説明

プリヒート付き卓上半田付け装置

【課題】プリヒート用熱源機器を新規付加することなく、また特に装置容量を大きくせずに、プリヒートを効果的になし得るようにし、品質向上,生産性向上につながるプリヒート付き卓上半田付け装置を提供する。
【解決手段】ケーシング9内にヒータ加熱した溶融半田Sを貯溜する半田槽1が設けられ、且つ溶融半田Sをポンプ31で循環させ、半田槽1上方に突出する噴流ノズル17の吐出口17cから噴流する溶融半田Sに、保持台45で支えられた基板52が浸かる下端位置と該噴流する溶融半田Sから離れた上端位置との間で保持台45を昇降させる昇降機構4を備える卓上半田付け装置において、半田槽1を形成する壁部表面1aを被う保温部材6で、壁部表面1aが一流路壁面になる流路Rを設け、且つ流路Rの入口側にファンFを設けて、ファンFで流路R内へ供給したエアが半田槽1からの熱で熱風となって、保持台45で支えられた基板下面52aに吹付けるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬タイプのプリヒート付き卓上半田付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板等への電子部品の実装は、一般的に、基板にフラックスを塗布した後、プリヒータで予熱(プリヒート)し、その後、半田付け装置にかけられる。
こうしたプリヒートは、フラックスを活性化させ、電子部品への半田の付き性が良くなり品質向上に役立つことから、該プリヒートを備える半田付け装置の発明が種々提案されている(例えば、特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−318530公報
【特許文献2】特開2005−167001公報
【特許文献3】特開平11−46058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、特許文献1〜3を含めて、従来の半田付け装置はいずれも大型の自動化設備であり、可搬タイプの卓上半田付け装置には適用できなかった。従来の半田付け装置はいずれも大量生産向きの連続自動化装置であり、試作品や基板枚数が極めて少ない小ロット生産で、一枚ずつ基板を装置に組付けて、半田付けを行った後にその基板を取り外すのを繰り返す卓上半田付け装置に設けるのは困難であった。しかも、従来の半田付け装置は、どれもプリヒート工程を設けるために独自のプリヒート用熱源機器を配備しており、その分、装置スペースが大きくなり、また装置コストも高くなっていた。
一方、本出願人は先に可搬タイプの卓上半田付け装置(特開平10−126049号)を提案したが、これを含め、卓上半田付け装置の従来品にプリヒートを行う機器を備えたものは存在しなかった。試作品や基板枚数が極めて少ない小ロット生産向き装置であることから、従来は、プリヒートを行う代わりに、フラックス塗布した基板を時間放置して空気乾燥によりフラックス中のIPA等の溶媒を飛ばし、電子部品への半田の付き性を良くしていた。しかし、少量多品種向けの卓上半田付け装置といっても、時間放置してフラックス中のIPA等の溶媒を飛ばす方法は、タクト時間が長くなり、生産性を低下させる要因になっていた。さらに、近年、環境問題から鉛フリー半田が用いられるようになり、その融点が高くなる傾向にあり、卓上半田付け装置にあっても200℃程度でプリヒートする必要性に迫られていた。また、フラックスについても、人体及び環境に優しい水性フラックスが検討されるようになり、時間放置して空気乾燥によりフラックス中の水性溶媒を飛ばそうとなると、アルコールを用いた従来形フラックスと違ってより一層長い時間を要し、タクト時間がその分長くなって生産性低下に陥ることとなった。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するもので、卓上半田付け装置にあって、プリヒート用熱源機器を新規付加することなく、また特に装置容量を大きくせずに、プリヒートを効果的になし得るようにし、品質向上,生産性向上につながるプリヒート付き卓上半田付け装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、請求項1に記載の発明の要旨は、ケーシング(9)内にヒータ(2)で加熱した溶融半田(S)を貯溜する半田槽(1)が設けられ、且つ該溶融半田(S)をポンプ(31)で循環させ、該半田槽(1)の上方に突出する噴流ノズル