説明

プリプレグ複合テープ、プリプレグテープ巻回体

【課題】巻回状態にしたときの巻き皺の発生を防止できるプリプレグ複合テープ、プリプレグ複合テープを巻回してなるプリプレグテープ巻回体の提供。
【解決手段】光硬化性プリプレグテープ11の片面のみに光透過性を有する剥離性のフィルム12が貼着され、このフィルム12の光硬化性プリプレグテープ11に接する貼着面12bとは反対の表面12a側にシリコーン処理が施されているプリプレグ複合テープ10、このプリプレグ複合テープを巻回してなるプリプレグテープ巻回体21を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性プリプレグテープに剥離性フィルムを貼付してなるプリプレグ複合テープ、該プリプレグ複合テープを巻回状態にしたプリプレグテープ巻回体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配管物や各種構造部材などの補修、補強、あるいは防水用ライニング材等として使用される光硬化性プリプレグテープは、不飽和ポリエステル樹脂などの重合性樹脂に光重合開始剤、増粘剤等を配合してなる光硬化性樹脂組成物をガラスクロスや不織布等の基材に含浸、増粘してつくられている。
また、この光硬化性プリプレグテープ(以下、単にプリプレグテープとも言う)は、図6に示すように、その両面に剥離性のフィルム120を貼着させた複合テープ130の状態とし、樹脂成分を未硬化の状態で保管される。フィルム120としては、透明なプラスチックフィルム等の、光透過性(特に、プリプレグテープの硬化波長の光透過性が充分に確保されているもの)の樹脂フィルムを用いることが一般的である。
【0003】
複合テープ130のプリプレグテープ110を被着物に接着する作業の代表的手順としては、以下のものがある。まず、プリプレグテープ110の両面のフィルム120の片方(以下、第1フィルム121とも言う)をプリプレグテープ110から引き剥がし、この第1フィルム121の引き剥がしによって露出させたプリプレグテープ110の片面を被着物に圧接、粘着させる。次いで、この状態で、プリプレグテープ110に該プリプレグテープ110に被着状態のままのフィルム120(以下、第2フィルム122とも言う表面側フィルムとも言う)を介して光(プリプレグテープ110の樹脂成分を硬化させる波長を含む光)を照射し、プリプレグテープ110の樹脂成分を硬化させた後、表面側フィルムをプリプレグテープ110から引き剥がす。
第2フィルム122は、光照射によって硬化したプリプレグテープ110が粘着力を喪失することで、プリプレグテープ110からの引き剥がしを弱い力で楽に行える。
【0004】
なお、第1フィルム121は、プリプレグテープ110に接する面のみにシリコーン処理が施されており、未硬化のプリプレグテープ110から容易に剥離させることができる。一方、第2フィルム122は、未硬化のプリプレグテープ110からの剥離性を確保するための処理(シリコーン処理等)は施されておらず、未硬化のプリプレグテープ110に対する密着性が確保される。この第2フィルム122は、光照射によるプリプレグテープ110の硬化まで、プリプレグテープ110の粘着力によってプリプレグテープ110に貼着した状態が保たれる。
【0005】
ところで、前記複合テープ130の保管は、プリプレグテープの樹脂成分の未硬化状態を維持するため、遮光性を確保する必要がある。長尺の複合テープは、巻回状態にして、遮光性の袋等の遮光性収納容器に入れて保管することが一般的である。前記複合テープ130は、巻回状態(巻回体)にしたときに、プリプレグテープ110の両面のフィルム120がプリプレグテープ110同士の直接接触、粘着を防ぐ機能を果たすため、巻回体からの引き出し作業を楽に行える。
しかしながら、図7に示すように、従来構成の複合テープ130は、巻回状態にして保管したとき、巻回による該複合テープ130の内周側のフィルムと外周側のフィルムとの周長差によって巻き皺が発生することがあった。複合テープ130の巻き皺は、プリプレグテープ110の被着物に対する接着時の密着作業性に影響を与えることがあるため、この発生を防止したいという要求がある。
【0006】
特許文献1には、硬化性のプリプレグの製造工程における皺発生を防止するために、樹脂がBステージ(半硬化)に至るまで加熱乾燥したプリプレグを、樹脂粘度が最も低くなる温度よりも20〜40℃低い温度に加熱する技術が開示されている。
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、加熱乾燥後のプリプレグを再加熱によって軟化させることで、ロール通過時の皺発生を防止するものであり、巻回状態にしたときの巻き皺の発生を防止できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−193586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
