説明

プリプレグの製造方法と繊維強化熱硬化性樹脂成型体の製造方法

【課題】複数のプリプレグを積層する状態において層間の強度を著しく向上する。
【解決手段】プリプレグの製造方法は、高強度繊維を繊維基材とするシート加工工程と、繊維基材にプラスチックを含浸させる含浸工程とからなる。シート加工工程は、高強度繊維を湿式抄紙して抄紙シートに加工する抄紙工程と、抄紙シートの高強度繊維をバインダー繊維で結合して繊維基材とする結合工程とからなる。抄紙工程は、熱可塑性樹脂あるいは湿熱溶融型樹脂からなるバインダー繊維を高強度繊維に加えて分散液に添加し、この分散液をメッシュコンベアの抄紙面に吸引して高強度繊維をX軸方向とY軸方向とZ軸方向とに配向させてシート状に加工する。結合工程は、抄紙シートを加熱してバインダー繊維を溶融させて高強度繊維をX軸方向とY軸方向とZ軸方向とに配向させた状態で結合する。含浸工程は、繊維基材の隙間に、未硬化状態にある熱硬化性樹脂を含む状態で含浸させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維などの高強度繊維をシート状に加工してなる繊維基材にプラスチックを含浸してなるプリプレグと、このプリプレグを複数枚積層してなる繊維強化熱硬化性樹脂成型体に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化プラスチック成型体である繊維強化プラスチック(FRP)は、埋設される強化繊維でプラスチックが補強されることから、プラスチック単体では到底に実現できない、極めて優れた強度を実現する。この優れた物性から、強度と軽さとが要求される多種多様な用途、たとえば、自動車や航空機等に使用されている。FRPに使用される強化繊維には、主としてガラス繊維が使用されるが、アルミニウム繊維やステンレス繊維などの金属繊維、アラミド繊維やPBO繊維などの有機繊維、およびシリコンカーバイト繊維などの無機繊維なども使用される。さらに近年、極めて優れた物性を示すことから、炭素繊維などの無機繊維なども使用される。さらに近年、極めて優れた物性を示すことから、炭素繊維やアラミド繊維などの高強度繊維が使用されるようになった。
【0003】
高強度繊維として炭素繊維を使用する炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は、複数のプリプレグを積層してプリフォームとし、これをプレス成形して製作される。プリプレグは、炭素繊維をシート状に加工している高強度繊維基材に熱硬化性樹脂を含浸させて製作される。高強度繊維基材は、連続する高強度繊維を一方向に配列させるか、織物加工させるかで製作される。
【0004】
炭素繊維を使用する繊維強化プラスチック成型体は、高強度繊維をいかに理想的な状態でプラスチックに埋設できるかで力学特性を改善できる。このことを実現する技術が開発されている。(特許文献1及び2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2007/097436号公報
【特許文献2】特開2010−235779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、単繊維状の炭素繊維を熱可塑性樹脂中に高含有率で埋設する繊維強化プラスチック成型体を記載する。この繊維強化プラスチック成型体は、炭素繊維の重量平均繊維長(Lw)を0.5〜10mmとし、さらに炭素繊維をランダムに配置にすることで、優れた力学特性を実現する。さらに、この繊維強化プラスチック成型体は、繊維状の炭素繊維と、この炭素繊維の隙間に含浸させるプラスチックとして、単繊維状の熱可塑性樹脂繊維とを使用することで、長い炭素繊維の含有率を高くすると共に、炭素繊維をランダムに配置して力学特性を改善する。この繊維強化プラスチック成型体は、所定の長さの炭素繊維と、炭素繊維の隙間に含浸させるプラスチックとして熱可塑性樹脂繊維を混合して湿式でシート状に加工した後、乾燥してプリプレグとし、複数のプリプレグを積層し、予熱して、金型のキャビティーに配置し、金型のキャビティーで加熱加圧成形することで、熱可塑性樹脂繊維を熱軟化させて、炭素繊維の隙間に含浸させる状態として所定の形状に成形される。
【0007】
以上の繊維強化プラスチック成型体は、炭素繊維と、炭素繊維の隙間に含浸させる熱可塑樹脂繊維とを抄紙してシートとした後、乾燥してプリプレグとする。プリプレグは、炭素繊維の隙間に熱可塑性樹脂が含浸された状態となる。このプリプレグが複数枚に積層され、予熱した後、金型のキャビティー内で加熱、加圧、成型して所定の形状に成形される。
【0008】
以上の方法で製造される繊維強化プラスチック成型体は、プリプレグを積層している層間の強度が弱くなる欠点がある。それは、プリプレグの炭素繊維が、X軸方向とY軸方向に配向されて、プリプレグを積層している層間が樹脂層となるからである。
【0009】