(17)の吐出口(17c)から噴流する溶融半田(S)に、保持台(45)で支えられた基板(52)のスルーホール(52h)が浸かる下端位置と該噴流する溶融半田(S)から離れた上端位置との間で該保持台(45)を昇降させる昇降機構(4)を備える卓上半田付け装置において、前記半田槽(1)を形成する壁部表面(1a)を被う保温部材(6)で、該壁部表面(1a)が一流路壁面になる流路(R)を設け、且つ該流路(R)の入口側にファン(F)を設けて、該ファン(F)で該流路(R)内へ供給したエアが、前記半田槽からの熱で熱風となって、前記保持台(45)で支えられた基板(52)の下面(52a)に吹付けるようにしたことを特徴とするプリヒート付き卓上半田付け装置にある。
請求項2の発明たるプリヒート付き卓上半田付け装置は、請求項1で、流路(R)の出口(R2)を形成する前記保温部材(6)が前記半田槽(1)の前壁部(11)側に設けられ、且つ該保温部材(6)と前記ケーシング(9)の前立板(91)との間にガイド壁(71)が立設し、さらに該ガイド壁(71)の上部を上方へ向けて後方傾斜する斜板部(71a)に形成して、前記ファン(F)で該流路(R)内へ供給したエアが熱風となって、流路の前記出口(R2)から該ガイド壁(71)に導かれて、前記保持台(45)で支えられた基板(52)の下面(52a)に吹付けるようにしたことを特徴とする。請求項3の発明たるプリヒート付き卓上半田付け装置は、請求項1又は2で、ケーシング(9)内で前記半田槽(1)が配される前立板(91)側領域と、該ケーシング(9)で前記ポンプ(31)を駆動するモータ(32)が配される後立板(92)側領域と、に区切る仕切壁(72)がケーシング(9)内に立設し、且つ該仕切壁(72)に開孔部(72a)が設けられ、該開孔部(72a)に前記ファン(F)のエア吸込口を合わすように該ファン(F)を設けることを特徴とする。請求項4の発明たるプリヒート付き卓上半田付け装置は、請求項1〜3で、半田槽(1)の槽本体(1B)が板状の底部(10),前壁部(11),後壁部(12),両側壁部(13,14)からなる上面開口の方形箱体にして、後壁部(12)の中央部位でその壁部表面(1a)側に前記流路(R)の入口(R1)が設けられ、該入口(R1)から該後壁部(12)沿いに水平左右両方向に進んで二手に分かれる流路(R)が設けられ、二手に分かれる両流路(R)はそれぞれ両側壁部(13,14)へ達した後、両側壁部(13,14)沿いに水平前方向に進んで前壁部(11)に達し、さらに該前壁部(11)沿いに水平方向に進んで、該両流路(R)が該前壁部(11)の中央部位で集合し、該中央部位でその壁部表面(1a)側に、流路(R)の出口(R2)が設けられるようにしたことを特徴とする。
【0007】
(作用)
請求項1の発明のごとく、壁部表面(1a)が一流路壁面になる流路(R)を設け、且つ該流路(R)の入口側にファン(F)を設けて、ファン(F)で該流路(R)内へ供給したエアが、前記半田槽(1)からの熱で熱風となって、保持台(45)で支えられた基板(52)の下面(52a)に吹付けるようにすると、卓上半田付け装置であっても、半田糟の熱を活用してプリヒート付き卓上半田付け装置にできる。プリヒート及び半田付けを行う装置になり、品質向上に貢献する。しかも、熱風用熱源に半田槽の熱を活用するので、プリヒートのための熱源機器を新たに要しない。
請求項2の発明のごとく、保温部材(6)と前記ケーシング(9)の前立板(91)との間にガイド壁(71)が立設し、さらに該ガイド壁(71)の上部を上方へ向けて後方傾斜する斜板部(71a)に形成すると、簡便構造にして、流路から出た熱風が保持台(45)で支えられた基板(52)の下面(52a)にうまく吹付けるようになる。
請求項3の発明のごとく、ケーシング(9)内で前記半田槽(1)が配される前立板(91)側領域と、該ケーシング(9)で前記ポンプ(31)を駆動するモータ(32)が配される後立板(92)側領域と、に区切る仕切壁(72)がケーシング(9)内に立設し、且つ該仕切壁(72)に開孔部(72a)が設けられ、該開孔部(72a)に前記ファン(F)のエア吸込口を合わすように該ファン(F)を設けると、ファンがプリヒートの供給用エアを送る役目だけでなく、モータが発生する熱除去にも役立つ。
