説明

プリコート型脱水処理装置及びプリコート型脱水処理装置のプリコート層の除去方法

【課題】濾布及び回転ドラムに損傷を与えることなく安全にプリコート層を除去し、プリコート層の除去に有する時間を改善し、運転コストを改善することができるプリコート型脱水処理装置及びプリコート層の除去方法を提供する。
【解決手段】回転ドラム2を回転させながら内部を減圧して汚水5をプリコート層4を通じて回転ドラム2内に吸引することによって汚水5の脱水を行い、プリコート層4の外周に固形状の汚泥8を吸着して堆積させ、プリコート層4の外周に形成される堆積層8をカッター7によって除去するプリコート型脱水処理装置1であって、回転ドラム2の回転軸と平行な軸周りに回転可能なブラシ13と、ブラシ13をプリコート層4の方向に前後動させる送り機構14とを有し、ブラシ13を回転させながら送り機構14でプリコート層4の方向に送り出すことによってプリコート層4をブラシ13に接触させて除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造工場等から排出される汚水を脱水するプリコート型脱水処理装置及びそのプリコート型脱水処理装置のプリコート層の除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン単結晶製造工場を含む製造工場から排出される汚水の脱水処理方法として、回転ドラム真空プリコート式の脱水処理方法がある。この脱水処理方法は、通水性を有する回転ドラムの外周に濾過助剤をプリコートした層を形成し、回転ドラム内を減圧(真空)化することで、回転ドラムの外側から汚水を吸引し、プリコート層の表面に固形物を吸着させることで汚水の水分と汚泥を分離する方法である。
【0003】
図5に従来の一般的なプリコート型脱水処理装置の一例の概略図を示す。
図5に示すように、プリコート型脱水処理装置101は、汚水105(汚泥と水分)を一時貯留する濾過槽106と、汚水105を吸引する回転ドラム102とを有している。また、この回転ドラム102の外周に濾布103が巻き付けられ、濾布103の外周に濾過助剤がプリコートされたプリコート層104が形成されている。
【0004】
このプリコート層104は、一般的に珪藻土等の濾過助剤で数十ミリの厚さにコーティングされた層として形成される。
また、回転ドラム102は通水性を有し、その回転軸が水平になり、また濾過槽106内の汚水105にその一部が浸漬するように配置されている。
【0005】
そして、回転ドラム102内を真空ポンプ等により減圧することで濾布103の外周に形成されたプリコート層104の表面から汚水105を吸引して脱水を行い、固形状の汚泥をプリコート層104の外周に吸着して堆積させ、水分109を回転ドラム102の内部から排出させるようになっている。
このようにして汚水105を脱水していくと、プリコート層104は汚泥を吸着するため、プリコート層104中に固形物が浸透し、さらにその外周に堆積層108が形成される。
【0006】
この堆積層108は、図5に示すように、カッター107により除去され、搬送コンベア111により回収箱112まで搬送される。堆積層108をカッター107で除去する際、プリコート層104の表面の一部が堆積層108と一緒に削ぎ落とされてしまうため、プリコート層104の厚さが次第に薄くなっていき、最終的にはプリコート層104の再形成を行う必要がある。
このような堆積層と一緒に削ぎ落とされてしまうプリコート層を有効再利用することを目的として、プリコート層に吸着した堆積層の表層部の切削と、プリコート層中に浸透した固形物をプリコート層とともに切削することとを分けて実行する汚泥脱水方法が開示されている(特許文献1参照)。
【0007】
また、回転ドラム102の外周に巻き付けられた濾布103の洗浄又は交換を定期的に行う必要があり、その際には以下の理由等により、事前にプリコート層104を除去してから洗浄又は交換を行っている。
