説明

プリプレグ、金属張積層板、プリント配線板及び半導体装置

【課題】Cuワイヤーを使用しても高温高湿条件下での信頼性(耐熱耐湿信頼性)に優れる半導体装置を与えるプリプレグ、該プリプレグを用いた金属張積層板及びプリント配線板、並びに該プリント配線板を用いた半導体装置を提供する。
【解決手段】(a)熱硬化性樹脂、(b)特定組成のハイドロタルサイト化合物、(c)モリブデン酸亜鉛及び(d)酸化ランタンを含むBステージ化樹脂組成物と基材とを備え、該組成物が該基材に含浸されているプリプレグ;1層の又は積層された複数層の上記プリプレグとその片面又は両面に設けられた金属箔とを備える金属張積層板;1層の又は積層された複数層の上記プリプレグとその片面又は両面に設けられ金属箔からなる配線パターンとを備えるプリント配線板;該プリント配線板と、その上に載置された半導体素子と、該プリント配線板の配線パターンと該半導体素子とを電気的に接続するCuワイヤーと、を備える半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリプレグ、積層板、プリント配線板、及びこれらを用いた半導体装置に関する。なお、本発明における積層板は、その片面又は両面が金属箔で被覆されている積層板、すなわち金属張積層板を含む。
【背景技術】
【0002】
近年、電気絶縁用のプリプレグ、積層板、及びプリント配線板は、半導体装置の小型軽量化及び高機能化に伴い、その使用量が増加している。半導体素子上の端子とプリント配線板上の回路はこれまでAuワイヤー、Auバンプ又は半田ボールで接続されていたが、近年、低コスト化目的からCuワイヤーが使われるケースが増えている。
しかし、高温高湿条件下のバイアス試験(HAST)においてCuワイヤーを使用した場合、Cuワイヤーと半導体素子上のAlパッドとの接合部においてオープン不良の発生する例が報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】2010 Electronic Components and Technology Conference 1729-1732
【非特許文献2】第12回半導体パッケージング技術展(ICP2011)、セミナー資料、タイトル「銅ワイヤパッケージの信頼性と封止材」
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-59962号公報
【0005】
半導体装置内に含まれる陰イオン性不純物がAl又はCu/Al金属間化合物の腐食を引き起こすと考えられており、半導体封止材中の脱ハロゲン系難燃剤による効果が報告されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、Cuワイヤーを使用しても高温高湿条件下での信頼性(耐熱耐湿信頼性)に優れる半導体装置を与えるプリプレグ、該プリプレグを用いた金属張積層板及びプリント配線板、並びに該プリント配線板を用いた半導体装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に向けて鋭意検討した結果、半導体装置に使用されるプリント配線板中のイオン性不純物を低減し、該プリント配線板の水抽出物のpHを適正にコントロールすることにより、封止樹脂の種類によらず高温高湿条件下での電気的不良が低減されることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は第一に、
(a)熱硬化性樹脂 100質量部、
(b)下記式(1):
MgxAly(OH)2x+3y-2z(CO3z・mH2O (1)
(式中、x及びyは正数であり、zは0又は正数であり、かつ、x、y及びzは0<y/x≦1及び0≦z/y<1.5を満たし、mは正数を示す。)
で表されるハイドロタルサイト化合物 1〜5質量部、
(c)モリブデン酸亜鉛 0.5質量部以上、及び
(d)酸化ランタン 0.2〜1質量部
を含むBステージ化した(即ち、半硬化状態の)樹脂組成物と、基材とを備え、該樹脂組成物が該基材に含浸されているプリプレグを提供する。
【0009】
本発明は第二に、
1層の又は積層された複数層の上記プリプレグと、
該プリプレグの片面又は両面に設けられた金属箔と
を備える金属張積層板を提供する。
【0010】
本発明は第三に、
1層の又は積層された複数層の上記プリプレグと、
該プリプレグの片面又は両面に設けられ、金属箔からなる配線パターンと
