説明

プリフォーム検査装置

【課題】プリフォームが連続して供給されず間引き状態で供給されるためプリフォームを吸着できない吸着ヘッドがあっても、プリフォームを吸着している吸着ヘッドの真空圧を低下させることがないプリフォーム検査装置を提供する。
【解決手段】プリフォーム1の口部1aを真空吸着する複数の吸着ヘッド25と、複数の吸着ヘッド25を自転させながら公転させるメインロータ20と、各吸着ヘッド25と真空源とを断続的に連通させるロータリバルブ50とを備え、自転するプリフォーム1をカメラで撮影して検査するプリフォーム検査装置において、各吸着ヘッド25とロータリバルブ50とを結ぶ経路に、吸着ヘッド25からロータリバルブ50に向かうエアの流れを抑制する逆止弁機構28を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットボトルの予備成形品であるプリフォームの外観をカメラで撮影して検査するプリフォーム検査装置に係り、特にプリフォームを真空吸着する真空系路に逆止弁機構を設け、真空圧の低下を緩和し安定したプリフォームの吸着・搬送を可能とするプリフォーム検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ペットボトルはプリフォームと呼ばれるものに予備成形され、プリフォームが加熱されてボトルに成形される。プリフォームは試験管状の、即ち、口部が平坦で底部が球面の形をしており、首部にリング状のネックリングをもっている。
従来のプリフォーム検査装置は、プリフォームを移送するスターホイールと、移送されたプリフォームの口部を吸着ヘッドで真空吸着して吸着ヘッドを自転させながら公転させるメインロータとを備え、自転するプリフォームをカメラで撮影してプリフォームの外観を検査している。
【0003】
従来のプリフォーム検査装置は、吸着ヘッドに供給する真空圧のON/OFFを行うために、ロータリバルブを用いている。このロータリバルブは、プリフォーム検査装置の検査ステーション部であるメインロータの回転軸に取り付けられて、メインロータと同期して回転する回転側部材と固定して設置された固定側部材とからなる。ロータリバルブは真空ポンプに接続され、真空ポンプは常に運転状態にある。そして、回転側部材と固定側部材のいずれか一方には、真空引きの際の流路を確保する為の真空溝が円周方向に形成されているが、真空溝は連続的に設けるのではなく、円周方向の途中で溝加工のない箇所および大気開放用の溝を設けることにより、真空引き、真空経路の遮断、大気開放等が可能となる。そして、ロータリバルブの各溝に、吸着ヘッドに流路が連通された部分が整合すると、真空引きや、真空経路の遮断、或いは大気開放がメインロータの回転に同期して行なわれる。
【特許文献1】特許第3422967号公報
【特許文献2】特許第3859323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように真空ポンプは常に運転状態にし、ロータリバルブは予め定められたメインロータの位置により真空引き、真空経路の遮断等を行うことから、プリフォームの吸着の有無に拘わらず真空圧のON/OFFが行われてしまう。
そうすると、プリフォーム搬送上の何らかのトラブルでプリフォームが連続して供給されず間引き(歯抜け)状態で供給された場合や、検査装置の起動時(運転開始時)には、吸着部ステーションでプリフォームがない状態でも、吸着ヘッドにより真空引きがなされることになる。この場合、プリフォームが無いためプリフォームを吸着できなかった吸着ヘッドと、プリフォームを吸着している他の吸着ヘッドとは、ロータリバルブにおける真空溝を共有しているので、個別に真空経路を遮断することができず、他の吸着ヘッドの真空圧が低下し、その結果、吸着ヘッドで真空引きされているプリフォーム内の真空度が下がるという問題が発生する。
【0005】
この場合、プリフォームの間引き(歯抜け)状態が多くあり、プリフォームを吸着できなかった吸着ヘッドの数が増加すると、真空吸着されているプリフォームが脱落してしまい、検査不能という問題が発生する。
