説明

プリズムシート、光学部材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、面光源装置及び液晶表示装置

【課題】優れた復元性を有し、かつ、傷付き難い凹凸形状を備えた光学シート、当該凹凸形状を形成するのに好適な光学部材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物並びに当該光学シートを備える面光源装置及び液晶表示装置を提供すること。
【解決手段】透明基材と、当該透明基材の一面側に設けられ、当該透明基材とは反対側の面に複数の単位凹凸構造を備える凹凸形状を有する光学機能発現部と、を備える光学シートであって、当該光学機能発現部が、アクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、当該単位凹凸構造の頂部における、ISO14577−1に準拠して押し込み荷重0.5mNで測定される押し込み深さが、0.6μm以上若しくは押し込み荷重300mNで測定される押し込み深さが、15μm以上又は特定の微小硬さ測定で求められる復元率が55%以上であることを特徴とする、光学シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置用バックライトのプリズムシート等として用いられる光学シート、光学部材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物並びに当該光学シートを備える面光源装置及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置等のディスプレイにおいては、光を屈折、回折、干渉又は分散等させることにより、集光、収束、拡散、偏光又は反射等させる機能を有する光学シートが用いられている。
このような光学シートとしては、例えば、液晶表示装置等のバックライトに用いられるプリズムシート、立体写真や投影スクリーン等に用いられるレンチキュラーレンズシート、オーバーヘッドプロジェクターのコンデンサーレンズ等に用いられるフレネルレンズシート及びカラーフィルタ等に用いられる回折格子等を挙げることができる。
【0003】
上記光学シートは、通常、基材と、当該基材上に、所定の屈折率を備え表面に単位プリズム又は単位レンズ等の単位凹凸構造を複数配列した微細な凹凸形状を有する。このような光学シートは、その凹凸形状において光を屈折若しくは反射等の幾何光学的作用によって、又は回折等の波動光学的作用によって変調させることによって、所望の機能を発現するものであり、用途に応じてその凹凸形状を構成する樹脂材料及び単位凹凸構造の形状が決定される。
【0004】
上記光学部材のうち、例えば、液晶表示装置等のバックライトとして使用されるプリズムシート(光学シート)は、一般にそのプリズムシートのプリズム部(凹凸形状)の上に、さらに他の光学シート及び拡散板又は拡散フィルムが積層されて用いられる。このような積層体を製造又は運搬する際に、衝撃又は振動によって、プリズムシートのプリズム部が磨耗することがある。
【0005】
また、上記プリズムシートは、エッジライト型の面光源装置や直下型の面光源装置のいずれにおいても当該装置の液晶セル(液晶化合物をガラス等で封入したモジュール)側の出光面に配置されている。
なお、エッジライト型の面光源装置は、通常、アクリル樹脂等の透明な板状導光体の一側端面から光源光を入射し、液晶セル側の出光面から光を出射するように構成された装置である。一方、直下型の面光源装置は、光源を挟んだ態様で液晶セルと反射板とを配置してなり、通常、光源からの光を反射板によって液晶セル側に反射させるように構成された装置である。
【0006】
上記光学シートが備えるプリズム部と、面光源装置が有する導光板、(光)拡散フィルム又は液晶セル等の隣接する他部材とが接触した場合、工程内等で加わる熱と圧力とにより単位プリズムの頂部が潰れてしまうといういわゆる「山潰れ」の問題や、プリズム部と導光板とが接触して単位プリズムの頂部に欠けが生じてしまうという問題がある。
こうした単位プリズムの頂部の変形及び欠けの問題は、表示装置の表示面に白点(白模様)等の表示ムラを生じさせて表示性能を低下させる一因となる。
特に、凹凸形状がプリズムの様な尖った凸部を持つ場合に、上述した凹凸形状の磨耗、欠け又は山潰れの発生が顕著となる。その他の凹凸形状の光学シートの場合も、同様の傾向がある。
【0007】
上記問題点を改善するために、従来、プリズム部に用いられる材料としては、弾性率が高く、形成された単位プリズムの形状が変形しにくいものが用いられてきた(例えば特許文献1)。
特許文献1に記載の電離放射線硬化性樹脂組成物からなる光学物品(光学シート)は、その硬化物が応力−歪曲線で降伏点を持たないものであり、加わる応力が弾性限度内であるときは、応力から開放されると、弾性復元力により元の形状に復元し、永久歪み(変形)が生じることが無い。
しかしながら、上記光学物品に加わる応力が弾性限度を超えると、当該光学物品に亀裂が生じるという問題があった。
【0008】
一方、特許文献2に記載のレンズ部(プリズム部)は、特定の物性を有することにより、外的要因によって上記プリズム部の表面に付された単位プリズムが変形した場合でも、これを元の形状に復元させることができる復元性が付与されており、所望の形状を維持することが可能となっている。
しかしながら、上記プリズム部の有する復元性は、当該プリズム部に加わる外力による変形の問題を解消するのには十分なものではなかった。また、復元性を付与した分、プリズム部の欠けが生じ易くなり、復元性と耐傷付き性とが両立し無いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−61601号公報
【特許文献2】特開2009−37204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、優れた復元性を有し、かつ、傷付き難い凹凸形状を備えた光学シート、当該凹凸形状を形成するのに好適な光学部材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物並びに当該光学シートを備える面光源装置及び液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らが鋭意検討した結果、光学シートの複数の単位凹凸構造を備える凹凸形状を有する光学機能発現部の微小硬さを特定の値以上とすることにより、上記問題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明に係る第一の態様の光学シートは、透明基材と、当該透明基材の一面側に設けられ、当該透明基材とは反対側の面に複数の単位凹凸構造を備える凹凸形状を有する光学機能発現部と、を備える光学シートであって、
当該光学機能発現部が、アクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、
当該単位凹凸構造の頂部における、ISO14577−1に準拠して押し込み荷重0.5mNで測定される押し込み深さが、0.6μm以上であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る第二の態様の光学シートは、透明基材と、当該透明基材の一面側に設けられ、当該透明基材とは反対側の面に複数の単位凹凸構造を備える凹凸形状を有する光学機能発現部と、を備える光学シートであって、
当該光学機能発現部が、アクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、
当該単位凹凸構造の頂部における、ISO14577−1に準拠して押し込み荷重300mNで測定される押し込み深さが、15μm以上であることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る光学シートは、上記単位凹凸構造の頂部における特定の押し込み荷重時の押し込み深さが特定の値以上であることにより、当該凹凸形状が優れた復元性を有し、かつ、傷付き難い。
【0015】
本発明に係る光学シートは、前記単位凹凸構造の凸部の頂部における、ISO14577−1に準拠して押し込み荷重300mNで測定されるマルテンス硬さが、50N/mm以下であることが好ましい。
【0016】
本発明に係る光学シートは、前記単位凹凸構造の凸部の頂部における、ISO14577−1に準拠して押し込み荷重300mNで測定される塑性変形硬さが、50N/mm以下であることが好ましい。
【0017】
本発明に係る第三の態様の光学シートは、透明基材と、当該透明基材の一面側に設けられ、当該透明基材とは反対側の面に複数の単位凹凸構造を備える凹凸形状を有する光学機能発現部と、を備える光学シートであって、当該光学機能発現部が、アクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、当該単位凹凸構造の頂部における、JIS Z2244(2003)に規定されるビッカース硬さ試験に準拠して、荷重を0mNから200mNまで一定の割合で変化させ、荷重200mNに到達後60秒間保持し、次いで、荷重を0.4mNまで抜重して4秒間保持した時の当該頂部の荷重前の頂部に対する復元率が55%以上であることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る第三の態様の光学シートは、前記4秒間保持した後、さらに60秒間保持した時の前記頂部の荷重前の頂部に対する復元率が95%以上であることが好ましい。
【0019】
本発明に係る光学シートは、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が、(A)活性エネルギー線硬化性基を1個有するアクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂、及び/又は(B)活性エネルギー線硬化性基を2個有するアクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂、(C)ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン及び(D)下記一般式(1)で表わされる化合物を含み、かつ、当該(A)及び(B)の合計質量が当該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の全固形分質量に対して50質量%以上であることが好ましい。
【0020】
【化1】

