説明

プリンタにおける印刷制御方法およびプリンタ

【課題】中央基準でロール紙を装着でき、中央基準で配置された記録紙上の印刷領域に正
確に印刷することが可能なプリンタを提案すること。
【解決手段】ロール紙プリンタ1は、受信した印刷データに印刷対象の記録紙12aの紙
幅が含まれていない場合には、印刷対象の記録紙12aの紙幅を最大紙幅とする。そして
、搬送路Aの左端からインクジェットヘッド14による印刷開始位置までの距離Lを、L
=Lm(Lm:記録紙の左側の余白寸法)とする。一方、印刷データに紙幅が含まれてい
る場合には、受信した紙幅を印刷対象の記録紙の紙幅とする。そして、搬送路Aの左端か
らインクジェットヘッド14による印刷開始位置までの距離Lを、L=1/2La−1/
2Lb+Lm(La:搬送路Aの幅、Lb:印刷対象の記録紙の紙幅、Lm:記録紙の左
側の余白寸法)とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる紙幅の記録紙に印刷可能なプリンタおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタに記録紙をセットして印刷位置に搬送する場合には、搬送路の左端に記録紙の
左端を位置合わせする左端基準や、搬送路の中央に記録紙の中央を位置合わせする中央基
準などのセット基準位置が用いられる。左端基準の場合には、左端の余白が一定であれば
印刷ヘッドによる印刷開始位置は印刷ヘッドのホームポジション(可動領域の左端)から
常に同一距離の位置になるので、紙幅が変わっても印刷ヘッドによる印刷開始位置を調整
する必要がなく、イメージバッファに展開した印刷内容を一定の位置からそのまま印刷す
れば済む。つまり、左端基準の場合には、記録紙上の印刷領域に正確に印刷するためには
、印刷領域の左側の余白寸法の情報のみがあればよい。
【0003】
これに対し、中央基準の場合には、印刷領域の左側の余白が同一であっても、記録紙の
紙幅が変わると印刷ヘッドによる印刷開始位置が紙幅方向にずれるので、印刷ヘッドによ
る印刷開始位置の調整が必要になる。従って、記録紙上の印刷領域に正確に印刷するため
には、印刷領域の左側の左端の余白寸法に加えて、記録紙の紙幅あるいは記録紙の左端位
置および右端位置などの情報が必要になる。
【0004】
ここで、ロール紙を装着して印刷するプリンタの場合には、重量が大きいロール紙を装
着部の左側や右側に寄せて装着すると重量が偏ってしまうので、ロール紙支持機構のメカ
基準位置であるロール紙装着部の中央にロール紙を配置して装着する方が、ロール紙の装
着性や印刷時の動作安定性、耐久性が良くなる。ロール紙をロール紙装着部の中央に装着
した場合には、そこから引き出される記録紙は搬送路上に中央基準で位置合わせされる。
よって、上に説明したように記録紙の紙幅に応じた印刷開始位置の調整が必要になり、記
録紙の紙幅や、記録紙の左端位置や右端位置などの情報が必要になる。
【0005】
記録紙の左端位置や右端位置などを検出して印刷ヘッドによる印刷開始位置を調整する
プリンタは、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1のプリンタは、キャリッ
ジに取り付けた用紙センサによって記録紙の左端および右端の位置を検出する。このプリ
ンタは、検出した左端の位置が標準位置であればそのまま印刷を行い、標準位置でなけれ
ば、検出した左端の位置に応じて印刷ヘッドによる印刷開始位置を調整して印刷を行う。
これにより、紙幅や記録紙のセット基準位置の変化に応じて、自動で印刷ヘッドによる印
刷開始位置を調整できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−16345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のように用紙センサによってその都度記録紙の端部の検出動作を行う方法で
は、用紙センサの初期不良や経年変化、あるいは記録紙の紙質などによって検出エラーや
誤検出が発生する恐れがある。検出エラーが発生するとエラー解除動作や再検出動作が必
要になって印刷処理に遅れが生じるという問題点があった。また、誤検出が発生すると印
刷開始位置が目標位置からずれてしまう恐れがあり、その場合には、記録紙上の印刷領域
からずれた位置に印刷されてしまったり、記録紙からはみ出した位置にインクが吐出され
てプラテンが汚れてしまうなどの不具合が発生する恐れがあった。
【0008】
そこで、ホスト装置側から印刷対象の記録紙の紙幅情報やセット基準位置などの情報を
