説明

プリプレグの製造方法

【課題】 ビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂の有機溶剤溶液品の保存安定性を向上させて、工業的な規模で、安定したプリプレグの製造方法を提供する。
【解決手段】 ビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂のプレポリマーと有機溶剤とを含有する熱硬化性樹脂組成物ワニスを基材に含浸または塗布し、乾燥してなるプリプレグの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物ワニスを用いるプリプレグの製造方法において、工業的な規模で、安定したプリプレグを製造する方法に関するものである
【背景技術】
【0002】
近年、プリント配線板材料では、電子機器の小型化によるデザインの細密化により、特に信頼性向上が強く求められており、これに対応するために、誘電特性や耐熱性などの特性に優れるビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂の使用が提案(例えば特許文献1、2参照)されている。しかしながら、このビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂は、有機溶剤に溶解させた溶液品での保存安定性が乏しい問題があった。一般に、プリント配線板材料を、工業的に製造する場合、使用する熱硬化性樹脂組成物の主要原料、例えば、エポキシ樹脂などは、作業性や生産性などの点で、有機溶剤に溶解させた溶液品の状態で保管し、必要に応じて移送、計量を経て、使用されており、その溶液品の保存安定性は、通常、5℃保管において最低3ヶ月以上が必要とされている。これに対して、ビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂の溶液品は、5℃保管において2週間程度の短期間で固形分が析出するため、ビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物ワニスを使用したプリプレグは、作業性や生産性を犠牲にしてスポット的に製造することは可能ではあるが、工業的な規模で、安定的に製造するためには、溶液品の保存安定性の不足が、大きな障害となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-237162号公報
【特許文献2】特開2002-179761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記した問題を解決する、ビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂の有機溶剤溶液品の保存安定性を向上させ、工業的な規模で、安定したプリプレグの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、この課題を解決するため、鋭意検討した結果、ビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂をプレポリマー化することで、有機溶剤溶液品の保存安定性が向上することを見出し、本発明に到達した。すなわち本発明は、下記一般式(1)で表わすビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂のプレポリマーと有機溶剤とを含有する熱硬化性樹脂組成物ワニスを、基材に含浸または塗布し、乾燥してなるプリプレグの製造方法であり、好ましくは、プレポリマーの軟化点が75〜100℃で、且つ150℃でのICI粘度が0.40Pa・s〜2.00Pa・sであるプリプレグの製造方法であり、より好ましくは、熱硬化性樹脂組成物が、更にシアン酸エステル化合物および/またはビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物であるプリプレグの製造方法であり、熱硬化性樹脂組成物が、更に無機充填剤を含有する熱硬化性樹脂組成物であるプリプレグの製造方法であり、これらのプリプレグの製造方法から得られるプリプレグと銅箔とを組み合わせ、加熱硬化してなる銅張積層板である。
【化1】

【発明の効果】
【0006】
本発明のビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂のプレポリマーは、従来のビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂と比較し、有機溶剤溶液品の保存安定性が大幅に改善されるため、このプレポリマーを用いることによって、これを含有する熱硬化性樹脂組成物を使用する際の作業性や生産性などの点での制約が無くなり、工業的規模で、安定したプリプレグの製造が可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0007】