請求項4の発明のごとく、入口(R1)から該後壁部(12)沿いに水平左右両方向に進んで二手に分かれる流路(R)が設けられ、二手に分かれる両流路(R)はそれぞれ両側壁部(13,14)へ達した後、両側壁部(13,14)沿いに水平前方向に進んで前壁部(11)に達し、さらに該前壁部(11)沿いに水平方向に進んで、該両流路(R)が該前壁部(11)の中央部位で集合し、該中央部位でその壁部表面(1a)側に、流路(R)の出口(R2)が設けられると、半田糟からの熱伝導面積が非常に大きくなって、200℃程度でプリヒートすることができ、鉛フリーや水性フラックスを用いた場合でも十分対応可能になる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のプリヒート付き卓上半田付け装置は、可搬タイプのコンパクトな卓上半田付け装置にあって、新たな熱源機器を設置することなく、従来、困難視されてきたプリヒートを比較的低コストで実現し、しかも、高温熱風によるプリヒートが可能であり、最近の鉛フリーや水性フラックスにも対応できるなど、品質安定,生産性向上に優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のプリヒート付き卓上半田付け装置で、その概略側面断面である。
【図2】図1のII-II線矢視図で、概略平面である。
【図3】図1のIII-III線矢視図で、概略正面断面図である。
【図4】図3の状態からエアシリンダのロッドが退動して、吐出口の溶融半田に基板のスルーホールが浸かった概略正面断面図である。
【図5】図3の要部断面図である。
【図6】図1,図2の流路入口側周りを保温部材で形成する分解斜視図である。
【図7】図1,図2の流路入口周りを保温部材で形成する説明斜視図である。
【図8】図1,図2の流路出口周りを保温部材で形成する説明斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るプリヒート付き卓上半田付け装置について詳述する。図1〜図8は本発明のプリヒート付き卓上半田付け装置(以下、単に「半田付け装置」ともいう。)の一形態で、図1はその概略側面断面図、図2は図1のII-II線矢視図、図3は図1のIII-III線矢視図で、概略正面断面図、図4は図3の状態からエアシリンダのロッドが退動して吐出口の溶融半田に基板が浸かった概略正面断面図、図5は図3の要部断面図、図6〜図8は図1,図2の流路を保温部材で形成する説明図を示す。尚、各図は図面を判り易くするためケージングを含め、断面表示のハッチングを一部省略し、また図6〜図8では半田槽の外鍔を省略する。
【0011】
半田付け装置は半田槽1とヒータ2とポンプ31とモータ32と昇降機構4と保温部材6とファンFとケーシング9とを具備する。
ケーシング9内にヒータ2で加熱した溶融半田Sを貯溜する半田槽1が設けられる。該溶融半田Sをポンプ31で循環させ、該半田槽1の上方に突出する噴流ノズル17の吐出口17cから噴流する溶融半田Sに、昇降機構4により、その保持台45で支えられた基板52のスルーホール52hが、浸かる図4の下端位置と該噴流する溶融半田Sから離れた図3の上端位置との間で昇降する。本発明では、作業者が通常、半田付け装置の前に立って作業する図3の正面図で、紙面手前を前方,前側、紙面奥方を後方,後側、紙面上方を上方、紙面左方を左方、紙面右方を右方、紙面左右横方向の線を含む紙面垂直面方向を水平方向という。
【0012】
ケーシング9は、図1,図2に示すような平面視矩形の箱形容器である。水平配設される底板90は、前立板91寄りに半田槽1が配され、該半田槽1と後立板92との間にスペースを確保して、該スペースにポンプ31の駆動用モータ32が配される大きさとする。前立板91,後立板92,両側立板93,94で底板90の周縁を囲って半田槽1,モータ32等を収容する。後立板92は高くし、その上縁で屈曲させて前方に上板95を延設し、さらに該上板95の先は斜板96が延設してモータ32を被う。該斜板96からポンプ31の上方をカバーするポンプカバー97が設けられる一方、前立板91は上方部が後方傾斜して傾板911となり、該傾板の上縁から水平鍔912が後方に張り出す。該水平鍔912とポンプカバー97の間は上面開口部とし、該開口部に半田槽1の噴流ノズル17が配される。
【0013】
半田槽1は、溶融半田Sを貯める槽本体1Bを備え、さらに槽本体1B内の溶融半田Sをポンプ31で循環させ、この循環する溶融半田Sを吐出口17cから噴流させるよう、横長筒部15と縦置き筒部16と噴流ノズル17とを備える。槽本体1Bは板状の底部10,前壁部11,後壁部12,両側壁部13,14からなる上面開口の方形箱容器にして、さらに各部の上縁から外方へ外鍔1gが延設する。
