説明

プリプレグ用エポキシ樹脂組成物、プリプレグ、および多層プリント配線板

【課題】
燃焼時に有害な物質を生成することがなく、難燃性、耐熱性、熱時剛性に優れ、かつ、吸湿性に優れた多層プリント配線板を含む、プリント配線板の製造に用いられるプリプレグ用エポキシ樹脂組成物、該プリプレグ用エポキシ樹脂組成物を用いたプリプレグ、該プリプレグを用いた多層プリント配線板を提供する。
【解決手段】
分子内にエポキシ樹脂と反応性を有するフェノール性水酸基を平均1.8個以上3個未満有し、かつ、平均0.8個以上のリン元素を有するリン化合物、分子内にエポキシ基を平均1.8個以上2.6個未満有する2官能エポキシ樹脂、1分子内にエポキシ基を平均2.8個以上含む多官能エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填剤、スズ酸亜鉛化合物を必須成分とするプリプレグ用エポキシ樹脂組成物であって、少なくとも、リン化合物と、2官能エポキシ樹脂及び多官能エポキシ樹脂、または2官能エポキシ樹脂のみを予め反応させた予備反応エポキシ樹脂を配合することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層プリント配線板を含むプリント配線板の製造に用いられるプリプレグ用
エポキシ樹脂組成物、該プリプレグ用エポキシ樹脂組成物を用いたプリプレグ、該プリプ
レグを用いた多層プリント配線板に関するものであり、特に、プラスチックパッケージ用
プリント配線板およびカード用プリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチックパッケージ用プリント配線板用材料やカード用プリント配線板用材料には、以下に示す3つの条件が近年、要求されてきている。
第1に、特に毒性の強いポリ臭素化されたジベンゾダイオキシン、フラン等の化合物が形成される可能性のあるハロゲン系化合物を難燃剤として添加しなくても優れた難燃性を有していること。
【0003】
第2に、従来の鉛を含むはんだの処理温度よりも、約10〜20℃高い鉛フリーはんだの処理温度でデラミネーションの発生することのない優れた耐熱性を有していること。
第3に、鉛フリーはんだの使用により、従来のリフロー温度より高温になるため、プリント配線板の反り低減対策として熱時で高い剛性を有していること。
【0004】
これらの要求に対して、2官能エポキシ樹脂とリン含有2官能フェノールを予め反応させた予備反応エポキシ樹脂をベースとした、エポキシ樹脂組成物100質量部に対して、無機充填剤を110質量部以上添加することによって、ハロゲン系化合物を含有することなく難燃性を得ると共に、優れた耐熱性と熱時剛性を改善する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、上記の方法では、更に高密度化が進んでいるプリント配線板を歩留まりよく安定して製造することに対して、吸湿時の寸法変化が大きく、良好な製造性と優れた耐熱性、熱時剛性の両立が困難であることが指摘されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許WO2006/059363
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、燃焼時に有害な物質を生成することがなく、難燃性、耐熱性、熱時剛性に優れ、且つ、吸湿性の低い多層プリント配線板を含むプリント配線板の製造に用いられるプリプレグ用エポキシ樹脂組成物、該プリプレグ用エポキシ樹脂組成物を用いたプリプレグ、該プリプレグを用いた多層プリント配線板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明のプリプレグ用エポキシ樹脂組成物は、分子内にエポキシ樹脂と反応性を有するフェノール性水酸基を平均1.8個以上3個未満有し、かつ、平均0.8個以上のリン元素を有するリン化合物、分子内にエポキシ基を平均1.8個以上2.6個未満有する2官能エポキシ樹脂、1分子内にエポキシ基を平均2.8個以上含む多官能エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填剤、スズ酸亜鉛化合物を必須成分とするプリプレグ用エポキシ樹脂組成物であって、少なくとも、リン化合物と、2官能エポキシ樹脂及び多官能エポキシ樹脂、または2官能エポキシ樹脂のみを予め反応させた予備反応エポキシ樹脂を配合することを特徴としている。
【0009】
このプリプレグ用エポキシ樹脂組成物において、予備反応エポキシ樹脂が、エポキシ樹脂成分全体に対して20質量%以上55質量%以下の配合量であり、2官能エポキシ樹脂が、下記化学式(1)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂、化学式(2)で表されるナフタレン型エポキシ樹脂、化学式(3)で表される特殊2官能エポキシ樹脂、化学式(4)で表されるジシクロペンタジエン含有2官能エポキシ樹脂、化学式(5)で表わされるフェノールアラルキル含有2官能エポキシ樹脂の群からから選ばれる少なくとも1種であり、硬化剤が、ジシアンジアミド及び/または多官能フェノール系化合物であり、無機充填剤が、エポキシ樹脂成分100質量部に対して、110質量部以上200質量部未満の配合量であり、スズ酸亜鉛化合物が、エポキシ樹脂成分100質量部に対して、0.05質量部以上5質量部未満の配合量であることが好ましい。
【0010】
【化1】