すなわち濾布103の交換において、回転ドラム102内の減圧を解除した後、作業者の手作業により濾布103の取り外しが行われるが、この際、プリコート層104を事前に除去しなかった場合、大量のプリコート層104が濾過槽106内に脱落し、それがプリコート層104の再形成後の運転時には汚泥となり運転が不安定となり、更には配管等の詰まりが生じるという問題が発生するため、プリコート層104を事前に除去する必要があった。また、プリコート層104を事前に除去せずに洗浄を行った場合にも同様の問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−316198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記のようにカッター107でプリコート層104を除去する場合、カッター107が回転ドラム102に接触すると回転ドラム102が損傷する危険性がある。また、カッター107との接触による濾布103の損傷が発生することがあり、例えば濾布103の洗浄を行う際に問題となることがあった。そのため、プリコート層104を除去する際には、カッター107で濾布103の近傍までプリコート層104を除去し、残ったプリコート層104を作業者によるスコップを用いた手作業により除去していた。この作業のためにプリコート層104の除去を短時間で行うことができなかった。また、この作業は回転ドラム102を回転させながらの作業となるため安全性の問題もあり、必要な労力も多いため作業者による運転コストも増加してしまっていた。
【0010】
本発明は前述のような問題に鑑みてなされたもので、濾布及び回転ドラムに損傷を与えることなく安全にプリコート層を除去し、プリコート層の除去に要する時間を改善し、運転コストを改善することができるプリコート型脱水処理装置及びプリコート層の除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明によれば、少なくとも、一部が汚水に浸漬するように配置された軸周りに回転する回転ドラムと、該回転ドラムの外周に巻き付けられる濾布と、該濾布の外周を濾過助剤でコーティングしたプリコート層とを有し、前記回転ドラムを回転させながら内部を減圧して前記汚水を前記プリコート層を通じて前記回転ドラム内に吸引することによって汚水の脱水を行い、前記プリコート層の外周に固形状の汚泥を吸着して堆積させ、前記プリコート層の外周に形成される前記堆積層をカッターによって除去するプリコート型脱水処理装置であって、前記回転ドラムの回転軸と平行な軸周りに回転可能なブラシと、前記ブラシを前記プリコート層の方向に前後動させる送り機構とを有し、前記ブラシを回転させながら前記送り機構で前記プリコート層の方向に送り出すことによって前記プリコート層を前記ブラシに接触させて除去することができるものであることを特徴とするプリコート型脱水処理装置を提供する。
【0012】
このように、前記回転ドラムの回転軸と平行な軸周りに回転可能なブラシと、前記ブラシを前記プリコート層の方向に前後動させる送り機構とを有し、前記ブラシを回転させながら前記送り機構で前記プリコート層の方向に送り出すことによって前記プリコート層を前記ブラシに接触させて除去することができるものであれば、濾布及び回転ドラムに損傷を与えることなく安全にプリコート層を除去することができ、プリコート層の除去時間を改善することができる。また、作業者による手作業の低減により運転コストを改善することができる。
【0013】
このとき、前記カッターは、前記堆積層のみならず前記プリコート層の表面の一部を除去できるものであることが好ましい。
このように、前記カッターが、前記堆積層のみならず前記プリコート層の表面の一部を除去できるものであれば、プリコート層の除去時間をより確実に改善することができる。
【0014】
またこのとき、前記ブラシの送り速度が2mm/min以下であることが好ましい。
このように、前記ブラシの送り速度が2mm/min以下であれば、濾布及び回転ドラムへの損傷をより確実に抑制することができるものとなる。
【0015】
またこのとき、前記ブラシの形状が、複数のブラシ部材が円形部材の外周上に放射状に形成されている形状であることができる。
このように、前記ブラシの形状が、複数のブラシ部材が円形部材の外周上に放射状に形成されている形状であれば、濾布及び回転ドラムに損傷を与えることなく、効率的にプリコート層を除去することができる。
【0016】