【0021】
本発明に係る光学シートは、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が、前記(B)として、下記一般式(3)で表わされる化合物及び下記一般式(5)で表わされる化合物を含むことがより復元性に優れることから好ましい。
【0022】
【化2】

(一般式(3)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、n及びmは、n+m=2〜20を満たす正の整数である。)
【0023】
【化3】

(一般式(5)中、Rは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、nは、正の整数である。)
【0024】
本発明に係る光学部材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、(A)活性エネルギー線硬化性基を1個有するアクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂、及び/又は(B)活性エネルギー線硬化性基を2個有するアクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂、(C)ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン及び(D)下記一般式(1)で表わされる化合物を含み、かつ、当該(A)及び(B)の合計質量が、組成物の全固形分質量に対して50質量%以上であることを特徴とする。
【0025】
【化4】

【0026】
本発明に係る光学部材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、前記(B)として、下記一般式(3)で表わされる化合物及び下記一般式(5)で表わされる化合物を含むことが好ましい。
【0027】
【化5】

(一般式(3)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、n及びmは、n+m=2〜20を満たす正の整数である。)
【0028】
【化6】

(一般式(5)中、Rは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、nは、正の整数である。)
【0029】
本発明に係る面光源装置は、面光源の光放出面側に上記光学シートを備えることを特徴とする。
【0030】
本発明に係る液晶表示装置は、液晶セルの一面側に上記光学シートを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る光学シートは、上記単位凹凸構造の頂部における特定の押し込み荷重時の押し込み深さが特定の値以上であることにより、当該凹凸形状が優れた復元性を有し、かつ、傷付き難い。
当該光学シートを備える面光源装置は、光学シートの光学機能発現部が導光板等の部材と接触しても、単位凹凸構造の頂部に欠け、山潰れ及び変形が生じ難い。
当該光学シートを備える液晶表示装置は、光学シートの単位凹凸構造の頂部に欠け、山潰れ及び変形が生じ難いため、白点(白模様)等の表示ムラを生じ難く、外観に優れる。
本発明に係る光学部材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、容易に上記光学機能発現部を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本発明に係る光学シートの一例を示した模式的な斜視図である。
【図2】図2は、本発明に係る光学シートの層構成の一例を示した模式的な断面図である。
【図3】図3は、本発明に係る光学シートの層構成の他の一例を示した模式的な断面図である。
【図4】図4は、本発明に係る光学シートを備える面光源装置の一例を示した模式的な斜視図である。
【図5】図5は、本発明に係る面光源装置を備えた液晶表示装置の一例を示した模式的な斜視図である。
【図6】図6は、本発明の実施例における復元性及び耐傷付き性の評価方法を模式的に示した概略図である。
【図7】図7は、本発明の実施例における復元性及び耐傷付き性の評価基準の一例を模式的に示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
次に、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0034】
本発明において、(メタ)アクリル樹脂は、アクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂を表し、(メタ)アクリレートは、アクリレート及び/又はメタクリレートを表す。
本発明において樹脂とは、モノマーやオリゴマーの他、ポリマーを含む概念である。
なお、フィルムとシートのJIS−K6900での定義では、シートとは薄く一般にその厚さが長さと幅の割りには小さい平らな製品をいい、フィルムとは長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通例、ロールの形で供給されるものをいう。したがって、シートの中でも厚さの特に薄いものがフィルムであるといえるが、シートとフィルムの境界は定かではなく、明確に区別しにくいので、本発明では、厚みの厚いもの及び薄いものの両方の意味を含めて、「シート」と定義する。
本発明において、分子量とは、分子量分布を有する場合には、THF溶剤におけるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算値である重量平均分子量を意味し、分子量分布を有しない場合には、化合物そのものの分子量を意味する。
【0035】
(光学シート)
本発明に係る第一の態様の光学シートは、透明基材と、当該透明基材の一面側に設けられ、当該透明基材とは反対側の面に複数の単位凹凸構造を備える凹凸形状を有する光学機能発現部と、を備える光学シートであって、当該光学機能発現部が、アクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、当該単位凹凸構造の頂部における、ISO14577−1に準拠して押し込み荷重0.5mNで測定される押し込み深さが、0.6μm以上であることを特徴とする。
【0036】
本発明に係る第二の態様の光学シートは、透明基材と、当該透明基材の一面側に設けられ、当該透明基材とは反対側の面に複数の単位凹凸構造を備える凹凸形状を有する光学機能発現部と、を備える光学シートであって、当該光学機能発現部が、アクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、当該単位凹凸構造の頂部における、ISO14577−1に準拠して押し込み荷重300mNで測定される押し込み深さが、15μm以上であることを特徴とする。
【0037】
本発明に係る光学シートは、上記単位凹凸構造の頂部における特定の押し込み荷重時の押し込み深さが特定の値以上であることにより、当該凹凸形状が優れた復元性を有し、かつ、傷付き難い。そのため、本発明によれば、凹凸形状が損なわれ難く、所望の形状を維持することが可能な光学シートを提供することができる。
単位凹凸構造の頂部における、押し込み荷重0.5mNで測定される押し込み深さが、0.6μm未満の場合又は押し込み荷重300mNで測定される押し込み深さが、15μm未満の場合、凹凸形状の復元性が不足し、変形、欠け又は山潰れの発生を十分に抑えることができない。
【0038】
本発明に係る光学シートは、前記単位凹凸構造の凸部の頂部における、ISO14577−1に準拠して押し込み荷重300mNで測定されるマルテンス硬さが、50N/mm以下であることが好ましい。
【0039】
本発明に係る光学シートは、前記単位凹凸構造の凸部の頂部における、ISO14577−1に準拠して押し込み荷重300mNで測定される塑性変形硬さが、50N/mm以下であることが好ましい。
【0040】
本発明に係る第三の態様の光学シートは、透明基材と、当該透明基材の一面側に設けられ、当該透明基材とは反対側の面に複数の単位凹凸構造を備える凹凸形状を有する光学機能発現部と、を備える光学シートであって、当該光学機能発現部が、アクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、当該単位凹凸構造の頂部における、JIS Z2244(2003)に規定されるビッカース硬さ試験に準拠して、荷重を0mNから200mNまで一定の割合で変化させ、荷重200mNに到達後60秒間保持し、次いで、荷重を0.4mNまで抜重して4秒間保持した時の当該頂部の荷重前の頂部に対する復元率が55%以上であることを特徴とする。
【0041】
単位凹凸構造の頂部における上記微小硬さ測定で求められる復元率が55%以上であることにより、当該凹凸形状が優れた復元性を有し、かつ、傷付き難い。そのため、本発明によれば、凹凸形状が損なわれ難く、所望の形状を維持することが可能な光学シートを提供することができる。
【0042】
本発明に係る第三の態様の光学シートは、前記4秒間保持した後、さらに60秒間保持した時の前記頂部の荷重前の頂部に対する復元率が95%以上であることが好ましい。これにより、光学シートにさらに優れた復元性を付与することができる。
【0043】
本発明に係る光学シートの層構成について図面を用いて説明する。なお、図1以下の図面では、説明の便宜上、縦横の寸法比及び各層間の寸法比は適宜、実寸とは変えて誇張して図示してある。
【0044】
図1は、本発明に係る光学シートの一例を示した模式的な斜視図であり、図2は、本発明に係る光学シートの層構成の一例を示した模式的な断面図である。
光学シート1は、透明基材10上に(メタ)アクリル樹脂を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる光学機能発現部20が設けられており、光学機能発現部20は透明基材とは反対側の面に、図1及び2においては複数の単位凹凸構造30としてのプリズム構造を備えるプリズム形状を備える。
【0045】
図3は、本発明に係る光学シートの層構成の他の一例を示した模式的な断面図である。
透明基材10の一面側には光学機能発現部20が設けられ、透明基材10の光学機能発現部20が設けられた面とは反対側の面には光拡散層40が設けられている。
【0046】
以下、本発明に係る光学シートの必須の構成要素である透明基材及び光学機能発現部並びに必要に応じて適宜設けることができる光拡散層について説明する。
【0047】
(透明基材)
透明基材10は、光学シート1の基材であり、特に限定されず、従来公知の光学シートに用いられている透明基材を用いることができる。透明基材は、例えば、特許文献2に記載のものを用いることができる。
透明基材は、所望の透明性、機械的強度等の要求適性を勘案の上、材料及び厚さを適宜選択すればよい。
透明基材は、樹脂基材であっても良いし、硝子基材であっても良い。
透明フィルムの樹脂材料としては、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂、ポリエステル樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)樹脂及びシクロオレフィンコポリマー(COC)樹脂等が好ましい。
【0048】
透明基材は、長尺形状であっても良いし、所定の大きさからなる枚葉形状であっても良い。
透明基材の厚さは、通常は50〜500μmが好ましいが、これに限定されない。
透明基材の光透過率としては、ディスプレイの前面設置用としては、100%が理想であり、透過率85%以上であることが好ましい。
透明基材は、必要に応じて、その表面に従来公知のマット処理(光拡散性の微小凹凸の形成)、帯電防止処理又は反射防止処理等が施されたものであっても良い。また、透明樹脂と基材の間にマット処理、帯電防止処理又は反射防止処理等が施されたものであっても良いし、これらを自由に組合せて用いても良い。
【0049】
(光学機能発現部)
