説明

プリズムシート及びこれを用いたバックライトユニット

【課題】画面のぎらつきや干渉パターンの発生を防止でき、正面輝度の向上及び薄型化を促進することができるプリズムシート及びこれを用いた液晶表示装置用バックライトユニットを提供する。
【解決手段】プリズムシート1は、透明な基材層2と、この基材層の表面側に積層され、バインダー6中にビーズ7が分散したビーズ塗工層3と、このビーズ塗工層の表面側にストライプ状に配設される複数の突条プリズム部5とを備える。上記ビーズ塗工層と上記突条プリズム部との間にシート状部4が配設されており、このシート状部と突条プリズム部とが一体成形されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置のバックライトユニットに好適なプリズムシート、及びこれを用いた液晶表示装置用バックライトユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、液晶層を背面から照らして発光させるバックライト方式が普及し、液晶層の下面側にエッジライト型、直下型などのバックライトユニットが装備されている。かかるエッジライト型のバックライトユニット50は、基本的には図2に示すように、光源としての線状のランプ51と、ランプ51に端部が沿うように配置される方形板状の導光板52と、導光板52の表面側に配設される光拡散シート53と、光拡散シート53の表面側に配設されるプリズムシート54とを備えている。
【0003】
このバックライトユニット50の機能を説明すると、まずランプ51より導光板52に入射した光線は、導光板52裏面の反射ドット又は反射シート(図示していない)で反射され、導光板52の表面から出射される。導光板52から出射した光線は光拡散シート53に入射し、光拡散シート53で拡散され、光拡散シート53表面より出射される。その後、光拡散シート53から出射された光線は、プリズムシート54に入射し、プリズムシート54表面に形成された突条プリズム部54aによって略法線方向にピークを示す分布の光線として出射される。
【0004】
このように、ランプ51から出射された光線が光拡散シート53によって拡散され、またプリズムシート54によって略法線方向にピークを示すように屈折され、さらに表面側の液晶層(図示していない)全面を照明するものである。
【0005】
このプリズムシートは、幾何光学に基づいた表面設計によって正面側(プリズムシートの平面方向に直交する方向)に出射する光の割合を多くすることができるが、規則正しく配列するプリズム部54aに起因して干渉パターンが現れやすく、ぎらつきが生じるおそれがある。
【0006】
そのため、プリズムシートの表面側に上用拡散シートを配設して、上記ぎらつきの発生を防止することが提案されている(特開2002−256053号公報参照)。
【0007】
しかし、上記公報のようにプリズムシートの表面側に上用拡散シートを設けると、プリズムシートによって高められた正面輝度は低下してしまうだけでなく、光学シートの枚数が多くなり液晶表示装置用バックライトユニットの薄型化の要求に反する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−256053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような不都合に鑑みてなされたものであり、プリズムシートと液晶層の間に上用拡散シートを設けなくても、画面のぎらつきや干渉パターンの発生を防止でき、正面輝度の向上及び薄型化を促進することができるプリズムシート及びこれを用いた液晶表示装置用バックライトユニットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた発明は、
透明な基材層と、
この基材層の表面側に積層され、バインダー中にビーズが分散したビーズ塗工層と、
このビーズ塗工層の表面側にストライプ状に配設される複数の突条プリズム部と
を備えるプリズムシートである。
【0011】
当該プリズムシートは、基材層と突条プリズム部との間にビーズ塗工層を備えていることから、ビーズ塗工層に入射した光線をビーズによって内部拡散し、この拡散光を突条プリズム部に入射させることができる。従って、当該プリズムシートは、プリズムシートの持つ集光特性を緩和でき、画面のぎらつきや干渉パターンの発生を防止できる。
【0012】