を備えるプリント配線板を提供する。
【0011】
本発明は第四に、
上記プリント配線板と、
該プリント配線板上に載置された半導体素子と、
該プリント配線板の配線パターンと該半導体素子とを電気的に接続するCuワイヤーと
を備える半導体装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
(b)成分のハイドロタルサイト化合物はpH調整と塩化物イオン、有機酸イオン、硫酸イオン、及び硝酸イオンの捕捉とに優れ、(c)成分のモリブデン酸亜鉛は硫酸イオンの捕捉に優れ、(d)成分の酸化ランタンは硫酸イオン及びリン酸イオンの捕捉に優れる。本発明のプリプレグはこれらの成分を含むので、該プリプレグが用いられた本発明の半導体装置では、高温高湿条件下で陰イオン性不純物が効果的に捕捉され、Cuワイヤーを使用していても電気的不良が起こりにくい。よって、本発明のプリプレグは電気絶縁用に適している。本発明のプリプレグによれば、安価なCuワイヤーを半導体装置で使用することができるので、Auワイヤー等の省資源化を図ることができ、また、コストを削減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[(a)熱硬化性樹脂]
(a)成分の熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ビスマレイミド化合物等の、エポキシ基、マレイミド基又はこれらの両方を有する熱硬化性樹脂を用いることができる。(a)成分は1種単独で使用することも2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0014】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン、グリシジルエステル樹脂、グリシジルアミン樹脂、複素環式エポキシ樹脂(例えば、トリグリシジルイソシアヌレート、ジグリシジルヒンダトインなど)、及びこれらのエポキシ樹脂を1種又は2種以上の反応性モノマーで変性した変性エポキシ樹脂が使用できる。エポキシ樹脂は、1種単独で使用することも2種以上を適宜組み合せて使用することもできる。
【0015】
ビスマレイミド化合物は、特に限定されるものではないが、その代表的な例としては、ビス(3−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチルー4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5−ジエチルー4−マレイミドフェニル)メタン、これらビスマレイミド化合物のプレポリマー、又はこれらビスマレイミド化合物とアミン化合物とのプレポリマーなどが挙げられる。ビスマレイミド化合物は、1種単独で使用することも2種以上を適宜組み合せて使用することもできる。
【0016】
(a)成分の熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物を半硬化又は硬化させるためには、通常、硬化剤が該樹脂組成物に添加される。該硬化剤は、熱硬化性樹脂の硬化剤として用いられるものであれば特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、ビスマレイミド化合物、又はその両方の硬化促進剤として用いられるものが挙げられ、より具体的には、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、シアン酸エステル化合物等が挙げられる。中でも、電気絶縁性ワニス用に通常用いられているものが好ましい。硬化剤は1種単独で使用することも2種以上を組み合せて使用することもできる。
【0017】
アミン系硬化剤は、通常、エポキシ樹脂の硬化促進剤として用いられる。アミン系硬化剤としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジシアンジアミド、テトラメチルグアニジン、トリエタノールアミンなどの鎖状脂肪族アミン;イソホロンジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノ−3−メチルジシクロヘキシル)メタン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンなどの環状脂肪族アミン;キシレンジアミン、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族アミンを使用することができる。なかでも、ジシアンジアミドが硬化剤の硬化性及び硬化物の物性の点で好ましい。アミン系硬化剤は1種単独で使用することも2種以上を適宜組み合せて使用することもできる。アミン系硬化剤の配合量は、(a)成分の熱硬化性樹脂中のエポキシ基1モルに対して、該アミン系硬化剤中の窒素原子のモル数が好ましくは0.1〜1.0モル、より好ましくは0.3〜0.6モルとなる量である。