【0011】
【化2】

【0012】
【化3】

【0013】
【化4】

【0014】
【化5】

(式中、nは整数を示す。)
【0015】
また、このプリプレグ用エポキシ樹脂組成物において、予備反応エポキシ樹脂が、リン化合物のフェノール性水酸基1当量に対して、2官能エポキシ樹脂のエポキシ当量が1.2当量以上3当量未満であり、多官能エポキシ樹脂のエポキシ当量が0.05当量以上0.8当量未満であることが好ましい。
また、このプリプレグ用エポキシ樹脂組成物において、リン化合物が、下記化学式(6)、化学式(7)、化学式(8)のいずれかで表されるリン化合物であることが好ましい。
【0016】
【化6】

【0017】
【化7】

【0018】
【化8】

【0019】
また、このプリプレグ用エポキシ樹脂組成物において、リン元素の含有量が、エポキシ樹脂全体に対して0.5質量%以上3.5質量%未満であることが好ましい。
また、このプリプレグ用エポキシ樹脂組成物において、多官能エポキシ樹脂が、ベンゼン環がメチレン結合以外の結合で連結されていることが好ましい。
また、このプリプレグ用エポキシ樹脂組成物において、硬化剤として用いられる多官能フェノール系化合物が、下記化学式(9)または(10)で表されるいずれかの多官能フェノール系化合物であることが好ましい。
【0020】
【化9】