プリンタに送ることにより、用紙センサによる検出動作を行わずに正確な情報をプリンタ
側で取得して、印刷ヘッドによる印刷開始位置を調整する方法も考えられる。しかしなが
ら、全ての印刷ジョブについてホスト装置側で紙幅情報やセット基準位置などの情報を作
成してプリンタに送るのはホスト装置側での処理負担が大きい。また、装着ミスなどによ
って記録紙のセット基準位置がずれてしまったり、間違った紙幅の記録紙をセットしてい
てもそのことを検出することができなければ、このようなミスに起因するプラテンの汚れ
や目標と異なる位置への印刷を防止できないという問題点があった。
【0009】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、記録紙装着部にロール紙などの記録紙を中央
基準で装着することにより記録紙の装着性や動作安定性を向上させることが可能で、且つ
、中央基準を採用しても記録紙上の印刷領域に正確に印刷することができ、更に、ホスト
装置からの紙幅情報の有無に基づいて印刷対象の記録紙の紙幅を決定することにより紙幅
センサの検出エラーに起因する印刷位置のずれやプラテンの汚れを防止することが可能な
プリンタおよびプリンタの制御方法を提案することにある。
【0010】
また、本発明の他の課題は、紙幅情報をホスト装置から受信したか否かに応じて左端基
準と中央基準を使い分けることができ、左端基準と中央基準のどちらを採用しても記録紙
上の印刷領域に正確に印刷できるようにすることが可能なプリンタおよびプリンタの制御
方法を提案することにある。
【0011】
また、本発明の他の課題は、印刷範囲の調整によって記録紙からはみ出した位置にイン
クが吐出されることを防止することが可能なプリンタおよびプリンタの制御方法を提案す
ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のプリンタの制御方法は、
記録紙装填部から送り出した記録紙を、印刷ヘッドによる印刷位置を経由する搬送路に
沿って搬送するプリンタにおける印刷制御方法であって、
記録紙の紙幅情報を受信せずに印刷ジョブを実行する場合には、予め記憶している紙幅
を印刷対象の記録紙の紙幅とし、
記録紙の紙幅情報を受信してから印刷ジョブを実行する場合には、受信した紙幅情報を
印刷対象の記録紙の紙幅とし、
前記印刷対象の記録紙が前記搬送路上に中央基準で配置されているとして、当該印刷ジ
ョブを実行するための前記印刷ヘッドの紙幅方向の印刷基準位置を決定することを特徴と
している。
【0013】
本発明は、このように、ホスト装置からの紙幅情報の有無に基づいて印刷対象の記録紙
の紙幅を決定でき、決定した紙幅の記録紙に対して、中央基準による印刷基準位置を決定
することができる。よって、記録紙装着部に記録紙を中央基準で装着することにより、記
録紙の装着性や動作安定性を向上させることができる。また、中央基準で装着された記録
紙上の印刷領域への正確な印刷が可能である。また、上位装置からの紙幅情報に基づいて
紙幅を決定できるので、紙幅センサの検出エラーに起因する印刷位置のずれやプラテンの
汚れが発生しない。
【0014】
また、本発明のプリンタの制御方法は、
記録紙装填部から送り出した記録紙を、印刷ヘッドによる印刷位置を経由する搬送路に
沿って搬送するプリンタにおける印刷制御方法であって、
印刷対象の記録紙の紙幅情報を受信せずに印刷ジョブを実行する場合には、
予め記憶している紙幅を印刷対象の記録紙の紙幅とし、当該紙幅の記録紙が、前記搬送
路上に左端基準で配置されているとして、当該印刷ジョブを実行するための前記印刷ヘッ
ドの紙幅方向の印刷基準位置を決定し、
印刷対象の記録紙の紙幅情報を受信してから印刷ジョブを実行する場合には、
当該紙幅の記録紙が前記搬送路上に中央基準で配置されているとして、当該印刷ジョブ
を実行するための前記印刷ヘッドの紙幅方向の印刷基準位置を決定することを特徴として
いる。
【0015】
本発明は、このように、中央基準での印刷動作を行うか否かをホスト装置からの紙幅情
報の有無によって判別することができ、紙幅情報を受信した場合には中央基準を採用して
、印刷対象の記録紙の紙幅に応じて印刷基準位置を調整することができる。また、紙幅情
報を受信していない場合には、予め記憶しているデフォルトの紙幅の記録紙に左端基準で
印刷動作を行うように印刷基準位置を決定することができる。このようにすると、必要に
応じて左端基準と中央基準を使い分けることができ、中央基準で記録紙を装着した場合も
