説明

プリンタードライバーおよび情報処理装置

【課題】プリンタードライバーにより、プリンターが受信可能な所定サイズを超えるデータサイズの印刷対象データのファイルを、所定サイズ以下のデータサイズに縮小して印刷可能にする。
【解決手段】情報処理装置1のコンピューター3に組み込まれるプリンタードライバーにより、コンピューター3のファイルリファイルモジュール部5を判定手段、縮小条件決定手段、縮小処理手段として機能させ、印刷対象のJPEGファイル4のデータサイズが前記所定サイズを超える場合に、印刷に影響しない範囲で画素を間引いたデータサイズの縮小演算から、JPEGファイル4が前記所定サイズ以下になる縮小条件を予測して決定し、前記ファイルのデータサイズが前記所定サイズ以下にならない縮小条件の場合は、縮小条件決定手段によりさらに量子化テーブルの変更を行なって縮小条件を決定し、JPEGファイル4を印刷品質に極力影響しないように縮小する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像データ等の印刷対象データのファイルをプリンターに伝送して印刷する情報処理装置のコンピューターに組み込まれるプリンタードライバーおよび前記情報処理装置に関し、詳しくは印刷対象データがプリンターの受信可能なデータサイズより大きな場合のファイルのデータサイズの縮小に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルカメラ等の画像機器の静止画の画像データは、Exif(Exchangeable image file format)の圧縮ファイル等にも採用されているJPEG(Joint Photographic Experts Group)ファイルの画像データである。
【0003】
そして、上記画像機器の画像データをプリンターで印刷する場合、例えばデジタルカメラとプリンターとの間にダイレクトプリントアダプターを設け、デジタルカメラのJPEGファイルの画像データをダイレクトプリントアダプターにより印刷データ(ラスタ形式のデータ)に変換し、この印刷データをプリンターに伝送して印刷することが提案されている(例えば、特許文献1(段落0043、0048、図1、図2等)参照)。
【0004】
また、近年の高機能の家庭用ゲーム装置のようなコンピューター構成の情報処理装置においては、デジタルカメラの撮影やウェブサイトからのダウンロード等によって得られた情報処理装置のJPEGファイルの画像データ(印刷対象データ)をプリンターで印刷する場合、情報処理装置に組み込まれたプリンタードライバーの所定コマンドの印刷制御に基づき、情報処理装置をホスト装置、プリンターをデバイス装置とし、JPEGファイルを情報処理装置からプリンターに伝送し、プリンターにより、受信したJPEGファイルの画像データを印刷データに変換して印刷することが行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3593820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記したように印刷対象データのファイルをホスト装置としての情報処理装置からデバイス装置としてのプリンターに伝送してプリンターで印刷する場合、プリンターのリソース(受信バッファのメモリー)の制限や印刷コマンドの制限等から、受信可能な所定サイズ(例えば5MB又は3MB:MBはメガバイト)を超えるデータサイズのファイルについては、プリンターで受信することができない。
【0007】
そして、前記情報装置からプリンターに送信される印刷対象データのファイルは、例えばJPEGファイルの場合、撮影サイズの大きい画像や高画質の画像の画像データのファイルであれば、データサイズが前記所定サイズを超えることがある。この場合、上記制限に基づき、JPEGファイルをプリンターで受信することができず、画像データ(印刷対象データ)がプリンターで印刷されない問題がある。なお、印刷対象データがJPEGファイルの画像データ以外の圧縮、非圧縮の種々の画像データやテキストデータ等の場合にも、前記所定サイズを超えると、上記制限に基づいて同様の問題が生じる。
【0008】
ところで、ホスト装置としての情報装置からプリンターに送信するJPEGファイル等の印刷対象データのファイルのデータサイズが前記所定サイズを超える場合、そのデータサイズを小さくして上記問題点を解消することが考えられるが、例えば単にデータ圧縮率を高くしてデータサイズを小さくすると、プリンターの印刷結果に影響を及ぼし、場合によっては必要な印刷データが得られなくなって正常な印刷が行なえなくなるおそれがある。そして、従来はそのようなデータサイズの大きなファイルに対して、プリンターの印刷結果に極力影響を及ぼさないようにデータサイズを小さくして縮小する構成はなんら発明されていない。