角筒からなる横長筒部15が横置きされ、その一端側筒口を底部10近くの後壁部12で塞いで、ここから該底部10,両側壁部13,14と平行にして他端側筒口が前壁部11近くまで配される。他端側筒口を蓋15dで塞ぎ、該蓋15d寄り横長筒部15の上面に吐出側口15bを設ける一方、後壁部12寄り横長筒部15の下面に吸込み側口15aを設け、さらに該吸込み側口15aの上方に在る横長筒部15の上面にポンプ用孔15cを設ける。該吐出側口15bを縦置き筒部16の下端側開口部内に配して、該縦置き筒部16が横長筒部15上に立設する。該縦置き筒部16に、下方側接続部17aを重ね合わせて取付けられる噴流ノズル17は、その噴流筒部17bが半田槽1の上方に向け突出するよう設けられる。噴流ノズル17は着脱自在に縦置き筒部16に取着でき、基板52に合わせた様々な仕様の噴流ノズル17が用意される。
そして、前記ポンプ用孔15cにポンプ31の支軸を挿通させ、支軸先端部に取着したインペラ31aを横長筒部15内に配して、ポンプ31の作動により、吸込み側口15aから吸込んだ溶融半田Sを、図1の白抜き矢印のごとく横長筒部15内,吐出側口15b,縦置き筒部16内を経て噴流筒部17bの吐出口17cから噴流させる。
【0014】
ヒータ2は半田槽1内の溶融半田Sを加温して溶融維持する熱源で、ここでは、図1,図3のごとく、槽本体底部10とケーシング9の底板90に載置したマット状断熱材Mとに挟まれるようにして二本配設される。
ポンプ31は既述のごとく半田槽1内の溶融半田Sを循環させるもので、本実施形態は、半田槽1内の後壁部12寄りにポンプ31を設置し、該ポンプ31を駆動するモータ32を半田槽1外で、ケーシング9内の後立板92寄りに設置する。モータ32に固着したプーリ33とポンプ31に固着したプーリ34とにベルト35で巻回し、モータ32の回転で、横長筒部15内に配されたポンプ31のインペラ31aを回転させ、噴流筒部17bの吐出口17cから溶融半田Sを噴流させる。
昇降機構4は、アクチュエータたるエアシリンダ4aと保持台45とを備える。ケーシング9内の両側壁部93,94近くにエアシリンダ4aがそれぞれ設けられる。両エアシリンダ4aは起立し、シリンダ本体41から上方へ向けて伸びるロッド42の先端に、ケーシング9上方を横切るように水平配設される枠状保持台45を固定する(図3)。
【0015】
保温部材6は、ヒータ2加熱された溶融半田Sを溶融維持できるよう、半田槽1に係る槽本体1Bの壁部表面1aに断熱用部材として取付けられる。
しかるに、本発明は、この保温部材6と槽本体1Bの壁部表面1aを活用し、さらにファンFを設けて、フラックスが塗布された基板裏面52をプリヒートできるようにする。半田槽1の槽本体1Bを形成する壁部表面1aを被う保温部材6で、壁部表面1aが一流路壁面になる流路Rを設け、且つ流路Rの入口R1側にファンF(ここではモータファン)を設けて、ファンFで流路R内へ供給したエアが、半田槽1からの熱で熱風となって、保持台45で支えられた基板52の下面52aに吹付けるようにする。
【0016】
例えば、保温部材6が複数枚のマット状内層部材6aとマット状外層部材6bとからなる(本実施形態)。図6,図7のごとく上下に隣り合う内層部材6aの裏面を壁部表面1aに当接させ、両者の対向側端面6aを上下方向に離間させて空所kが形成されるようにする。さらに外層部材6bが空所kの表側開放口kに蓋をして内装部材6aの表側に積層することにより、流路Rが設けられる。
【0017】
具体的には、二本の内層部材6aに係る対向側端面6aを上下方向に離間させ、且つ両内層部材6aの両端部に短柱内層部材6a´を介在させて四角枠に形成する。該四角枠に係る内層部材6aの水平方向両端部及び短柱内層部材6a´をそれぞれ後壁部12の左右両側外方へ突き出し、該後壁部12の表面1aに四角枠を取付ける。後壁部12で、該四角枠に囲まれた部分が後方側に露出し、空所kになる。この空所kの表面側開放口kに、外層部材6bが蓋をして内層部材6aに積層一体化する。矩形外層部材6bの盤大きさは前記四角枠の大きさに等しく、且つ外層部材6bに流路用入口R1となる通孔を形成する。槽本体1Bに係る後壁部12の中央部位で、その壁部表面1a側の外層部材6bに流路Rの入口R1が設けられる。
