説明

プリプレグ、積層板、プリント配線基板、半導体パッケージおよび半導体装置

【課題】半田耐熱性に優れ、かつ、リフローなどの加熱時に生じる反りが抑制された薄型プリント配線基板用の積層板を得ることができるプリプレグを提供する。
【解決手段】本発明は、50℃以上150℃以下の範囲における線膨張係数が0ppm/℃以下の有機繊維基材(101)に、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物を含浸してなるプリプレグ(100)である。有機繊維基材(101)は、熱重量測定装置により、(A)有機繊維基材(101)を110℃で1時間保持して重量減少率Aを測定する予備乾燥工程と、(B)有機繊維基材(101)を25℃から300℃に10℃/分で昇温して重量減少率Bを測定する測定工程と、を順次おこなった際の、B−Aにより算出される値が0.30%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリプレグ、積層板、プリント配線基板、半導体パッケージおよび半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の高機能化および軽薄短小化の要求にともなって、電子部品の高密度集積化、さらには高密度実装化が進んできており、これらの電子機器に使用される半導体装置の小型化が急速に進行している。
そのため、半導体素子を含めた電子部品を実装するプリント配線基板も薄型化される傾向にあり、プリント配線基板に使用される内層コア基板(以下、単に積層板ともいう)は、厚みが約0.8mmのものが主流となっている。
さらに最近では、0.4mm以下のコア基板を用いた半導体パッケージ同士を積層するパッケージ・オン・パッケージ(以下、POPという。)がモバイル機器(例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット型PCなど)に搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−203142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように半導体装置の小型化が進むと、従来では半導体装置の剛性の大部分を担っていた半導体素子、封止材の厚みが極めて薄くなり、半導体装置の反りが発生しやすくなる。また、構成部材としてコア基板の占める割合が大きくなるため、コア基板の物性・挙動が半導体装置の反りに大きな影響を及ぼすようになってきている。
【0005】
一方、地球環境保護の観点から半田の鉛フリー化が進むにつれて、プリント配線基板へ半田ボールを搭載するときや、マザーボードへ半導体パッケージを実装するときにおこなうリフロー工程での最高温度が非常に高くなってきている。一般的に良く使われている鉛フリー半田の融点が約210度であることからリフロー工程中での最高温度は260度を超えるレベルとなっている。
そのため、POPの上下の半導体パッケージは、半導体素子と半導体素子が搭載されるプリント配線基板との熱膨張の差が非常に大きいため、大きく反ってしまう場合があった。
【0006】
このような問題を解決する手段として、例えば、以下の文献に記載の手段がある。
特許文献1(特開2006−203142号公報)には、プリプレグの基材として、熱膨張率が負の値を有する有機繊維からなる織布を用いることで、半導体パッケージ用多層プリント配線板の熱膨張率をシリコンチップの熱膨張率に近づけることができ、シリコンチップを実装した場合の接続信頼性を向上できると記載されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1のように、プリプレグに使用する繊維基材として負の熱膨張を示す有機繊維基材を使用すると、得られる積層板のガラス転移温度が、使用した材料から予想される値よりも低くなり、その結果、積層板の弾性率が低下してしまう場合があった。弾性率が低下した結果、得られる積層板は剛性が不十分となり、リフロー工程での加熱時にプリント配線基板が膨れてしまったり、配線層が基板から剥がれてしまったりする場合があった。つまり、得られる積層板は半田耐熱性が劣っていた。また、積層板の剛性が低下した結果、リフローなどの加熱時の反りの抑制効果も十分に満足いくものではなかった。
【0008】
そこで、本発明では、半田耐熱性に優れ、かつ、リフローなどの加熱時に生じる反りが抑制された薄型プリント配線基板用の積層板を得ることができるプリプレグを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは有機繊維基材を含むプリプレグを用いると積層板のガラス転移温度が低下してしまう要因を鋭意調べた。その結果、以下の条件を満たす有機繊維基材を含むプリプレグを用いることにより、積層板のガラス転移温度の低下を抑制でき、その結果、弾性率を高く保持した積層板が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明によれば、
50℃以上150℃以下の範囲における線膨張係数が0ppm/℃以下の有機繊維基材に、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物を含浸してなるプリプレグであって、
上記有機繊維基材は、熱重量測定装置により、
(A)上記有機繊維基材を110℃で1時間保持して重量減少率Aを測定する予備乾燥工程と、
(B)上記有機繊維基材を25℃から300℃に10℃/分で昇温して重量減少率Bを測定する測定工程と、
を順次おこなった際の、
B−Aにより算出される値が0.30%以下である、プリプレグが提供される。
【0011】
この発明によれば、上記の条件を満たす有機繊維基材を含むプリプレグを用いることによって、弾性率を高く保持したまま、積層板の線膨張係数を低下させることができる。そのため、積層板の半田耐熱性を向上させつつ、リフローなどの加熱時に生じる積層板の単体反りを抑制することができる。
【0012】
さらに、本発明によれば、上記プリプレグの硬化体を含む、積層板が提供される。
【0013】
さらに、本発明によれば、上記積層板を回路加工してなる、プリント配線基板が提供される。
【0014】
さらに、本発明によれば、上記プリント配線基板に半導体素子が搭載された、半導体パッケージが提供される。
【0015】
さらに、本発明によれば、上記半導体パッケージを含む、半導体装置が提供される。
【0016】
さらに、本発明によれば、
50℃以上150℃以下の範囲における線膨張係数が0ppm/℃以下の有機繊維基材を準備する工程と、
上記有機繊維基材について、
熱重量測定装置により、
上記有機繊維基材を110℃で1時間保持して測定する重量減少率Aと、
上記有機繊維基材を25℃から300℃に10℃/分で昇温して測定する重量減少率Bと、
から算出される、B−Aを0.30%以下に調整する工程と、
上記有機繊維基材に熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物を含浸させ、上記樹脂組成物を半硬化する工程と、
を含む、プリプレグの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、半田耐熱性に優れ、かつ、リフローなどの加熱時に生じる反りが抑制された薄型プリント配線基板用の積層板を得ることができるプリプレグを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態におけるプリプレグの構成の一例を示す断面図である。
【図2】本実施形態における半導体パッケージの構成の一例を示す断面図である。
【図3】本実施形態における半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。なお、図は概略図であり、実際の寸法比率とは必ずしも一致していない。
【0020】
(プリプレグ)
はじめに、本実施形態におけるプリプレグ100の構成について説明する。図1は、本実施形態におけるプリプレグ100の構成の一例を示す断面図である。プリプレグ100は、有機繊維基材101と、樹脂層103とを備えており、有機繊維基材101に熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物を含浸して得られる。
有機繊維基材101は、50℃以上150℃以下の範囲における線膨張係数が0ppm/℃以下である。なお、本実施形態の線膨張係数は、とくに断りがなければ、50℃以上150℃以下の領域における線膨張係数の平均値を表す。
また、有機繊維基材101は、熱重量測定装置により、(A)有機繊維基材101を110℃で1時間保持して重量減少率Aを測定する予備乾燥工程と、(B)有機繊維基材101を25℃から300℃に10℃/分で昇温して重量減少率Bを測定する測定工程と、を順次おこなった際の、B−Aにより算出される値が0.30%以下であり、好ましくは0.25%以下であり、さらに好ましくは0.20%以下であるように特定されている。
上記の条件を満たす有機繊維基材101を含むプリプレグ100を用いると、得られる積層板のガラス転移温度の低下を抑制できる。そのため、弾性率を高く保持したまま、積層板の線膨張係数を低下させることができ、その結果、積層板の単体反りを抑制することができる。
【0021】
従来の有機繊維基材を含むプリプレグを用いると得られる積層板のガラス転移温度が、使用した材料から予想される値よりも低くなる理由は必ずしも明らかではないが、本発明者らは以下のように推察した。
有機繊維基材中には、その製造過程において使用する溶媒やモノマー、オリゴマー、添加剤などの低分子量成分が微量ながら残存している。
これらの残存成分は、積層板の製造過程において熱硬化性樹脂の間隙に入り込んで、熱硬化性樹脂の構造を変化させることにより、積層板の構成材料である熱硬化性樹脂のガラス転移温度を低下させてしまう。その結果、積層板のガラス転移温度が使用した材料から予想される値よりも低くなってしまうと推察した。
【0022】
本発明者らは上記推察をもとに鋭意調べたところ、熱重量測定装置により、(A)110℃で1時間保持して重量減少率Aを測定する予備乾燥工程と、(B)熱重量測定装置により25℃から300℃に10℃/分で昇温して重量減少率Bを測定する測定工程と、を順次おこなった際の、B−Aにより算出される値が特定量以下である有機繊維基材101を用いることにより、ガラス転移温度を高く保持した積層板が得られることを見出した。
本実施形態で特定される有機繊維基材101は、上記のような低分子量成分が少ないため、本実施形態の有機繊維基材101を用いると、積層板の製造過程における上記のような構造変化を抑制することができると考えられる。
したがって、本実施形態における有機繊維基材101を含むプリプレグは、ガラス転移温度を高く保持できると考えられる。
【0023】
つづいて、プリプレグ100を構成する材料について詳細に説明する。
本実施形態におけるプリプレグ100は、有機繊維基材101に一または二以上の樹脂組成物を含浸させ、その後、半硬化させて得られる有機繊維基材101と樹脂層103を備えるシート状の材料である。このような構造のシート状材料は、誘電特性、高温多湿下での機械的、電気的接続信頼性などの各種特性に優れ、プリント配線基板用の積層板の製造に適しており、好ましい。
【0024】
(有機繊維基材)
本実施形態における有機繊維基材101は、熱重量測定装置により、(A)有機繊維基材101を110℃で1時間保持して重量減少率Aを測定する予備乾燥工程と、(B)有機繊維基材101を25℃から300℃に10℃/分で昇温して重量減少率Bを測定する測定工程と、を順次おこなった際の、B−Aにより算出される値が0.30%以下であり、好ましくは0.25%以下であり、さらに好ましくは0.20%以下である。
なお、上記の順次おこなうとは、(A)予備乾燥工程をおこなった後、有機繊維基材101を大気に触れさせずに、そのままの状態で(B)測定工程をおこなうことをいう。
また、重量減少率AおよびBは、有機繊維基材101からの減少率であり、下記式(1)および(2)により算出される。ここで、(A)予備乾燥工程前の有機繊維基材101の重量をWとし、(A)予備乾燥工程での重量減少量をaとし、(B)測定工程での重量減少量をbとする。
A[%]=100×a/W (1)
B[%]=100×b/(W−a) (2)
【0025】
上記(A)予備乾燥工程をおこなうと、有機繊維基材101に付着した水分を3000〜4000ppm程度まで除去することができる。したがって、(A)予備乾燥工程により有機繊維基材101に付着した水分を除去してから(B)測定工程をおこなうことによって、水分の影響を排除しながら有機繊維基材101に付着した上記のような低分子量成分の量を正確に測定することができる。
【0026】
また、上記B−Aにより算出される値は低ければ低いほど好ましいので下限値はとくに限定するものではないが、例えば、0.01%以上とすることができる。
【0027】
このような条件を満たす有機繊維基材101を用いると、得られる積層板のガラス転移温度の低下を抑制することができる。そのため、弾性率を高く保持したまま、積層板の線膨張係数を低下させることができ、その結果、積層板の半田耐熱性を向上させつつ、積層板の単体反りを抑制することができる。
【0028】
また、本実施形態における有機繊維基材101は、50℃以上150℃以下の範囲における線膨張係数が0ppm/℃以下であり、好ましくは−3ppm/℃以下であり、より好ましくは−5ppm/℃以下である。このような線膨張係数を有する有機繊維基材101を用いることにより、本実施形態の積層板の反りをさらに抑制することができる。
【0029】
さらに、本実施形態で用いる有機繊維基材101を構成する有機繊維は、ヤング率が好ましくは70GPa以上であり、より好ましくは100GPa以上、さらに好ましくは120GPa以上である。このようなヤング率を有する有機繊維を用いることにより、例えば半導体実装時のリフロー熱による配線板の変形を効果的に抑制することができるので、電子部品の接続信頼性をさらに向上させることができる。また、本実施形態で用いる有機繊維基材101を構成する有機繊維のヤング率の上限については、とくに限定するものではないが、400GPa以下とすることができる。
【0030】
また、本実施形態で用いる有機繊維基材101を構成する有機繊維は、1GHzでの誘電率が、好ましくは2.5以上4.5以下であり、より好ましくは2.5以上3.5以下であり、とくに好ましくは2.5以上3.0以下である。このような誘電率を有する有機繊維からなる有機繊維基材101を用いることにより積層板の誘電率をさらに低減することができるため、高速信号を用いた半導体装置に当該積層板を好適に用いることができる。
【0031】
本実施形態における有機繊維基材を構成する有機繊維としては、例えば、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール樹脂、ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、全芳香族ポリアミド(アラミド)樹脂などのポリアミド系樹脂、ポリエステル樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、全芳香族ポリエステル樹脂などのポリエステル系樹脂、ポリイミドベンズオキサゾール樹脂、ポリイミド樹脂などのポリイミド系樹脂、フッ素樹脂などの樹脂から構成される繊維が挙げられる。有機繊維を構成する樹脂として、これらの中の1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0032】
これらの中でも、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂、およびポリイミドベンズオキサゾール樹脂、より選ばれる少なくとも1種以上の耐熱性樹脂から構成される有機繊維がとくに好ましい。これらの有機繊維を用いることにより、プリプレグ100の線膨張係数や誘電率をさらに小さくし、かつ、ヤング率をさらに大きくすることができる。
【0033】
本実施形態における有機繊維基材101の形態は、例えば織布基材であり、具体的には上記有機繊維を用いて構成された有機繊維クロス、有機繊維不織布などが挙げられる。これらの中でも、強度、熱膨張係数の点から有機繊維クロスがとくに好ましい。また、有機繊維クロスを用いることにより、プリプレグ100の線膨張係数をさらに小さくし、かつ、ヤング率をさらに大きくすることができる。
【0034】
有機繊維基材101の厚みは、とくに限定されないが、好ましくは10μm以上150μm以下であり、より好ましくは20μm以上120μm以下であり、とくに好ましくは30μm以上100μm以下である。このような厚みを有する有機繊維基材101を用いることにより、プリプレグ100製造時のハンドリング性をさらに向上させ、とくに積層板の反り低減効果を向上させることができる。
【0035】
上述したB−Aにより算出される値が0.3%以下の有機繊維基材101は、例えば、上記の有機繊維基材101をアニール処理することによって得られる。
アニール温度は、とくに限定されないが、好ましくは120℃以上350℃以下であり、より好ましくは150℃以上300℃以下である。アニール温度が上記範囲であると、得られる積層板のガラス転移点の低下をより一層抑制することができる。
また、アニール時間は、とくに限定されないが、好ましくは30分以上6時間以下であり、より好ましくは45分以上4時間以下である。アニール時間が上記範囲であると、得られる積層板のガラス転移点の低下をより一層抑制することができる。
アニール処理は、例えば、窒素やアルゴンなどの不活性雰囲気でおこなうことが好ましい。不活性雰囲気でおこなうことによって有機繊維基材101の酸化を抑制することができる。
【0036】
上記アニール処理する方法としては、とくに限定されないが、例えば、熱風乾燥装置、赤外線加熱装置、加熱ロール装置、平板状の熱盤プレス装置などを用いて実施することができる。
【0037】
(樹脂組成物)
また、有機繊維基材101に含浸させる樹脂組成物としては、とくに限定されないが、低線膨張率および高弾性率を有し、熱衝撃性の信頼性に優れたものであることが好ましい。上記樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を含んでいる。
【0038】
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂としては、とくに限定されないが、低線膨張率および高弾性率を有し、熱衝撃性の信頼性に優れたものであることが好ましい。
また、熱硬化性樹脂の動的粘弾性測定による周波数1Hzでのガラス転移温度は、好ましくは160℃以上であり、さらに好ましくは200℃以上である。このようなガラス転移温度を有する樹脂組成物を用いることにより、鉛フリー半田リフロー耐熱性がさらに向上するという効果を得ることができる。また、樹脂組成物の動的粘弾性測定による周波数1Hzでのガラス転移温度の上限については、とくに限定するものではないが、350℃以下とすることができる。
【0039】
具体的な熱硬化性樹脂として、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂などのノボラック型フェノール樹脂、未変性のレゾールフェノール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油などで変性した油変性レゾールフェノール樹脂などのレゾール型フェノール樹脂などのフェノール樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂などのトリアジン環を有する樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、シアネート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂などが挙げられる。
これらの中の1種類を単独で用いてもよいし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用して用いてもよく、1種類または2種類以上と、それらのプレポリマーを併用して用いてもよい。
【0040】
これらの中でも、とくにシアネート樹脂(シアネート樹脂のプレポリマーを含む)が好ましい。シアネート樹脂を用いることにより、積層板の線膨張係数を小さくすることができる。さらに、シアネート樹脂を用いることにより、積層板の電気特性(低誘電率、低誘電正接)、機械強度などを向上させることができる。
【0041】
シアネート樹脂は、例えば、ハロゲン化シアン化合物とフェノール類とを反応させたものや、必要に応じて加熱などの方法でプレポリマー化したものなどを用いることができる。具体的には、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂などのビスフェノール型シアネート樹脂、ナフトールアラルキル型の多価ナフトール類と、ハロゲン化シアンとの反応で得られるシアネート樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂、ビフェニルアルキル型シアネート樹脂などを挙げることができる。これらの中でもノボラック型シアネート樹脂が好ましい。ノボラック型シアネート樹脂を用いることにより、樹脂層103の架橋密度が増加し、積層板の耐熱性が向上する。したがって、積層板の難燃性を向上させることができる。
【0042】
この理由としては、ノボラック型シアネート樹脂は、硬化反応後にトリアジン環を形成することが挙げられる。さらに、ノボラック型シアネート樹脂は、その構造上ベンゼン環の割合が高く、炭化しやすいためと考えられる。さらに、積層板の厚さを0.6mm以下にした場合であっても、ノボラック型シアネート樹脂を硬化させて作製した樹脂層103を含む積層板は優れた剛性を有する。とくに、このような積層板は加熱時における剛性に優れるので、半導体素子実装時の信頼性にも優れる。
ノボラック型シアネート樹脂としては、例えば、下記一般式(I)で示されるものを使用することができる。
【0043】
【化1】