光学機能発現部20は、(メタ)アクリル樹脂を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、透明基材10とは反対側の面に複数の単位凹凸構造30を備える凹凸形状を有する。
【0050】
本発明に係る第一の態様の光学シートでは、当該単位凹凸構造30の頂部における、ISO14577−1に準拠して押し込み荷重0.5mNで測定される押し込み深さが、0.6μm以上である。
本発明に係る第二の態様の光学シートでは、当該単位凹凸構造30の頂部における、ISO14577−1に準拠して押し込み荷重300mNで測定される押し込み深さが、15μm以上である。
なお、上記押し込み深さは、ISO 14577−1に準拠して(株)フィッシャー・インストルメンツ製の微小硬さ試験機(商品名PICODENTOR HM500、圧子はダイヤモンド製の四角錐型、対面角90°)で測定した値をいう。
【0051】
このように、単位凹凸構造の頂部における特定の押し込み荷重での押し込み深さが一定以上であることにより、当該凹凸形状が優れた復元性を有し、かつ、傷付き難い。
【0052】
本発明に係る第三の態様の光学シートでは、当該単位凹凸構造の頂部における、JIS Z2244(2003)に規定されるビッカース硬さ試験に準拠して、荷重を0mNから200mNまで一定の割合で変化させ、荷重200mNに到達後60秒間保持し、次いで、荷重を0.4mNまで抜重して4秒間保持した時(以下、「R1時」ということがある。)の当該頂部の荷重前の頂部に対する復元率が、55%以上である。
この特定の微小硬さ試験を行ったR1時における頂部の荷重前の頂部に対する復元率が55%以上であることにより、短時間での復元性に優れる。
上記復元率は、フィッシャー社製の商品名HP100XYp(圧子形状:半球状φ0.4mmボール、圧子本体材質:ステンレス、圧子の試料との接触部材質:タングステンカーバイト、圧子と測定機との接続部材質:フェライト)を用いて測定する。
復元率(%)は、上記特定の微小硬さ試験を行い、R1時における頂部の荷重前の頂部に対する復元の割合である。例えば、後述するような角柱状の単位プリズムの場合、光学機能発現部の厚さT(図2に示すように凹凸形状の凸状頂部から透明基材側の面までの長さ)、すなわち荷重前の頂部の高さが25μmであって、上記所定の微小硬さ試験を行ったR1時における当該頂部の高さが15μmの場合、復元率は60%となる。
【0053】
本発明に係る第三の態様の光学シートは、前記4秒間保持した後、さらに60秒間保持した時(以下、「R2時」ということがある。)の前記頂部の荷重前の頂部に対する復元率が95%以上であることが好ましい。これにより、一定時間の経過で荷重前の頂部と同程度の状態にまで復元することができ、光学シートにさらに優れた復元性を付与することができる。
【0054】
光学シートは、その作用機構から、光を凹凸形状における屈折又は反射等の幾何光学的作用によって変調させて、集光、拡散、屈折又は反射等の所望の機能を発現するプリズムシート又はレンズシート等と、光を凹凸形状における回折等の波動光学的作用によって変調させて、回折又は分光等の所望の機能を発現する回折格子又はホログラム等に大別される。
【0055】
プリズムシートとしての光学機能発現部の凹凸形状の具体的な形状(構造)を例示すると、三角柱(図1参照)、四角柱、五角柱等の角柱状の単位プリズム(単位凹凸構造)をその稜線方向(延在方向)と直交する方向に多数配列したもの(プリズム線状配列)が挙げられる。
上述したような角柱状の単位プリズムの場合、光学機能発現部の厚さTは、その稜線方向で均一であっても良いし、均一でなくとも良い。例えば、周縁部に近いほど高く、中央部に近いほど低いというように稜線方向で異なっていても良い。
【0056】
この他、プリズムシートとしての光学機能発現部の凹凸形状の具体的な形状の一例としては、円錐、円錐台又は三角、四角、五角若しくは六角等の角錐又は角錐台等の単位凹凸構造を透明基材表面に二次元的に複数配列したものが挙げられる。
透明基材の平面の法線方向(以下、単に「厚さ方向」という。)における単位プリズムの断面の形状は図2のように二等辺三角形としても良いし、図示しないが不等辺三角形としても良い。
厚さ方向の断面における三角形の単位プリズムの頂角の値は、図2のように90°でも良いし、それ以外の角度であっても良く、40〜120°の範囲で調節することができる。
【0057】
単位プリズムの頂部は図1及び図2のような尖った形状でも良いし、図示しないが厚さ方向の断面の頂部近傍が曲率半径1〜10μmの円でも良い。厚さ方向断面の単位プリズムの頂部がこのような円であれば、力学的及び幾何学的に頂部に集中する応力を分散させ、頂部の変形、欠け又は山潰れを低減乃至抑制し得る。
【0058】
レンズシートとしての光学機能発現部の凹凸形状の具体的な形状の一例としては、半円柱又は半楕円柱等の曲面柱状の単位レンズ(単位凹凸構造)をその稜線方向(延在方向)と直交する方向に多数配列したもの(レンチキュラーレンズ)、半球又は回転楕円体の半裁形状等の曲面状の単位レンズ(単位凹凸構造)を透明基材表面に二次元的に複数配列したもの(モスアイレンズ)及び環状又は線状のフレネルレンズ等が挙げられる。
【0059】
光学機能発現部の厚さT(稜線方向で厚さが異なる場合は最大となる箇所の厚さ)は、要求される性能に応じて適宜調節すれば良く、通常、20〜1000μmである。
【0060】
本発明の光学機能発現部は、要求される性能に応じて適宜、その単位凹凸構造又は凹凸形状を選択又は設定すれば良い。
【0061】
本発明の光学機能発現部は、動的粘弾性測定で測定される平衡弾性率を2.0×10Pa未満とすることができる。光学機能発現部の平衡弾性率は、より好ましくは、0.5×10Pa〜1.7×10Pa、さらに好ましくは0.8×10Pa〜1.7×10Paである。
光学機能発現部の平衡弾性率を2.0×10Pa未満とすることにより、本発明に係る光学シートに優れた復元性を付与することができる。
【0062】
光学機能発現部は、動的粘弾性測定で測定される損失弾性率(以下、単に「E”」という。)と貯蔵弾性率(以下、単に「E’」という。)の比である損失正接(以下、単に「tanδ」という。)の極大値を0.6〜3.0にすることができる。光学機能発現部のtanδの極大値は、より好ましくは0.7〜3.0、さらに好ましくは0.8〜2.0である。光学機能発現部のtanδの極大値を0.6〜3.0とすることにより、光学機能発現部のガラス転移温度(以下、単に「Tg」という。)を10〜40℃、より好ましくは10〜30℃、さらに好ましくは15〜28℃とすることができる。
Tgを上記範囲内とすることにより、光学機能発現部の単位凹凸構造の形状を変形させるものの磨耗性に優れたものとすることができる。
なお、本発明では、引っ張り正弦波、周波数1Hzにて測定したときの、損失正接(tanδ)の極大値を示す温度をTgとし、80℃における貯蔵弾性率(E’)を平衡弾性率とする。
【0063】
ここで、上記平衡弾性率、tanδ及びTgは、動的粘弾性測定装置で測定することができる。当該動的粘弾性測定装置では、弾性に相当するE’、粘性に相当するE”、E”とE’の比であって振動吸収性を反映するtanδの温度依存性や周波数依存性等を測定することができ、その測定結果により、光学機能発現部(単位凹凸構造の頂部)を構成する樹脂硬化物の分子内構造に起因するTgや平衡弾性率等を評価できる。
なお、動的粘弾性測定装置としては、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製の商品名粘弾性スぺクトロメータ DMS6100を挙げることができる。
【0064】
本発明のプリズム部(光学シート)は、上記特定の物性を有することにより、当該プリズム部の有する単位プリズムの形状が損なわれ難くなり、所望の形状を維持することができる。
なお、本発明に係る光学シートの光学機能発現部の復元性は、後述する復元性評価で「3」以上であることが好ましく、さらに好ましくは評価「4」以上であり、特に好ましくは評価「5」である。
本発明に係る光学シートの光学機能発現部の耐傷付き性は、後述する耐傷付き性評価で「3」以上であることが好ましく、さらに好ましくは評価「4」以上であり、特に好ましくは評価「5」である。
【0065】
(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物)
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(以下、単に「組成物」ということがある。)は、(メタ)アクリル樹脂を含み、活性エネルギー線の照射により硬化して光学機能発現部を形成する。
なお、本発明において「活性エネルギー線」とは、可視光線並びに紫外線及びX線等の非可視領域の波長の電磁波だけでなく、電子線及びα線のような粒子線を総称する、活性エネルギー線硬化性基を有する分子に架橋反応乃至重合反応を生じせしめるに足るエネルギー量子を持った放射線が含まれる。活性エネルギー線としては、紫外線が好ましい。
【0066】
この(メタ)アクリル樹脂としては、従来公知の光学シート形成用の(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単官能若しくは多官能のモノマー、オリゴマー又はプレポリマー等を用いることができる。
単官能のモノマーとしては、例えば、特許文献2に記載のビニルモノマー、(メタ)アクリル酸エステルモノマー及び(メタ)アクリルアミド誘導体が挙げられる。
多官能のモノマーとしては、例えば、特許文献2に記載のエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジオールジ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
反応性プレポリマーとしては、例えば、特許文献2に記載のエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0067】
本発明に係る光学シートの好適な態様では、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が、(A)活性エネルギー線硬化性基を1個有するアクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂(以下、単に「(A)成分」ということがある。)、及び/又は(B)活性エネルギー線硬化性基を2個有するアクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂(以下、単に「(B)成分」ということがある。)、(C)ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン(以下、単に「(C)成分」ということがある。)及び(D)一般式(1)で表わされる化合物(以下、単に「(D)成分」ということがある。)を含み、かつ、当該(A)及び(B)の合計質量が当該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の全固形分質量に対して50質量%以上であることが、光学機能発現部が上述した特定範囲の押し込み深さ及び上記特定の復元性を発現し易い点から好ましい。
以下、これら(A)〜(D)成分について順に説明する。
【0068】
((A)活性エネルギー線硬化性基を1個有する(メタ)アクリル樹脂)
(A)成分は、活性エネルギー線硬化性基を1個有する(メタ)アクリル樹脂であり、ハロゲン原子、硫黄原子、酸素原子若しくは窒素原子等のヘテロ原子を含む鎖状の脂肪族又は環状の脂環式若しくは芳香族の(メタ)アクリル樹脂であっても良く、例えば、上述した特許文献2に記載の単官能の(メタ)アクリル樹脂を用いることができる。
【0069】
(A)成分は好ましくは、フェノキシエチル(メタ)アクリレート(別名(メタ)アクリル酸2−フェノキシエチル)及び下記一般式(2)で表わされる化合物が挙げられる。
【0070】
【化7】