また、両側壁部13,14では、上下で隣り合う二本の内層部材6aに係る対向側端面6aを離間させ、流路R用空所kを形成するようして、該両側壁部13,14の表面1aに取付ける。且つ該空所kの表面側開放口kに外層部材6bが蓋をして両内層部材6aに積層一体化する。
かくして、入口R1から後壁部12沿いに水平左右両方向に進んで二手に分かれる流路Rが設けられ、二手に分かれる両流路Rはそれぞれ両側壁部13,14へ達した後、方向を変え(図7の矢印)、両側壁部13,14沿いに水平前方向に進んで前壁部11へと向かう。
【0018】
また、前壁部11側でも図8のごとく上下で隣り合う二本の内層部材6aを、対向側端面6aが離間するようにして水平に配し、且つ両内層部材6aの両端部に短柱内層部材6a´を起立,介在させて四角状枠に形成する。尚、ここでは上側内層部材6aの長手方向中央に欠損部6aを設け、四角状枠とする。該四角状枠に係る内層部材6aの水平方向両端部及び短柱内層部材6a´を、それぞれ後壁部12の左右両側外方へ突き出し、四角状枠を後壁部12の表面1aに取付ける。前壁部11で、該四角状枠に囲まれた部分が前方側に露出し、空所kになる。この空所kの表面側開放口kに、外層部材6bが蓋をして内層部材6aに積層一体化する。矩形外層部材6bの盤大きさは前記四角状枠の大きさに等しく、且つ外層部材6bに流路用出口R2となる通孔を形成する。流路出口R2が矩形盤状外層部材6bの上縁側中央を凹状に切欠いて設けられる。
こうして、流路入口R1から後壁部12沿いに水平左右両方向に二手に分かれる流路Rが設けられ、二手に分かれる両流路Rはそれぞれ両側壁部13,14へ達した後、向きを変え、両側壁部13,14沿いに水平前方向に進んで前壁部11に達し、さらに方向を変え、前壁部11沿いに水平方向に進んで、前壁部11の中央部位で集合し、該中央部位でその壁部表面1a側の外層部材6bに設けた流路出口R2へとつながるプリヒート用流路Rが出来る。保温部材6と壁部表面1aとで横断面四角形の流路Rができる。流路Rを形成する壁部表面1aの各部分が、前壁部11,側壁部13,14,後壁部12にて、底部10近くから糟本体1Bに貯留される溶融半田液面S2の高さ付近にまで確保しているので、熱伝導面積が大きくなり、該流路Rを通過するエアは溶融半田Sの温度近くに円滑移行できる。
【0019】
ファンFは流路入口R1側に設置され、該ファンFで流路R内に供給されたエアが壁部表面1aを介して200℃以上に高温保持される半田槽1からの熱移動(熱伝導)で200℃付近の熱風となり、流路出口R2を出て保持台45で支えられた基板52の下面52aに該熱風が吹付けられるようにしている。尚、半田の融点は183℃、鉛フリー半田の融点は約219℃である。
本実施形態は、ケーシング9内で半田槽1が配される前立板91側領域と、該ケーシング9でポンプ31を駆動するモータ32が配される後立板92側領域と、に区切る仕切壁72がケーシング9内に立設する(図1)。半田槽1側の高温域になる熱からモータ32を護るためである。そして、仕切壁72に開孔部72aが設けられ、該開孔部72aにファンFのエア吸込口を合わすようにファンFが設置される。仕切壁72がファンFの取付け用板になる。モータ32が発する熱をファンFが吸込んで、モータ32の冷却に役立つ。と同時に、僅かながらその熱がプリヒートに有効利用される。
【0020】
また、流路出口R2を形成する保温部材6が、既述のごとく半田槽1の前壁部11側に設けられるが、本実施形態は、前壁部11側の保温部材6とケーシング9の前立板91との間を仕切るガイド壁71が立設する。ガイド壁71が前壁部11側の保温部材6寄りで、前壁部11の壁面に平行起立し、さらに該ガイド壁71の上部を上方へ向けて後方傾斜する斜板部71aに形成する。そうして、図1,図2の矢印のごとくファンFで流路R内へ供給したエアが、半田糟1からの熱供給を受け熱風となって、流路出口R2からガイド壁71に導かれて、保持台45で支えられた基板52の下面52aに吹付けるようにしている。
【0021】
前記保持台45の上面には、その枠内を埋める形で、マスク治具51、さらに基板52が水平に載置固定される。基板52のスルーホール52hに電子部品53のリード531を挿入して、基板52上にコネクタ等の電子部品53が配される。マスク治具51の穴51h、保持台45の枠内を通って、基板下面52a側のリード531やスルーホール52h周りが下方に露出し、該露出部分にフラックスを塗布した状態で、電子部品53を載置した基板52がマスク治具51にセットされる。この露出部分が吐出口17cから噴流する溶融半田Sの溶融面S1に対向配設される。