(式中、nは整数を示す。)
【0021】
【化10】

(式中、nは整数を示す。)
【0022】
また、このプリプレグ用エポキシ樹脂組成物において、スズ酸亜鉛化合物が、ZnSnO、及び/またはZnSn(OH)であることが好ましい。
また、このプリプレグ用エポキシ樹脂組成物において、無機充填剤がスズ酸亜鉛化合物により被覆されているものであることが好ましい。
【0023】
また、このプリプレグ用エポキシ樹脂組成物において、スズ酸亜鉛化合物により被覆されている無機充填剤が、少なくとも、タルク、水酸化アルミニウム、ベーマイト、アルミナ、水酸化マグネシウム、シリカのいずれか1種であることが好ましい。
また、このプリプレグ用エポキシ樹脂組成物において、スズ酸亜鉛化合物により被覆されている無機充填剤の平均粒径が0.05μm以上であることが好ましい。
【0024】
さらに、本発明のプリプレグは、上記のプリプレグ用エポキシ樹脂組成物を基材に含浸させ、半硬化状態としたプリプレグであることを特徴としている。
また、本発明の多層プリント配線板は、回路パターンを形成した内層用基板に上記のプリプレグを積層成形した多層プリント配線板であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0025】
上記本発明のプリプレグ用エポキシ樹脂組成物によれば、特定のリン化合物と、2官能エポキシ樹脂及び多官能エポキシ樹脂、または2官能エポキシ樹脂のみを予め反応させた予備反応エポキシ樹脂を配合したので、プリプレグ用エポキシ樹脂組成物を安定して調製することが可能となり、該組成物による多層プリント配線板は、高いガラス転移温度(Tg)(以下、Tgと略称する)を有し熱時剛性に優れ、充分な難燃性、耐熱性を有し、吸湿性の低いものとすることができる。
【0026】
上記発明によれば、上記したプリプレグ用エポキシ樹脂組成物をプリプレグに適用することで、含浸性の良好なプリプレグを得ることができる。
上記発明によれば、以上の顕著な効果は、多層プリント配線板としても実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
(リン化合物)
本発明で用いるリン化合物としては、分子内にエポキシ樹脂と反応性を有するフェノール性水酸基を平均1.8個以上3個未満有し、かつ、平均0.8個以上のリン元素を有するものであれば、特に限定することなく用いることができる。
【0028】
1分子内のフェノール性水酸基が平均1.8個未満であると、後述する2官能エポキシ樹脂と反応して生成される線状高分子化合物を得ることができず、平均3個以上であると、2官能エポキシ樹脂や後述する多官能エポキシ樹脂との反応でゲル化が起こり、エポキシ樹脂組成物を安定して調整することができない。また、1分子内のリン元素が平均0.8個未満であると、十分な難燃性を得ることができなくなる。また、リン元素の実質的な上限個数は平均2.5個である。
【0029】
リン元素の含有量は、プリプレグ用エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂全体の0.5質量%以上3.5質量%未満であることが好ましい。上記の範囲内であるとエポキシ樹脂にハロゲン化合物を添加せずに十分な難燃性を得ることができる。
【0030】
リン元素の含有量が0.5質量%未満であると、十分な難燃性を得ることができないことがあり、3.5質量%以上であると、多層プリント配線板が吸湿し易くなったり、耐熱性が低下したりするおそれがある。
【0031】
リン化合物としては、前記化学式(6)、化学式(7)、化学式(8)で表されるいずれかのリン化合物を特に好ましく用いることができる。
【0032】
これらを用いることにより、その他の2官能フェノール性水酸基を有するリン化合物を用いる場合に比べて、多層プリント配線板の難燃性、耐熱性をさらに向上させることができる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0033】
(エポキシ樹脂)
本発明で用いるエポキシ樹脂としては、1分子内にエポキシ基を平均1.8個以上2.6個未満有する2官能エポキシ樹脂、1分子内にエポキシ基を平均2.8個以上含む多官能エポキシ樹脂を含有する。
【0034】
(2官能エポキシ樹脂)
本発明で用いられる2官能エポキシ樹脂としては、1分子内におけるエポキシ基の平均個数が平均1.8個以上2.6個未満のものであれば、特に限定することなく用いることができる。
【0035】
2官能エポキシ樹脂1分子内のエポキシ基が平均1.8個未満であると、上記リン化合物と反応して、線状高分子を得ることができず、平均2.6個以上であると、上記リン化合物と反応してゲル化が起こり易くなり、エポキシ樹脂組成物を安定して調整することができなくなる。
【0036】
2官能エポキシ樹脂としては、前記化学式(1)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂、化学式(2)で表されるナフタレン型エポキシ樹脂、化学式(3)で表される特殊2官能エポキシ樹脂、化学式(4)で表されるジシクロペンタジエン含有2官能エポキシ樹脂、化学式(5)で表されるフェノールアラルキル含有2官能エポキシ樹脂のいずれかを特に好適に用いることができる。
【0037】
これらを用いることにより、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のような一般的なエポキシ樹脂を用いた場合よりも、多層プリント配線板のTgを高めることができ、また、これらは剛直性を有するため、高温加熱時における強度が良好となる。
【0038】
(多官能エポキシ樹脂)
本発明で用いられる多官能エポキシ樹脂は、1分子内のエポキシ基の個数が、平均2.8個以上、好ましくは平均2.8個以上3.8個未満のものであれば、その他の分子構造は特に制限なく用いることができる。
【0039】
エポキシ基の平均個数が、2.8個以上の多官能エポキシ樹脂を配合することにより、優れたTgを得ることができ、エポキシ基の個数が平均2.8個未満であると、多層プリント配線板の架橋密度が不足し、Tgを高める効果を得ることができない。