尚、各吸着部ステーションに吸着ヘッドの数量に応じた独立した電磁弁を設けて、プリフォームの有無検知により、吸着ヘッド毎に電磁弁を切り替えて、真空経路の遮断を切り替える方式も考えられるが、センサ不良や電磁弁の誤作動の問題が新たに発生し、しかも検査装置の構造が複雑になり高価となることから、この方式を採用することは困難である。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みなされたもので、プリフォームが連続して供給されず間引き状態で供給される結果、プリフォームを吸着できない吸着ヘッドがあっても、プリフォームを吸着している吸着ヘッドの真空圧力を低下させることがないプリフォーム検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明は、プリフォームの口部を真空吸着する複数の吸着ヘッドと、前記複数の吸着ヘッドを自転させながら公転させるメインロータと、前記各吸着ヘッドと真空源とを断続的に連通させるロータリバルブとを備え、自転するプリフォームをカメラで撮影して検査するプリフォーム検査装置において、前記各吸着ヘッドと前記ロータリバルブとを結ぶ経路に、前記吸着ヘッドから前記ロータリバルブに向かうエアの流れを抑制する逆止弁機構を設けたことを特徴とするものである。
本発明によれば、プリフォームが連続して供給されず間引き状態で供給される結果、プリフォームを吸着できない吸着ヘッドがあっても、この吸着ヘッドは、逆止弁機構により、該吸着ヘッドからエアを吸引することが抑制される。したがって、ロータリバルブの真空圧力が低下することがなく、プリフォームを吸着している吸着ヘッドの真空圧力を低下させることがないので、搬送中にプリフォームが脱落することがない。
【0008】
本発明の1態様によれば、前記逆止弁機構は前記吸着ヘッドに設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、吸着ヘッドに逆止弁機構を一体に設けることができるため、吸着ヘッドがプリフォームを吸着できない場合にも、真空引きの際に、吸着ヘッドから吸引するエアの量を抑制できる。
【0009】
本発明の1態様によれば、前記逆止弁機構は、ボールと、前記ボールの両側にボールから離間して設けられボールが着座可能な一対の弁座と、前記ボールおよび一対の弁座を収容する筺体とを備え、前記各弁座の着座面にはエアの流れを確保する流路が形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、ボールが一対の弁座のいずれか一方の着座面に着座することにより、流体の流れが抑制されるが、弁座の着座面にはエアの流れを確保する流路が設けられているため、流体の流れが完全に遮断されるわけではなく、エアの流れを確保する流路を介して小流量のエアは流れることになる。
【0010】
本発明の1態様によれば、前記弁座は交換可能であることを特徴とする。
本発明によれば、弁座を交換可能とすることにより、エアの流れを確保する流路の個数や寸法が異なった弁座を使用できるため、流量調整が可能となる。
本発明の1態様によれば、前記エアの流れを確保する流路は前記着座面に2箇所以上形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、エアの流れを確保する流路を流れるエアの流量を着座面上で均等に分散できるため、ボールをバランスさせて保持することができる。
本発明の1態様によれば、前記筺体は透明な部材からなることを特徴とする。
本発明によれば、外部からボールの挙動を確認することができるため、外部から圧力変動を確認できる。
【0011】
本発明の1態様によれば、前記ボールは金属からなることを特徴とする。
本発明によれば、ボールが自重が大きい金属からなるため、ボールは自重で瞬時に落下し、逆止弁としての機能を確保できる。
本発明の1態様によれば、前記逆止弁機構は、前記弁座が上下方向又は斜め方向に位置するように鉛直に設置するか傾斜して設置することを特徴とする。
本発明によれば、ボールが鉛直方向か斜め方向に移動して弁座に着座する構成であるため、ボールの自重によりチェック機能を確保できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、以下に列挙する効果を奏する。
1)プリフォームが連続して供給されず間引き状態で供給されるためプリフォームを吸着できない吸着ヘッドがあっても、プリフォームを吸着している吸着ヘッドの真空圧の低下を抑えることができる。したがって、プリフォームの吸着搬送中にプリフォームが脱落することなく、プリフォームの検査を確実に行なうことができる。
2)逆止弁機構の筐体を透明の樹脂等にすることにより、外部から弁であるボールの位置を確認することができ、真空状況を外部から視認しながら、装置の調整作業を行うことができる。
3)真空の立上げ時におけるタクトタイムの短縮化と真空の空引きの減少化により水の使用量が従来に比べて1/5程度削減でき、省エネルギーと環境負荷の低減が可能となっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係るプリフォーム検査装置の実施形態を図1乃至図4を参照して説明する。
