説明

プリフォームの排出装置

【課題】プリフォームを搬送系路から排出する際にプリフォームに下向きの外力を加えて迅速に排出することができるとともに、外力を受けて落下したプリフォームが排出用シュートから飛び出すことなくスムーズに滑落させることができるプリフォームの排出装置を提供する。
【解決手段】搬送装置からプリフォーム1を排出するための排出位置に設置され、プリフォームに下向きの外力を加えてプリフォーム1を強制的に落下させる外力付与手段25と、排出位置に設置され、落下するプリフォーム1を受けて排出する排出用シュート30とを備え、排出用シュート30は、水平面に対して所定の角度だけ傾斜して配置された案内板31と、案内板31の上面に多数の樹脂製線材33を重ね合わせて敷き詰めるとともにこれら樹脂製線材33の上端部を束ねた樹脂製線材束からなる衝撃吸収部材34とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリフォームの排出装置に係り、特にスターホイール等の搬送装置により支持されて搬送されるプリフォームを搬送系路から排出するプリフォームの排出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ペットボトルは、飲料用容器として多用されるほか、調味料や医薬品等の容器としても用いられている。ペットボトルはプリフォームと呼ばれるものに予備成形され、プリフォームが加熱されてボトルに成形される。プリフォームは試験管状の、即ち、口部が平坦で底部が球面の形をしており、首部にリング状のネックリングを持っている。
【0003】
プリフォームの外観は、カメラで撮影して検査することが行われている。従来のプリフォーム検査装置は、プリフォームを移送する入口スターホイールと、移送されたプリフォームの口部を吸着ヘッドで真空吸着して吸着ヘッドを自転させながら公転させるメインロータと、プリフォームを移送する出口スターホイールとを備え、プリフォームを入口スターホイールからメインロータに移送し、メインロータによってプリフォームを自転させてプリフォームをカメラで撮影してプリフォームの外観を検査し、検査後のプリフォームは出口スターホイールによって移送される。この場合、正常なプリフォームは出口スターホイールにより支持されて次工程まで移送されるが、不良なプリフォームは不良品排出シュートの位置で出口スターホイールによる支持が解除されて排出される。
すなわち、上述した従来のプリフォーム検査装置においては、スターホイールによってプリフォームを支持して円弧状の搬送経路を搬送し、この搬送中に不良品のプリフォームの支持を解除してプリフォームを自重で落下させて排出することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−180548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年、単位時間あたりの検査処理数量を増加したいという要求が強くなってきており、装置をますます高速化することが必要になってきた。このように装置を高速化した場合、検査後に不良品のプリフォームを搬送系路の途中にある不良品の排出用シュートの位置でスターホイールから速やかに排出しなければ、後続のプリフォームが接触する場合がある。ところが、プリフォームは樹脂製であるため軽量であり、スターホイールの支持を解除してプリフォームを自重で落下させるだけでは速やかに排出できないという問題点がある。
【0006】
そのため、本発明者らは、円形軌道に沿って搬送するスターホイール等のロータリ型搬送装置からプリフォームを排出する際に、プリフォームに圧縮空気を吹きつける等によりプリフォームに強い下向きの外力を加えてプリフォームを迅速に排出することを試みたものである。ところが、このようにプリフォームに強い下向きの外力を加えた場合、プリフォームが勢い良く排出用シュートに当たり、プリフォームがシュートでバウンド(跳ねる)してシュートから飛び出すという事態が生じた。また、飛び出さないでシュート内に留まる場合においても、シュート内を落ちていく方向が定まらず、衝撃音も発生するという不具合も生じていた。
【0007】