【0040】
また、エポキシ基の平均個数を、2.8個以上3.8個未満の範囲とすることにより、リン化合物や2官能エポキシ樹脂と反応しても急激に分子量が増加することなく低く抑えられるため粘度が低くなり、プリプレグ用エポキシ樹脂組成物を安定して調整することができる。
【0041】
上記多官能エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン含有フェノールノボラック型エポキシ樹脂、メチレン結合以外の結合でベンゼン環が連結されている多官能エポキシ樹脂を好ましく用いることができる。
これらは、いずれも反応性が低いため、これらを用いて調整されるプリプレグ用エポキシ樹脂組成物の粘度は低いものとなり、特に基材への含浸作業等を円滑に行うことが可能となる。
【0042】
ジシクロペンタジエン含有フェノールノボラック型エポキシ樹脂、メチレン結合以外の結合でベンゼン環が連結されている多官能エポキシ樹脂は、得られる多層プリント配線板のTgを著しく高めることができると共に、密着性を向上させ、吸湿し難くすることができるため特に好ましい。
上記の多官能エポキシ樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0043】
(予備反応エポキシ樹脂)
本発明の予備反応エポキシ樹脂は、リン化合物と、2官能エポキシ樹脂及び多官能エポキシ樹脂の両方、または、2官能エポキシ樹脂のみを予め予備反応させておくものである。
この予備反応エポキシ樹脂は、リン化合物の80質量%以上のものと、エポキシ樹脂の全体または一部とを反応させて得られるものが好ましい。
【0044】
リン化合物が80質量%未満であると、未反応のリン含有2官能フェノール化合物が多く残り、多層プリント配線板の吸湿後のはんだ耐熱性や、耐薬品性を改善することができなくなり、また、長期絶縁信頼性等に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0045】
また、予備反応エポキシ樹脂は、リン化合物のフェノール性水酸基1当量に対する2官能エポキシ樹脂のエポキシ当量が1.2当量以上3当量未満となるように設定するものであり、多官能エポキシ樹脂のエポキシ当量が0.05当量以上0.8当量未満となるように設定する。
【0046】
2官能エポキシ樹脂のエポキシ当量を上記のように設定することにより、線状高分子化合物を十分に生成することができ、その結果、強靱性、可撓性、接着力、及び加熱時における応力緩和に優れた多層プリント配線板を得ることができる。
【0047】
また、2官能エポキシ樹脂及び、多官能エポキシ樹脂のエポキシ当量を上記のように設定することにより、高いTgとはんだ耐熱性の両立が可能となる。
2官能エポキシ樹脂が1.2当量未満であると、強靱性が無くなり、多層プリント配線板の吸湿後のはんだ耐熱性や耐薬品性を改善することができなくなるものであり、3当量以上であると耐熱性やガラス転移温度が劣るものとなる。
【0048】
また、多官能エポキシ樹脂が0.05当量未満であると、多層プリント配線板のTgを高めることができないものであり、逆に0.8当量以上であると、安定して予備反応エポキシ樹脂を得ることができなくなる。
上記の予備反応エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂全体に対して20質量%以上、55質量%以下となるように配合する。予備反応エポキシ樹脂の配合量がエポキシ樹脂全体に対して20質量%未満であると、難燃性の効果が得られず、また、55質量%を超えると、エポキシ樹脂の粘度が高くなり、充分に無機充填剤を充填できず、基板の剛性を得ることができない。
【0049】
(無機充填剤)
本発明で用いられる無機充填剤としては、通常用いられる無機充填剤を用いることができ、これらものとしては、タルク、水酸化アルミニウム、ベーマイト、アルミナ、水酸化マグネシウム、シリカ、金属水酸化物、金属酸化物等を挙げることができる。これらの無機充填剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
上記の無機充填剤は、カップリング剤、シリコーンオリゴマーから選ばれる少なくとも1種の表面処理剤で処理されたものであることが好ましい。これらの表面処理を施すことにより、樹脂との接着力をより強化することができる。
【0050】
上記カップリング剤としては、エポキシシラン系カップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、ビニルシラン系カップリング剤、フェニルシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング等を挙げることができる。
また、シリコーンオリゴマーとしてはメチルメトキシシリコーンオリゴマー、メチルフェニルメトキシシリコーンオリゴマー等を挙げることができる。なお、表面処理は、乾式等でおこなうことができる。
【0051】
なお、後述のスズ酸亜鉛化合物により無機充填剤を被覆処理する場合には、スズ酸亜鉛化合物による被覆処理の後で、カップリング剤処理されることが好ましい。
無機充填剤の配合量は、樹脂固形分100質量部に対して、110質量部以上200質量部未満の範囲で配合する。上記の配合範囲とすることにより、熱時の剛性を得ることができる。なお、無機充填剤が樹脂固形分100質量部に対して110質量部未満では、熱時の剛性が得られず、また、200質量部以上では接着力等が低下するおそれがある。
【0052】
(硬化剤)
本発明で用いられる硬化剤としては、ジシアンジアミド及び/または多官能フェノール系化合物を用いることができる。これらのものは、良好な電気的特性を付与すると共に、上述した2官能フェノール性水酸基を有するリン化合物と2官能エポキシ樹脂との反応生成物である線状高分子化合物を硬化させて、強靱性、可撓性、接着力、及び加熱時の応力緩和に優れた多層プリント配線板を得ることができる。