図1は図3のごとくエアシリンダ4aに係るロッド42が伸長状態(進出状態)にあり、基板52下面側のリード531,スルーホール52h周りが噴流する溶融半田Sから離れた上端位置に在る。保持台45,マスク治具51,基板52によって、水平鍔912とポンプカバー97間の上面開口部が覆われる格好になるが、保持台45の外周との間に若干隙間があり、またロッド42の伸長状態で、保持台45,マスク治具51,基板52が、上面開口部,噴流ノズル17よりも上方に位置する。そのため、ファンFが回り、流路出口R2に達した熱風が、保持台45に支えられた基板52の下面52aに吹付け、基板下面52aをプリヒートしフラックスを活性化させた後、前記隙間等を通じて放散していく(図1)。
そして、プリヒートが必要時間行なわれると、ファンFが止まり、またロッド42が収縮(退動)する。ロッド42の収縮で、吐出口17cに在る溶融半田Sに、基板52のスルーホール52hが浸かる下端位置になり、リード531周りの半田付けが行われる。プリヒート時間(ロッド42の伸長時間)や半田付け時間(ロッド42の収縮時間)等は制御タッチパネル84で適宜設定される。起動ボタン81を押すと、シーケンス制御によって、上記一連動作が遂行される。
【0022】
すなわち、本プリヒート付き卓上半田付け装置を使って、例えば次のようにして、プリヒート,半田付けの一連動作が行われる。
半田糟1の溶融半田Sが所定温度に保ち、ロッド42の進出状態下、作業者が、まずフラックス塗布した電子部品搭載基板52をマスク治具51にセットする(図1)。次に、起動ボタン81を押す。すると、シーケンス制御によってファンFが回り、該ファンで流路入口R1に供給されたエアが流路進行中に熱風となって基板下面52aに図1の黒矢印のごとく吹付け、プリヒートする。プリヒートが所定時間行われ完了すると、ファンFが停止する。と同時に、エアシリンダ4aの作動でロッド42が退動し、基板52を吐出口17cから噴流する溶融半田Sにスルーホール52hが浸かる下端位置にまで下降させ、半田付けを行う。プリヒートが十分なされているので、半田の付き性は良好となる。半田付けに必要な時間が経過すると、エアシリンダ4aの作動でロッド42が進出し、基板52が吐出口17cの溶融半田Sから離れて上昇し当初位置に戻って、プリヒート,半田付けの一連動作が完了する。後は、プリヒート,半田付けが終了した基板52を作業者が取外し、回収するだけである。作業者は電子部品搭載基板52のマスク治具51へのセット、起動ボタン81のスイッチオン、プリヒート,半田付けが終了した基板52を取外すだけである。プリヒート,半田付けの上記一連動作は自動化されている。
【0023】
図中、符号18は噴流ノズル17から溢れた溶融半田Sを槽本体1Bに導く受皿、符号9dは脚、符号80は電源スイッチ,符号82は噴流スイッチ、符号83は噴流レベルスイッチ、符号51bは基板52をマスク治具51に取付ける係止片、符号93f,94fは側立板93,94の上縁に設けた内鍔、符号MKは遮蔽板、符号SLはエア取込み用スリットを示す。
【0024】
このように構成したプリヒート付き卓上半田付け装置は、連続自動装置と違って、基板52を一個ずつ半田付け処理していく卓上形装置でありながら、プリヒート機能を備えた半田付け装置であるので、品質向上,生産性向上に威力を発揮する。従来、試作品や小ロットを一個ずつ処理する手作業や、特開平10-126049号公報技術では、空気中に晒して時間をかけてフラックス中のIPA等の溶媒を揮発させていたが、少ない小ロットといっても生産タクトが非常に長くなり、基板52の枚数が増えれば大幅に生産性を低下させ、また品質がばらついていた。これに対し、本プリヒート付き半田付け装置であれば、高い温度でプリヒート処理ができ、フラックスを早く乾燥させ活性化できるので、リード531への半田の付き性が良好になり、生産タクトの短縮化のみならず品質向上、品質安定性にも貢献する。プリヒートによりフラックス中の気化成分を蒸発させ、スルーホール52hに挿入された電子部品53のリード531を基板52に綺麗に半田付けする。高温でプリヒート処理できるので、最近の鉛フリーや水性フラックスを用いた場合にも十分対応できる。
【0025】