本発明は、上述の事情に鑑みなされたもので、スターホイール等の搬送装置により支持されて搬送されるプリフォームを搬送系路から排出する際にプリフォームに下向きの外力を加えて迅速に排出することができるとともに、外力を受けて落下したプリフォームが排出用シュートから飛び出すことなくプリフォームを排出用シュート内を排出口に向かってスムーズに滑落させることができるプリフォームの排出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明の第1の態様は、プリフォームを支持して所定の軌道上を搬送する搬送装置からプリフォームを排出するプリフォームの排出装置において、プリフォームを搬送する搬送装置からプリフォームを排出するための排出位置に設置され、前記搬送装置がプリフォームの支持を解除してプリフォームを自重で落下させる際にプリフォームに下向きの外力を加えてプリフォームを強制的に落下させる外力付与手段と、前記排出位置に設置され、落下するプリフォームを受けて排出する排出用シュートとを備え、前記排出用シュートは、水平面に対して所定の角度だけ傾斜して配置された案内板と、前記案内板の上面に多数の樹脂製線材を重ね合わせて敷き詰めるとともにこれら樹脂製線材の上端部を束ねた樹脂製線材束からなる衝撃吸収部材とからなり、前記樹脂製線材は、上端部から下端部に向かって波状に形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、排出用シュートの案内板の上面に、適度な剛性および硬度を持つ波状の樹脂製線材を多数重ね合わせて束ねた樹脂製線材束からなる衝撃吸収部材を敷設したため、優れた衝撃吸収効果(クッション効果)および衝撃音低減効果があり、外力付与手段によってプリフォームに強い下向きの外力を加えて排出した場合でも、衝撃吸収部材はプリフォームに反発力を与えないようにしなやかに変形して衝撃吸収ができるため、プリフォームが飛び跳ねるがことがなく衝撃音も極めて小さくできる。この場合、プリフォームが衝撃吸収部材に衝接すると、プリフォームが衝接した部分にある樹脂製線材は波形の山の部分が潰れるように変形して衝撃吸収すると同時に、樹脂製線材は上端部が固定されて下端が自由端になっているため、樹脂製線材は落下したプリフォームを受けて末広がり状に横に開きプリフォームを包み込むようにして衝撃吸収する。そのため、プリフォームは跳ね上がることなく樹脂製線材により包み込まれながら、樹脂製線材上を滑落して排出される。
【0010】
本発明の好ましい態様は、前記樹脂製線材は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、硬質ポリ塩化ビニール、ポリアセタール、ポリエステルのいずれかの材質からなることを特徴とする。
本発明の樹脂製線材は、衝撃吸収効果および衝撃音低減効果に優れた材質である。
【0011】
本発明の好ましい態様は、前記案内板の角度は、20°〜40°に設定されていることを特徴とする。
本発明によれば、案内板の角度(θ)は20°〜40°に設定されている。従来のシュートにあっては、傾斜角が30°でもプリフォームがシュート上で滞留する場合があったが、本発明においては案内板の角度(θ)が20°と小さい傾斜角の場合であっても、樹脂製線材はプリフォームを滑落させる優れた作用を有しているため、シュート上にプリフォームを滞留させることなく排出できる。
【0012】
本発明の好ましい態様は、前記外力付与手段は、プリフォームに向かって圧縮空気を吹きつけるノズルからなることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記搬送装置は、プリフォームを支持して円形軌道上を搬送するスターホイール装置からなることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記搬送装置は、プリフォームを支持して直線軌道上を搬送する直線搬送装置からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、以下に列挙する効果を奏する。
(1)本発明によれば、排出用シュートの案内板の上面に、適度な剛性および硬度を持つ波状の樹脂製線材を多数重ね合わせて束ねた樹脂製線材束からなる衝撃吸収部材を敷設したため、優れた衝撃吸収効果(クッション効果)および衝撃音低減効果があり、エアノズルからプリフォームに圧縮空気を吹き付ける等の外力付与手段によりプリフォームに強い下向きの外力を加えて排出した場合でも、衝撃吸収部材はプリフォームに反発力を与えないようにしなやかに変形して衝撃吸収ができるため、プリフォームが飛び跳ねるがことがなく衝撃音も極めて小さくできる。
(2)衝撃吸収部材は摺動性に優れた多数の樹脂製線材からなり、衝撃吸収部材の表面の滑りがよく、また各樹脂製線材がプリフォームの滑落する方向に延びているため、プリフォームが衝撃吸収部材に衝接した後、プリフォームを滑らかに排出用シュートの排出口に向かって滑落させることができる。