一般に、プリント配線板材料を、工業的に製造する場合、使用する熱硬化性樹脂組成物の主要原料、例えば、エポキシ樹脂などは、有機溶剤に溶解させた溶液品の状態で使用することが、作業性や生産性などの点で不可欠である。この際、主要原料は、生産計画に基づき、発注、保管、使用されることになるが、溶液品の保存安定性が乏しい場合、保管期間に余裕がなくなり、急な製造スケジュール変更へ対応できない等製造計画の柔軟性に大きな障害となる。また原材料メーカーにおいても同様の事情が生じることから、その溶液品の保存安定性は、通常、5℃保管において、最低3ヶ月以上が必要とされている。本発明の基となるビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂とは、一般式(1)で示される構造を有するエポキシ樹脂で、N数が通常1〜10程度の混合物であり、日本化薬(株)から、NC-3000(軟化点:53〜63℃、粘度:0.04〜0.11Pa・s)やNC−3000H(軟化点:65〜75℃、粘度:0.25〜0.35Pa・s)等として市販されているが、このビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂の溶剤溶液品は、保存安定性が乏しい問題がある。
【化2】

【0008】
本発明で使用するビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂のプレポリマーとは、上記ビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂を、触媒の存在もしくは不存在下で加熱して、エポキシ基の一部を反応させることで、軟化点や粘度を高めたものである。この際使用する触媒としては、例えば、有機金属塩類、イミダゾール類及びその誘導体、第3級アミン等が挙げられ、その使用量は通常数十〜数百ppmであるが、触媒量が多い場合は、得られるプレポリマーの保存安定性に問題が生じる。このプレポリマーの性状としては、軟化点が75〜100℃で、且つ150℃でのICI粘度が0.40Pa・s〜2.00Pa・sであることが好ましく、特に、軟化点が75℃〜90℃で、且つ150℃でのICI粘度が0.40Pa・s〜1.50Pa・sであることが、より好ましい。本発明における軟化点の測定方法はJIS K7234によるものであり、150℃でのICI粘度の測定方法は、ICIコーンプレート粘度計[RESEACH EQUIPMENT(LONDON)LTD.製]によるものである。プレポリマーの軟化点が75℃未満、もしくは150℃でのICI粘度が0.40Pa・s未満であると、有機溶剤溶液品において、低分子量物質が析出し易く、保存安定性が不十分となる。また、軟化点が100℃より高いか、もしくは150℃でのICI粘度が2.00Pa・sより大きいと、有機溶剤への溶解性が低下する。またプレポリマーのエポキシ当量(JIS K7236による)は、特に限定されないが、290g/eq.〜350g/eq.の範囲が好ましい。熱硬化性樹脂組成物中のビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂のプレポリマーの含有量は、特に限定されないが、熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分において、15重量%〜60重量%が好ましい。
【0009】
本発明において使用される有機溶剤としては、エポキシ樹脂の有機溶剤として一般に使用されるものであれば特に限定されない。具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、キシレンなどが挙げられ、1種もしくは2種以上を混合して使用する事も可能であるが、特にメチルエチルケトンの使用が好ましい。
【0010】
本発明において使用される熱硬化性樹脂組成物には、シアン酸エステル化合物、ビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂、マレイミド化合物、ポリイミド樹脂、2重結合付加ポリフェニレンエーテル樹脂などの公知の熱硬化性樹脂を含有させることが好ましく、特に、シアン酸エステル化合物、ビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂、マレイミド化合物からなる群から選択された1種もしくは2種以上を含有させることがより好ましい。
【0011】
本発明において使用される熱硬化性樹脂組成物に好適に使用されるシアン酸エステル化合物とは、1分子中に2個以上のシアナト基を有する化合物であれば特に限定されない。具体的には、1,3−又は1,4−ジシアナトベンゼン、1,3,5−トリシアナトベンゼン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、1,3−、1,4−、1,6−、1,8−、2,6−又は2,7−ジシアナトナフタレン、1,3,6−トリシアナトナフタレン、4,4’−ジシアナトビフェニル、ビス(4−シアナトフェニル)メタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、ビス(4−シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナトフェニル)スルホンおよび各種ノボラック樹脂とハロゲン化シアンとの反応により得られるシアン酸エステル化合物などが挙げられ、1種もしくは2種以上を混合して使用する事も可能である。より好適なものとしては、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、フェノールノボラック型のシアン酸エステル化合物、ナフトールアラルキル型のシアン酸エステル化合物が挙げられる。本発明で使用する熱硬化性樹脂組成物中のシアン酸エステル化合物の含有量は、特に限定されないが、熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分おいて、15重量%〜60重量%が好ましい。