また、本発明は、軸周りに回転する回転ドラムの一部を汚水に浸漬するように配置し、前記回転ドラムの外周に濾布を巻き付け、該濾布の外周に濾過助剤でコーティングしたプリコート層を設け、前記回転ドラムを回転させながら内部を減圧して前記汚水を前記プリコート層を通じて前記回転ドラム内に吸引することによって汚水の脱水を行い、前記プリコート層の外周に固形状の汚泥を吸着して堆積させ、前記プリコート層の外周に形成される前記堆積層をカッターによって除去するプリコート型脱水処理装置のプリコート層を再形成する際のプリコート層の除去方法において、ブラシを前記回転ドラムの回転軸と平行な軸周りに回転させながら前記プリコート層の方向に送り出すことによって前記プリコート層を前記ブラシに接触させて除去することを特徴とするプリコート層の除去方法を提供する。
【0017】
このように、ブラシを前記回転ドラムの回転軸と平行な軸周りに回転させながら前記プリコート層の方向に送り出すことによって前記プリコート層を前記ブラシに接触させて除去すれば、濾布及び回転ドラムに損傷を与えることなく安全にプリコート層を除去することができ、プリコート層の除去時間を改善することができる。また、作業者による手作業の低減により運転コストを改善することができる。
【0018】
このとき、前記プリコート層を前記ブラシに接触させて除去する前に、前記プリコート層の表面の一部を前記カッターで除去することが好ましい。
このように、前記プリコート層を前記ブラシに接触させて除去する前に、前記プリコート層の表面の一部を前記カッターで除去すれば、プリコート層の除去時間をより確実に改善することができる。
【0019】
またこのとき、前記ブラシの送り速度を2mm/min以下とすることが好ましい。
このように、前記ブラシの送り速度を2mm/min以下とすれば、濾布及び回転ドラムへの損傷をより確実に抑制することができる。
【0020】
またこのとき、前記ブラシとして、複数のブラシ部材が円形部材の外周上に放射状に形成されている形状のブラシを用いることができる。
このように、前記ブラシとして、複数のブラシ部材が円形部材の外周上に放射状に形成されている形状のブラシを用いれば、簡単な構成で濾布及び回転ドラムに損傷を与えることなく、効率的にプリコート層を除去することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、プリコート型脱水処理装置において、回転ドラムの回転軸と平行な軸周りに回転可能なブラシと、前記ブラシをプリコート層の方向に前後動させる送り機構とを有し、前記ブラシを回転させながら前記送り機構で前記プリコート層の方向に送り出すことによって前記プリコート層を前記ブラシに接触させて除去するので、濾布及び回転ドラムに損傷を与えることなく安全にプリコート層を除去することができ、プリコート層の除去時間を改善することができる。また、作業者による手作業の低減により運転コストを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るプリコート型脱水処理装置の一例を示す概略図である。
【図2】プリコート層の一部を拡大した説明図である。(A)濾布の外周にプリコート層が形成され、そのプリコート層の外周に堆積層が形成されている様子を示す説明図。(B)プリコート層の除去の際にカッターでプリコート層の一部を除去する様子を示す説明図。
【図3】本発明に係るプリコート型脱水処理装置のブラシ及び送り機構の一例を示す概略図である。
【図4】本発明に係るプリコート型脱水処理装置のブラシの一例を示す概略図である。(A)ブラシを回転軸方向から見た側面図。(B)ブラシの正面図。
【図5】従来のプリコート型脱水処理装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
従来のプリコート型脱水処理装置において、例えば濾布の洗浄や交換等のためにプリコート層を再形成する際、事前にプリコート層を除去していた。そして、プリコート層を除去する際には、濾布及び回転ドラムの損傷を防ぐため、カッターで濾布の近傍までプリコート層を除去し、残った約10mm程度のプリコート層を作業者による手作業により除去していた。
【0024】
この作業者によるプリコート層の除去作業は、3名で約2時間程度の時間を要し、更に回転ドラム近辺での回転ドラムを回転させながらの作業となるため安全性にも問題があり、必要な労力も多いため作業者による運転コストも増加してしまっていた。
【0025】