【0009】
この発明は、ホスト装置としての情報処理装置により、プリンターが受信可能な所定サイズを超えるデータサイズの印刷対象データのファイルを、プリンターの印刷結果に極力影響を及ぼさないように前記所定サイズ以下のデータサイズに縮小し、情報処理装置からプリンターに縮小したファイルを伝送して印刷対象データを印刷可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るプリンタードライバー(プログラム)は、上記目的を達成するため、印刷対象データのファイルをプリンターに伝送する情報処理装置のコンピューターに組み込まれるプリンタードライバーであって、前記コンピューターを、前記ファイルのデータサイズが前記プリンターの受信可能な所定サイズを超えるか否かの判定手段、前記ファイルのデータサイズが前記所定サイズを超える場合に、印刷に影響しない範囲で間引く前記ファイルの画素数に基づいたデータサイズの縮小演算から、前記ファイルのデータサイズが前記所定サイズ以下になる縮小条件を予測して決定する縮小条件決定手段、決定した縮小条件で前記ファイルを縮小する縮小処理手段として機能させるプリンタードライバーであり、縮小条件決定手段は、前記ファイルのデータサイズが前記所定サイズ以下にならない縮小条件の場合は、さらに量子化テーブルの変更を行なって縮小条件を決定する。
【0011】
上記のように構成された本発明のプリンタードライバーを情報処理装置のコンピューターに組み込むと、JPEGファイル等の印刷対象データのファイルを情報装置からプリンターに伝送する際に、コンピューターが判定手段として機能することにより、ファイルのデータサイズがプリンターの受信可能な所定サイズを超えるか否かが判定される。そして、ファイルのデータサイズがプリンターの受信可能な所定サイズを超える場合、コンピューターが縮小条件決定手段として機能することにより、まず、印刷に影響しない範囲で画素を間引いたデータサイズの縮小を演算し、それでも所定サイズを超えると、画素を間引くだけでなく、量子化テーブルも変更し、テータの圧縮率を高くしてデータサイズの縮小を演算し、これらの演算から、ファイルのデータサイズが所定サイズ以下になる縮小条件が予測して決定される。つぎに、コンピューターが縮小処理手段として機能することにより、決定した縮小条件に基づき、そのファイルのデータサイズが所定サイズ以下に縮小される。
【0012】
この場合、プリンターの受信可能な所定サイズを超えるJPEGファイル等の印刷対象データのファイルに対して、印刷結果に対する影響が大きい量子化テーブルの変更によってデータサイズを小さくする前に、印刷に対する影響が少ない範囲での画素の間引きによってファイルのデータサイズを小さくし、それでも所定サイズに小さくならなければ、量子化テーブルを変更し、データ圧縮率を高くしてファイルのデータサイズを小さくする構成であるので、プリンターの印刷結果に極力影響を及ぼさないようにファイルのデータサイズを縮小し、縮小したファイルをホスト装置としての情報処理装置からプリンターに伝送し、そのファイルの画像等を印刷品質の低下を極力抑えて印刷することができる。
【0013】
また、本発明に係るプリンタードライバーは、前記縮小処理手段により縮小された前記ファイルのデータサイズが前記所定サイズを上限とする適正サイズ範囲より小さくなる場合に、前記コンピューターを、前記ファイルのデータサイズが前記適正サイズ範囲に収まるように、縮小演算の条件を緩和して前記縮小条件決定手段による前記縮小条件の決定および前記縮小処理手段による前記ファイルのデータサイズの縮小処理をやり直す再決定手段としてさらに機能させる。
【0014】
このように構成された本発明のプリンタードライバーが組み込まれた情報処理装置のコンピューターは、縮小条件決定手段により決定した縮小条件に基づき、縮小処理手段によりファイルのデータサイズを縮小したときに、縮小後のファイルのデータサイズが小さくなり過ぎて所定サイズを上限とする適正サイズ範囲より小さくなると、印刷品質の低下を防止するため、ファイルのデータサイズが適正サイズ範囲に収まるように再決定手段として機能し、画素の間引きによるデータサイズの縮小と量子化テーブルの変更によるデータサイズの縮小を条件を緩和してやり直し、縮小条件を再決定し、さらに、再決定した縮小条件でファイルのデータサイズの縮小処理をやり直す。このやり直しを行なうことにより、ファイルは過度に縮小されることがなく、適正サイズ範囲のデータサイズに縮小される。そのため、プリンターの印刷に一層影響を及ぼさないように適正サイズ範囲の適当なデータサイズに縮小したファイルを情報処理装置からプリンターに伝送して印刷することができる。
