説明

プリザーブドフラワー用塗料

【課題】プリザーブドフラワーに塗布するだけで、優れた紫外線遮断効果が得られ長期間変色と型崩れを防止する効果を持続する塗料を提供すること。
【解決手段】
紫外線を遮断し型崩れを防止するために被塗布物に塗料塗膜を形成する塗料。塗膜形成要素は、アクリル樹脂とアクリル系シロキサン、ウレタン架橋型反応性ポリマーとを必須成分とし、塗膜形成副要素として、有機/無機併用系の紫外線吸収剤が必須成分として添加されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリザーブドフラワーに塗装することにより、強固な皮膜を形成して型崩れを防ぎ、紫外線をカットして変色を防止する、プリザーブドフラワー用塗料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリザーブドフラワーは生花に比べ長期保存が可能であるが、風化による型崩れ、人が触れることによる破壊、紫外線による変色が起こっている。そこで、プリザーブドフラワーに塗料をコーティングして防止する発明が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−176941号公報
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来より、次のような問題点があった。
(イ)特許文献1のウレタン樹脂でのコーティングは、塗料自体が時間の経過によりコーティング剤自体が黄色に変色することがある。
(ロ)紫外線の影響により退色するため、太陽光の下での退色防止は保護ケースに入れなければならなく、プリザーブドフラワーの特色である自然な風合いが失われていた。
(ハ)プリザーブドフラワー専用に開発された塗料は少なくコーティング方法に技術が必要である。
(ニ)コーティングによる艶が出すぎてプリザーブドフラワー本来の風合いが損なわれる。
本発明は上記課題を解決するために、溶剤の選定・混合割合の試作を繰り返すことにより出来上がった塗料である。
【問題を解決するための手段】
【0004】
長期間変色なく、紫外線の遮断と形崩れ防止をするために被塗布物に塗料塗膜を形成する塗料であって、塗膜形成要素は、アクリル樹脂とアクリル系シロキサン架橋型反応性ポリマーとを必項成分とし、塗膜形成副要素として、紫外線吸収剤を必項成分として添加されてなることが特徴とする。
【0005】
上記において紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系とクマリン系との併用系とすることが望ましく、さらには、ヒンダードアミン系の酸化防止剤(安定剤)を添加することが望ましい。
【0006】
艶を抑えたい時には、シリカを添加する。
【0007】
アクリル樹脂にイソシアネートを添加することにより塗料の伸び、密着性を向上させて塗布しやすくする。
以上を特徴とするプリザーブドフラワー用塗料とする。
【0008】
上記各発明に係わるプリザーブドフラワー用塗料からなる塗膜をプリザーブドフラワーの表面にはけ、スポンジ、スプレーなどで塗布して使用する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のプリザーブドフラワー用塗料は、アクリル樹脂を使用することにより樹脂の変色がなく長期間透明感を保ち、250nm〜400nmの紫外線を遮断するため、紫外線によるプリザーブドフラワーの色の変色が無くなる。
【0010】
UVランプを照射することにより薄青色に発光する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のプリザーブドフラワー用塗料(以下、単に「塗料」と略すことがある)は、塗膜形成要素が、アクリル樹脂とアクリル系シロキサン、ウレタン架橋型反応性ポリマーとを必須成分とする構成であり、塗膜形成副要素として、紫外線吸収剤を必須成分として添加されていることを基本的構成要件とする。
【0012】
塗膜形成要素に使用されるアクリル樹脂としては、ポリアクリル酸アルキル、ポリメタクリル酸アルキル(炭素1〜3)等のプレポリマーを使用することができ、アクリル系シロキサン架橋型反応性ポリマーとしては、上記アクリル樹脂に、アルコキシシリコン基を導入した架橋可能な構造を有するものを使用可能である。アクリル樹脂、アクリル系シロキサン架橋型反応性ポリマーとからなる塗膜形成要素には、通常、脱水剤が添加される。シロキサン架橋反応は、脱水縮合反応であるためである。また、上記アクリル樹脂にイソシアネートと有機錫とを使用しウレタン架橋反応も付与できる。
【0013】
ここで、脱水剤としては、アルコキシエステ化合物、オルト蟻酸メチル等を使用できる。
【0014】
上記のようにして調製した塗膜形成要素を、有機溶剤にて希釈し、塗膜形成副要素である紫外線吸収剤を添加して、本発明のプリザーブドフラワー用塗料を得る。
【0015】
ここで紫外線吸収剤の添加量は、塗膜形成要素(樹脂成分)100部に対して、
有機系を、40〜60部、望ましくは45〜50部とし、無機系を、3〜20部、望ましくは、5〜8部とする。
【0016】
塗膜形成要素の希釈に使用される有機溶剤としては、ケトン類、エーテル類、アルコール類等あらゆる有機溶剤が使用可能であり、これらのうち1種または2種以上を混合して使用する。
【0017】
本発明において使用可能な有機系紫外線吸収剤としては、サリチル酸メチル、p−t−ブチルフェニル−サリシレート、p−オクチルフェニル−サリシレート(以上、サリチル 酸誘導体)、2−ヒドロキシン−4−メトキシベンゾフェノ、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、4−ドデシロキン−2−ヒドロキシベンゾフェノン(以上、ベンゾフェノン系)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(以上、ベンゾトリアゾール系)、3−フェニルー7−(4’−メチル−5’−n−ブトキシベンゾトリアゾリル−2−)クマリン(クマリン系)、2’−エチルヘキシンル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等を挙げることができ、これらのうちで1種または2種以上を混合して使用することができる。特に、ベンゾトリアゾール系とクマリン系と組み合わせ、さらにヒンダードアミン系酸化防止剤とする組み合わせが望ましい。ベンゾトリアゾール系は紫外線吸収効果が高いとともに、クマリン系と組み合わせることにより、紫外線吸収領域が広がり、これらとヒンダードアミン系の酸化防止剤(安定剤)と組み合わせることで、紫外線吸収の安定性(耐久性)が増大するためである。
【0018】
また、上記無機系吸収剤としては、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化プラセオジム、酸化セリウムなどの無機系微粒子を挙げることができる。これらのうちで、酸化ジルコニウムは塗膜硬化促進(触媒)の作用も奏するため望ましい。
【0019】
紫外線吸収剤の添加量が過多であると、透明性を阻害するおそれがあったり有色化しやすかったりし、過少であると、十分な紫外線遮断効果を得がたい。
【0020】
艶を抑える場合のシリカの添加量と光沢の関係は下記表1となる。
【0021】
【表1】