(3)樹脂製線材の材質に機械的強度に優れたポリプロピレン等の樹脂材を使用しているので、衝撃吸収部材の耐久性の面でも有利である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明のプリフォームの排出装置を備えたプリフォーム検査装置を示す縦断面図である。
【図2】図2は図1の要部拡大図であり、ポケットを示す平面図である。
【図3】図3は図2のIII矢視図である。
【図4】図4は樹脂製線材を示す部分拡大図であり、図4(a)は樹脂製線材の側面図であり、図4(b)は樹脂製線材の平面図である。
【図5】図5は、衝撃吸収部材を示す写真であり、衝撃吸収部材の自由端側の部分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るプリフォームの排出装置の実施形態について図1乃至図5を参照して説明する。なお、図1乃至図5において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図1は、本発明のプリフォームの排出装置を備えたプリフォーム検査装置を示す縦断面図である。図1に示すように、プリフォーム検査装置は、プリフォーム1を円形軌道上を搬送するスターホイール装置を備えている。スターホイール装置は、下端にギヤGが固定され駆動源(図示せず)に連結された主軸11と、主軸11の上端に固定された円盤状の支持板12と、支持板12の外周部に一個ずつ単独で支持された複数のポケット13と、ポケット13の外周側に配置されたガイドレール14とを備えている。前記支持板12と複数のポケット13とはスターホイールを構成している。
【0016】
各ポケット13と支持板12とはヒンジ15で接続されており、各ポケット13はヒンジ15を中心に揺動可能になっている。各ポケット13の端部にはエヤシリンダ16のロッド16aが固定されており、エヤシリンダ16を作動させることによって各ポケット13はヒンジ15を中心に揺動して上下方向に移動するようになっている。エヤシリンダ16は主軸11に固定された保持板17により保持されている。
【0017】
図2は図1の要部拡大図であり、ポケット13を示す平面図である。図2に示すように、ポケット13は、プリフォーム1のネックリング1aと係合する円弧状の凹部13aを有するとともに、ヒンジ15およびエヤシリンダ16のロッド16aの先端部を収容する矩形状の凹部13bを有している。
【0018】
図1に示すように、主軸11には、主軸11と一体に回転する回転ディスク18が固定されている。回転ディスク18は内部にポケット13と同数の連絡路18a,18bを有しており、連絡路18aは回転ディスク18の上面に開口するとともに外周面に開口し、連絡路18bは回転ディスク18の内周面に開口するとともに外周面に開口している。そして、回転ディスク18の外周面にはポケット13と同数のバルブ20が固定されており、バルブ20は前記連絡路18a,18b間を開閉可能に接続している。連絡路18aの上面開口は空気配管21を介してエヤシリンダ16に接続され、連絡路18bの内面開口は主軸11内の連絡路11aを介して圧縮空気源22に接続されている。また、固定側の所定位置には、バルブ20の棒状の作動部20aを押し上げてバルブ20を開くためのアクチュエータ23が設けられている。さらに、固定側の所定位置には、バルブ20の作動部20aを押し下げてバルブ20を閉じるためのカム24が設けられている。
【0019】
図1に示すように、スターホイール装置の円形軌道上の不良品排出位置DPには、圧縮空気源22に接続されたエアノズル25が設置されるとともに不良品の排出用シュート30が設置されている。エアノズル25は、スターホイールがプリフォーム1の支持を解除してプリフォーム1を自重で落下させる際にプリフォーム1に向かって圧縮空気を吹きつけるようになっている。これにより、プリフォーム1に強い下向きの外力を加えてプリフォーム1を迅速に排出することができるようになっている。排出用シュート30は、水平面に対して所定の角度(θ)だけ傾斜して配置された案内板31と、案内板31の両側端から鉛直方向に延びる側板32,32と、案内板31の上面の全体に多数の樹脂製線材33を重ね合わせて敷き詰めるとともにこれら樹脂製線材33の上端部を束ねた樹脂製線材束からなる衝撃吸収部材34とを備えている。