【0044】
一般式(I)で示されるノボラック型シアネート樹脂の平均繰り返し単位nは任意の整数である。nの下限は、とくに限定されないが、1以上が好ましく、とくに2以上が好ましい。nが上記下限値以上であると、ノボラック型シアネート樹脂の耐熱性が向上し、加熱時に低量体が脱離、揮発することを抑制できる。また、nの上限は、とくに限定されないが、10以下が好ましく、7以下がより好ましい。nが上記上限値以下であると、溶融粘度が高くなるのを抑制でき、樹脂層103の成形性が低下することを抑制することができる。
【0045】
また、シアネート樹脂としては、下記一般式(II)で表わされるナフトール型シアネート樹脂も好適に用いられる。下記一般式(II)で表わされるナフトール型シアネート樹脂は、例えば、α−ナフトールあるいはβ−ナフトールなどのナフトール類とp−キシリレングリコール、α,α'−ジメトキシ−p−キシレン、1,4−ジ(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ベンゼンなどとの反応により得られるナフトールアラルキル樹脂とシアン酸とを縮合させて得られるものである。一般式(II)のnは10以下であることがより好ましい。nが10以下の場合、樹脂粘度が高くならず、繊維基材への含浸性が良好で、積層板としての性能を低下させない傾向がある。また、合成時に分子内重合が起こりにくく、水洗時の分液性が向上し、収量の低下を防止できる傾向がある。
【0046】
【化2】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、nは1以上の整数を示す。)
【0047】
また、シアネート樹脂としては、下記一般式(III)で表わされるジシクロペンタジエン型シアネート樹脂も好適に用いられる。下記一般式(III)で表わされジシクロペンタジエン型シアネート樹脂は、下記一般式(III)のnが0以上8以下であることが好ましい。nが8以下の場合、樹脂粘度が高くならず、繊維基材への樹脂組成物の含浸性が良好で、積層板としての性能の低下を防止できる。また、ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂を用いることで、積層板の低吸湿性および耐薬品性を向上させることができる。
【0048】
【化3】