【0018】
フェノール系硬化剤は、通常、エポキシ樹脂の硬化促進剤として用いられる。フェノール系硬化剤としては、ビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、フェノールアラルキル、ビフェニルアラルキル及びこれらのアルキル基置換体等が挙げられる(前記アルキル基の例:メチル基、エチル基等)。フェノール系硬化剤は1種単独で使用することも2種以上を組み合せて使用することもできる。フェノール系硬化剤の配合量は、(a)成分の熱硬化性樹脂中のエポキシ基1モルに対して、該フェノール系硬化剤中のフェノール性水酸基のモル数が好ましくは0.5〜2.0モル、より好ましくは0.7〜1.5モルとなる量である。
【0019】
酸無水物系硬化剤は、通常、エポキシ樹脂の硬化促進剤として用いられる。酸無水物系硬化剤としては、無水ヘキサヒドロフタル酸(HPA)、無水テトラヒドロフタル酸(THPA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、無水クロレンド酸(HET)、無水ナディック酸(NA)、無水メチルナディック酸(MNA)、無水ドデシニルコハク酸(DDSA)、無水フタル酸(PA)、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(MeHPA)、無水マレイン酸等が挙げられる。酸無水物系硬化剤は1種単独で使用することも2種以上を組み合せて使用することもできる。酸無水物系硬化剤の配合量は、(a)成分の熱硬化性樹脂中のエポキシ基1モルに対して、該酸無水物系硬化剤中の酸無水物基のモル数が好ましくは0.5〜2.0モル、より好ましくは0.6〜1.0モルとなる量である。
【0020】
シアン酸エステル化合物は、通常、ビスマレイミド化合物の硬化促進剤として用いられる。シアン酸エステル化合物は、1分子中に2個以上のシアナト基を有するシアン酸エステル化合物であれば、特に限定されるものではない。シアン酸エステル化合物の具体例としては、1,3-又は1,4-ジシアナトベンゼン、1,3,5-トリシアナトベンゼン、1,3-、1,4-、1,6-、1,8-、2,6-又は2,7-ジシアナトナフタレン、1,3,6-トリシアナトナフタレン、4,4-ジシアナトビフェニル、ビス(4-ジシアナトフェニル)メタン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン、ビス(4-シアナトフェニル)エーテル、ビス(4-シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4-シアナトフェニル)スルホン、およびノボラックとハロゲン化シアンとの反応により得られるシアン酸エステル化合物などが挙げられる。また、これらシアン酸エステル化合物(シアン酸エステルモノマー)のシアナト基が三量化することによって形成されるトリアジン環を有する重量平均分子量500〜5,000 のプレポリマーが、より好適に使用される。このプレポリマーは、上記のシアン酸エステルモノマーを、例えば鉱酸、ルイス酸などの酸類;ナトリウムアルコラート、第三級アミン類などの塩基;炭酸ナトリウムなどの塩類などを触媒として重合させることにより得られる。シアン酸エステル化合物は1種単独で使用することも2種以上を適宜組み合せて使用することもできる。シアン酸エステル化合物の配合量は、(a)成分の熱硬化性樹脂中のマレイミド基1モルに対して、該シアン酸エステル化合物中のシアナト基のモル数が好ましくは0.1〜1.0モル、より好ましくは0.3〜0.6モルとなる量である。
【0021】
[(b)ハイドロタルサイト化合物]
(b)成分は下記式(1):
MgxAly(OH)2x+3y-2z(CO3z・mH2O (1)