【0012】
本発明において使用される熱硬化性樹脂組成物に好適に使用されるビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂とは、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂以外の化合物であれば特に限定されない。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、3官能フェノール型エポキシ樹脂、4官能フェノール型エポキシ樹脂、フェノールアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂などが挙げられ、1種もしくは2種以上を混合して使用する事も可能である。より好適なものとしては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、3官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。本発明で使用する熱硬化性樹脂組成物中のビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂の含有量は、特に限定されないが、熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分において、10重量%〜40重量%が好ましい。
【0013】
本発明において使用される熱硬化性樹脂組成物に好適に使用されるマレイミド化合物とは、N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ポリフェニルメタンマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミドなどが挙げられ、1種もしくは2種以上を混合して使用することも可能である。より好適なものとしては、N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタンが挙げられる。本発明で使用する熱硬化性樹脂組成物中のマレイミド化合物の含有量は、特に限定されないが、熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分において、10重量%〜40重量%が好ましい。
【0014】
本発明において使用される熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、硬化剤や反応速度を適宜調節するために硬化促進剤を添加する。これらは、エポキシ樹脂の硬化剤や熱硬化性樹脂の硬化促進剤として一般に使用されているものであれば、特に限定されない。代表的な例としては、硬化剤としては、アミン化合物、フェノール化合物、酸無水物、ジシアンジアミド等が挙げられ、硬化促進剤としては、有機金属塩、イミダゾール類及びその誘導体並びに第3級アミンなどが挙げられ、1種もしくは2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
【0015】
本発明において使用される熱硬化性樹脂組成物に好適に使用される無機充填剤とは、プリント配線板材料用に一般に使用されているものであれば、特に限定されないが、その具体例としては、天然シリカ、溶融シリカ、アモルファスシリカ、中空シリカ等のシリカ類、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム加熱処理品(水酸化アルミニウムを加熱処理し、結晶水の一部を減じたもの)、ベーマイト、水酸化マグネシウム等の金属水和物、酸化モリブデン、モリブデン酸亜鉛等のモリブデン化合物、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、アルミナ、クレー、カオリン、タルク、焼成クレー、焼成カオリン、焼成タルク、マイカ、ガラス (EガラスやDガラスなど)の短繊維または微粉末類、中空ガラスなどが挙げられ、1種もしくは2種以上を混合して使用することも可能である。無機充填剤の平均粒子径としては、0.1〜10μm、好ましくは0.2〜5μmであり、粒度分布や平均粒子径を変化させたものを適宜組み合わせて使用することも出来る。より好適なものとしては、天然シリカ、溶融シリカ、水酸化アルミニウム、ベーマイト、モリブデン酸亜鉛、アルミナ、焼成タルクが挙げられる。本発明で使用する熱硬化性樹脂組成物中の無機充填剤の含有量は、特に限定されないが、熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分100重量部に対して、20重量部〜150重量部が好ましい。
【0016】
本発明において使用される基材としては、プリント配線板材料用積層板に一般に使用されているものであれば、特に限定されない。代表的な例としては、ガラス繊維布、有機繊維布、ガラス繊維不織布、有機繊維不織布などが挙げられる。基材の厚みについては、特に制限はないが通常0.01〜0.5mm程度を使用する。また、シランカップリング材などで表面処理したものや機械的に開繊処理を施したものは、吸湿耐熱性の面から好適である。
【0017】
