説明

プリンタ用のインクカートリッジ

【目的】 インク供給針に多少の位置ずれがあっても、インクの漏洩を生じることなくこれと確実に結合させるようにすること。
【構成】 記録ヘッド側のインク供給針31と結合するインクカートリッジ本体1のインク供給口10に、内径がインク供給針31の外径よりも若干小さい環状の針回りシール21と、外径がインク供給口10の内径より若干大きな環状の口回りシール22と、これらの両シール21、22を結合する肉薄の結合部材21とからなる調芯リング20を取付けて、インク供給針31に位置ずれがあったような場合でも、肉薄の結合部材23を撓ませることによって、針回りシール21に大きな変形を生じさせることなくインク供給針31をインク供給口10に気密に結合させるようにしたもの。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、記録媒体上に液状のインクをもって記録書込みを行う形式のプリンタに用いるインクカートリッジに関する。
【0002】
【従来の技術】液状のインクを用いて記録書込みを行う形式のプリンタ、特にインクジェット記録装置では、記録ヘッドにインクを供給する手段として記録ヘッドの背面に設けたインク供給針に直接結合して、内部に収容したインクをヘッド差により記録ヘッドへ供給するようにしたインクカートリッジが用いられている。
【0003】このため、この種のインクカートリッジにはその下面あるいは下方にインク供給針との結合部が設けられる関係上、結合した状態でのインクの洩れについて十分な対策を構じる必要があり、この手段としては、すでに特開昭50−74341号公報に示されているように、インクカートリッジのインク供給口に、インク供給針を密嵌させるような通孔を有するパッキングを設けるようにした構造が広く採用され、シール材を突き破るようにしてインク供給針をパッキングの通孔に挿通することにより、インクの漏洩をきたすことなくインクカートリッジを記録ヘッドの一部に位置決め係止させるようにしている。
【0004】ところが、インクカートリッジに設けるインク供給口はインクの漏洩防止といった観点から可能な限り径を小さく形成する関係上、その内部に設けるパッキングもきわめて肉厚の小さなものが用いられるため、例えば、記録ヘッドに設けたカートリッジの位置決め凸縁とインク供給針との間隔に若干のバラつきがあったり、あるいはインク供給針に若干の傾きがあったような場合には、パッキングの一方を押圧するような状態でインク供給針がパッキングの通孔に挿通される結果、パッキングの一方の側はインク供給針に必要以上の力で押圧される一方、他方の側は必要とする接触圧をもってインク供給針と接触しないことになって、この部分からインクが洩れるといった問題が生じる。
【0005】このことは、上述したインクカートリッジの位置決めとの関係で生じるばかりでなく、複数の色インクタンクからそれぞれのインクを記録ヘッドに供給するようにしたカラープリンタ用のカートリッジにおいても、インク供給針相互の間隔がズレているような場合に生じる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、結合時におけるインク供給口とインク供給針との間のズレを吸収して、インクの漏洩を生じさせることなく両者を正確に結合させることのできる新たなインクカートリッジを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明はこのような課題を達成するためのプリンタ用のインクカートリッジとして、記録ヘッド側のインク供給針と結合するインクカートリッジ側のインク供給口の口縁部に、内径がインク供給針の外径よりも若干小さい環状のシール部材と、外径がインク供給口の内径より若干大きな環状のシール部材と、これらの両シール部材を結合する肉薄の結合部材とからなる調芯リングを取付けて、インク供給針に位置ずれがあったような場合でも、肉薄の結合部材を撓ませることによって、インク供給針をインク供給口に気密に結合させるようにしたものである。
【0008】
【実施例】そこで以下に図示した実施例について説明する。図1、図2は、モノクロプリンタ用として構成された本発明の一実施例をなすインクカートリッジを示したものである。
【0009】はじめに、図2をもとにインクカートリッジに全容について説明すると、図において符号1で示したインクカートリッジ本体は、インクの蒸発を抑えかつエアの通気を可能とするような樹脂材により上方が開口した筺体として一体的に形成されている。
【0010】この本体1の上部開口には、球状の止栓4により封止されたインク流入口3と、同じく球状の止栓6により封止されたエア通孔5とを有する蓋体2が一体的に覆われており、また本体1の底面一側には、図示しない記録ヘッドのインク供給針31と連通するインク供給口10が形成され、さらに本体1の内部には、押圧板7により蓋体2との間に若干の間隙を設けるようにして柔軟な多孔質材よりなるインク吸収体8が収容されている。
【0011】ところで、図1は上記したインク供給口10部分を拡大して示したもので、このインク供給口10は、本体1の内方へ突出した吸収体押圧用の内方突部11と、本体1の外方へ突出した位置決め用の外方突部12とによって構成され、内方突部11は、この部分のインク吸収体を圧縮しその平均孔径を他の部分の孔径よりも小さくすることにより、毛細管力を大きくして吸収体内のインクをインク供給口10のもとに吸い寄せる機能を果たす部分をなし、また、外方突部12は、その周面に設けた数条のリブ13を記録ヘッドの背面に設けた環状の位置決め凸縁33に係合させてカートリッジ本体1を位置決めするとともに、インク供給針との結合を図るような機能を果たす部分をなしている。
【0012】このインク供給口10には、外方突部12側の軸心部に、後述する調芯リング20等を装着する2段の装着孔14が、また、内方突部11の軸心部には、インクの通孔をなす細い通孔16がそれぞれ同一軸線上に連通形成されている。
【0013】これに対して図中符号20は、本発明の特徴部分をなす調芯リングで、この調芯リング20は柔軟な樹脂材により形成され、かつ内径がインク供給針31の外径よりも若干小さな断面円形をなすリング状の針回りシール部21と、外径が装着孔14の入口部14aの内径よりも若干大きな断面円形をなすリング状の口回りシール22と、これらの両シール21、22を結合する軸方向に短い薄肉コーン状の連結リング23とによって構成されている。