記録紙上の印刷領域に正確に印刷することができる。よって、記録紙装着部に記録紙を中
央基準で装着することにより、記録紙の装着性や動作安定性を向上させることができる。
また、ホスト装置からの情報や予め記憶している情報に基づいて紙幅を決定できるので、
紙幅センサの検出エラーに起因する印刷位置のずれやプラテンの汚れが発生しない。更に
、左端基準で印刷するときにはホスト装置から紙幅情報を送信しなくてもよいので、ホス
ト装置側の処理負担が軽減される。
【0016】
ここで、前記印刷基準位置を、前記印刷ヘッドによる印刷開始位置にするとよい。上記
方法によれば、ホスト装置からの紙幅情報の有無によって印刷対象の記録紙の紙幅と記録
紙のセット基準位置が決まるので、余白寸法を設定しておけば印刷開始位置を決定できる
。また、印刷開始位置を把握できれば、当該印刷開始位置を基準にしてイメージバッファ
に展開された印刷内容を印刷するだけで正しい位置への印刷を完了させることができる。
【0017】
本発明において、前記搬送路上にセットされる最大紙幅を記憶しておき、印刷対象の記
録紙の紙幅情報を受信せずに印刷ジョブを実行する場合には、前記最大紙幅を印刷対象の
記録紙の紙幅とすると共に、当該記録紙の左側の余白寸法をLmとしたときに、前記搬送
路の左端から前記印刷開始位置までの距離LをL=Lmとし、印刷対象の記録紙の紙幅情
報を受信してから印刷ジョブを実行する場合には、前記搬送路の幅をLa、印刷対象の記
録紙の紙幅をLb、当該記録紙の左側の余白寸法をLmとしたときに、前記搬送路の左端
から前記印刷開始位置までの距離Lを、L=1/2La−1/2Lb+Lmとするように
、印刷開始位置を決定するとよい。
【0018】
このように、最大紙幅の記録紙は、左端基準と中央基準のどちらで位置合わせしても同
じ位置に配置される。従って、最大紙幅のときは左端基準による印刷制御を行うようにす
れば紙幅情報が不要になり、L=Lmにより印刷開始位置を決定できる。また、中央基準
を採用しても、同様に、L=Lmにより印刷開始位置を決定できる。一方、最大紙幅より
も小さい紙幅の記録紙を中央基準で装着するときには、L=1/2La−1/2Lb+L
mによって印刷開始位置を決定することにより、記録紙上の印刷領域の左端に、印刷ヘッ
ドの印刷開始位置を一致させることができる。
【0019】
また、本発明において、前記搬送路上の記録紙の紙幅を検出し、当該検出された紙幅が
、印刷対象の記録紙の紙幅と一致しない場合には、所定のエラー状態に移行するか、又は
、前記印刷ヘッドによる印刷を、前記検出された紙幅の範囲内に対してのみ行うとよい。
このように、印刷対象の紙幅と、センサによって検出された搬送路上にある記録紙の紙幅
が一致していない場合にはそのことを検出して、エラー状態への移行や印刷範囲の調整を
行うことにより、記録紙からはみ出した位置にインクが吐出されてプラテンが汚れてしま
うなどの不具合を防止できる。
【0020】
ここで、前記記録紙はロール紙であり、前記記録紙装填部はロール紙装填部である。記
録紙装着部にロール紙を中央基準で装着すれば、ロール紙の装着性や記録紙を繰り出すと
きの動作安定性が向上する。
【0021】
次に、本発明のプリンタは、上記の印刷制御方法により、印刷ジョブを実行するための
前記印刷ヘッドの紙幅方向の印刷基準位置を決定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、中央基準での印刷動作を行うか否かをホスト装置からの紙幅情報の有
無によって判別することができるので、必要に応じて左端基準と中央基準を使い分けるこ
とができ、左端基準と中央基準のどちらで記録紙を位置合わせしても記録紙上の印刷領域
に正確に印刷することができる。また、記録紙装着部にロール紙などの記録紙を中央基準
で装着することが可能になるので、記録紙の装着性や動作安定性が向上する。また、左端
基準で印刷するときにはホスト装置から紙幅情報を送信しなくてもよいので、ホスト装置
側の処理負担が軽減される。更に、ホスト装置側から正確な紙幅情報を取得できるので、
紙幅センサの検出エラーに起因する印刷位置のずれやプラテンの汚れが発生する恐れがな
い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を適用したロール紙プリンタの外観斜視図である。
【図2】ロール紙プリンタの開閉蓋を全開にした状態の外観斜視図である。
【図3】ロール紙プリンタの内部の概略構成を示す説明図である。
【図4】ロール紙プリンタの制御系を示す概略ブロック図である。