多官能フェノール系化合物としては、前記化学式(9)、化学式(10)で表されるものが特に好ましい。これらを用いることにより、高耐熱性で、かつ、Tgの高い多層プリント配線板を得ることが可能となる。
【0053】
(硬化促進剤)
また、硬化促進剤としては、通常公知の硬化促進剤を用いることができ、これらのものとしては、三級アミン類、イミダゾール類等を挙げることができる。
【0054】
(スズ酸亜鉛化合物)
本発明では、スズ酸亜鉛化合物の中でも、より良好な難燃性の発現が期待できるZnSnO、及び/またはZnSn(OH)を特に好ましく用いることができる。
スズ酸亜鉛化合物の配合量は、樹脂固形分100質量部に対して、0.05質量部以上5質量部未満の範囲である。上記の配合量とすることにより、良好な難燃性を得ることができる。なお、スズ酸亜鉛化合物が樹脂固形分100質量部に対して0.05質量部未満であると、難燃性に対する向上効果がほとんどみられず、また、5質量部以上であると、熱分解温度等が低下するおそれがある。
【0055】
また、上記スズ酸亜鉛化合物は、無機充填剤の粒子表面を被覆する形態で用いることにより、樹脂との接触面積が増加し、より良好な難燃性を得ることが可能となる。
スズ酸亜鉛化合物により被覆される無機充填剤については、積層板の無機充填剤として通常用いられる、タルク、水酸化アルミ、ベーマイト、アルミナ、水酸化マグネシウム、シリカを好適に用いることができる。
【0056】
これらスズ酸亜鉛化合物により被覆される無機充填剤の平均粒径は0.05μm以上であることが好ましい。
平均粒径が0.05μm以上であれば、スズ酸亜鉛化合物による被覆処理も容易だからである。
【0057】
(その他の成分)
本発明においては、上記の成分以外に、上記以外のエポキシ樹脂、顔料、染料、硬化促進剤、各種改質剤、添加剤を必要に応じて適宜配合しても良い。
例えば、黒色の顔料や染料を添加した、黒色化したプリプレグ用エポキシ樹脂組成物を、ガラスクロス等の基材に含浸・乾燥半硬化して得られたプリプレグを用いて得られるプリント配線板は、内層回路検査時の自動画像検査(AOI検査)の精度が上がり、また、UV遮蔽性も付与されるため有用である。
【0058】
上記黒色顔料としては、通常公知の黒色顔料、例えば、カーボンブラック等を用いることができる。また、黒色染料としては、通常公知の黒色染料、例えば、ジスアゾ系、アジン系染料等を用いることができる。
また、改質剤としては、ゴム成分を用いることができ、例えば、ポリビニルアセタール樹脂、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム、ブタジエン−アクリロニトリル共重合ゴム等を用いることができる。
【0059】
(プリプレグ)
上記のようにして得られたエポキシ樹脂組成物を必要に応じて溶媒に溶解して希釈することによってワニスを調整することができる。このワニスを基材に含浸し、例えば乾燥機中で120〜190℃程度の温度で3〜15分間程度乾燥させることによって、半硬化状態(B−ステージ)にしたプリプレグを作製することができる。
基材としては、ガラスクロス、ガラスペーパー、ガラスマット等のガラス繊維布の他、クラフト紙、天然繊維布、有機合成繊維布等を用いることができる。
【0060】
(多層プリント配線板)
またこのようにして製造したプリプレグを所要枚数重ねて、これを、例えば140〜210℃、0.98〜4.9MPaの条件下で加熱、加圧することによって、積層板を製造することができる。
また、所定枚数重ねたプリプレグの片面または両面に金属箔を重ねて、プリプレグと金属箔とを共に加熱、加圧することによって、金属箔張積層板を製造することができる。金属箔としては、銅箔、銀箔、アルミニウム箔、ステンレス箔等を用いることができる。
また、予め回路パターンを形成した内層用基板の上下面にプリプレグを配して、所要枚数重ねたプリプレグの片面、または両面に金属箔を重ねて、プリプレグと金属箔とを共に加熱、加圧することによって、多層プリント配線板を製造することができる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
使用したエポキシ樹脂、硬化剤、リン化合物、無機充填剤を以下に順に示す。
<エポキシ樹脂>
エポキシ樹脂は、以下の9種類のものを使用した。
エポキシ樹脂1:テトラメチルビフェニル型2官能エポキシ樹脂
ジャパンエポキシレジン社製「YX4000H」
化学式(1)においてn=1のもの
(エポキシ基個数:平均2.0個、エポキシ当量195)
【0062】
エポキシ樹脂2:ビフェニル型2官能エポキシ樹脂
ジャパンエポキシレジン社製「YL6121」
化学式(1)においてn=0,1のものの混合物
(エポキシ基個数:平均2.0個、エポキシ当量172)
エポキシ樹脂3:化学式(2)のナフタレン型2官能エポキシ樹脂
大日本インキ工業(株)製「EPICLON−HP4032」
(エポキシ基個数:平均2.0個、エポキシ当量150)
【0063】
エポキシ樹脂4:化学式(4)のジシクロペンタジエン含有2官能エポキシ樹脂
東都化成(株)製「ZX−1257」
(エポキシ基個数:平均2.0個、エポキシ当量257)
エポキシ樹脂5:化学式(5)のフェノールアラルキル型2官能エポキシ樹脂
日本化薬(株)製「NC−3000」
(エポキシ基個数:平均2.0個、エポキシ当量275)
エポキシ樹脂6:メチレン結合以外の結合でベンゼン環が連結されている多官能エポキシ樹脂 日本化薬(株)製「EPPN502H」(エポキシ当量170)
エポキシ樹脂7:メチレン結合以外の結合でベンゼン環が連結されている多官能エポキシ
樹脂 三井石油化学社製 「VG3101」(エポキシ当量219)
エポキシ樹脂8:メチレン結合以外の結合でベンゼン環が連結されている多官能エポキシ
樹脂 住友化学社製「FSX−220」(エポキシ当量220)
エポキシ樹脂9:フェノールノボラック型多官能エポキシ樹脂 大日本インキ工業(株)製「EPICLON−N740」(エポキシ当量180)
【0064】
<硬化剤>
硬化剤は、以下の4種類のものを使用した。