そこで、本発明者はこのような問題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、濾布近傍のプリコート層の除去を、濾布及び回転ドラムに接触しても両者に損傷を与えない回転ドラムの回転軸と平行な軸周りに回転可能なブラシを用いて行えば良く、このような機構を自動化すれば、損傷を確実に抑制しつつ安全に短時間でプリコート層の除去を行うことができることに想到し、これらを実施するための最良の形態について精査し、本発明を完成させた。
【0026】
図1は本発明に係るプリコート型脱水処理装置の一例を示す概略図である。
図1に示すように、プリコート型脱水処理装置1は、汚水5を一時貯留する濾過槽6と、汚水5を吸引する回転ドラム2とを有している。この回転ドラム2は通水性を有し、回転軸が水平になるように設置されている。また、濾過槽6内に汚水5を供給することで回転ドラム2の一部が汚水5に浸漬するようになっている。
【0027】
また、回転ドラム2には真空パイプ10が設けられており、真空パイプ10には真空ポンプ(不図示)が接続されている。そして、真空ポンプを運転することにより回転ドラム2内を減圧することができるようになっている。
また、この回転ドラム2の外周に濾布3が巻き付けられ、濾布3の外周に濾過助剤がプリコートされたプリコート層4が形成されている。ここで、濾布3は繊維質のものとすることができる。
【0028】
このプリコート層4は、図2(A)に示すように、一般的に珪藻土等の濾過助剤で数十ミリの厚さにコーティングされた層として濾布3の外周に形成される。プリコート層4の形成は例えば以下のような方法で行うことができる。
まず、濾過助剤の調整用槽(不図示)に、例えば珪藻土を主成分する濾過助剤と水を入れる。そして、これらをかき混ぜた液を汚水5が入っていない状態の濾過槽6に供給し、回転ドラム2の一部に浸漬させる。この状態で回転ドラム2を回転させ、回転ドラム2の内部を減圧することで濾過槽6に供給した濾過助剤と水との混合液を吸引し、濾布3の外周に濾過助剤を吸着させてプリコート層4を形成する。ここで、形成するプリコート層4の厚さは特に限定されないが、例えば、40〜100mm程度とすることができる。
【0029】
このプリコート型脱水処理装置1を用いて汚水5を脱水するには、まず、濾過槽6に汚水5を供給して回転ドラム2の一部を汚水5に浸漬させる。この状態で回転ドラム2を回転させ、回転ドラム2内を真空ポンプにより減圧することで濾布3の外周に形成されたプリコート層4の表面から汚水5を吸引して脱水を行う。そして、固形状の汚泥をプリコート層4の外周に吸着して堆積させ、水分9を回転ドラム2の内部から排出させるようになっている。
このようにして汚水5を脱水していくと、プリコート層4は汚泥を吸着してプリコート層4中に固形物が浸透し、さらに、図2(A)に示すように、プリコート層4の外周に堆積層8が形成される。
【0030】
この堆積層8は、図1に示すようなカッター7により除去され、除去された堆積層8は搬送コンベア11により回収箱12まで搬送される。この堆積層8の除去のタイミング及び除去量は、水分9の濁度、水分9の排出量に応じて適宜決定すれば良い。
このようにして汚水5の脱水、堆積層8の除去を繰返していくと、堆積層8をカッター7で除去する際にプリコート層4の表面の一部が堆積層8と一緒に削ぎ落とされてしまうため、次第にプリコート層4の厚さが薄くなっていく。そのため、例えば上記したようなプリコート層4の形成方法を用いてプリコート層4の再形成を行う必要がある。
【0031】
また、プリコート層4中に浸透した固形物が濾布3に付着してしまうなど、濾布3を定期的に洗浄又は交換する必要があり、その際には事前にプリコート層4を除去してから濾布3の洗浄又は交換を行い、プリコート層4を再形成する。
図1に示すように、本発明に係るプリコート型脱水処理装置1には、このプリコート層4を除去するためのブラシ13が設置されている。
このブラシ13は、送り機構14によりプリコート層4の方向に前後動させることができるようになっている。
【0032】
図3は、ブラシ13、送り機構14の一例を示す概略図である。
図3に示すように、送り機構14を、例えばリニアガイド16とボールネジ17などで構成することができる。また、ブラシ13は回転モータ15の駆動力により、回転ドラム2の回転軸と平行な軸周りに回転可能となっている。
この回転モータ15には、回転数を可変にすることができる装置(例えばVVVF)を設けることができ、送り機構14には、送り位置の制御及び送り速度の制御が可能であるサーボモータ18を設けることができる。さらに、制御装置を設けて、ブラシ13の回転数の制御、送り機構14の送り位置の制御及び送り速度の制御を予めプログラミングしておき、自動化できるようにしても良い。