図1はプリフォーム検査装置の全体構成を示す平面図である。図1に示すように、プリフォーム検査装置は、検査すべきプリフォーム1をメインロータ20に搬入する入口スターホイール3と、プリフォーム1を搬送しつつプリフォーム1の検査を行うメインロータ20と、検査後のプリフォーム1をメインロータ20から搬出する出口スターホイール4とを備えている。
【0014】
図2は図1のII−II線断面図である。図2はプリフォームを取り扱うメインロータ20を示す図である。図2に示すように、プリフォームは概略試験管状をなし、口部1aが平坦、胴部1bが円筒状、底部1cが球面をなし、首部にネックリング1dを有している。図1に示すように、入口スターホイール3のピッチ円に沿って、プリフォーム1のネックリング1dを支持するガイドレール6,6が設置されている。
【0015】
また出口スターホイール4のピッチ円に沿って、プリフォーム1のネックリング1dを支持するガイドレール7,7が設置されている。そして、ガイドレール6,6に接続して入口側ガイドレール8,8が設置されており、また出口スターホイール4に隣接して出口側ガイドレール9,9が設置されている。これら入口側ガイドレール8,8および出口側ガイドレール9,9は、進行方向に下り勾配になっている。
【0016】
前記メインロータ20のピッチ円を挟んで、内側に1台の照明10が設置され、外側に2台の撮影カメラユニット11,12が設置されている。照明10はメインロータ20のピッチ円に沿った円弧状の前面を有している。撮影カメラユニット11および12は、それぞれミラー13とCCDカメラ14とからなっており、高速ラインに対応できるようになっている。
【0017】
またメインロータ20のピッチ円の外側には、プリフォーム1を自転させるための自転用タイミングベルト15が配置されている。そして、自転用タイミングベルト15の下流側には、プリフォーム1の自転を停止させるためのブレーキ用ベルト16が配置されている。
【0018】
図2はメインロータ20の詳細構造を示す図であり、図3は吸着ヘッド25の要部を示す図である。図2および図3に示すように、メインロータ20は、回転軸21と、回転軸21に固定された支持板23と、支持板23に上下方向に移動可能に支持されるとともにプリフォーム1の口部1aを真空吸着する吸着ヘッド25とを備えている。回転軸21は、上下に軸受22,22を備えた軸受ハウジング24により回転可能に支持されている。
【0019】
前記回転軸21はモータ(図示せず)に連結され、回転軸21に固定された支持板23には複数のガイドバー37が支持されている。ガイドバー37には、上下動可能に支持部材38が支持されている。回転軸21の上方には、フレームFに固定されるとともに下方に延びる固定軸39が設けられている。固定軸39にはカム40が固定されている。
一方、前記吸着ヘッド25の軸部27は、支持部材38により支持されており、支持部材38に固定されたカムフォロワ42が固定軸39に固定されたカム40に係合し、支持部材38が上下動するようになっている。なお、カム40はメインロータ20の全周に亘って配設されていて、吸着ヘッド25を上下動させて吸着ヘッド25の上下方向の位置を制御している。
【0020】
図4は吸着ヘッド25を示す拡大断面図である。図4に示すように、吸着ヘッド25は、プリフォーム1の口部1aを真空吸着する吸着ヘッド本体26と、吸着ヘッド本体26を保持する細長状の軸部27と、吸着ヘッド本体26内に収容された逆止弁機構28とを備えている。吸着ヘッド本体26は、プリフォーム1の口部1a内に挿入されるテーパ状の凸部26aを有し、また内部に連通孔26bを有している。軸部27は、内部に連通孔27aを有している(図2および図3参照)。逆止弁機構28は、ボール29と、ボール29を収容する円筒状のボールハウジング部30と、ボール29の上下側に設けられた上弁座31,下弁座32とを備えている。上弁座31,下弁座32は、円錐状の着座面31s,32sを有している。連通孔26bと連通孔27aとは、逆止弁機構28を介して連通可能になっている。
【0021】
図5(a)および図5(b)は、上弁座31,下弁座32の着座面31s,32sを示す平面図であり、図5(a)は上弁座31の着座面31sを示し、図5(b)は下弁座32の着座面32sを示す。図5(a)に示すように、上弁座31には、ボール29が着座する着座面31sに放射状に複数の溝31vが形成されている。図5(b)に示すように、下弁座32には、ボール29が着座する着座面32sに放射状に複数の溝32vが形成されている。溝31v,32vは、エア(流体)の流れを確保する流路を構成している。この流路は、溝以外に、孔であってもよい。