【図5】印刷開始位置の判定方法の説明図である。
【図6】印刷開始位置の判定処理のフローチャートである。
【図7】印刷開始位置の判定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図面を参照して、本発明のロール紙プリンタの実施の形態を説明する。
【0025】
(全体構成)
図1は本発明を適用したインクジェット方式のロール紙プリンタの外観斜視図であり、
図2はロール紙プリンタの開閉蓋を全開にした状態の外観斜視図である。ロール紙プリン
タ1は、全体としてほぼ直方体形状をしたプリンタ本体2と、当該プリンタ本体2の前面
に取り付けた開閉蓋3とを有している。プリンタ本体2の外装ケース2aの前面には所定
幅の排出口4が形成されている。排出口4の下側には排紙ガイド5が前方に突出しており
、当該排紙ガイド5の側方には蓋開閉レバー6が配置されている。外装ケース2aにおけ
る排紙ガイド5および蓋開閉レバー6の下側には、ロール紙出し入れ用の矩形の開口部2
bが形成されており、この開口部2bが開閉蓋3によって封鎖されている。
【0026】
蓋開閉レバー6を操作すると開閉蓋3のロックが解除される。ロック解除後、排紙ガイ
ド5を前方に引くと、開閉蓋3はその下端部を中心として前方に旋回し、ほぼ水平となる
まで開く。開閉蓋3が開くと、図2に示すように、プリンタ内部に形成されているロール
紙収納部11(記録紙装填部)が開放状態となる。同時に、ロール紙収納部11から排出
口4に到る搬送路A(図3参照)が開放状態となり、プリンタ前方からロール紙12の交
換作業などを簡単に行うことができる。なお、図2では開閉蓋3のカバーケースおよび蓋
開閉レバー6を省略してある。
【0027】
図3はロール紙プリンタ1の内部の概略構成を示す説明図である。ロール紙収納部11
には、ロール紙12が、プリンタ幅方向に向いた横置き状態で転動可能に収納されている
。ロール紙12は、一定幅の長尺状の記録紙12aをロール状に巻き付けたものである。
【0028】
ロール紙収納部11の上側には、プリンタ本体フレーム10の上端に水平に取り付けら
れたヘッドユニットフレーム13が配置されている。ヘッドユニットフレーム13には、
インクジェットヘッド14、インクジェットヘッド14を搭載しているキャリッジ15、
キャリッジ15のプリンタ幅方向への移動をガイドするキャリッジガイド軸16が配置さ
れている。キャリッジガイド軸16はプリンタ幅方向に水平に掛け渡されている。インク
ジェットヘッド14は、インクノズル面14aが下向きになるようにキャリッジ15に搭
載されている。また、ロール紙収納部11の上側には、キャリッジ15をキャリッジガイ
ド軸16に沿って往復移動させるためのキャリッジモータ17およびタイミングベルト1
8を備えたキャリッジ搬送機構が配置されている。
【0029】
インクジェットヘッド14の下側には、プリンタ幅方向に水平に延びるプラテン19が
インクノズル面14aと一定のギャップを隔てて対向配置されており、プラテン19によ
ってインクジェットヘッド14による印刷位置が規定されている。プラテン19の後端に
は、下方に湾曲しているテンションガイド20が取り付けられている。テンションガイド
20はバネ力によって上方に付勢されており、ロール紙収納部11に収納されているロー
ル紙12から引き出された記録紙12aは、テンションガイド20によって所定の張力が
付与された状態で印刷位置を経由する記録紙搬送路に沿って引き出される。
【0030】
プラテン19の後側(搬送方向上流側)には、後側紙送りローラ21および後側紙押え
ローラ22がプリンタ幅方向に水平に架け渡されている。後側紙送りローラ21には、記
録紙12aを介して後側紙押えローラ22が上側から所定の押圧力で押し付けられている
。また、プラテン19の前端側(搬送方向下流側)には、前側紙送りローラ23および前
側紙押えローラ24が配置されている。前側紙送りローラ23には、記録紙12aを介し
て前側紙押えローラ24が上側から押し付けられている。後側紙送りローラ21および前
側紙送りローラ23は、プリンタ本体フレーム10に搭載されている紙送りモータ25に
よって同期して回転駆動される。
【0031】
搬送路Aのインクジェットヘッド14よりも上流側の記録紙検出位置には、紙検出器2
6が配置されている。紙検出器26は、反射型フォトセンサあるいは透過型フォトセンサ
により構成されており、搬送路A上に引き出されている記録紙12aからの反射光あるい
は透過光を利用して、記録紙12aの有無あるいは記録紙12aの用紙種類を検出する。