複合テープ130の巻回体の作製にあたって巻き皺の発生を防止できる適切な技術は、現状、存在しないのが実情である。
本発明は、上述の事情に鑑み、巻回状態にしたときの巻き皺の発生を防止できるプリプレグ複合テープ、プリプレグ複合テープを巻回してなるプリプレグテープ巻回体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明では以下の構成を提供する。
第1の発明は、光硬化性プリプレグテープの片面のみに光透過性を有する剥離性のフィルムが貼着され、このフィルムの前記光硬化性プリプレグテープに接する貼着面とは反対の表面側にシリコーン処理が施されていることを特徴とするプリプレグ複合テープを提供する。
第2の発明は、第1の発明のプリプレグ複合テープを巻回してなることを特徴とするプリプレグテープ巻回体を提供する。
第3の発明は、前記プリプレグ複合テープのフィルムが、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルムのいずれか1つであることを特徴とする第2の発明のプリプレグテープ巻回体を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、プリプレグ複合テープを巻回状態にしたときの巻き皺の発生を防止できる。
また、本発明によれば、光硬化性プリプレグテープの片面のみにフィルムを貼付した構成であるため、プリプレグテープの両面にフィルムが貼付された従来構成の複合テープに比べて低コスト化を容易に実現できる。しかも、本発明は、プリプレグ複合テープを巻回状態にした巻回体の、プリプレグテープの長さに対する巻き径縮小も容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る1実施形態のプリプレグ複合テープ、プリプレグテープ巻回体を示す図である。
【図2】図1のプリプレグ複合テープの光硬化性プリプレグテープを被着物に接着固定する作業(被着施工方法)を説明する断面図であり、プリプレグ複合テープを被着物表面に当接させた状態を示す。
【図3】図1のプリプレグ複合テープの光硬化性プリプレグテープを被着物に接着固定する作業(被着施工方法)を説明する断面図であり、未硬化状態の光硬化性プリプレグテープを被着物に密着させた状態を示す。
【図4】図1のプリプレグ複合テープの光硬化性プリプレグテープを被着物に接着固定する作業(被着施工方法)を説明する断面図であり、被着物に接着固定した硬化状態の光硬化性プリプレグテープからフィルムを除去した状態を示す。
【図5】本発明に係るプリプレグテープ巻回体の別態様を説明する図である。
【図6】従来構成の複合テープの構造を説明する図である。
【図7】図6の複合テープを巻回状態にしたときに発生する巻き皺を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の1実施形態を図面を参照して説明する。
図1、図2に示すように、ここで説明するプリプレグ複合テープ10は、液状の光硬化性樹脂組成物をガラスクロスや不織布等の基材(図示略)に含浸、増粘してなる光硬化性プリプレグテープ11(以下、単にプリプレグテープとも言う)の片面のみに、剥離性のフィルム12を貼着(貼付)した概略構成になっている。
【0013】
このプリプレグ複合テープ10のプリプレグテープ11の光硬化性樹脂組成物は、例えば不飽和ポリエステル樹脂といった重合性樹脂に光重合開始剤、増粘剤等を配合したものである。
このプリプレグ複合テープ10において、プリプレグテープ11の光硬化性樹脂組成物は、未硬化状態になっている。また、プリプレグテープ11及びプリプレグ複合テープ10は、光硬化性樹脂組成物が未硬化状態であるとき高い柔軟性を有し、プリプレグテープ11を被着(接着)固定する被着物の表面形状に対する追従性に優れ、被着物表面に対する密着性を容易に確保できる。
【0014】
光硬化性樹脂組成物は、光照射によって硬化する性質を持つものである。この光硬化性樹脂組成物としては、例えば紫外線の照射によって硬化する周知のものを採用できる。また、光硬化性樹脂組成物としては、赤外線の照射によって硬化するもの、可視光の照射によって硬化するものも採用可能である。
【0015】
光硬化性樹脂組成物の重合性樹脂としては、ラジカル重合可能な不飽和ポリエステル樹脂及びカチオン重合可能なエポキシ樹脂が代表的に挙げられるが、安定した増粘体が得やすい、取扱い易いという理由でラジカル重合性樹脂が好適に使用される。
ラジカル重合性樹脂とは、ラジカル重合可能な二重結合性不飽和基を有する化合物を液状ビニル系単量体に溶解した液状樹脂である。