【0022】
本発明の塗料を塗布する被塗布物としてはプリザーブドフラワーなら特に限定されないので、装飾品や観賞用等として幅広く使用することが可能である。
【0023】
そして、塗布方法は、刷毛塗り、スプレーコート、などで3回〜5回塗りをする。なお、塗布厚は、30〜40μm、望ましくは35〜40μm、さらに望ましくは37〜40μmとする。薄すぎては、本発明の紫外線遮断効果をプリザーブドに付与し難く、形成美観、硬度が得られないために重ね塗りをすることで形成美観と硬度を増すことができる。
【0024】
乾燥時間は、季節及び塗料組成により異なるが、一回の塗布で例えば、指触硬化:20分、硬化:4時間、完全硬化:24時間とする。
【0025】
本実施形態の紫外線遮断塗料は、上記のような構成であるため、下記のような作用効果を奏する。
【0026】
塗料であるため、従来作られているプリザーブドフラワーに筆などで塗布するだけで紫外線遮断効果と形成維持効果を得ることができ、常温硬化型であるため特別な道具を必要としない。
【0027】
硬化後は形が崩れることがないため、観賞用の他、アクセサリー用、玩具用、食器用、文具用、家具用など幅広く活用できる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の効果を確認するために行った、実施例について説明する。なお、特に断らない限り、配合単位は質量単位とする。
【0029】
塗料の配合処方を下記に示す。
【0030】
A.ポリマー成分(合計量を100部とする):
ポリメタクリル酸メチル 20部
シロキサン架橋型反応性ポリマー 79部
脱水剤(オルト蟻酸メチル) 1部
B.添加剤成分(ポリマー成分100部に対して):
有機系紫外線吸収剤A(ベンゾトリアゾール系) 15部
有機系紫外線吸収剤B(クマリン系) 2部
レベリング剤(ジメチルシリコーンオイル) 0.3部
界面活性剤(フッ素系) 0.2部
シランカップリング剤(ビニルメトキシシラン) 2部
硬化促進剤(ジルコニウム溶解液) 0.7部
C.有機溶剤成分(ポリマー成分100部に対して)
酢酸ブチル 55部
メチルイソブチルケトン 25部
ブチルセロソルブ 15部
IPA 5部
【0031】
次に、上記配合処方に従って、下記順序で塗料を調製した。
【0032】
1)有機溶剤成分を攪拌する。
【0033】
2)紫外線吸収剤A、ついで、紫外線吸収剤Bを有機溶剤に溶解させる。
【0034】
3)酸化防止剤を添加して15分間攪拌混合する。
【0035】
4)無機系近赤外線吸収剤A(B)を有機酸に添加混合し、発生した水分を加熱処理し、アルコール系溶剤にて取り除き放冷し、析出した結晶をろ過して分散液を調製する。
【0036】
5)ポリマー成分を溶剤中で混合して調製する。
【0037】
6)上記3)で調製した混合溶液と5)で調製したポリマー溶液とを混合し、約15分間攪拌する。
【0038】
7)上記混合液にレベリング剤、界面活性剤及びシランカップリング剤を添加して攪拌混合する。
【0039】
8)上記混合液に4)で調製した分散液を混合・攪拌後、ジルコニウム溶解液を混合し、約20分間攪拌して、塗料調製を完了する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗布物に塗料塗膜を形成する塗料であって、塗膜形成要素は、アクリル樹脂とアクリル系シロキサン、ウレタン架橋型反応性ポリマーとを必須成分とする常温硬化型プリザーブドフラワー用塗料。
【請求項2】
塗膜形成副要素として、紫外線吸収剤が必須成分として添加されてなり、前記紫外線吸収剤がベンゾトリアゾール系とクマリン系との併用系であることを特徴とする請求項1におけるプリザーブドフラワー用塗料。
【請求項3】
ヒンダードアミン系の酸化防止剤(安定剤)が添加されてなることを特徴とする請求項1におけるプリザーブドフラワー用塗料。
【請求項4】
艶を抑えたい時にはシリカを添加することを特徴とする請求項1におけるプリザーブドフラワー用塗料。
【請求項5】
アクリル樹脂にイソシアネートを添加することにより塗料の伸び、密着性を向上させて塗布しやすくことを特徴とする請求項1におけるプリザーブドフラワー用塗料。
【請求項6】
請求項目1〜5に記載の塗料をプリザーブドフラワーに刷毛やスプレーなどで塗布することを特徴とする請求項1におけるプリザーブドフラワー用塗料。

【公開番号】特開2011−116924(P2011−116924A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289768(P2009−289768)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(300034677)株式会社アクトス (3)
【出願人】(505382102)株式会社大光テクニカル (2)
【Fターム(参考)】