【0015】
また、本発明に係るプリンタードライバーは、前記縮小条件決定手段の縮小条件の予測が、前記画素を間引いたデータサイズの縮小演算の前、後のいずれかの段階で色成分のサンプリング条件を前記プリンターの印刷に影響しない所定のサンプリング条件に変更するサンプリング条件変更処理をさらに含む。
【0016】
このように構成された本発明のプリンタードライバーが組み込まれた情報処理装置のコンピューターは、ファイルの元の印刷対象データがプリンターの印刷に必要な画質以上の高画質のカラーの画像データ等であれば、縮小条件決定手段として機能する際に、画素を間引いたデータサイズの縮小演算の前、後のいずれかの段階で色成分のサンプリング条件をプリンターの印刷に影響しない所定のサンプリング条件に変更することで、量子化テーブルの変更を伴うデータサイズの縮小を極力行なわないようにしてファイルの縮小条件を決定することができる。この場合、量子化テーブルの変更を極力回避してデータサイズを縮小することができ、データサイズの縮小のプリンターの印刷に対する影響がさらに一層少なくなる。
【0017】
そして、印刷対象データが画像データの場合にファイルのデータサイズが大きくなり易いため、本発明に係るプリンタードライバーは、データサイズを縮小してプリンターに伝送するファイルがJPEGファイルであることが実用的で好ましい。
【0018】
つぎに、本発明に係る情報処理装置は、印刷対象データのファイルをプリンターに伝送する情報処理装置であって、前記ファイルのデータサイズが前記プリンターの受信可能な所定サイズを超えるか否かの判定手段と、前記ファイルのデータサイズが前記所定サイズを超える場合に、印刷に影響しない範囲で間引く前記ファイルの画素数に基づいたデータサイズの縮小演算から、前記ファイルのデータサイズが前記所定サイズ以下になる縮小条件を予測して決定する縮小条件決定手段と、決定した縮小条件で前記ファイルを縮小する縮小処理手段とを備える。
【0019】
この場合、JPEGファイル等の印刷対象データのファイルを情報装置からプリンターに送信する際に、判定手段によりファイルのデータサイズがプリンターの受信可能な所定サイズを超えるか否かが判定される。そして、ファイルのデータサイズがプリンターの受信可能な所定サイズを超えると、縮小条件決定手段により、印刷に影響しない範囲で画素を間引いたデータサイズの縮小演算から、データサイズが所定サイズ以下になるファイルの縮小条件が予測して決定され、それでも所定サイズを超えると、画素を間引くだけでなく、量子化テーブルも変更してファイルのデータサイズが所定サイズ以下になる縮小条件が予測して決定される。つぎに、決定した縮小条件に基づき、縮小処理手段によって実際に、そのファイルのデータサイズが所定サイズ以下に縮小される。そのため、プリンターの受信可能な所定サイズを超えるJPEGファイル等のファイルに対して、プリンターの印刷結果に極力影響を及ぼさないようにファイルのデータサイズを小さくし、そのファイルを情報処理装置からプリンターに送信して印刷することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態のブロック図。
【図2】図1の情報処理装置のプリンタードライバーの一部の処理のフローチャート。
【図3】図1の情報処理装置のプリンタードライバーの他の一部の処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は本発明の一実施形態の情報処理装置1およびプリンター2のシステム例を示し、情報処理装置1は、具体的には家庭用ゲーム機、PC(パーソナルコンピューター)等の種々のコンピューター機器(装置)であり、デジタルカメラ等の画像機器からなる場合もある。プリンター2は例えばカラーのインクジェットプリンターである。そして、情報処理装置1のコンピューター3にはプリンター2のプリンタードライバー(プログラム)が組み込まれ、情報処理装置1はプリンター2に対してホスト装置として動作する。
【0022】
情報処理装置1の印刷対象データは、例えば、デジタルカメラの撮影やウェブサイトからのダウンロード等により得られたJPEGファイル4のカラーの画像データであり、データであり、そのデータサイズは、時によっては、プリンター2が受信可能な所定サイズ(例えば5MB又は3MB)を超える。なお、以下においては、印刷対象データをJPEGファイル4の画像データであるとして説明する。