当該プリズムシートにあっては、上記ビーズ塗工層と上記突条プリズム部との間にシート状部が配設されており、このシート状部と突条プリズム部とが一体成形されているとよい。上記シート状部をビーズ塗工層と突条プリズムとの間に配設することで、ビーズ塗工層の表面側にビーズが表出してビーズ塗工層の表面に凹凸形状が存在していたとしても、正確な形状の突条プリズム部を確実に形成することができる。つまり、当該プリズムシートにあっては、上記塗工層の表面に上記突条プリズム部を直接形成することも可能であるが、この場合には、上記ビーズ塗工層の表面の凹凸形状によって、突状プリズム部間の谷部付近の形状が正確に形成されないおそれがあり、これに対して上述のようにシート状部を配設することによってビーズ塗工層の表面の凹凸形状の存在に関わりなく、正確な形状の突条プリズム部を確実に形成することができる。
【0013】
上記ビーズ塗工層の平均厚さとしては、1μm以上10μm以下であることが好ましい。これにより、このビーズ塗工層に入射した光線を的確且つ確実に内部拡散することができるとともに、液晶表示装置の薄型化の要請に沿うことができる。
【0014】
また、上記ビーズ塗工層の積層量としては、2g/m以上10g/m以下であることが好ましい。これにより、このビーズ塗工層に入射した光線を的確且つ確実に内部拡散することができるとともに、液晶表示装置の薄型化の要請に沿うことができる。
さらに、ビーズ7の平均粒子径としては、1μm以上10μm以下であることが好ましい。これにより、光拡散等の効果が十分であるとともに、ビーズ塗工層の形成を容易に行い得る。
【0015】
上記ビーズの粒子径の変動係数は30%以下であることが好ましい。これにより、このビーズ塗工層に含まれるビーズの粒子径が均一化されているので、ビーズ塗工層に入射した光線を均一に内部拡散することができる。
【0016】
上記ビーズの屈折率よりも上記バインダーの屈折率が大きいことが好ましい。これにより、バインダーとして屈折率の大きいものを用いることができ、このため基材層からビーズ塗工層に向けて出射される光線がバインダー界面で全反射しにくく、光線の有効利用が図られる。
【0017】
上記バインダーの屈折率と上記ビーズの屈折率との差は、0.01以上0.60以下であるとよい。上記バインダーと上記ビーズの屈折率の差が上記下限よりも小さいと、ビーズ塗工層での内部拡散が不十分となるおそれがあり、上記上限を超えると、ビーズの界面で全反射が多くなり、ヘイズ値が高くなり過ぎ正面輝度が劣るおそれがあるためである。
【0018】
従って、ランプから発せられる光線を分散させて表面側に導く液晶表示装置用バックライトユニットにおいて、当該プリズムシートを備えると、画面のぎらつきや干渉パターンの発生を防止でき、正面輝度の向上及び薄型化を促進することができる。
【0019】
ここで、「表面側」とは、液晶表示モジュールの又は液晶表示モジュールに組み込まれた際の表示の観察側を意味する。「裏面側」とは、「表面側」と反対側を意味する。また、「粒子径の変動係数」は、下記式(1)により算出した。
【0020】
変動係数(%)=ビーズの粒子径の標準偏差/ビーズの平均粒子径・・・(1)
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明のプリズムシートは、プリズムシートの持つ集光特性を緩和し、画面のぎらつきや干渉パターンの発生を防止でき、正面輝度を向上させることができ、結果として、光学シートの枚数の低減による液晶表示装置用バックライトユニットの薄型化が促進される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係るプリズムシートを示す模式的断面図である。
【図2】従来のプリズムシートを用いた液晶表示装置用バックライトユニットの模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施形態を詳説する。図1のプリズムシート1は、透明な基材層2と、バインダー6中にビーズ7が分散したビーズ塗工層3と、このビーズ塗工層3の表面に積層されるシート状部4と、複数の突条プリズム部5とを裏側から表側にこの順に備える。
【0024】
基材層2は、光線を透過させる必要があるので透明、特に無色透明の合成樹脂から形成されている。かかる基材層2に用いられる合成樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリオレフィン、セルロースアセテート、耐候性塩化ビニル、活性エネルギー線硬化型樹脂等が挙げられる。
【0025】