(一般式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、Xは、水素原子又は炭素数1〜10の鎖状の脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素若しくは芳香族炭化水素であり、kは2〜6の整数である。)
【0071】
上記一般式(2)で表わされる化合物は、上記フェノキシエチル(メタ)アクリレートと共に組成物中に含有されることにより、その組成物の硬化物である光学機能発現部に柔軟性が付与され、光学機能発現部を傷付き難くし、かつ、光学機能発現部に外力が加わって形状が変形した場合でも、元の形状に復元可能な復元性を付与することができる。
上記一般式(2)において、kは2〜6の正の整数であり、光学機能発現部の柔軟性を高める観点から、好ましくは2、3又は4であり、さらに好ましくは2又は3である。
【0072】
(A)成分は1種単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
(A)成分は組成物の全固形分質量に対して、20〜50質量%が好ましい。
そして、組成物の全固形分質量に対してフェノキシエチル(メタ)アクリレートが、15〜30質量%であることが好ましく、22〜27質量%であることがより好ましい。
また、組成物の全固形分質量に対して上記一般式(2)で表わされる化合物が、5〜20質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。
【0073】
上記(A)成分と後述する(B)成分は、その合計質量((A)+(B))が組成物の全固形分質量に対して50質量%以上であることが好ましく、85〜95質量%であることがより好ましい。当該合計質量を組成物の全固形分質量に対して50質量%以上とすることにより、光学機能発現部が上述した特定範囲の押し込み深さ及び上記特定の復元性を発現し易い。
【0074】
((B)活性エネルギー線硬化性基を2個有する(メタ)アクリル樹脂)
(B)成分は、活性エネルギー線硬化性基を2個有する(メタ)アクリル樹脂であり、ハロゲン原子、硫黄原子、酸素原子若しくは窒素原子等のヘテロ原子を含む鎖状の脂肪族又は環状の脂環式若しくは芳香族の(メタ)アクリル樹脂であっても良く、例えば、上述した特許文献2に記載の2官能の(メタ)アクリル樹脂を用いることができる。
(B)成分は好ましくは、下記一般式(3)で表わされる化合物及び下記一般式(5)で表わされる化合物(ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート)が挙げられる。
【0075】
【化8】

(一般式(3)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、n及びmは、n+m=2〜20を満たす正の整数である。)
【0076】
【化9】