【0032】
搬送路Aの上方には、キャリッジ15に搭載されたエンコーダセンサ27が配置されて
いる。エンコーダセンサ27は、キャリッジ15の往復移動範囲に沿って延びるリニアス
ケールとの組み合わせでリニアエンコーダとして機能し、キャリッジ15およびインクジ
ェットヘッド14のプリンタ幅方向の位置を検出するための位置検出器として機能する。
なお、エンコーダセンサ27とリニアスケールによりキャリッジ15およびインクジェッ
トヘッド14の移動量を直接検出する代わりに、キャリッジモータ17の回転量の検出値
に基づいてキャリッジ15およびインクジェットヘッド14プリンタ幅方向の移動量を算
出して、キャリッジ15およびインクジェットヘッド14のプリンタ幅方向の位置を把握
してもよい。
【0033】
また、キャリッジ15における記録紙12aの記録面に対向する位置には、紙幅検出器
29が搭載されている。紙幅検出器29は反射型フォトセンサにより構成されており、キ
ャリッジ15のプリンタ幅方向(紙幅方向)への移動に連動して検出動作を行う。紙幅検
出器29は、プラテン19または記録紙12aからの反射光を利用して、プラテン19上
の紙幅検出位置にある記録紙12aの左端および右端を検出する。
【0034】
ロール紙収納部11内のロール紙12から繰り出される記録紙12aは、テンションガ
イド20によって所定の張力が付与された状態で、プラテン19上の印刷位置を経由する
搬送路A(図3に示す太い一点鎖線)に沿って搬送され、排出口4から引き出された状態
にセットされる。この状態で紙送りモータ25が駆動制御されると、後側紙送りローラ2
1および前側紙送りローラ23が回転し、記録紙12aが一定の搬送量ずつ紙送りされる
。そして、記録紙12aの紙送りと同期してインクジェットヘッド14が駆動され、印刷
位置を通過する記録紙12aの表面に印刷が行われる。その後、印刷済みの記録紙12a
が排出口4から排出された状態で搬送が停止し、排出口4の近傍に配置されたオートカッ
タ28によって記録紙12aの先端部分が切断され、印刷済みの記録紙片が発行される。
【0035】
(制御系)
図4は、ロール紙プリンタ1の制御系を示す概略ブロック図である。ロール紙プリンタ
1の制御系は、CPU、ROM、RAMなどを備えた制御部30を中心に構成されている
。また、制御部30には、フラッシュROMなどの不揮発性メモリ33が接続されている
。制御部30には、送受信部31を介して、ホスト装置32などの上位機器から印刷デー
タやコマンドなどが供給される。制御部30は、ホスト装置32などからの印刷指令に基
づき、ロール紙を送り出す紙送り機構やキャリッジ搬送機構などの各部の駆動を制御して
、紙送り動作および印刷動作を実行する。
【0036】
制御部30の出力側には、ヘッドドライバ14bを介してインクジェットヘッド14が
接続されており、制御部30は、ヘッドドライバ14bを介してインクジェットヘッド1
4を駆動制御する。また、制御部30の出力側には、モータドライバ17aおよびモータ
ドライバ25aを介してキャリッジモータ17および紙送りモータ25が接続されており
、制御部30は、モータドライバ25a,17aを介して紙送りモータ25およびキャリ
ッジモータ17を駆動制御する。制御部30は、紙送りモータ25を送り出し方向に駆動
制御するステップ数あるいは回転量を積算することにより、記録紙12aの所定の搬送量
を算出する。
【0037】
制御部30の入力側には、紙検出器26が接続されている。制御部30は、紙検出器2
6の検出出力に基づいて、搬送路A上の紙検出器26が設置された記録紙検出位置におい
て、搬送路A上の記録紙12aの有無の検出動作を行う。あるいは、記録紙検出位置にお
いて、ロール紙収納部11に装填されている用紙の種類を判別する用紙判別動作を行う。
例えば、ロール紙12から引き出されて搬送路A上にセットされた記録紙12aを所定量
搬送して、搬送中の紙検出器26の検出出力に基づき、記録紙12aの用紙の種類を判別
する。制御部30は、判別した用紙の種類に基づいてロール紙プリンタ1の各部を制御す
ることにより、各用紙に対する最適な印刷動作を行うことができる。
【0038】
また、制御部30の入力側には、エンコーダセンサ27および紙幅検出器29が接続さ
れている。制御部30は、キャリッジ搬送機構を駆動制御することにより、搬送路A上に
セットされた記録紙12aの上でインクジェットヘッド14およびキャリッジ15を紙幅
方向に移動させながら、紙幅検出器29による検出動作を行う。制御部30は、紙幅検出