さらに、特許文献2は、強化繊維基材に樹脂を含浸しているプリプレグを記載する。このプリプレグは、強化繊維基材として、繊維長10mmを越える強化繊維を0〜50重量%、繊維長2〜10mmの強化繊維を50〜100重量%、繊維長2mm未満の強化繊維を0〜50重量%とし、互いに交差する強化繊維単糸で形成される二次元配向角の平均値を10〜80度とし、さらに23℃での厚みh0(mm)を0.03〜1mm、引張強度σを0.01MPa以上とする。
【0010】
以上のプリプレグは以下のようにして製作される。
(1)炭素繊維を所定の長さ6mmにカットし、湿式抄紙してシート状とし、これを乾燥して炭素繊維基材を製作する。
(2)炭素繊維基材を1枚と、ナイロン樹脂製のフィルム2枚とを、フィルム/炭素繊維基材/フィルムとなるように積層し、250℃の温度で5MPaの圧力を2分間かけて炭素繊維基材にナイロン樹脂を含浸させてプリプレグとする。
【0011】
さらに、この公報は、以上の工程で得られたプリプレグを使用してプリフォームを製作することも記載する。このプリフォームは、プリプレグを8枚積層して遠赤外線加熱炉を使用して、窒素雰囲気下で280℃に予熱し、キャビティ表面温度を120℃、厚み1.1mmのキャビティを有するスタンピング成形金型に配置して金型を閉じ、加圧成形して製作される。
【0012】
以上の繊維強化プラスチック成型体は、プリプレグのX軸方向とY軸方向に高強度繊維を配置してプリプレグ自体の力学特性を改善できるが、複数のプリプレグを積層する状態で、積層しているプリプレグの層間の強度が弱くなる欠点がある。それは、炭素繊維の隙間にプラスチックを含浸させるために、炭素繊維基材の両面をナイロン樹脂製のフィルム2枚で挟み、これを250℃に加熱することで、熱可塑性樹脂であるナイロン樹脂製フィルムを軟化させて、炭素繊維基材にナイロン樹脂を含浸させるからである。熱可塑性樹脂のナイロン樹脂性フィルムは、加熱された状態における粘度が高く、炭素繊維基材の両面から高い粘度で繊維の隙間に含浸される。高粘度のプラスチックが炭素繊維の隙間に含浸されたプリプレグは、表面の繊維密度が低くなることに加えて、表面が平滑面となる。このため、この状態のプリプレグを積層して繊維強化プラスチックを成型体を成形すると、プリプレグの層間において繊維がZ軸方向に繊維が配向されず、樹脂層を介してプリプレグが積層される状態となって、層間の強度が弱くなる。
【0013】
本発明は、さらに以上の欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、複数のプリプレグを積層する状態において層間の強度を著しく向上できるプリプレグの製造方法と繊維強化熱硬化性樹脂成型体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0014】
本発明のプリプレグの製造方法は、短繊維の高強度繊維をシート状としてなる繊維基材にプラスチックを含浸してプリプレグを製造する。プリプレグの製造方法は、高強度繊維を繊維基材とするシート加工工程と、このシート加工工程で得られた繊維基材にプラスチックを含浸させる含浸工程とからなる。シート加工工程は、高強度繊維を湿式抄紙してシート状の抄紙シートに加工する抄紙工程と、この抄紙工程で得られる抄紙シートの高強度繊維をバインダー繊維で結合して繊維基材とする結合工程とからなる。抄紙工程は、結合工程で加熱溶融されて高強度繊維を結合する熱可塑性樹脂あるいは湿熱溶融型樹脂からなるバインダー繊維を、100重量部の高強度繊維に対して3重量部ないし30重量部加えて分散液に添加すると共に、高強度繊維とバインダー繊維の添加された分散液をメッシュコンベアの抄紙面に吸引して高強度繊維をX軸方向とY軸方向とZ軸方向とに配向させ、堆積してシート状に加工する。結合工程は、抄紙工程で得られる抄紙シートを加熱して、抄紙シートに含まれるバインダー繊維を溶融させてバインダー繊維の熱可塑性樹脂あるいは湿熱溶融型樹脂で高強度繊維をX軸方向とY軸方向とZ軸方向とに配向させた状態で結合する。さらに、含浸工程は、繊維基材の隙間に、未硬化状態にある熱硬化性樹脂を含む状態で含浸させる。
【0015】
以上の方法で製造されるプリプレグは、複数枚を積層して繊維強化熱硬化性樹脂成型体とする状態で、プリプレグの層間の強度を著しく向上できる特徴がある。それは、抄紙シートを製造する工程で、高強度繊維とバインダー繊維とを混合している分散液をメッシュコンベアの抄紙面に吸引し、高強度繊維をX軸方向とY軸方向とZ軸方向とに配向させ、堆積させてシート状の抄紙シートとし、さらに、この抄紙シートを加熱して高強度繊維をX軸方向とY軸方向とZ軸方向とに配向させた状態で結合した後、繊維基材の繊維の微細な隙間に、未硬化状態にある熱硬化性樹脂を含浸させるからである。
【0016】
分散液をメッシュコンベアの抄紙面に吸引して堆積すると、メッシュコンベアを透過する水流は、高強度繊維をZ軸方向に配向させようとする。とくに、高強度繊維の先端部は、網目を通過する水流によって、網目から突出されてZ軸方向に配向される。このため、メッシュコンベアの表面に堆積される抄紙シートは、その表面にZ軸方向に配向する繊維があって、この繊維が表面から無数に突出する状態となる。