【0023】
情報処理装置1は、前記プリンタードライバーにより、図1のファイルリサイズモジュール部5、印刷コマンド生成部6および、通信制御部7が形成される。
【0024】
プリンター2は、情報処理装置1と情報をやり取りしてJPEGファイル4を取り込む制御部8、受信バッファー等を形成して受信したJPEGファイル4を保持するRAM等の書き換え自在のメモリー部9、メモリー部9に保持されたJPEGファイル4の画像データを印刷データに変換する画像データ処理部10、JPEGファイル4の画像データの画像を印刷する印刷機構部11を備える。
【0025】
そして、本実施形態において、本発明の対象となるのは、情報処理装置1のファイルリサイズモジュール部5におけるJPEGファイル4のデータサイズの縮小である。
【0026】
ファイルリサイズモジュール部5について説明すると、ファイルリサイズモジュール部5は、コンピューター3を本発明の判定手段、縮小条件決定手段、縮小処理手段および、再決定手段として機能させる。
【0027】
判定手段は、プリンター2との情報のやり取りから、プリンター2の受信可能な前記所定サイズを把握し、JPEGファイル4のデータサイズが前記所定サイズを超えるか否かを判定する。
【0028】
縮小条件決定手段は、判定手段の判定結果に基づき、JPEGファイル4のデータサイズが前記所定サイズを超える場合に、印刷に影響しない範囲で間引く前記ファイルの画素数に基づいたデータサイズの縮小演算および、さらには、量子化テーブルを変更したデータサイズの縮小演算から、JPEGファイル4のデータサイズが前記所定サイズ以下になる縮小条件を予測して決定する。その際、本実施形態の縮小条件決定手段は、画素を間引いたデータサイズの縮小演算の前の段階でサンプリングファクター(本発明の色成分のサンプリング条件)をプリンター2の印刷に影響しない所定のサンプリングファクターに変更するサンプリング条件変更処理を含み、JPEGファイル4の元の画像データがプリンター2の印刷に必要な画質以上の色成分のデータが多い高画質の画像データであれば、画素を間引いたデータサイズの縮小演算をする前に、その画像データのサンプリングファクターをプリンター2の印刷に影響しない範囲で最小のデータ量になるサンプリングファクターに変更し、その後、前記の画素を間引いたデータサイズの縮小演算、さらには量子化テーブルを変更したデータサイズの縮小演算を行なってファイルの縮小条件を決定する。このようにすることで、プリンター2の印刷に対する影響が大きい量子化テーブルの変更、すなわちデータ圧縮率の高圧縮率化への変更を極力行なわないようにしてデータサイズを縮小することができ、プリンター2にJPEGファイル4を伝送して印刷したときの前記縮小の影響が極めて少なくなる。
【0029】
前記サンプリングファクターは、JPEGファイル4の画像データの輝度成分Yと、赤色、青色の色差成分(色成分)Cr、Cbとの比であり、画像データの画質等によって、Y:Cr:Cbは、色差成分Cr、Cbの間引きが多い順、換言すれば、データサイズの小さいものから順に、4:1:1(1/2間引き)、4:2:2(2/3間引き)等になる。一方、プリンター2の印刷品質は、Y:Cr:Cb=4:1:1のデータ量が小さいサンプリングファクターであってもほとんど劣化しない。そこで、縮小条件決定手段のサンプリング条件変更処理により、JPEGファイル4の元のサンプリングファクターが、色差成分Cr、Cbのデータが多いサンプリングファクターの場合に、Y:Cr:Cb=4:1:1のサンプリングファクターに変更したデータサイズを演算する。
【0030】
画素を間引いたデータサイズの予測の縮小演算は、サンプリングファクターをY:Cr:Cb=4:1:1以下にしたJPEGファイル4の画素数と、プリンター2の印刷解像度(360[dpi]又は600[dpi])に印刷用紙の横幅のインチ数を乗算して求められるプリンター2の印刷画素数(印刷に必要な画素数)との差から画素の間引き量を求め、JPEGファイル4の復号(デコード)した画像データから前記間引き量の画素を適当に間引き、各1画素がそのファイルの1画素当たりの平均データサイズになるものとして、間引いた後の画像データをJPEGデータに符号化(エンコード)した場合のデータサイズを演算して行なわれる。そして、画素の間引きによるデータサイズの縮小は、量子化テーブルの変更によるデータサイズの縮小に比して、プリンター2の印刷に対する影響が少ないので、量子化テーブルの変更によるデータサイズの予測の縮小に先立って行なわれる。
【0031】