(式中、x及びyは正数であり、zは0又は正数であり、かつ、x、y及びzは0<y/x≦1及び0≦z/y<1.5を満たし、mは正数を示す。)
で表されるハイドロタルサイト化合物である。xは好ましくは2〜5の正数である。yは好ましくは1〜3の正数である。zは好ましくは0〜2の正数である。更に、x、y及びzは0.4≦y/x≦0.8及び0≦z/y≦0.5を満たすことが好ましい。mは好ましくは1〜4の正数である。(b)成分は1種単独で使用することも2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0022】
(b)成分のハイドロタルサイト化合物の添加量は熱硬化性樹脂100質量部に対し1〜5質量部であり、1〜3質量部であることが望ましい。該添加量が1質量部未満では十分なpH調整能力および不純物捕捉能力が得られない。該添加量が5質量部を超えると、pH調整能力、不純物捕捉能力、又はその両方が過剰となり、かつ、ハイドロタルサイト化合物自身の吸湿量が増加し、得られる半導体装置の耐湿リフロー特性が低下する。
【0023】
[(c)モリブデン酸亜鉛]
(c)成分のモリブデン酸亜鉛の添加量は、(a)成分の熱硬化性樹脂100質量部に対し0.5質量部以上であり、3質量部以上であることが望ましい。該添加量が0.5質量部未満では十分な不純物捕捉能力が得られない。該添加量の上限は特に制限されるものではないが、得られる樹脂組成物を用いて製造される積層板及びプリント配線板の接着性及び加工性が維持されやすいという観点から、前記上限が樹脂組成物全体の5〜50質量%に該当する量であることが好ましい。該上限は、例えば、(a)成分の熱硬化性樹脂100質量部に対し100質量部、より好ましくは50質量部である。
【0024】
[(d)酸化ランタン]
(d)成分の酸化ランタンの添加量は熱硬化性樹脂100質量部に対し0.2〜1質量部であり、0.3〜0.6質量部であることが望ましい。該添加量が0.2質量部未満では十分な不純物捕捉能力が得られない。該添加量が1質量部を超えると、酸化ランタン自身の吸湿量が増加し、得られる半導体装置の耐湿リフロー特性が低下する。
【0025】
[その他の成分]
本発明で用いられる樹脂組成物は、該樹脂組成物から製造されるプリプレグの難燃性をより高め、剛性を向上させ、熱膨張を低減させる目的で、無機質充填剤を含有することもできる。その含有量は、前記目的が達成されやすいという観点、並びに、該樹脂組成物から製造される積層板及びプリント配線板の接着性及び加工性が維持されやすいという観点から、有機溶剤を除く樹脂組成物の全成分、すなわち無機質充填剤を含む樹脂組成物の全固形分の10〜50質量%であることが好ましい。無機質充填剤は積層板及びプリント配線板の特性を劣化させないものであれば特に限定されず、例えば、シリカ、タルク、マイカ、酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムなどが挙げられる。
無機質充填剤は1種単独で使用することも2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0026】
本発明で用いられる樹脂組成物には、無機質充填剤以外にも、積層板及びプリント配線板の特性を低下させない限り、特に制限なく、難燃剤、顔料、接着助剤、酸化防止剤、硬化促進剤および有機溶剤などのその他の成分を添加することができる。その他の成分は1種単独で使用することも2種以上を組み合わせて使用することもできる。その他の成分としては公知の化合物を使用することができ、例えば、硬化促進剤としては2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類を使用することができる。その他の成分の含有量は、積層板及びプリント配線板の特性を低下させない限り、特に制限されない。
【0027】
有機溶剤の種類と量は、樹脂組成物を均一に溶解することができ、プリプレグを作製するのに適正な粘度と揮発性を維持することができる種類と量であれば、特に限定されるものではない。なかでも、これらの要件を満たすという観点、並びに、価格、取扱い性及び安全性の観点から、好適な有機溶剤例としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、2−メトキシエタノール、2−メトキシプロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。有機溶剤は1種単独で使用することも2種以上を適宜組み合わせて使用することもできる。基材への含浸性を重視する場合には、沸点120〜200℃程度の2種以上の有機溶剤を併用することが好適である。有機溶剤の含有量は、有機溶剤を含む樹脂組成物全体の10〜50質量%であることが好ましい。