【0017】
さらに、以上の方法は、繊維の微細な隙間にプラスチックを含浸させる工程においても、表面から無数の繊維が突出する状態に保持される。従来の方法は、加熱状態で高い粘度となる熱可塑性樹脂のプラスチックシートを積層して、この高粘度のプラスチックシートが表面から突出している無数の繊維を押し付けて平滑面とする。
【0018】
これに対して、以上の方法は、繊維基材の隙間に、未硬化状態にある液状の熱硬化性樹脂を含む状態で含浸させるので、液状の熱可塑性樹脂あるいは湿熱溶融型樹脂がスムーズに繊維の隙間に含浸されて、Z軸方向の配向を保持する。したがって、熱硬化性樹脂を高強度繊維の微細な隙間に含浸させた状態においても、プリプレグ表面には無数の繊維がZ軸方向に配向され、これが層間の熱硬化性樹脂に埋設されて層間の結合強度を補強する。このため、複数のプリプレグを積層して成形される繊維強化熱硬化性樹脂成型体は、層間の強度を著しく向上できる特徴を実現する。
【0019】
本発明のプリプレグの製造方法は、含浸工程において、繊維基材の表面に、未硬化状態にある熱硬化性樹脂シートを積層して加熱し、熱硬化性樹脂シートを溶融させて未硬化状態にある熱硬化性樹脂を繊維基材の隙間に含浸させることができ、あるいは、繊維基材の表面に、未硬化状態にある熱硬化性樹脂をローラーで転写して繊維基材の隙間に含浸させることができる。
繊維基材の表面に、未硬化状態にある熱硬化性樹脂シートを積層して加熱する方法は、加熱されると低粘度な液状となる熱硬化性樹脂シートを積層し、これを加熱して繊維の隙間に含浸させるので、低粘度に液化した液状の熱硬化性樹脂をスムーズに繊維の隙間に含浸させてZ軸方向の配向を保持できる。また、未硬化状態にある熱硬化性樹脂をローラーで転写する方法は、未硬化状態にある液状の熱硬化性樹脂を、簡単かつ容易に繊維の微細な隙間の内部に確実に含浸させながらZ軸方向の配向を保持できる。
【0020】
本発明のプリプレグの製造方法は、高強度繊維の含有量を10重量%ないし50重量%とし、かつ高強度繊維の平均繊維長さを0.5mmないし13mmとすることができる。
【0021】
本発明のプリプレグの製造方法は、メッシュコンベアの網目の隙間を0.01mmないし3mmとすることができる。
以上の方法は、分散液を湿式抄紙するメッシュコンベアの網目を大きくしているので、分散液がメッシュコンベアをスムーズに透過して高強度繊維のZ軸方向の配向作用を大きくする。さらに、高強度繊維の先端部をより長く繊維基材表面から突出させて、プリプレグの層間強度をより向上できる。
【0022】
本発明のプリプレグの製造方法は、バインダー繊維に、熱硬化性樹脂を硬化させる温度よりも軟化温度の高い熱可塑性樹脂繊維を使用することができる。
【0023】
本発明のプリプレグの製造方法は、バインダー繊維に、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリイミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリ酢酸ビニル繊維、ポリビニルアルコール繊維、エチルビニルアルコール繊維のいずれか又はこれ等を複数種混合して使用することができる。
【0024】
本発明のプリプレグの製造方法は、高強度繊維を炭素繊維とすることができる。
【0025】
本発明のプリプレグの製造方法は、高強度繊維が、炭素繊維と、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(PBO)繊維と、アラミド繊維と、ポリアクリレート繊維と、高強力ポリエチレン繊維と、高強力ポリビニルアルコール繊維の何れか又はこれ等を複数種含むことができる。
【0026】
本発明のプリプレグの製造方法は、熱硬化性樹脂をエポキシ樹脂とすることができる。
【0027】
本発明のプリプレグの製造方法は、熱硬化性樹脂を、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂の何れかとすることができる。
【0028】
本発明の繊維強化熱硬化性樹脂成型体の製造方法は、短繊維の高強度繊維をシート状としてなる繊維基材にプラスチックを含浸してなる複数のプリプレグを積層し、これを加熱してプリプレグの熱硬化性樹脂を硬化させて繊維強化熱硬化性樹脂を製造する。繊維強化熱硬化性樹脂成型体の製造方法は、プリプレグの製造方法として、短繊維の高強度繊維をシート状としてなる繊維基材にプラスチックを含浸してプリプレグを製造する。このプリプレグの製造方法は、高強度繊維を繊維基材とするシート加工工程と、このシート加工工程で得られた繊維基材にプラスチックを含浸させる含浸工程とからなる。シート加工工程は、高強度繊維を湿式抄紙してシート状の抄紙シートに加工する抄紙工程と、この抄紙工程で得られる抄紙シートの高強度繊維をバインダー繊維で結合して繊維基材とする結合工程とからなる。抄紙工程は、結合工程で加熱溶融されて高強度繊維を結合する熱可塑性樹脂あるいは湿熱溶融型樹脂からなるバインダー繊維を、100重量部の高強度繊維に対して3重量部ないし30重量部加えて分散液に添加すると共に、高強度繊維とバインダー繊維の添加された分散液をメッシュコンベアの抄紙面に吸引して高強度繊維をX軸方向とY軸方向とZ軸方向とに配向させ、堆積してシート状に加工する。結合工程は、抄紙工程で得られる抄紙シートを加熱して、抄紙シートに含まれるバインダー繊維を溶融させてバインダー繊維の熱可塑性樹脂あるいは湿熱溶融型樹脂で高強度繊維をX軸方向とY軸方向とZ軸方向とに配向させた状態で結合する。さらに、含浸工程は、繊維基材の隙間に、未硬化状態にある熱硬化性樹脂を含む状態で含浸させる。