量子化テーブルの変更によるデータサイズの予測の縮小演算は、印刷画素数に間引かれた画像データを量子化テーブルを変えて圧縮率の高い再量子化でJPEGファイルのデータに再符号化した場合のデータサイズを予測し、そのサイズが前記所定サイズ(目標のサイズ)以下になる量子化テーブルを求める演算である。そして、量子化テーブルの変更は、例えば、周知のJPEGファイルの量子化テーブルの各数値から設定値(例えば、5、10等の単位数値)を減算したり、量子化テーブルの各数値に予め用意された係数(例えば、1.1、1.2等の係数)を乗算したり、量子化テーブルの各数値をデータサイズの縮小量の関数に代入したりして、段階的に行なわれる。
【0032】
そして、縮小条件決定手段は、再サンプリング演算によってJPEGファイル4のデータサイズが前記所定サイズ以下になると予測されるときには、サンプリングファクターの変更を縮小条件に決定し、画素を間引いたデータサイズの予測の縮小演算によってJPEGファイル4のデータサイズが前記所定サイズ以下になると予測されるときには、サンプリングファクターの変更および予測された画素の間引きを縮小条件に決定し、量子化テーブルの変更によるデータサイズの予測の縮小演算によってJPEGファイル4のデータサイズが前記所定サイズ以下になると予測されるときには、サンプリングファクターの変更、予測された画素の間引きおよび、量子化テーブルの変更を縮小条件に決定する。
【0033】
縮小処理手段は、縮小条件決定手段が決定した縮小条件にしたがって、JPEGファイル4に、サンプリングファクターの変更、画素の間引き、量子化テーブルの変更による再量子化を実際に施し、データサイズの縮小を実行する。
【0034】
このとき、縮小条件決定手段によるJPEGファイル4のデータサイズの縮小の予測が1画素当たりの平均データサイズから行なわれるので、縮小処理手段により実際に縮小したJPEGファイル4のデータサイズが前記所定サイズを超えることがある。この場合は、サンプリングファクターの変更はこれ以上は行なえないので、画素を間引いたデータサイズの予測の縮小演算、量子化テーブルの変更によるデータサイズの予測の縮小演算を、間引く画素数を段階的に多くし、量子化テーブルの変更条件をデータ圧縮率を段階的に下げるように変更して、縮小処理手段により縮小したJPEGファイル4のデータサイズが前記所定サイズ以下になるまでくり返す。
【0035】
一方、縮小処理手段により縮小したJPEGファイル4のデータサイズが前記所定サイズより小さくなり過ぎたときには、プリンター2の印刷品質の低下を防止するため、前記再決定手段により、縮小したデータサイズが前記所定サイズを上限とする適正サイズ範囲に収まるように、縮小条件決定手段によるJPEGファイル4のデータサイズの縮小の予測および縮小処理手段による縮小を、条件を緩和してくり返す。
【0036】
すなわち、再決定手段は、決定した縮小条件にしたがって縮小処理手段により縮小されたJPEGファイル4のデータサイズが前記所定サイズを上限とする適正サイズ範囲(例えば前記所定サイズを100%として100〜90%の範囲)より小さくなる場合に、データサイズが前記適正サイズ範囲に収まるように、縮小処理手段に、画素を間引いたデータサイズの予測の縮小演算、さらには量子化テーブルの変更によるデータサイズの予測の縮小演算を、それぞれの条件を緩和して再度行なわせる。
【0037】
そして、ファイルリサイズモジュール部5の上記したデータサイズの縮小は、具体的は、つぎに説明する図2、図3のステップS1〜S19の手順で行なわれる。
【0038】
JPEGファイル4の印刷開始時、プリンター2からに情報処理装置1にファイルパス、受信可能なデータサイズ、印刷用紙サイズ等が通知されると、ファイルリサイズモジュール部5は、まず、判定手段により、JPGEファイル4の元のデータサイズとプリンター2から受信したからファイルのデータサイズとを比較してJPGEファイル4のデータサイズが前記所定サイズを超えるか否かを判定する(図2のステップS1)。このとき、JPGEファイル4のデータサイズが前記所定サイズを超えなければ、JPGEファイル4を元のデータサイズでプリンター2に伝送可能であるので、ステップS1を否定(NO)で通過してデータサイズの縮小演算を行なうことなく処理を終了する。一方、JPGEファイル4の元のデータサイズが前記所定サイズを超えていると、ステップS1を肯定(YES)で通過し、JPGEファイル4のデータサイズをその画素数で除算して1画素当たりの平均データサイズを算出する(図2のステップS2)。
【0039】