(nは0以上8以下の整数を示す。)
【0049】
シアネート樹脂の重量平均分子量(Mw)の下限は、とくに限定されないが、Mw500以上が好ましく、Mw600以上がより好ましい。Mwが上記下限値以上であると、樹脂層103を作製した場合にタック性の発生を抑制でき、樹脂層103同士が接触したとき互いに付着したり、樹脂の転写が生じたりするのを抑制することができる。また、Mwの上限は、とくに限定されないが、Mw4,500以下が好ましく、Mw3,000以下がより好ましい。また、Mwが上記上限値以下であると、反応が速くなるのを抑制でき、プリント配線基板とした場合に、成形不良が生じたり、層間ピール強度が低下したりするのを抑制することができる。
シアネート樹脂などのMwは、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、標準物質:ポリスチレン換算)により測定することができる。
【0050】
また、とくに限定されないが、シアネート樹脂は1種類を単独で用いてもよいし、異なるMwを有するものを2種類以上併用して用いてもよく、1種類または2種類以上と、それらのプレポリマーとを併用して用いてもよい。
【0051】
樹脂組成物中に含まれる熱硬化性樹脂の含有量は、その目的に応じて適宜調整されればよく、とくに限定されないが、樹脂組成物全体に基づいて5質量%以上90質量%以下が好ましく、10質量%以上80質量%以下がより好ましく、20質量%以上50質量%以下がとくに好ましい。熱硬化性樹脂の含有量が上記下限値以上であると、樹脂組成物のハンドリング性が向上し、樹脂層103を形成するのが容易となる。熱硬化性樹脂の含有量が上記上限値以下であると、樹脂層103の強度や難燃性が向上したり、樹脂層103の線膨張係数が低下し積層板の反りの低減効果が向上したりする場合がある。
【0052】
熱硬化性樹脂としてシアネート樹脂(とくにノボラック型シアネート樹脂、ナフトール型シアネート樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂)を用いる以外に、エポキシ樹脂(実質的にハロゲン原子を含まない)を用いてもよいし、併用してもよい。エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂などのアリールアルキレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、2官能ないし4官能エポキシ型ナフタレン樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂などのナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0053】
エポキシ樹脂として、これらの中の1種類を単独で用いてもよいし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用して用いてもよく、1種類または2種類以上と、それらのプレポリマーとを併用して用いてもよい。
【0054】
これらエポキシ樹脂の中でもとくにアリールアルキレン型エポキシ樹脂が好ましい。これにより、吸湿半田耐熱性および難燃性をさらに向上させることができる。
【0055】
アリールアルキレン型エポキシ樹脂とは、繰り返し単位中に一つ以上のアリールアルキレン基を有するエポキシ樹脂をいう。例えば、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中でもビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂が好ましい。ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂は、例えば、下記一般式(IV)で示すことができる。
【0056】
【化4】

【0057】
上記一般式(IV)で示されるビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂の平均繰り返し単位nは任意の整数である。nの下限は、とくに限定されないが、1以上が好ましく、とくに2以上が好ましい。nが上記下限値以上であると、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂の結晶化を抑制でき、汎用溶媒に対する溶解性が向上するため、取り扱いが容易となる。nの上限は、とくに限定されないが、10以下が好ましく、5以下がより好ましい。nが上記上限値以下であると、樹脂の流動性が向上し、成形不良などの発生を抑制することができる。
【0058】
上記以外のエポキシ樹脂としては縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。これにより、積層板の耐熱性、低熱膨張性をさらに向上させることができる。
【0059】
縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂は、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、クリセン、ピレン、トリフェニレン、およびテトラフェン、その他の縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂である。縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂は、複数の芳香環が規則的に配列することができるため低熱膨張性に優れる。また、ガラス転移温度も高いため耐熱性に優れる。さらに、繰返し構造の分子量が大きいため従来のノボラック型エポキシに比べ難燃性に優れ、シアネート樹脂と組合せることでシアネート樹脂の弱点の脆弱性を改善することができる。したがって、シアネート樹脂と併用して用いることで、積層板のガラス転移温度がさらに高くなるため鉛フリー対応の実装信頼性を向上させることができる。
【0060】
縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂は、フェノール類化合物とホルムアルデヒド類化合物、および縮合環芳香族炭化水素化合物から合成された、ノボラック型フェノール樹脂をエポキシ化したものである。
【0061】
フェノール類化合物は、とくに限定されないが、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾールなどのクレゾール類、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノールなどのキシレノール類、2,3,5トリメチルフェノールなどのトリメチルフェノール類、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノールなどのエチルフェノール類、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、t−ブチルフェノールなどのアルキルフェノール類、o−フェニルフェノール、m−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、カテコール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレンなどのナフタレンジオール類、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、ピロガロール、フルオログルシンなどの多価フェノール類、アルキルレゾルシン、アルキルカテコール、アルキルハイドロキノンなどのアルキル多価フェノール類が挙げられる。これらの中でも、コスト面および分解反応に与える効果から、フェノールが好ましい。
【0062】
アルデヒド類化合物は、とくに限定されないが、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ポリオキシメチレン、クロラール、ヘキサメチレンテトラミン、フルフラール、グリオキザール、n-ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、テトラオキシメチレン、フェニルアセトアルデヒド、o-トルアルデヒド、サリチルアルデヒド、ジヒドロキシベンズアルデヒド、トリヒドロキシベンズアルデヒド、4−ヒドロキシ−3−メトキシアルデヒドパラホルムアルデヒドなどが挙げられる。
【0063】
縮合環芳香族炭化水素化合物は、とくに限定されないが、例えば、メトキシナフタレン、ブトキシナフタレンなどのナフタレン誘導体、メトキシアントラセンなどのアントラセン誘導体、メトキシフェナントレンなどのフェナントレン誘導体、その他テトラセン誘導体、クリセン誘導体、ピレン誘導体、誘導体トリフェニレン、テトラフェン誘導体などが挙げられる。
【0064】
縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂はとくに限定されないが、例えば、メトキシナフタレン変性オルトクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ブトキシナフタレン変性メタ(パラ)クレゾールノボラックエポキシ樹脂、およびメトキシナフタレン変性ノボラックエポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中でも、下記式(V)で表される縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0065】
【化5】

【0066】
(式中、Arは縮合環芳香族炭化水素基である。Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1以上10以下の炭化水素基、ハロゲン元素、フェニル基、ベンジル基などのアリール基、およびグリシジルエーテルを含む有機基から選ばれる基である。n、p、およびqは1以上の整数である。p、qの値は、繰り返し単位毎に同一でも、異なっていてもよい。)
【0067】
【化6】

【0068】
(式(V)中のArは、式(VI)中の(Ar1)〜(Ar4)で表される構造である。式(VI)中のRは、互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1以上10以下の炭化水素基、ハロゲン元素、フェニル基、ベンジル基などのアリール基、およびグリシジルエーテルを含む有機基から選ばれる基である。)
【0069】
さらに上記以外のエポキシ樹脂としてはナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、2官能ないし4官能エポキシ型ナフタレン樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂などのナフタレン型エポキシ樹脂が好ましい。これにより、積層板の耐熱性、低熱膨張性をさらに向上させることができる。
また、ベンゼン環に比べナフタレン環のπ−πスタッキング効果が高いため、低熱膨張性、低熱収縮性にとくに優れる。さらに、多環構造のため剛直効果が高く、ガラス転移温度がとくに高いため、リフロー前後の熱収縮変化が小さい。
ナフトール型エポキシ樹脂としては、例えば、下記一般式(VII−1)、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂としては下記式(VII−2)、2官能ないし4官能エポキシ型ナフタレン樹脂としては下記式(VII−3)(VII−4)(VII−5)、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、下記一般式(VII−6)で示すことができる。
【0070】
【化7】

(nは平均1以上6以下の数を示す。Rはグリシジル基または炭素数1以上10以下の炭化水素基を示す。)
【0071】
【化8】

【0072】
【化9】

【0073】
【化10】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を表す。Rはそれぞれ独立的に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、アラルキル基、ナフタレン基、またはグリシジルエーテル基含有ナフタレン基を表す。oおよびmはそれぞれ0〜2の整数であって、かつ、oまたはmのいずれか一方は1以上である。)
【0074】
エポキシ樹脂の含有量の下限は、とくに限定されないが、樹脂組成物全体において1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましい。含有量が上記下限値以上であると、シアネート樹脂の反応性が向上し、得られる製品の耐湿性を向上させることができる。エポキシ樹脂の含有量の上限は、とくに限定されないが、55質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。含有量が上記上限値以下であると、積層板の耐熱性をより向上させることができる。
【0075】
エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)の下限は、とくに限定されないが、Mw500以上が好ましく、Mw800以上がより好ましい。Mwが上記下限値以上であると、樹脂層103にタック性が生じるのを抑制することができる。Mwの上限は、とくに限定されないが、Mw20,000以下が好ましく、Mw15,000以下がより好ましい。Mwが上記上限値以下であると、プリプレグ作製時、繊維基材への樹脂組成物の含浸性が向上し、より均一な製品を得ることができる。エポキシ樹脂のMwは、例えばGPCで測定することができる。
【0076】
熱硬化性樹脂としてシアネート樹脂(とくにノボラック型シアネート樹脂、ナフトール型シアネート樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂)やエポキシ樹脂(アリールアルキレン型エポキシ樹脂、とくにビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂)を用いる場合、さらにフェノール樹脂を用いることが好ましい。
フェノール樹脂としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、アリールアルキレン型フェノール樹脂などが挙げられる。フェノール樹脂として、これらの中の1種類を単独で用いてよいし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用して用いてもよく、1種類または2種類以上と、それらのプレポリマーとを併用して用いてもよい。これらの中でも、とくにアリールアルキレン型フェノール樹脂が好ましい。これにより、積層板の吸湿半田耐熱性をさらに向上させることができる。
【0077】
アリールアルキレン型フェノール樹脂としては、例えばキシリレン型フェノール樹脂、ビフェニルジメチレン型フェノール樹脂などが挙げられる。ビフェニルジメチレン型フェノール樹脂は、例えば、下記一般式(VIII)で示すことができる。
【0078】
【化11】