上記基材層2の平均厚さは、特には限定されないが、例えば10μm以上500μm以下、好ましくは35μm以上250μm以下、特に好ましくは50μm以上188μm以下である。基材層2の厚みが上記範囲未満であると、バックライトユニットにおいて熱に曝された際にカールが発生しやすくなってしまい取扱いが困難になるおそれがある。逆に、基材層2の厚みが上記範囲を超えると、液晶表示装置の輝度が低下するおそれがあり、またバックライトユニットの厚みが大きくなって液晶表示装置の薄型化の要求に反するおそれがある。
【0026】
ビーズ塗工層3は、上記基材層2の表面に積層されている。このビーズ塗工層3は、離間して配設される複数のビーズ7と、このビーズ7を基材層2に固定するバインダー6とを有している。
【0027】
ビーズ7は、上記バインダー6によって上記基材層2の表面側に略等密度に配置固定される。このビーズ7とバインダー6との屈折率の差によって、このビーズ塗工層3は入射した光線を内部拡散している。
【0028】
ビーズ7の材料としては、無機フィラーと有機フィラーに大別される。無機フィラーとしては、具体的には、シリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、硫化バリウム、マグネシウムシリケート、又はこれらの混合物を用いることができる。有機フィラーの具体的な材料としては、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド等を用いることができる。中でも、透明性が高く、光線の透過を阻害しないアクリル樹脂やシリコーン樹脂が特に好ましい。
【0029】
ビーズ7の平均粒子径の下限としては、1μm、特に1.5μm、さらに特に2μmが好ましく、この平均粒子径の上限としては10μm、特に7μm、さらに特に4μmが好ましい。ビーズ7の平均粒子径が上記範囲未満であると、光拡散等の効果が不十分となるおそれがある。逆に、ビーズ7の平均粒子径が上記範囲を越えると、ビーズ塗工層形成材料の塗工が困難となってしまうおそれがある。上記ビーズ7の平均粒子径は、任意に抽出した100個のビーズ7を顕微鏡で拡大して粒子の直径を測定し、これを単純平均することにより導出される。なお、ビーズ7が球形でない場合は、任意の一方向におけるビーズ7の寸法とこれと直交する方向におけるビーズ7の寸法とを平均した値とする。
【0030】
ビーズ7としては、粒子径分布幅が狭い単分散ビーズ群が好適に使用できる。具体的には、ビーズ7の粒子径の変動係数としては、30%以下が好ましく、20%以下が特に好ましく、10%以下がさらに特に好ましい。これにより、このビーズ塗工層に含まれるビーズの粒子径が均一化されているので、ビーズ塗工層に入射した光線を均一に内部拡散することができる。
【0031】
また、上記ビーズ塗工層3の平均厚さは、上記ビーズ7の平均粒子径よりも大きいことが好ましい。これにより、ビーズ7がビーズ塗工層3の表面から突出し過ぎず、ビーズ塗工層3の表面粗さを一定範囲内とすることができる。
このビーズ塗工層3の平均厚さの下限としては、1μm、特に3μm、さらに特に5μmが好ましい。一方、ビーズ塗工層3の平均厚さの上限としては10μm、特に8μm、さらに特に6μmが好ましい。ビーズ塗工層3の平均厚さが上記範囲より小さいと、ビーズ7を固定できなくなるおそれがある。逆に、ビーズ塗工層3の平均厚さが上記範囲を超えると、プリズムシート1の薄型化の要求に反するおそれがある。
【0032】
また、ビーズ7の配合量(バインダーの形成材料であるポリマー組成物中の基材ポリマー100部に対する固形分換算の配合量)の下限としては、1部が好ましく、1.5部が特に好ましく、2部がさらに特に好ましい。一方、ビーズ7の上記配合量の上限としては、5部が好ましく、3部が特に好ましく、2.5部がさらに特に好ましい。ビーズ7の配合量が上記範囲未満であると、ビーズ7による光拡散が不十分となるおそれがある。一方、ビーズ7の配合量が上記範囲を超えると、ビーズ7による内部拡散が大きくなり過ぎ、正面輝度が低下するおそれがある。
【0033】
上記ビーズ塗工層3の積層量の下限としては、2g/mが好ましく、4g/mが特に好ましい。一方、ビーズ塗工層3の積層量の上限としては、10g/mが好ましく、8g/mが特に好ましい。ビーズ塗工層3の積層量が上記範囲より小さいと、ビーズ7を固定できなくなるおそれがある。逆に、ビーズ塗工層3の積層量が上記範囲を超えると、プリズムシート1の薄型化の要求に反するおそれがある。
【0034】