硬化剤1:ジシアンジアミド 試薬(分子量84、理論活性水素当量21)
硬化剤2:多官能フェノール系樹脂 明和化成社製 「MEH7600」(フェノール性水酸基当量 100) 構造式 化学式(9)
硬化剤3:多官能フェノール系樹脂 明和化成製 「MEH7500H」(フェノール性水酸基当量 100) 構造式 化学式(10)
硬化剤4:多官能フェノール系樹脂 大日本インキ工業社製 TD−2093Y(フェノール性水酸基当量 105)フェノールノボラック型フェノール
【0065】
<リン化合物>
リン化合物は、以下の3種類のものを使用した。
リン化合物1:フェノール性水酸基を平均2.0個有する 化学式(8)の化合物 三光(株)製「HCA−HQ」(リン含有量約9.6質量%、水酸基当量約162)
リン化合物2:フェノール性水酸基を平均2.0個有する式(7)の化合物 三光(株)製「HCA−NQ」(リン含有量約8.2質量%、水酸基当量約188)
リン化合物3:フェノール性水酸基を平均2.0個有する式(6)の化合物 (ジフェニルフォスフィニルハイドロキノン)北興化学(株)製「PPQ」(リン含有量約10.1質量%、水酸基当量約155)
【0066】
<無機充填剤>
無機充填剤は、以下の8種類のものを使用した。
無機充填剤1:水酸化アルミニウム 住友化学(株)製「C302A」(平均粒子径:約2μm 熱分解温度:280℃)
無機充填剤2:水酸化アルミニウム 住友化学(株)製「C305」(平均粒子径:約5μm 熱分解温度:270℃)
無機充填剤3:ベーマイト ナバルテック社製「AOH20」(平均粒子径:約7μm 熱分解温度:500℃以上)
無機充填剤4:球状アルミナ デンカ社製「DAW−05」(平均粒子径:約5μm 熱分解温度:500℃以上)
無機充填剤5:球状シリカ 龍森社製「キクロス(登録商標) MSR−04」(平均粒子径:約4.1μm 熱分解温度:500℃以上)
無機充填剤6:球状シリカ デンカ社製「FB−1SDX」(平均粒子径:約1.5μm 熱分解温度:500℃以上)
無機充填剤7:球状シリカ デンカ社製「SFP−30M」(平均粒子径:約0.72μm 熱分解温度:500℃以上)
無機充填剤8:球状シリカ アドマテックス社製「SO−C2」(平均粒子径:約0.5μm 熱分解温度:500℃以上)
【0067】
<スズ酸亜鉛化合物>
スズ酸亜鉛化合物としては、以下の2種類のものを使用した。
スズ酸亜鉛化合物1:Joseph Story社製「STORFLAM(登録商標)ZS」(ZnSnO
スズ酸亜鉛化好物2:Joseph Story社製「STORFLAM(登録商標)ZHS」(ZnSn(OH)
また、スズ酸亜鉛化合物により被覆された無機充填剤としては以下の4種類のものを使用した。
【0068】
スズ酸亜鉛化合物により被覆された無機充填剤1:スズ亜鉛被覆水酸化アルミニウム(スズ酸亜鉛量約17%、無機充填剤の平均粒子径:約5μm)
スズ酸亜鉛化合物により被覆された無機充填剤2:スズ酸亜鉛被覆ベーマイト(スズ酸亜亜鉛量約17%、無機充填剤の平均粒子径:約7μm)
スズ酸亜鉛化合物により被覆された無機充填剤3:スズ酸亜鉛被覆アルミナ(スズ酸亜鉛量約17%、無機充填剤の平均粒子径:約5μm)
スズ酸亜鉛化合物により被覆された無機充填剤4:スズ酸亜鉛被覆シリカ(スズ酸亜鉛量約17%、無機充填剤の平均粒子径:約4μm)
【0069】
<硬化促進剤>
硬化促進剤は、以下のものを使用した。
硬化促進剤1:四国化成社製「2−エチル−4−メチルイミダゾール」
<溶剤>
溶媒は、以下のものを使用した。
溶媒1:メトキシプロパノール(MP)
溶媒2:ジメチルホルムアミド(DMF)
【0070】
<予備反応エポキシ樹脂の調製>
上記のエポキシ樹脂、リン化合物等を使用して、予備反応エポキシ樹脂を以下に示すように7種類調製した。
(予備反応エポキシ樹脂1)
エポキシ樹脂1(70質量部)とリン化合物1(30質量部)を115℃の溶媒1(64.0質量部)、溶媒2(2.67質量部)の混合溶媒中で加熱攪拌し、その後、トリフェニルフォスフィンを0.2質量部添加し、加熱攪拌を継続することにより、固形分中のエポキシ当量約500、固形分60質量%、固形分中のリン含有量約2.9質量%の予備反応エポキシ樹脂1を得た。
【0071】
(予備反応エポキシ樹脂2)
エポキシ樹脂1(60.9質量部)、エポキシ樹脂5(9.3質量部)、リン化合物1(29.8質量部)を115℃の溶媒1(53.8質量部)中で加熱攪拌し、その後、トリフェニルフォスフィンを0.2質量部添加し、加熱攪拌を継続することにより、固形分中のエポキシ当量約540、固形分65質量%、固形分中のリン含有量約2.9質量%の予備反応エポキシ樹脂2を得た。
(予備反応エポキシ樹脂3)
エポキシ樹脂2(67質量部)とリン化合物1(33質量部)を無溶媒下、130℃で加熱攪拌し、その後、トリフェニルフォスフィンを0.2質量部添加し、加熱攪拌を継続することにより、エポキシ当量約500の予備反応エポキシ樹脂3を得た。
【0072】
(予備反応エポキシ樹脂4)
エポキシ樹脂3(70質量部)とリン化合物3(30質量部)を無溶媒下、130℃で加熱攪拌し、その後、トリフェニルフォスフィンを0.2質量部添加し、加熱攪拌を継続することにより、エポキシ当量約300の予備反応エポキシ樹脂4を得た。
(予備反応エポキシ樹脂5)
エポキシ樹脂4(75質量部)とリン化合物1(25質量部)を無溶媒下、130℃で加熱攪拌し、その後、トリフェニルフォスフィンを0.2質量部添加し、加熱攪拌を継続することにより、エポキシ当量約420の予備反応エポキシ樹脂5を得た。
【0073】
(予備反応エポキシ樹脂6)
エポキシ樹脂5(75質量部)とリン化合物1(25質量部)を無溶媒下、130℃で加熱攪拌し、その後、トリフェニルフォスフィンを0.2質量部添加し、加熱攪拌を継続することにより、エポキシ当量約430の予備反応エポキシ樹脂6を得た。
(予備反応エポキシ樹脂7)
エポキシ樹脂1(70質量部)とリン化合物2(30質量部)を無溶媒下、130℃で加熱攪拌し、その後、トリフェニルフォスフィンを0.2質量部添加し、加熱攪拌を継続することにより、エポキシ当量約540の予備反応エポキシ樹脂7を得た。