ラジカル重合可能な液状樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂をはじめ、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、アリルエステル樹脂等がその例である。
【0016】
ラジカル重合可能な液状樹脂として使用される不飽和ポリエステル樹脂とは、多価アルコールと不飽和多塩基酸(および必要に応じて飽和多塩基酸)とのエステル化反応による縮合生成物(不飽和ポリエステル)を、スチレンのような液状ビニル系単量体に溶解したものである。
【0017】
ラジカル重合成樹脂に用いられる光重合開始剤としては、光照射によってラジカルを生成し、ラジカル重合可能な液状樹脂を重合、架橋して、組成物全体を硬化させるものを用いる。光照射によってラジカルを発生する重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、アシルホスフィンオキサイド系のような公知の光重合開始剤が挙げられ、具体例としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、1−フェニル−2−ヒドロキシ−3−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
これら重合開始剤は、その1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
ラジカル重合性樹脂組成物を増粘する方法としては、例えば熱可塑性樹脂粒子をゲル化剤として配合してゼリー状に増粘させる方法、ヒドロキシル基を有するアクリレート樹脂をイソシアネート化合物で増粘させる方法等周知の方法が使用できる。増粘剤として使用される熱可塑性樹脂粒子としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物などを単量体とする重合体および共重合体が用いられる。
【0019】
プリプレグテープ11の基材としては、光硬化性樹脂組成物に含まれる光重合開始剤の感光波長域の光に対して実質的に透明の繊維によって構成されたもの(繊維基材)を好適に用いることができる。繊維基材の構成繊維(補強繊維)としては、光透過性及び強度の点で優れ、また低廉でもあるガラス繊維を好適に使用できる。繊維基材を構成する補強繊維としては、これ以外にもアラミド繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ナイロン繊維等を使用することができる。使用する繊維は、一種を選択してもよいし、複数種を選択してもよい。
また、繊維基材の形態としては、例えば、チョップドストランドマット、ロービング、織物状などが挙げられる。
【0020】
フィルム12としては、光硬化性樹脂組成物に含まれる光重合開始剤の感光波長域の光に対して実質的に透明のプラスチック製フィルムであり、ここではポリエチレンテレフタレート(PET)製のフィルムを用いている。但し、このフィルム12の材質としては、ポリエチレンテレフタレートに限定されず、例えば、ポリブチレンテレフタレート等も採用可能である。また、フィルム12としては、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、ビニロンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム等も採用可能である。
【0021】
但し、フィルム12としては、伸びが小さい点で、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好適である。また、フィルム12としては、ポリエチレンテレフタレートの延伸フィルムを特に好適に用いることができる。
ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、ポリプロピレンフィルムは、例えば光硬化性樹脂組成物の重合性樹脂として、多価アルコールと不飽和多塩基酸(および必要に応じて飽和多塩基酸)とのエステル化反応による縮合生成物(不飽和ポリエステル)をスチレンに溶解した不飽和ポリエステル樹脂のように、スチレンを含有するものを用いた場合に、スチレンの影響によって膨潤して、若干の伸びを生じ得る。これに対して、ポリエチレンテレフタレートフィルムは、スチレンに対する膨潤の影響を殆ど受けることがなく、寸法安定性の点で好適に用いることができる。
【0022】
プリプレグ複合テープ10において、前記フィルム12は、未硬化状態のプリプレグテープ11の粘着力によってプリプレグテープ11に貼着されている。