つぎに、ステップS2からステップS3に移行し、縮小条件決定手段のサンプリングファクター変更の要否の判断により、JPEGファイル4のサンプリングファクターが、Y:Cr:Cb=4:1:1よりデータサイズが大きくなるサンプリングファクターに設定されているか否かを判別し(図2のステップS3)、Y:Cr:Cb=4:1:1よりデータサイズが大きくなるサンプリングファクターに設定されていると、ステップS3をYESで通過し、サンプリングファクターをY:Cr:Cb=4:1:1に変更して色差成分Cr、Cbを間引き、縮小したJPEGファイル4のデータサイズを予測する(図2のステップS4、S5)。
【0040】
このとき、予測されるデータサイズが前記所定サイズより大きく、サンプリングファクターをY:Cr:Cb=4:1:1に変更しただけではJPEGファイル4のデータサイズが前記所定サイズを超えると判断すると、図2のステップS6をNOで通過し、ステップS7、S8、S9により、サンプリングファクターをY:Cr:Cb=4:1:1に変更したJPEGファイル4に対して、前記の画素を間引いたデータサイズの予測の縮小演算を施す。すなわち、元の又は再サンプリング後のY:Cr:Cb=4:1:1のJPEGファイル4につき、画素数がプリンター2の印刷画素数より多いか否かを判断し(図2のステップS7)、JPEGファイル4の画素数がプリンター2の印刷画素数より多く、画素の間引きが可能な場合には、JPEGファイル4の画素数とプリンター2の印刷画素数との差から画素の間引き数を算出し(図2のステップS8)、JPEGファイル4の画像データから算出した間引き数の画素を間引いて、Y:Cr:Cb=4:1:1、かつ、プリンター2の印刷画素数の画像データに縮小した場合のJPEGファイル4のデータサイズを演算して予測する(図2のステップS9)。
【0041】
さらに、上記の画素の間引きによっても、縮小後のJPEGファイル4のデータサイズが前記所定サイズを超えると予測すると、ステップS9からステップS10をNOで通過してステップS11に移行し、前記した量子化テーブルの変更によりデータ圧縮率を高くしたデータサイズの予測の縮小演算を行なう。すなわち、Y:Cr:Cb=4:1:1、かつ、プリンター2の印刷画素数に間引いた画像データにつき、例えばデータ圧縮率をステップ状に高くして再量子化することにより前記所定サイズ以下になる量子化テーブルを求める(図2のステップS11)。
【0042】
ところで、ステップS6において、サンプリングファクターをY:Cr:Cb=4:1:1に変更することでデータサイズが前記所定サイズ以下になると予測されるときは、そのサンプリングファクターの変更を縮小の条件に決定し、ステップS6をYESで通過してステップS12に移行する。また、ステップS10において、画素の間引きも施せばデータサイズが前記所定サイズ以下になると予測されるときは、その画素の間引きを縮小の決定条件に加えて通過して図3のステップS12に移行する。さらに、ステップS11より量子化テーブルの変更も縮小の決定条件に加えたときにもステップS12に移行する。
【0043】
図3のステップS12においては、縮小条件処理手段により、決定した縮小条件に基づいて、JPEGファイル4の画像データにサンプリングファクターの変更、画素の間引き、再量子化を施し、JPEGファイル4を実際に縮小して縮小後のJPEGファイル4のバイト数をカウントして図3のステップS13に移行する。このとき、一般的には縮小後のJPGファイル4のバイト数が前記所定サイズのバイト数以下になるため、ステップS13をYESで通過して図3のステップS14に移行し、縮小後のJPGファイル4が前記した適正サイズ範囲より小さくなるか否か(小さくなり過ぎたか否か)を判断する(図3のステップS15)。
【0044】
そして、適正サイズ範囲に収まれば、ステップS14をYESで通過してデータサイズの縮小処理を終了する。一方、小さくなり過ぎた場合は、ステップS14をNOで通過し、データサイズが前記適正サイズ範囲に収まるように、縮小処理手段に、画素を間引いたデータサイズの予測の縮小演算、さらには量子化テーブルの変更によるデータサイズの予測の縮小演を、それぞれの条件を緩和して再度行なわせる。具体的には、まず、ステップS15により量子化テーブルを変更しているか否かを判断し、量子化テーブルを変更していれば、量子化テーブルを1ステップ緩和した条件のテーブルに変更し(図3のステップS16)、量子化テーブルを変更していなければ、つぎに、画素の間引きを行なっているか否かを判断し(図3のステップS17)、画素の間引きを行なっていれば、間引き条件を1ステップ緩和し(図3のステップS18)、縮小条件処理手段により、緩和した条件で画素の間引き、再量子化を施してJPEGファイル4を再度実際に縮小し、縮小後のJPEGファイル4のバイト数をカウントし(図3のステップS19)、ステップS13を介してステップS14に戻り、縮小後のJPGファイル4が前記した適正サイズ範囲に収まるまでステップS15〜S19の処理をくり返す。