【0022】
図4に示す逆止弁機構28において、ボール29が上弁座31の着座面31s又は下弁座32の着座面32sに着座すると、流体の流れが抑制される。すなわち、ボール29と着座面31sとの接触によって流体の流れが抑制されるが、上弁座31の着座面31sには溝31vが設けられているため、流体の流れが完全に遮断されるわけではなく、溝31vを介して小流量の流体は流れることになる。ボール29と着座面32sとの接触によって流体の流れが抑制されるが、下弁座32の着座面32sには溝32vが設けられているため、流体の流れが完全に遮断されるわけではなく、溝32vを介して小流量の流体は流れることになる。
【0023】
図2および図3に示すように、吸着ヘッド25は上下の軸受44,44により回転可能に支持されている。そして、上下の軸受44,44を収容する軸受ハウジング45は、支持部材38により支持されている。吸着ヘッド25は、内部に連通孔26b,27aを有しており、連通孔27aはチューブ47およびロータリバルブ50を介して真空源(図示せず)に連通されている。ロータリバルブ50は、メインロータ20と同期して回転する回転側部材51と、固定して設けられた固定側部材52とからなり、ロータリバルブ50の片側の部材に真空溝や大気開放用の溝が設けられていて、真空引き、真空経路の遮断、或いは大気開放が行われる。吸着ヘッド25には、自転用タイミングベルト15に係合するプーリ48が固定されている。吸着ヘッド25を自転させるベルト掛け部分は、吸着ヘッド25を支持する二つの軸受44,44の上方に位置している。
【0024】
次に、図1乃至図3に示すように構成されたプリフォーム検査装置の全体の動作を説明する。
プリフォーム1は入口側ガイドレール8,8から入口スターホイール3に供給される。プリフォーム1は、ネックリング1dがガイドレール6,6で支持された状態で入口スターホイール3により移送される。そして、プリフォーム1は入口スターホイール3からメインロータ20に受け渡される。
【0025】
プリフォーム1がメインロータ20に受け渡されると、カム40の作用により吸着ヘッド25を下降させ、吸着ヘッド25をプリフォーム1の口部1aに当接させて、チューブ47、ロータリバルブ50を介して吸着ヘッド25を真空源と連通させ、プリフォーム1の真空吸着を開始する。このとき、図3に示すように、吸着ヘッド25のテーパ状の凸部26aはプリフォーム1の口部1a内に挿入される。この状態でプリフォーム1内は真空排気される。
【0026】
吸着ヘッド25によるプリフォーム1の吸着が完了したら、カム40の作用により吸着ヘッド25を上昇させ、プリフォーム1を吸着ヘッド25に吸着した状態で、自転用タイミングベルト15の作用によりプリフォーム1を吸着ヘッド25とともに自転させ、かつメインロータ20によりプリフォーム1を公転させ、この間に、プリフォーム1の胴部1bおよびネックリング1dを撮影カメラユニット11又は12により撮影する。
【0027】
撮影終了後に、プリフォーム1はブレーキ用ベルト16の作用により自転を停止する。その後、プリフォーム1はメインロータ20から出口スターホイール4に受け渡される。
このとき、プリフォーム1は、ネックリング1dがガイドレール7,7に支持されるようになる。正常なプリフォーム1は出口スターホイール4によって移送され、出口側ガイドレール9,9を介して次工程に移送される。一方、不良なプリフォーム1は、不良品排出シュート60の位置で出口スターホイール4による吸着支持が解除され、不良品排出シュート60に排出される。
【0028】
次に、図4および図5に示すように構成された逆止弁機構28及びその関連部材であるロータリバルブ50等について更に説明する。
通常のボール式の逆止弁は、円筒状の筐体の内部にボールを挿入し、ボールが移動することにより、逆止弁が作動すると、流路は完全に遮断される構造である。
これに対し、本発明の逆止弁機構は、逆止弁が作動中であっても、流路は完全に遮断されるわけではなく、若干の流路が確保されて微小流量がリークする構造としている。
図6は、本発明の逆止弁機構を示す空圧回路図である。図6に示すように、逆止弁機構28は、逆止弁CVに並列に絞り弁RVを配置したものを1セットとし、前記逆止弁CVの流路が確保される方向と反対向きとしたものを、さらに1セット用意し、これらを直列に接続した空圧回路となり、所謂、流量調整弁(スピードコントローラー)を逆向きに直列接続した回路となる。
【0029】