案内板31の角度(θ)は20°〜40°に設定されている。本実施形態においては、案内板31の角度を30°に設定している。案内板31の上面に敷き詰められた樹脂製線材33は、起伏をもった波形に形成されており、案内板31の上端部から下端部まで延びている。
【0020】
図3は図2のIII矢視図である。図3に示すように、案内板31の両側端に側板32,32が設けられ、案内板31の上面の全体に多数の樹脂製線材33を重ね合わせて敷き詰めるとともにこれら樹脂製線材33の上端部を束ねた樹脂製線材束からなる衝撃吸収部材34が設けられている。樹脂製線材33の上端部は束ねられるとともに案内板31の上面に固定されており、樹脂製線材33の下端はフリーの自由端になっている。樹脂製線材33の材質は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、硬質ポリ塩化ビニール、ポリアセタール、ポリエステル等からなっている。また、樹脂製線材33は、円形断面、四角形や六角形等の多角形断面、円筒形断面などの各種の断面形状をとることができる。樹脂製線材33が円形断面の場合には、直径は2mm〜4mmが好ましい。樹脂製線材33が四角形断面の場合には、一辺の長さは2mm〜4mmが好ましい。本実施形態においては樹脂製線材の断面が四角形の場合には、短辺が2mm、長辺が3mmの線材を用いている。
【0021】
図4は樹脂製線材33を示す部分拡大図であり、図4(a)は樹脂製線材33の側面図であり、図4(b)は樹脂製線材33の平面図である。図4(a)に示すように、樹脂製線材33は上下方向に多数の山と谷を有するように波形に形成されている。図4に示す樹脂製線材33が多数束ねられた樹脂製線材束からなる衝撃吸収部材34を構成する際には、各樹脂製線材33は鉛直方向D1に山谷を有するように配置される。したがって、各樹脂製線材33はシュートの落下方向(滑落方向)D2には直線的に延びることになる。樹脂製線材33の波形のピッチPは、15mm〜20mmに設定されており、樹脂製線材33の山の頂点と谷の底との間の高さHは3mm〜5mmに設定されている。本実施形態においては、波形のピッチPを19mmに設定し、高さHは4mmに設定している。
【0022】
図5は、衝撃吸収部材34を示す写真であり、衝撃吸収部材34の自由端側の部分を示す図である。図5に示すように、衝撃吸収部材34を構成する各樹脂製線材33は多数の山谷を有するように波形に形成されている。衝撃吸収部材34の各樹脂製線材33は、鉛直方向(写真の上下方向)に山谷を有するように配置されている。したがって、各樹脂製線材33はシュートの滑落方向に直線的に延びることになる。なお、図5においては、樹脂製線材33は四角形断面を有した線材が図示されている。
【0023】
次に、本発明者らが本発明を創案する際に行った実験結果について説明する。
本発明者らは、まず緩衝材として一般的に最も有効であると考えられている衝撃吸収ゴムをシュートに適用することを試みた。ところが、プリフォームが衝撃吸収ゴムに衝突した際の反発力で跳ねるため、シュート内でプリフォームの挙動が安定しないことが判明した。また、衝撃吸収ゴムは、表面の滑りが良くないため、シュート内にプリフォームが溜まり、溜まったプリフォームに後続のプリフォームが当接して飛び跳ねる等の不具合も発生した。
【0024】
そこで、本発明者らは、プリフォームが落下するシュートの上面に設置する衝撃吸収材として最適なものを見出すために種々の材料を試みたものである。
(1)クッション製の良いスポンジ+スポンジ表面に滑りの良い樹脂シートを貼付け
(結果)スポンジに樹脂シートを貼付けたことにより滑りは良好だったが、衝撃吸収力は低かった。シュート表面にプリフォームが残ることはなかったが、樹脂シートの表面に傷が付いた。
(2)衝撃吸収ゴム+ゴム表面に滑りの良い樹脂シートを貼付け
(結果)樹脂シートを貼付けたことにより滑りは良好だったが、衝撃吸収力はゴム本来の吸収力よりも劣った。シュート表面にプリフォームが残ることはないが、樹脂シートの表面に傷が付いた。
(3)ナイロンブラシ(毛の長いタイプ)
(結果)滑りは良好だったが、衝撃吸収効果、衝撃音低減効果ともに低かった。
(4)人工芝
(結果)衝撃吸収効果、衝撃音低減効果ともに良好だったが、シュート表面にプリフォームが残った。
(5)人工芝+人工芝表面にナイロンブラシ(毛の長いタイプ)を貼付け
(結果)衝撃吸収効果、衝撃音低減効果ともに良好だったが、ナイロンブラシを貼付けた効果が見られなかった。
(6)人工芝+人工芝表面に結束樹脂製バンドの束を数本貼付け
(結果)衝撃吸収効果、衝撃音低減効果ともに最も良好だったが、結束樹脂バンドの束が表面にあるため、厚みが厚すぎた。