【0045】
そして、JPEGファイル4はファイルリサイズモジュール部5で決定された縮小条件にしたがってサンプリングファクターの変更、画素の間引き、量子化テーブルの変更が実際に施されて前記適正サイズ範囲に収まるようにデータサイズが縮小され、縮小されたJPEGファイル4は、印刷コマンド生成部6により生成された必要な印刷コマンドが付加された後、通信制御部7の通信制御にしたがってプリンター2に有線又は無線で伝送される。
【0046】
一方、プリンター2は、制御部8が情報処理装置1と情報をやり取りしてJPEGファイル4を取り込み、メモリー部9に保持する。このとき、元のデータサイズのJPEGファイル4が、メモリー部9の容量を超える、受信可能な前記所定サイズより大きなものであっても、前記所定サイズ以下に縮小されて伝送されるので、伝送されたJPEGファイル4は確実にプリンター2に受信されて、そのメモリー部9に保持される。
【0047】
そして、メモリー部9に保持されたJPEGファイル4の画像データは、画像データ処理部10により、受信した印刷コマンドにしたがって印刷データに変換され、印刷機構部11によるインクヘッドの移動および用紙の給排の制御により、印刷データにしたがってインクヘッドの各色ノズルから用紙にインクが噴射され、周知のインクジェット方式で用紙にJPEGファイル4の画像データの画像が印刷される。このとき、メモリー部9に保持されたJPEGファイル4は印刷に極力影響しないように、サンプリングファクター、画素の間引き、量子化テーブルの変更が適宜施されて縮小されているので、印刷された画像はデータサイズの縮小による画質の劣化が最小限に抑えられる。
【0048】
上述したように、本実施形態の場合、印刷対象データである画像データのJPEGファイル4をホスト装置としての情報処理装置1からプリンター2に伝送する際に、情報処理装置1に組み込まれたプリンタードライバーにより、情報処理装置1のコンピューター3が判定手段、縮小条件決定手段、縮小処理手段として機能することにより、JPEGファイル4のデータサイズがプリンター2の受信可能な所定サイズを超える場合に、画素の間引きによるデータサイズの縮小を優先して、画素の間引きおよび、量子化テーブルの変更によるデータサイズの縮小を予測し、この予測からプリンター2の印刷に対する影響が少ない縮小条件を決定し、決定した縮小条件に基づき、印刷結果に極力影響を及ぼさないようにJPEGファイル4を前記所定サイズ以下に縮小することがでる。そして、縮小したJPEGファイル4を情報処理装置1からプリンター2に伝送して印刷画質の劣化を極力抑えた画像をプリンター2で印刷することができる。
【0049】
したがって、ホスト装置としての情報処理装置1からプリンター2に印刷対象データのファイルを伝送して印刷する際に、プリンター2が受信可能な所定サイズを超えるデータサイズの印刷対象データのファイルを、プリンター2の印刷結果に極力影響を及ぼさないように前記所定サイズ以下のデータサイズに縮小し、情報処理装置1からプリンター2に縮小したファイルを伝送して印刷対象データを印刷可能にする、従来にないプリンタドライバーおよび、該ドライバーがコンピューター3に組み込まれた情報処理装置1を提供することができる。
【0050】
また、画素の間引きおよび量子化テーブルの変更により圧縮後のデータサイズが小さくなり過ぎるときには、情報処理装置1のコンピューター3が再決定手段として機能機能することにより、圧縮後のデータサイズが適正サイズ範囲に収まるように、条件を緩和して画素の間引きおよび量子化テーブルの変更による圧縮条件の決定をやり直し、再決定した縮小条件でJPEGファイル4のデータサイズを縮小処理し、過度に縮小しないようにJPEGファイル4を前記所定サイズ以下の適正サイズ範囲に縮小してプリンター2に伝送し、印刷することができる。
【0051】
さらに、画素を間引いたデータサイズの縮小演算をする前に、サンプリングファクターをプリンター2の印刷に影響しない所定のサンプリングファクターに変更することにより、量子化テーブルの変更を伴うデータサイズの縮小を極力行なわないようにしてファイルの縮小条件を決定することができ、とくにプリンター2の印刷に必要な画質より高画質で色成分のデータが多い画像データのファイルにつき、量子化テーブルの変更に伴うデータ圧縮率の高圧縮率化の影響を極力回避してデータサイズを縮小することができる。
【0052】