【0079】
上記一般式(VIII)で示されるビフェニルジメチレン型フェノール樹脂の繰り返し単位nは任意の整数である。nの下限は、とくに限定されないが、1以上が好ましく、とくに2以上が好ましい。nが上記下限値以上であると、積層板の耐熱性をより向上させることができる。また、繰り返し単位nの上限は、とくに限定されないが、12以下が好ましく、とくに8以下が好ましい。また、nが上記上限値以下であると、他の樹脂との相溶性が向上し、樹脂組成物の作業性を向上させることができる。
【0080】
前述のシアネート樹脂(とくにノボラック型シアネート樹脂、ナフトール型シアネート樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂)やエポキシ樹脂(アリールアルキレン型エポキシ樹脂、とくにビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂)とアリールアルキレン型フェノール樹脂との組合せにより、樹脂層103の架橋密度をコントロールし、樹脂組成物の反応性を容易に制御することができる。
【0081】
フェノール樹脂の含有量の下限は、とくに限定されないが、樹脂組成物全体において1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。フェノール樹脂の含有量が上記下限値以上であると、積層板の耐熱性を向上させることができる。また、フェノール樹脂の含有量の上限は、とくに限定されないが、樹脂組成物全体において55質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。フェノール樹脂の含有量が上記上限値以下であると、積層板の低熱膨張の特性を向上させることができる。
【0082】
フェノール樹脂の重量平均分子量(Mw)の下限は、とくに限定されないが、Mw400以上が好ましく、Mw500以上がより好ましい。Mwが上記下限値以上であると、樹脂層103にタック性が生じるのを抑制することができる。また、フェノール樹脂のMwの上限は、とくに限定されないが、Mw18,000以下が好ましく、Mw15,000以下がより好ましい。Mwが上記上限値以下であるとプリプレグの作製時、繊維基材への樹脂組成物の含浸性が向上し、より均一な製品を得ることができる。フェノール樹脂のMwは、例えばGPCで測定することができる。
【0083】
さらに、シアネート樹脂(とくにノボラック型シアネート樹脂、ナフトール型シアネート樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂)とフェノール樹脂(アリールアルキレン型フェノール樹脂、とくにビフェニルジメチレン型フェノール樹脂)とエポキシ樹脂(アリールアルキレン型エポキシ樹脂、とくにビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂)との組合せを用いて基板(とくにプリント配線基板)を作製した場合、とくに優れた寸法安定性を得ることができる。
【0084】
また、樹脂組成物は無機充填材を含むことが好ましい。これにより、積層板を薄型化しても、より一層優れた機械的強度を付与することができる。さらに、積層板の低熱膨張化をより一層向上させることができる。
【0085】
無機充填材としては、例えば、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラスなどのケイ酸塩、酸化チタン、アルミナ、ベーマイト、シリカ、溶融シリカなどの酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイトなどの炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウムなどの硫酸塩または亜硫酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウムなどのホウ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素などの窒化物、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムなどのチタン酸塩などを挙げることができる。
【0086】
無機充填材として、これらの中の1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用して用いてもよい。これらの中でも、シリカが好ましく、溶融シリカ(とくに球状溶融シリカ)が低熱膨張性に優れる点でより好ましい。溶融シリカの形状には破砕状および球状がある。繊維基材への含浸性を確保するためには、樹脂組成物の溶融粘度を下げるため球状シリカを使うなど、その目的にあわせた使用方法を採用することができる。
【0087】
無機充填材の平均粒子径の下限は、とくに限定されないが、0.01μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。無機充填材の粒径が上記下限値以上であると、ワニスの粘度が高くなるのを抑制でき、プリプレグ作製時の作業性を向上させることができる。また、平均粒子径の上限は、とくに限定されないが、5.0μm以下が好ましく、2.0μm以下がより好ましい。充填材の粒径が上記上限値以下であると、ワニス中で充填剤の沈降などの現象を抑制でき、より均一な樹脂層103を得ることができる。また、内層基板の導体回路がL/Sが20/20μmを下回る際には、配線間の絶縁性に影響を与えるのを抑制することができる。
【0088】
無機充填材の平均粒子径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA製、LA−500)により、粒子の粒度分布を体積基準で測定し、そのメディアン径(D50)を平均粒子径とする。
【0089】
また、無機充填材は、とくに限定されないが、平均粒子径が単分散の無機充填材を用いてもよいし、平均粒子径が多分散の無機充填材を用いてもよい。さらに平均粒子径が単分散および/または多分散の無機充填材を1種類または2種類以上で併用して用いてもよい。
【0090】
また、本実施形態の樹脂材料は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による体積基準粒度分布におけるメディアン径d50が100nm以下のナノシリカ(とくに球状ナノシリカ)を含むのが好ましい。上記ナノシリカは、粒径の大きい無機充填材の隙間や繊維基材のストランド中に存在できるため、ナノシリカを含むことにより、無機充填材の充填性をさらに向上させることができる。
【0091】
無機充填材の含有量は、とくに限定されないが、樹脂組成物全体において20質量%以上80質量%以下が好ましく、30質量%以上75質量%以下がより好ましい。含有量が上記範囲内であると、積層板をより一層低熱膨張、低吸水とすることができる。
【0092】
また、本実施の形態に用いる樹脂組成物は、ゴム成分も配合することができ、例えば、ゴム粒子を用いることができる。ゴム粒子の好ましい例としては、コアシェル型ゴム粒子、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、架橋スチレンブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子、シリコーン粒子などが挙げられる。
【0093】
コアシェル型ゴム粒子は、コア層とシェル層とを有するゴム粒子であり、例えば、外層のシェル層がガラス状ポリマーで構成され、内層のコア層がゴム状ポリマーで構成される2層構造、または外層のシェル層がガラス状ポリマーで構成され、中間層がゴム状ポリマーで構成され、コア層がガラス状ポリマーで構成される3層構造のものなどが挙げられる。ガラス状ポリマー層は、例えば、メタクリル酸メチルの重合物などで構成され、ゴム状ポリマー層は、例えば、ブチルアクリレート重合物(ブチルゴム)などで構成される。コアシェル型ゴム粒子の具体例としては、スタフィロイドAC3832、AC3816N(商品名、ガンツ化成社製)、メタブレンKW−4426(商品名、三菱レイヨン社製)が挙げられる。架橋アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)粒子の具体例としては、XER−91(平均粒子径0.5μm、JSR社製)などが挙げられる。
【0094】
架橋スチレンブタジエンゴム(SBR)粒子の具体例としては、XSK−500(平均粒子径0.5μm、JSR社製)などが挙げられる。アクリルゴム粒子の具体例としては、メタブレンW300A(平均粒子径0.1μm)、W450A(平均粒子径0.2μm)(三菱レイヨン社製)などが挙げられる。
【0095】
シリコーン粒子は、オルガノポリシロキサンで形成されたゴム弾性微粒子であればとくに限定されず、例えば、シリコーンゴム(オルガノポリシロキサン架橋エラストマー)そのものからなる微粒子、および二次元架橋主体のシリコーンからなるコア部を三次元架橋型主体のシリコーンで被覆したコアシェル構造粒子などが挙げられる。シリコーンゴム微粒子としては、KMP−605、KMP−600、KMP−597、KMP−594(信越化学社製)、トレフィルE−500、トレフィルE−600(東レ・ダウコーニング社製)などの市販品を用いることができる。
【0096】
ゴム粒子の含有量は、とくに限定されないが、上記の無機充填材を合わせて、樹脂組成物全体に基づいて20質量%以上80質量%以下が好ましく、30質量%以上75質量%以下がより好ましい。含有量が上記範囲内であると、積層板をより一層低吸水とすることができる。
【0097】
このほか、必要に応じて、樹脂組成物にはカップリング剤、硬化促進剤、硬化剤、熱可塑性樹脂、有機充填材などの添加剤を適宜配合することができる。本実施形態で用いられる樹脂組成物は、上記成分を有機溶剤などにより溶解および/または分散させた液状形態で好適に用いることができる。
【0098】
カップリング剤の使用により、熱硬化性樹脂と無機充填材との界面の濡れ性が向上し、繊維基材に対して樹脂組成物を均一に定着させることができる。したがって、カップリング剤を使用することにより、積層板の耐熱性、とくに吸湿後の半田耐熱性を改良することができる。
【0099】
カップリング剤としては、カップリング剤として通常用いられるものであれば使用できるが、具体的にはエポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤およびシリコーンオイル型カップリング剤の中から選ばれる1種以上のカップリング剤を使用することが好ましい。これにより、熱硬化性樹脂と無機充填材との界面の濡れ性を向上させることができ、その結果、積層板の耐熱性をより一層向上させることができる。
【0100】
カップリング剤の含有量の下限は、無機充填材の比表面積に依存するのでとくに限定されないが、無機充填材100質量部に対して0.05質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましい。カップリング剤の含有量が上記下限値以上であると、無機充填材を十分に被覆することができるため、熱硬化性樹脂と無機充填材との界面の濡れ性をより一層向上させることができ、その結果、積層板の耐熱性をより一層向上させることができる。また、カップリング剤の含有量の上限は、とくに限定されないが、3質量部以下が好ましく、2質量部以下がより好ましい。カップリング剤の含有量が上記上限値以下であると、カップリング剤が熱硬化性樹脂の反応に影響を与えるのを抑制でき、得られる積層板の曲げ強度などの低下を抑制することができる。
【0101】
硬化促進剤としては公知のものを用いることができる。例えば、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)などの有機金属塩、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンなどの3級アミン類、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−エチルイミダゾール、2−フェニル−4−エチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシイミダゾールなどのイミダゾール類、フェノール、ビスフェノールA、ノニルフェノールなどのフェノール化合物、酢酸、安息香酸、サリチル酸、パラトルエンスルホン酸などの有機酸、オニウム塩化合物、またはこれらの混合物などが挙げられる。硬化促進剤として、これらの中の誘導体も含めて1種類を単独で用いてもよいし、これらの誘導体も含めて2種類以上を併用して用いてもよい。
オニウム塩化合物は、とくに限定されないが、例えば、下記一般式(IX)で表されるオニウム塩化合物を用いることができる。
【0102】
【化12】