【0029】
本発明の繊維強化熱硬化性樹脂成型体の製造方法は、含浸工程において、繊維基材の表面に、未硬化状態にある熱硬化性樹脂シートを積層して加熱し、熱硬化性樹脂シートを溶融させて未硬化状態にある熱硬化性樹脂を繊維基材の隙間に含浸させることができ、あるいは、繊維基材の表面に、未硬化状態にある熱硬化性樹脂をローラーで転写して繊維基材の隙間に含浸させることができる。
【0030】
本発明の繊維強化熱硬化性樹脂成型体の製造方法は、高強度繊維の含有量を10重量%なしい50重量%とし、かつ高強度繊維の平均繊維長さを0.5mmないし13mmとすることができる。
【0031】
本発明の繊維強化熱硬化性樹脂成型体の製造方法は、メッシュコンベアの網目の隙間を0.01mmないし3mmとすることができる。
以上の方法は、分散液を湿式抄紙するメッシュコンベアの網目を大きくしているので、分散液がメッシュコンベアをスムーズに透過して高強度繊維のZ軸方向の配向作用を大きくする。さらに、高強度繊維の先端部をより長く繊維基材表面から突出させて、プリプレグの層間強度をより向上できる。
【0032】
本発明の繊維強化熱硬化性樹脂成型体の製造方法は、バインダー繊維に、熱硬化性樹脂を硬化させる温度よりも軟化温度の高い熱可塑性樹脂繊維を使用することができる。
【0033】
本発明の繊維強化熱硬化性樹脂成型体の製造方法は、高強度繊維を炭素繊維とすることができる。
【0034】
本発明の繊維強化熱硬化性樹脂成型体の製造方法は、高強度繊維が、炭素繊維と、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(PBO)繊維と、アラミド繊維と、ポリアクリレート繊維と、高強力ポリエチレン繊維と、高強力ポリビニルアルコール繊維の何れか又はこれ等を複数種含むことができる。
【0035】
本発明の繊維強化熱硬化性樹脂成型体の製造方法は、熱硬化性樹脂をエポキシ樹脂とすることができる。
【0036】
本発明の繊維強化熱硬化性樹脂成型体の製造方法は、熱硬化性樹脂を、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂の何れかとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施例を詳述する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するためのプリプレグの製造方法と、このプリプレグを使用する繊維強化熱硬化性樹脂成型体の製造方法を例示するものであって、本発明はプリプレグの製造方法と繊維強化熱硬化性樹脂成型体の製造方法を以下の方法には特定しない。さらに、この明細書は、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0038】
繊維強化熱硬化性樹脂成型体は、短繊維の高強度繊維をシート状としている繊維基材にプラスチックを含浸している複数のプリプレグを積層し、これを加熱してプリプレグの熱硬化性樹脂を硬化して製造される。
【0039】
プリプレグは、高強度繊維を繊維基材とするシート加工工程と、このシート加工工程で得られた繊維基材にプラスチックを含浸させる含浸工程とで製造される。シート加工工程は、高強度繊維を湿式抄紙してシート状の抄紙シートに加工する抄紙工程と、この抄紙工程で得られる抄紙シートの高強度繊維をバインダー繊維で結合して繊維基材とする結合工程とからなる。抄紙工程は、結合工程で加熱溶融されて高強度繊維を結合する熱可塑性樹脂あるいは湿熱溶融型樹脂からなるバインダー繊維を、100重量部の高強度繊維に対して3重量部ないし30重量部加えて分散液に添加すると共に、高強度繊維とバインダー繊維の添加された分散液をメッシュコンベアの抄紙面に吸引して高強度繊維をX軸方向とY軸方向とZ軸方向とに配向させ、堆積してシート状に加工する。結合工程は、抄紙工程で得られる抄紙シートを加熱して、抄紙シートに含まれるバインダー繊維を溶融させてバインダー繊維の熱可塑性樹脂あるいは湿熱溶融型樹脂で高強度繊維をX軸方向とY軸方向とZ軸方向とに配向させた状態で結合する。さらに、含浸工程は、繊維基材の隙間に、未硬化状態にある熱硬化性樹脂を含む状態で含浸させる。
【0040】
プリプレグは、短繊維の高強度繊維をシート状に加工してなる繊維基材に、未硬化状態にある熱硬化性樹脂を含浸させて製造される。プリプレグは、好ましくは、熱硬化性樹脂の含有量を50重量%ないし90重量%とし、かつ、高強度繊維の含有量を10重量%ないし50重量%とする。