このフィルム12のプリプレグテープ11とは反対側の面(以下、表面12a)には、シリコ−ン処理が施されている。フィルム12はその表面12a全体がシリコーン処理された面となっている。フィルム12は、その表面12aに未硬化状態のプリプレグテープ11が接触してもプリプレグテープ11が容易に粘着せず、粘着しても簡単に引き剥がすことが可能な易剥離性が確保されている。
したがって、プリプレグ複合テープ10は、図1に例示したように巻回状態にしたときに、フィルム12の表面12aに接触するプリプレグテープ11がフィルム12に容易に粘着せず、粘着しても簡単に引き剥がすことができる。
【0023】
一方、フィルム12の表面12aとは反対の裏面(貼着面12b)には、プリプレグテープ11からの剥離性を確保するための処理(シリコ−ン処理等)は施されていない。フィルム12は、その貼着面12b側のプリプレグテープ11に該プリプレグテープ11の粘着力によって貼着状態が安定に保たれる。
このため、プリプレグ複合テープ10は、該プリプレグ複合テープ10を巻回状態にしたプリプレグテープ巻回体21から引き出す際に、フィルム12がその表面12aに接するプリプレグテープ11の粘着力によって、貼着面12b側のプリプレグテープ11から引き剥がされるといった不都合が生じない。プリプレグ複合テープ10は、そのプリプレグテープ巻回体21から引き出す作業を、フィルム12がその貼着面12b側のプリプレグテープ11と一体の状態を保ったまま楽に行うことができる。
【0024】
図1に示すプリプレグテープ巻回体21(以下、単に巻回体とも言う)は、プリプレグ複合テープ10を巻回状態にしたものである。
図1に例示した巻回体21は、プリプレグ複合テープ10を、そのフィルム12がプリプレグテープ11の湾曲の外周側に位置する向きで巻き上げて巻回状態にしたものである。プリプレグ複合テープ10は、例えば巻芯に巻いて巻回体にすることができる。
この巻回体21は、その外周全周にわたってフィルム12が露出した状態になっており、プリプレグテープ11の露出部分が、プリプレグ複合テープ10の巻回軸線方向両側の端面と、巻回体21外周に位置する巻回終端の端面とに限定されている。このため、この巻回体21は、プリプレグテープ11のフィルム12とは反対側の面(プリプレグテープ11の表面11a)への埃等の付着を防止できるといった利点がある。
【0025】
なお、プリプレグ複合テープ10を巻回状態とした巻回体としては、図5に示すように、プリプレグ複合テープ10を、そのフィルム12がプリプレグテープ11の湾曲の内周側に位置する向きで巻き上げて巻回状態にしたもの(巻回体22)としても良い。
但し、巻回体の取り扱い性の確保の点では、図1に例示した巻回体21の方が、巻回体22に比べてプリプレグテープ11の露出部分が少ない分、有利である。
【0026】
図2、図3、図4は、プリプレグ複合テープ10のプリプレグテープ11を被着物30に接着固定(固定施工)する作業の一例を説明する図である。
図中、被着物30は、コンクリート構造物を例示しているが、被着物30としてはコンクリート構造物に限定されず、例えば金属板、ガラス板等、適宜選択可能である。
【0027】
ここで説明するプリプレグ複合テープ10のプリプレグテープ11の被着物30への接着固定作業は、まず、図2、図3に示すように、プリプレグ複合テープ10のプリプレグテープ11のフィルム12とは反対側の表面11aを被着物30表面に密着させ、この状態を維持したまま光照射によってプリプレグテープ11の光硬化性樹脂組成物を硬化させる。
【0028】
フィルム12は、光透過性のプラスチック製フィルム、より詳しくは、既述の通り、光硬化性樹脂組成物に含まれる光重合開始剤の感光波長域の光に対して実質的に透明のプラスチック製フィルムである。このため、プリプレグ複合テープ10は、被着物30にプリプレグテープ11を密着させた状態で、該プリプレグ複合テープ10のフィルム12側から、光重合開始剤の感光波長域を含む光Hを照射すれば、前記光Hをフィルム12を介して(透過させて)プリプレグテープ11に照射することができ、プリプレグテープ11の光硬化性樹脂組成物を硬化させることができる。
【0029】
図1に示すように、プリプレグ複合テープ10のその巻回体(巻回体21又は巻回体22)から引き出した部分は、プリプレグテープ11の片面のみにフィルム12が貼着された構成であり、プリプレグテープ11のフィルム12とは反対側の表面11aを覆うものは存在せず、プリプレグテープ11の表面11aが露出した状態となっている。
したがって、プリプレグ複合テープ10は、その巻回体から引き出して、プリプレグテープ11の被着物30への接着固定作業に用いる場合に、図6に例示した従来構成の複合テープ130のようにプリプレグテープの両面のフィルムの片方をプリプレグテープから引き剥がしてプリプレグテープを露出させる作業を行う必要がない。巻回体から引き出したプリプレグ複合テープ10は、従来構成の複合テープのようにフィルムを引き剥がす作業を行うことなく、プリプレグテープ11の表面11aを被着物30に密着させる作業を開始できるから、従来構成の複合テープに比べて、プリプレグテープ11の被着物30への接着固定作業の工程を削減でき、作業時間を短縮できる。