また、基板52を一枚ずつ処理していくプリヒート付き卓上半田付け装置であっても、フラックス塗布した電子部品搭載基板52をマスク治具51にセット後、起動ボタン81を押すだけで、プリヒート及びその後の半田付けまでの一連動作を速やかに行い、且つ終了後、直ちにロッド42が伸長し、基板52が噴流ノズル17から離れて、マスク治具51にセットした当初位置に戻るので、スピード処理が可能になっている。作業者による作業も極めて簡単になる。マスク治具51上に、フラックス塗布した電子部品搭載基板52をセットし、起動ボタン81を押せば、後は、シーケンス制御によって効率良くプリヒート,半田付けを実施し、その後、ロッド42が進出して、溶融半田Sから離れて上昇し当初位置に戻るので、この基板完成品を取り出すだけとなる。作業者に特段の技術,技能を必要とせず、(1)基板セット、(2)起動ボタン81のオン、(3)完成品の取り出しの(1)〜(3)を繰り返すだけであり、円滑処理でき高品質の製品が安定して得られる。
【0026】
しかも、卓上半田付け装置にあって、半田槽1を形成する壁部表面1aを被う保温部材6で、壁部表面1aが一流路壁面になる流路Rを設けて、溶融半田Sを貯溜する半田槽1の熱を有効活用してプリヒートを行うので、プリヒート用熱源機器を新規付加することなく、また特に装置容量を大きくせずにプリヒートを効果的に行うことができる。流路Rの入口R1側にファンFを新規に設けるだけでプリヒートができ、装置コストもさほど高くならない。
【0027】
加えて、流路出口R2を形成する保温部材6が半田槽1の前壁部11側に設け、且つ該保温部材6とケーシング9の前立板91との間にガイド壁71を立設し、さらに該ガイド壁71の上部を上方へ向けて後方傾斜する斜板部71aに形成すると、流路出口R2からの熱風がガイド壁71にうまく導かれて、保持台45で支えられた基板下面52aに効率良く吹付けることができるので、プリヒートによるフラックスの活性化がより円滑に進む。
そして、ケーシング9内で半田槽1が配される前立板91側領域と、該ケーシング9でポンプ31を駆動するモータ32が配される後立板92側領域と、に区切る仕切壁72がケーシング9内に立設し、且つ該仕切壁72に開孔部72aが設けられ、該開孔部72aにファンFのエア吸込口を合わすように該ファンFを設けると、モータ32から発生する熱をファンFが吸引するので、ファンFがプリヒートだけでなくモータ32の発生熱を除去するのにも役立つ。
【0028】
また、流路入口R1を形成する保温部材6が半田槽1の後壁部12側に設けられると、ファンFで流路入口R1へ送り込まれたエアは、図6〜図8のごとく、後壁部12,両側壁部13,14,前壁部11の壁部表面1aと直かに接しながら流路出口R2に達するので、半田槽1からの熱伝導による熱授受が有効に行え、プリヒートに必要な温度を得ることができる。
さらに、半田槽1の槽本体1Bが板状の底部10,前壁部11,後壁部12,両側壁部13,14からなる上面開口の方形箱体にして、後壁部12の中央部位でその壁部表面1a側に流路入口R1が設けられ、該入口R1から該後壁部12沿いに左右水平両方向に進んで二手に分かれる流路Rが設けられ、二手に分かれる両流路Rはそれぞれ両側壁部13,14へ達した後、両側壁部13,14沿いに水平方向に進んで前壁部11に達し、さらに方向を変え、該前壁部11沿いに水平方向に進んで、該両流路Rが前壁部11の中央部位で集合し、該中央部位でその壁部表面1a側に、流路Rの出口R2が設けられると、半田槽1の方形箱体の外周側面を取り囲むようにして、流路入口R1から流路出口R2に向かうので、半田槽1の壁部表面1aとエアが接触する熱伝導時間を十分取ることができ、プリヒートに必要な温度が確実に得られる。
【0029】
加えて、保温部材6が複数枚のマット状内層部材6aとマット状外層部材6bとからなり、上下に隣り合う該内層部材6aの裏面を前記壁部表面1aに当接させ且つその対向側端面6aを上下方向に離間させて空所kが形成されるようにし、さらに外層部材6bが該空所kの表側開放口kに蓋をして該内層部材6aの表側に積層することにより流路Rが設けられると、流路Rの形成が容易になる。流路Rは内層部材6aが充填される箇所の一部分を欠落させて形成できるので、装置容量を大きくすることなく流路Rを作製でき、プリヒート付き卓上半田付け装置のコンパクト化が図れる。さらにいえば、内層部材6aの一部分を欠落させた保温部材6と槽本体1Bの壁部表面1aとで流路Rを形成できるので、新たな流路R用ダクト等も要しない。
このように、本プリヒート付き卓上半田付け装置は、上述した数々の優れた効果を発揮し極めて有益である。