【0041】
繊維基材は、抄紙工程において、短繊維の高強度繊維を湿式抄紙してシート状の抄紙シートに加工し、この抄紙シートの高強度繊維を、結合工程において、バインダー繊維で結合して製造される。
【0042】
抄紙シートは、抄紙工程において、以下のように湿式抄紙して製造される。
短繊維の高強度繊維を水に懸濁して抄紙用スラリーとし、この抄紙用スラリーを湿式抄紙してシート状とし、これを乾燥して抄紙シートを製造する。この高強度繊維として、炭素繊維を使用する。高強度繊維である炭素繊維は、平均繊維長さを0.5mmないし13mmとするものを使用する。ただ、高強度繊維には、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(PBO)繊維、アラミド繊維、ポリアクリレート繊維、高強力ポリエチレン繊維、高強力ポリビニルアルコール繊維の何れかであって、平均繊維長さを0.5mmないし13mmとするものも使用できる。さらに、高強度繊維には、炭素繊維とポリパラフェニレンベンズオキサゾール(PBO)繊維とアラミド繊維とポリアクリレート繊維と高強力ポリエチレン繊維と高強力ポリビニルアルコール繊維の複数種を混合したものを使用することもできる。
【0043】
さらに、高強度繊維に加えて、バインダー繊維を添加して抄紙用スラリーとする。このバインダー繊維は、結合工程で加熱溶融されて高強度繊維を結合する熱可塑性樹脂、あるいは、加湿溶融されて高強度繊維を結合する湿熱溶融型樹脂であって、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリイミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリ酢酸ビニル繊維、ポリビニルアルコール繊維、エチルビニルアルコール繊維のいずれかを使用する。さらに、バインダー繊維は、これ等を複数種混合したものを使用することもできる。バインダー繊維は、100重量部の高強度繊維に対して3重量部ないし30重量部を加えて分散液に添加する。
【0044】
さらに、分散液には、高強度繊維とバインダー繊維に加えて、補助繊維を添加することもできる。この補助繊維には、例えば、バインダー繊維と同じ組成のものが使用できる。ただ、この補助繊維は、好ましくは、その繊度や繊維長を調整することにより、後述する結合工程で溶融されずに、繊維として残存するものを使用する。したがって、この補助繊維には、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリイミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリ酢酸ビニル繊維、ポリビニルアルコール繊維、エチルビニルアルコール繊維のいずれか又はこれ等を複数種混合したものが使用できる。これらの補助繊維は、仮に結合工程において加熱または加湿により溶融されても、バインダー繊維として機能して高強度繊維を交点で結合し、溶融されない状態では繊維の状態で残存することとなる。これらの補助繊維は、例えば、100重量部の高強度繊維に対して5重量部ないし50重量部を加えて分散液に添加することができる。ただ、補助繊維は、必ずしも添加する必要はない。
【0045】
以上のようにして調製された分散液をメッシュコンベアの抄紙面に吸引して堆積してシート化し抄紙シートとする。このメッシュコンベアは、網目の隙間を0.01mmないし3mmとすることができる。このように、分散液をメッシュコンベアの抄紙面に吸引して堆積すると、メッシュコンベアの網目を透過する水流により、高強度繊維が網目から突出してZ軸方向に配向される。湿式法による抄紙シートの製造においては、湿式の製紙機械としてすでに使用されている長網抄紙機、傾斜金網等を利用する。繊維の分散が良いこと、配向性の調整が容易であること等の点からすると、傾斜金網を使用する装置が最適である。
【0046】
抄紙工程で製造された抄紙シートは、結合工程において、加熱、乾燥して繊維基材とする。結合工程は、抄紙シートを加熱して、抄紙シートに含まれるバインダー繊維を溶融させて、高強度繊維を交点で結合させる。抄紙シートは、溶融されたバインダー繊維の熱可塑性樹脂あるいは湿熱溶融型樹脂によって、高強度繊維をX軸方向とY軸方向とZ軸方向とに配向させた状態で結合されて繊維基材となる。
【0047】
シート加工工程で製造された繊維基材は、含浸工程において、未硬化の熱硬化性樹脂を含浸させる。繊維基材に含浸させる熱硬化性樹脂は、繊維基材に含浸性を有し、後述する積層工程での取り扱い性が確保できる引張強度を有する未硬化状態の熱硬化性樹脂を使用する。繊維基材に含浸される熱硬化性樹脂には、エポキシ樹脂を使用する。ただ、熱硬化性樹脂には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂の何れかを使用することもできる。
【0048】