【0033】
ここで、特に限定されないが、回転モータ15は回転数が30〜100rpmの範囲で制御できるものとすることができる。
そして、回転ドラム2を回転させた状態で、ブラシ13を回転させながら送り機構14でプリコート層4の方向に送り出すことによって、プリコート層4をブラシ13に接触させてプリコート層4を除去することができるものとなっている。
【0034】
本発明のプリコート型脱水処理装置では、このようにすることで、濾布3及び回転ドラム2に損傷を与えることなく安全にプリコート層4を除去することができ、プリコート層4の除去時間を改善することができるものとなっている。また、作業者による手作業の低減により運転コストを改善することができるものとなっている。
【0035】
ここで、ブラシ13の材質は柔軟性、弾力性を有する曲げ弾性率が2〜3GPa程度の化学繊維、例えばナイロンとすることができる。
また、繊維質の濾布3は必ずしも外周が均一に配置されていない可能性もあり、例えばブラシ13の送りを濾布3の手前0.5mm付近で停止させるようにして濾布3へのブラシ13の接触をより確実に抑制するようにしても良い。この場合、若干のプリコート層4が除去されずに残るが、0.5mm程度であれば、上記したような濾布3の洗浄、交換の際のプリコート層4の脱落による問題が発生することもない。
また、図1に示すように、ブラシ13は除去されたプリコート層がカッター7上から搬送コンベア11で回収できるようにカッター7の上部に設置することできる。
【0036】
このとき、カッター7は、堆積層8のみならずプリコート層4の表面の一部を除去できるものであることが好ましい。
図2(B)に示すように、カッター7が、堆積層8のみならずプリコート層4の表面の一部4aを除去できるものであれば、ブラシ13よりも早くプリコート層を除去できるカッター7で、プリコート層4の表面の一部4aを除去し、残りの濾布3近傍の部分4bをブラシ13で濾布3及び回転ドラム2に損傷を与えないように除去することができ、プリコート層4の除去時間をより確実に改善することができる。また、脱水を繰返し行っていくとプリコート層4中に浸透した固形物による目詰まりが発生するが、カッター7によりプリコート層4の表面の目詰まり部分も除去できるので好ましい。
【0037】
またこのとき、送り機構14による、ブラシ13の送り速度が2mm/min以下であることが好ましい。
このように、ブラシ13の送り速度が2mm/min以下であれば、ブラシ13とプリコート層4との接触によって共振が発生することもなく、濾布3及び回転ドラム2への損傷をより確実に抑制することができるものとなる。
【0038】
またこのとき、ブラシ13の形状が、図4(A)に示すように、複数のブラシ部材19が円形部材20の外周上に放射状に形成されている形状であっても良い。
このように、ブラシ13の形状が、複数のブラシ部材19が円形部材20の外周上に放射状に形成されている形状であれば、簡単に構成でき安価であり、かつブラシ13によって濾布3及び回転ドラム2に損傷を与えることなく、効率的にプリコート層4を除去することができる。
【0039】
ここで、特に限定されないが、ブラシ部材19の線径を、例えば1.0mm〜1.3mmとすることができる。また、ブラシ部材19の摩耗、劣化による交換を容易にするために脱着を可能とする構造とすることができ、例えば図4(A)に示すように、固定具21及びボルト22を用いてブラシ部材19を円形部材20に取付けるようにすることができる。
また、除去されたプリコート層が各ブラシ部材19の間に堆積されないように、図4(B)に示すように、各ブラシ部材19を円形部材20に設置する回転軸方向の位置を交互にずらすように配置することができる。
【0040】
次に、本発明に係るプリコート層の除去方法について図1を用いて説明する。
上述したように、図1に示すような本発明のプリコート型脱水処理装置1において、例えば濾布3を洗浄又は交換する場合には、事前にプリコート層4を除去し、その後濾布3の洗浄又は交換を行い、プリコート層4を再形成する。本発明に係るプリコート層の除去方法は、このようなプリコート層4を再形成する際のプリコート層4の除去方法である。
【0041】