【0028】
[基材]
本発明のプリプレグに用いられる基材は、各種プリント配線板材料に用いられている公知の基材でよく、例えば、石英ガラス繊維;Eガラス繊維、Dガラス繊維、Sガラス繊維、NEガラス繊維、Tガラス繊維等の、石英ガラス繊維以外のガラス繊維;ガラス繊維以外の無機繊維;ポリイミド、ポリアミド、ポリエステルなどの有機繊維;又はこれらの2種以上の組み合わせからなる基材が挙げられる。基材の形状としては、織布、不織布、ロービング、チョップドストランドマット、サーフェシングマットなどが挙げられる。厚みは、特に制限されず、例えば、0.01〜0.3mm程度でよい。これら基材のなかでも強度と吸水性の点で石英ガラス繊維以外のガラス繊維又は石英ガラス繊維からなる基材が好ましい。
【0029】
[プリプレグ]
本発明のプリプレグは、前記(a)〜(d)成分並びに必要に応じ硬化剤及びその他の成分を含む樹脂組成物(Aステージの樹脂組成物)を前記基材に含浸し、該樹脂組成物を乾燥させてBステージ化することによって作製することができる。乾燥時の温度は、例えば、70〜150℃であり、乾燥時間は30〜60分程度でよい。
【0030】
[金属張積層板]
1層の前記プリプレグ又は複数層重ねた前記プリプレグの片面又は両面に、銅、アルミニウムなどの金属箔を配置し、積層成形することにより本発明の金属張積層板を製造することができる。使用する金属箔は、プリント配線板材料として用いられるものであれば、特に限定されない。積層成形の手法及び条件としては、通常のプリント配線板用積層板及び多層板の製造に用いられる手法及び条件が適用できる。例えば、多段プレス機、多段真空プレス機、連続成形機又はオートクレーブ成形機などを使用し、温度150〜300℃、圧力2〜100kgf/cm2、及び加熱時間0.05〜5時間という条件で成形を行うのが一般的である。
【0031】
[プリント配線板]
前記金属張積層板の金属箔の不要な部分をエッチングにより除去し、配線パターン(回路)を形成させることによって、本発明のプリント配線板を製造することができる。
前述のプリプレグ、積層板及びプリント配線板の製造においては、当該業界における通常の塗工工程、積層工程、回路加工工程等を適用することができる。このようにして得られた積層板およびプリント配線板は高耐熱性、高難燃性及び高信頼性を有する。
【0032】
[半導体装置]
上述のプリント配線板上に半導体素子を接着し、Cuワイヤーによって該プリント配線板の配線パターンと該半導体素子とを接続し、必要に応じ続いて封止樹脂により該半導体素子と該Cuワイヤーと該プリント配線板の一部又は全部とを封止し保護することにより本発明の半導体装置を得ることができる。
【実施例】
【0033】
以下に実施例および比較例を用いて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
実施例および比較例において、熱硬化性樹脂、ハイドロタルサイト化合物、モリブデン酸亜鉛、酸化ランタンおよびその他の配合化合物として、下記に示すものを用いた。
・エポキシ樹脂A:(株)DIC製、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、商品名:N−673(エポキシ当量210)
・エポキシ樹脂B:日本化薬(株)製、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、商品名:NC−3000H(エポキシ当量292)
・ビスマレイミド:KI化成(株)製、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、商品名:BMI-70
・シアネートエステル化合物:ハンツマン製、2,2-ビス(4-シアネートフェニル)プロパン、商品名:AroCy-L-10
・フェノール系硬化剤:(株)DIC製、フェノールノボラック樹脂、商品名:TD-2131
・アミン系硬化剤:日本カーバイド(株)製、ジシアンジアミド
・モリブデン酸亜鉛:日本シャーウィン・ウイリアムス(株)製、商品名:KEMGARD 911B