器29の検出出力を所定の閾値と比較することにより、記録紙12aの端部の上を紙幅検
出器29が通過した場合にはそのことを検出する。そして、記録紙12aの左端および右
端を検出する間のキャリッジ15の移動量をエンコーダセンサ27の出力に基づいて検出
することにより、記録紙12aの紙幅を検出する。あるいは、キャリッジ15がホームポ
ジションから記録紙12aの左端および右端に移動する間のキャリッジ15の移動量を検
出することにより、記録紙12aの左端位置および右端位置を検出する。
【0039】
(印刷開始位置の判定処理)
次に、インクジェットヘッド14による印刷開始位置の判定処理について説明する。図
5は、印刷開始位置の判定方法の説明図である。制御部30は、搬送路A上にセットされ
た記録紙12a上にレイアウトされている印刷領域12bの左端にインクジェットヘッド
14のインク吐出用ノズルを位置合わせして印刷を開始する。すなわち、印刷領域12b
の左端の位置をインクジェットヘッド14による印刷開始位置(印刷基準位置)とする。
【0040】
記録紙12aのセット位置を左端基準にした場合は、図5(a)に示すように、記録紙
12aの左端を搬送路Aの左端P1に合わせて記録紙12aをセットする。このとき、印
刷領域12bの左端の位置である印刷開始位置Q1は、搬送路Aの左端P1から、記録紙
12a上における印刷領域12bの左側の余白寸法Lmだけ右側に移動した位置となる。
【0041】
一方、記録紙12aのセット位置を中央基準にした場合は、図5(b)に示すように、
記録紙12aの中央を搬送路Aの中央P2に合わせて記録紙12aをセットする。このと
き、印刷領域12bの左端の位置である印刷開始位置Q2は、搬送路Aの幅をLa、記録
紙12aの紙幅をLb、記録紙12aの左側の余白寸法をLmとしたときに、搬送路Aの
左端P1から、距離L=1/2La−1/2Lb+Lmだけ移動した位置となる。
【0042】
ロール紙プリンタ1は、ホスト装置32から印刷を指示する印刷データを受信すると、
受信した印刷データを解析する。そして、解析内容に基づいて、この印刷データを印刷す
るための印刷開始位置の判定処理を行う。
【0043】
図6は、印刷開始位置の判定処理のフローチャートである。制御部30は、ステップS
1において、受信した印刷データに紙幅情報が含まれているか否かを判定する。含まれて
いる場合(ステップS1:Yes)には、ステップS2に進み、受信した紙幅を、印刷対
象の記録紙12aの紙幅とする。続いて、ステップS3に進み、中央基準で記録紙12a
が配置されているとして、印刷開始位置を判定する。すなわち、ステップS3では、図5
(b)に示す印刷開始位置Q2の配置に基づき、搬送路Aの左端P1から印刷開始位置ま
での距離Lを、L=1/2La−1/2Lb+Lmと判定する。
【0044】
一方、受信した印刷データに紙幅情報が含まれていない場合(ステップS1:No)に
は、ステップS4に進み、不揮発性メモリ33に予め記憶させておいたデフォルトの紙幅
を読み出して、この紙幅を印刷対象の記録紙12aの紙幅とする。本実施形態では、デフ
ォルトの紙幅を、搬送路A上にセット可能な最大紙幅、すなわち、搬送路Aの幅と同一幅
の寸法Laとしている。続いて、ステップS5に進み、左端基準で記録紙12aが配置さ
れているとして、印刷開始位置を判定する。すなわち、ステップS5では、図5(a)に
示す印刷開始位置Q1の配置に基づき、搬送路Aの左端P1から印刷開始位置までの距離
Lを、L=Lmと判定する。
【0045】
記録紙12aの左側の余白寸法Lmは、予めロール紙プリンタ1の不揮発性メモリ33
に記憶させておいてもよいし、印刷データに含めておいてもよい。あるいは、紙幅情報と
同様に印刷データに含まれていない場合はデフォルトの余白寸法を用い、印刷データに余
白寸法が含まれている場合には受信した余白寸法を用いても良い。
【0046】
ここで、記録紙12aの紙幅Lbが搬送路Aの幅Laと同一である場合、すなわち、最
大紙幅である場合には、距離L=1/2La−1/2Lb+Lm=Lmとなり、印刷開始
位置は、左端基準の場合と同一の位置になるので、左端基準による判定方法と中央基準に
よる判定方法のどちらを用いてもよい。そのため、印刷データに紙幅情報が含まれていな
いときに用いるデフォルトの紙幅が最大紙幅である場合には、中央基準の場合の印刷開始
位置の判定方法のみを用いるように処理を変更することも可能である。図7は、中央基準
のみを用いる印刷開始位置の判定処理のフローチャートを示す。図7の判定処理における