(一般式(5)中、Rは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、nは、正の整数である。)
【0077】
上記一般式(3)で表わされる化合物は、上述したフェノキシエチル(メタ)アクリレート及び一般式(2)で表わされる化合物と共に組成物中に含有されることにより、光学機能発現部の柔軟性がさらに高まり、光学機能発現部の復元性を優れたものにすることができる。
さらに、上記一般式(3)で表わされる化合物と上記一般式(5)で表わされる化合物を組み合わせて用いることにより、上記特定の微小硬さ試験を行ったR1時における頂部の荷重前の頂部に対する復元率を55%以上としやすく、光学シートに優れた復元性と耐傷付き性を付与することができる。この理由は定かではないが、一般式(3)で表わされる化合物と一般式(5)で表わされる化合物の骨格の柔軟性とそれぞれによって形成される架橋密度が適切であるためと推測される。
【0078】
一般式(3)において、n及びmは、n+m=2〜20を満たす正の整数である。n、mの個々の値及び両者の組合せの例としては、例えば、m=1、n=1でm+n=2、m=3、n=1でm+n=4、m=2、n=2でm+n=4、m=6、n=4でm+n=10、m=8、n=2でm+n=10、m=5、n=5でm+n=10、m=12、n=8でm+n=20、m=10、n=10でm+n=20等である。また、硬化物の柔軟性を高める観点から、n及びmは、好ましくはm+n=2〜12、さらに好ましくはm+n=4〜10となるように選ばれる。
【0079】
一般式(3)表わされる化合物の含有量は、組成物の全固形分質量に対して、25〜50質量%であることが好ましく、さらに30〜50質量%であることが好ましく、特に35〜45質量%であることが好ましい。
【0080】
一般式(5)において、Rは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であるが、二つのRが水素原子であることが好ましい。
一般式(5)で表わされる化合物の重量平均分子量は、上記特定の復元性を発現する観点から、400以上が好ましく、600以上がより好ましい。また、一般式(5)で表わされる化合物の入手の容易さの観点から、当該重量平均分子量は、800以下が好ましく、600以下がより好ましい。
一般式(5)で表わされる化合物の含有量は、上記特定の復元性を十分に発現する観点から、組成物の全固形分質量に対して、1〜15質量%であることが好ましく、さらに5〜10質量%であることが好ましい。
一般式(5)で表わされる化合物は、単一の構造及び重量平均分子量のものを用いても良いし、構造及び重量平均分子量が異なるものを2種以上組み合わせて用いても良い。
【0081】
((C)ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン)
(C)成分は、光学機能発現部に滑り性を付与し、光学機能発現部の凹凸形状に他部材等が接触した際の外力が加わりを緩和する働きを有する。
この他、非反応性の(C)成分は、組成物が硬化した際に、上記(A)成分、(B)成分及び後述する(D)成分が架橋した網目状の組織の中で、当該網目の隙間を埋める働きもしていると推測される。
【0082】
(C)成分は、重量平均分子量が5000〜25000であることが好ましい。
このような(C)成分としては、例えば、下記一般式(4)で表わされる化合物が挙げられる。
【0083】
【化10】

(一般式(4)中、aは1〜5の整数、bは1〜5の整数、cは1〜30の整数及びdは1〜70の整数であり、かつ、c≦dを満たし、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。)
【0084】
一般式(4)中、a、b、c及びdが上記範囲を満たすことにより、高分子としての性質を発現し、組成物における適度な溶解乃至分散性が得られ、光学機能発現部にレベリング剤としての性質や滑り性を付与し易いという利点がある。
【0085】
(C)成分の市販品としては、例えば、ビックケミー・ジャパン(株)製の商品名BYK−302、BYK−307及びBYK−330並びに信越化学工業(株)製の商品名KF−618及びKF−640等が挙げられる。
(C)成分の誘導体として、水酸基を導入したビックケミー・ジャパン(株)製の商品名BYK−377等も好ましく用いることができる。
【0086】
(C)成分の含有量は、組成物の全固形分質量に対して、好ましくは0.1〜1質量%であり、より好ましくは0.2〜0.7質量%である。
【0087】
((D)一般式(1)で表わされる化合物)
(D)成分は、下記一般式(1)で表わされる化合物(グリセリンエポキシトリアクリレート)であり、1分子内に3つの活性エネルギー線硬化性基を有するため、組成物の硬化時に上記(A)及び(B)成分との架橋可能であり、多くの架橋点を生じる働きを有する。
この他、(D)成分は、そのCHO−(CHO−)部分に由来した柔軟性を有する。
したがって、(D)成分は、光学機能発現部に、複数の架橋点及びCHO−(CHO−)部分に由来した柔軟性による強靭性を付与する働きを有する。
【0088】
【化11】