【0030】
光照射Hによるプリプレグテープ11の光硬化性樹脂組成物の硬化が完了したら、次いで、フィルム12をプリプレグテープ11から引き剥がす。これにより、プリプレグテープ11の被着物30への接着固定が完了する。
フィルム12は、プリプレグテープ11が光照射によって硬化して粘着力を喪失することで、プリプレグテープ11からの引き剥がしを弱い力で楽に行える。
【0031】
従来構成の複合テープ130は、プリプレグテープの両面から引き剥がしたフィルムの現場からの撤去、廃棄が必要であるが、プリプレグ複合テープ10はプリプレグテープ11の片面のみにフィルム12が貼着されている構成であるため、従来構成の複合テープ130に比べて、プリプレグテープから引き剥がしたフィルムの量を半減させることができる。このため、プリプレグ複合テープ10は、プリプレグテープ11の被着物30への接着固定作業に伴う廃棄物の発生量の削減にも有効に寄与する。
【0032】
プリプレグ複合テープ10は、プリプレグテープ11の片面のみにフィルム12が貼着されている構成であるため、プリプレグテープの厚みに対するフィルムを含む全体(プリプレグ複合テープ全体)の厚みを、図6に例示した従来構成の複合テープ130に比べて小さくできる。このため、プリプレグ複合テープ10は、図6に例示した従来構成の複合テープ130に比べて、巻回体にしたときの内周側と外周側との周長差の縮小を容易に実現でき、巻回体にしたときの巻き皺の発生防止を容易に実現できる。
また、プリプレグ複合テープ10は、プリプレグテープの両面にフィルムが貼着されている従来構成の複合テープ130に比べてフィルムを節約できる分、低コスト化を容易に実現できる。
【0033】
また、プリプレグ複合テープ10は、従来構成の複合テープ130に比べて、巻回体にしたときのプリプレグテープの長さに対する巻き径の縮小を容易に実現できる。
プリプレグ複合テープ10を巻回体にしたときのプリプレグテープの長さに対する巻き径の縮小は、プリプレグテープの厚みに対するフィルムを含む全体(プリプレグ複合テープ全体)の厚みを抑えることが可能であることが有効に寄与する。
また、プリプレグ複合テープ10は、従来構成の複合テープ130に比べて、プリプレグテープの厚みに対する巻回体の内径の縮小、巻回体の作製に使用する巻芯の外径縮小に有利であり、巻回体の内径縮小によって、プリプレグテープの長さに対する巻き径の縮小を実現することも可能である。プリプレグ複合テープ10は、プリプレグテープの厚みに対する巻回体の内径の、巻き皺の発生を防止可能な限界値を従来構成の複合テープ130に比べて小さくすることができる。プリプレグ複合テープ10を用いて作製する巻回体は、巻き皺の発生を防止可能な範囲でその内径を小さくすることで、巻き皺の発生防止と、プリプレグテープの長さに対する巻き径の縮小とを実現できる。
【符号の説明】
【0034】
10…プリプレグ複合テープ、11…光硬化性プリプレグテープ、11a…(光硬化性プリプレグテープの)表面、12…フィルム、12a…(フィルムの)表面、12b…(フィルムの)貼着面、21、22…プリプレグテープ巻回体、30…被着物(コンクリート構造物)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化性プリプレグテープの片面のみに光透過性を有する剥離性のフィルムが貼着され、このフィルムの前記光硬化性プリプレグテープに接する貼着面とは反対の表面側にシリコーン処理が施されていることを特徴とするプリプレグ複合テープ。
【請求項2】
請求項1に記載のプリプレグ複合テープを巻回してなることを特徴とするプリプレグテープ巻回体。
【請求項3】
前記プリプレグ複合テープのフィルムが、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルムのいずれか1つであることを特徴とする請求項2に記載のプリプレグテープ巻回体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−81637(P2012−81637A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228966(P2010−228966)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(390022389)サンコーテクノ株式会社 (52)
【Fターム(参考)】