まず、濾過槽6に汚水5が入っていない状態で回転ドラム2を回転させる。そして、回転ドラム2の回転軸と平行な軸周りにブラシ13を回転させる。ここで、ブラシ13の回転数は特に限定されないが、例えば30〜100rpmとすることができる。
次に、送り機構14でブラシ13をプリコート層4の方向に送り出す。そして、プリコート層4をブラシ13に接触させ、プリコート層4を除去する。
【0042】
このようにして、プリコート層4を除去すれば、濾布3及び回転ドラム2に損傷を与えることなく安全にプリコート層4を除去することができ、プリコート層4の除去時間を改善することができる。また、作業者による手作業の低減により運転コストを改善することができる。
【0043】
このとき、図2(B)に示すように、プリコート層4をブラシ13に接触させて除去する前に、プリコート層4の表面の一部をカッター7で除去することが好ましい。
このように、プリコート層4をブラシ13に接触させて除去する前に、プリコート層4の表面の一部4aをカッター7で除去し、残りの濾布3近傍の部分4bをブラシ13で濾布3及び回転ドラム2に損傷を与えないように除去することで、プリコート層4の除去時間をより確実に改善することができる。
【0044】
またこのとき、ブラシ13の送り速度を2mm/min以下とすることが好ましい。
このように、ブラシ13の送り速度を2mm/min以下とすれば、ブラシ13とプリコート層4との接触によって共振が発生することもなく、濾布3及び回転ドラム2への損傷をより確実に抑制することができる。
【0045】
またこのとき、ブラシ13として、図4(A)に示すように、複数のブラシ部材19が円形部材20の外周上に放射状に形成されている形状のブラシ13を用いることができる。
このように、ブラシ13として、複数のブラシ部材19が円形部材20の外周上に放射状に形成されている形状のブラシ13を用いれば、ブラシ13によって濾布3及び回転ドラム2に損傷を与えることなく、効率的にプリコート層4を除去することができる。
【0046】
以上説明したように、本発明では、プリコート型脱水処理装置において、回転ドラムの回転軸と平行な軸周りに回転可能なブラシと、前記ブラシをプリコート層の方向に前後動させる送り機構とを有し、前記ブラシを回転させながら前記送り機構で前記プリコート層の方向に送り出すことによって前記プリコート層を前記ブラシに接触させて除去するので、濾布及び回転ドラムに損傷を与えることなく安全にプリコート層を除去することができ、プリコート層の除去時間を改善することができる。また、作業者による手作業の低減により運転コストを改善することができる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
(実施例)
図1に示すような本発明のプリコート型脱水処理装置を用い、本発明のプリコート層の除去方法に従ってプリコート層の除去を行い、その後プリコート層を再形成した。その際のプリコート層の除去時間及び作業者数を評価した。ここで、プリコート層の除去はカッターで15mmまで除去した後、自動運転により残りのプリコート層をブラシにより除去するようにした。ここで、ドラムの回転数を0.6rpmとし、ブラシの回転数を50rpm、送り速度を1.0mm/minとした。また、ブラシの送りを、濾布の表面から0.5mm手前で停止するようにした。また、ブラシ部材の材質が6ナイロンであり、その線径が1.2mmである図4(A)に示すようなブラシを使用した。
【0049】
その結果、操作時間などの付帯時間を含めて約20minで除去作業が完了した。これは後述する比較例の結果の約17%であった。また、作業者はプリコート型脱水処理装置の自動運転指示をする1名だけで行うことができた。
このように、本発明のプリコート型脱水処理装置及びプリコート層の除去方法は、濾布及び回転ドラムに損傷を与えることなく安全にプリコート層を除去することができ、プリコート層の除去時間を改善することができ、作業者による手作業の低減により運転コストを改善することができることが確認できた。
【0050】
(比較例)
図5に示すような、本発明のプリコート層を除去するブラシが設置されていない従来のプリコート型脱水処理装置を用い、プリコート層をカッターで15mmまで除去したあと、作業者による手作業で残りのプリコート層を除去した以外、実施例と同様な条件でプリコート層の除去を行い、除去時間及び作業者数を評価した。