(7)結束樹脂バンドの束を数本貼付け
(結果)衝撃吸収効果、衝撃音低減効果ともに最も良好でプリフォームの落ちていく方向も安定していたが、結束バンドをそのまま使用するため商品としては外観の美的価値が劣り緩衝材の販売製品としては、問題があった。
(8)波状(ウェーブ状)になった2〜3mm角の樹脂製線材を束ねたもの(本発明の衝撃吸収材)
(結果)衝撃吸収効果、衝撃音低減効果ともに最も良好で、プリフォームの落ちていく方向も安定していた。材質もポリプロピレンを使用したため、耐久性の面でも有利なものであった。
【0025】
以上の実験結果から明らかなように、本発明によれば、排出用シュート30の案内板31の上面に、適度な剛性および硬度を持つ波状の樹脂製線材33を多数重ね合わせて束ねた樹脂製線材束からなる衝撃吸収部材34を敷設したため、優れた衝撃吸収効果(クッション効果)および衝撃音低減効果があり、エアノズル25からプリフォーム1に圧縮空気を吹き付けてプリフォーム1に強い下向きの外力を加えて排出した場合でも、衝撃吸収部材34はプリフォーム1に反発力を与えないようにしなやかに変形して衝撃吸収ができるため、プリフォーム1が飛び跳ねるがことがなく衝撃音も極めて小さくできる。この場合、プリフォーム1が衝撃吸収部材34に衝接すると、プリフォーム1が衝接した部分にある樹脂製線材33は波形の山の部分が潰れるように変形して衝撃吸収すると同時に、樹脂製線材33は上端部のみ束ねられ下端はフリー(自由端)となっているので、樹脂製線材33は落下するプリフォーム1を受けて末広がり状に横に開きプリフォーム1を包み込むようにして衝撃吸収する。そのため、プリフォーム1は跳ね上がることなく樹脂製線材33により包み込まれながら、樹脂製線材33上を滑落して排出される。
【0026】
また、衝撃吸収部材34は摺動性に優れた多数の樹脂製線材33からなり、衝撃吸収部材34の表面の滑りがよく、また各樹脂製線材33がプリフォーム1の滑落する方向に延びているため、プリフォーム1が衝撃吸収部材34に衝接した後、プリフォーム1は滑らかに排出用シュート30の排出口に向かって滑落する。
衝撃吸収部材34を支持するための案内板31の角度(θ)は20°〜40°に設定されている。従来のシュートにあっては、傾斜角が30°でもプリフォームがシュート上で滞留する場合があったが、本発明においては案内板31の角度(θ)が20°と小さい傾斜角の場合であっても、樹脂製線材33はプリフォームを滑落させる優れた作用を有しているため、シュート上にプリフォームを滞留させることなく排出できる。
さらに、樹脂製線材33の材質に機械的強度に優れたポリプロピレン等の樹脂材を使用しているので、衝撃吸収部材34の耐久性の面でも有利である。
【0027】
次に、図1乃至図3に示すように構成されたプリフォームの排出装置を備えたプリフォーム検査装置の全体の動作を説明する。
プリフォーム1は、図1に示すように、ネックリング1aの片側の下面がスターホイールのポケット13で支持されるとともにネックリング1aの他側の側面がガイドレール14に接触しつつ円弧状の搬送路に沿って移送される。この移送時に、ガイドレール14はプリフォーム1のネックリング1aがポケット13からはずれるのを防止する。そして、この移送中に、カメラによりプリフォーム1の外観検査を行い、良品は次工程に搬送し、不良品は不良品排出位置DPで排出する。なお、プリフォーム1の外観検査は、図1に示すスターホイール装置の上流側で行ってもよく、その場合には、図1に示すスターホイール装置は良品と不良品とに分けて排出する排出用スターホイールとして機能する。不良品のプリフォーム1を不良品排出位置DPで排出する際には、アクチュエータ23を作動させてバルブ20の作動部20aを押し上げてバルブ20を開き、圧縮空気源22とエヤシリンダ16とを連絡路11a,18b,18aおよび空気配管21を介して連通させ、エヤシリンダ16を作動させる。
【0028】
エヤシリンダ16が作動すると、ポケット13と支持板12とはヒンジ15で接続されているため、図1に示すように、ポケット13はヒンジ15を中心として垂直面内を揺動してスターホイールの中心方向に移動する。そのため、ネックリング1aを支持するものがなくなり、プリフォーム1は自重で落下する。このとき、エアノズル25からプリフォーム1に圧縮空気を吹き付けてプリフォーム1に強い下向きの外力を加え、プリフォーム1を勢いよく下方に排出する。プリフォーム1は排出用シュート30の衝撃吸収部材34に勢いよくあたるが、衝撃吸収部材34により衝撃吸収される。そのため、プリフォーム1は飛び跳ねることなく排出用シュート30の排出口に向かってほぼ一直線に衝撃吸収部材34上を滑落し、排出口から排出される。なお、良品のプリフォーム1は、スターホイールにより更に搬送されて、次工程に移送される。