上記ビーズ塗工層3表面の算術平均粗さ(Ra)は、0.3μm以下が好ましく、0.2μm以下が特に好ましく、0.1μm以下がさらに特に好ましい。上記算術平均粗さが上記上限を超える場合、ビーズ塗工層3の表面(界面)での拡散が大きくなり過ぎ、正面輝度が低下するおそれがある。なお、このビーズ塗工層3の表面の算術平均粗さ(Ra)は、0.01μm以上が好ましく、0.03μm以上が特に好ましく、0.05μmがさらに特に好ましい。
【0035】
上記ビーズ塗工層3表面の十点平均粗さ(Rz)は、1.4μm以下が好ましく、1μm以下が特に好ましく、0.8μm以下がさらに特に好ましい。この十点平均粗さ(Rz)が上記上限より大きいと、凹凸形状が粗くなりすぎて、ビーズ塗工層3の界面での拡散が大きくなるおそれがある。なお、ビーズ塗工層3表面の十点平均粗さ(Rz)は、0.2μm以上が好ましく、0.3μm以上が特に好ましく、0.4μm以上がさらに特に好ましい。
【0036】
また、上記ビーズ7の屈折率は、上記バインダー6の屈折率よりも小さいことが好ましい。これにより、バインダー6として屈折率の大きいものを用いることができ、このため基材層2からビーズ塗工層3に向けて出射される光線がバインダー6界面で全反射にくく、光線の有効利用が図られる。
【0037】
さらに、上記バインダー6の屈折率とビーズ7の屈折率との差は、0.01以上0.60以下が好ましく、0.02以上0.1以下が特に好ましい。上記バインダー6とビーズ7との屈折率の差が上記範囲より小さいと、内部拡散を十分に発揮することができないおそれがある。一方、上記屈折率の差が上記範囲を超えると、ビーズ7の界面での反射が多くなり、ヘイズ値が高くなり過ぎ正面輝度が劣るおそれがある。具体的には、例えばビーズ7として屈折率1.45以上1.5以下のシリコンビーズを用い、バインダー6として屈折率1.5以上1.53以下のアクリル系樹脂からなるバインダーを用いることが可能である。
【0038】
上記バインダー6は、基材ポリマーを含むポリマー組成物を硬化させることで形成される。このようにポリマー組成物が硬化してバインダー6が形成されることで、基材層2の表面側にビーズ7が固定されている。
【0039】
上記基材ポリマーとしては、アクリル系樹脂が好適に用いられるが、この基材ポリマーは特に限定されるものではなく、例えばポリウレタン、ポリエステル、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミドイミド、エポキシ樹脂、紫外線硬化型樹脂等を用いることも可能である。また、上記基材ポリマーとしては、加工性が高く、塗工等の手段で容易にビーズ塗工層3を形成することができるポリオールが好ましい。また、バインダー6に用いられる基材ポリマーは光線を透過させる必要があるので透明とされており、無色透明が好ましい。なお、上記ポリマーは、2種以上を併用してもよい。
【0040】
上記ポリオールとしては、例えば(a)水酸基過剰の条件で得られるポリエステルポリオールと、(b)水酸基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られ、かつ、(メタ)アクリル単位等を有するアクリルポリオールとが好ましい。かかるポリエステルポリオール又はアクリルポリオールを基材ポリマーとするバインダー6は耐候性が高く、ビーズ塗工層3の黄変等を抑制することができる。なお、このポリエステルポリオールとアクリルポリオールは併用してもよい。
【0041】
なお、バインダー6を形成するためのポリマー組成物は、基材ポリマー以外に、例えば微小無機充填剤、硬化剤、可塑剤、分散剤、各種レベリング剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、粘性改質剤、潤滑剤、光安定化剤等が適宜配合されてもよい。これらのうち、紫外線吸収剤を配合することが好ましく、これによりバインダーに透過光線の紫外線をカットする機能を付与することができる。かかる紫外線カット機能を付与することで、当該プリズムシート1は、バックライトユニットのランプから発せられる微量の紫外線をカットし、紫外線による液晶層の破壊を防止することができる。
【0042】