【0014】この針回りシール21の外周面には、装着孔内奥部14bの内径よりはるかに小径の断面L字形をなすリング状の可動ブッシュ24がこのシール21の拡開を抑えるように被嵌され、また口回りシール22の内側には、インク供給針31の挿入案内をなす断面L字形をしたリング状の固定ブッシュ25が口回りシール22を装着孔入口部14aの内面に圧接するように、かつその内端が針回りシール21と接触しないように装着された上、可動ブッシュ24を装着孔14の内奥段部15に摺接させるように、かつ固定ブッシュ25を装着孔入口部14aに嵌込むようにして取付けられている。
【0015】また、上記した可動ブッシュ24には装着孔14の内奥段部15と摺接する面に放射状の突条24aが形成され、さらにこれらの突条24aの間には複数の通孔24bが形成されていて、カートリッジ本体1の内部を負圧にした状態でインクを注入した際に、内部のエアを突条24aの間から通孔24bを通して調芯リング20の外側に逃がすことにより、インクの注入圧によって調芯リング20が挿入孔14から離脱するのを抑えるように構成されている。
【0016】なお、図2における符号9はインク注入口3とエア通孔5の開口端を封止するラベルを示しており、また、図1における符号17はインク供給口10の口端を封止するシール部材を示している。
【0017】このように構成されたカートリッジ本体1を図示しないキャリッジ上の記録ヘッドに装着するには、はじめに、インク供給針31にインク供給口10を合わせるようにしてカートリッジ本体1を押し込む。
【0018】これにより、インク供給針31はインク供給口10を封止しているシール部材17を突き破って内部に嵌入し、可動ブッシュ24と密嵌しつつ通孔16内に貫入すると同時に、外方突部12の周囲に設けたリブ13は、記録ヘッドの背面に設けた環状の位置決め凸縁33の内部に嵌合してカートリッジ本体1を位置決め固定する。
【0019】ところでいま、インク供給針31が環状凸縁33の中心に正しく突出形成されていなかったり、あるいはインク供給針31が若干傾いているような場合、インク供給針31と位置決め凸縁33に合わせるようにしてカートリッジ本体1を記録ヘッドに装着すると、インク供給針31は、図3に示したように、その先端のテーパー部分32によって針回りシール21を内奥段部15に沿わせ、かつ薄肉コーン状の連結リング23を変形させながら径方向一方に変位させて、針回りシール21に大きな変形を生じさせることなくこれに正しく密嵌する。
【0020】これに対して図4、5は、カラープリンタ用として構成した本発明の他の実施例を示したもので、カートリッジ本体41には色別のインクを収容する複数のインクタンク42a、42b、42cが一体的に固定されていて、これらの各インクタンク42a、42b、42cの底面には、上述したと同様の調芯リング20a、20b、20cを備えたインク供給口50a、50b、50cが設けられている。したがって、いまインク供給針31a、31b、31c相互の間に公差の範囲内のバラつきがあるような記録ヘッドにこのインクカートリッジ41を装着した場合、さきに述べたと同様に、各インク供給口50a、50b、50c内の調芯リング20a、20b、20cは、それぞれの薄肉コーン状の連結リング23を撓ませながら針回りシール21をインク供給針31a、31b、31cの位置に合わせるように変位させて、針回りシール21自体に大きな変形を生じさせることなく各インク供給針31a、31b、31cを気密に嵌合保持してインクの漏洩を確実に抑える。
【0021】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、インクカートリッジのインク供給口口縁部に、肉薄の結合部材によって結合された、内径がインク供給針の外径よりも若干小さい環状のシール部材と、外径がインク供給口の内径より若干大きな環状のシール部材とからなる調芯リングを取付けるようにしたので、インク供給針とカートリッジの位置決め部との間、あるいはインク供給針相互の間に公差の範囲の位置ずれがあったり、あるいはインク供給針に傾きがあったような場合でも、肉薄結合部材のみを変形させながらインク供給針と密嵌するシール部材をインク供給針の位置に正しく変位させて、これらを気密に結合保持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示すインク供給口部分の拡大断面図である。
【図2】同インク供給口を備えたインクカートリッジの断面図である。
【図3】変位したインク供給針との結合状態を示した図である。
【図4】本発明の他の実施例を示すインクカートリッジの斜視図である。
【図5】同上カートリッジの底面図である。
【符号の説明】
1 インクカートリッジ本体
10 インク供給口
20 調芯リング
21 針廻リシール
22 口回りシール
23 薄肉結合部材
24 可動ブッシュ
25 固定ブッシュ
31 インク供給針
33 位置決め凸縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】 記録ヘッド側のインク供給針と結合するインクカートリッジ側のインク供給口の口縁部に、内径が上記インク供給針の外径よりも若干小さい環状のシール部材と、外径が上記インク供給口の内径より若干大きな環状のシール部材と、上記両シール部材を結合する肉薄の結合部材とよりなる調芯リングを取付けたことを特徴とするプリンタ用のインクカートリッジ。
【請求項2】 インクカートリッジに固定した複数のインクタンクの各インク供給口に、上記調芯リングを取付けたことを特徴とする請求項1記載のプリンタ用のインクカートリッジ。
【請求項3】 内径がインク供給針の外径よりも若干小さい上記シール部材の外周面に、該シール部材の拡開を抑える環状の可動ブッシュを取付けたことを特徴とする請求項1記載のプリンタ用のインクカートリッジ。
【請求項4】 外径がインク供給口の内径より若干大きな上記シール部材の内周面に、インク供給針を案内する固定ブッシュを取付けたことを特徴とする請求項1記載のプリンタ用のインクカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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