【0029】
図1に示す実施形態においては、プリフォームを支持して円形軌道上を搬送しつつ検査し、検査後に円形軌道上を搬送中にプリフォームの支持を解除して排出するようにしたが、本発明は、プリフォームを直線軌道上を搬送しつつ検査し、検査後に不良のプリフォームを直線搬送しながら排出する装置にも適用できることは勿論である。この場合、プリフォームを直線搬送する直線搬送装置における不良品排出位置に、図1に示すエアノズル25と排出用シュート30とを設置すればよい。
【0030】
また、図1に示す実施形態においては、プリフォームに下向きの外力を加えてプリフォームを強制的に落下させる外力付与手段として、エアノズル25を例示したが、この外力付与手段は、直接にプリフォームに当接して外力を加えるプッシュバー等であってもよい。
【0031】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0032】
1 プリフォーム
1a ネックリング
G ギヤ
11 主軸
11a 連絡路
12 支持板
13 ポケット
13a 円弧状の凹部
13b 矩形状の凹部
14 ガイドレール
15 ヒンジ
16 エヤシリンダ
16a ロッド
18 回転ディスク
18a,18b 連絡路
20 バルブ
20a 作動部
21 空気配管
22 圧縮空気源
23 アクチュエータ
24 カム
25 エアノズル
30 排出用シュート
31 案内板
32 側板
33 樹脂製線材
34 衝撃吸収部材
DP 不良品排出位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリフォームを支持して所定の軌道上を搬送する搬送装置からプリフォームを排出するプリフォームの排出装置において、
プリフォームを搬送する搬送装置からプリフォームを排出するための排出位置に設置され、前記搬送装置がプリフォームの支持を解除してプリフォームを自重で落下させる際にプリフォームに下向きの外力を加えてプリフォームを強制的に落下させる外力付与手段と、
前記排出位置に設置され、落下するプリフォームを受けて排出する排出用シュートとを備え、
前記排出用シュートは、水平面に対して所定の角度だけ傾斜して配置された案内板と、前記案内板の上面に多数の樹脂製線材を重ね合わせて敷き詰めるとともにこれら樹脂製線材の上端部を束ねた樹脂製線材束からなる衝撃吸収部材とからなり、
前記樹脂製線材は、上端部から下端部に向かって波状に形成されており、
前記樹脂製線材は、上端部が固定され、下端が自由端になっていることを特徴とするプリフォームの排出装置。
【請求項2】
前記樹脂製線材は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、硬質ポリ塩化ビニール、ポリアセタール、ポリエステルのいずれかの材質からなることを特徴とする請求項1記載のプリフォームの排出装置。
【請求項3】
前記案内板の角度は、20°〜40°に設定されていることを特徴とする請求項1又は2記載のプリフォームの排出装置。
【請求項4】
前記外力付与手段は、プリフォームに向かって圧縮空気を吹きつけるノズルからなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプリフォームの排出装置。
【請求項5】
前記搬送装置は、プリフォームを支持して円形軌道上を搬送するスターホイール装置からなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプリフォームの排出装置。
【請求項6】
前記搬送装置は、プリフォームを支持して直線軌道上を搬送する直線搬送装置からなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプリフォームの排出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−63331(P2011−63331A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212924(P2009−212924)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(390014661)キリンテクノシステム株式会社 (126)
【Fターム(参考)】