【0089】
(D)成分の市販品としては、例えば、ナガセケムテックス(株)製の商品名DA−314が挙げられる。
【0090】
(D)成分の含有量は、組成物の全固形分質量に対して、好ましくは1〜10質量%であり、より好ましくは2〜7質量%である。
【0091】
本発明の組成物には、上記成分以外に必要に応じて、シリコーン、酸化防止剤、重合禁止剤、増粘剤、離型剤、帯電防止剤、紫外線安定剤、消泡剤、溶剤、非反応性ウレタンポリマー等の非反応性ウレタン樹脂、非反応性アクリル樹脂、非反応性ポリエステル樹脂、顔料、染料又は拡散剤等も併用することができる。
なお、本発明の組成物は、通常、当該組成物中に含まれる上記必須成分と当該必須成分以外の硬化後に光学シートのマトリクスを形成する成分の合計量が、当該組成物の全質量に対して、通常、90質量%以上となるように適宜調製される。
【0092】
(光拡散層)
本発明に係る光学シートにおいては、図3に示したように、必要に応じて光拡散機能を付与するために光拡散層40を設けても良い。
光拡散層は、好ましく設けられる任意の層であって、光を拡散させる作用があればよく、一般的な光拡散シートに形成されているものを用いることができる。
例えば、光拡散性微粒子が透光性樹脂中に分散した層を適用できる。光拡散層は、図3のように透明基材10の光学機能発現部20とは反対側の面に設けられていても良いし、図示しないが透明基材と光学機能発現部の間に設けられていても良い。
【0093】
光拡散層を構成する透光性樹脂としては、上記透明基材と同様の樹脂を挙げることができる。
また、光拡散性微粒子としては、一般的に光拡散シートに用いられる光拡散性の微粒子が用いられ、例えば、ポリメタクリル酸メチル(アクリル)系ビーズ、ポリメタクリル酸ブチル系ビーズ、ポリカーボネート系ビーズ、ポリウレタン系ビーズ、炭酸カルシウム系ビーズ及びシリカ系ビーズ等が挙げられる。
なお、光拡散層の厚さは、通常、1〜20μmである。
【0094】
(光学シートの用途)
本発明に係る光学シートは、例えば、液晶表示装置等のバックライトに用いられるプリズムシート、プロジェクションテレビ等の投影スクリーンに用いられるフレネルレンズシートやレンチキュラーシート等に用いることができる。本発明に係る光学シートはこれらのいずれにおいても好適に用いることができるが、中でも液晶表示装置用バックライトのプリズムシートとして好適に用いることができる。
【0095】
(光学シートの製造方法)
本発明の光学シートの製造方法は、上記特定の押し込み深さ又は上記復元率が得られる方法であれば特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
例えば、特許文献2の図2に示すように、所望の単位凹凸形状の型に上記組成物を入れ、そこに透明基材を重ね、ラミネーター等を用いて透明基材をその組成物に圧着し、紫外線等で組成物を硬化させ、単位凹凸形状を形成する。次いで、単位凹凸形状の型を剥離乃至除去することで、透明基材上に所望の凹凸形状を有する光学機能発現部を備える光学シートが得られる。
【0096】
(光学部材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物)
本発明に係る光学部材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、(A)活性エネルギー線硬化性基を1個有するアクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂、及び/又は(B)活性エネルギー線硬化性基を2個有するアクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂、(C)ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン及び(D)下記一般式(1)で表わされる化合物を含み、かつ、当該(A)及び(B)の合計質量が、組成物の全固形分質量に対して50質量%以上であることを特徴とする。
本発明に係る光学部材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(以下、単に「光学部材用組成物」ということがある。)が、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含み、かつ、当該(A)及び(B)の合計質量が当該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の全固形分質量に対して50質量%以上であることにより、上述した特定範囲の押し込み深さ及び上記特定の復元性を有する、上記光学機能発現部等の光学部材を形成しやすい。
光学部材用組成物に含まれる(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分並びに必要に応じて含まれていても良いその他の成分は上記光学シートで説明したものと同様である。
光学部材用組成物の用途である光学部材としては、例えば、プリズムシート、レンズシート等の光学シート及び導光板等が挙げられる。光学部材用組成物は、上述したようなプリズムシートの光学機能発現部の形成に好適に用いることができる。
【0097】
(面光源装置)
本発明に係る面光源装置は、各種の仕様(形態)のものが使用でき、特に制限は無い。従来公知の、いわゆる、エッジライト型面光源装置、直下型面光源装置、EL(電場発光)型面光源装置等の形態の面光源の光放出面側に上記の本発明の光学シートを載置して本発明の面光源装置が構成される。ここでは、エッジライト型面光源装置の形態を例にとり、詳述する。本発明に係るエッジライト型面光源装置は、面光源の光放出面側に上記光学シートを備えることを特徴とする。
図4は、本発明に係る光学シートを備える面光源装置の一例を示した模式的な斜視図である。
図4の面光源装置50は、導光板60の光放出面61側に、光放出面61側から光拡散層40、透明基材10及び光学機能発現部20が設けられている。
なお、図4の面光源装置50はエッジライト型の面光源装置であり、その導光板60の少なくとも一つの側端面62に設けられた光源70から光が導光板60内に入射され、光放出面61から光が放出される。
【0098】
導光板は、透光性材料からなる板状体である。図4の導光板60は、左側の側端面62から導入された光を、上側の光放出面61から放出するように構成されている。
導光板は、従来公知の導光板とすれば良く、光学シートや透明基材と同様の透光性材料で形成しても良い。
導光板は通常、アクリル樹脂又はポリカーボネート樹脂で形成される。
導光板の厚さは通常1〜10mmであり、その厚さは全範囲で一定であっても良いし、図4に示すように、一端側に光源70を設ける場合は、光源70を設ける側端面62側が最も厚く、側端面62の反対側ほどに徐々に薄くなるテーパ形状であっても良い。
導光板には、光放出面から光を放出させるために、その内部又は表面に光散乱機能が付加されていることが好ましい。
【0099】
光源は、エッジライト型面光源装置の場合、その少なくとも1つの側端面から内部に光を入射させるものであり、導光板の側端面に沿って配置される。
光源としては、図4に示すような線状の光源70に限定されるものでなく、白熱電球、LED(発光ダイオード)等の点光源を側端面に沿ってライン状に配置しても良いし、小形の平面蛍光ランプを側端面に沿って複数個配置するようにしても良い。
単位凹凸構造の頂角が80度未満の場合は、図示しないが図4の場合とは逆に、光学シート1の光学機能発現部20側が導光板60側に対峙する向きで配置される。
【0100】
導光板の光放出面とは反対側の面又は光放出面以外の面には、図4に示すように導光板60の光放出面61とは反対側等から放出される光を導光板60内に戻し、光放出面61から放出させるための光反射板80が設けられていても良い。
光反射板は、薄い金属板にアルミニウム等を蒸着したもの、又は、白色の発泡PET(ポリエチレンテレフタレート)等が用いられる。
【0101】
(液晶表示装置)
本発明に係る液晶表示装置は、液晶セルの一面側に上記光学シートを備えることを特徴とする。
本発明において液晶セルとは、液晶化合物をガラス等により封入したモジュールをいい、偏光板又はカラーフィルター等のその他の部材が含まれたモジュールであっても良い。
【0102】
図5は、図4で示したエッジライト型の面光源装置を備えた液晶表示装置の一例を示した模式的な斜視図である。
図5に示す液晶表示装置90は、液晶セル100とその一面側(背面(液晶表示装置における映像表示を観察する面とは反対側の面)側)に上記光学シート1を備えた面光源装置50を備えている。
【0103】
液晶表示装置は、液晶セルの背面側に面光源装置(バックライト)を有する透過型の液晶表示装置であっても良いし、外光による反射光の表示とともに背面側のバックライトによる表示の両方が可能な半透過型の液晶表示装置であっても良い。
【0104】
本発明に係る液晶表示装置によれば、上記本発明に係る光学シートを備えるため、表示面に白点(白模様)等の表示ムラを生じさせることがなく、安定で良好な表示性能を得ることができる。
【0105】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0106】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
【0107】
以下の組成物1〜5をそれぞれ調製した。各組成物の組成をまとめたものを表1に示す。
【0108】
(組成物1の調製)
フェノキシエチルアクリレート(サートマー社製の商品名SR339A):9質量部
オルトフェニルフェノキシエチルアクリレート(別名アクリル酸2−(2−ビフェニリルオキシ)エチル):36質量部
ビスフェノールAジアクリレート(一般式(3)においてm=n=2、かつ、R及びRが全て水素原子、共栄社化学(株)製の商品名ライトアクリレート BP−4EA):8質量部
ビスフェノールAジアクリレート(一般式(3)においてm=n=5、かつ、R及びRが全て水素原子、MIWON社製の商品名MIRAMER M2100):42質量部
ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン(ビックケミー・ジャパン(株)製の商品名BYK−377)、一般式(4)において、a=5、b=5、c=30、d=10、R及びRがメチル基、重量平均分子量10800):0.5質量部
グリセリンエポキシトリアクリレート(上記一般式(1)、ナガセケムテックス(株)製の商品名DA−314):5質量部
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・ジャパン(株)製の商品名イルガキュア184):3質量部
リン酸エステル系離型剤(SC有機化学(株)製の商品名Chelex H−18D):0.1質量部
【0109】
(組成物2の調製)
フェノキシエチルアクリレート(サートマー社製の商品名SR339A):9質量部
オルトフェニルフェノキシエチルアクリレート(別名アクリル酸2−(2−ビフェニリルオキシ)エチル):36質量部
ビスフェノールAジアクリレート(一般式(3)においてm=n=2、かつ、R及びRが全て水素原子、共栄社化学(株)製の商品名ライトアクリレート BP−4EA):8質量部
ビスフェノールAジアクリレート(一般式(3)においてm=n=5、かつ、R及びRが全て水素原子、MIWON社製の商品名MIRAMER M2100):42質量部
ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン(ビックケミー・ジャパン(株)製の商品名BYK−377)、一般式(4)において、a=5、b=5、c=30、d=10、R及びRがメチル基、重量平均分子量10800):0.5質量部
グリセリンエポキシアクリレート(上記一般式(1)、ナガセケムテックス(株)製の商品名DA−314):5質量部
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・ジャパン(株)製の商品名イルガキュア184):3質量部
リン酸エステル系離型剤(SC有機化学(株)製の商品名Chelex H−18D):0.15質量部
【0110】
(組成物3の調製)
フェノキシエチルアクリレート(サートマー社製の商品名SR339A):9質量部
オルトフェニルフェノキシエチルアクリレート(別名アクリル酸2−(2−ビフェニリルオキシ)エチル):36質量部
ビスフェノールAジアクリレート(一般式(3)においてm=n=2、かつ、R及びRが全て水素原子、共栄社化学(株)製の商品名ライトアクリレート BP−4EA):8質量部
ビスフェノールAジアクリレート(一般式(3)においてm=n=5、かつ、R及びRが全て水素原子、MIWON社製の商品名MIRAMER M2100):42質量部
ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン(ビックケミー・ジャパン(株)製の商品名BYK−377)、一般式(4)において、a=5、b=5、c=30、d=10、R及びRがメチル基、重量平均分子量10800):0.5質量部
グリセリンエポキシトリアクリレート(上記一般式(1)、ナガセケムテックス(株)製の商品名DA−314):5質量部
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・ジャパン(株)製の商品名イルガキュア184):1.5質量部
BASF社製の商品名ルシリンTPO(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド):1.5質量部
リン酸エステル系離型剤(SC有機化学(株)製の商品名Chelex H−18D):0.15質量部
【0111】
(組成物4の調製)
フェノキシエチルアクリレート(サートマー社製の商品名SR339A):9質量部
オルトフェニルフェノキシエチルアクリレート(別名アクリル酸2−(2−ビフェニリルオキシ)エチル):36質量部
ビスフェノールAジアクリレート(一般式(3)においてm=n=2、かつ、R及びRが全て水素原子、共栄社化学(株)製の商品名ライトアクリレート BP−4EA):8質量部
ビスフェノールAジアクリレート(一般式(3)においてm=n=5、かつ、R及びRが全て水素原子、MIWON社製の商品名MIRAMER M2100):42質量部
ポリエチレングリコールジアクリレート(一般式(5)においてRが全て水素原子、重量平均分子量600):10質量部
ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン(ビックケミー・ジャパン(株)製の商品名BYK−377)、一般式(4)において、a=5、b=5、c=30、d=10、R及びRがメチル基、重量平均分子量10800):0.5質量部
グリセリンエポキシアクリレート(上記一般式(1)、ナガセケムテックス(株)製の商品名DA−314):5質量部
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・ジャパン(株)製の商品名イルガキュア184):3質量部
リン酸エステル系離型剤(SC有機化学(株)製の商品名Chelex H−18D):0.1質量部
【0112】
(組成物5の調製)
フェノキシエチルアクリレート(サートマー社製の商品名SR339A):18.9質量部
イソボルニルアクリレート:8質量部
4−アクリロイルモルホリン:5質量部
ビスフェノールAジアクリレート(一般式(3)においてm=n=2、かつ、R及びRが全て水素原子、共栄社化学(株)製の商品名ライトアクリレート BP−4EA):12質量部
ビスフェノールAジアクリレート(一般式(3)においてm=n=1、Rが全てメチル基、かつ、Rが全て水素原子、共栄社化学(株)製の商品名ライトアクリレート BP−2EM):27質量部
ビスフェノールAエポキシジアクリレート(共栄社化学(株)製の商品名FLEA−POA、(全質量に対するビスフェノールAエポキシジアクリレートの含有量49質量%、フェノキシエチルアクリレートの含有量51質量%)、重量平均分子量2000):16.1質量部
イソシアヌル酸トリアクリレート(EO3モル変性、東亞合成(株)製の商品名アロニックス M−315):13質量部
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・ジャパン(株)製の商品名イルガキュア184):3質量部
リン酸エステル系離型剤(SC有機化学(株)製の商品名Chelex H−18D):0.05質量部
【0113】
【表1】