・ハイドロタルサイト化合物:協和化成(株)製、Mg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2O、商品名:DHT-4A-2
・酸化ランタン:信越化学工業(株)製
・トリフェニルホスフィン:北興化学工業(株)製、商品名:TPP
・2−エチル−4−メチルイミダゾール:四国化成工業(株)製、商品名:2E4MZ
・オクチル酸亜鉛(試薬グレード)
・水酸化アルミニウム:住友化学工業(株)製、商品名:CL-303
・シリカ:アドマテックス(株)製、商品名:SC-2500SQ
【0035】
(実施例1)
<プリプレグ、銅張積層板、及びプリント配線板の作製>
以下に示す組成を有する樹脂ワニスを調製し、厚みが0.1mmのEガラス織布に含浸させ、160℃で5分加熱することにより、半硬化状態の前記樹脂ワニスが前記Eガラス織布に含浸されているプリプレグを得た。
エポキシ樹脂A 60質量部
フェノール系硬化剤 40質量部
ハイドロタルサイト化合物 3質量部
モリブデン酸亜鉛 10質量部
酸化ランタン 0.5質量部
シリカ 80質量部
トリフェニルホスフィン 2質量部
溶剤(メチルエチルケトン) 300質量部
【0036】
次いでこのプリプレグを4枚重ね、更に18μmの電解銅箔を両面に配置し、180℃、90分、圧力3MPaの条件でプレスして、厚さ0.4mmの両面銅張積層板を作製した。この銅張積層板において、銅箔の不要な部分をエッチングにより除去し、両面に回路を形成させた。次いで該積層板の回路部分に貫通孔をあけその内側をメッキ加工し、両側の回路を導通させた。
【0037】
ソルダーレジスト(太陽インキ製、商品名:PSR-4000 AUS-308)を厚み25μmで該積層板の全面に塗布した後、80℃で30分間加熱し仮乾燥させた。次に、はんだ付けの必要な部分に塗布されているソルダーレジストは未硬化のままに保たれ、保護したい部分に塗布されているソルダーレジストは硬化するように、ネガフィルムを通して該積層板にUVを照射した。次いで、未硬化のソルダーレジストを現像液で除去し、露出した銅箔部を金メッキして、BGA用プリント配線板を得た。
【0038】
<プリント配線板水抽出物のpH及び不純物濃度の測定>
該プリント配線板を160℃にて20時間、水で抽出し、水抽出物のpH及び不純物濃度を測定した。
【0039】
<半導体装置の作製>
次に、5μm幅のAl配線が互いに5μmの間隔を空けて配置された試験・評価用半導体素子(10mm×10mm×0.3mm)をダイアタッチフィルム(信越化学工業(株)製、商品名:X-45-3024DT3、厚み:25μm)により130℃、0.5MPaの条件で上記プリント配線板に密着させたあと、175℃で2時間加熱して該ダイアタッチフィルムを硬化させた。
【0040】
半導体素子上のAlパッドとプリント基板上の金メッキ部とを2μm径、3.5mm長のCuワイヤーにより接続させた。その後、半導体素子、プリント配線板及びCuワイヤー全体がハロゲンフリーのエポキシ樹脂(信越化学工業(株)製、商品名:KMC-6000NHR-1)により封止されるよう、175℃、90秒、6.9MPaの条件でトランスファー成形を行い、180℃で4時間PMC(post-mold curing)を行って、24mm×24mm×1.2mmのサイズの半導体装置を得た。
【0041】
<耐湿信頼性試験>
作製した半導体装置に、121℃、2気圧の条件下、300h時間、10Vのバイアスを印加し、オープン不良が発生する割合を測定した。
【0042】
<MSL試験>
作製した半導体装置を30℃、70%RHの条件下、192時間保管後、MAX温度260℃のIRリフロー炉に通し、超音波探傷装置により、該半導体装置内部での剥離の有無を確認した。
【0043】
(実施例2)
実施例1において、樹脂ワニスの組成を以下のものに変更した以外は実施例1と同様にしてプリント配線基板及び半導体装置を作製し評価した。
エポキシ樹脂A 100質量部
アミン系硬化剤 4質量部
ハイドロタルサイト化合物 3質量部
モリブデン酸亜鉛 10質量部
酸化ランタン 0.5質量部
シリカ 80質量部
2−エチル−4−メチルイミダゾール 0.3質量部
溶剤(メチルエチルケトン) 300質量部
【0044】
(実施例3)
実施例1において、樹脂ワニスの組成を以下のものに変更した以外は実施例1と同様にしてプリント配線基板及び半導体装置を作製し評価した。
エポキシ樹脂A 60質量部
フェノール系硬化剤 40質量部