かかる紫外線吸収剤としては、紫外線を吸収し、効率よく熱エネルギーに変換できるもので、かつ、光に対して安定な化合物であれば特に限定されるものではなく公知のものを使用することができる。中でも、紫外線吸収機能が高く、上記基材ポリマーとの相溶性良好で、基材ポリマー中に安定して存在するサリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びシアノアクリレート系紫外線吸収剤が好ましく、これらの群より選択される1種又は2種以上のものを用いるとよい。また、紫外線吸収剤としては、分子鎖に紫外線吸収基を有するポリマー(例えば、(株)日本触媒の「ユーダブルUV」シリーズなど)も好適に使用される。かかる分子鎖に紫外線吸収基を有するポリマーを用いることで、基材ポリマーとの相溶性が高く、紫外線吸収剤のブリードアウト等による紫外線吸収機能の劣化を防止することができる。なお、分子鎖に紫外線吸収基を有するポリマーをバインダー6の基材ポリマーとすることも可能である。また、この紫外線吸収基が結合されたポリマーをバインダー6の基材ポリマーとし、さらにこの基材ポリマー中に紫外線吸収剤を含有することも可能であり、紫外線吸収機能をより向上させることができる。
【0043】
上記紫外線吸収剤の基材ポリマーに対する含有量の下限としては、0.1質量%が好ましく、1質量%が特に好ましく、3質量%がさらに特に好ましい。一方、上記紫外線吸収剤の上記含有量の上限としては、10質量%が好ましく、8質量%が特に好ましく、5質量%がさらに特に好ましい。上記紫外線吸収剤の含有量が上記範囲より小さいと、紫外線吸収機能を十分に奏することができないおそれがある。逆に、紫外線吸収剤の含有量が上記範囲より大きいと、基材ポリマーに悪影響を及ぼし、バインダー6の強度、耐久性の低下をもたらすおそれがある。
【0044】
上記紫外線吸収剤に代え又は紫外線吸収剤と共に、紫外線安定剤(分子鎖に紫外線安定基が結合した基材ポリマーを含む)を使用してもよい。この紫外線安定剤により、紫外線で発生するラジカル、活性酸素等が不活性化され、紫外線安定性、耐候性等を向上させることができる。この紫外線安定剤としては、紫外線に対する安定性が高いヒンダードアミン系紫外線安定剤が好適に用いられる。なお、紫外線吸収剤と紫外線安定剤を併用することで、紫外線に対する劣化防止及び耐候性が格段に向上する。
【0045】
次に当該ビーズ塗工層3の形成方法について説明する。当該ビーズ塗工層3の形成方法としては、(a)バインダー6を構成するポリマー組成物にビーズ7を混合することでビーズ塗工層用ポリマー組成物を製造する工程と、(b)このビーズ塗工層用ポリマー組成物を透明な基材層2の表面に積層し、硬化させることでビーズ塗工層3を形成する工程とを有する。
【0046】
このビーズ塗工層用ポリマー組成物の積層手段としては、特に限定されるものではなく種々の公知の方法が採用される。具体的な積層手段としては、例えばグラビアコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、スプレーコート法等が挙げられる。
【0047】
上記複数の突状プリズム部5は、ビーズ塗工層3の表面側にストライプ状に配設されており、上記シート状部4は、ビーズ塗工層3と突条プリズム部5との間に配設されている。ここで、上記シート状部4と突条プリズム部5とは、同一素材から一体成形されて構成されている。このシート状部4によって、ビーズ塗工層3の表面側にビーズ7が表出してビーズ塗工層3の表面に凹凸形状が存在していたとしても、正確な形状の突条プリズム部5を確実に形成することができる。つまり、ビーズ塗工層の表面に突条プリズム部を直接形成した場合には、ビーズ塗工層の表面の凹凸形状によって突条プリズム部間の谷部付近の形状が正確に形成されないおそれがあり、これに対して上述のようにシート状部4を配設することによってビーズ塗工層3の表面の凹凸形状の存在に関わりなく、正確な形状の突条プリズム部5を確実に形成することができる。なお、上記シート状部4は、裏面が上記ビーズ塗工層3表面と密接状態となるようビーズ塗工層3表面に積層されている。
【0048】
このシート状部4の平均厚さは、特に限定されるものではないが2μm以上5μm以下であるとよい。シート状部4の平均厚さを上記範囲にすることにより、正確な形状の突条プリズム部5を確実に形成することができるとともに、当該プリズムシート1が厚くなり過ぎることを防止することができる。
【0049】
突条プリズム部5は、一側面(底面)がシート状部4表面に接する三角柱状のものである。突条プリズム部5の断面形状は、一般的には頂角αが90°、底角βが45°の直角二等辺三角形とされている。
突条プリズム部5の底面の幅(W)の下限としては、10μmが好ましく、30μmが特に好ましい。一方、上記幅(W)の上限としては、1000μmが好ましく、400μmが特に好ましい。これは、突条プリズム部5の底面の幅(W)が上記上限を超えると、ギラツキ、輝度ムラ等の発生原因となるおそれがあるためである。