【0103】
(式中、Pはリン原子である。R、R、RおよびRは、それぞれ、置換もしくは無置換の芳香環または複素環を有する有機基、あるいは置換もしくは無置換の脂肪族基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。Aは分子外に放出しうるプロトンを少なくとも1個以上分子内に有するn(n≧1)価のプロトン供与体のアニオン、またはその錯アニオンを示す。)
【0104】
硬化促進剤の含有量の下限は、とくに限定されないが、樹脂材料全体の0.005質量%以上が好ましく、とくに0.008質量%以上が好ましい。含有量が上記下限値以上であると、硬化を促進する効果を十分に発揮することができる。硬化促進剤の含有量の上限は、とくに限定されないが、樹脂材料全体の5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。含有量が上記上限値以下であるとプリプレグの保存性をより向上させることができる。
【0105】
樹脂組成物では、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂などの熱可塑性樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体などのポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマーなどの熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン、エポキシ変性ポリブタジエン、アクリル変性ポリブタジエン、メタクリル変性ポリブタジエンなどのジエン系エラストマーを併用してもよい。
【0106】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール骨格を有するフェノキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するフェノキシ樹脂、アントラセン骨格を有するフェノキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するフェノキシ樹脂などが挙げられる。また、これらの骨格を複数種有した構造のフェノキシ樹脂を用いることもできる。
【0107】
これらの中でも、フェノキシ樹脂には、ビフェニル骨格およびビスフェノールS骨格を有するフェノキシ樹脂を用いることが好ましい。これにより、ビフェニル骨格が有する剛直性により、フェノキシ樹脂のガラス転移温度を高くすることができるとともに、ビスフェノールS骨格の存在により、フェノキシ樹脂と金属との密着性を向上させることができる。その結果、積層板の耐熱性の向上を図ることができるとともに、プリント配線基板を製造する際に、積層板に対する配線層の密着性を向上させることができる。また、フェノキシ樹脂には、ビスフェノールA骨格およびビスフェノールF骨格を有するフェノキシ樹脂を用いることも好ましい。これにより、プリント配線基板の製造時に、積層板に対する配線層の密着性をさらに向上させることができる。
また、下記一般式(X)で表されるビスフェノールアセトフェノン構造を有するフェノキシ樹脂を用いるのも好ましい。
【0108】
【化13】