含浸工程は、繊維基材の表面に、未硬化状態にある熱硬化性樹脂シートを積層して加熱し、熱硬化性樹脂シートを溶融させて未硬化状態にある熱硬化性樹脂を繊維基材の隙間に含浸させる方法で実現する。この方法は、加熱されると低粘度な液状となる熱硬化性樹脂シートを積層し、これを加熱することで低粘度に液化した液状の熱硬化性樹脂をスムーズに繊維の隙間に含浸できる。
【0049】
さらに、含浸工程は、表面に未硬化の熱硬化性樹脂を付着しているローラを繊維基材の表面に押し付けて、繊維基材の隙間に含浸させることができる。この方法は、例えば、未硬化で液状の熱硬化性樹脂を付着しているローラを対向して配置すると共に、これらのローラの間に繊維基材を通過させて、未硬化の熱硬化性樹脂を繊維基材に転写し、繊維基材の隙間に含浸させる。この方法は、繊維基材を両面からローラーで挟着する状態で通過させることにより、繊維基材の隙間の内部にまで確実に未硬化状態の熱硬化性樹脂を含浸できる。さらに、含浸工程は、未硬化で液状の熱硬化性樹脂に繊維基材を浸漬すると共に、液状の熱硬化性樹脂を隙間内まで含浸した繊維基材をローラー等で絞って最適な含浸状態とすることもできる。
【0050】
以上のようにして製造されたプリプレグを複数枚積層し、これを加熱してプリプレグの熱硬化性樹脂を硬化させて繊維強化熱硬化性樹脂成型体を製造する。プリプレグの積層体は、加熱されることにより硬化する熱硬化性樹脂を介して、互いに積層されたプリプレグ同士が層間において強固に結合されて繊維強化熱硬化性樹脂成型体となる。
【0051】
以下、実施例により本発明をさらに詳細を説明する。
[実施例1]
以下の工程で実施例1の繊維強化熱硬化性樹脂成型体を製造する。
(1)プリプレグの製造工程
[シート加工工程]
1.抄紙工程
高強度繊維として、炭素繊維(繊維径7μm、平均繊維長3mm、加重平均密度1.80g/cm)を70重量部と、
補助繊維として、ポリビニルアルコール繊維(繊度2.0デシテックス、平均繊維長4mm、加重平均密度1.20g/cm)を20重量部と、
バインダー繊維として、ポリビニルアルコール繊維(繊度1.1デシテックス、平均繊維長3mm、加重平均密度は1.20g/cm)を10重量部と
からなる組成物を水中に混合分散し、固形分0.1〜3.0%からなる抄紙用スラリーを調製する。
この後、分散剤としてアニオン系ポリアクリル酸ソーダを0.00002重量部を添加後、この分散液を、網目の隙間を0.3mmとするメッシュコンベアの抄紙面に吸引して堆積してシート化し抄紙シートとする。
以上の抄紙工程により、坪量が51g/m、厚さ0.52mm、密度0.098g/cm、引張強度を0.7kg/15mmとする抄紙シートが得られた。
【0052】
2.結合工程
抄紙工程で製造された加湿状態の抄紙シートを100℃〜130℃の温度で乾燥し、バインダー繊維を溶融して高強度繊維を交点で結合して繊維基材とする。この状態で、繊維基材は、短繊維の高強度繊維が、X軸方向とY軸方向とZ軸方向とに配向された状態で結合される。
なお、この工程において、抄紙シートに補助繊維として含まれるポリビニルアルコール繊維は、加湿や加熱により溶融される状態ではバインダー繊維として機能して高強度繊維を交点で結合し、溶融されない状態では繊維の状態で残存する。
【0053】
[含浸工程]
シート加工工程で製造された繊維基材に未硬化の熱硬化性樹脂を含浸させる。含浸される熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂を使用する。エポキシ樹脂は、メチルエチルケトンに希釈して原紙に付着させて熱硬化性樹脂シートとする。希釈濃度は、40重量%とする。メチルエチルケトンを除去する状態で原紙に付着される熱硬化性樹脂の量は80重量%とする。
以上のようにして、製造された熱硬化性樹脂シートを原紙から除去して、繊維基材の表面に積層し、さらに加熱して熱硬化性樹脂シートを溶融させて、未硬化で液状の熱硬化性樹脂を繊維基材の隙間に含浸させる。
これにより、単位面積に対する重量を190.0g/mとするプリプレグを製造する。
【0054】
(2)繊維強化熱硬化性樹脂成型体の製造工程
[積層工程]
以上の工程で製造されたプリプレグを15枚積層する。
[加熱加圧処理工程]
プリプレグの積層体を、15kg/cm、130℃条件下における熱圧処理を行う。これにより、プリプレグの熱硬化性樹脂を硬化させて、複数枚のプリプレグを層間で互いに結合して繊維強化熱硬化性樹脂成型体を製造する。
以上の工程で製造された繊維強化熱硬化性樹脂成型体は、単位面積に対する重量が2386.0g/m、厚さ2.0mm、密度1.19g/cmであった。
【0055】
[実施例2]
プリプレグの製造工程において、抄紙工程で、炭素繊維に平均繊維長が6mmのものを使用して抄紙シートを製造する以外は、実施例1と同様にしてプリプレグを製造する。さらに、このプリプレグを使用して繊維強化熱硬化性樹脂成型体を製造する工程において、積層するプリプレグの枚数を18枚とする以外は、実施例1と同様にして実施例2の繊維強化熱硬化性樹脂成型体を製造する。
