N−228、N−276、N−282、N−283、N−407からなる群より選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
BF−124、BF−148、BF−165、BF−168、BF−191、BF−192、BF−196、BF−197、BF−198、BF−200、BF−201、BF−203、BF−206、BF−208、BF−227、BF−228、N−276、N−277、N−313からなる群より選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
標識されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物。
【請求項5】
放射性核種で標識されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物。
【請求項6】
γ線放出核種で標識されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物。
【請求項7】
99mTc、111In、67Ga、201Tl、123Iおよび133Xeからなる群より選択されるγ線放出核種で標識されている請求項1ないし3のいずれかに記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物。
【請求項8】
99mTcおよび123Iからなる群より選択されるγ線放出核種で標識されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物。
【請求項9】
陽電子放出核種で標識されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物。
【請求項10】
11C、13N、15Oおよび18Fからなる群より選択される陽電子放出核種で標識されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物。
【請求項11】
18Fで標識されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物および医薬上許容される担体を含む、プリオン蛋白が蓄積する疾患の診断用組成物。
【請求項13】
請求項1ないし11のいずれかに記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を必須の構成成分として含む、プリオン蛋白が蓄積する疾患の診断用キット。
【請求項14】
請求項1ないし11のいずれかに記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を用いることを特徴とする、プリオン蛋白が蓄積する疾患の診断方法。
【請求項15】
該化合物が請求項2に記載の化合物である、請求項12記載の組成物、請求項13記載のキット、または請求項14記載の方法。
【請求項16】
請求項5ないし11のいずれかに記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物および医薬上許容される担体を含む、プリオン蛋白が蓄積する疾患の画像診断用組成物。
【請求項17】
請求項8に記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を含む請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
請求項11に記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を含む請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
請求項5ないし11のいずれかに記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を必須の構成成分として含む、プリオン蛋白が蓄積する疾患の画像診断用キット。
【請求項20】
請求項8に記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を必須の構成成分として含む請求項19に記載のキット。
【請求項21】
請求項11に記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を必須の構成成分として含む請求項19に記載のキット。
【請求項22】
請求項5ないし11のいずれかに記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を用いることを特徴とする、プリオン蛋白が蓄積する疾患の画像診断方法。
【請求項23】
該化合物がγ線放出核種または陽電子放出核種で標識された請求項3に記載の化合物であり、該画像診断がPETまたはSPECTによるものである、請求項16ないし18のいずれかに記載の組成物、請求項19ないし21のいずれかに記載のキット、または請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項1ないし11のいずいれかに記載の化合物またはその塩もくは溶媒和物を含む試料中のプリオン蛋白の染色用組成物。
【請求項25】
請求項1ないし11のいずいれかに記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を必須構成成分として含む試料中のプリオン蛋白の染色用キット。
【請求項26】
請求項1ないし11のいずいれかに記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を用いることを特徴とする、試料中のプリオン蛋白の染色方法。
【請求項27】
該化合物が請求項2に記載の化合物である、請求項24に記載の組成物、請求項25に記載のキット、または請求項26に記載の方法。
【請求項28】
生体内にプリオン蛋白が蓄積する疾患を有する個体の体外診断のための、請求項1ないし11のいずれかに記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を含む組成物。
【請求項29】
生体内にプリオン蛋白が蓄積する疾患を有する個体の体外診断のための、請求項1ないし11のいずれかに記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を必須構成成分として含むキット。
【請求項30】
被験動物から試料を得て、該試料に請求項1ないし11のいずれかに記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を接触させることを特徴とする、生体内にプリオン蛋白が蓄積する疾患を有する個体の体外診断方法。
【請求項31】
該化合物がBF−168、BF−191、BF−192、BF−196、BF−197、BF−198、BF−200、BF−201、BF−203、BF−206、BF−208、BF−227、BF−228、N−278からなる群より選択されるものである、請求項28に記載の組成物、請求項29に記載のキット、または請求項30に記載の方法。
【請求項32】
請求項1に記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物および医薬上許容される担体を含有する、生体内のプリオン蛋白の蓄積が病因または病因の一部となる疾患の予防および/または治療用医薬組成物。
【請求項33】
疾患が伝達性海綿状脳症あるいはプリオン病からなる群より選択される請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項34】
請求項1に記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を対象に投与することを特徴とする、生体内のプリオン蛋白の蓄積が病因または病因の一部となる疾患の予防および/または治療方法。
【請求項35】
疾患が伝達性海綿状脳症あるいはプリオン病からなる群より選択される請求項34に記載の方法。
【請求項36】
生体内のプリオン蛋白の蓄積が病因または病因の一部となる疾患の予防および/または治療のための、請求項1に記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物の使用。
【請求項37】
疾患が伝達性海綿状脳症あるいはプリオン病からなる群より選択される請求項36に記載の使用。
【請求項38】
生体内のプリオン蛋白の蓄積が病因または病因の一部となる疾患の予防および/または治療のための医薬の製造のための本発明化合物の使用。
【請求項39】
疾患が伝達性海綿状脳症あるいはプリオン病からなる群より選択される請求項38に記載の使用。
【請求項40】
該化合物がBF−130、BF−135、BF−136、BF−141、BF−146、BF−148、BF−150、BF−153、BF−168、N−220、N−221、N−223、N−224、N−232、N−243、N−246、N−407、N−437、N−441、N−453、N−457、BF−192、BF−193、BF−198、BF−199、BF−201、BF−203、BF−204、BF−206、BF−208、BF−211、BF−213、BF−227、BF−231からなる群より選択されるものである、請求項32または33に記載の組成物、請求項34または35に記載のキット、請求項36または37に記載の方法、あるいは請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
該化合物がBF−130、BF−135、BF−146、N−407、N−437、N−441、N−453、N−457、BF−208、BF−227、BF−231、BF−192、BF−193、BF−198、BF−199、BF−201、BF−203、BF−204、BF−206、BF−208、BF−211、BF−213、N−220、N−221、N−223、N−224からなる群より選択されるものである、請求項32または33に記載の組成物、請求項34または35に記載のキット、請求項36または37に記載の方法、あるいは請求項38または39に記載の方法。
【請求項42】
請求項1に記載の化合物の標識化前駆体。
【請求項43】
トシレート誘導体であるBF−168、BF−224またはN−227の標識化前駆体。

【国際公開番号】WO2004/035522
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【発行日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−544906(P2004−544906)
【国際出願番号】PCT/JP2003/011056
【国際出願日】平成15年8月29日(2003.8.29)
【出願人】(399009435)株式会社 ビーエフ研究所 (3)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】