本発明のプリプレグの製造方法は、本発明において使用される熱硬化性樹脂組成物ワニスを、一般的な含浸塗布設備等を用いて基材に含浸又は塗布し、乾燥する方法による。具体的には、熱硬化性樹脂組成物ワニスを基材に含浸又は塗布させた後、通常100〜200℃の乾燥機で、1〜30分加熱し、半硬化(Bステージ化)させる方法などによりプリプレグを得る。基材に対する樹脂組成物の付着量は、プリプレグの樹脂量(無機充填材を含む)で20〜90重量%の範囲である。
【0018】
本発明により得られたプリプレグ1枚以上と銅箔を組み合わせ、加圧加熱することで銅張積層板を得ることができる。使用する銅箔は、プリント配線板材料用途に用いられているものであれば特に限定はされない。成形条件としては、通常のプリント配線板材料用積層板及び多層板の手法が適用できる。例えば、多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成型器などを使用し、温度:100〜300℃、圧力2〜100kg/cm、加熱時間:0.05〜5時間の範囲が一般的である。また、本発明のプリプレグと別途作成した内層用の配線板を組合せ、積層成形することにより、多層板を製造することができる。
【実施例】
【0019】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。尚、『部』は重量部を表す。
(参考例1)
ビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂のプレポリマー(NC−3000FH、日本化薬製)の中で、軟化点75℃、粘度0.50Pa・s、エポキシ当量303g/eq.の性状を有するプレポリマーAを選択し、プレポリマーA各々70部に対し、メチルエチルケトン(MEK)、ジメチルホルムアミド(DMF)、キシレン各々30部を別々に加えて溶解させ、固形分濃度70wt%のMEK、DMF、キシレンの各溶液品を得た。これらの溶液品約150gを200mlの広口ガラス瓶に入れ、密閉して、5℃の冷蔵庫で保管し、保存安定性試験を行った結果を表1に示す。
【0020】
(参考例2)
参考例1において、プレポリマーAの代わりにビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂のプレポリマー(NC−3000FH)の中で、軟化点79℃、粘度0.60Pa・s、エポキシ当量300g/eq.の性状を有するプレポリマーBを選択し、プレポリマーB各々60部に対し、MEK、DMF、キシレン各々40部を別々に加えて溶解させ、固形分濃度60wt%のMEK、DMF、キシレンの各溶液品を得た。これらの溶液品を使用し、参考例1と同様にして、保存安定性試験を行った結果を表1に示す。
【0021】
(参考例3)
参考例1において、プレポリマーAの代わりにビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂のプレポリマー(NC−3000FH)の中で、軟化点77℃、粘度0.55Pa・s、エポキシ当量290g/eq.の性状を有するプレポリマーCを選択し、プレポリマーC各々80部に対し、MEK、DMF、キシレン各々20部を別々に加えて溶解させ、固形分濃度80wt%のMEK、DMF、キシレンの各溶液品を得た。これらの溶液品を使用し、参考例1と同様にして、保存安定性試験を行った結果を表1に示す。
【0022】
(比較参考例1)
参考例1において、プレポリマーAの代わりにビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂(NC−3000、日本化薬製)の内、軟化点63℃、粘度0.30Pa・s、エポキシ当量288g/eq.の性状を有する樹脂Dを選択し、これを使用する以外は参考例1と同様に行い、保存安定性試験を行った結果を表1に示す。
【0023】
(比較参考例2)
参考例1において、プレポリマーAの代わりにビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂(NC−3000H、日本化薬製)の中で、軟化点71℃、粘度0.43Pa・s、エポキシ当量264g/eq.の性状を有する樹脂Eを選択し、樹脂E各々50部に対し、MEK、DMF、キシレン各々50部を別々に加えて溶解させ、固形分濃度50wt%のMEK、DMF、キシレンの各溶液品を得た。これらの溶液品を使用し、参考例1と同様にして、保存安定性試験を行った結果を表1に示す。
【0024】
【表1】


(判定方法):目視にて毎日観察、沈殿物が確認されたものを析出とした。(各n=3)
【0025】
(実施例1)
2,2−ビス(4-シアナトフェニル)プロパン50部を150℃に溶融させ撹拌しながら4時間反応させ、プレポリマーを得た。これをメチルエチルケトン50部に溶解しプレポリマー溶液とした後、参考例1で得られたビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂のプレポリマーのMEK溶液の5℃、30日間保管品(固形分濃度70wt%) 71.4部、オクチル酸亜鉛0.01部を混合しワニスを得た。(ワニスには樹脂の沈殿は認められなかった。)このワニスを厚さ0.1mmのEガラスクロス(WEA116H、日東紡製)に含浸させ、180℃で10分加熱乾燥させて、樹脂量50wt%のプリプレグを得た。このプリプレグを8枚重ね、その上下に12μmの電解銅箔を配置し、圧力30kg/cm、温度230℃で、120分間プレスを行い、厚さ0.8mmの銅張積層板を得た。得られた銅張り積層板の物性測定結果を表2に示す。
【0026】
(実施例2)