S11〜S14の処理は、図6の判定処理におけるステップS1〜S4の処理と同一であ
る。図7の判定処理では、ステップS5の処理は行わず、ステップS4の次はステップS
3に進み、デフォルトの紙幅の場合にも中央基準による判定方法を用いて印刷開始位置を
判定する。
【0047】
印刷開始位置の判定処理が終了すると、ロール紙プリンタ1は、受信した印刷データの
印刷を行うための紙送り動作および印刷動作を行う。その際には、記録紙12a上の印刷
領域をプラテン19上の印刷位置に位置合わせする搬送動作が完了する前に、プラテン1
9上の紙幅検出位置において、紙幅検出器29による記録紙12aの紙幅検出を行う。そ
して、これにより、現在搬送中の記録紙12aの紙幅、および、記録紙12aの左端およ
び右端の紙幅方向の位置を把握する。
【0048】
制御部30は、紙幅検出器29による検出結果が、上記の印刷開始位置の判定処理中に
おいて印刷対象の紙幅として扱った値と一致するか否かの判定を行う。そして、一致しな
いと判定した場合には、用紙幅エラーであるとして、所定のエラー表示を行って動作停止
状態にするなどのエラー処理を行う。あるいは、紙幅検出器29により検出した紙幅から
はみ出さないように印刷を行うために、インクジェットヘッド14による印刷範囲を調整
する。例えば、搬送路A上に配置されている記録紙12aの紙幅からはみ出す部分の印刷
データのマスク処理を行って、インクジェットヘッド14による印刷を、検出された紙幅
の範囲内に対してのみ行う。
【0049】
(本実施形態の効果)
本実施形態のロール紙プリンタ1は、以上のように、中央基準での印刷動作を行うか否
かを印刷データに紙幅情報が含まれているか否かで判別することができ、印刷データに紙
幅情報が含まれている場合にのみ中央基準を採用して、紙幅に応じてインクジェットヘッ
ド14による印刷開始位置を調整することができる。また、印刷データに紙幅情報が含ま
れていない場合には、予め記憶しているデフォルトの紙幅の記録紙12aに左端基準で印
刷動作を行うように印刷開始位置を決定することができる。従って、必要に応じて左端基
準と中央基準を使い分けることができ、中央基準で記録紙12aを装着しても記録紙12
a上の印刷領域12bに正確に印刷することができる。よって、ロール紙収納部11にロ
ール紙12を中央基準で装着することができ、ロール紙12の装着性や動作安定性が向上
する。また、左端基準で印刷するときには印刷データに紙幅情報を含めなくてもよいので
、ホスト装置32側の処理負担が軽減される。
【0050】
また、本実施形態では、印刷データに基づいて印刷対象の記録紙12aの紙幅を決定し
、決定した紙幅の記録紙12aに対して、中央基準による印刷開始位置を決定する制御も
可能である。これにより、上記と同様に、ロール紙収納部11にロール紙12を中央基準
で装着してロール紙12の装着性や動作安定性を向上させることができると共に、インク
ジェットヘッド14による印刷開始位置を決定して、記録紙12a上の印刷領域12bに
正確に印刷することができる。
【0051】
また、本実施形態では、ホスト装置32側からの情報や予め記憶している情報に基づい
て紙幅を決定できるので、紙幅検出器29の検出エラーに起因する印刷位置のずれやプラ
テン19の汚れが発生しない。また、紙幅検出器29の検出結果と印刷データからの紙幅
情報が一致していなければ、エラー状態に移行するか、あるいは、検出した紙幅の範囲内
にのみ印刷をおこなうように印刷幅を調整するので、記録紙からはみ出した位置にインク
が吐出されてプラテン19が汚れてしまうなどの不具合を防止できる。
【0052】
(改変例)
上記実施形態では、印刷データに紙幅情
報を含めてロール紙プリンタ1に送信している
が、紙幅情報を、印刷データの送信とは別のタイミングでロール紙プリンタ1に送信して
もよい。
【符号の説明】
【0053】
1…ロール紙プリンタ、2…プリンタ本体、2a…外装ケース、2b…開口部、3…開閉
蓋、4…排出口、5…排紙ガイド、6…蓋開閉レバー、10…プリンタ本体フレーム、1
1…ロール紙収納部(記録紙装填部)、12…ロール紙、12a…記録紙、12b…印刷
領域、13…ヘッドユニットフレーム、14…インクジェットヘッド、14a…インクノ
ズル面、14b…ヘッドドライバ、15…キャリッジ、16…キャリッジガイド軸、17
…キャリッジモータ、17a…モータドライバ、18…タイミングベルト、19…プラテ
ン、20…テンションガイド、21…後側紙送りローラ、22…後側紙押えローラ、23
…前側紙送りローラ、24…前側紙押えローラ、25…紙送りモータ、25a…モータド