【0109】
(式中、Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1以上10以下の炭化水素基またはハロゲン元素から選ばれる基である。Rは、水素原子、炭素数1以上10以下の炭化水素基またはハロゲン元素から選ばれる基である。R は、水素原子または炭素数1以上10以下の炭化水素基であり、mは0以上5以下の整数である。)
【0110】
ビスフェノールアセトフェノン構造を含むフェノキシ樹脂は、嵩高い構造を持っているため、溶剤溶解性や、配合する熱硬化性樹脂成分との相溶性に優れる。また、ビスフェノールアセトフェノン構造を含むフェノキシ樹脂を含むと、低粗度で均一な粗面を有する樹脂層103を形成することができるため、積層板の微細配線形成性をより向上させることができる。
【0111】
ビスフェノールアセトフェノン構造を有するフェノキシ樹脂は、エポキシ樹脂とフェノール樹脂を触媒で高分子量化させる方法など公知の方法で合成することができる。
【0112】
ビスフェノールアセトフェノン構造を有するフェノキシ樹脂は、一般式(X)のビスフェノールアセトフェノン構造以外の構造が含まれていても良く、その構造はとくに限定されないが、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、ビフェニル型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型の構造などが挙げられる。これらの中でも、ビフェニル型の構造を含むものが、積層板のガラス転移温度をより向上させることができる点から好ましい。
【0113】
ビスフェノールアセトフェノン構造を含むフェノキシ樹脂中の一般式(X)のビスフェノールアセトフェノン構造の含有量はとくに限定されないが、好ましくは5モル%以上95モル%以下であり、より好ましくは10モル%以上85モル%以下であり、さらに好ましくは15モル%以上75モル%以下である。含有量が上記下限値以上であると、積層板の耐熱性およびプリント配線基板の耐湿信頼性を向上させる効果を十分に発揮させることができる。また、含有量が上記上限値以下であると、フェノキシ樹脂の溶剤溶解性を向上させることができる。
【0114】
フェノキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、とくに限定されないが、Mw5,000以上100,000以下が好ましく、10,000以上70,000以下がより好ましく、20,000以上50,000以下がとくに好ましい。Mwが上記上限値以下であると、他の樹脂との相溶性や溶剤への溶解性を向上させることができる。上記下限値以上であると、製膜性が向上し、プリント配線基板の製造に用いる場合に不具合が発生するのを抑制することができる。
【0115】
フェノキシ樹脂の含有量は、とくに限定されないが、充填材を除く樹脂材料の0.5質量%以上40質量%以下が好ましく、とくに1質量%以上20質量%以下が好ましい。含有量が上記下限値以上であると樹脂層103の機械強度の低下や、導体回路とのメッキ密着性の低下を抑制することができる。上記上限値以下であると、樹脂基板100の熱膨張率の増加を抑制でき、耐熱性を低下させることができる。
【0116】
さらに、樹脂組成物には、必要に応じて、顔料、染料、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、発泡剤、酸化防止剤、難燃剤、イオン捕捉剤などの上記成分以外の添加物を添加してもよい。
【0117】
顔料としては、カオリン、合成酸化鉄赤、カドミウム黄、ニッケルチタン黄、ストロンチウム黄、含水酸化クロム、酸化クロム、アルミ酸コバルト、合成ウルトラマリン青などの無機顔料、フタロシアニンなどの多環顔料、アゾ顔料などが挙げられる。
【0118】
染料としては、イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、キサンテン 、ジケトピロロピロール、ペリレン、ペリノン 、アントラキノン、インジゴイド 、オキサジン、キナクリドン、ベンツイミダゾロン、ビオランスロン 、フタロシアニン、アゾメチンなどが挙げられる。
【0119】
(プリプレグの製造方法)
本実施形態におけるプリプレグ100は、上述した本実施形態における有機繊維基材101に一または二以上の上記の樹脂組成物を含浸させ、その後、半硬化させて得られる。このような構造のシート状材料は、誘電特性、高温多湿下での機械的、電気的接続信頼性などの各種特性に優れ、プリント配線基板用の積層板の製造に適しており、好ましい。
【0120】
本実施形態におけるプリプレグ100は、例えば、以下の工程により作製することができる。
(1)50℃以上150℃以下の範囲における線膨張係数が0ppm/℃以下の有機繊維基材101を準備する工程
(2)有機繊維基材101について、B−Aを0.30%以下に調整する工程
(3)有機繊維基材101に熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物を含浸させ、含浸させた樹脂組成物を半硬化する工程
ここで、AおよびBは上述した重量減少率AおよびBと同様の手順で算出することができる。
【0121】
有機繊維基材101について、B−Aを0.30%以下に調整する方法は、とくに限定されないが、例えば、上述した有機繊維基材101をアニール処理する方法が挙げられる。
【0122】
本実施形態で用いられる樹脂組成物を有機繊維基材101に含浸させる方法としては、とくに限定されないが、例えば、樹脂組成物を溶剤に溶かして樹脂ワニスを調製し、有機繊維基材101を樹脂ワニスに浸漬する方法、各種コーターにより有機繊維基材101に樹脂ワニスを塗布する方法、スプレーにより樹脂ワニスを有機繊維基材101に吹き付ける方法、支持基材付き樹脂層を有機繊維基材101にラミネートする方法などが挙げられる。
【0123】
とくに、有機繊維基材101の厚さが0.15mm以下の場合、支持基材付き樹脂層を有機繊維基材101にラミネートする方法が好ましい。これにより、有機繊維基材101に対する樹脂組成物の含浸量を自在に調節でき、プリプレグ100の成形性をさらに向上できる。なお、フィルム状の樹脂層をラミネートする場合、真空のラミネート装置などを用いることがより好ましい。
【0124】
(積層板)
つぎに、本実施形態における積層板の構成について説明する。本実施形態における積層板は、上記のプリプレグ100を硬化して得られるプリプレグの硬化体を含んでいる。
【0125】
本実施形態における積層板の反りの防止効果をより効果的に得るためには、とくに限定されないが、積層板の動的粘弾性測定による周波数1Hzでのガラス転移温度が、好ましくは180℃以上であり、より好ましくは200℃以上であり、さらに好ましくは230℃以上であり、とくに好ましくは250℃以上である。上限値については、高ければ高いほど好ましいのでとくに限定するものではないが、例えば、350℃以下とすることができる。
本実施形態における積層板は、動的粘弾性測定によるガラス転移温度が上記範囲を満たすと、積層板の剛性が高まり、実装時の積層板の反りをより一層低減することができる。
【0126】
また、積層板の反りの防止効果をより効果的に得るためには、とくに限定されないが、積層板の250℃での動的粘弾性測定による貯蔵弾性率E'が、好ましくは5GPa以上であり、より好ましくは10GPa以上であり、とくに好ましくは15GPa以上である。上限値については、高ければ高いほど好ましいのでとくに限定するものではないが、例えば、50GPa以下とすることができる。
本実施形態における積層板は、250℃での貯蔵弾性率E'が上記範囲を満たすと、積層板の剛性が高まり、実装時の積層板の反りをより一層低減できる。
【0127】
本実施形態における積層板の厚さは、好ましくは、0.01mm以上0.6mm以下である。より好ましくは0.02mm以上0.4mm以下であり、とくに好ましくは0.04mm以上0.3mm以下である。積層板の厚さが上記範囲内であると、機械的強度および生産性のバランスがとくに優れ、薄型プリント配線基板に適した積層板を得ることができる。
【0128】
本実施形態における積層板の面方向の50℃以上150℃以下の範囲における線膨張係数は、好ましくは−10ppm/℃以上5ppm/℃以下であり、より好ましくは−8ppm/℃以上4ppm/℃以下、とくに好ましくは−5ppm/℃以上3ppm/℃以下である。積層板の線膨張係数が上記範囲内であると、配線パターンを形成したプリント配線基板、半導体素子を搭載した半導体パッケージ200の反り抑制や温度サイクル信頼性の向上がより一層効果的に得られる。さらに半導体パッケージ200を二次実装した場合のマザーボードとの温度サイクル信頼性の向上がより一層効果的に得られる。
【0129】
また、本実施形態における積層板は、とくに限定されないが、無機繊維基材を含有するプリプレグと、上述した有機繊維基材101を含むプリプレグ100と、無機繊維基材を含有するプリプレグと、をこの順に積層して得られる積層板としてもよい。
無機繊維基材を積層板の外側に配置することによって、有機繊維基材101の曲げ弾性率を補強し、積層板の剛性をさらに高めて、積層板の単体反りをより一層低減できる。
【0130】
(無機繊維基材)
無機繊維基材としては、とくに限定されないが、ガラスクロス、ガラス不織布などのガラス繊維基材、カーボンクロス、炭素繊維織物などの炭素繊維基材、ロックウールなどの人造鉱物基材などが挙げられる。これらの中でも、強度、吸水率の点からガラス繊維基材が好ましい。また、ガラス繊維基材を用いることにより、積層板の熱膨張係数をさらに小さくすることができる。
【0131】
本実施形態で用いるガラス繊維基材としては、坪量(1mあたりの繊維基材の重量)が好ましくは4g/m以上150g/m以下であり、より好ましくは8g/m以上110g/m以下であり、さらに好ましくは12g/m以上60g/m以下である。
【0132】
坪量が上記上限値以下であると、ガラス繊維基材中の樹脂組成物の含浸性が向上し、ストランドボイドや絶縁信頼性の低下の発生を抑制することができる。また炭酸ガス、UV、エキシマなどのレーザーによるスルーホールの形成を容易にすることができる。また、坪量が上記下限値以上であると、ガラス繊維基材やプリプレグの強度を向上させることができる。その結果、ハンドリング性が向上したり、プリプレグの作製が容易となったり、積層板の反りの低減効果の低下を抑制したりすることができる。
【0133】
上記ガラス繊維基材の中でも、線膨張係数が6ppm/℃以下のガラス繊維基材であることが好ましく、3.5ppm/℃以下のガラス繊維基材であることがより好ましい。このような線膨張係数を有するガラス繊維基材を用いることにより、本実施形態の積層板の反りをさらに抑制することができる。
【0134】
また、本実施形態で用いるガラス繊維基材は、ヤング率が好ましくは60GPa以上100GPa以下であり、より好ましくは65GPa以上92GPa以下であり、とくに好ましくは86GPa以上92GPa以下である。このようなヤング率を有するガラス繊維基材を用いることにより、例えば、半導体実装時のリフロー熱によるプリント配線基板の変形を効果的に抑制することができるので、電子部品の接続信頼性を向上させることができる。
【0135】
また、本実施形態で用いるガラス繊維基材は、1MHzでの誘電率が好ましくは3.8以上7.0以下であり、より好ましくは3.8以上6.8以下であり、とくに好ましくは3.8以上5.5以下である。このような誘電率を有するガラス繊維基材を用いることにより、積層板の誘電率をさらに低減することができるため、高速信号を用いた半導体パッケージに当該積層板を好適に用いることができる。
【0136】
上記のような線膨張係数、ヤング率および誘電率を有するガラス繊維基材として、例えば、Tガラス、Sガラス、Eガラス、NEガラス、および石英ガラスからなる群から選ばれる少なくとも一種を含むガラス繊維基材が好適に用いられる。
【0137】
ガラス繊維基材の厚みは、とくに限定されないが、好ましくは5μm以上100μm以下であり、より好ましくは10μm以上60μm以下、さらに好ましくは12μm以上35μm以下である。このような厚みを有するガラス繊維基材を用いることにより、プリプレグ製造時のハンドリング性をさらに向上させることができ、また、積層板の反り低減効果を向上させることができる。
【0138】
ガラス繊維基材の厚みが上記上限値以下であると、繊維基材中の樹脂材料の含浸性が向上し、ストランドボイドや絶縁信頼性の低下の発生を抑制することができる。また炭酸ガス、UV、エキシマなどのレーザーによるスルーホールの形成を容易にすることができる。また、ガラス繊維基材の厚みが上記下限値以上であると、ガラス繊維基材やプリプレグの強度が向上させることができる。その結果、ハンドリング性が向上したり、プリプレグの作製が容易となったり、積層板の反りの低減効果の低下を抑制したりすることができる。
【0139】
また、ガラス繊維基材の使用枚数は、一枚に限らず、薄い繊維基材を複数枚重ねて使用することも可能である。なお、繊維基材を複数枚重ねて使用する場合は、その合計の厚みが上記の範囲を満たせばよい。
【0140】
無機繊維基材を含有するプリプレグの構成材料や製造方法は、上述した有機繊維基材101を含有するプリプレグ100に準じた構成材料や製造方法を採用することができる。
【0141】
(積層板の製造方法)
つづいて、上記で得られたプリプレグ100を用いた積層板の製造方法について説明する。プリプレグ100を用いた積層板の製造方法は、とくに限定されないが、例えば以下の通りである。
得られたプリプレグから支持基材を剥離後、プリプレグの外側の上下両面または片面に金属箔を重ね、ラミネーター装置やベクレル装置を用いて高真空条件下でこれらを接合する、あるいはそのままプリプレグの外側の上下両面または片面に金属箔を重ねる。
つぎに、プリプレグに金属箔を重ねたものを真空プレス機で加熱、加圧するかあるいは乾燥機で加熱することにより、積層板を得ることができる。
金属箔の厚みは、例えば、0.5μm以上18μm以下であり。好ましくは1μm以上12μm以下である。金属箔の厚みが上記範囲内であると、微細パターンが形成可能であり、積層板をより薄型化することができる。
【0142】
金属箔を構成する金属としては、例えば、銅および銅系合金、アルミおよびアルミ系合金、銀および銀系合金、金および金系合金、亜鉛および亜鉛系合金、ニッケルおよびニッケル系合金、錫および錫系合金、鉄および鉄系合金、コバール(商標名)、42アロイ、インバーまたはスーパーインバーなどのFe−Ni系の合金、WまたはMoなどが挙げられる。また、キャリア付電解銅箔なども使用することができる。
【0143】
上記加熱処理する方法としては、とくに限定されないが、例えば、熱風乾燥装置、赤外線加熱装置、加熱ロール装置、平板状の熱盤プレス装置などを用いて実施することができる。熱風乾燥装置または赤外線加熱装置を用いた場合は、上記接合したものに実質的に圧力を作用させることなく実施することができる。また、加熱ロール装置または平板状の熱盤プレス装置を用いた場合は、上記接合したものに所定の圧力を作用させることで実施することができる。
【0144】
加熱処理する際の温度は、とくに限定されないが、用いる樹脂が溶融し、かつ樹脂の硬化反応が急速に進行しないような温度域とすることが好ましい。樹脂が溶融する温度としては好ましくは120℃以上であり、より好ましくは150℃以上である。また、樹脂の硬化反応が急速に進行しない温度としては好ましくは250℃以下、より好ましくは230℃以下である。
【0145】
また、加熱処理する時間は用いる樹脂の種類などにより異なるため、とくに限定されないが、例えば、30分間以上180分間以下とすることができる。
また、加圧する圧力は、とくに限定されないが、例えば、0.2MPa以上5MPa以下が好ましく、2MPa以上4MPa以下がより好ましい。
【0146】