図6に示す空圧回路上では、逆止弁CVと絞り弁RVが各々2個必要となるが、本発明の逆止弁機構28は、1つのボールハウジング部(筐体)30に単一の逆止弁用のボール29が配置された構造である。逆止弁機構28は、鉛直方向に取り付けた際に、上下に移動するボール29の上方及び下方に設けた上下弁座31,32の円錐状の着座面31s,32sに、絞り弁の機能を有する溝31v,32vを内周側から外周側に向かって半径方向に形成したものである。これにより、ボール29の移動によりボール29が着座面31s,32sに着座しても、流路が完全に遮断されることなく、溝31v,32vから微小流量がリークする構造となっている。
【0030】
図7は、ロータリバルブ50を示す模式的断面図である。図7に示すように、メインロータ20と同期して回転する回転側部材51と固定して設けられた固定側部材52とからなり、回転側部材51および固定側部材52は、ともに円筒状部材であって、回転側部材51の内周面と固定側部材52の外周面とが摺接するようになっている。固定側部材52の外周面には、真空引き用の円弧状溝52aと、大気開放用の矩形状溝52bとが形成されている。固定側部材52の円弧状溝52aはチューブ53を介して真空源(真空ポンプ)に連通されている(図2参照)。回転側部材51には、円弧状溝52aおよび矩形状溝52bに連通する複数の連通孔51hが形成されており、各連通孔51hはチューブ47を介して各吸着ヘッド25に接続されている(図2参照)。なお、図7においては、回転側部材51に形成された連通孔51hは4個のみ示されているが、実際には、連通孔51hは多数あり、吸着ヘッド25の個数と同数ある。
【0031】
上述のように構成されたロータリバルブ50において、回転側部材51が固定側部材52に摺接しながら回転すると、回転側部材51に形成された連通孔51hが固定側部材52に形成された円弧状溝52aに対向した位置にある間は、円弧状溝52aに連通された真空ポンプからの負圧が連通孔51hに接続された吸着ヘッド25に供給され、プリフォーム1が吸着ヘッド25により吸着保持される。また、連通孔51hが円弧状溝52aからずれると、真空ポンプからの負圧が遮断されて吸着ヘッド25によるプリフォーム1の吸着保持が解除される。その後、連通孔51hが大気開放用の矩形状溝52bに連通すると、吸着ヘッド25は大気開放される。次に、連通孔51hが再び円弧状溝52aに連通されると、真空ポンプからの負圧が吸着ヘッド25に供給される。
以上のように、ロータリバルブ50は、1)真空引き⇒2)遮断(ニュートラル)⇒3)大気開放⇒4)遮断(ニュートラル)⇒5)再真空引き⇒6)遮断(ニュートラル)という工程でのローテーションとなっている。
【0032】
次に、上記ロータリバルブ50の各工程とプリフォーム1との関係について説明する。
上記ロータリバルブ50による1)真空引きにより、プリフォーム1は吸着ヘッド25により真空吸着され、その後、2)ニュートラルの位置においても、プリフォーム1の内部と吸着ヘッド25は共に真空圧で圧力差がなく、真空系路を遮断しても、吸着状態のままである。さらに3)大気開放の位置になると、プリフォーム1内の真空圧が低下して大気圧となり、自重によりプリフォーム1は吸着ヘッド25を離れ脱落し、プリフォーム1のネックリング1dを下から支えるガイドレール7によって支持され、プリフォーム1は下流側の次工程に搬送される。そして、吸着ヘッド25は、新たにメインロータ20に搬送されてくるプリフォーム1に対して、5)再真空引きにより真空吸着する、という一連の動作を繰返すことになる。
【0033】
図8は、逆止弁機構28の動作を示す模式図である。
逆止弁機構28においては、真空引きがされる直前までは、ボール29の自重によりボール29は下弁座32の着座面32sに着座した状態にある。ボール29は、十分な自重を確保できるようにステンレススチールまたは真ちゅう等の金属からなっている。
そして、ロータリバルブ50が作動して、1)真空引きされると、ボール29は上昇し、図8(a)に示すように、ボール29は上弁座31の着座面31sに着座した状態になる。このとき、吸着ヘッド25はプリフォーム1の直上に位置される。一方、プリフォームが間引き状態で供給される結果、プリフォーム1が無いとき、ボール29が吸い上げられて真空経路を狭めることで真空圧力の低下を防ぐ。上弁座31には溝31vが設けられており、ボール29によって真空経路が完全にふさがれるわけではなく小流量のエアは流れている。
【0034】
本発明によれば、プリフォーム1が連続して供給されず間引き状態で供給される結果、プリフォーム1を吸着できない吸着ヘッド25があっても、この吸着ヘッド25は、逆止弁機構28により、該吸着ヘッド25からエアを吸引することが抑制される。したがって、ロータリバルブ50の真空圧力が低下することがなく、プリフォーム1を吸着している他の吸着ヘッド25の真空圧力を低下させることがないので、搬送中にプリフォーム1が脱落することがない。