この繊維強化熱硬化性樹脂成型体は、単位面積に対する重量が2687.0g/m、厚さ2.1mm、密度1.19g/cmであった。
【0056】
[実施例3]
プリプレグの製造工程において、含浸工程で、繊維基材に含浸する熱硬化性樹脂をフェノール樹脂とし、希釈溶媒をメチルエチルケトンからメタノールにする以外は、実施例1と同様にしてプリプレグを製造する。さらに、このプリプレグを使用して実施例1と同様にして繊維強化熱硬化性樹脂成型体を製造する。
この繊維強化熱硬化性樹脂成型体は、単位面積に対する重量が3045.0g/m、厚さ2.3mm、密度1.32g/cmであった。
【0057】
[比較例1]
プリプレグの製造工程において、高強度繊維をバインダー繊維で結合することなく繊維基材を製造する以外は、実施例1と同様にしてプリプレグを製造する。さらに、このプリプレグを使用して繊維強化熱硬化性樹脂成型体を製造する工程において、積層するプリプレグの枚数を16枚とする以外は、実施例1と同様にして比較例1の繊維強化熱硬化性樹脂成型体を製造する。
この繊維強化熱硬化性樹脂成型体は、単位面積に対する重量が3774.0g/m、厚さ2.2mm、密度2.32g/cmであった。
【0058】
さらに、以上の実施例1ないし3、及び比較例1で製造された繊維強化熱硬化性樹脂成型体について、層間強度を測定した。この層間強度の測定は、目違い切欠き試験の圧縮試験法(ASTM D3846)に準じ、強度測定を実施した。各々の繊維強化熱硬化性樹脂成型体を、幅12.7mm、厚さ2.5mm、全長79.5mmに切り出して試験片とし、3点曲げ試験により、層間にせん断破壊が生じる最大荷重を測定し、この最大荷重から層間強度を求めた。なお、各繊維強化熱硬化性樹脂成型体について、5回ずつ測定し、その平均値を層間強度とした。層間強度の測定結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
この表1からもわかるように、本発明の実施例1ないし3で製造した繊維強化熱硬化性樹脂成型体は、比較例1で製造した繊維強化熱硬化性樹脂成型体に比べて、層間強度が約2倍と優れた強度を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
短繊維の高強度繊維をシート状としてなる繊維基材にプラスチックを含浸してなるプリプレグの製造方法であって、
前記高強度繊維を繊維基材とするシート加工工程と、
このシート加工工程で得られた繊維基材にプラスチックを含浸させる含浸工程とからなり、
前記シート加工工程は、高強度繊維を湿式抄紙してシート状の抄紙シートに加工する抄紙工程と、この抄紙工程で得られる抄紙シートの高強度繊維をバインダー繊維で結合して繊維基材とする結合工程とからなり、
前記抄紙工程は、前記結合工程で加熱溶融されて高強度繊維を結合する熱可塑性樹脂あるいは湿熱溶融型樹脂からなるバインダー繊維を、100重量部の高強度繊維に対して3重量部ないし30重量部加えて分散液に添加すると共に、高強度繊維とバインダー繊維の添加された分散液をメッシュコンベアの抄紙面に吸引して高強度繊維をX軸方向とY軸方向とZ軸方向とに配向させ堆積してシート状に加工し、
前記結合工程は、抄紙工程で得られる抄紙シートを加熱して、抄紙シートに含まれるバインダー繊維を溶融させてバインダー繊維の熱可塑性樹脂あるいは湿熱溶融型樹脂で高強度繊維をX軸方向とY軸方向とZ軸方向とに配向させた状態で結合し、
さらに、前記含浸工程は、前記繊維基材の隙間に、未硬化状態にある熱硬化性樹脂を含む状態で含浸させることを特徴とするプリプレグの製造方法。
【請求項2】
前記含浸工程が、繊維基材の表面に、未硬化状態にある熱硬化性樹脂シートを積層して加熱し、熱硬化性樹脂シートを溶融させて未硬化状態にある熱硬化性樹脂を繊維基材の隙間に含浸させ、あるいは、繊維基材の表面に、未硬化状態にある熱硬化性樹脂をローラーで転写して繊維基材の隙間に含浸させる請求項1に記載されるプリプレグの製造方法。
【請求項3】
前記高強度繊維の含有量を10重量%ないし50重量%とし、かつ前記高強度繊維の平均繊維長さを0.5mmないし13mmとする請求項1または2に記載されるプリプレグの製造方法。
【請求項4】
前記メッシュコンベアの網目の隙間が0.01mmないし3mmである請求項1ないし3のいずれかに記載されるプリプレグの製造方法。
【請求項5】
前記バインダー繊維に、前記熱硬化性樹脂を硬化させる温度よりも軟化温度の高い熱可塑性樹脂繊維を使用する請求項1ないし4のいずれかに記載されるプリプレグの製造方法。
【請求項6】
前期バインダー繊維が、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリイミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリ酢酸ビニル繊維、ポリビニルアルコール繊維、エチルビニルアルコール繊維のいずれか又はこれ等を複数種含む請求項1ないし5のいずれかに記載されるプリプレグの製造方法
【請求項7】
前記高強度繊維が炭素繊維である請求項1ないし6のいずれかに記載されるプリプレグの製造方法。