その結果、作業時間は約118minであった。また、作業者は3名必要であった。
【0051】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0052】
1…プリコート型脱水処理装置、2…回転ドラム、3…濾布、
4、4a、4b…プリコート層、5…汚水、6…濾過槽、7…カッター、
8…堆積層、9…水分、10…真空パイプ、11…搬送コンベア、
12…回収箱、13…ブラシ、14…送り機構、15…回転モータ、
16…リニアガイド、17…ボールネジ、18…サーボモータ、
19…ブラシ部材、20…円形部材、21…固定具、
22…ボルト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、一部が汚水に浸漬するように配置された軸周りに回転する回転ドラムと、該回転ドラムの外周に巻き付けられる濾布と、該濾布の外周を濾過助剤でコーティングしたプリコート層とを有し、前記回転ドラムを回転させながら内部を減圧して前記汚水を前記プリコート層を通じて前記回転ドラム内に吸引することによって汚水の脱水を行い、前記プリコート層の外周に固形状の汚泥を吸着して堆積させ、前記プリコート層の外周に形成される前記堆積層をカッターによって除去するプリコート型脱水処理装置であって、
前記回転ドラムの回転軸と平行な軸周りに回転可能なブラシと、前記ブラシを前記プリコート層の方向に前後動させる送り機構とを有し、前記ブラシを回転させながら前記送り機構で前記プリコート層の方向に送り出すことによって前記プリコート層を前記ブラシに接触させて除去することができるものであることを特徴とするプリコート型脱水処理装置。
【請求項2】
前記カッターは、前記堆積層のみならず前記プリコート層の表面の一部を除去できるものであることを特徴とする請求項1に記載のプリコート型脱水処理装置。
【請求項3】
前記ブラシの送り速度が2mm/min以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプリコート型脱水処理装置。
【請求項4】
前記ブラシの形状が、複数のブラシ部材が円形部材の外周上に放射状に形成されている形状であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のプリコート型脱水処理装置。
【請求項5】
軸周りに回転する回転ドラムの一部を汚水に浸漬するように配置し、前記回転ドラムの外周に濾布を巻き付け、該濾布の外周に濾過助剤でコーティングしたプリコート層を設け、前記回転ドラムを回転させながら内部を減圧して前記汚水を前記プリコート層を通じて前記回転ドラム内に吸引することによって汚水の脱水を行い、前記プリコート層の外周に固形状の汚泥を吸着して堆積させ、前記プリコート層の外周に形成される前記堆積層をカッターによって除去するプリコート型脱水処理装置のプリコート層を再形成する際のプリコート層の除去方法において、
ブラシを前記回転ドラムの回転軸と平行な軸周りに回転させながら前記プリコート層の方向に送り出すことによって前記プリコート層を前記ブラシに接触させて除去することを特徴とするプリコート層の除去方法。
【請求項6】
前記プリコート層を前記ブラシに接触させて除去する前に、前記プリコート層の表面の一部を前記カッターで除去することを特徴とする請求項5に記載のプリコート層の除去方法。
【請求項7】
前記ブラシの送り速度を2mm/min以下とすることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のプリコート層の除去方法。
【請求項8】
前記ブラシとして、複数のブラシ部材が円形部材の外周上に放射状に形成されている形状のブラシを用いることを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか1項に記載のプリコート層の除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−158628(P2010−158628A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2789(P2009−2789)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(000190149)信越半導体株式会社 (867)
【Fターム(参考)】