【0074】
上記のものを用いたエポキシ樹脂組成物の調整は、予備反応エポキシ樹脂、その他のエポキシ樹脂やリン化合物、無機充填剤、硬化剤、スズ酸亜鉛化合物、スズ酸亜鉛化合物により被覆された無機充填剤、溶媒、その他の添加剤を投入して、特殊機化工業社製「ホモミキサー」で約1000rpmにて約120分間混合し、さらに硬化促進剤を配合して再度30分間攪拌、その後、浅田鉄工社製「ナノミル」にて、無機充填剤の分散を行いワニスを作成した。
上記のようにして、表1〜表5に示す配合量で実施例1〜20及び比較例1〜5のプリプレグ用エポキシ樹脂組成物を作成した。その後、これらを用いて、以下のようにしてプリプレグ、銅張積層板、多層積層板を作製した。
【0075】
<プリプレグの製造方法>
上記のようにして調整したプリプレグ用エポキシ樹脂組成物をワニスとしてガラスクロス(日東紡製WEA116E 厚さ 0.1mm)に含浸させ、乾燥機中で120℃〜190℃の範囲で5〜10分間程度乾燥することによって、半硬化状態(B−ステージ)のプリプレグを作製した。
【0076】
<銅張積層板の製造方法>
上記のようにして製造したプリプレグを1枚、2枚、4枚あるいは8枚重ね、さらにこのプリプレグの両面に銅箔を重ね、これを140〜180℃、0.98〜3.9MPaの条件で加熱、加圧することによって、厚さ約0.1mm、約0.2mm、約0.8mmの銅張り積層板を製造した。ここで加熱時間は、プリプレグ全体が160℃以上となる時間が少なくとも90分間以上となるように設定した。またこの際、プレス内が133hPa以下の減圧状態となるようにした。こうすることによって、プリプレグの吸着水を効率よく除去することができ、成形後に空隙(ボイド)が残存することを防ぐことができるからである。なお、銅箔は古河サーキットフォイル(株)製「GT」(厚さ0.012mm)を用いた。
【0077】
<多層積層板の製造方法>
上記のようにして得られたプリプレグ及び厚さ約0.2mmの銅張積層板を用いて、次のようにして多層積層板を製造した。まず、銅張積層板に回路パターンを形成して内層用基板を製造した後、この回路パターンの銅箔(厚さ12μm)に内層処理を施した。次に、この内層用基板の両面に1枚のプリプレグを介して銅箔を重ね、銅張積層板の場合と同様の成形条件で積層成形することによって、多層積層板を製造した。
そして、以上のようにして得られた成形品について、次に示すような物性評価を行った。
【0078】
<難燃性(UL94)消炎時間>
厚さ0.2mmの銅張り積層板から表面の銅箔をエッチングにより除去し、これを長さ125mm、幅13mmに切断し、Under Writers Laboratoriesの「Test for Flammability of Plastic Materials-UL94」に従って燃焼挙動のテストを実施した。また、消炎性の差異をみるため、着火から消炎までの平均時間(秒数)を計測した。
【0079】
<ガラス転移点温度(Tg)>
厚さ0.8mmの銅張り積層板から表面の銅箔をエッチングにより除去し、このものを長さ50mm、幅5mmに切断し、粘弾性スペクトロメーター装置で、5℃/分の昇温条件(DMA法)でtanδを測定して、そのピーク温度をTgとした。
【0080】
<煮沸はんだ耐熱性>
内層用基板を含む多層積層板から上記と同様にして銅箔を除去し、このものを50mm角に切断したものを5準備して、これらを100℃で、2時間、4時間、6時間煮沸した後、288℃のはんだ浴に20秒間浸漬し、その後、フクレ等の外観異常を観察した。
なお、外観異常の観察は、フクレのないものを○、小さなフクレが生じたものを△、大きなフクレが生じたものを×とする通常の判定ルールで実施したが、今回の実施例、比較例では、大きなフクレが生じたものは無かった。
【0081】
<熱時曲げ弾性率>
厚さ0.8mmの銅張り積層板を、上記と同様にして銅張り積層板から銅箔を除去し、このものを長さ100mm、幅25mmに切断し、JIS C6481に準じて、250℃の雰囲気下で熱時曲げ弾性率の測定を行った。
【0082】
<耐熱性>
厚さ0.2mmの銅張り積層板を、50mm角に切断した試験片を準備して、JIS C6481に準じて耐熱性の測定を行った。
各温度に保った恒温槽中に60分間試験片を置き、フクレ等外観変化のない最高温度を耐熱性温度とした。
【0083】
<吸水率>
厚さ0.2mmの銅張り積層板を、上記と同様にして銅張り積層板から銅箔を除去し、このものを125mm角に切断したものを準備して、23℃の蒸留水に入った容器に48時間浸漬した後、その前後の吸水率の測定を行った。
【0084】
<吸水による寸法変化>
厚さ0.2mmの銅張り積層板を、上記と同様にして銅張り積層板から銅箔を除去し、このものを125mm角に切断したものを準備して、23℃の蒸留水に入った容器に48時間浸漬した後、その前後の寸法変化量の測定を行った。
【0085】
<ドリル加工性、穴位置精度>
厚さ0.4mmの銅張り積層板を用い、ドリル径Φ0.15、回転数2000krpm、送り速度2.0m/min、重ね枚数4枚、エントリーボード70μmアルミ板、バックアップボードベークライトの条件で加工し穴位置精度を評価した。
数字は、狙いとした穴あけ加工位置からの位置ズレ量を示す。
【0086】
<銅箔引き剥がし強さ>
厚さ0.8mmの銅張り積層板を準備して、JIS C6481に準じて常態にて銅箔引き剥がし強さの測定を行った。
以上の物性評価の結果を表1〜表5に示す。
【0087】
<評価結果>
表1〜表5の評価結果をみると、スズ酸亜鉛化合物を含む実施例のものは、含まない比較例のものに比して、着火から消炎までに要する時間(秒数)が短く、UL94の難燃性能が優れている。
厚さ0.4mmの銅張り積層板を4枚重ねた状態でドリル加工した時のバックアップボードベークライト(最下層の裏当て板)での穴位置ズレをみると、実施例のものは、位置ズレ距離が小さく、ドリル加工時の穴位置精度が優れている。
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