【0114】
(実施例1)
図1に示すような単位プリズムの線状配列の凹凸形状が形成されたプリズム型に上記調製した組成物1を滴下した後、厚さ125μmのポリエチレンテレフタレート(PET)基材(東洋紡績(株)製の商品名A4300)を重ね、ラミネーターで当該PET基材全面を組成物1に圧着した。
次いで、水銀灯を用い、780mJ/cmでその組成物1に対して紫外線照射を行い、多数の単位プリズムを有するプリズム部を硬化させ、PET基材と一体化させた。その後、上記プリズム型を剥離することによって、光学シートを得た。
ここで、単位プリズムの形状は、厚さ方向の断面における形状が高さ25μm、底辺50μm、頂角90℃となる二等辺三角形の三角柱形状とした。そして、光学機能発現部は、各単位プリズムの稜線が互いに平衡になるように複数の単位プリズムを配列周期50μmで当該稜線と直交する方向に多数隣接して配列しているものであった。
【0115】
(実施例2〜4及び比較例1)
実施例1において、組成物1をそれぞれ、表1に示すように組成物2〜5に代えた以外は実施例1と同様に行い、光学シートを得た。
【0116】
(押し込み深さの測定)
ISO 14577−1に準拠して(株)フィッシャー・インストルメンツ製の微小硬さ試験機(商品名PICODENTOR HM500、圧子はダイヤモンド製の四角錐型、対面角90°)を用いて、押し込み荷重0.5mN時及び300mN時の押し込み深さを測定した。その測定結果を表2に示す。
【0117】
(マルテンス硬度及び塑性変形硬さの測定)
ISO 14577−1に準拠して(株)フィッシャー・インストルメンツ製の微小硬さ試験機(商品名PICODENTOR HM500、圧子はダイヤモンド製の四角錐型、対面角90°)を用いて、押し込み荷重300mN時のマルテンス硬度及び塑性変形硬さを測定した。その測定結果を表2に合わせて示す。
【0118】
(復元率の測定)
単位プリズムの頂部における、JIS Z2244(2003)に規定されるビッカース硬さ試験に準拠して、荷重を0mNから200mNまで一定の割合で変化させ、荷重200mNに到達後60秒間保持し、次いで、荷重を0.4mNまで抜重して4秒間保持した時(R1時)の当該頂部の荷重前の頂部(高さ25μm)に対する復元率を測定した。また、当該4秒間保持した後、さらに60秒間保持した時(R2時)の当該頂部の荷重前の頂部(高さ25μm)に対する復元率を測定した。R1時及びR2時における復元率の測定結果を表2に合わせて示す。
なお、復元率は、フィッシャー社製の商品名HP100XYp(圧子形状:半球状φ0.4mmボール、圧子本体材質:ステンレス、圧子の試料との接触部材質:タングステンカーバイト、圧子と測定機との接続部材質:フェライト)を用いて測定した。
【0119】
作製した実施例及び比較例の光学シートの光学機能発現部の復元性及び耐傷付き性を、下記の方法及び評価基準により評価した。その結果を合わせて表2に示す。
【0120】
(評価方法)
図6は、本発明における復元性及び耐傷付き性の評価方法を模式的に示した概略図であり、図6に示すように、耐摩耗試験機の可動盤110上に試験片である光学シート1を透明基材側が可動盤側に位置するように設定し、当該試験片上に面積12cmの偏光フィルム120を介して荷重部130に2.45N(250gf)の荷重をかけた。そして、可動盤110を速度5mm/sで20秒間、図6の矢印140方向に移動させた時の光学機能発現部の頂部の状態を目視及び顕微鏡観察により評価した。
【0121】
試験片は、得られた光学シートを長さ150mm、幅40mmに切断したものを用いた。
測定装置は、テスター産業(株)製の商品名AB−301 学振型摩擦堅牢度試験機を用いた。
偏光フィルムは、面積12cmの大日本印刷(株)製の商品名H25を用い、マット層側を試験片に向けて配置した。
顕微鏡は、(株)キーエンス社製の商品名デジタルマイクロスコープ VHX−200Nを用いた。
なお、荷重部の底面は外径20mm、内径10mmのドーナツ状であり、底面積は2.36cmである。
【0122】
(復元性評価)
・評価5:顕微鏡観察で形状の変形が確認されなかった。
・評価4:顕微鏡観察で形状の変形が確認されたが、バックライト上で目視では確認されなかった。
・評価3:バックライト上で目視で形状の変形が確認されたが、室温(25℃)で10分以内に元の形状に復元した。
・評価2:バックライト上で目視で形状の変形が確認され、室温(25℃)で10分以内に元の形状に復元しなかったが、35℃に加熱した場合、5分以内に元の形状に復元した。
・評価1:バックライト上で目視で形状の変形が確認され、35℃で加熱しても5分以内に元の形状に復元しなかったが、80℃で1分加熱した場合、元の形状に復元した。
【0123】
(耐傷付き性評価)
・評価5:顕微鏡観察で傷が確認されなかった。
・評価4:顕微鏡観察で傷が1本確認されたが、バックライト上で目視では傷が確認されなかった。
・評価3:バックライト上で目視により傷が2〜3本確認された。
・評価2:バックライト上で目視により傷(スジ)が多数確認された。
・評価1:バックライト上で目視によりプリズム表面全面に削れた後が確認された。
なお、復元性評価及び耐傷付き性評価において、顕微鏡観察は、顕微鏡の倍率を100〜1000倍の範囲内で適宜調節して行った。
【0124】
図7は、本発明における復元性及び耐傷付き性の評価方法を模式的に示した概略図であり、復元性評価3及び耐傷付き性評価5とは、例えば、図7の(a)に示すように光学機能発現部20の単位凹凸構造30の頂部に、偏光フィルム120の幅Lの凹み(変形)が形成された後、室温(25℃)で10分以内に、図7の(b)に示すように凹凸形状が元の形状に復元し、かつ、顕微鏡観察で傷が確認されなかった場合をいう。
復元性評価3及び耐傷付き性評価3とは、例えば、図7の(c)に示すように光学機能発現部20の単位凹凸構造30の頂部に、偏光フィルム120の幅Lの凹み(変形)と、偏光フィルム120の幅Lよりも小さい幅lが形成された後、室温(25℃)で10分以内に、図7の(d)に示すように凹凸形状が元の形状に復元するが、凹凸構造の頂部近傍の表面に復元せずに残った傷が2〜3本形成され、当該傷がバックライト上で目視により確認された場合をいう。
【0125】
【表2】