【0035】
図8(b)に示すように、吸着ヘッド25とプリフォーム1とが密着し、プリフォーム1の内圧と吸着ヘッド25の内圧の差が少なくなるにつれ、ボール29は自重により降下し、真空経路も増大する。そして、プリフォーム1の内圧と吸着ヘッド25の内圧とが完全にバランスすると、図8(c)に示すように、ボール29は下弁座32の着座面32sに着座する。下弁座32には溝32vが設けられており、ボール29によって真空経路が完全にふさがれるわけではなく小流量のエアは流れている。
【0036】
その後、3)大気開放の位置になると、プリフォーム1内及び吸着ヘッド25内の真空は、下弁座32の着座面32sを介して瞬時に破壊されて大気に開放されることから、プリフォーム1はその自重により吸着ヘッド25から離脱する。
【0037】
ここで、逆止弁機構28の下弁座32にエアの流れを確保する流路を設けていない場合には、上記2)真空遮断の位置で、ボール29は下弁座32の着座面32sに着座した状態となり、流路は完全に遮断されることとなる。その結果、次工程の3)大気開放の位置になっても、プリフォーム1及び吸着ヘッド25の真空圧の逃げ場がなく、真空が保持された状態となり、プリフォーム1が吸着ヘッド25から離脱せずに、新たに搬送されてくるプリフォーム1を吸着できない場合がある。
したがって、逆止弁機構28の下弁座32における溝32vは吸着ヘッド25からプリフォーム1を離脱させる為に、不可欠なものである。
尚、リーク流量は上弁座31,下弁座32における溝31v,32vの数量や深さ等の形状を変更することにより、調整することが可能である。
【0038】
次の真空開始時に、吸着ヘッド25の下方に、プリフォーム1が無く、間引き(歯抜け)状態のときには、下弁座32の溝32vのみからのリークであるため、ボール29の上下における圧力バランスの差異が瞬時に起こり、ボール29が上方へ持ち上げられてボール29は着座面31sに着座するため、真空圧力の低下を防ぐことができる。
【0039】
本発明によれば、逆止弁機構28の筐体を透明の樹脂等にすることにより、外部から弁であるボールの位置を確認することができ、真空状況を外部から視認しながら、装置の調整作業を行うことができる。
なお、本発明の逆止弁機構28は、弁座31,32が上下方向又は斜め方向に位置するように鉛直に設置するか傾斜して設置することが好ましい。ボール29が鉛直方向か斜め方向に移動して弁座31,32に着座する構成であるため、ボール29の自重により逆止弁としての機能を確保できる。
〔実験結果〕
プリフォーム検査装置の吸着ヘッド25に、真空圧の低下を緩和するために逆止弁機構28を装着し、圧力変動及び真空引き状態での流量を測定した結果について説明する。
図9は、実験に用いた空圧回路図である。図9に示すように、吸着ヘッド25は、逆止弁機構28およびロータリバルブ50を介して真空ポンプ70に連通されている。吸着ヘッド25と真空ポンプ70とを接続する配管55には、流量センサ56および圧力センサ57が設置されている。またプリフォーム1にも、プリフォーム内の圧力を検出する圧力センサ58が設けられている。
【0040】
図9に示す実験装置を用いて、プリフォームを真空吸着及び離脱するまでの、圧力及び流量を測定した。
逆止弁機構28は下記の如く3つの形式のものを用意しそれぞれについてデータ測定を行った。以下は、その結果を示すものである。
1) ボール29が着座する下弁座32の着座面32sに溝が無い場合には、ロータリバルブ50が大気開放ゾーンに入って吸着ヘッド25の上部の真空が開放されても、プリフォーム1内の真空は、その変化に追従するのが遅く緩やかに変化するため、真空ゾーンに入った時点で再吸着を起し、プリフォーム1が落下しない場合がある。その結果、新たに供給されてくるプリフォーム1を受け入れることができない状況になる。
【0041】
2) ボール29が着座する下弁座32の着座面32sに、溝32vを設けて若干のリーク状態を作ると、吸着ヘッド25の上部の真空圧変化の挙動とプリフォーム1の内圧の変化がほぼ一致するため、大気開放ゾーンに入った瞬間にプリフォーム1内の真空も開放されてプリフォーム1が吸着ヘッド25から離れる。
この場合には、プリフォーム1が離れても次の真空ゾーンに入る瞬間に逆止弁機構28が作動し、新たなプリフォーム1が供給されるまでの間は、逆止弁機構28に設けた溝からの漏れ量だけが流量となり、約10L/min程度しか真空漏れは発生しない。
【0042】