【0030】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。半田槽1,ヒータ2,ポンプ31,昇降機構4,マスク治具51,基板52,保温部材6,ガイド壁71,仕切壁72,ケーシング9等の形状,大きさ,個数,材料,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。
【符号の説明】
【0031】
1 半田槽
1a 壁部表面(表面)
10 底部
11 前壁部
12 後壁部
13,14 側壁部
17 噴流ノズル
17c 吐出口
2 ヒータ
52 基板
52a 基板の下面(基板下面)
52h スルーホール
6 保温部材
71 ガイド壁
71a 斜板部
72 仕切壁
71a 開孔部
9 ケーシング
91 前立板
92 後立板
F ファン
R 流路
R1 入口(流路入口)
R2 出口(流路出口)
S 溶融半田

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング(9)内にヒータ(2)で加熱した溶融半田(S)を貯溜する半田槽(1)が設けられ、且つ該溶融半田(S)をポンプ(31)で循環させ、該半田槽(1)の上方に突出する噴流ノズル(17)の吐出口(17c)から噴流する溶融半田(S)に、保持台(45)で支えられた基板(52)のスルーホール(52h)が浸かる下端位置と該噴流する溶融半田(S)から離れた上端位置との間で該保持台(45)を昇降させる昇降機構(4)を備える卓上半田付け装置において、
前記半田槽(1)を形成する壁部表面(1a)を被う保温部材(6)で、該壁部表面(1a)が一流路壁面になる流路(R)を設け、且つ該流路(R)の入口側にファン(F)を設けて、該ファン(F)で該流路(R)内へ供給したエアが、前記半田槽(1)からの熱で熱風となって、前記保持台(45)で支えられた基板(52)の下面(52a)に吹付けるようにしたことを特徴とするプリヒート付き卓上半田付け装置。
【請求項2】
前記流路(R)の出口(R2)を形成する前記保温部材(6)が前記半田槽(1)の前壁部(11)側に設けられ、且つ該保温部材(6)と前記ケーシング(9)の前立板(91)との間にガイド壁(71)が立設し、さらに該ガイド壁(71)の上部を上方へ向けて後方傾斜する斜板部(71a)に形成して、前記ファン(F)で該流路(R)内へ供給したエアが熱風となって、流路の前記出口(R2)から該ガイド壁(71)に導かれて、前記保持台(45)で支えられた基板(52)の下面(52a)に吹付けるようにした請求項1記載のプリヒート付き卓上半田付け装置。
【請求項3】
前記ケーシング(9)内で前記半田槽(1)が配される前立板(91)側領域と、該ケーシング(9)で前記ポンプ(31)を駆動するモータ(32)が配される後立板(92)側領域と、に区切る仕切壁(72)がケーシング(9)内に立設し、且つ該仕切壁(72)に開孔部(72a)が設けられ、該開孔部(72a)に前記ファン(F)のエア吸込口を合わすように該ファン(F)を設ける請求項1又は2に記載のプリヒート付き卓上半田付け装置。
【請求項4】
前記半田槽(1)の槽本体(1B)が板状の底部(10),前壁部(11),後壁部(12),両側壁部(13,14)からなる上面開口の方形箱体にして、後壁部(12)の中央部位でその壁部表面(1a)側に前記流路(R)の入口(R1)が設けられ、該入口(R1)から該後壁部(12)沿いに水平左右両方向に進んで二手に分かれる流路(R)が設けられ、二手に分かれる両流路(R)はそれぞれ両側壁部(13,14)へ達した後、両側壁部(13,14)沿いに水平前方向に進んで前壁部(11)に達し、さらに該前壁部(11)沿いに水平方向に進んで、該両流路(R)が該前壁部(11)の中央部位で集合し、該中央部位でその壁部表面(1a)側に、流路(R)の出口(R2)が設けられるようにした請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプリヒート付き卓上半田付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−41862(P2013−41862A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175893(P2011−175893)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(596162131)有限会社森永技研 (2)
【Fターム(参考)】