ハイドロタルサイト化合物 3質量部
モリブデン酸亜鉛 10質量部
酸化ランタン 0.5質量部
水酸化アルミニウム 40質量部
シリカ 40質量部
トリフェニルホスフィン 2質量部
溶剤(メチルエチルケトン) 300質量部
【0045】
(実施例4)
実施例1において、樹脂ワニスの組成を以下のものに変更した以外は実施例1と同様にしてプリント配線基板及び半導体装置を作製し評価した。
ビスマレイミド 70質量部
シアネートエステル化合物 30質量部
ハイドロタルサイト化合物 3質量部
モリブデン酸亜鉛 10質量部
酸化ランタン 0.5質量部
シリカ 80質量部
オクチル酸亜鉛 0.01質量部
溶剤(メチルエチルケトン) 300質量部
【0046】
(比較例1)
実施例1において、樹脂ワニスの組成を以下のものに変更した以外は実施例1と同様にしてプリント配線基板及び半導体装置を作製し評価した。
エポキシ樹脂A 60質量部
フェノール系硬化剤 40質量部
シリカ 80質量部
トリフェニルホスフィン 2質量部
溶剤(メチルエチルケトン) 300質量部
【0047】
(比較例2)
実施例1において、樹脂ワニスの組成を以下のものに変更した以外は実施例1と同様にしてプリント配線基板及び半導体装置を作製し評価した。
エポキシ樹脂A 100質量部
アミン系硬化剤 4質量部
シリカ 80質量部
2−エチル−4−メチルイミダゾール 0.3質量部
溶剤(メチルエチルケトン) 300質量部
【0048】
(比較例3)
実施例1において、樹脂ワニスの組成を以下のものに変更した以外は実施例1と同様にしてプリント配線基板及び半導体装置を作製し評価した。
エポキシ樹脂A 100質量部
アミン系硬化剤 4質量部
ハイドロタルサイト化合物 7質量部
モリブデン酸亜鉛 10質量部
酸化ランタン 3質量部
シリカ 80質量部
2−エチル−4−メチルイミダゾール 0.3質量部
溶剤(メチルエチルケトン) 300質量部
【0049】
(比較例4)
実施例1において、樹脂ワニスの組成を以下のものに変更した以外は実施例1と同様にしてプリント配線基板及び半導体装置を作製し評価した。
ビスマレイミド 70質量部
シアネートエステル化合物 30質量部
シリカ 80質量部
オクチル酸亜鉛 0.01質量部
溶剤(メチルエチルケトン) 300質量部
【0050】
表1及び2に試験結果を示す。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
以上の結果から、本発明のプリプレグが用いられた半導体装置では、高温高湿下での不純物の発生を抑制することができる。よって、本発明のプリプレグは、Cuワイヤーを使用した半導体装置の信頼性向上に有効である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)熱硬化性樹脂 100質量部、
(b)下記式(1):
MgxAly(OH)2x+3y-2z(CO3z・mH2O (1)
(式中、x及びyは正数であり、zは0又は正数であり、かつ、x、y及びzは0<y/x≦1及び0≦z/y<1.5を満たし、mは正数を示す。)
で表されるハイドロタルサイト化合物 1〜5質量部、
(c)モリブデン酸亜鉛 0.5質量部以上、及び
(d)酸化ランタン 0.2〜1質量部
を含むBステージ化した樹脂組成物と、基材とを備え、該樹脂組成物が該基材に含浸されているプリプレグ。
【請求項2】
1層の又は積層された複数層の、請求項1又は2記載のプリプレグと、
該プリプレグの片面又は両面に設けられた金属箔と
を備える金属張積層板。
【請求項3】
1層の又は積層された複数層の、請求項1又は2記載のプリプレグと、
該プリプレグの片面又は両面に設けられ、金属箔からなる配線パターンと
を備えるプリント配線板。
【請求項4】
請求項4記載のプリント配線板と、
該プリント配線板上に載置された半導体素子と、
該プリント配線板の配線パターンと該半導体素子とを電気的に接続するCuワイヤーと
を備える半導体装置。


【公開番号】特開2013−91781(P2013−91781A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−219985(P2012−219985)
【出願日】平成24年10月2日(2012.10.2)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】