3) 逆止弁機構にボールが無い状態(従来の装置と空圧回路は同じになる)では、プリフォーム1の吸引時の圧力は若干高めになるが、プリフォーム1が落下して開放状態になったときの真空漏れ量は約53L/minとなる。
【0043】
4) その他の評価として、逆止弁機構の弁座に溝が無い場合と比較して、溝がある場合には、プリフォームの内圧の波形の乱れが少ない。これは、溝がないと、プリフォームの口部と吸着ヘッドの間の真空漏れの分だけ流路の確保が行なわれ、ボールが筐体の内部で僅かに浮上と落下を繰返すのに対して、溝があると、その溝からの流れだけでほぼ流量が確保できて逆止弁機構の中でボールが動くことがないためと考えられる。
【0044】
図10(a)乃至図10(c)は、上記実験結果を示すグラフである。図10(a)は下弁座に溝がない逆止弁機構の場合の実験結果を示し、図10(b)は下弁座に溝がある逆止弁機構の場合の実験結果を示し、図10(c)はボールが無い、すなわち逆止弁機構がない場合の実験結果を示す。
【0045】
図10(a)乃至図10(c)において、縦軸は圧力(kPa)及び流量(L/min)、横軸は時間(Second)を示す。
図10(a)乃至図10(c)において、上段のグラフは吸着ヘッド上部での圧力変動を示し、中段のグラフはプリフォーム内の圧力変動を示し、下段のグラフは真空引きにおける流量の変動を示す。
図10(a)乃至図10(c)に示す機構を用いて、真空状態から大気圧に開放し、その後、真空状態にしてから大気に開放し、再度真空にした。
尚、オフラインでの実験のため連続してのプリフォームの搬送はせず、再真空の際に新たなプリフォームは供給しないこととした。
【0046】
1)図10(a)に示す実験結果について
i)圧力変動について
負圧(−23.5kPa)を大気開放した際に、逆止弁出口側であるヘッド上部は瞬時に大気圧になるが、プリフォーム内部は徐々に大気圧になっていくことから、プリフォーム内の圧力変動が少ないことになる。大気圧に開放される際には逆止弁機構のボールは自重で下弁座上にあり、流路は遮断される。すなわち、逆止弁出口側で大気圧に開放されても、プリフォームからの圧力の逃げ場がボールによって遮断される。この場合には、プリフォームが吸着ヘッドから離脱しない状態にある。
従って、再度真空引きをすると、逆止弁出口側と、吸着ヘッドに吸着されたプリフォームの内部は、共に負圧(−23.5kPa)状態となる。
ii)流量変動について
プリフォームが吸着ヘッドに吸着された状態を維持しており、真空の際に流量の漏れは発生していない。
【0047】
2)図10(b)に示す実験結果について
i)圧力変動について
負圧(−23.5kPa)を大気開放した際に、逆止弁出口側であるヘッド上部は瞬時に大気圧になるが、プリフォーム内部もそれに追従して瞬時に大気圧になっていくことが解る。大気圧に開放される際には逆止弁機構のボールは1)と同様に自重で下弁座上にあるが、下弁座に溝があるので流路は確保される。
逆止弁出口側を大気圧に開放すると、逆止弁の下弁座側は流路が確保されているため、プリフォーム内の圧力も瞬時に大気圧になり、プリフォームが吸着ヘッドから離脱する。従って、再度真空引きをすると、逆止弁出口側では、逆止弁のボールの効果により微小流量は漏れるが、逆止弁内の主流路はボールにより遮断されるため、概ね負圧(−23.5kPa)状態に近い圧力となる。一方、プリフォームは既に吸着ヘッドから離脱しているので、新たなプリフォームが供給されない実験状況下のため、大気圧のままとなる。
ii)流量変動について
プリフォームが吸着ヘッドから離脱しているが、実験のため、新たなプリフォームは供給されず、本来であれば漏れ流量は大量になるが、逆止弁のボールの効果により、逆止弁内の主流路が遮断されることから、下弁座の溝からの微小流量が漏れるに留まる。この際の漏れ流量は約10L/minである。
【0048】
3)図10(c)に示す実験結果について
i)圧力変動について
負圧(−26.0kPa)を大気開放した際に、逆止弁出口側であるヘッド上部は瞬時に大気圧になるが、プリフォーム内部もそれに追従して瞬時に大気圧になっていく点で上記2)と同様である。大気圧に開放される際にはボールがないため、逆止弁を取り付けていないのと同じことになり、流路が確保されるからである。これにより、逆止弁出口側で大気圧に開放されると、プリフォーム内の圧力も瞬時に大気圧になり、プリフォームが吸着ヘッドから離脱する。従って、再度真空引きをすると、逆止弁出口側では、逆止弁としての機能がなく、当初の負圧(−26.0kPa)を大きく下回る状態になる。一方、プリフォームは既に吸着ヘッドから離脱しているので、新たなプリフォームが供給されない実験状況下のため、2)と同様に大気圧のままとなる。