また、金属箔の代わりに、本実施形態における積層板の少なくとも一方の面にフィルムを積層してもよい。フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、フッ素系樹脂などを挙げることができる。
【0147】
(プリント配線基板および半導体パッケージ)
つづいて、本実施形態におけるプリント配線基板および半導体パッケージ200について説明する。
積層板213は、図2に示すような半導体パッケージ200に用いることができる。プリント配線基板および半導体パッケージ200の製造方法としては、例えば、以下のような方法がある。
積層板213に層間接続用のスルーホール215を形成し、サブトラクティブ工法、セミアディティブ工法などにより配線層を作製する。その後、必要に応じてビルドアップ層(図2では図示しない)を積層して、アディティブ工法により層間接続および回路形成する工程を繰り返す。そして、必要に応じてソルダーレジスト層201を積層して、上記に準じた方法で回路形成することにより、プリント配線基板を得ることができる。ここで、一部あるいは全てのビルドアップ層およびソルダーレジスト層201は繊維基材を含んでも構わないし、含まなくても構わない。
【0148】
つぎに、ソルダーレジスト層201全面にフォトレジストを塗布した後に、フォトレジストの一部を除去してソルダーレジスト層201の一部を露出させる。なお、ソルダーレジスト層201には、フォトレジストの機能を持ったレジストを使用することもできる。この場合は、フォトレジストの塗布の工程を省略できる。つぎに、露出したソルダーレジスト層201の除去をおこなって、開口部209を形成する。
【0149】
つづいて、リフロー処理をおこなうことによって、半導体素子203を配線パターンの一部である接続端子205上に半田バンプ207を介して固着させる。その後、半導体素子203、半田バンプ207などを封止材211で封止することによって、図2に示すような半導体パッケージ200を得ることができる。
【0150】
(半導体装置)
つづいて、本実施形態における半導体装置300について説明する。
半導体パッケージ200は、図3に示すような半導体装置300に用いることができる。半導体装置300の製造方法としてはとくに限定されないが、例えば、以下のような方法がある。
はじめに、得られた半導体パッケージ200のソルダーレジスト層201の開口部209に半田ペーストを供給し、リフロー処理をおこなうことによって半田バンプ301を形成する。また、半田バンプ301は、あらかじめ作製した半田ボールを開口部209に取り付けることによっても形成できる。
【0151】
つぎに、実装基板303の接続端子305と半田バンプ301とを接合することによって半導体パッケージ200を実装基板303に実装し、図3に示した半導体装置300が得られる。
【0152】
以上説明したように、本実施形態によれば、半田耐熱性に優れ、かつ、リフローなどの加熱時に生じる反りが抑制された積層板213用プリプレグ100を提供することができる。とくに、プリプレグ100を使用した積層板213は厚みが薄い場合でも、反りの発生を効果的に抑制することができる。そして、積層板213を使用したプリント配線基板は、半田耐熱性、反り、寸法安定性などの機械的特性、成形性に優れたものである。したがって、本実施形態における積層板213は、高密度化、高多層化が要求されるプリント配線板など、信頼性が要求される用途に好適に用いることができる。
【0153】
また、本実施形態における積層板213は、上述の回路加工およびそれ以後の各プロセスにおいても反りの発生が低減される。そのため、半導体パッケージ200は、反りおよびクラックが発生しにくく、薄型化が可能である。したがって、半導体パッケージ200を含む半導体装置300は、接続信頼性を向上させることができる。
【0154】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。例えば、本実施形態では、プリプレグが1層の場合を示したが、プリプレグを2層以上積層したものを用いて積層板を作製してもよい。
また、本実施形態における積層板にビルドアップ層をさらに積層した構成を取ることもできる。
【実施例】
【0155】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例では、部はとくに特定しない限り質量部を表す。また、それぞれの厚みは平均膜厚で表わされている。
【0156】
実施例および比較例では、以下の原料を用いた。
エポキシ樹脂A:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC社製、HP−5000)
エポキシ樹脂B:ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(DIC社製、HP−6000)
シアネート樹脂:ノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン社製、プリマセットPT−30)
フェノール樹脂:ナフトールアラルキル型フェノール樹脂(東都化成社製、SN−485)
【0157】
充填材A:球状溶融シリカ(アドマテックス社製、SO−32R、平均粒径1μm)
充填材B:球状溶融シリカ(トクヤマ社製、NSS−5N、平均粒径75nm)
カップリング剤A:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製、A187)
硬化触媒:上記一般式(IX)に該当するオニウム塩化合物のリン系触媒(住友ベークライト社製、C05−MB)
【0158】
有機繊維基材AI:ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール樹脂繊維織布(旭化成イーマテリアルズ社製、054Z−HM、スタイル054Z、フィラメント径:12μm、フィラメント数:33本/束、縦55本/25mm、横55本/25mm、坪量:23.8g/m、表面処理:シランカップリング剤処理、線膨張係数(25〜150℃):−6ppm/℃、ヤング率270GPa、繊維基材の厚み43μm、誘電率:3.0(0.1GHz))
【0159】
有機繊維基材AII:ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール樹脂繊維織布(旭化成イーマテリアルズ社製、116Z−HM、スタイル116Z、フィラメント径:12μm、フィラメント数:66本/束、縦49本/25mm、横49本/25mm、坪量:43.3g/m、通気度:20.8cm/cm/sec、表面処理:シランカップリング剤処理、線膨張係数(25〜150℃):−6ppm/℃、ヤング率270GPa、繊維基材厚み65μm、誘電率:3.0(0.1GHz))
【0160】
有機繊維基材AIII:ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール樹脂繊維織布(旭化成イーマテリアルズ社製、273Z−HM、スタイル273Z、フィラメント径:12μm、フィラメント数:132本/束、縦41本/25mm、横41本/25mm、坪量:90.3g/m、表面処理:シランカップリング剤処理、線膨張係数(25〜150℃):−6ppm/℃、ヤング率270GPa、繊維基材厚み126μm、誘電率:3.0(0.1GHz))
【0161】
有機繊維基材B:ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール樹脂繊維織布(旭化成イーマテリアルズ社製、116Z−AS、スタイル116Z、フィラメント径:12μm、フィラメント数:66本/束、縦49本/25mm、横49本/25mm、坪量:43.3g/m、通気度:20.8cm/cm/sec、表面処理:シランカップリング剤処理、線膨張係数(25〜150℃):−6ppm/℃、ヤング率180GPa、繊維基材厚み65μm、誘電率:3.0(0.1GHz))
【0162】
有機繊維基材C:アラミド樹脂繊維織布(旭化成イーマテリアルズ社製、086T、スタイル086T、フィラメント径:12μm、フィラメント数:48本/束、縦55本/25mm、横55本/25mm、坪量:34.7g/m、通気度:25cm/cm/sec、表面処理:シランカップリング剤処理、線膨張係数(25〜150℃):−6ppm/℃、ヤング率73GPa、繊維基材厚み60μm、誘電率:3.6(1GHz))
【0163】
(実施例1)
以下の手順を用いて、本実施形態における積層板を作製した。
【0164】
1−1.樹脂組成物のワニスAの調製
エポキシ樹脂Aとしてクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC社製、HP−5000)13.7質量部、シアネート樹脂としてノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン社製、プリマセットPT−30)13.7質量部、をメチルエチルケトンに溶解、分散させた。さらに、充填材Aとして球状溶融シリカ(アドマテックス社製、SO−32R、平均粒径1μm)、64.7質量部、充填剤Bとして球状溶融シリカ(トクヤマ社製、NSS−5N、平均粒径75nm)7.0質量部、とカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製、A187)0.4質量部、硬化触媒としてオニウム塩化合物のリン系触媒(住友ベークライト社製、C05−MB)0.5質量部、を添加して、高速撹拌装置を用いて30分間撹拌して、不揮発分70質量%となるように調整し、樹脂組成物のワニス(樹脂ワニスA)を調製した。
【0165】
2−1.有機繊維基材AIのアニール処理
有機繊維基材を下記の装置内に配置し、下記の条件でアニール処理をおこなった。
装置:クリーンオーブン(光洋サーモシステム社製、CLO−21−CDH−S)
雰囲気:窒素雰囲気
温度:250℃
時間:1時間
【0166】
2−2.有機繊維基材の熱重量分析
ここで、示差熱熱重量同時測定装置(セイコ−インスツルメンツ社製、TG/DTA6200型)を用いて、上記アニール処理した有機繊維基材AIについて下記の2つの工程を順次おこない、下記式(1)〜(2)から重量減少率A、Bをそれぞれ算出した。また得られた重量減少率の差(B−A)を算出した。
予備乾燥工程:乾燥窒素気流下、110℃で1時間保持した際の重量減少量aを測定した。
測定工程:乾燥窒素気流下、昇温速度10℃/分の条件により25℃から300℃まで昇温した際の重量減少量bを測定した。
A[%]=100×a/W (1)
B[%]=100×b/(W−a) (2)
ここで、(A)予備乾燥工程前の有機繊維基材の重量をWとし、(A)予備乾燥工程での重量減少量をaとし、(B)測定工程での重量減少量をbとする。
【0167】
3.プリプレグの製造
アニール処理した有機繊維基材AIに得られた樹脂ワニスAを含浸し、150℃の加熱炉で2分間乾燥して、プリプレグを得た。このとき、有機繊維基材層の厚みが43μmであり、当該有機繊維基材層の両面には同じ厚さ(3.5μm)の樹脂層が設けられ、厚みは50μmであった。
【0168】
4.積層板の製造
得られたプリプレグの両面に厚さ12μmの銅箔(古河電工社製、GST-12)を配置し、220℃、3MPaで2時間加熱加圧成形することにより、積層板を得た。得られた積層板の絶縁層の厚みは、50μmであった。
【0169】
5.プリント配線板の製造
上記で得られた積層板の両面に回路パターン(残銅率70%、L/S=50/50μm)を形成した。次いで、回路表面にソルダーレジスト(太陽インキ社製、PSR800/AUS410)を形成し、半導体素子との接続端子部を露光・現像で開口露出させた。次いで、開口部の接続端子上へ、無電解ニッケルめっき、無電解金めっき、および半田めっきを形成した。得られた基板を14mm×14mmサイズに切断し、半導体パッケージ用のプリント配線板を得た。
【0170】
6.半導体パッケージの製造
半導体パッケージ用のプリント配線板上に、半田バンプを有する半導体素子(TEGチップ、サイズ8mm×8mm、厚み100μm)を、フリップチップボンダー装置により、加熱圧着により搭載した。つぎに、IRリフロー炉で半田バンプを溶融接合した後、液状封止樹脂(住友ベークライト社製、CRP−X4120B3)を充填し、当該液状封止樹脂を硬化させることで半導体パッケージ(以下、PKGとも呼ぶ。)を得た。なお、液状封止樹脂は、温度150℃、120分の条件で硬化させた。また、半導体素子の半田バンプは、Sn/Ag/Cu組成の鉛フリー半田で形成されたものを用いた。
【0171】
(実施例2〜5、比較例1〜4)
実施例2〜5および比較例1〜4では、有機繊維基材の種類、アニール処理の有無、絶縁層の厚みを表1および表2のように変えた以外は実施例1と同様の方法で積層板、プリント配線基板および半導体パッケージを製造した。
【0172】
(実施例6)
実施例6では、樹脂ワニスの種類を下記の樹脂ワニスBに変え、さらに有機繊維基材の種類、アニール処理の有無、絶縁層の厚みを表2のように変えた以外は実施例1と同様の方法で積層板、プリント配線基板および半導体パッケージを製造した。
【0173】
(樹脂組成物のワニスBの調製)
エポキシ樹脂Bとしてナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(DIC社製、HP−6000)10.8重量部、シアネート樹脂としてノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン社製、プリマセットPT−30)14.0重量部、フェノール樹脂としてナフトールアラルキル型フェノール樹脂(東都化成社製、SN−485)5.0重量部をメチルエチルケトンに溶解、分散させた。さらに、充填材Aとして球状シリカ(アドマテックス社製、SO−32R、平均粒径1μm)65.0重量部、充填材Bとして球状シリカ(トクヤマ社製、NSS−5N、平均粒径75nm)5.0重量部、カップリング剤Aとしてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GE東芝シリコーン社製、A187)0.2重量部を添加して、高速撹拌装置を用いて30分間撹拌して、不揮発分50重量%となるように調整し、樹脂組成物のワニス(樹脂ワニスB)を調製した。
【0174】
(評価)
実施例および比較例により得られた積層板および半導体パッケージについて、つぎの各評価をおこなった。各評価を以下に示す。また、得られた結果を表1および表2に示す。
【0175】
(1)貯蔵弾性率およびガラス転移温度の測定
貯蔵弾性率およびガラス転移温度の測定は、動的粘弾性測定(DMA)でおこなった。
得られた積層板から8mm×40mmのテストピースを切り出し、TAインスツルメント製DMA2980を用いて昇温速度5℃/min、周波数1Hzでおこない、250℃での貯蔵弾性率を算出した。なお、ガラス転移温度は、1Hzにおいてtanδが最大値を示す温度とした。
【0176】
(2)線膨張係数
実施例および比較例で作製した積層板4mm×15mmのテストピースを切り出し、TMA(TAインスツルメント社製、Q400)を用いて10℃/分の引っ張り条件で0℃〜300℃まで昇温させ、50〜150℃における面方向の線膨張係数を測定した。
【0177】
(3)半田耐熱性
50mm×50mm角のサンプルの片面の半分以外の全銅箔をエッチング除去し、プレッシャークッカー試験機(エスペック社製)を用いて、121℃、2気圧で2時間処理した。次いで、260℃の半田槽に60秒間浸漬させて、外観変化の異常の有無を目視にて観察した。
(○:異常なし、×:膨れ、剥がれが発生)
【0178】
(4)PKGの反り(室温、および室温から260℃までの変化量)
PKGの反り量(半導体パッケージの反り)は、チップ面を加熱冷却可能なチャンバー上に置いて、25℃と260℃の雰囲気下で、BGA面から基板(サイズ:14mm×14mm)上の13mm×13mm部分での室温(25℃)における反り量、および25℃から260℃までの反り量を測定した。なお、サンプルは上記実施例および比較例で作製した半導体パッケージを用いた。
【0179】
【表1】