【0090】
【表3】

【0091】
【表4】

【0092】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内にエポキシ樹脂と反応性を有するフェノール性水酸基を平均1.8個以上3個未満有し、かつ、平均0.8個以上のリン元素を有するリン化合物、分子内にエポキシ基を平均1.8個以上2.6個未満有する2官能エポキシ樹脂、1分子内にエポキシ基を平均2.8個以上含む多官能エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填剤、スズ酸亜鉛化合物を必須成分とするプリプレグ用エポキシ樹脂組成物であって、少なくとも、リン化合物と、2官能エポキシ樹脂及び多官能エポキシ樹脂、または2官能エポキシ樹脂のみを予め反応させた予備反応エポキシ樹脂を配合することを特徴とするプリプレグ用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
予備反応エポキシ樹脂が、エポキシ樹脂成分全体に対して20質量%以上55質量%以下の配合量であり、2官能エポキシ樹脂が、下記化学式(1)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂、化学式(2)で表されるナフタレン型エポキシ樹脂、化学式(3)で表される特殊2官能エポキシ樹脂、化学式(4)で表されるジシクロペンタジエン含有2官能エポキシ樹脂、化学式(5)で表わされるフェノールアラルキル含有2官能エポキシ樹脂の群からから選ばれる少なくとも1種であり、硬化剤が、ジシアンジアミド及び/または多官能フェノール系化合物であり、無機充填剤が、エポキシ樹脂成分100質量部に対して、110質量部以上200質量部未満の配合量であり、スズ酸亜鉛化合物が、エポキシ樹脂成分100質量部に対して、0.05質量部以上5質量部未満の配合量であることを特徴とする、請求項1に記載のプリプレグ用エポキシ樹脂組成物。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

(式中、nは整数を示す。)
【請求項3】
予備反応エポキシ樹脂が、リン化合物のフェノール性水酸基1当量に対して、2官能エポキシ樹脂のエポキシ当量が1.2当量以上3当量未満であり、多官能エポキシ樹脂のエポキシ当量が0.05当量以上0.8当量未満であることを特徴とする請求項1または2に記載のプリプレグ用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
リン化合物が、下記化学式(6)、化学式(7)、化学式(8)のいずれかで表されるリン化合物であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のプリプレグ用エポキシ樹脂組成物。
【化6】

【化7】

【化8】

【請求項5】
リン元素の含有量が、エポキシ樹脂全体に対して0.5質量%以上3.5質量%未満であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のプリプレグ用エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
多官能エポキシ樹脂が、ベンゼン環がメチレン結合以外の結合で連結されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のプリプレグ用エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
硬化剤として用いられる多官能フェノール系化合物が、下記化学式(9)または(10)で表されるいずれかの多官能フェノール系化合物であることを特徴とする請求項2から6のいずれかに記載のプリプレグ用エポキシ樹脂組成物。
【化9】

(式中、nは整数を示す。)
【化10】

(式中、nは整数を示す。)
【請求項8】
スズ酸亜鉛化合物が、ZnSnO及び/またはZnSn(OH)であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のプリプレグ用エポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
無機充填剤がスズ酸亜鉛化合物により被覆されているものであることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のプリプレグ用エポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
スズ酸亜鉛化合物により被覆されている無機充填剤が、少なくとも、タルク、水酸化アルミニウム、ベーマイト、アルミナ、水酸化マグネシウム、シリカのいずれか1種であることを特徴とする請求項9に記載のプリプレグ用エポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
スズ酸亜鉛化合物により被覆されている無機充填剤の平均粒径が0.05μm以上であることを特徴とする請求項9または10のいずれかに記載のプリプレグ用エポキシ樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載のプリプレグ用エポキシ樹脂組成物を基材に含浸させ、半硬化状態としたことを特徴とするプリプレグ。
【請求項13】
回路パターンを形成した内層用基板に請求項12記載のプリプレグを積層成形したことを特徴とする多層プリント配線板。

【公開番号】特開2012−241179(P2012−241179A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115804(P2011−115804)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】