ii)流量変動について
プリフォームが吸着ヘッドから離脱しており、新たなプリフォームが供給されず、逆止弁の効果もないため、漏れ流量も大きく約53L/minである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1はプリフォーム検査装置の全体構成を示す平面図である。
【図2】図2は図1のII−II線断面図である。
【図3】図3は吸着ヘッドの要部を示す図である。
【図4】図4は吸着ヘッドを示す拡大断面図である。
【図5】図5(a)および図5(b)は、上弁座,下弁座の着座面を示す平面図であり、図5(a)は上弁座の着座面を示し、図5(b)は下弁座の着座面を示す。
【図6】図6は、本発明の逆止弁機構を示す空圧回路図である。
【図7】図7は、ロータリバルブを示す模式的断面図である。
【図8】図8は、逆止弁機構の動作を示す模式図である。
【図9】図9は、実験に用いた空圧回路図である。
【図10】図10(a)は下弁座に溝がない逆止弁機構の場合の実験結果を示す図であり、図10(b)は下弁座に溝がある逆止弁機構の場合の実験結果を示す図であり、図10(c)はボールが無い、すなわち逆止弁機構がない場合の実験結果を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1 プリフォーム
1a 口部
1b 胴部
1c 底部
1d ネックリング
3 入口スターホイール
4 出口スターホイール
6,7 ガイドレール
10 照明
11,12 撮影カメラユニット
13 ミラー
14 CCDカメラ
15 自転用タイミングベルト
16 ブレーキ用ベルト
20 メインロータ
21 回転軸
22 軸受
23 支持板
24 軸受ハウジング
25 吸着ヘッド
26 吸着ヘッド本体
26a 凸部
27 軸部
26b,27a,51h 連通孔
28 逆止弁機構
29 ボール
30 ボールハウジング部
31 上弁座
31s,32s 着座面
32 下弁座
37 ガイドバー
38 支持部材
39 固定軸
40 カム
42 カムフォロワ
44 軸受
45 軸受ハウジング
47 チューブ
48 プーリ
50 ロータリバルブ
51 回転側部材
52 固定側部材
52a 円弧状溝
52b 矩形状溝
60 不良品排出シュート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリフォームの口部を真空吸着する複数の吸着ヘッドと、前記複数の吸着ヘッドを自転させながら公転させるメインロータと、前記各吸着ヘッドと真空源とを断続的に連通させるロータリバルブとを備え、自転するプリフォームをカメラで撮影して検査するプリフォーム検査装置において、
前記各吸着ヘッドと前記ロータリバルブとを結ぶ経路に、前記吸着ヘッドから前記ロータリバルブに向かうエアの流れを抑制する逆止弁機構を設けたことを特徴とするプリフォーム検査装置。
【請求項2】
前記逆止弁機構は前記吸着ヘッドに設けられていることを特徴とする請求項1記載のプリフォーム検査装置。
【請求項3】
前記逆止弁機構は、ボールと、前記ボールの両側にボールから離間して設けられボールが着座可能な一対の弁座と、前記ボールおよび一対の弁座を収容する筺体とを備え、前記各弁座の着座面にはエアの流れを確保する流路が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のプリフォーム検査装置。
【請求項4】
前記弁座は交換可能であることを特徴とする請求項3記載のプリフォーム検査装置。
【請求項5】
前記エアの流れを確保する流路は前記着座面に2箇所以上形成されていることを特徴とする請求項3記載のプリフォーム検査装置。
【請求項6】
前記筺体は透明な部材からなることを特徴とする請求項3記載のプリフォーム検査装置。
【請求項7】
前記ボールは金属からなることを特徴とする請求項3記載のプリフォーム検査装置。
【請求項8】
前記逆止弁機構は、前記弁座が上下方向又は斜め方向に位置するように鉛直に設置するか傾斜して設置することを特徴とする請求項3記載のプリフォーム検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−90493(P2009−90493A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261124(P2007−261124)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(390014661)キリンテクノシステム株式会社 (126)
【Fターム(参考)】