【請求項8】
前記高強度繊維が、炭素繊維と、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(PBO)繊維、アラミド繊維と、ポリアクリレート繊維と、高強力ポリエチレン繊維と、高強力ポリビニルアルコール繊維の何れか又はこれ等を複数種含む請求項1ないし7のいずれかに記載されるプリプレグの製造方法。
【請求項9】
前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂である請求項1ないし8のいずれかに記載されるプリプレグの製造方法。
【請求項10】
前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂の何れかである請求項1ないし9のいずれかに記載されるプリプレグの製造方法。
【請求項11】
短繊維の高強度繊維をシート状としてなる繊維基材にプラスチックを含浸してなる複数のプリプレグを積層し、これを加熱してプリプレグの熱硬化性樹脂を硬化させる繊維強化熱硬化性樹脂成型体の製造方法であって、
前記プリプレグの製造方法が、短繊維の高強度繊維をシート状としてなる繊維基材にプラスチックを含浸させる製造方法であって、
前記高強度繊維を繊維基材とするシート加工工程と、
このシート加工工程で得られた繊維基材にプラスチックを含浸させる含浸工程とからなり、
前記シート加工工程は、高強度繊維を湿式抄紙してシート状の抄紙シートに加工する抄紙工程と、この抄紙工程で得られる抄紙シートの高強度繊維をバインダー繊維で結合して繊維基材とする結合工程とからなり、
前記抄紙工程は、前記結合工程で加熱溶融されて高強度繊維を結合する熱可塑性樹脂あるいは湿熱溶融型樹脂からなるバインダー繊維を、100重量部の高強度繊維に対して3重量部ないし30重量部加えて分散液に添加すると共に、高強度繊維とバインダー繊維の添加された分散液をメッシュコンベアの抄紙面に吸引して高強度繊維をX軸方向とY軸方向とZ軸方向とに配向させ堆積してシート状に加工し、
前記結合工程は、抄紙工程で得られる抄紙シートを加熱して、抄紙シートに含まれるバインダー繊維を溶融させてバインダー繊維の熱可塑性樹脂あるいは湿熱溶融型樹脂で高強度繊維をX軸方向とY軸方向とZ軸方向とに配向させた状態で結合し、
さらに、前記含浸工程は、前記繊維基材の隙間に、未硬化状態にある熱硬化性樹脂を含む状態で含浸させることを特徴とする繊維強化熱硬化性樹脂成型体の製造方法
【請求項12】
前記含浸工程が、繊維基材の表面に、未硬化状態にある熱硬化性樹脂シートを積層して加熱し、熱硬化性樹脂シートを溶融させて未硬化状態にある熱硬化性樹脂を繊維基材の隙間に含浸させ、あるいは、繊維基材の表面に、未硬化状態にある熱硬化性樹脂をローラーで転写して繊維基材の隙間に含浸させる請求項11に記載される繊維強化熱硬化性樹脂成型体の製造方法。
【請求項13】
前記高強度繊維の含有量を10重量%ないし50重量%とし、かつ前記高強度繊維の平均繊維長さを0.5mmなしい13mmとする請求項11または12に記載される繊維強化熱硬化性樹脂成型体の製造方法。
【請求項14】
前記メッシュコンベアの網目の隙間が0.01mmないし3mmである請求項11ないし13のいずれかに記載される繊維強化熱硬化性樹脂成型体の製造方法
【請求項15】
前記バインダー繊維に、前記熱硬化性樹脂を硬化させる温度よりも軟化温度の高い熱可塑性樹脂繊維を使用する請求項11ないし14のいずれかに記載される繊維強化熱硬化性樹脂成型体の製造方法。
【請求項16】
前記高強度繊維が炭素繊維である請求項11ないし15のいずれかに記載される繊維強化熱硬化性樹脂成型体の製造方法。
【請求項17】
前記高強度繊維が炭素繊維と、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(PBO)繊維と、アラミド繊維と、ポリアクリレート繊維と、高強力ポリエチレン繊維と、高強力ポリビニルアルコール繊維の何れか又はこれ等を複数種含む請求項11ないし16のいずれかに記載される繊維強化熱硬化性樹脂成型体の製造方法。
【請求項18】
前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂である請求項11ないし17のいずれかに記載される繊維強化熱硬化性樹脂成型体の製造方法。
【請求項19】
前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂の何れかである請求項11ないし18のいずれかに記載される繊維強化熱硬化性樹脂成型体の製造方法。

【公開番号】特開2013−56985(P2013−56985A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195507(P2011−195507)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000116404)阿波製紙株式会社 (19)
【Fターム(参考)】