【0126】
(結果のまとめ)
表2より、実施例1〜4では、押し込み荷重0.5mN時の押し込み深さが2.8μm、押し込み荷重300mN時の押し込み深さが20.8〜22.2μmと大きかった。
また、実施例1〜4では、押し込み荷重300mN時のマルテンス硬度が26.2〜37.3N/mmと、50N/mm以下であった。
実施例1〜4では、押し込み荷重300mN時の塑性変形硬さが29.5〜46.5N/mmと、50N/mm以下であった。
そして実施例1〜4では、復元性及び耐傷付き性がともに良好であった。
特に、復元率の評価について、実施例1〜3では、R1時の復元率は68.7〜68.9%、R2時の復元率は78.2〜78.5%と良好であった。さらに実施例4では、R1時の復元率は77.8%、R2時の復元率は98.6%となり、実施例1〜3の場合よりも短時間での復元性及び一定時間経過時の復元性の両方においてさらに優れた結果が得られた。
しかし、比較例1では、押し込み荷重0.5mN時及び押し込み荷重300mN時の押し込み深さがともに小さく、マルテンス硬度及び塑性変形硬さは大きかった。
そして、比較例1では、R1時及びR2時の復元率が低く、復元性及び耐傷付き性の評価がともに低かった。
【符号の説明】
【0127】
1 光学シート
10 透明基材
20 光学機能発現部
30 単位凹凸構造
40 光拡散層
50 面光源装置
60 導光板
61 光放出面
62 側端面
70 光源
80 光反射板
90 液晶表示装置
100 液晶セル
110 可動盤
120 偏光フィルム
130 荷重部
140 移動方法
150 傷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、当該透明基材の一面側に設けられ、当該透明基材とは反対側の面に複数の単位凹凸構造を備える凹凸形状を有する光学機能発現部と、を備える光学シートであって、
当該光学機能発現部が、アクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、
当該単位凹凸構造の頂部における、ISO14577−1に準拠して押し込み荷重0.5mNで測定される押し込み深さが、0.6μm以上であることを特徴とする、光学シート。
【請求項2】
透明基材と、当該透明基材の一面側に設けられ、当該透明基材とは反対側の面に複数の単位凹凸構造を備える凹凸形状を有する光学機能発現部と、を備える光学シートであって、
当該光学機能発現部が、アクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、
当該単位凹凸構造の頂部における、ISO14577−1に準拠して押し込み荷重300mNで測定される押し込み深さが、15μm以上であることを特徴とする、光学シート。
【請求項3】
前記単位凹凸構造の凸部の頂部における、ISO14577−1に準拠して押し込み荷重300mNで測定されるマルテンス硬さが、50N/mm以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光学シート。
【請求項4】
前記単位凹凸構造の凸部の頂部における、ISO14577−1に準拠して押し込み荷重300mNで測定される塑性変形硬さが、50N/mm以下であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項5】
透明基材と、当該透明基材の一面側に設けられ、当該透明基材とは反対側の面に複数の単位凹凸構造を備える凹凸形状を有する光学機能発現部と、を備える光学シートであって、
当該光学機能発現部が、アクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、
当該単位凹凸構造の頂部における、JIS Z2244(2003)に規定されるビッカース硬さ試験に準拠して、荷重を0mNから200mNまで一定の割合で変化させ、荷重200mNに到達後60秒間保持し、次いで、荷重を0.4mNまで抜重して4秒間保持した時の当該頂部の荷重前の頂部に対する復元率が55%以上であることを特徴とする、光学シート。
【請求項6】
前記4秒間保持した後、さらに60秒間保持した時の前記頂部の荷重前の頂部に対する復元率が95%以上であることを特徴とする、請求項5に記載の光学シート。
【請求項7】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が、(A)活性エネルギー線硬化性基を1個有するアクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂、及び/又は(B)活性エネルギー線硬化性基を2個有するアクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂、(C)ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン及び(D)下記一般式(1)で表わされる化合物を含み、かつ、当該(A)及び(B)の合計質量が当該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の全固形分質量に対して50質量%以上であることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の光学シート。
【化1】

【請求項8】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が、前記(B)として、下記一般式(3)で表わされる化合物及び下記一般式(5)で表わされる化合物を含むことを特徴とする、請求項7に記載の光学シート。
【化2】

(一般式(3)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、n及びmは、n+m=2〜20を満たす正の整数である。)
【化3】

(一般式(5)中、Rは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、nは、正の整数である。)
【請求項9】
(A)活性エネルギー線硬化性基を1個有するアクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂、及び/又は(B)活性エネルギー線硬化性基を2個有するアクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂、(C)ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン及び(D)下記一般式(1)で表わされる化合物を含み、かつ、当該(A)及び(B)の合計質量が、組成物の全固形分質量に対して50質量%以上であることを特徴とする、光学部材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【化4】

【請求項10】
前記(B)として、下記一般式(3)で表わされる化合物及び下記一般式(5)で表わされる化合物を含むことを特徴とする、請求項9に記載の光学部材用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【化5】

(一般式(3)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、n及びmは、n+m=2〜20を満たす正の整数である。)
【化6】

(一般式(5)中、Rは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、nは、正の整数である。)
【請求項11】
面光源の光放出面側に前記請求項1乃至8のいずれか一項に記載の光学シートを備えることを特徴とする、面光源装置。
【請求項12】
液晶セルの一面側に前記請求項1乃至8のいずれか一項に記載の光学シートを備えることを特徴とする、液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−221492(P2011−221492A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269591(P2010−269591)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【出願人】(000183923)株式会社DNPファインケミカル (268)
【Fターム(参考)】