参考例2で得られたビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂のプレポリマーのMEK溶液の5℃、30日間保管品(固形分濃度60wt%)80部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(ESCN220H、住友化学製)30部、フェノールノボラック樹脂(TD2090、水酸基当量105、大日本インキ製)22部、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.01部を混合しワニスを得た。(ワニスには樹脂の沈殿は認められなかった。)これに水酸化アルミニウム(CL303、住友化学製)100部、モリブデン酸亜鉛をタルクに担持したもの(ケムガード911C、モリブデン酸亜鉛担持:10重量%、シャーウィン・ウィリアムズ社製)5部を加えて混合したワニスを使用して、実施例1と同様に行い、プリプレグを得た。このプリプレグを8枚重ね、その上下に12μmの電解銅箔を配置し、圧力30kg/cm、温度180℃で、120分間プレスを行い、厚さ0.8mmの銅張積層板を得た。得られた銅張り積層板の物性測定結果を表2に示す。
【0027】
(実施例3)
実施例1で得られた2,2−ビス(4-シアナトフェニル)プロパンのプレポリマー溶液(固形分濃度50wt%)100部、参考例3で得られたビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂のプレポリマーのMEK溶液の5℃、30日間保管品(固形分濃度80wt%)37.5部、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン (BMI-70、ケイ・アイ化成製)20部、オクチル酸亜鉛0.01部を混合しワニスを得た。(ワニスには樹脂の沈殿は認められなかった。)これに球状合成シリカ(SC2050、アドマテックス製)100部を加えて混合したワニスを使用して、実施例1と同様に行い、厚さ0.8mmの銅張積層板を得た。得られた銅張り積層板の物性測定結果を表2に示す。
【0028】
(比較例1)
比較参考例1で得られたビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂のMEK溶液の5℃、30日間保管品(固形分濃度70wt%)71.4部、実施例1で得られた2,2−ビス(4-シアナトフェニル)プロパンのプレポリマー溶液(固形分濃度50wt%)100部、オクチル酸亜鉛0.01部を混合しワニスを得た。(ワニスには白い沈殿物が認められた。)このワニスを使用して、実施例1と同様に行い、厚さ0.8mmの銅張積層板を得た。得られた銅張り積層板の物性測定結果を表2に示す。
【0029】
(比較例2)
比較参考例2で得られたビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂のMEK溶液の5℃、30日間保管品(固形分濃度50wt%)100部、実施例1で得られた2,2−ビス(4-シアナトフェニル)プロパンのプレポリマー溶液(固形分濃度50wt%)100部、オクチル酸亜鉛0.01部を混合しワニスを得た。(ワニスには白い沈殿物が認められた。)このワニスを使用して、実施例1と同様に行い、厚さ0.8mmの銅張積層板を得た。得られた銅張り積層板の物性測定結果を表2に示す。
【0030】
【表2】


(試験方法)
・エッチング後外観:300mm×300mm角の銅張積層板の銅箔をエッチング除去した後、外観を目視で観察。(n=3)
・銅箔ピール強度:JIS C6481に準拠して測定(n=5の平均値)
・半田耐熱性:50mm×50mm角の銅張積層板を、280℃半田槽に10分間フロートした後、外観を目視で観察。(n=3の平均値)
・Tg:JIS C6481に準拠しDMA法にて測定(n=3の平均値)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表わすビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂のプレポリマーと有機溶剤とを含有する溶液を保管して、
該保管後の溶液のうち沈殿物が確認されない溶液と、シアン酸エステル化合物およびマレイミド化合物からなる群より選択された1種もしくは2種以上の熱硬化性樹脂と、を含有する熱硬化性樹脂組成物ワニスを基材に含浸または塗布し、乾燥してなるプリプレグの製造方法。
【化1】

【請求項2】
該プレポリマーの軟化点が75℃〜100℃で、且つ150℃でのICI粘度が0.40Pa・s〜2.00Pa・sである請求項1記載のプリプレグの製造方法。
【請求項3】
該熱硬化性樹脂組成物が、更に無機充填剤を含有する熱硬化性樹脂組成物である請求項1または2に記載のプリプレグの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のプリプレグの製造方法から得られるプリプレグと銅箔とを組み合わせ、加熱硬化してなる銅張積層板。

【公開番号】特開2013−10970(P2013−10970A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−228745(P2012−228745)
【出願日】平成24年10月16日(2012.10.16)
【分割の表示】特願2006−254684(P2006−254684)の分割
【原出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】