そして、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行なうことが可能である。例えば、サンプリングファクターの変更処理は、画素の間引きによる予測演算の後に行なってもよい。また、JPEGファイル4のサンプリングファクターが常にY:Cr:Cb=4:1:1になる場合等にはサンプリング条件変更処理を省くことができる。さらに、処理の簡素化を図る場合は再決定手段を省いてもよい。
【0053】
つぎに、所定サイズ、適正サイズ範囲、印刷画素数等はプリンター2の仕様等に基づき適当に設定してよいのは勿論である。また、印刷対象データは画像データに限るものではなく、テキストデータ等であってもよい。さらに、印刷対象データのファイルもJPEGファイル4に限るものではなく、種々の圧縮、非圧縮のデータファイルであってよい。
【0054】
そして、情報処理装置1は種々のコンピューター装置(機器)であってよく、プリンター2はインクジェットプリンターに限るものではなく、種々の印刷方式のプリンターであってよい。
【符号の説明】
【0055】
1…情報処理装置、2…プリンター、3…コンピューター、4…JPEGファイル、5…ファイルリサイズモジュール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷対象データのファイルをプリンターに伝送して印刷する情報処理装置のコンピューターに組み込まれるプリンタードライバーであって、
前記コンピューターを、
前記ファイルのデータサイズが前記プリンターの受信可能な所定サイズを超えるか否かの判定手段、
前記ファイルのデータサイズが前記所定サイズを超える場合に、印刷に影響しない範囲で間引く前記ファイルの画素数に基づいたデータサイズの縮小演算から、前記ファイルのデータサイズが前記所定サイズ以下になる縮小条件を予測して決定する縮小条件決定手段、
決定した縮小条件で前記ファイルのデータサイズを縮小する縮小処理手段として機能させるためのプリンタードライバーであり、
前記縮小条件決定手段は、
前記ファイルのデータサイズが前記所定サイズ以下にならない縮小条件の場合は、さらに量子化テーブルの変更を行なって縮小条件を決定することを特徴とするプリンタードライバー。
【請求項2】
請求項1に記載のプリンタードライバーにおいて、
前記縮小処理手段により縮小された前記ファイルのデータサイズが前記所定サイズを上限とする適正サイズ範囲より小さくなる場合に、前記コンピューターを、
前記ファイルのデータサイズが前記適正サイズ範囲に収まるように、縮小演算の条件を緩和して前記縮小条件決定手段による前記縮小条件の決定および前記縮小処理手段による前記ファイルのデータサイズの縮小処理をやり直す再決定手段としてさらに機能させるためのプリンタードライバー。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプリンタードライバーにおいて、
前記縮小条件決定手段の縮小条件の予測が、前記画素を間引いたデータサイズの縮小演算の前、後のいずれかの段階で色成分のサンプリング条件を前記プリンターの印刷に影響しない所定のサンプリング条件に変更するサンプリング条件変更処理をさらに含むプリンタードライバー。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のプリンタードライバーにおいて、
前記ファイルがJPEGファイルであるプリンタードライバー。
【請求項5】
印刷対象データのファイルをプリンターに伝送して印刷する情報処理装置であって、
前記ファイルのデータサイズが前記プリンターの受信可能な所定サイズを超えるか否かの判定手段と、
前記ファイルのデータサイズが前記所定サイズを超える場合に、印刷に影響しない範囲で間引く前記ファイルの画素数に基づいたデータサイズの縮小演算から、前記ファイルのデータサイズが前記所定サイズ以下になる縮小条件を予測して決定する縮小条件決定手段と、
決定した縮小条件で前記ファイルのデータサイズを縮小する縮小処理手段とを備え、
前記縮小条件決定手段は、
前記ファイルのデータサイズが前記所定サイズ以下にならない縮小条件の場合は、さらに量子化テーブルの変更を行なって縮小条件を決定することを特徴とする情報処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−213093(P2010−213093A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58322(P2009−58322)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】