ライバ、26…紙検出器、27…エンコーダセンサ、28…オートカッタ、29…紙幅検
出器、30…制御部、31…送受信部、32…ホスト装置、33…不揮発性メモリ、A…
搬送路、La…搬送路の幅、Lb…紙幅、Lm…余白寸法、P1…搬送路の左端、P2…
搬送路の中央、Q1、Q2…印刷開始位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録紙装填部から送り出した記録紙を、印刷ヘッドによる印刷位置を経由する搬送路に
沿って搬送するプリンタにおける印刷制御方法であって、
記録紙の紙幅情報を受信せずに印刷ジョブを実行する場合には、予め記憶している紙幅
を印刷対象の記録紙の紙幅とし、
記録紙の紙幅情報を受信してから印刷ジョブを実行する場合には、受信した紙幅情報を
印刷対象の記録紙の紙幅とし、
前記印刷対象の記録紙が前記搬送路上に中央基準で配置されているとして、当該印刷ジ
ョブを実行するための前記印刷ヘッドの紙幅方向の印刷基準位置を決定することを特徴と
するプリンタにおける印刷制御方法。
【請求項2】
記録紙装填部から送り出した記録紙を、印刷ヘッドによる印刷位置を経由する搬送路に
沿って搬送するプリンタにおける印刷制御方法であって、
印刷対象の記録紙の紙幅情報を受信せずに印刷ジョブを実行する場合には、
予め記憶している紙幅を印刷対象の記録紙の紙幅とし、当該紙幅の記録紙が、前記搬送
路上に左端基準で配置されているとして、当該印刷ジョブを実行するための前記印刷ヘッ
ドの紙幅方向の印刷基準位置を決定し、
印刷対象の記録紙の紙幅情報を受信してから印刷ジョブを実行する場合には、
当該紙幅の記録紙が前記搬送路上に中央基準で配置されているとして、当該印刷ジョブ
を実行するための前記印刷ヘッドの紙幅方向の印刷基準位置を決定することを特徴とする
プリンタにおける印刷制御方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプリンタにおける印刷制御方法であって、
前記印刷基準位置は、前記印刷ヘッドによる印刷開始位置であることを特徴とするプリ
ンタにおける印刷制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載のプリンタにおける印刷制御方法であって、
前記搬送路上にセット可能な最大紙幅を記憶しておき、
印刷対象の記録紙の紙幅情報を受信せずに印刷ジョブを実行する場合には、
前記最大紙幅を印刷対象の記録紙の紙幅とすると共に、
当該記録紙の左側の余白寸法をLmとしたときに、前記搬送路の左端から前記印刷開始
位置までの距離LをL=Lmとし、
印刷対象の記録紙の紙幅情報を受信してから印刷ジョブを実行する場合には、
前記搬送路の幅をLa、印刷対象の記録紙の紙幅をLb、当該記録紙の左側の余白寸法
をLmとしたときに、前記搬送路の左端から前記印刷開始位置までの距離Lを、L=1/
2La−1/2Lb+Lmとすることを特徴とするプリンタにおける印刷制御方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかの項に記載のプリンタにおける印刷制御方法であって、
前記搬送路上の記録紙の紙幅を検出し、
当該検出された紙幅が、印刷対象の記録紙の紙幅と一致しない場合には、
所定のエラー状態に移行するか、又は、前記印刷ヘッドによる印刷を、前記検出された
紙幅の範囲内に対してのみ行うことを特徴とするプリンタにおける印刷制御方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかの項に記載のプリンタにおける印刷制御方法であって、
前記記録紙はロール紙であり、
前記記録紙装填部はロール紙装填部であることを特徴とするプリンタにおける印刷制御
方法。
【請求項7】
請求項1ないし6に記載の印刷制御方法により、印刷ジョブを実行するための前記印刷
ヘッドの紙幅方向の印刷基準位置を決定することを特徴とするプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−60024(P2013−60024A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−1970(P2013−1970)
【出願日】平成25年1月9日(2013.1.9)
【分割の表示】特願2008−199361(P2008−199361)の分割
【原出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】