【0050】
シート状部4及び突条プリズム部5は、光線を透過させる必要があるので透明、特に無色透明の合成樹脂から形成されている。このシート状部4及び突条プリズム部5の屈折率は、1.3以上1.8以下が好ましく、1.45以上1.6以下が特に好ましく、1.5以上1.53以下がさらに特に好ましい。また、シート状部4(及び突条プリズム部5)の屈折率とバインダー6の屈折率との差は、0.1以下が好ましく、0.01以下であることが特に好ましい。
【0051】
また、シート状部4及び突条プリズム部5を形成する合成樹脂としては、活性エネルギー線硬化樹脂が好適に採用される。この活性エネルギー線硬化樹脂としては、紫外線、電子線等の活性エネルギー線で硬化させたものが採用可能であり、例えばポリエステル類、エポキシ系樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系樹脂等が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリレート系樹脂がその光学特性等の観点から好ましい。このような硬化樹脂に使用される活性エネルギー線硬化性組成物としては、取扱い性や硬化性等の点で、例えば多価アクリレートおよび/または多価メタクリレート(以下、多価(メタ)アクリレートと記載)、モノアクリレートおよび/またはモノメタクリレート(以下、モノ(メタ)アクリレートと記載)、活性エネルギー線による光重合開始剤を主成分とするもの等が好ましい。代表的な多価(メタ)アクリレートとしては、例えばポリオールポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート、エポキシポリ(メタ)アクリレート、ウレタンポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、2種以上を併用してもよい。また、モノ(メタ)アクリレートとしては、例えばモノアルコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル、ポリオールのモノ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0052】
当該プリズムシート1の製造方法は、上記構造のものが形成できれば特に限定されるものではないが、一般的には透明な基材層2を作成し、その表面側にビーズ塗工層3を形成し、その後に突条プリズム部5及びシート状部4を一体形成する方法で製造される。この突条プリズム部5を形成する方法としては、具体的には
(a)プリズムシート1の表面形状(複数の突条プリズム部5からなる表面形状)の反転形状を有するシート型に合成樹脂を積層し、そのシート型を剥がすことにより突条プリズム部5等を形成する方法、
(b)プリズムシート1の表面形状の反転形状を有する金型に溶融樹脂を注入する射出成型法、
(c)シート化された樹脂を再加熱して前記と同様の金型と金属板との間にはさんでプレスして形状を転写する方法、
(d)プリズムシート1の表面形状の反転形状を周面に有するロール型と他のロールとのニップに溶融状態の樹脂を通し、上記形状を転写する押出しシート成形法、
(e)ビーズ塗工層3に紫外線硬化型樹脂を塗布し、上記と同様の反転形状を有するシート型、金型又はロール型に押さえ付けて未硬化の紫外線硬化型樹脂に形状を転写し、紫外線をあてて紫外線硬化型樹脂を硬化させる方法、
(f)上記と同様の反転形状を有する金型又はロール型に未硬化の紫外線硬化性樹脂を充填塗布し、ビーズ塗工層3で押さえ付けて均し、紫外線をあてて紫外線硬化型樹脂を硬化させる方法、
(g)紫外線硬化型樹脂の代わりに電子線硬化型樹脂を使用する方法
などがある。
【0053】
当該プリズムシート1は、公知の液晶表示装置のバックライトユニットに用いられる。具体的には、当該プリズムシート1は導光板と液晶層との間に配設されている。より具体的には、当該プリズムシート1は、図2に示すように光拡散シート53の表面側に配設され、光拡散シート53と液晶層との間に配設されている。
【0054】
当該プリズムシート1は、基材層2と表面側の突条プリズム部5との間にビーズ塗工層3を備えていることから、ビーズ塗工層3に入射した光線をビーズ7によって内部拡散し、この拡散光を突条プリズム部5に入射させることができる。従って、当該プリズムシート1は、プリズムシートの持つ集光特性を緩和でき、従来のような上用拡散シートを特に設けなくとも画面のぎらつきや干渉パターンの発生を防止できる。