【0180】
【表2】

【0181】
表1および表2からわかるように、実施例1〜6の積層板は、比較例1〜4の積層板に比べて、ガラス転移温度および弾性率を高く保持したまま、積層板の熱膨張率を低下させることができた。その結果、実施例1〜6の積層板は、比較例1〜4の積層板に比べて、半田耐熱性が優れていた。また、実施例1〜6の半導体パッケージは、比較例1〜4の半導体パッケージに比べて、反りが抑制されていた。
【0182】
本発明は以下の態様も取り得る。
【0183】
[1]
50℃から150℃までの線膨張係数が0ppm/℃以下の有機繊維基材に熱硬化性樹脂を含浸してなるプリプレグであって、
上記有機繊維基材は、熱重量測定装置により、
(A)当該有機繊維基材を110℃で1時間保持して重量減少率Aを測定する予備乾燥工程と、
(B)当該有機繊維基材を25℃から300℃に10℃/分で昇温して重量減少率Bを測定する測定工程と、
を順次おこなった際の、
B−Aにより算出される値が0.3%未満である、プリプレグ。
【0184】
[2]
上記[1]に記載のプリプレグにおいて、
上記有機繊維基材が、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール、芳香族ポリエステル樹脂、全芳香族ポリアミド、およびポリイミドベンズオキサゾール、より選ばれる少なくとも1種以上の耐熱性樹脂から構成される、プリプレグ。
【0185】
[3]
上記[1]または[2]に記載のプリプレグにおいて、
上記有機繊維基材を構成する有機繊維のヤング率が、70GPa以上400GPa以下である、プリプレグ。
【0186】
[4]
上記[1]乃至[3]いずれか一つに記載のプリプレグにおいて、
上記有機繊維基材を構成する有機繊維の1GHzでの誘電率が、2.5以上4.5以下である、プリプレグ。
【0187】
[5]
上記[1]乃至[4]いずれか一つに記載のプリプレグの硬化体を含む、積層板。
【0188】
[6]
上記[5]に記載の積層板において、
当該積層板の動的粘弾性測定による周波数1Hzでのガラス転移温度が、180℃以上350℃以下である、積層板。
【0189】
[7]
上記[5]または[6]に記載の積層板において、
当該積層板の面方向の50℃から150℃までの線膨張係数が、−10ppm/℃以上5ppm/℃以下である、積層板。
【0190】
[8]
上記[5]乃至[7]いずれか一つに記載の積層板において、
当該積層板の250℃での動的粘弾性測定による貯蔵弾性率が、5GPa以上50GPa以下である、積層板。
【0191】
[9]
上記[5]乃至[8]いずれか一つに記載の積層板を含む回路基板に半導体素子が搭載された、半導体パッケージ。
【0192】
[10]
上記[9]に記載の半導体パッケージを含む、半導体装置。
【符号の説明】
【0193】
100 プリプレグ
101 有機繊維基材
103 樹脂層
200 半導体パッケージ
201 ソルダーレジスト層
203 半導体素子
205 接続端子
207 半田バンプ
209 開口部
211 封止材
213 積層板
215 スルーホール
300 半導体装置
301 半田バンプ
303 実装基板
305 接続端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
50℃以上150℃以下の範囲における線膨張係数が0ppm/℃以下の有機繊維基材に、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物を含浸してなるプリプレグであって、
前記有機繊維基材は、熱重量測定装置により、
(A)前記有機繊維基材を110℃で1時間保持して重量減少率Aを測定する予備乾燥工程と、
(B)前記有機繊維基材を25℃から300℃に10℃/分で昇温して重量減少率Bを測定する測定工程と、
を順次おこなった際の、
B−Aにより算出される値が0.30%以下である、プリプレグ。
【請求項2】
請求項1に記載のプリプレグにおいて、
前記有機繊維基材を構成する有機繊維が、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂、およびポリイミドベンズオキサゾール樹脂、からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の耐熱性樹脂から構成される、プリプレグ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプリプレグにおいて、
前記有機繊維基材は織布基材である、プリプレグ。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか一項に記載のプリプレグにおいて、
前記有機繊維基材を構成する有機繊維のヤング率が、70GPa以上400GPa以下である、プリプレグ。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれか一項に記載のプリプレグにおいて、
前記有機繊維基材を構成する有機繊維の1GHzでの誘電率が、2.5以上4.5以下である、プリプレグ。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれか一項に記載のプリプレグの硬化体を含む、積層板。
【請求項7】
請求項1乃至5いずれか一項に記載のプリプレグの硬化体の少なくとも一方の面に金属箔が積層された、積層板。
【請求項8】
請求項6または7に記載の積層板において、
当該積層板の動的粘弾性測定による周波数1Hzでのガラス転移温度が、180℃以上350℃以下である、積層板。
【請求項9】
請求項6乃至8いずれか一項に記載の積層板において、
当該積層板の面方向の50℃以上150℃以下の範囲における線膨張係数が、−10ppm/℃以上5ppm/℃以下である、積層板。
【請求項10】
請求項6乃至9いずれか一項に記載の積層板において、
当該積層板の250℃での動的粘弾性測定による貯蔵弾性率が、5GPa以上50GPa以下である、積層板。
【請求項11】
請求項6乃至10いずれか一項に記載の積層板を回路加工してなる、プリント配線基板。
【請求項12】
請求項11に記載のプリント配線基板に半導体素子が搭載された、半導体パッケージ。
【請求項13】
請求項12に記載の半導体パッケージを含む、半導体装置。
【請求項14】
50℃以上150℃以下の範囲における線膨張係数が0ppm/℃以下の有機繊維基材を準備する工程と、
前記有機繊維基材について、
熱重量測定装置により、
前記有機繊維基材を110℃で1時間保持して測定する重量減少率Aと、
前記有機繊維基材を25℃から300℃に10℃/分で昇温して測定する重量減少率Bと、
から算出される、B−Aを0.30%以下に調整する工程と、
前記有機繊維基材に熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物を含浸させ、前記樹脂組成物を半硬化する工程と、
を含む、プリプレグの製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載のプリプレグの製造方法において、
前記有機繊維基材をアニール処理することにより、前記有機繊維基材のB−Aを0.30%以下に調整する、プリプレグの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−53303(P2013−53303A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−172039(P2012−172039)
【出願日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】