【0055】
また、当該プリズムシート1は、バインダー6中に紫外線吸収剤を含有しているので、当該プリズムシート1は、バックライトユニットのランプから発せられる微量の紫外線をカットし、紫外線による液晶層の破壊を防止できる。
【0056】
さらに、上記実施形態においては、基材層の表面にビーズ塗工層を形成したものについて説明したが、基材層の表面に他の層が介在し、この他の層の表面にビーズ塗工層が形成されたものも適宜設計変更可能であり、基材層の表面側にビーズ塗工層が積層されているものであれば本発明の意図する範囲内である。
【0057】
また、上記実施形態において、ビーズ塗工層と突条プリズム部との間にシート状部を配設したものについて説明したが、本発明においてシート状部は必須の構成要件ではない。また、シート状部を設ける場合にあっても、上記実施形態のようにビーズ塗工層の表面にシート状部を積層するものに限定されず、ビーズ塗工層の表面側にシート状部が積層されていれば、ビーズ塗工層とシート状部との間に他の層が介在しているものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上のように、本発明のプリズムシート及びこれを用いたバックライトユニットは、画面のぎらつきや干渉パターンの発生を防止できる。結果として、光学シートの枚数の低減による正面輝度の向上及びバックライトユニットの薄型化を促進することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 プリズムシート
2 基材層
3 ビーズ塗工層
4 シート状部
5 突条プリズム部
6 バインダー
7 ビーズ
50 バックライトユニット
51 ランプ
52 導光板
53 光拡散シート
54 プリズムシート
54a 突条プリズム部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な基材層と、
この基材層の表面側に積層され、バインダー中にビーズが分散したビーズ塗工層と、
このビーズ塗工層の表面側にストライプ状に配設される複数の突条プリズム部と
を備えるプリズムシート。
【請求項2】
上記ビーズ塗工層と上記突条プリズム部との間にシート状部が配設されており、このシート状部と突条プリズム部とが一体成形されている請求項1に記載のプリズムシート。
【請求項3】
上記ビーズ塗工層の平均厚さが1μm以上10μm以下である請求項1又は請求項2に記載のプリズムシート。
【請求項4】
上記ビーズ塗工層の積層量が2g/m以上10g/m以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載のプリズムシート。
【請求項5】
上記ビーズの平均粒子径が1μm以上10μm以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプリズムシート。
【請求項6】
上記ビーズの粒子径の変動係数が30%以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のプリズムシート。
【請求項7】
上記ビーズの屈折率よりも上記バインダーの屈折率が大きい請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のプリズムシート。
【請求項8】
上記バインダーの屈折率と上記ビーズの屈折率との差が0.01以上0.60以下である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のプリズムシート。
【請求項9】
ランプから発せられる光線を分散させて表面側に導く液晶表示装置用バックライトユニットにおいて、
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のプリズムシートを備えていることを特徴とする液晶表示装置用バックライトユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−80017(P2013−80017A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218726(P2011−218726)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000165088)恵和株式会社 (63)
【Fターム(参考)】